説明

熱可塑性樹脂組成物及びその成形体

【課題】薄肉であっても高遮光性及び高反射性である熱可塑性樹脂組成物及びその成形体を提供する。
【解決手段】(A)熱可塑性樹脂45〜99質量%、及び(B)白色顔料55〜1質量%の割合で含有する組成物であって、かつ(A)成分と(B)成分との合計量に基づき(C)近赤外線吸収色材を0.1〜50質量ppm含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物及びその成形体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物及びその成形体に関する。より詳しくは、特に液晶ディスプレイバックライト等の部品、一般照明装置用部品、LED反射ケース、自動車等の操作パネル等に用いられる、高遮光性及び高反射性等の特性を有する熱可塑性樹脂組成物及びその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂には、難燃性や耐衝撃性等に優れているものがあり、このような熱可塑性樹脂は、液晶ディスプレイにも用いられている。液晶ディスプレイは、携帯電話、ノートパソコン、テレビ等に用いられ、その用途が拡大している。それに伴い高画質化が求められ、液晶の照明装置であるバックライトユニットには、さらなる明るさの向上が求められている。また、それらの製品の薄型化も同時に求められ、バックライトに用いられる反射板やフレームの材料には、薄くても反射性及び遮光性に優れることが求められている。
一般に、遮光性は成形品の薄肉化に伴い著しく低下して、光が透けやすくなる。例えば、最近のノートパソコン用フレームには最低で0.5mm程度まで薄肉化が進んでおり、光の透けを防ぐために黒色の遮光用テープを必要箇所に貼付したり、別事例では、白色成形品と黒色成形品を組み合わせて使用したりする等の特別な対策が別途必要となり、工程の複雑化(コストアップ)、自由な設計への阻害因子につながっている。
【0003】
光の透過を防止するために、光吸収を目的として黒色色材を樹脂組成物に含有させることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、光の吸収は一方で反射光の減少を伴い、これを用いた成形品からなる照明装置の輝度低下につながる。
また、遮光性を向上させるために、黒色色材や青色色材等の顔料や染料を樹脂組成物に含有させることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、必要以上の光の吸収により、反射光の減少が生じる。
さらに、酸化チタンを含有させることにより遮光性を向上させ、1mm程度の厚さまでは充分な遮光性を確保させることが提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかし、さらに薄肉化が進むと、より高い遮光性を得るために多量の酸化チタンを含有させることが必要となり、酸化チタン表面の反応基が原因で成形加工時にポリカーボネートの着色やシルバー(銀条)の発生等が増大し、安定化剤等を加えても、その抑制が困難である。
【0004】
【特許文献1】特開2004−46205号公報
【特許文献2】特開2006−176566号公報
【特許文献3】特開平9−330048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記状況に鑑み、薄肉であっても高遮光性及び高反射性を有し、特に液晶ディスプレイ搭載部品用として好適な熱可塑性樹脂組成物及びその成形体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、(A)熱可塑性樹脂と(B)白色顔料との樹脂混合物に、(C)近赤外線吸収色材を特定量含有する熱可塑性樹脂組成物及びその成形体により上記課題を解決し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
1.(A)熱可塑性樹脂45〜99質量%、及び(B)白色顔料55〜1質量%の割合で含有する組成物であって、かつ(A)成分と(B)成分との合計量に基づき(C)近赤外線吸収色材を0.1〜50質量ppm含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物、
2.(A)成分がポリカーボネート系重合体である上記1に記載の熱可塑性樹脂組成物、
3.(B)成分が酸化チタンである上記1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物、
4.(C)成分がフタロシアニン系色素である上記1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物、
5.(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対し、さらに(D)フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンを0.1〜1.0質量部含有する上記1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物、
