説明

熱可塑性樹脂組成物。

【課題】
ブロンズ現象を解決し、耐候性と顔料着色性に優れ、更に表面外観と耐衝撃性の良好なバランスに優れた熱可塑性樹脂組成物の提供。
【解決手段】
内層が重量平均粒子径250nm以上〜450nm以下のブタジエン系ゴム重合体で、外層の平均厚さが70nm以上〜180nm以下のアクリル系ゴム重合体である二層構造ゴム重合体に、芳香族ビニル及びシアン化ビニルをグラフト重合したグラフト重合体(a−1)1〜40重量%、
重量平均粒子径が70nm以上〜180nm以下であるアクリル系ゴム重合体に芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体をグラフト重合したグラフト重合体(a−2)60〜99重量%からなるグラフト共重合体(A)10〜100重量部と、芳香族ビニル、シアン化ビニル、(メタ)アクリル酸エステルの一種以上の単量体を重合してなる熱可塑性樹脂(B)0〜90重量部(但し、(A)と(B)の合計が100重量部)からなる熱可塑性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロンズ現象を解決し、耐衝撃性、耐候性及び顔料着色性に優れた熱可塑性樹脂組成物に関するものである。更に詳しくは、表面外観と耐衝撃性のバランスが良好で、自動車等の車両用内外装部品、各種の家電製品やOA機器のハウジング、その他雑貨分野等、幅広い分野で好適に使用可能な熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ABS樹脂は、耐衝撃性および加工性のバランスに優れた樹脂であり、自動車等の車両用内外装部品、各種の家電製品やOA機器のハウジング、その他雑貨分野等、幅広い分野に使用されている。
しかし、ABS樹脂は、そのゴム成分として使用するブタジエン系ゴム重合体が紫外線等により分解され易いことから、耐候性に劣るという欠点を有している。
そこで、ABS樹脂中のゴム成分をアクリル系ゴム重合体に置換することで耐候性を改良した、AAS樹脂が実用化されている。
通常、このようなゴム強化熱可塑性樹脂は着色剤の配合により着色されており、着色成形品として用いられている。そして、この調色・着色工程において注意すべき事項の一つに“メタメリズム”がある。これは、光源が変わると色が異なる現象である。例えば、室内灯下における色と太陽光下における色とが一致していないといったことがしばしば見受けられる。この現象は、着色剤に起因するものであり、着色剤の選択により解決することができる。又、この現象は、肉眼にて容易に判断できると共に、分光光度計により数値(反射率)又はグラフ(反射率曲線)として確認することができる。
しかしながら、着色成形品においては、前述のメタメリズムのみならず、“ブロンズ現象”といった問題点がある。
“ブロンズ現象”とは、直射日光下でない室内及び室内灯下では色相が良好にもかかわらず、直射日光下や直射日光を通した透明ガラス下においては本来の着色した色相以外に、赤〜黄色の範囲の色が重なって見える現象であり、成形品の外観上、品質イメージを低下させ、商品価値を落とすものである。もちろん、このブロンズ現象とメタメリズムとは異なる現象である。このようなブロンズ現象を解決した耐候性樹脂として、例えば重量平均粒子径が0.20〜0.35μの範囲にあるゴム粒子の合計がゴム総重量に対して20重量%未満にする方法が提案されている(特許文献1:特開昭63−275617号公報)。また、特開2000−17135号公報(特許文献2)においては、重量平均粒子径0.2μ未満のアクリル酸エステル系ゴム重合体を20重量%以上にする方法でブロンズ現象を解決したAAS系樹脂組成物が提案されているが、耐衝撃性では必ずしも満足し得るとはいえなかった。
また、特開2007−77274号公報(特許文献3)においては、重量平均粒子径0.30〜0.45μアクリル酸エステル系ゴム重合体と重量平均粒子径0.15〜0.30μアクリル酸エステル系ゴム重合体を併用することで、ブロンズ現象の解決と耐衝撃性を向上させたAAS系樹脂組成物が提案されているが、新たに顔料着色性が劣るという問題点が見られた。
【特許文献1】特開昭63−275617号公報
【特許文献2】特開2000−17135号公報
【特許文献3】特開2007−77274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、ブロンズ現象を解決し、耐候性と顔料着色性に優れた熱可塑性樹脂組成物で、更に表面外観と耐衝撃性の良好なバランスに優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、ゴム成分として、内層に特定の重量平均粒子径のブタジエン系ゴム重合体、外層に特定の厚みを有するアクリル系ゴム重合体である二層構造ゴム重合体と、特定の重量平均粒子径のアクリル系ゴム重合体を併用することで、ブロンズ現象を解決し、耐候性、表面外観と耐衝撃性のバランスが良好で、顔料着色性に優れることを見出し、本発明に到達したものである。
即ち、本発明は、
[1]内層が重量平均粒子径250nm以上〜400nm以下のブタジエン系ゴム重合体で、外層の平均厚さが70nm以上〜180nm以下のアクリル系ゴム重合体である二層構造ゴム質重合体に、芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体を主成分とする単量体をグラフト重合したグラフト重合体(a−1)1〜40重量%、
重量平均粒子径が70nm以上〜180nm以下であるアクリル系ゴム重合体に、芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体を主成分とする単量体をグラフト重合したグラフト重合体(a−2)60〜99重量%からなるグラフト共重合体(A)10〜100重量部と、芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体及びその他のビニル単量体からなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体を重合してなる熱可塑性樹脂(B)0〜90重量部(但し、(A)と(B)の合計が100重量部)からなる熱可塑性樹脂組成物、
