説明

熱可塑性樹脂組成物

【課題】 成形加工性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
(a)イソブチレンを主成分とする重合体ブロックとイソブチレン以外の単量体成分を主成分とする重合体ブロックとから構成されるイソブチレン系ブロック共重合体100重量部と、(b−1)メタクリル酸メチル30〜100重量%、メタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステルの単量体0〜70重量%、およびこれらと共重合可能なビニル系単量体0〜20重量%を共重合して得られる、100ccのトルエンに0.4gを溶解して30℃で測定した比粘度が0.5〜7である共重合体、および/又は(b−2)ポリテトラフルオロエチレン0.01〜30重量部とを含有する組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソブチレン系ブロック共重合体を含有する熱可塑性樹脂組成物に関する。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、食品用途、日用雑貨用途、玩具・運動用具用途、文具用途、自動車内外装用途、土木シート・防水シート・ガスケット等の土木・建築用途、AV・家電機器用途、OA・事務機器用途、衣料・履き物用途、テキスタイル用途、各種カテーテル・容器・キャップ等の医療用途、紙オムツ・生理用品等の衛生用品、包装輸送資材、電線被覆・ケーブル・コネクター・プラグ等の電線用途等に利用可能である。
【背景技術】
【0002】
弾性を有する高分子材料としては、天然ゴムまたは合成ゴムなどのゴム類に架橋剤や補強剤などを配合して、高温高圧下で架橋したものが汎用されている。しかしながら、この様なゴム類では、高温高圧下で長時間にわたる架橋および成形工程が必要であり、加工性に劣るという欠点を有する。また、架橋したゴムは熱可塑性を示さないため、一般的には、熱可塑性樹脂のようなリサイクル成形を行うことができない。
【0003】
そのため、近年、一般的な熱可塑性樹脂と同じように熱プレス成形や、射出成形、押出し成形などの汎用の溶融成形技術を利用して成形品を簡単に製造することができ、しかもリサイクル成形の可能な熱可塑性エラストマーが種々開発されている。
【0004】
このような熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系、ウレタン系、エステル系、スチレン系、塩化ビニル系などの種々の形式のポリマーがあり、市販されている。
【0005】
これら熱可塑性エラストマーはそれ自身単独で使用されることもあるが、ユーザーの多様なニーズに応えるべく、熱可塑性樹脂と熱可塑性エラストマーを種々組み合わせた熱可塑性樹脂組成物が検討されている。特にポリオレフィン系樹脂とポリスチレン系エラストマーからなる熱可塑性樹脂組成物は硬度、柔軟性等をバランス良く兼ね備えた材料として広く用いられるに至っている(特許文献1)。
【0006】
【特許文献1】特開平11−293083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の組成物を初めとして、従来の熱可塑性樹脂組成物は、成形加工時、特に押出成形、カレンダ成形、ブロー成形中に、樹脂の劣化物や樹脂中の添加剤がダイのリップに付着する、所謂目ヤニが生じることがある。また、成形時に、樹脂組成物中の添加剤が樹脂と接触している金属面に移行する、プレートアウトが生じることがある。このような目ヤニやプレートアウトが生じると、成形品の外観が悪化したり、その後の成形が不能になったりするおそれがあるため、一定時間毎に、成形作業を中断し、ダイリップの清掃をしなければならず、生産性が大きく低下するといった問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を積み重ねた結果、イソブチレン系ブロック共重合体、並びに所定のアクリル系高分子量重合体及びポリテトラフルオロエチレンのうち少なくとも一方を含有してなる熱可塑性樹脂組成物を用いることにより、前記課題を解決することを見出し、本発明に至ったものである。
【0009】
すなわち本発明は、(a)イソブチレンを主成分とする重合体ブロックとイソブチレン以外の単量体成分を主成分とする重合体ブロックとから構成されるイソブチレン系ブロック共重合体100重量部と、
(b−1)メタクリル酸メチル30〜100重量%、メタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステルの単量体0〜70重量%、およびこれらと共重合可能なビニル系単量体0〜20重量%を共重合して得られる、100ccのトルエンに0.4gを溶解して30℃で測定した比粘度が0.5〜7である共重合体、および/又は(b−2)ポリテトラフルオロエチレン0.01〜30重量部
とを含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物に関する。
好ましい実施態様としては、さらにポリオレフィン(c)を1〜500重量部含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物に関する。
好ましい実施態様としては、(a)成分のイソブチレン以外の単量体成分が、芳香族ビニル系単量体を主成分とすることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物に関する。