6.(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対し、さらに(E)ポリオルガノシロキサンを0.05〜3.0質量部含有する上記1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物、
7.上記1〜6のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形体、
8.厚さ0.5mmとしたときに、反射率が79%以上でかつ全光線透過率が0.3%以下である上記7に記載の成形体、及び
9.上記7又は8に記載の成形体からなる液晶ディスプレイ搭載部品、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、近赤外線吸収色材を配合することにより、反射性を低下させることなく、高遮光性及び高反射性の物性を有する熱可塑性樹脂組成物及びその成形体を得ることができる。また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、薄肉であっても上記物性を維持できるため、特に液晶ディスプレイ搭載部品用としても好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
[熱可塑性樹脂組成物]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(A)熱可塑性樹脂、(B)白色顔料、及び(C)近赤外線吸収色材を含有するものである。
【0009】
((A)熱可塑性樹脂)
本発明における(A)熱可塑性樹脂((A)成分)としては、本発明の目的を損なわないものであれば制限はないが、特にポリカーボネート系重合体を用いることが好ましい。
ポリカーボネート系重合体としては、(a−1)ポリカーボネート樹脂、又は(a−1)ポリカーボネート樹脂と(a−2)ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体との混合物が挙げられる。
【0010】
〈(a−1)ポリカーボネート樹脂〉
本発明における(A)成分として、(a−1)ポリカーボネート樹脂を用いることができる。
(a−1)ポリカーボネート樹脂としては、種々のものが挙げられるが、下記一般式(1)で表わされる構造の繰り返し単位を有する重合体が好適である。
【0011】
【化1】

【0012】
一般式(1)中、R1及びR2は、それぞれハロゲン原子(例えば、塩素、フッ素、ヨウ素)又は炭素数1〜8のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基(n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基)、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基)である。m及びnは、それぞれ0〜4の整数であって、mが2〜4の場合、R1は互いに同一であっても異なっていてもよいし、nが2〜4の場合、R2は互いに同一であっても異なっていてもよい。そしてZは、炭素数1〜8のアルキレン基又は炭素数2〜8のアルキリデン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基等)、炭素数5〜15のシクロアルキレン基又は炭素数5〜15のシクロアルキリデン基(例えば、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基等)、あるいは単結合、−SO2−、−SO−、−S−、−O−、−CO−等の結合、もしくは下記の式(2)あるいは式(2')で表わされる結合を示す。
【0013】
【化2】

【0014】
上記重合体は、通常下記一般式(3)で表わされる二価フェノールとホスゲン等のカーボネート前駆体とを反応させることによって容易に製造することができる。
【0015】
【化3】

〔式中、R1、R2、Z、m及びnは、上記一般式(1)と同じである。〕
【0016】
上記重合体の製造法としては、例えば、塩化メチレン等の溶媒中において、公知の酸受容体や分子量調節剤の存在下、二価フェノールとホスゲンのようなカーボネート前駆体との反応により製造することができる。また、二価フェノールと炭酸エステル化合物のようなカーボネート前駆体とのエステル交換反応等によっても製造することができる。
【0017】
上記一般式(3)で表される二価フェノールとしては様々なものを挙げることができる。特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[通称、ビスフェノールA]が好ましい。ビスフェノールA以外の二価フェノールとしては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン;1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロデカン等のビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等が挙げられる。この他、二価フェノールとしては、ハイドロキノン等が挙げられる。これらの二価フェノールは、それぞれ単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0018】
炭酸エステル化合物としては、例えば、ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート等を挙げることができる。
