説明

熱可塑性樹脂組成物および成形品

【課題】制電性、制電性の持続性、透明性および難燃性に優れ、しかも成形品からのナトリウム及び/又はカリウムイオンの溶出量が少ない熱可塑性樹脂体組成物を提供する。
【解決手段】以下のブロック共重合体(A)1〜30質量%および塩化ビニル系樹脂(B)70〜99質量%(ただし、ブロック共重合体(A)と塩化ビニル系樹脂(B)の合計は100質量%)を含有する熱可塑性樹脂組成物。
ブロック共重合体(A):ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル及びポリウレタンから成る群より選ばれた少なくとも1種の重合体ブロック(A−1)と親水基を有する重合体ブロック(A−2)を含有するブロック共重合体

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物および成形品に関し、詳しくは、制電性、制電性の持続性、透明性および難燃性に優れ、しかも成形品からのナトリウムイオン及び/又はカリウムイオンの溶出量が少ない熱可塑性樹脂体組成物およびその成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル系樹脂は、耐薬品性、耐熱性、流動性、透明性および難燃性などに優れるため、電気・電子分野、OA・家電分野、車両分野、建材分野などに広く使用されている。しかしながら、塩化ビニル系樹脂は、帯電し易いため、例えは静電気障害が問題となり、液晶を使用した表示装置、半導体周辺、プラズマディスプレイ、これら半導体デバイスを取り扱うクリーンルーム内で使用される各種パーツ、シート、フィルム等に使用することが困難である。
【0003】
ところで、界面活性剤、カーボンブラック、金属粉、導電性繊維などを配合した樹脂組成物が提案されている(特許文献1及び2)。しかしなから、界面活性剤の場合、制電性が発現し難く、また、制電性の持続性にも問題がある。また、樹脂にカーボンブラック、金属粉、導電性繊維などを配合した場合は、樹脂の成形性や衝撃強度などの物性低下、これら導電物質の脱落、スパークの発生による部品などの損傷が起こる可能性がある。界面活性剤を樹脂表面に塗布する方法も提案されている(特許文献3)。しかしながら、斯かる方法は、制電性は向上するものの、制電性の持続性、制電性の湿度依存などの問題があり、限られた範囲にしか適用できない。また、制電性の持続性を有する方法として、特定の重合体をポリオレフィン系樹脂に配合する方法が提案されている(特許文献4)。しかしながら、この方法によっても制電性は充分に発現されない。
【0004】
【特許文献1】特開昭59−49967号公報
【特許文献2】特開昭59−18734号公報
【特許文献3】特開昭56−10539号公報
【特許文献4】特開2001―278985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、制電性、制電性の持続性、透明性および難燃性に優れ、しかも成形品からのナトリウムイオン及び/又はカリウムイオンの溶出量が少ない熱可塑性樹脂体組成物およびその成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明の第1の要旨は、以下のブロック共重合体(A)1〜30質量部および塩化ビニル系樹脂(B)70〜99質量%(ただし、ブロック共重合体(A)と塩化ビニル系樹脂(B)の合計は100質量%)を含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物に存し、第2の要旨は、第1の要旨に係る可塑性樹脂組成物から成ることを特徴とする成形品に存する。
【0007】
ブロック共重合体(A):ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル及びポリウレタンから成る群より選ばれた少なくとも1種の重合体ブロック(A−1)と親水基を有する重合体ブロック(A−2)を含有するブロック共重合体
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、制電性、制電性の持続性、透明性および難燃性に優れ、成形品からのナトリウムイオン及び/又はカリウムイオンの溶出量が少ない熱可塑性樹脂組成物が提供される。斯かる熱可塑性重合体組成物から成る成形品は、溶出イオン量が少ないことから、車両分野、電気・電子分野、OA・家電分野、サニタリー分野などの各種部品として適用でき、特に、溶出イオン量が少ないことが望まれる半導体関係分野の機器、容器などに好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書において、「(共)重合」とは、単独重合及び共重合を意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味する。
【0010】
〔ブロック共重合体(A)〕
本発明で使用するブロック共重合体(A)は、特定の重合体ブロック(A−1)と親水基を有する重合体ブロック(A−2)を含有する。なお、ブロック共重合体(A)は、ジブロック構造でもよいし、トリブロック以上のマルチブロック構造でもよい。
【0011】
〔重合体ブロック(A−1)〕
重合体ブロック(A−1)は、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル及びポリウレタンから成る群より選ばれた少なくとも1種の重合体ブロックである。
【0012】
〔ポリオレフィン〕
重合体ブロック(A−1)のポリオレフィンとしては、炭素数2〜20のオレフィン類の(共)重合体などが挙げられる。ここで使用されるオレフィン類としては、例えば、エチレン;プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、3−メチルヘキセン−1等のα−オレフィン類:ノルボルネン等の環状オレフィン等が挙げられる。これらは2種以上を組み合わせて使用することも出来る。これらの中では、エチレン、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、ノルボルネンが好ましい。また、他の単量体として、4−メチル−1、4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、1,9−デカジエン等の非共役ジエンを使用することも出来る。オレフィン重合体ブロックのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の数平均分子量は、通常800〜20,000、好ましくは1,000〜10,000、更に好ましくは1,200〜6,000である。