好ましい実施態様としては、芳香族ビニル系単量体が、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレンおよびインデンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物に関する。
好ましい実施態様としては、(a)イソブチレン系ブロック共重合体が、芳香族ビニル系単量体を主成分とする重合体ブロック−イソブチレンを主成分とする重合体ブロック−芳香族ビニル系単量体を主成分とする重合体ブロックからなるトリブロック共重合体であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物に関する。
好ましい実施態様としては (b−1)成分の(メタ)アクリル酸エステルが、エステル部位の炭素数が1〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルである(ただしメタクリル酸メチルを除く)ことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物に関する。
また、本発明の別の実施態様としては、前述の熱可塑性樹脂組成物からなる成形体に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、所定のイソブチレン系ブロック共重合体と、所定のアクリル系高分子量重合体および/又はポリテトラフルオロエチレンとを含有する。これにより、押出成形、カレンダ成形、ブロー成形等の成形加工性が改良され、その結果、一般工業分野、自動車分野、医療・医薬分野、食品分野等に幅広く利用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(a)イソブチレンを主成分とする重合体ブロックとイソブチレン以外の単量体成分を主成分とする重合体ブロックとから構成されるイソブチレン系ブロック共重合体100重量部と、(b−1)メタクリル酸メチル30〜100重量%、メタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステルの単量体0〜70重量%、およびこれらと共重合可能なビニル系単量体0〜20重量%を共重合して得られる、100ccのトルエンに0.4gを溶解して30℃で測定した比粘度が0.5〜7である共重合体、および/又は(b−2)ポリテトラフルオロエチレン0.01〜30重量部とを含有する。
【0012】
イソブチレンを主成分とする重合体ブロックは、イソブチレン以外の単量体を含んでいても含んでいなくても良いが、イソブチレンを60重量%以上含有するのが好ましく、80重量%以上含有するのがより好ましい。イソブチレン以外の単量体成分を主成分とする重合体ブロックは、イソブチレンの含有量が30重量%以下であるのが好ましく、10重量%以下であるのがより好ましく、3重量%以下であることがさらに好ましい。
【0013】
イソブチレンを主成分とする重合体ブロックおよびイソブチレン以外の単量体成分を主成分とする重合体ブロックに含まれるイソブチレン以外の単量体成分は、カチオン重合可能な単量体成分であれば特に限定されないが、例えば、脂肪族オレフィン類、芳香族ビニル類、ジエン類、ビニルエーテル類、シラン類、ビニルカルバゾール、β−ピネン、アセナフチレン等の単量体を挙げることができる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0014】
脂肪族オレフィン系単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、ペンテン、ヘキセン、シクロヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン、オクテン、ノルボルネン等が挙げられる。
【0015】
芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、o−、m−又はp−メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、2,6−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、α−メチル−o−メチルスチレン、α−メチル−m−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、β−メチル−o−メチルスチレン、β−メチル−m−メチルスチレン、β−メチル−p−メチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、α−メチル−2,6−ジメチルスチレン、α−メチル−2,4−ジメチルスチレン、β−メチル−2,6−ジメチルスチレン、β−メチル−2,4−ジメチルスチレン、o−、m−又はp−クロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、α−クロロ−o−クロロスチレン、α−クロロ−m−クロロスチレン、α−クロロ−p−クロロスチレン、β−クロロ−o−クロロスチレン、β−クロロ−m−クロロスチレン、β−クロロ−p−クロロスチレン、2,4,6−トリクロロスチレン、α−クロロ−2,6−ジクロロスチレン、α−クロロ−2,4−ジクロロスチレン、β−クロロ−2,6−ジクロロスチレン、β−クロロ−2,4−ジクロロスチレン、o−、m−又はp−t−ブチルスチレン、o−、m−又はp−メトキシスチレン、o−、m−又はp−クロロメチルスチレン、o−、m−又はp−ブロモメチルスチレン、シリル基で置換されたスチレン誘導体、インデン、ビニルナフタレン等が挙げられる。