上記二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させてポリカーボネートを製造する際に、必要に応じて分子量調節剤を用いることができる。この分子量調節剤については特に制限はなく、従来ポリカーボネートの製造において慣用されているものを用いることができる。このようなものとしては、例えば、フェノール、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、p−クミルフェノール、p−ノニルフェノール、p−ドデシルフェノール等の一価フェノールを挙げることができる。
【0019】
(a−1)ポリカーボネート樹脂は、上記の二価フェノールの一種を用いたホモポリマーであってもよく、また二種以上を用いたコポリマーであってもよい。さらに、多官能性芳香族化合物を上記二価フェノールと併用して得られる熱可塑性ランダム分岐ポリカーボネート樹脂であってもよい。その多官能性芳香族化合物は、一般に分岐剤と称され、具体的には、1,1,1−トリス(4−ヒドキシフェニル)エタン、α,α’,α”−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1−[α−メチル−α−(4’−ヒドロキシフェニル)エチル]−4−[α’,α’−ビス(4”−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、フロログルシン、トリメリット酸、イサチンビス(o−クレゾール)等が挙げられる。
【0020】
(a−1)ポリカーボネート樹脂は、機械的強度、特にアイゾット衝撃強度及び成形性等の点から、通常、粘度平均分子量が13,000〜30,000の範囲にあるもの、特に15,000〜25,000の範囲にあるものが好ましい。なお、その粘度平均分子量(Mv)は、ウベローデ型粘度計を用いて、20℃における塩化メチレン溶液の粘度を測定し、これより極限粘度[η]を求め、[η]=1.23×10-5Mv0.83の式により算出した値である。
このような特性を有するポリカーボネート樹脂は、例えば、タフロンFN3000A、FN2500A、FN2200A、FN1900A、FN1700A、FN1500A(商品名、出光興産(株)製)のような芳香族ポリカーボネート樹脂として市販されている。
【0021】
〈(a−1)ポリカーボネート樹脂と(a−2)ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体との混合物〉
本発明における(A)成分として、(a−1)ポリカーボネート樹脂と(a−2)ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体との混合物を用いることができる(以下、「混合物」と略記することがある。)。
(a−2)ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体(以下、「PC−POS共重合体」と略記することがある。)として様々なものが挙げられるが、好ましくは下記一般式(1)で表わされる構造の繰り返し単位を有するポリカーボネート部と、下記一般式(4)で表される構造の繰返し単位を有するポリオルガノシロキサン部からなるものである。ここで、ポリカーボネート部の重合度は、通常、3〜100程度が好ましく、またポリオルガノシロキサン部の重合度は、通常、2〜500程度が好ましい。
【0022】
【化4】

〔式中、R1、R2、Z、m及びnは、上記と同じである。〕
【0023】
【化5】

【0024】
〔式中、R3、R4及びR5は、それぞれ水素原子、炭素数1〜5のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基等)又はフェニル基であり、p及びqは、それぞれ0又は1以上の整数であるが、pとqとの合計は1以上の整数である。〕
【0025】
PC−POS共重合体は、上記一般式(1)で表される繰返し単位を有するポリカーボネート部と、上記一般式(4)で表される繰返し単位を有するポリオルガノシロキサン部とからなるブロック共重合体であって、粘度平均分子量が、通常、10,000〜40,000程度が好ましく、より好ましくは12,000〜35,000のものである。このようなPC−POS共重合体は、例えば、予め製造されたポリカーボネート部を構成するポリカーボネートオリゴマー(以下、「PCオリゴマー」と略記することがある。)と、ポリオルガノシロキサン部を構成する末端に反応性基を有するポリオルガノシロキサン(例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリジエチルシロキサン等のポリジアルキルシロキサンあるいはポリメチルフェニルシロキサン等)とを、塩化メチレン、クロロベンゼン、クロロホルム等の溶媒に溶解させ、ビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液を加え、触媒として、トリエチルアミンやトリメチルベンジルアンモニウムクロライド等を用い、界面重縮合反応することにより製造することができる。また、特公昭44−30105号公報に記載された方法や特公昭45−20510号公報に記載された方法によって製造されたPC−POS共重合体を用いることもできる。