【0013】
上記のポリオレフィンは、例えば、重合法、熱減成法により得ることが出来る。重合法の場合、触媒の存在下でオレフィンを(共)重合させるが、触媒としては、例えば、ラジカル触媒、金属酸化物触媒、チーグラー触媒、チーグラー・ナッタ触媒、メタロセン触媒などが使用される。一方、高分子量のポリオレフィンの熱減成法による低分子量ポリオレフィンは、例えば、特開平3−62804号公報の方法により容易に得ることが出来る。ブロック共重合体(A−1)を得る場合、ポリオレフィンの分子末端を変性する必要があるが、この分子末端の変性のし易さから、熱減成法で得られるポリオレフィンが好適である。
【0014】
上記の熱減成法で得られるポリオレフィンは、通常、分子末端が変性可能なポリオレフィン、片末端が変性可能なポリオレフィン及び変性不可能なポリオレフィンの混合物であるが、両末端が変性可能なポリオレフィンが主成分であることが好ましい。
【0015】
上記の熱減成法で得られるポリオレフィン中の二重結合量は、制電性の観点から、炭素数1,000当たり、通常1〜40個、好ましくは2〜30個、更に好ましくは4〜20個である。1分子当たりの二重結合の平均数は、繰り返し構造の形成性および制電性の観点から、通常1.1〜5、好ましくは1.3〜3、更に好ましくは1.8〜2.2である。なお、熱減成法においては、数平均分子量(Mn)が800〜6,000の範囲で、1分子当たりの平均末端二重結合数が、1.5〜2個の低分子量ポリオレフィンが容易に得られる〔例えば、村田勝英、牧野忠彦、日本化学会誌、192頁(1975)参照〕。
【0016】
上記のポリオレフィンに官能基を付与する方法としては、熱減成法により得られる分子末端に炭素−炭素二重結合を有するポリオレフィンに官能基を有する炭素−炭素不飽和化合物を付加させる方法が好ましい。
【0017】
〔ポリアミド〕
重合体ブロック(A−1)のポリアミドとしては、(a)ジアミン成分とジカルボン酸成分から導かれるポリアミド、(b)ラクタム類の開環重合により導かれるポリアミド、(c)アミノカルボン酸から導かれるポリアミド、これらの共重合ポリアミド、及びこれらの混合ポリアミドの何れであってもよい。
【0018】
上記のジアミン成分としては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、2,3,4もしくは4,4,4−トリメチレンヘキサメチレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロへキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロへキサン、ビス(p−アミノヘキシル)メタン、フェニルジアミン、m−キシレンジアミン、p−キシレンジアミン等の脂肪族、脂環族または芳香族のジアミン等が挙げられ、上記のジカルボン酸成分としては、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロへキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの脂肪族、脂環族または芳香族のジカルボン酸などが挙げられる。上記のラクタム類としては、カプロラクタム、ラウリルラクタム等が挙げられる。また、上記のアミノカルボン酸としては、ω−アミノカプロン酸、ω―アミノウンデカン酸、1,2−アミノドデカン酸などが挙げられる。
【0019】
〔ポリエステル〕
重合体ブロック(A−1)のポリエステルとしては、(1)炭素数4〜20のジカルボン酸成分及び/又はそのエステル形成誘導体とジオール成分から得られる重合体、(2)2官能オキシカルボン酸化合物から得られる重合体、(3)カプロラクトン化合物から得られる重合体などが挙げられるが、上記(1)の重合体の製造の際に共重合成分として2官能オキシカルボン酸化合物を使用して得られる共重合体が好ましい。ここで、炭素数とは、カルボキシル基の炭素数およびカルボキシル基の炭素数に直結する鎖や環を構成する部分の炭素の総数をいう。
【0020】
上記の炭素数4〜20のジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、α,ω―ドデカンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸、オクタデセニルジカルボン酸などの炭素数4〜20の脂肪族ジカルボン酸;1,4−シクロへキサンジカルボン酸などの炭素数8〜20の脂環族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸などの炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸;5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸などのスルホン酸基が芳香環に結合した炭素数8〜12の置換芳香族ジカルボン酸;上記のジカルボン酸のメチルエステル等のエステル形成誘導体などがある。これらは2種以上を組み合わせて使用することも出来る。これらの中では、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、コハク酸、これらのエステル形成誘導体から成る群より選ばれた少なくとも1種が好ましい。
【0021】
上記のジオール成分は下記一般式(1)で表わされる。
【0022】
【化1】

【0023】
式(1)中、Rは、2価の脂肪族炭化水素基を表わす。Rの炭素数は、通常2〜11、好ましくは2〜6である。Rはシクロアルキレン基を包含し、また、分岐鎖を含有してもよい。Rは、好ましくは「−(CH)n―」であり、ここで、nは、通常2〜11の整数、好ましくは2〜6の整数である。
【0024】
上記のジオールの具体例としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロへキサンジオール、1,6−シクロへキサンジメタノール等が挙げられ、特にエチレングリコール又は1,4−ブタンジオールが好ましい。また、カプロラクトン等のラクトン化合物の他、乳酸、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸などの2官能脂肪族オキシカルボン酸化合物などを適宜組み合わせて使用することが出来る。
【0025】