【0016】
ジエン系単量体としては、ブタジエン、イソプレン、ヘキサジエン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、ジビニルベンゼン、エチリデンノルボルネン等が挙げられる。
【0017】
ビニルエーテル系単量体としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、(n−、イソ)プロピルビニルエーテル、(n−、sec−、tert−、イソ)ブチルビニルエーテル、メチルプロペニルエーテル、エチルプロペニルエーテル等が挙げられる。
【0018】
シラン化合物としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、ジビニルジクロロシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジメチルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、トリビニルメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0019】
イソブチレン以外の単量体成分を主成分とする重合体ブロックは、物性及び重合特性等のバランスから、芳香族ビニル系単量体を主成分とすることが好ましく、芳香族ビニル系単量体の含有量が60重量%以上であるのがより好ましく、80重量%以上であるのがさらに好ましい。芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、およびインデンからなる群から選ばれる1種以上の単量体を使用することが好ましく、コストの面からスチレン、α−メチルスチレン、あるいはこれらの混合物を用いることが特に好ましい。
【0020】
イソブチレン系ブロック共重合体は、イソブチレンを主成分とする重合体ブロック及びイソブチレン以外の単量体成分を主成分とする重合体ブロックを有しているものであれば特に制限はなく、例えば、直鎖状、分岐状、星状等の構造を有するブロック共重合体、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体、マルチブロック共重合体等のいずれも選択可能である。好ましいブロック共重合体としては、物性バランス及び成形加工性の点から芳香族ビニル系単量体を主成分とする重合体ブロック−イソブチレンを主成分とする重合体ブロック−芳香族ビニル系単量体を主成分とする重合体ブロックからなるトリブロック共重合体が挙げられる。これらは所望の物性・成形加工性を得る為に1種又は2種以上を組み合わせて使用可能である。
【0021】
イソブチレンを主成分とする重合体ブロックとイソブチレン以外の単量体成分を主成分とする重合体ブロックの割合に関しては、特に制限はないが、柔軟性およびゴム弾性の面から、イソブチレンを主成分とする重合体ブロックが95から40重量%、イソブチレンを主成分としない単量体成分からなる重合体ブロックが5から60重量%であることが好ましく、イソブチレンを主成分とする重合体ブロックが90から60重量%、イソブチレンを主成分としない単量体成分からなる重合体ブロックが10から40重量%であることが特に好ましい。
【0022】
またイソブチレン系ブロック共重合体の分子量にも特に制限はないが、流動性、加工性、ゴム弾性等の面から、数平均分子量で30000〜500000であることが好ましく、50000〜400000であることが特に好ましい。イソブチレン系ブロック共重合体の数平均分子量が上記範囲よりも低い場合には機械的な物性が十分に発現されず、一方上記範囲を超える場合には流動性、加工性の面で不利である。
【0023】
イソブチレン系ブロック共重合体の製造方法については特に制限はないが、例えば、下記一般式(1)で表される化合物の存在下に、イソブチレンを主成分とする単量体及びイソブチレンを主成分としない単量体成分を重合させることにより得られる。
(CR12X)nR3 (1)
[式中Xはハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基またはアシロキシ基から選ばれる置換基、R1、R2はそれぞれ水素原子または炭素数1〜6の1価炭化水素基でR1、R2は同一であっても異なっていても良く、R3は多価芳香族炭化水素基または多価脂肪族炭化水素基であり、nは1〜6の自然数を示す。]
上記一般式(1)で表わされる化合物は開始剤となるものでルイス酸等の存在下炭素陽イオンを生成し、カチオン重合の開始点になると考えられる。本発明で用いられる一般式(1)の化合物の例としては、次のような化合物等が挙げられる。
【0024】
(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン〔C65C(CH32Cl〕、1,4−ビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン〔1,4−Cl(CH32CC64C(CH32Cl〕、1,3−ビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン〔1,3−Cl(CH32CC64C(CH32Cl〕、1,3,5−トリス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン〔1,3,5−(ClC(CH32363〕、1,3−ビス(1−クロル−1−メチルエチル)−5−(tert−ブチル)ベンゼン〔1,3−(C(CH32Cl)2-5−(C(CH33)C63