【0026】
ここで、一般式(1)で表される繰返し単位を有するPCオリゴマーは、溶媒法、すなわち塩化メチレン等の溶媒中で公知の酸受容体、分子量調節剤の存在下、前記一般式(3)で表される二価フェノールとホスゲン等のカーボネート前駆体とを反応させることによって容易に製造することができる。あるいは、二価フェノールと炭酸エステル化合物のようなカーボネート前駆体とのエステル交換反応等によって製造することができる。炭酸エステル化合物及び分子量調節剤としては、前記と同様のものを使用することができる。
本発明において、PC−POS共重合体の製造に供されるPCオリゴマーは、前記の二価フェノール一種を用いたホモポリマーであってもよく、また二種以上を用いたコポリマーであってもよい。さらに、多官能性芳香族化合物を前記二価フェノールと併用して得られる熱可塑性ランダム分岐ポリカーボネートであってもよい。
【0027】
PC−POS共重合体中のポリオルガノシロキサン部分の含有量は、最終的な樹脂組成物として要求される難燃性のレベルに応じて適宜選択すればよい。PC−POS共重合体中のポリオルガノシロキサン部分の含有割合は、混合物の全量に対して、通常、0.3〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%である。上記範囲内であれば、本発明の熱可塑性樹脂組成物に充分な難燃性を発現させることができる。
(a−1)成分と(a−2)成分との混合物を(A)成分として用いた場合、(a−2)成分の配合量は、(A)成分と(B)成分との合計量に対して、通常、5〜85質量%が好ましく、より好ましくは10〜58質量%である。(a−2)成分が上記範囲であるとポリオルガノシロキサンの分散性が良好となるため、充分な難燃性が得られる。
また、(A)成分として、(a−1)ポリカーボネート樹脂の製造で用いる二価フェノール(通常前記一般式(3)で表されるもの)とは異なる化合物を用いて製造したポリカーボネート樹脂と(a−2)ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体との混合物を用いてもよい。
【0028】
(A)成分の配合量は、樹脂組成物の成形加工性の観点から、(A)成分と(B)成分との合計量に対して、45〜99質量%であり、好ましくは50〜90質量%、より好ましくは65〜80質量%である。
【0029】
((B)白色顔料)
本発明における(B)白色顔料((B)成分)としては、光を反射するために着色力を有するものであれば制限はないが、特に着色力が優れている酸化チタンを用いることが好ましい。
酸化チタンは、ポリカーボネート樹脂に高反射性と低透明性、特に高遮光性を付与する目的から微粉末の形態で使用されるが、各種粒度の微粉末の酸化チタンは、塩素法又は硫酸法のいずれの方法によっても製造することができる。本発明において使用される酸化チタンは、ルチル型及びアナターゼ型のいずれでもよいが、熱安定性、耐候性等の点でルチル型が好ましい。また、その微粉末粒子の形状は特に限定されるものではなく、鱗片状、球状、不定形等を適宜選択使用できる。
【0030】
この(B)成分として使用される酸化チタンは、アルミニウム及び/又は珪素の含水酸化物の他、アミン化合物、ポリオール化合物等で表面処理したものが好ましい。この処理をすることによりポリカーボネート樹脂組成物中での均一分散性及びその分散状態の安定性が向上する他、さらに添加することができる難燃剤との親和性も向上して均一な組成物を製造する上で好ましい。アルミニウムや珪素の含水酸化物、アミン化合物及びポリオール化合物としては、それぞれアルミナ含水物、シリカ含水物、トリエタノールアミン及びトリメチロールエタン等を例示することができる。上記表面処理における処理方法自体は特に限定されるものではなく、任意の方法が適宜採られる。この処理により酸化チタン粒子表面に付与される表面処理剤の量は、特に限定されるものではないが、酸化チタンの光反射性、熱可塑性樹脂組成物の成形性を考慮すれば酸化チタンに対し、通常、0.1〜10.0質量%程度が適当である。
【0031】
本発明において(B)成分として用いられる酸化チタン粉末の粒子径については特に制限はないが、上記効果を効率よく発揮するには、通常、平均粒子径0.1〜0.5μm程度のものが好適である。
酸化チタンの表面酸量は、通常、10μモル/g以上が好ましく、表面塩基量は、通常、10μモル/g以上が好ましい。表面酸量が10μモル/gより小さい場合や、表面塩基量が10μモル/gより小さい場合は、オルガノシロキサン化合物との反応性が低くなるため酸化チタンの分散が不充分となり、成形体の高輝度化が不充分となるおそれがある。酸化チタンの表面酸量は、より好ましくは15μモル/g以上、さらに好ましくは16μモル/g以上、表面塩基量は、より好ましくは20μモル/g以上、さらに好ましくは25μモル/g以上である。
【0032】
なお、酸化チタンの表面酸量及び表面塩基量は、非水溶液中において電位差滴定により測定する。具体的には、表面酸量は、1/100規定のn−プロピルアミンのMIBK(メチルイソブチルケトン)溶液中に酸化チタンを分散させ、上澄み液を1/100規定の過塩素酸のMIBK溶液を用いて電位差滴定を行うことにより測定する。また、表面塩基量は1/100規定の酢酸のMIBK溶液中に酸化チタンを分散させ、上澄み液を1/100規定のカリウムメトキシドのMIBK溶液を用いて電位差滴定を行うことにより測定する。