重合体ブロック(A−1)のポリエステルとしては、前記のジカルボン酸およびそのエステル形成誘導体とジオールから成るポリエステル(a)、前記のジカルボン酸およびそのエステル形成誘導体と前記のジオール及び前記2官能オキシカルボン酸から成るポリエステル(b)が好ましい。
【0026】
〔ポリウレタン〕
重合体ブロック(A−1)のポリウレタン(TPU)としては、一般に、ジイソシアネートと鎖延長剤から成るもが挙げられる。そして、ジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、トリジンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、水素添加XDI、トリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネートメチルオクタン、リジンエステルトリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等が挙げられる。これらの中では、4,4'―ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)又はジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI;HMDI)が好ましい。
【0027】
上記の鎖延長剤としては、低分子ポリオールが使用され、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロへキサンジメタノール、グリセリン等の脂肪族ポリオール、1,4−ジメチロールベンゼン、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物などの芳香族グリコール等が挙げられる。
【0028】
重合体ブロック(A−1)の成分であるポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル及びポリウレタンは、2種以上を組み合わせて使用することも出来る。重合体ブロック(A−1)としては、透明性および制電性の観点からもポリオレフィン又はポリウレタンが好ましく、特にポリオレフィンが好ましい。
【0029】
重合体ブロック(A−1)と後述する重合体ブロック(A−2)とは実質的に結合されている。斯かる結合は、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、イミド結合などから成る群より選ばれた少なくとも1種の結合である。すなわち、本発明で使用するブロック共重合体(A)は、重合体ブロック(A−1)とブロック(A−2)とが上記の結合を介して繰り返し交互に結合した構造を有する。このために、重合体ブロック(A−1)の分子末端は、重合体ブロック(A−2)の分子両末端官能基と反応性を有する官能基で変性されている必要がある。これらの官能基としては、カルボン酸基、水酸基、アミノ基、酸無水物基、オキサゾリン基、エポキシ基などがある。
【0030】
〔親水基を有する重合体ブロック(A−2)〕
親水基を有する重合体ブロック(A−2)の親水性ポリマーとしては、ポリエーテル、ポリエーテル含有親水性ポリマー、アニオン性ポリマー等が挙げられる。
【0031】
上記のポリエーテルとしては、ポリエーテルジオール、ポリエーテルジアミン、これらの変性物などが挙げられる。ポリエーテル含有親水性ポリマーとしては、ポリエーテルジオールのセグメントを有するポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルジオールのセグメントを有するポリエーテルアミドイミド、ポリエーテルジオールのセグメントを有するポリエーテルエステル、ポリエーテルジアミンのセグメントを有するポリエーテルアミド、ポリエーテルジオール又はポリエーテルジアミンのセグメントを有するポリエーテルウレタン等が挙げられる。アニオン性ポリマーとしては、スルホニル基を有するジカルボン酸と上記のポリエーテルとを必須成分単位とし、かつ一分子内に2〜80個(好ましくは3〜60個)のスルホニル基を有するアニオン性ポリマーが挙がられる。これらは、直鎖状であってもよいし、また分岐状であってもよい。重合体ブロック(A−2)としてはポリエーテルが好ましい。
【0032】
ポリエーテルのうちポリエーテルジオールとしては、以下の一般式(I)及び(II)で表されるもの等が挙げられる。
【0033】
【化2】

【0034】
一般式(I)中、E1は二価の水酸基含有化合物から水酸基を除いた残基、A1は炭素数2〜4のアルキレン基、nおよびn'は二価の水酸基含有化合物の水酸基1個当たりのアルキレンオキサイドの付加数を表す。n個の(OA1)とn'個の(A1O)とは同一であっても異なっていてもよく、また、これらが2種以上のオキシアルキレン基で構成される場合の結合形式はブロックもしくはランダムまたはこれらの組み合わせの何れでもよい。nおよびn'は、好ましくは1〜300、より好ましくは2〜250、さらに好ましくは10〜100の整数である。また、nとn'は、同一であっても異なっていてもよい。
【0035】
上記の二価の水酸基含有化合物としては、一分子中にアルコール性またはフェノール性の水酸基を2個含む化合物、即ち、ジヒドロキシ化合物が挙げられ、具体的には、二価アルコール(例えば炭素数2〜12の脂肪族、脂環式、あるいは芳香族二価アルコール)、炭素数6〜18の二価フェノールおよび第3級アミノ基含有ジオール等が挙げられる。脂肪族二価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルキレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,12−ドデカンジオール等が挙げられる。脂環式二価アルコールとしては、例えば、1,2−クロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙がられ、芳香族二価アルコールとしては、例えば、キシレンジオール等が挙げられる。二価フェノールとしては、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、ウルシオール等の単環二価フェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4、4'−ジヒドロキシジフェニル−2,2−ブタン、ジヒドロキシビフェニル、ジヒドロキシジフェニルエーテル等のビスフェノール、およびジヒドロキシナフタレン、ビナフトール等の縮合多環二価フェノール等が挙げられる。