[2]ブタジエン系ゴム重合体が、重量平均粒子径50nm以上〜200nm以下の小粒子径ブタジエン系ゴム重合体ラテックスを重量平均粒子径250nm以上〜400nm以下に凝集肥大化させたブタジエン系ゴム重合体ラテックスを使用してなる[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物、
[3]ブタジエン系ゴム重合体が、重量平均粒子径50nm以上〜200nm以下の小粒子径ブタジエン系ゴム重合体ラテックスに酸性物質を加え、ラテックスのpHを7より低くしてラテックス粒子を重量平均粒子径250nm以上〜400nm以下に凝集肥大化させた後、塩基性物質を加えラテックスのpHを7より高くして安定化させたブタジエン系ゴム重合体ラテックスを使用してなる[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、ブロンズ現象を解決し、耐候性と顔料着色性に優れた熱可塑性樹脂組成物で、更に表面外観と耐衝撃性の良好なバランスに優れた熱可塑性樹脂組成物が得られるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の熱可塑性樹脂組成物に付き詳細に説明する。
【0007】
本発明における上記グラフト重合体(a−1)を構成する二層構造ゴム重合体の内層を形成するブタジエン系ゴム重合体は、例えば1,3−ブタジエン等に代表されるジエン系単量体を50重量%以上含む単量体を重合してなる重合体であり、該ジエン系単量体と共重合可能な他の単量体としては、スチレン等の芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタアクリレート等の不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体等が挙げられる。具体的には、ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−メチルメタアクリレート共重合体が挙げられる。
【0008】
上記ブタジエン系ゴム重合体としては、重量平均粒子径250nm以上〜400nm以下のブタジエン系ゴム重合体を使用することが必要である。該重量平均粒子径が250nm未満では耐衝撃性と熱安定性に劣り、又400nmを超えると光沢及び黒色に着色した時の漆黒性が劣るので好ましくない。また、上記ブタジエン系ゴム重合体としては、所定の重量平均粒子径を有するゴム重合体(以下、未凝集肥大化ゴムと記す)を使用することも可能であるが、特定粒子径の小粒子径ゴムを凝集させてなる、凝集肥大化ゴムを使用することが好ましい。具体的には、重量平均粒子径50nm以上〜200nm以下の小粒子径ブタジエン系ゴム重合体ラテックスを重量平均粒子径250nm以上〜400nm以下に凝集肥大化させたブタジエン系ゴム重合体ラテックスを使用することが、ブロンズ外観の点で好ましい。
上記の小粒子径ブタジエン系ゴム重合体ラテックスを凝集肥大化する方法としては、従来公知の方法、例えば酸性物質を添加する方法(特公昭42−3112、特公昭55−19246、特公平2−9601、特開昭63−117005、特開昭63−132903、特開平7−157501、特開平8−259777)、酸基含有ラテックスを添加する方法(特開昭56−166201、特開昭59−93701、特開平1−126301、特開平8−59704)等を採用することができ、その方法については特に制限はないが、小粒子径ゴムラテックスに酸性物質を添加してラテックスのpHを7より低くして所定の重量平均粒子径に凝集肥大化させた後、塩基性物質を加えpHを7より高くして安定化させたブタジエン系ゴム重合体ラテックスを使用することが、耐衝撃性と光沢のバランスの面より好ましい。
【0009】
上記ブタジエン系ゴムラテックス(小粒子径ブタジエン系ゴムラテックスおよび未凝集肥大化ゴムラテックス)の製造に使用する乳化剤としては脂肪酸石鹸類のように弱酸強塩基型の塩からなり、pHが7以下の酸性領域で乳化作用を失う界面活性剤を用いることができる。例えば、ラウリン酸、オレイン酸、ステアリン酸、混合脂肪酸、不均化ロジン酸などの1種又は2種以上の酸のナトリウム塩及び/又はカリウム塩が挙げられる。特に好ましくはオレイン酸のカリウム塩又はナトリウム塩、不均化ロジン酸のカリウム塩又はナトリウム塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、該乳化剤の使用量には何ら制限はないが、ゴムラテックスの重合安定性や凝集肥大化工程を行なう際にはその後の凝集肥大化処理効率の面よりゴムラテックス固形分100重量部当たり1.0〜5.0重量部であることが好ましい。
【0010】
さらに、上記ブタジエン系ゴムラテックス(小粒子径ブタジエン系ゴムラテックスおよび未凝集肥大化ゴムラテックス)は、上述の界面活性剤を乳化剤として使用してなる公知の乳化重合により得ることができるが、その際、通常の開始剤、分子量調整剤、電解質などの重合助剤を用いることができる。