【0033】
(B)成分の配合量は、(A)成分と(B)成分との合計量に対して、1〜55質量%であり、好ましくは10〜50質量%である。配合量が1質量%未満であると、遮光性が不充分となるため、光線反射率が低下する。また、配合量が55質量%を超えると、混練押し出しによるペレット化や樹脂の成形加工が困難となり、成形品におけるシルバー発生が多くなる。とりわけ液晶テレビ、モニター用途等のバックライトに用いられる反射板や反射枠には遮光性と高い光反射性が要求されるので、(B)成分の配合量は20〜35質量%がより好ましい。
【0034】
((C)近赤外線吸収色材)
本発明における(C)近赤外線吸収色材((C)成分)は、(A)熱可塑性樹脂に高遮光性を付与する目的で使用されるが、反射光線の色再現性、高反射率を維持するため、可視光線領域内(波長:550nm〜800nm)で吸収極大を示さず、近赤外線〜赤外線領域に吸収極大を示し、かつ可視光線長波長領域で緩やかな吸収を示すものが好ましい。
すなわち、このような近赤外線吸収色材は、可視光線長波長領域で緩やかな吸収を示すため(B)白色顔料の間を透過する可視光長波長の光を効率よく吸収し、遮光性を有することができる。さらに、近赤外線吸収色材は、可視光線領域内で吸収極大を示さないため反射率をほぼ低下させることがなく、本発明の熱可塑性樹脂組成物に高遮光性と高反射性の両効果を同時に発揮させることができる。また、熱可塑性樹脂組成物内を透過する光は、白色顔料によって何度も反射されているため、(C)成分の配合量が微量であっても上記効果を発揮できる。
【0035】
本発明の(C)近赤外線吸収色材には、近赤外線吸収能に優れるものであれば特に制限はない。(C)成分としては、例えば、公知のフタロシアニン系色素、シアニン系色素、ジイモニウム系色素、金属ジチオール錯体系色素、ポリメチン系色素、スクアリリウム系色素、ポルフィリン系色素、無機酸化物粒子等が挙げられる。これらの近赤外線吸収色材中では、フタロシアニン系色素が好ましい。
本発明で使用できるフタロシアニン系化合物としては、近赤外線吸収能に優れるものであれば特に制限されず、公知のフタロシアニン系化合物が使用できる。好ましいフタロシアニン系化合物として、イーエクスカラーIR−10A、イーエクスカラーIR−12、イーエクスカラーIR−14、TX−EX−906B、TX−EX−910B、及びTX−EX−902K(商品名、(株)日本触媒製)等が挙げられる。
【0036】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、可視光線領域内で吸収極大を示さず、可視光線長波長領域で緩やかな吸収を示すことが好ましいが、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて可視光を吸収する色素を添加することができる。可視光を吸収する色素としては、シアニン系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、ポルフィリン系、テトラアザポルフィリン系、金属ジチオール錯体系、スクアリリウム系、アズレニウム系、ジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、オキサジン系、アジン系、チオピリリウム系、ビオローゲン系、アゾ系、アゾ金属錯体系、ビスアゾ系、アントラキノン系、ペリレン系、インダンスロン系、ニトロソ系、インジコ系、アゾメチン系、キサンテン系、オキサノール系、インドアニリン系、キノリン系、ジケトピロロピロール系等、従来公知の色素を広く使用することができる。
【0037】
(C)成分の配合量は、(A)成分と(B)成分との合計量に対して、0.1〜50質量ppmであり、好ましくは0.2〜30質量ppm、さらに好ましくは0.2〜20質量ppmである。配合量が0.1質量ppm未満であると、光線反射率は不充分なものとなり、さらに遮光性が低下する。また、配合量が50質量ppmを超えると、遮光性が不充分なものとなり、さらに光線反射率が大きく低下する。上記範囲内であれば、光線反射率及び遮光性を同時に充分なものとすることができる。
【0038】
((D)フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン)
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、溶融滴下防止効果や高い難燃性が要求される場合、必要に応じて(D)フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」と略記することがある。)((D)成分)を配合することができる。ここで、「フィブリル形成能」とは、せん断力等の外的作用により、樹脂同士が結合して繊維状になる傾向を示すことをいう。
本発明のPTFEの平均分子量は、通常、500,000以上が好ましく、より好ましくは500,000〜10,000,000、さらに好ましくは1,000,000〜10,000,000である。
【0039】
フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)としては、特に制限はないが、例えば、ASTM規格によりタイプ3に分類されるものを用いることができる。このタイプに分類されるものとしては、具体的には、テフロン6−J(商品名、三井・デュポンフロロケミカル(株)製)、ポリフロンD−1及びポリフロンF−103(商品名、ダイキン工業(株)製)等が挙げられる。また、タイプ3以外では、アルゴフロンF5(商品名、モンテフルオス社製)及びポリフロンMPA FA−100(商品名、ダイキン工業(株)製)等が挙げられる。これらのPTFEは二種以上組み合わせて用いてもよい。
上記のようなフィブリル形成能を有するPTFEは、例えば、テトラフルオロエチレンを水性溶媒中で、ナトリウム、カリウムあるいはアンモニウムパーオキシジスルフィドの存在下で、通常、0.007〜0.7MPa程度の圧力下、温度0〜200℃程度、好ましくは20〜100℃で重合させることによって得ることができる。
【0040】
(D)成分の配合量は、(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して、通常、0.1〜1.0質量部程度が好ましく、より好ましくは0.1〜0.5質量部である。この量が1.0質量部以下であると、耐衝撃性及び成形品外観に悪影響を及ぼすことがなく、また混練押出時にストランドの吐出が脈動することがないので、安定したペレット製造を行うことができる。上記範囲では好適な溶融滴下防止効果が得られ、優れた難燃性のものが得られる。
【0041】
((E)ポリオルガノシロキサン)
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、樹脂の劣化を防止し、樹脂の機械的強度や安定性、耐熱性等の特性を維持する点から、必要に応じて(E)ポリオルガノシロキサン((E)成分)を配合することができる。(E)成分として、具体的には、アルキル水素シリコーン、アルコキシシリコーンが挙げられる。
【0042】
アルキル水素シリコーンとしては、例えば、メチル水素シリコーン、エチル水素シリコーン等がある。アルコキシシリコーンとしては、例えば、メトキシシリコーン、エトキシシリコーン等が挙げられる。特に好ましいアルコキシシリコーンは、具体的には、アルコキシ基が直接又は二価炭化水素基を介してケイ素原子に結合したアルコキシシリル基を含むシリコーン化合物であり、例えば、直鎖状、環状、網状及び一部分岐を有する直鎖状のポリオルガノシロキサンが挙げられ、特に直鎖状ポリオルガノシロキサンが好ましい。さらに具体的には、シリコーン主鎖に対してメチレン鎖を介してアルコキシ基と結合する分子構造を有するポリオルガノシロキサンが好ましい。
このような(E)成分としては、例えば、市販の東レ・ダウコーニング(株)製のSH1107、SR2402、BY16−160、BY16−161、BY16−160E、BY16−161E等を好適に使用することができる。
【0043】
この(E)成分の配合量は、酸化チタンの配合量にもよるが、(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して、通常、0.05〜3.0質量部程度が好ましく、より好ましくは0.05〜2.0質量部である。この量が0.05質量部以上であると、ポリカーボネート樹脂の劣化が起こりにくいので、樹脂の分子量が低下することがない。また、3.0質量部以下であると効果と経済性のバランスが良好である上、成形体表面にシルバーが発生することがないので、製品の外観が良好となる。
【0044】
(その他の成分)
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、上記(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の各成分の他に、必要に応じてリン系安定剤を配合することができる。リン系安定剤は、製造時又は成形加工時の熱安定性を向上させ、機械的特性、色相及び成形安定性を向上させる。リン系安定剤としては、リン酸系化合物及び/又は芳香族ホスフィン化合物が挙げられる。
【0045】
リン酸系化合物としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸及びこれらのエステル等が挙げられ、具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、4,4’−ビフェニレンジホスホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル、並びに特開平7−133382号公報に記載のリン化合物(化合物No.1〜10)等が挙げられる。
【0046】
また、必要に応じ、各種の無機質充填剤、添加剤、又はその他の合成樹脂、エラストマー等を配合することができる。
まず、ポリカーボネート樹脂組成物の機械的強度及び耐久性を目的として配合される無機質充填剤としては、例えば、ガラス繊維(GF)、炭素繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク、カーボンブラック、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、アルミナ、シリカ、アスベスト、タルク、クレー、マイカ、石英粉等が挙げられる。また、添加剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、アミン系等の酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の紫外線吸収剤、脂肪族カルボン酸エステル系、パラフィン系、シリコーンオイル、ポリエチレンワックス等の外部滑剤、離型剤、帯電防止剤、難燃剤等が挙げられる。その他の合成樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポスチレン、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、ポリメチルメタクリレート等の各樹脂を挙げることができる。また、エラストマーとしては、例えば、イソブチレン−イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、アクリル系エラストマー等が挙げられる。