【0036】
一般式(II)中、E2は、一般式(I)で記載した二価の水酸基含有化合物から水酸基を除いた残基、A2は、少なくとも一部が一般式(III):−CHR−CHR'―〔式中、R及びR'の一方は、一般式(IV):−CHO(A3O)R''で表される基、他方はHである。一般式(IV)中、xは1〜10の整数、R''はHまたは炭素数1〜10の、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基またはアシル基、A3は炭素数2〜4のアルキレン基である。〕で表される置換アルキレン基であり、残りは炭素数2〜4のアルキレン基であってもよい。m個の(OA2)とm'個の(A2O)とは同一であっても異なっていてもよい。mおよびm'は1〜300の整数、好ましくは2〜250の整数、更に好ましくは10〜100の整数である。また、mとm'とは、同一でも異なっていてもよい。
【0037】
上記の一般式(I)で示されるポリエーテルジオールは、例えば、二価の水酸基含有化合物にアルキレンオキサイドを付加反応することにより製造することが出来る。アルキレンオキサイドとしては、炭素数2〜4のアルキレンオキサイド、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、1,4−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、1,3−ブチレンオキサイド等が挙げられ、これらは2種以上を併用して使用することも出来る。2種以上のアルキレンオキサイドを併用する場合の結合形式はランダム及び/又はブロックの何れでもよい。アルキレンオキサイドとして、好ましくは、エチレンオキサイド単独か、エチレンオキサイドと他のアルキレンオキサイドとの併用によるブロック及び/又はランダム付加したものである。アルキレンオキサイドの付加数は、前記の二価の水酸基含有化合物の水酸基1個当たり、通常1〜300数、好ましくは2〜250の、更に好ましくは10〜100である。
【0038】
上記の一般式(II)で示されるポリエーテルジオールの製造方法としては、例えば、以下の(i)、(ii)の方法などが挙げられる。
【0039】
(i)前記の二価の水酸基含有化合物を出発物質として、以下の一般式(2)で表されるグリシジルエーテルを重合する方法、または、炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを重合する方法。
【0040】
【化3】

【0041】
[一般式(2)中のA4は炭素数2〜4のアルキレン基、pは1〜10の整数、RはH または炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基またはアシル基である。]
【0042】
(ii)前記の二価の水酸基含有化合物を出発物質として、側鎖にクロロメチル基を有するポリエーテルを経由する方法。具体的には、エピクロルヒドリン又はエピクロルヒドリンとアルキレンオキサイドを付加共重合し、側鎖にクロロメチル基を有するポリエーテルを得た後、当該ポリエーテルと炭素数2〜4のポリアルキレングリコールとRX(Rは上記したもの、Xは、Cl、Br又はI)をアルカリ存在下で反応させるか、または、当該ポリエーテルと炭素数2〜4のポリアルキレングリコールモノカルビルエーテルをアルカリ存在下で反応させる方法である。
【0043】
ここで使用される炭素数2〜4のアルキレンオキサイドとしては、前記のものが全て使用できる。また、本発明の好ましいブロック共重合体(A)は、前記の重合体ブロック(A−1)と重合体ブロック(A−2)を公知の方法で重合することにより得ることが出来る。例えば、重合体ブロック重合体(A−1)と重合体ブロック(A−2)を、減圧下、180〜250℃で重合槽または混練機などを使用して重合反応を行うことにより製造することが出来る。
【0044】
ブロック共重合体(A)における重合体ブロック(A−1)/重合体ブロック(A−2)の比率は、通常10〜90/10〜90質量%、好ましくは20〜80/20〜80質量%、更に好ましくは30〜70/30〜70質量%である。重合体ブロック(A−1)が10質量%未満の場合、および、重合体ブロック(A−2)が90質量%を超える場合は、耐衝撃性が十分でなくなる可能性がある。一方、重合体ブロック(A−1)が90質量%を超える場合、および、重合体ブロック(A−2)が10質量%未満の場合は、制電性が十分でなくなる可能性がある。
【0045】
重合体ブロック(A−1)にポリオレフィンを使用したブロック共重合体(A)は、例えば、特開2001−278985号公報、特開2003―48990号公報に記載の方法などで製造することが出来、また、三洋化成工業社製の「ペレスタット300」シリーズの「300」、「303」、更に、「ペレスタット200」シリーズの「230」、「201」(商品名)等として入手できる。
【0046】
重合体ブロック(A−1)にポリアミドを使用したブロック共重合体(A)の場合、ポリアミドの数平均分子量(Mn)は、通常500〜20,000、好ましくは500〜10,000、更に好ましくは500〜5,000である。更に、ブロック共重合体(A)の還元粘度(ηsp/C)は、通常1.0〜3.0(dl/g)、好ましくは1.2〜2.5(dl/g)である。上記の還元粘度は、ギ酸溶液中、濃度0.5g/100ml、温度25℃の条件で測定した値である。斯かるブロック共重合体(A)は、例えば、ポリアミドとポリ(アルキレンオキシド)グリコールブロックとがエステル結合で結合されたポリエーテルエステルアミドであり、三洋化成工業社製の「ペレスタットNC6321」、「M−140」、「6500」、「MAX−N330」(商品名)として入手できる。
【0047】
重合体ブロック(A−1)にポリエステルを使用したブロック共重合体(A)の還元粘度(ηsp/C)は、通常0.3〜2.5(dl/g)、好ましくは0.5〜2.5(dl/g)である。上記の還元粘度は、質量比でフェノール/テトラクロロエタン=40/60の混合溶媒を使用し、濃度1.0g/100ml、温度35℃の条件で測定した値である。斯かるブロック共重合体(A)は、例えば、竹本油脂社製「TPE004」、「TPE010」、「TPE008」、「TPE018−0」(商品名)として入手できる。
【0048】