開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩や、t−ブチルヒドロキシペルオキシド、クメンヒドロキシペルオキシドなどの有機過酸化物と還元剤成分とを組み合わせたレドックス系などが挙げられ、また分子量調整剤としては、メルカプタン類(t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタンなど)やターピノレン、α−メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。さらに電解質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなどの塩基性物質や塩化ナトリウム、硫酸カリウム、酢酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、燐酸カリウム、ピロリン酸4カリウムなどが挙げられ、それぞれ単独もしくは2種以上の混合使用が可能である。さらに、重合温度についても制限はないが、50〜80℃の範囲が好ましい。また、上記ブタジエン系ゴムラテックス(小粒子径ブタジエン系ゴムラテックスおよび未凝集肥大化ゴムラテックス)は上記の乳化重合にて得ることができるが、他の方法として、別途重合された固体のゴム状重合体を、例えばホモジナイザー等を用い、その際に上記の界面活性剤を用いて乳化することにより得ることも可能である。
【0011】
上述の小粒子径ブタジエン系ゴムラテックスについては、酸性物質と接触することにより凝集肥大化することができるが、該酸性物質としては、硫酸、塩酸、リン酸等の鉱酸や、硫酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等の酸性塩類、及び蓚酸、クエン酸、酢酸、蟻酸などの有機酸や無水酢酸等の酸無水物のいずれでも使用でき、これらの2種以上の混合使用も可能であるが、リン酸、硫酸、無水酢酸、酢酸が好ましい。また酸性物質の使用量は、ゴムラテックスを酸性(pH7以下)にするのに必要な量であればよいが、肥大化対象ゴムラテックスの粒子径、乳化剤の種類や量ならびに目標とする肥大化ゴムラテックスの粒子径などによって適宜調整される。また、酸性物質は基本的に脱イオン水で希釈され水溶液として添加されるものであり、その濃度には特に制限はないが、凝集肥大化後のゴムラテックス固形分濃度の極端な低下防止及び凝固物の発生や装置への付着防止のため、0.3〜10重量%であることが好ましく、0.5〜5.0重量%の範囲が特に好ましい。
また、酸性物質を添加する前に、必要に応じて小粒子径ブタジエン系ゴムラテックスへ予め酸性で良好な界面活性能を有する界面活性剤を添加しておいてもよい。予め酸性で良好な界面活性能を有する界面活性剤を添加することにより、凝集肥大化時のラテックスの粒子径制御が容易となる。
このような酸性で良好な界面活性能を有する界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。またその添加量については特に制限はないが、凝集肥大化に用いられる酸性物質濃度および小粒子径ブタジエン系ゴムラテックスの種類、固形分濃度などによって適宜調整することができる。好ましい添加量は小粒子径ブタジエン系ゴムラテックス(固形分)100重量部当り0.3重量部以下である。また、凝集肥大化の後、ゴムラテックスに塩基性物質を添加し、ゴムラテックスのpHを7以上、好ましくは8〜11としておくことが、凝集肥大化ゴムラテックスの機械的安定性、即ち凝固物の発生防止の面で好ましい。上記塩基性物質としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどが挙げられ、それらは一種または二種以上用いることができる。また、塩基性物質は基本的に脱イオン水で希釈され、水溶液として添加されるものであり、その濃度には特に制限はないが、凝集肥大化ゴムラテックスの固形分濃度の極端な低下防止及び凝固物の発生や装置への付着防止のため、0.5〜20重量%であることが好ましく、5〜15重量%の範囲が特に好ましい。
【0012】
本発明におけるグラフト重合体(a−1)を構成する二層構造ゴム重合体は、重量平均粒子径250nm以上〜400nm以下のブタジエン系ゴム重合体と、架橋剤の存在下又は非存在下にアルキル基の炭素数が1〜16のアクリル酸エステル系単量体、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等の1種又は2種以上、更には必要に応じて他の共重合可能な単量体、例えばスチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレート等の1種または2種以上を重合してなる内層がブタジエン系ゴム重合体であり、外層がアクリル系ゴム重合体からなる二層構造ゴム重合体である。ここで、使用可能な架橋剤としては、例えばジビニルベンゼン、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジシクロペンタジエンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。このような二層構造ゴム重合体は、通常、乳化重合にて重合することができ、その際には公知の乳化剤、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム等のアニオン系乳化剤やポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のノニオン系乳化剤を使用できる。また重合開始剤としては、水溶性、油溶性開始剤の単独系あるいはレドックス系、例えば、過硫酸塩等の無機系開始剤やt−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物やアゾ化合物等を単独で用いるかあるいは亜硫酸塩、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート等と組み合わせてレドックス系開始剤として使用することができる。さらに必要に応じて重合連鎖移動剤、例えばt−ドデシルメルカプタン等を使用することができる。
このようにして得られた上記二層構造ゴム重合体は、内層が重量平均粒子径250nm以上〜400nm以下のブタジエン系ゴム重合体で、外層の平均厚さが70nm以上〜180nm以下のアクリル系ゴム重合体である二層構造ゴム重合体である。
内層のブタジエン系ゴム重合体の重量平均粒子径は、重量平均粒子径が250nm未満では耐衝撃性に劣り、重量平均粒子径が400nmを超えると光沢が劣り、好ましくない。