【0047】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記の各成分を配合し、必要に応じて溶融混練することにより得ることができる。配合及び溶融混練は通常の方法を採用することができ、通常用いられる機器としては、例えば、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー(商品名)、バンバリーミキサー、ドラムタンブラー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機等を適用することができる。また、溶融混練に際しての加熱温度は通常250〜300℃程度が適当である。
【0048】
[成形体]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、公知の成形方法、例えば、中空成形法、射出成形法、押出成形法、真空成形法、圧空成形法、熱曲げ成形法、圧縮成形法、カレンダー成形法、回転成形法等を適用することにより、高遮光性及び高反射性に優れた成形体とすることができる。
【0049】
また、反射率及び全光線透過率については、実施例において後述するが、光の漏洩に起因する弊害を防止するために、とりわけ液晶ディスプレイ等の分野では、反射率が79%以上であり、全光線透過率が0.3%以下であることが望まれている。本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いて成形した成形体は、厚さ0.5mmにおいても、通常、反射率が79%以上で、かつ全光線透過率が0.3%以下である。さらに本発明において、白色顔料と近赤外線吸収色材の含有量を調製することによって、反射率及び全光線透過率をより優れたものとすることができ、具体的には、反射率が96.5%以上で、かつ全光線透過率が0.25%以下である成形体とすることができる。
特に、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、液晶ディスプレイバックライト等の部品、一般照明装置用部品、LED反射ケース、及び自動車部品等の分野に広く用いられる。
本発明はまた、前述した本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形体をも提供する。この成形体は、特に液晶ディスプレイ搭載部品として好適に使用される。
【実施例】
【0050】
本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0051】
[実施例1〜10、比較例1〜13]
下記の市販品を、表1及び表2に示す割合で配合し、ベント付き二軸押出し機(TEM−35B、東芝機械(株)製)によって、温度280℃で混練し、ペレット化した。
【0052】
(A)熱可塑性樹脂
(a−1)ポリカーボネート樹脂
FN1500:商品名 タフロンFN1500、出光興産(株)製、Mv=14200
FN2200A:商品名 タフロンFN2200A、出光興産(株)製、Mv=17500
(a−2)ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体
FC1700:商品名 タフロンFC1700(ポリカーボネート−ポリジメチルシロキサン共重合体)、出光興産(株)製、Mv=17500、ポリジメチルシロキサン含有量3.5質量%
(B)白色顔料(酸化チタン粉末)
PF-726:商品名 PF-726、石原産業(株)製
PC-3:商品名 PC-3、石原産業(株) 製
なお、酸化チタン粉末PF−726は、表面がシリカ・アルミナ(合計5〜6質量%)で被覆されたものであり、酸化チタン粉末PC−3は、上記PF−726をポリシロキサンでコーティングしたものである。
【0053】
(C)近赤外線吸収色材
IR-12:商品名 イーエクスカラーIR-12、(株)日本触媒製
IR-14:商品名 イーエクスカラーIR-14、(株)日本触媒製
(D)PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)
PTFE:商品名 CD076、旭硝子(株)製
(E)ポリオルガノシロキサン
ポリオルガノシロキサン:商品名 BY16-161、東レ・ダウコーニング(株)製
(その他)
青色色材:商品名 スミトーンシアニンブルーGH、住友ファインケム(株)製
黒白色材:商品名 三菱カーボンMA-100、三菱化学(株)製
【0054】
得られたペレットについて下記の物性試験(1)〜(3)を行い評価した。得られた結果を表1及び表2に示す。
(1)全光線透過率(%)