これらの中でも特に好ましいのは、ビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン[C64(C(CH32Cl)2]、トリス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン[(ClC(CH32363]である。[なおビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼンは、ビス(α−クロロイソプロピル)ベンゼン、ビス(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼンあるいはジクミルクロライドとも呼ばれ、トリス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼンは、トリス(α−クロロイソプロピル)ベンゼン、トリス(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼンあるいはトリクミルクロライドとも呼ばれる]。
【0025】
イソブチレン系ブロック共重合体を重合により製造する際に、さらにルイス酸触媒を共存させることもできる。このようなルイス酸としてはカチオン重合に使用できるものであれば良く、TiCl4、TiBr4、BCl3、BF3、BF3・OEt2、SnCl4、SbCl5、SbF5、WCl6、TaCl5、VCl5、FeCl3、ZnBr2、AlCl3、AlBr3等の金属ハロゲン化物;Et2AlCl、EtAlCl2等の有機金属ハロゲン化物を好適に使用することができる。中でも触媒としての能力、工業的な入手の容易さを考えた場合、TiCl4、BCl3、SnCl4が好ましい。ルイス酸の使用量は特に限定されないが、使用する単量体の重合特性あるいは重合濃度等を鑑みて設定することができる。一般的には、一般式(1)で表される化合物に対して0.1〜100モル当量使用し、1〜50モル当量の範囲で使用するのが好ましい。
【0026】
イソブチレン系ブロック共重合体の重合に際しては、さらに、必要に応じて電子供与体成分を共存させることもできる。この電子供与体成分は、カチオン重合に際して、成長炭素カチオンを安定化させる効果があるものと考えられており、電子供与体の添加によって分子量分布の狭い、構造が制御された重合体が生成する。使用可能な電子供与体成分としては特に限定されないが、例えば、ピリジン類、アミン類、アミド類、スルホキシド類、エステル類、または金属原子に結合した酸素原子を有する金属化合物等を挙げることができる。
【0027】
イソブチレン系ブロック共重合体の重合は、必要に応じて有機溶媒中で行うことができ、有機溶媒としてはカチオン重合を本質的に阻害しなければ、特に制約なく使用することができる。具体的には、塩化メチル、ジクロロメタン、クロロホルム、塩化エチル、ジクロロエタン、n−プロピルクロライド、n−ブチルクロライド、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン等のアルキルベンゼン類;エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の直鎖式脂肪族炭化水素類;2−メチルプロパン、2−メチルブタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,2,5−トリメチルヘキサン等の分岐式脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の環式脂肪族炭化水素類;石油留分を水添精製したパラフィン油等を挙げることができる。
【0028】
これらの溶媒は、ブロック共重合体を構成する単量体の重合特性及び生成する重合体の溶解性等のバランスを考慮して、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
溶媒の使用量は、得られる重合体溶液の粘度や除熱の容易さを考慮して、重合体の濃度が1〜50wt%、好ましくは5〜35wt%となるように決定される。
【0030】
重合を行う際は、各成分を、冷却下例えば−100℃以上0℃未満の温度で混合する。エネルギーコストと重合の安定性を考慮すると、特に好ましい温度範囲は−30℃〜−80℃である。
【0031】
共重合体(b−1)は、メタクリル酸メチル30〜100重量%と、メタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸0〜70重量%、およびこれらと共重合可能なビニル系単量体0〜20重量%を共重合して得られる、100ccのトルエンに0.4gを溶解して30℃で測定した比粘度が0.5〜7である共重合体である。共重合体(b−1)は、イソブチレン系ブロック共重合体(a)の加工性を改良する目的で添加される。ここで、(メタ)アクリル酸エステルはアクリル酸エステルおよびメタアクリル酸エステルを意味する。
【0032】