また外層のアクリル系ゴム重合体の平均厚さは、外層の平均厚さが70nm未満では耐衝撃性と耐候性に劣り、180nmを超えると顔料着色性に劣り好ましくない。
なお、外層のアクリル系ゴム重合体の平均厚さを制御する方法としては、例えば、アクリルゴム重合体を重合する際に、ブタジエン系ゴムとアクリル酸エステル系単量体の比率及び乳化剤の使用量の制御が挙げられる。ブタジエン系ゴム重合体に対してアクリル酸エステル系単量体の比率を上げ、乳化剤使用量を少なくすると外層のアクリル系ゴム重合体の平均厚さは厚くなり、ブタジエン系ゴム重合体に対してアクリル酸エステル系単量体の比率を下げ、乳化剤使用量を多くすると外層のアクリル系ゴム重合体の平均厚さは薄くなる。
【0013】
本発明におけるグラフト重合体(a−2)を構成するアクリル系ゴム重合体とは、架橋剤の存在下又は非存在下にアルキル基の炭素数が1〜16のアクリル酸エステル系単量体、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等の1種又は2種以上、更には必要に応じて他の共重合可能な単量体、例えばスチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレート等の1種または2種以上を重合してなるゴム重合体である。ここで、使用可能な架橋剤としては、例えばジビニルベンゼン、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジシクロペンタジエンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。このようなアクリル酸エステル系ゴム重合体は、通常、乳化重合にて重合することができ、その際には公知の乳化剤、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム等のアニオン系乳化剤やポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のノニオン系乳化剤を使用できる。また重合開始剤としては、水溶性、油溶性開始剤の単独系あるいはレドックス系、例えば、過硫酸塩等の無機系開始剤やt−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物やアゾ化合物等を単独で用いるかあるいは亜硫酸塩、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート等と組み合わせてレドックス系開始剤として使用することができる。さらに必要に応じて重合連鎖移動剤、例えばt−ドデシルメルカプタン等を使用することができる。
上記アクリル系ゴム重合体の重量平均粒子径は70nm以上〜180nm以下である。重量平均粒子径が70nm未満では耐衝撃性と熱安定性に劣り、180nmを超えると顔料着色性に劣り好ましくない。
なお、グラフト重合体(a−2)を構成するアクリル系ゴム重合体は、上記の重合により製造することができるが、〔0012〕で述べた二層構造ゴム重合体の重合時において、二層構造ゴム重合体と共に重合することも可能である。具体的には、二層構造ゴム重合体の重合の際に、アクリル酸エステル系単量体を2段階にて分けて添加し、かつ2段階目にアクリル酸エステル系単量体を添加するに際し、新たな粒子を生成させるべく乳化剤と共に添加することにより、所望の重量平均粒子径を有するアクリル系ゴム重合体を重合することができる。
【0014】
本発明におけるグラフト重合体(A)〔(a−1)および(a−2)〕を構成する芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ジメチルスチレン等が挙げられ、一種又は二種以上用いることができる。これらのうち特にスチレンが好ましい。またシアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、一種又は二種以上用いることができる。これらのうち特にアクリロニトリルが好ましい。さらに本発明においてはその効果を妨げない範囲内で上記芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体と共に、共重合可能な他のビニル系単量体、例えば(メタ)アクリル酸エステル系単量体(メチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等)、不飽和カルボン酸またはその無水物(アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸無水物等)、マレイミド系単量体(マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等)、アミド系単量体(アクリルアミド、メタクリルアミド等)などが例示され、それぞれ一種又は二種以上用いることができる。
上記のグラフト重合体(A)〔(a−1)および(a−2)〕を構成する各成分の組成割合については特に制限はないが、好ましくはそれぞれゴム状重合体5〜70重量%および芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体を主成分とする単量体30〜95重量%である。
また、グラフト重合体(A)〔(a−1)および(a−2)〕のグラフト率については特に制限はないが、耐衝撃性等の物性バランス面を考慮すると、20〜100%であることが好ましい。
本発明におけるグラフト重合体(A)〔(a−1)および(a−2)〕の重合方法に制限は無く、公知の乳化重合法、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法あるいはこれらの重合法を任意に組み合わせた方法を採用することができるが、特に乳化重合が好ましい。