重合体ブロック(A−1)の成分にポリウレタンを使用したブロック共重合体(A)としては、JIS K 7311に準拠して測定した100%モジュラスが2〜30MPaのものが好適に使用される。斯かるブロック共重合体(A)は、例えば、ディーアイシーバイエルポリマー社製の「パンデックスT−8000シリーズ」の「T−8175」、「T−8180」、「T−8185」、「T−8190」、「T−8195」、「T−8198」、「T−8166D」、「デスモント500シリーズ」の「KU2−8659」、「デスモント700シリーズ」の「786」、「デスモント900シリーズ」の「KU2−8670」及び「DP88586A」、「DP7−3007」、「テキシン985」、「990」、「950」、「DP7−1198」、「4210」(何れも商品名)等として入手できる。
【0049】
〔塩化ビニル系樹脂(B)〕
本発明で使用する塩化ビニル系樹脂(B)は、ポリ塩化ビニル樹脂の他、塩化ビニルと他の共重合可能な他のビニル単量体との共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体とのブレンド物、ポリ塩化ビニルを塩素化した塩素化ポリ塩化ビニル樹脂などを包含する。上記の共重合可能な他のビニル単量体としては、エチレン、プロピレン、マレイン酸エステル、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。本発明で使用される塩化ビニル系樹脂(B)は、ポリ塩化ビニル樹脂が難燃性の観点から好ましい。
【0050】
上記の塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、通常700〜1800、好ましくは1000〜1500である。平均重合度が700未満の場合は、成形品の機械的強度、耐磨耗性、高温使用時における形状保持力などが不十分になり、一方、平均重合度が1800を超える場合は、流動性および成形加工性が低下すると共に、成形歪みが大きくなり成形品に収縮が発生する可能性がある。ペースト加工の場合は、平均重合度700〜1700の発泡用低重合度ペーストレジン又は成形品用中重合度ペーストレジンが使用される。
【0051】
本発明で使用する塩化ビニル系樹脂(B)には、必要に応じ、可塑剤、防滴剤、防霧剤、熱安定剤などを配合することが出来る。
【0052】
上記の可塑剤としては、フタル酸ジオクチルエステル(DOP)、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(DEHP)、フタル酸ジイソノニルエステル(DINP)、フタル酸ブチルベンジルエステル(BBP)、フタル酸ジイソデシルエステル(DIDP)、フタル酸ジウンデシルエステル(DUP)等のフタル酸エステル系可塑剤;アジピン酸ジオクチルエステル(DOA)、セバシン酸ジオクチルエステル(DOS)、アゼライン酸ジオクチルエステル(DOZ)等の脂肪酸エステル系可塑性;トリメリット酸トリオクチルエステル(TOTM)等のトリメリット酸エステル系可塑剤;ポリプロピレンアジペート、2官能ジカルボン酸、2官能ジオール及びモノアルコールから成る化合物などのポリエステル系可塑剤などの高分子可塑剤;セバチン酸系可塑剤、塩素化パラフィン;トリクレジルフホスフェート(TCP)、トリキシリルホスフェート(TXP)、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等の燐酸エステル系可塑剤;植物油のエポキシ化物、エポキシ樹脂が使用できる。
【0053】
上記の植物油のエポキシ化物としては、エポキシ化大豆油エポキシ化アマニ油などが挙げられ、上記のエポキシ樹脂としては、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシステアリン酸メチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸エチルヘキシル、トリス(エポキシプロピル)イソシアネート、3−(2−キセノキシ)−1,2−エポキシプロパン、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビニルジシクロヘキセンジエポキサイド、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンとエピクロルヒドリンとの重縮合物などのエポキシ系可塑剤が挙げられる。
【0054】
上記の可塑剤は、2種以上を組み合わせて使用することも出来る。可塑剤の使用量は、ブロック共重合体(A)と塩化ビニル系樹脂(B)の合計100質量部に対し、通常100質量部以下、好ましくは20〜80質量部である。可塑剤は、本発明の熱可塑性樹脂組成物をシート、フィルムに成形する際の取り扱い性から硬度調整剤として配合することが好ましい。
【0055】
なお、得られた成形品からの可塑剤の移行が問題となる場合は、上記のポリエステル系可塑剤などの高分子型可塑剤を少なくとも可塑剤中50質量%以上使用することが好ましい。ここで使用されるポリエステル系可塑剤は、高分子量可塑剤であり、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フタル酸などの多価カルボン酸とプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等のグリコールとのエステル化反応によって得られる各種可塑剤が挙げられる。これらの中では、アジピン酸−プロピレングリコール系可塑剤、アジピン酸−1,3−ブチレングリコール系可塑剤などのアジピン酸系可塑剤が好ましく、分子量1,000以上のポリエステル系可塑剤が更に好ましい。
【0056】
防滴剤としては、公知のものが使用できる。例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸・二塩基酸エステル、グリセリン脂肪酸・二塩基酸エステル、ジグリセリン脂肪酸・ニ塩基酸エステル等の多価アルコールと脂肪酸とのエステル;多価アルコールの脂肪酸およびニ塩基酸とのエステル;これらに、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドが付加された化合物などが使用できる。これらの防滴剤は、2種以上を組み合わせて使用することも出来る。防滴剤の使用量は、ブロック共重合体(A)と塩化ビニル系樹脂(B)の合計100質量部に対し、通常0.5〜5質量部である。
【0057】