メタクリル酸メチルを除くメタクリル酸エステルの具体例としては、たとえばメタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどのメタクリル酸アルキルエステルなどがあげられる。また、アクリル酸エステルの具体例としては、たとえばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシルなどのアルキル基のアクリル酸アルキルエステルなどがあげられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
共重合体(b−1)の(メタ)アクリル酸アルキルエステルのエステル部の炭素数は、加工性の点から、1〜12個であるのが好ましい。
【0034】
これらと共重合可能なビニル系単量体の具体例としては、たとえばスチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニルやアクリロニトリルなどの不飽和ニトリルなどがあげられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
共重合体(b−1)は、メタクリル酸メチル30〜100重量%と、メタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステル0〜70重量%と、これらと共重合可能なビニル系単量体0〜20重量%であることが、得られる樹脂組成物の加工性、均一性の面から好ましい。より好ましくは、メタクリル酸メチルが60〜90重量%、メタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステルが0〜40重量%、ビニル系単量体が0〜10重量%である。更に好ましくは、メタクリル酸メチルが70〜85重量%、メタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステルが0〜30重量%、ビニル系単量体が0〜5重量%である。
【0036】
また、共重合体(b−1)から得られる共重合体の0.4gを100ccのトルエンに溶解して30℃で測定した比粘度が0.5未満である場合は充分な加工性の改良効果が得られず、7を超えると得られる樹脂組成物が不均一となり好ましくない。
【0037】
上記共重合体(b−1)は、適当な媒体、乳化剤および重合開始剤の存在下で乳化重合を行なうことにより得ることが出来る。また、共重合体(b−1)を構成する単量体成分を乳化重合して、共重合体(b−1)の重合体ラテックスを得、さらに単量体成分を追加して重合を行なうこともできる。この乳化重合で使用される媒体としては通常水が使用される。乳化剤としては公知のアニオン系界面活性剤や非イオン系界面活性剤が使用される。重合開始剤としては通常の水溶性または油溶性の単独系またはレドックス系のものが使用される。
【0038】
共重合体(b−1)としては種々の市販品があり、そのようなものとして、たとえばカネエースPA40,PA60(以上、(株)カネカ製)や、P530、P531(以上、三菱レイヨン(株)製)などが代表例としてあげられる。
【0039】
ポリテトラフルオロエチレン(b−2)成分は、(b−1)成分同様に、上記イソブチレン系ブロック共重合体の加工性を改良する目的で添加される。ポリテトラフルオロエチレンとしては、分子量が50万以上、2,000万以下のものを使用するのが好ましい。ポリテトラフルオロエチレンの分子量が50万未満の場合には、サイジングダイの汚れ、すなわちプレートアウトを解消することはできず、加工性を改良するのが困難である。また分子量が2,000万を超える場合には、成形が難しくなる。
【0040】
また、本発明に使用されるポリテトラフルオロエチレンは、剪断力を加えることにより繊維化されるものが好ましく、たとえば乳化重合法などによりえられる高分子量のポリテトラフルオロエチレンの乳化分散体を凝集させて製造したパウダー、懸濁重合法などによりえられる高分子量のポリテトラフルオロエチレンから製造したパウダーなどがあげられる。なお、それらのなかでも乳化重合法などによりえられる高分子量のポリテトラフルオロエチレンの乳化分散体を凝集させて製造したパウダーが、剪断力により繊維化されやすいという点から好ましい。繊維状にならないものは、溶融時の張力増大などによる加工性の改良などの効果を発現しないため、本発明には好ましくない。剪断力によって繊維化するポリテトラフルオロエチレンの代表例としては、たとえばポリフロンTFE−F103、ポリフロンTFE−F104(以上、ダイキン工業(株)製)や、テフロンTFE−6J、テフロン6C−J(以上、三井・デュポンフロロケミカル(株)製)などがあげられる。
【0041】
また、このようにして繊維化したポリテトラフルオロエチレンの繊維径は、あまりにも大きいばあいには、前記加工性の改良効果が充分に発現されにくくなる傾向があるので、10μm以下、好ましくは5μm以下、さらに好ましくは2μm以下であることが望ましい。なお、かかる繊維化したポリテトラフルオロエチレンの繊維径は、あまりにも小さい場合も、加工性の改良効果が充分に発現されにくくなる傾向があるので、0.001μm程度以上であることが好ましく、0.01μm程度以上であることがより好ましい。なお、これらのポリテトラフルオロエチレンの繊維長には、とくに限定がない。
共重合体(b−1)、ポリテトラフルオロエチレン(b−2)は、イソブチレン系ブロック共重合体(a)の加工性改良に有用であり、それぞれ単独で用いてもよく、両者を併用してもよい。両者を併用する場合の混合割合は、とくに限定するものではない。共重合体(b−1)、ポリテトラフルオロエチレン(b−2)を併用した市販品の代表例として、メタブレンA3000(三菱レイヨン製)があげられる。