なお、グラフト重合体(A)を構成するグラフト重合体(a−1)およびグラフト重合体(a−2)については、それぞれのゴム重合体の存在下に芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体を主成分とする単量体をグラフト重合した後、所定の割合で混合することによりグラフト重合体(A)として使用することができるが、それぞれのゴム重合体である二層構造ゴム重合体およびアクリル系ゴム重合体を所定の割合で混合した混合ゴム重合体の存在下に芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体を主成分とする単量体をグラフト重合してなるグラフト重合体をグラフト重合体(A)として使用することも可能である。
【0015】
本発明のグラフト重合体(A)におけるグラフト重合体(a−1)とグラフト重合体(a−2)の使用割合は、グラフト重合体(a−1)1〜40重量%およびグラフト重合体(a−2)60〜99重量%であり、好ましくは、グラフト重合体(a−1)3〜15重量%、グラフト重合体(a−2)85〜97重量%である。
グラフト重合体(a−1)が1重量%未満(グラフト重合体(a−2)が99重量%を超える)では耐衝撃性に劣り、40重量%(グラフト重合体(a−2)が60重量%未満)を超えると光沢、耐候性に劣り、好ましくない。
【0016】
本発明における熱可塑性樹脂(B)は、芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体及びその他のビニル単量体からなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体を重合してなる熱可塑性樹脂(B)である。
熱可塑性樹脂(B)を構成する芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられ、特にスチレンが好ましい。またシアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、特にアクリロニトリルが好ましい。さらに(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、メチルメタクリレ−ト、2-エチルヘキシルメタクリレ−ト、メチルアクリレ−ト、エチルアクリレ−ト、ブチルアクリレ−ト等が挙げられる。特にメチルメタクリレ−トが好ましい。
また、本発明においては、その効果を妨げない範囲内で上記芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体ならびに(メタ)アクリル酸エステル単量体と共に、共重合可能な他のビニル系単量体を用いることも可能である。このような他のビニル系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸無水物などの不飽和カルボン酸またはその無水物、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体、アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド系単量体等々が例示され、一種又は二種以上用いることができる。また、これら共重合可能な他の単量体については、熱可塑性樹脂(B)中に0〜40重量%の範囲で使用可能である。
なお、熱可塑性樹脂(B)の固有粘度(0.2g/100cc N,Nジメチルホルムアミド溶液として25℃で測定)には特に制限はないが、0.2〜1.2であることが好ましい。
【0017】
本発明における熱可塑性樹脂(B)の重合方法に制限はなく、公知の乳化重合法、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法あるいはこれらの重合法を任意に組み合わせた方法を採用することができる。
【0018】
本発明における熱可塑性樹脂組成物は、上述のグラフト共重合体(A)10〜100重量部と、熱可塑性樹脂(B)0〜90重量部(但し、(A)と(B)の合計が100重量部)からなるものである。グラフト重合体(A)成分が10重量%未満では耐衝撃性が劣り、好ましくない。
【0019】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて各種添加剤、例えば公知の酸化防止剤、光安定剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、着色剤、難燃剤、艶消し剤、充填剤等を適宜添加することができる。また、混合に際しては、押出し機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー等の公知の混練装置を用いることができる。
【0020】
このようにして得られた熱可塑性樹脂組成物は単独で使用できることは勿論であるが、必要に応じて他の熱可塑性樹脂と混合することにより使用することもできる。
このような他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル-メタクリル酸メチル共重合体、ポリメタクリル酸メチル、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-マレイミド共重合体、アクリロニトリル-スチレン-マレイミド共重合体、ゴム強化ポリスチレン樹脂(HIPS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル-エチレン・プロピレン-スチレン樹脂(AES樹脂)、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン樹脂(MBS樹脂)、などが挙げられる。
【0021】
さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、公知の成形方法、例えば射出成形、ブロー成形、プレス成形等により各種成形部品として成形することが可能である。
【0022】