防霧剤としては、1分子中にフッ素含有基と、水酸基またはアルキレンオキサイド基の少なくとも1種とを有するフッ素系化合物などが挙げられる。フッ素含有基としては、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、ポリフルオロアルケニル基などが挙げられる。防霧剤の使用量は、ブロック共重合体(A)と塩化ビニル系樹脂(B)の合計100質量部に対し、通常0.01〜1質量部である。
【0058】
熱安定剤としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアンリン酸バリウム、リシノール酸バリウム、ラウリン酸カルシウム、オレイン酸カルシウム、オクトイン酸亜鉛などの金属石鹸;エポキシ化大豆油などのエポキシ化合物;ジフェニルデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリステアリルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト等の有機ホスファイト系安定剤;ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫マレート、有機錫メルカプチド、有機錫スルホンアミド等の錫系安定剤などが使用できる。これらの安定剤は、2種以上を組み合わせて使用することも出来る。熱安定剤の使用量は、ブロック共重合体(A)と塩化ビニル系樹脂(B)の合計100質量部に対し、通常0.5〜10質量部、好ましくは1〜5質量部である。
【0059】
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、ブロック共重合体(A)/塩化ビニル系樹脂(B)の使用量は、1〜30/70〜99質量%、好ましくは5〜30/70〜95質量%、更に好ましくは、5〜25/75〜95質量%、特に好ましくは、7〜20/80〜93質量%である。ただし、ブロック共重合体(A)と塩化ビニル系樹脂(B)の合計は100質量%である。ブロック共重合体(A)の使用量が1質量%未満の場合は制電性が劣り、一方、30質量%を超える場合は難燃性および透明性が劣る。塩化ビニル系樹脂(B)の使用量が70質量%未満の場合は難燃性および透明性が劣り、99質量%を超える場合は制電性が劣る。本発明における制電性は、表面抵抗率(23℃、50%RH条件下で測定)として、通常1×1012Ω/□以下、好ましくは1×1011Ω/□以下、更に好ましくは1×1010Ω/□以下である。
【0060】
更に、本発明の熱可塑性樹脂組成物から成る成形品からの、ナトリウムイオン及び/又はカリウムイオンの溶出量は、通常0.5μg/cm以下、好ましくは0.3μg/cm以下、更に好ましくは0.1μg/cm以下である。本発明の熱可塑性樹脂組成物よりなる成形品を、例えばカーテン等として半導体関連のクリールーム内などで使用することを考慮し、半導体デバイス等に問題のあるナトリウムイオン及びカリウムイオンの溶出は、可能な限り少ないことが好ましい。
【0061】
イオンの溶出量の測定は次のように行うことが出来る。すなわち、成形品を40℃の超純水に60分間浸漬し、イオン成分を溶出させ、この溶出液を使用し、イオンクロマトグラフィーにより、ナトリウムイオン及びカリウムイオンの合計溶出量を定量する。なお、超純水は、成形品の表面積1cmに対して1cm使用する。溶出量は、成形品単位面積当たりのナトリウムイオン及び/又はカリウムイオンの溶出イオン量(μg/cm)として求める。
【0062】
前述のブロック共重合体(A)には、制電性を向上させる観点から、リチウム化合物(C)を含有させることが出来る。リチウム化合物(C)は、ブロック共重合体(A)の重合前、重合中、重合後に添加することが出来、また、ブロック共重合体(A)と塩化ビニル系樹脂(B)を混連して組成物を製造する時に添加することも出来る。ここで使用されるリチウム化合物(C)としては、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、過塩素酸リチウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム及びトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンリチウムから成る群より選ばれた少なくとも1種のリチウム化合物を使用することが好ましく、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムが特に好ましい。リチウム化合物は、制電性を低下させることなしに、本発明の熱可塑性樹脂組成物から成る成形品から溶出するナトリウム及び/又はカリウムの溶出量を低減させることが出来る。リチウム化合物の市販品としては、例えば、三光化学工業社製の「サンコノール0862−13T」、「サンコノールAQ−50T、AQ−75T」(商品名)が挙げられる。
【0063】
リチウム化合物(C)の使用量は、ブロック共重合体(A)と塩化ビニル系樹脂(B)の合計100質量部に対し、通常0.01〜5質量部、好ましくは0.05〜3質量部、更に好ましくは0.1〜2質量部である。リチウム化合物(C)の使用量が0.01質量部未満の場合は制電性が十分に発現しない可能性があり、一方、5質量部を超える場合は、成形品表面からブリードアウトしたり、成形品の透明性がそこなわれる可能性がある。
【0064】
更に、前述のブロック共重合体(A)は、半導体デバイスに対するナトリウム及び/又カリウムの悪影響を考慮し、ナトリウム及び/又はカリウム含有化合物の含有量が低減されたもの、または、当該化合物を含有しないものあることが好ましい。斯かる好ましいブロック共重合体(A)は、例えば、ブロック共重合体(A)の重合時に使用するナトリウム及び/又はカリウム含有化合物の量を低減させるか、または、ナトリウム及び/又はカリウム含有化合物を使用せずに重合を行うことによって得られる。
【0065】
本発明のブロック共重合体(A)中のナトリウム及び/又はカリウムの含有量は300ppm以下であることが好ましく、より好ましくは200ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下である。ナトリウム及び/又はカリウムは、半導体デバイスに対する悪影響を考慮し、使用量を低減することが望ましい。
【0066】
本発明の熱可塑性樹脂組成物から成る成形品は透明性を有することが好ましい。ここでいう透明性は、成形品を通して向こう側が確認できる程度のことを言うが、具体的には、肉厚0.3mmの成形品とした際のヘイズ(ASTM D−1003に準拠)が30%以下であることをいう。上記のヘイズは、好ましくは20%以下、更に好ましくは10%以下、特に好ましくは8%以下である。