【0042】
本発明にかかる熱可塑性樹脂組成物は、イソブチレン系ブロック共重合体(a)100重量部に対して、共重合体(b−1)およびポリテトラフルオロエチレン(b−2)を合計で0.01〜20重量部含有し、0.3〜10重量部含有するのが好ましい。添加量が0.01重量部未満の場合は、充分な加工性改良の効果が得られず、20重量部を超えると加工時の樹脂粘度が高くなり、加工が困難になる。
【0043】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、成形流動性を付与する目的で、(c)ポリオレフィンも使用してもよい。ポリオレフィンとしては、α−オレフィンの単独重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物、またはα−オレフィンと他の不飽和単量体とのランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体及びこれら重合体の酸化、ハロゲン化又はスルホン化したもの等を、それぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。具体的には、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、塩素化ポリプロピレン等のポリプロピレン系樹脂、ポリ−1−ブテン、ポリイソブチレン、ポリメチルペンテン、環状オレフィンの(共)重合体等が例示できる。これらの中でコストと物性バランスの点からポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン又はこれらの混合物が好ましく使用できる。ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどが例示でき、ポリプロピレンとしては、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレンなどが例示できる。
【0044】
使用するポリオレフィンのメルトフローレート(MFR)としては、特に制限がないものの、成形流動性の点から、0.1〜100(g/10min)であることが好ましく、1〜100(g/10min)であることがより好ましい。
【0045】
ポリオレフィン(c)は、イソブチレン系ブロック共重合体(a)100重量部に対して1〜500重量部混合するのが好ましく、1〜400重量部混合するのがより好ましく、1〜300重量部混合するのが更に好ましい。500重量部を超えると硬度が高くなり、またイソブチレン系ブロック共重合体(a)の特性が低下する傾向がある。
【0046】
本発明の組成物には、必要に応じて滑剤を使用することができる。滑剤としては、脂肪酸アミド系滑剤、脂肪酸エステル系滑剤、脂肪酸系滑剤、脂肪族アルコール系滑剤、パラフィン系滑剤などが好ましく用いられ、これらの中から2種以上を選択して用いてもよい。脂肪酸アミド系滑剤としては、エチレンビスステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、p−フェニレンビスステアリン酸アミドなどが挙げられる。脂肪酸エステル系滑剤としては、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、オレイン酸メチル、エルカ酸メチル、ベヘニン酸メチル、ラウリン酸ブチル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、ヤシ脂肪酸オクチル、ステアリン酸オクチル、特殊牛脂脂肪酸オクチル、ラウリン酸ラウリル、ステアリン酸ステアリル、ベヘニン酸ベヘニル、ミリスチン酸セチル、牛脂硬化油、ヒマシ硬化油などが挙げられる。脂肪酸系滑剤としては、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などが挙げられる。
【0047】
脂肪族アルコール系滑剤としては、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ミリスチルアルコール、ラウリルアルコールなどが挙げられる。
パラフィン系滑剤としては、パラフィンワックス、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどが挙げられる。
【0048】
これらの中では、特に、射出成形後の粘着が小さくなることから、脂肪酸エステル系滑剤、脂肪酸系滑剤、パラフィン系滑剤が好ましい。
【0049】
滑剤は、成分イソブチレン系ブロック共重合体(a)100重量部に対し、0.1〜10重量部混合することが好ましい。0.1重量部より少ないと、金属面との滑性が不足し、粘着により加工性や表面性が低下する傾向があり、10重量部より多く添加すると、十分に混合できずに滑剤成分が分離してくる傾向がある。
【0050】
本発明には、軟化剤も必要に応じて使用することができる。特に限定されないが、これら軟化剤としては室温で液体又は液状のものが好適に用いられる。また親水性及び疎水性のいずれの軟化剤も使用できる。このような軟化剤としては鉱物油系、植物油系、合成系等の各種ゴム用又は樹脂用軟化剤が挙げられる。鉱物油系としては、ナフテン系、パラフィン系等のプロセスオイル等が、植物油系としては、ひまし油、綿実油、あまみ油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、木ろう、パインオイル、オリーブ油等が、合成系としてはポリブテン、低分子量ポリブタジエン等が例示できる。これらの中でも成分(a)との相溶性あるいは熱可塑性樹脂組成物の物性バランスの点から、パラフィン系プロセスオイル又はポリブテンが好ましく用いられる。これら軟化剤は所望の粘度及び物性を得るために、これらの2種以上を適宜組み合わせて使用することも可能である。