実施例の記述に先立ち、本特許で規定したグラフト重合体(a−1)の内層ブタジエン系ゴム重合体の重量平均粒子径測定方法および外層のアクリル系ゴム重合体の平均厚さ測定法、グラフト重合体(a−2)のアクリル系ゴム重合体の重量平均粒子径測定方法及びグラフト重合体(a−1)とグラフト重合体(a−2)の重量比の測定方法を記述する。
【0023】
〔グラフト重合体(a−1)のブタジエン系ゴム重合体の重量平均粒子径とアクリル系ゴム重合体の平均厚さの測定法〕
ISO試験方法294に準拠して成形した該樹脂組成物の成形片からクライオミクロトームを用いて−60℃で超薄切片を切り出す。その後、得られた四酸化オスミウム(OsO4)で染色した後、更に四酸化ルテニウム(RuO4)で染色し、透過型電子顕微鏡を用いてグラフト重合体の分散粒子を観察、写真撮影した。
四酸化オスミウムではブタジエン系ゴム重合体が染色され、さらに、四酸化ルテニウムでブタジエン系ゴム重合体、アクリル系ゴム重合体及びグラフト重合体層が染め分けられるため、二層構造ゴム重合体の観察が可能となる。
ブタジエン系ゴム重合体の重量平均粒子径とアクリル系ゴム重合体の平均厚さの計測は、画像解析処理(装置名:旭化成(株)製 IP−1000PC)を用いて以下の手順で行った。個々のゴム粒子について、表面のアクリル系ゴム重合体層を含む面積の計測からその円相当径(半径)を求め、さらに表面のアクリル系ゴム重合体層を除くブタジエン系ゴム重合体についても同様に円相当径(半径)を求め、ブタジエン系ゴム重合体の重量平均粒子径とアクリル系ゴム重合体の平均厚さを算出した。本発明では二層構造ゴム重合体粒子15個以上について測定した平均値である。
【0024】
〔グラフト重合体(a−2)のアクリル系ゴム重合体の重量平均粒子径の測定法〕
ISO試験方法294に準拠して成形した該樹脂組成物の成形片からクライオミクロトームを用いて−60℃で超薄切片を切り出す。その後、得られた四酸化オスミウム(OsO4)で染色した後、更に四酸化ルテニウム(RuO4)で染色し、透過型電子顕微鏡を用いてグラフト重合体の分散粒子を観察、写真撮影した。
四酸化オスミウムではブタジエン系ゴム重合体が染色され、さらに、四酸化ルテニウムでブタジエン系ゴム重合体、アクリル系ゴム重合体及びグラフト重合体層が染め分けられるため、二層構造のゴム重合体とアクリル系ゴム重合体の判別が可能となる。
アクリル系ゴム重合体の重量平均粒子径の計測は、画像解析処理(装置名:旭化成(株)製 IP−1000PC)を用いて以下の手順で行った。個々のゴム粒子の面積を計測し、その円相当径(半径)を求め、アクリル系ゴム重合体の重量平均粒子径を算出した。
【0025】
〔グラフト重合体(a−1)とグラフト重合体(a−2)の重量比の測定法〕
ISO試験方法294に準拠して成形した該樹脂組成物の成形片からクライオミクロトームを用いて−60℃で超薄切片を切り出す。その後、得られた四酸化オスミウム(OsO4)で染色した後、更に四酸化ルテニウム(RuO4)で染色し、透過型電子顕微鏡を用いてグラフト重合体の分散粒子を観察、写真撮影した。
四酸化オスミウムではブタジエン系ゴム重合体が染色され、さらに、四酸化ルテニウムでブタジエン系ゴム重合体、アクリル系ゴム重合体及びグラフト重合体層が染め分けられるため、二層構造のゴム重合体とアクリル系ゴム重合体の判別が可能となる。
個々の二層構造のゴム重合体とアクリル系ゴム重合体の面積を計測し、重量比を算出した。
【0026】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。なお、実施例中にて示す部および%は重量に基づくものである。
【0027】
〔参考例−1〕 ブタジエン系ゴム重合体ラテックス(I)の製造
10リットルの耐圧容器の内部を窒素で置換後、1,3−ブタジエン100重量部、n−ドデシルメルカプタン0.5重量部、過硫酸カリウム0.3重量部、不均化ロジン酸ナトリウム0.8重量部、水酸化ナトリウム0.1重量部および脱イオン水130重量部を仕込み、攪拌しつつ70℃で20時間反応させた。その後、不均化ロジン酸ナトリウム0.6重量部、水酸化ナトリウム0.1重量部および脱イオン水5重量部を添加。さらに温度を70℃に維持しながら10時間経過後もう一度不均化ロジン酸ナトリウム0.6重量部、水酸化ナトリウム0.1重量部および脱イオン水5重量部を添加して5時間攪拌を継続して反応を終了した。その後、減圧にして残存1,3−ブタジエンを除去してブタジエン系ゴム重合体ラテックス(I)を得た。
得られたブタジエン系ゴム重合体ラテックス(I)を、四酸化オスミウム(OsO4)で染色し、乾燥後に透過型電子顕微鏡で写真撮影した。画像解析処理(装置名:旭化成(株)製 IP−1000PC)を用いて個々のゴム粒子の面積を計測し、その円相当径(半径)を求め、ブタジエン系ゴム重合体ラテックス(I)の重量平均粒子径を算出した結果、重量平均粒子径は330nmであった。
【0028】
〔参考例−2〕
10リットルの耐圧容器の内部を窒素で置換後に、1,3−ブタジエン100重量部、n−ドデシルメルカプタン0.5重量部、過硫酸カリウム0.3重量部、不均化ロジン酸ナトリウム1.8重量部、水酸化ナトリウム0.1重量部、脱イオン水145重量部を仕込み、攪拌しつつ70℃で8時間反応させた。その後、不均化ロジン酸ナトリウム0.2重量部、水酸化ナトリウム0.1重量部および脱イオン水5重量部を添加。さらに温度を70℃に維持しながら6時間攪拌を継続して反応を終了した。その後、減圧にして残存1,3−ブタジエンを除去してブタジエン系ゴム重合体ラテックス(II)を得た。
参考例−1と同様の方法で、ブタジエン系ゴム重合体ラテックス(II)の重量平均粒子径を算出した結果、重量平均粒子径は120nmであった。
【0029】
〔参考例−3〕
10リットルの耐圧容器に、参考例−2で得られたブタジエン系ゴムラテックス(II)270重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.1重量部を添加して10分間攪拌混合した後、5%リン酸水溶液20重量部を10分間にわたり添加した。次いで10%水酸化カリウム水溶液10重量部を添加し、凝集肥大化したブタジエン系ゴムラテックス(III)を得た。