得られたペレットを、各々120℃で5時間熱風乾燥した後、成形機[住友ネスタールN515/150、住友重機械(株)製]を用いて、300℃の成形温度、80℃の金型温度で、20mm×20mm×0.5mmの全光線透過率測定用の平板として、サンプルを作製した。JIS K7105に準拠して、日本電色工業社製の試験機により、作製したサンプルの平行光線透過率を測定した。
(2)反射率Y(%)
得られたペレットを、各々120℃で5時間熱風乾燥した後、成形機[住友ネスタールN515/150、住友重機械(株)製]を用いて、300℃の成形温度、80℃の金型温度で、20mm×20mm×0.5mmの反射率測定用の平板として、サンプルを作製した。作製したサンプルの反射率は、LCM分光光度計MS2020プラス(Macbeth社製)によるY値で評価した。(全光線透過率と同サンプル)
(3)遮光性(目視判定)
成形機[住友ネスタールN515/150、住友重機械(株)製]を用いて、300℃の成形温度、80℃の金型温度で、20mm×20mm×1.0mmの遮光性評価用の平板を作製した。遮光性評価は、暗室内で直径4mmの冷陰極間[ハリソン電機(株)製、HMB;輝度2000cd/m2]を、前記成形品の裏側に密着させて、光の透過を、◎(透過しない)、○(ほとんど透過しない)、△(少し透過する)、×(かなり透過する)、の基準で判定した。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
表1及び表2から以下のことがわかる。
1.実施例と比較例1〜3との比較から、(C)近赤外線吸収色材を配合することにより特に全光線透過率及び遮光性に優れることがわかる。
2.実施例1〜3と比較例4,5,7との比較から、青色色材や黒色色材を配合するよりも、(C)成分を配合する方が、全光線透過率及び遮光性が向上することがわかる。また、実施例1〜3と比較例6との比較から、(C)成分を配合する方が、全光線透過率及び遮光性に優れ、かつ反射率にも優れることがわかる。
3.実施例4,6と比較例10,11との比較から、青色色材を配合するよりも、(C)成分を配合する方が、全光線透過率、反射率、遮光性に優れることがわかる。また、実施例7と比較例9との比較から、黒色色材を配合するよりも、(C)成分を配合する方が、反射率に優れることがわかる。
4.実施例9と比較例12,13との比較から、(C)成分を配合することにより、全光線透過率、反射率、遮光性について同時に優れることがわかる。
5.比較例8から、(C)成分を本発明で規定した範囲外の量で配合した場合、反射率が低下することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、高遮光性及び高反射性であるため、液晶ディスプレイバックライト等の部品(反射板・フレーム・ランプ支持体等)、一般照明装置用部品(ハウジング、反射板、フレーム等)、LED反射ケース、自動車等の操作パネル等光源から光を発する製品に用いることができる。また、本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形体は、薄肉(厚さ0.5mm)であっても高遮光性及び高反射性であるため、特に液晶ディスプレイ搭載部品として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)熱可塑性樹脂45〜99質量%、及び(B)白色顔料55〜1質量%の割合で含有する組成物であって、かつ(A)成分と(B)成分との合計量に基づき(C)近赤外線吸収色材を0.1〜50質量ppm含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
(A)成分がポリカーボネート系重合体である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
(B)成分が酸化チタンである請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
(C)成分がフタロシアニン系色素である請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対し、さらに(D)フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンを0.1〜1.0質量部含有する請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対し、さらに(E)ポリオルガノシロキサンを0.05〜3.0質量部含有する請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形体。
【請求項8】
厚さ0.5mmとしたときに、反射率が79%以上でかつ全光線透過率が0.3%以下である請求項7に記載の成形体。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の成形体からなる液晶ディスプレイ搭載部品。

【公開番号】特開2009−149741(P2009−149741A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327710(P2007−327710)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】