【0067】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲において、公知の耐候(光)剤、酸化防止剤、滑剤、摺動剤、着色剤、染料、発泡剤、加工助剤、難燃剤などを適宜配合することが出来る。更に、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲において、他の公知の重合体であるポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、PMMA、メタクリル酸メチル・マレイミド共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体などを適宜配合することが出来る。
【0068】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、各種押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、連続ニーダー、ロール等により、上記の各成分を溶融混練することにより得ることが出来る。混練に際し、上記の各成分を一括添加して混練してもよく、また、分割して添加混練してもよい。このように調製された本発明の熱可塑性樹脂組成物は、射出成形、プレス成形、カレンダー成形、Tダイ押出成形、インフレーション成形、ラミネーション成形、真空成形、異形押出成形、バンバリーミキサー、混練押出機などにより、成形することが出来る。成形機に混練り機が付帯されている場合は、事前に上記の混練によって本発明の熱可塑性樹脂組成物を得ることなく、上記の付帯の混練り機で本発明の熱可塑性樹脂組成物を得ながら成形品を得ることが出来る。
【0069】
本発明の熱可塑性樹脂組成物をシート又はフィルムに加工する場合、その厚みは通常10μm〜100mmである。シート及びフィルムは、単層品であってもよく、また、他材料と積層した多層品であってもよく、粘着剤などを積層したシート及びフィルムであってもよい。更に、シート及びフィルムには公知のガスバリア膜を形成させることが出来る。
【0070】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を使用して多層シートまたは多層フィルムを成形する場合、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、他材との2層シート若しくはフィルム、または、他材を中間層とする3層シート若しくはフィルムとすることも出来る。更には、本発明の熱可塑性樹脂組成物における異なる組成物を多層化することも出来る。
【0071】
多層化する場合の相手材は、本発明の目的である透明性から、PMMA、塩化ビニル系樹脂、AS樹脂、PS樹脂、メタクリル酸メチル・スチレン共重合体、ポリオレフィン系樹脂が好まし。更に、層間の接着性から、PMMA、塩化ビニル系樹脂が好ましい。また、本発明の熱可塑性樹脂組成物における異なる組成物の多層化においては、表層材に可塑剤を含まない組成物を使用し、中間材に可塑剤を含む組成物を使用することにより、軟質であり且つ表面に可塑剤が移行することを抑制したシート及びフィルムを得ることが出来る。また、他材と多層化した際に層間の接着が不十分な場合は、公知の接着層を介在させることが出来る。
【0072】
上記のようにして得られた成形品は、リレーケース、ウエハーケース、レチクルケース、アスクケース等のケース類、LCDトレイ、PDPトレイ、チップトレイ、ハードディスク(HDD)トレイ、CCDトレイ、ICトレイ、有機ELトレイ、光ピックアップ関連トレイ、LEDトレイ、シーモストレイ等のトレイ類、ICキャリアー等のキャリアー類、偏光フィルム、導光板、各種レンズ等の保護フィルム、偏光フィルム切断時の下敷きシート、仕切り板などのクリーンルーム内で使用されるシートまたはフィルム類、自動販売機内部部材、液晶パネル、プラズマパネル、有機ELパネル等の搬送用ソフトケース、その他の各種部品搬送用関連部材の分野に好適に使用することが出来る。
【実施例】
【0073】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中において「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。また、実施例および比較例中の各種測定は、以下の方法に拠った。
【0074】
〔1〕評価方法
【0075】
(1)制電性:
厚さ0.3mmのシート成形品を使用し、JIS K 6911に準拠し、23℃×50%RH条件下に48時間放置後の表面抵抗率(Ω/□)を三菱化学社製「ハイレスターUPMCP−HT450」を使用して測定した。
【0076】
(2)制電性の持続性:
上記の(1)で使用した成形品を、純水に30秒間浸漬した後取り出し、23℃×50%RHの恒温恒湿層で24時間放置後に成形品を取り出した。これを1回とし、10サイクル後に上記(1)の条件で表面抵抗率(Ω/□)を測定した。
【0077】
(3)難燃性:
厚さ0.3mmのシート成形品を使用し、消防法施行令4条3に準拠し燃焼試験を行い、次の基準で評価した。すなわち、消防法施行令4条3に「適合の場合は○」、「不適合の場合は×」とした。
【0078】
(4)透明性:
厚さ0.3mmのシート成形品を使用し、ASTM試験法D−1003に準拠してヘイズ(%)を測定した。
【0079】
(5)ナトリウムイオン及び/又はカリウムイオンの溶出量:
成形品を40℃の超純水に60分間浸漬し、イオン成分を溶出させた。この溶出液を使用し、イオンクロマトグラフィーにより、ナトリウムイオン及びカリウムイオンの合計溶出量を定量した。なお、超純水は、成形品の表面積1cmに対して1cmを使用した。溶出量は、成形品単位面積当たりのナトリウムイオン及び/又はカリウムイオンの溶出イオン量(μg/cm)とした。
【0080】
〔2〕熱可塑性樹脂組成物の成分
【0081】
(1)ブロック共重合体(A):
本発明のブロック共重合体(A)のブロック共重合体として以下のものを使用した。
【0082】
A1:三洋化成工業社製「ペレスタット201」(商品名)、ポリオレフィン−ポリエチレングリコール系ブロック共重合体(電解質未配合品)、ナトリウム及び/又はカリウムの含有量は50ppm以下である。ナトリウム及び/又はカリウムの含有量の測定は、原子吸光光度分析計を使用した(以下、同じ)。
【0083】