参考例−1と同様の方法で、ブタジエン系ゴム重合体ラテックス(III)の重量平均粒子径を算出した結果、重量平均粒子径は330nmであった。
【0030】
〔参考例−4〕
10リットルの耐圧容器に、参考例−2で得られたブタジエン系ゴムラテックス(II)270重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.03重量部を添加して10分間攪拌混合した後、5%リン酸水溶液20重量部を30分間にわたり添加した。次いで10%水酸化カリウム水溶液10重量部を添加し、凝集肥大化したブタジエン系ゴムラテックス(IV)を得た。
参考例-1と同様の方法で、ブタジエン系ゴム重合体ラテックス(IV)の重量平均粒子径を算出した結果、重量平均粒子径は460nmであった。
【0031】
[(アクリル酸エステル系ゴム重合体ラテックス−(1)〜(4))の製造]
窒素置換したガラスリアクターに、脱イオン水 200重量部、ブタジエン系ゴム重合体ラテックス(I)を固形分換算で5重量部、アクリル酸ブチル5重量部、メタクリル酸アリル 0.05重量部、オレイン酸カリウム0.15重量部、過硫酸カリウム0.3重量部を仕込み、攪拌しつつ65℃で1時間反応させた。その後、アクリル酸ブチル90重量部、メタクリル酸アリル0.90重量部の混合液および脱イオン水20重量にオレイン酸カリウム1.0重量部を溶解した乳化剤水溶液を4時間に亘り連続添加した。その後、重合を65℃で3時間継続し、重合を終了し、アクリル酸エステル系ゴム重合体ラテックス−(1)を得た。
また、ブタジエン系ゴム重合体ラテックスを表1に示すように変更した以外は、同様に製造し、アクリル酸エステル系ゴム重合体ラテックス−(2)〜(4)を得た。
【0032】
窒素置換したガラスリアクターに、脱イオン水 200重量部、ブタジエン系ゴム重合体ラテックス(III)を固形分換算で5重量部、アクリル酸ブチル15重量部、メタクリル酸アリル
0.15重量部、過硫酸カリウム0.3重量部を仕込み、攪拌しつつ65℃で1.5時間反応させた。その後、アクリル酸ブチル80重量部、メタクリル酸アリル
0.80重量部の混合液および脱イオン水20重量にオレイン酸カリウム1.2重量部を溶解した乳化剤水溶液を3.5時間に亘り連続添加した。その後、重合を65℃で3時間継続し、重合を終了し、アクリル酸エステル系ゴム重合体ラテックス−(5)
【0033】
窒素置換したガラスリアクターに、脱イオン水 200重量部、ブタジエン系ゴム重合体ラテックス(III)を固形分換算で5重量部、オレイン酸カリウム0.25重量部、過硫酸カリウム0.3重量部を仕込み、攪拌しつつ65℃まで昇温した。その後、アクリル酸ブチル95重量部、メタクリル酸アリル
0.95重量部の混合液および脱イオン水20重量にオレイン酸カリウム0.9重量部を溶解した乳化剤水溶液を4.5時間に亘り連続添加した。その後、重合を65℃で3時間継続し、重合を終了し、アクリル酸エステル系ゴム重合体ラテックス−(6)
【0034】
窒素置換したガラスリアクターに、脱イオン水 200重量部、ブタジエン系ゴム重合体ラテックス(III)を固形分換算で5重量部、アクリル酸ブチル5重量部、メタクリル酸アリル 0.05重量部、オレイン酸カリウム0.15重量部、過硫酸カリウム0.3重量部を仕込み、攪拌しつつ65℃で1時間反応させた。その後、アクリル酸ブチル90重量部、メタクリル酸アリル
0.90重量部の混合液および脱イオン水20重量にオレイン酸カリウム0.50重量部を溶解した乳化剤水溶液を4時間に亘り連続添加した。その後、重合を65℃で3時間継続し、重合を終了し、アクリル酸エステル系ゴム重合体ラテックス−(7)を得た。
【0035】
窒素置換したガラスリアクターに、脱イオン水 200重量部、ブタジエン系ゴム重合体ラテックス(III)を固形分換算で5重量部、アクリル酸ブチル5重量部、メタクリル酸アリル 0.05重量部、オレイン酸カリウム0.15重量部、過硫酸カリウム0.3重量部を仕込み、攪拌しつつ65℃で1時間反応させた。その後、アクリル酸ブチル90重量部、メタクリル酸アリル
0.90重量部の混合液および脱イオン水20重量にオレイン酸カリウム3.0重量部を溶解した乳化剤水溶液を4時間に亘り連続添加した。その後、重合を65℃で3時間継続し、重合を終了し、アクリル酸エステル系ゴム重合体ラテックス−(8)を得た。
【0036】
窒素置換したガラスリアクターに、脱イオン水 200重量部、ブタジエン系ゴム重合体ラテックス(III)を固形分換算で50重量部、アクリル酸ブチル25重量部、メタクリル酸アリル
0.25重量部過硫酸カリウム0.3重量部を仕込み、攪拌しつつ65℃で2時間反応させた。その後、アクリル酸ブチル25重量部、メタクリル酸アリル
0.25重量部の混合液および脱イオン水20重量にオレイン酸カリウム0.50重量部を溶解した乳化剤水溶液を2.5時間に亘り連続添加した。その後、重合を65℃で2時間継続し、重合を終了し、アクリル酸エステル系ゴム重合体ラテックス−(9)を得た。
【0037】
窒素置換したガラスリアクターに、脱イオン水 200重量部、アクリル酸ブチル10重量部、メタクリル酸アリル 0.10重量部、オレイン酸カリウム0.15重量部、過硫酸カリウム0.3重量部を仕込み、攪拌しつつ65℃で1時間反応させた。その後、アクリル酸ブチル90重量部、メタクリル酸アリル
0.90重量部の混合液および脱イオン水20重量にオレイン酸カリウム1.50重量部を溶解した乳化剤水溶液を4時間に亘り連続添加した。その後、重合を65℃で3時間継続し、重合を終了し、アクリル酸エステル系ゴム重合体ラテックス−(10)を得た。
【0038】
〔グラフト重合体(A−1〜10)の製造〕
窒素置換したガラスリアクターに、アクリル酸エステル系ゴム重合体ラテックス−(1)を固形分換算で50重量部と脱イオン水