A2:三洋化成工業社製「ペレスタット303」(商品名)、ポリプロピレン−ポリエチレングリコール系ブロック共重合体(スルホン酸ナトリウム電解質配合品)、ナトリウム及び/又はカリウムの含有量は4200ppmである。
【0084】
A3:三洋化成工業社製「ペレスタットMAX−N330」(商品名)ポリアミド−ポリエチレングリコール系ブロック共重合体(電解質未配合品)、ナトリウム及び/又はカリウムの含有量は50ppm以下である。
【0085】
A4:ディーアイシーバイエルポリマー社製「デスモパンTP−6580A」(商品名)ポリウレタン−ポリエチレングリコール系ブロック共重合体(電解質未配合品)、ナトリウム及び/又はカリウムの含有量は50ppm以下である。
【0086】
A5:竹本油脂社製「TPE−018−0」(商品名)、ポリエステル−ポリエチレングリコール系ブロック共重合体(電解質未配合品)、ナトリウム及び/又はカリウムの含有量は50ppm以下である。
【0087】
(2)塩化ビニル系樹脂(B)の塩化ビニル系樹脂として以下のものを使用した。
【0088】
B1:平均重合度1300の塩化ビニル樹脂
【0089】
(3)リチウム化合物(C)として以下のものを使用した。
【0090】
C1:三光化学工業社製「サンコノールAQ−50T」(商品名)トリフルオロメタンスルホン酸リチウムの50%水溶液
【0091】
C2:三光化学工業社製「サンコノール0862−20T」(商品名)トリフルオロスルホン酸ナトリウムの20%アジピン酸ジブトキシエトキシエチル溶液
【0092】
(4)その他の成分として以下のものを使用した。
【0093】
D1:ポリエステル系可塑剤(旭電化工業社製「PN−150」(商品名))
【0094】
D2:エステル系可塑剤(ジオクチルフタレート(DOP))
【0095】
D3:安定剤(Ba−Zn系複合安定剤)
【0096】
実施例1〜16並びに比較例1及び2:
表1、2、4に記載した配合割合で各種構成成分をヘンシェルミキサーにより混合した後、BUSSコニーダー(オイル温度160〜180℃)を使用して溶融混練してペレット化した。得られたペレットを十分に乾燥した後、多層化できるTダイ押出機を使用して厚さ0.3mmのシートを得た。また、三層シート化した際は、表層厚各60μm、中間層厚180μmのシートを得た。この成形品を使用して制電性、難燃性および透明性を評価した。評価結果を表1〜4に示した。但し、実施例16については、マスターバッチ法を採用した。すなわち、シリンダー温度180℃に設定した二軸押出機を使用し、押出機のホッパーからブロック共重合体A1を投入し、押出機の途中からポンプによりブロック共重合体A1中にリチウム化合物C1を注入し、C1含有量が有効成分として2.0重量%のブロック共重合体A1−1を得、これを使用した。
【0097】
【表1】

【0098】
【表2】

【0099】
【表3】

【0100】
【表4】

【0101】
前記の表に示す結果から、次のことが明らかである。すなわち、実施例1〜16は、本発明の熱可塑性樹脂組成物から成る成形品であり、制電性、難燃性、透明性、制電性の持続性に優れ、更に、溶出イオンも少ない。これに対し、比較例1は、ブロック共重合体(A)の使用量が少なくて本発明で規定する範囲外であり、表面抵抗率が高く、制電性に劣る。比較例2は、ブロック共重合体(A)の使用量が多く本発明で規定する範囲外であり、難燃性、透明性が劣る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のブロック共重合体(A)1〜30質量%および塩化ビニル系樹脂(B)70〜99質量%(ただし、ブロック共重合体(A)と塩化ビニル系樹脂(B)の合計は100質量%)を含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
ブロック共重合体(A):ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル及びポリウレタンから成る群より選ばれた少なくとも1種の重合体ブロック(A−1)と親水基を有する重合体ブロック(A−2)を含有するブロック共重合体
【請求項2】
重合体ブロック(A−1)がポリオレフィンである請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
塩化ビニル系樹脂(B)が軟質塩化ビニル系樹脂である請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
ブロック共重合体(A)及び塩化ビニル系樹脂(B)の合計100質量部に対し、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、過塩素酸リチウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム及びトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンリチウムから成る群より選ばれた少なくとも1種のリチウム化合物(C)0.01〜5.0質量部を含有する請求項1〜3の何れかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
ブロック共重合体(A)中のナトリウム及び/又はカリウムの含有量が300ppm以下である請求項1〜4の何れかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
成形品として40℃超純水中に60分間浸漬して測定したナトリウムイオン及び/又はカリウムイオンの溶出量が0.5μg/cm以下である請求項1〜5の何れかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
肉厚0.3mmの成形品とした際のヘイズ(ASTM D−1003に準拠)が30%以下である請求項1〜6の何れかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載の熱可塑性樹脂組成物から成ることを特徴とする成形品。

【公開番号】特開2009−40851(P2009−40851A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206292(P2007−206292)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(396021575)テクノポリマー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】