130重量部、デキストリン0.1重量部、無水ピロリン酸ナトリウム0.1重量部および硫酸第1鉄0.005重量部を溶解した水溶液を添加した後、70℃に昇温した。その後、アクリロニトリル15重量部、スチレン35重量部、クメンハイドロパーオキサイド0.3重量部の混合液および脱イオン水20重量部にオレイン酸カリウム1.0重量部を溶解した乳化剤水溶液を4時間に亘り連続添加した。その後、重合を3時間継続し、重合を終了した。その後、塩析・脱水・乾燥し、グラフト重合体(A−1)を得た。
また、アクリル酸エステル系ゴム重合体ラテックスを表1に示すように変更した以外は、同様に製造し、グラフト重合体A−2〜8を得た。
【0039】
共重合体(B)
SAN樹脂(日本エイアンドエル(株)製、ライタック−A 230PCU)
【0040】
[実施例1〜3、比較例1〜8]
表2に示す組成割合にてグラフト重合体(A)および共重合体(B)を混合した後、40mm二軸押出機を用いて240℃にて溶融混練してペレット化した。得られたペレットよりISO試験方法294に準拠して各種試験片を成形して各種試験片を作製し、物性を測定した。なお、それぞれの評価方法を以下に示す。
【0041】
(1)耐衝撃性:ISO179に準拠し、4mm厚みで、ノッチ付きシャルピー衝撃値を測定した。単位:kJ/m2
(2)流動性:ISO1133に準拠してメルトボリュームフローレイトを測定した。単位;cm3/10分
【0042】
表2に示す組成割合のグラフト共重合体(A)および共重合体(B)合計100重量部に対して、carbon#45B(三菱化学(株))を1.0部混合し、40mm二軸押出機を用いて250℃にて溶融混練して着色ペレットを得た。得られた着色ペレットより、250℃に設定した射出成形機にて成形品(150mm×120mm×3mm)を成形した。
(3)光沢:ASTM D−523に準拠して表面光沢を測定した。単位;%
(4)漆黒度;JIS Z8729に準拠した色相測定により評価した。
(5)ブロンズ現象:屋外、直射日光下で、正午にプロンズ現象を目視にて判定した。ブロンズ現象なし○、ブロンズ現象ややあり△、ブロンズ現象が顕著×とした。
【0043】
(6)熱安定性:表2に示す組成割合にてグラフト重合体(A)および共重合体(B)を混合した後、40mm二軸押出機を用いて240℃にて溶融混練してペレット化した。射出成型機にて150mm×120mm×3mmの平板を成形し、成型品表面のラバーストリーク発生状態を目視にて判定した。成型機シリンダの設定温度は280℃とし、成型サイクル60秒/1ショットとし、20ショット目のサンプルを目視確認した。ラバーストリーク発生なし○、ラバーストリーク発生×とした。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0046】
以上のとおり、本発明によれば、ブロンズ現象を解決し、耐候性と顔料着色性に優れた熱可塑性樹脂組成物である。更に、表面外観と耐衝撃性の良好なバランスに優れた熱可塑性樹脂組成物が得られるという効果があり、自動車等の車両用内外装部品、各種の家電製品やOA機器のハウジング、その他雑貨分野等、幅広い分野で好適に使用する事ができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層が重量平均粒子径250nm以上〜400nm以下のブタジエン系ゴム重合体で、外層の平均厚さが70nm以上〜180nm以下のアクリル系ゴム重合体である二層構造ゴム重合体に、芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体を主成分とする単量体をグラフト重合したグラフト重合体(a−1)1〜40重量%、
重量平均粒子径が70nm以上〜180nm以下であるアクリル系ゴム重合体に、芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体を主成分とする単量体をグラフト重合したグラフト重合体(a−2)60〜99重量%からなるグラフト共重合体(A)10〜100重量部と、芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体及びその他のビニル単量体からなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体を重合してなる熱可塑性樹脂(B)0〜90重量部(但し、(A)と(B)の合計が100重量部)からなる熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
ブタジエン系ゴム重合体が、重量平均粒子径50nm以上〜200nm以下の小粒子径ブタジエン系ゴム重合体ラテックスを重量平均粒子径250nm以上〜400nm以下に凝集肥大化させたブタジエン系ゴム重合体ラテックスを使用してなる請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
ブタジエン系ゴム重合体が、重量平均粒子径50nm以上〜200nm以下の小粒子径ブタジエン系ゴム重合体ラテックスに酸性物質を加え、ラテックスのpHを7より低くしてラテックス粒子を重量平均粒子径250nm以上〜400nm以下に凝集肥大化させた後、塩基性物質を加えラテックスのpHを7より高くして安定化させたブタジエン系ゴム重合体ラテックスを使用してなる請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。

【公開番号】特開2009−242595(P2009−242595A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90907(P2008−90907)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(399034220)日本エイアンドエル株式会社 (186)
【Fターム(参考)】