【0051】
軟化剤は、イソブチレン系ブロック共重合体(a)100重量部に対して、0〜100重量部混合するのが好ましく、0〜50重量部混合するのがより好ましく、0〜30重量部混合するのが更に好ましい。100重量部を超えると、軟化剤のブリードアウトが発生するおそれがある。
【0052】
さらに本発明の樹脂組成物には、物性改良あるいは経済上のメリットから、充填材を配合してもよい。好適な充填材としては、クレー、珪藻土、シリカ、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、金属酸化物、マイカ、グラファイト、水酸化アルミニウム等の麟片状無機充填材;各種の金属粉、木片、ガラス粉、セラミックス粉、カーボンブラック、粒状又は粉末ポリマー等の粒状又は粉末状固体充填材;その他の各種の天然又は人工の短繊維、長繊維等が例示できる。また中空フィラー、例えば、ガラスバルーン、シリカバルーン等の無機中空フィラー、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン共重合体からなる有機中空フィラーを配合することにより、軽量化を図ることができる。これらの充填材は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0053】
充填材は、イソブチレン系ブロック共重合体(a)100重量部に対して0〜100重量部混合するのが好ましく、0〜50重量部混合するのがより好ましく、0〜30重量部混合するのが更に好ましい。100重量部を超えると、得られる熱可塑性樹脂組成物の機械強度の低下が起こり、柔軟性も損なわれることとなる。
【0054】
また本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、酸化防止剤及び/又は紫外線吸収剤を配合することができる。これらはイソブチレン系ブロック共重合体(a)100重量部に対して0.01〜10重量部混合するのが好ましく、0.01〜5重量部混合するのがより好ましい。
【0055】
さらに他の添加剤として難燃剤、抗菌剤、光安定剤、着色剤、流動性改良剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、架橋剤、架橋助剤等を添加することができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用可能である。
【0056】
さらに本発明の熱可塑性樹脂組成物の性能を損なわない範囲であれば、各種熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、他の熱可塑性エラストマー等を配合しても良い。
【0057】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法には、特に制限はなく、公知の方法を適用することができる。例えば、前記の各成分及び所望により添加剤成分を加熱混練機、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ブラベンダー、ニーダー、高剪断型ミキサー等を用いて溶融混練することで製造することができる。また各成分の混練順序は特に限定されず、使用する装置、作業性あるいは得られる熱可塑性樹脂組成物の物性に応じて決定することができる。
【実施例】
【0058】
以下実施例により本発明をさらに具体的に説明する。尚、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更実施可能である。
【0059】
本実施例に示すイソブチレン系ブロック共重合体の分子量及び熱可塑性樹脂組成物の物性は以下に示す方法で測定した。
【0060】
(分子量)
Waters社製GPCシステム(カラム:昭和電工(株)製Shodex K−804(ポリスチレンゲル)、移動相:クロロホルム)を使用し、数平均分子量はポリスチレン換算したものを用いた。
【0061】
(押出加工性(シート表面性))
押出し機のホッパー付近温度160℃、中間部220℃、先端部230℃に温度調節したコニカル二軸押出し機((株)東洋精機製作所製)を使用し、ペレット状の組成物を供給し、スクリュー回転数100rpmにて、先端に取り付けたTダイから幅15mm長のスリットシートを得た。このシートの外観性を目視にて、以下の3段階で評価した。
○:平滑で外観良好
△:若干表面の荒れが見られる
×:表面荒れがひどく外観が悪い
【0062】
(目ヤニの発生)
押出し機のホッパー付近温度160℃、中間部220℃、先端部230℃に温度調節したコニカル二軸押出し機((株)東洋精機製作所製)にTダイを付け、先端部温度230℃、スクリュー回転数100rpmで押出しを行ない、目ヤニの度合いを以下の3段階で評価した。
○:ほとんど発生しない
△:若干発生する
×:多量に発生する
【0063】
以下に、イソブチレン系ブロック共重合体の製造例を示す。
【0064】
(製造例1)スチレン含量30%のトリブロック構造共重合体(以下、SIBSと略す)
500mLのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換した後、注射器を用いて、n−ヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)97.6mL及び塩化ブチル(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)140.5mLを加え、重合容器を−70℃のドライアイス/メタノールバス中につけて冷却した後、イソブチレンモノマー47.7mL(505.3mmol)が入っている三方コック付耐圧ガラス製液化採取管にテフロン(登録商標)製の送液チューブを接続し、重合容器内にイソブチレンモノマーを窒素圧により送液した。p−ジクミルクロライド0.097g(0.42mmol)及びN,N−ジメチルアセトアミド0.073g(0.84mmol)を加えた。次にさらに四塩化チタン1.66mL(15.12mmol)を加えて重合を開始した。重合開始から75分撹拌を行った後、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約1mLを抜き取った。続いて、スチレンモノマー13.71g(131.67mmol)を重合容器内に添加した。該混合溶液を添加してから75分後に、大量の水に加えて反応を終了させた。
【0065】
反応溶液を2回水洗し、溶媒を蒸発させ、得られた重合体を60℃で24時間真空乾燥することにより目的のブロック共重合体を得た。得られたイソブチレン系ブロック共重合体のGPC分析を行ったところ、数平均分子量は103,000であり、1H−NMRにより求めたポリスチレンの含有量は30重量%であった。
【0066】
(実施例、比較例)
各成分を表1に示した割合で、200℃に設定したラボプラストミル((株)東洋精機製作所製)を用いて、5分間溶融混練した。得られた組成物を更にコニカル二軸押出し機((株)東洋精機製作所製:TEM−50)を使用し、先端に取り付けたTダイよりシート状の熱可塑性樹脂組成物を得て、押出性評価を行った。評価結果を表1に示す。なお、使用した各成分の詳細および略号は以下の通りである。
【0067】
成分(a)イソブチレン系ブロック共重合体
上記製造例で製造したもの。
成分(b−1)
アクリル系高分子量重合体:株式会社カネカ社製 カネエースPA60
(以下PA60と略す)
成分(b−2)
ポリテトラフルオロエチレン:株式会社旭硝子社製 PTFE−G350(以下、PTFEと略す)
成分(b−1)と(b−2)の混合粉体物
三菱レイヨン株式会社社製 メタブレンA3000(以下、A3000と略す)
成分(c)ポリオレフィン
低密度ポリエチレン:三井化学株式会社製ハイゼックス2200J(MFR:12g/10min、以下LDPEと略す)
4−メチル−1−ペンテン系重合体:三井化学株式会社製MX002(MFR:23、以下TPXと略す)
成分(d)軟化剤
パラフィン系オイル:出光興産株式会社製ダイアナプロセスPW−90(以下PW90と略す)
成分(e)ポリ塩化ビニル樹脂(平均重合度700)
【0068】
【表1】

【0069】
実施例1〜7と比較例1〜5を比較してわかるように、比較例1〜5の熱可塑性樹脂組成物では、押出表面性が劣り、また目ヤニに発生が生じているが、実施例1〜7、特に実施例2〜6の熱可塑性樹脂組成物は、押出成形時のシート表面性が良好であり、また目ヤニの発生を抑制できている。従って、本発明にかかる組成物を用いることにより、各種成形体を安定的に連続生産することが可能である。
【0070】
このように、本発明にかかる熱可塑性樹脂組成物は、成形時の加工性が著しく改良され、押出成形、カレンダ成形、ブロー成形等を用いて、各種工業用途等へ好適に使用することができることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)イソブチレンを主成分とする重合体ブロックとイソブチレン以外の単量体成分を主成分とする重合体ブロックとから構成されるイソブチレン系ブロック共重合体100重量部と、
(b−1)メタクリル酸メチル30〜100重量%、メタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステルの単量体0〜70重量%、およびこれらと共重合可能なビニル系単量体0〜20重量%を共重合して得られる、100ccのトルエンに0.4gを溶解して30℃で測定した比粘度が0.5〜7である共重合体、および/又は(b−2)ポリテトラフルオロエチレン0.01〜30重量部
とを含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
さらにポリオレフィン(c)を1〜500重量部含有することを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
(a)成分のイソブチレン以外の単量体成分が、芳香族ビニル系単量体を主成分とすることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
芳香族ビニル系単量体が、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレンおよびインデンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
(a)イソブチレン系ブロック共重合体が、芳香族ビニル系単量体を主成分とする重合体ブロック−イソブチレンを主成分とする重合体ブロック−芳香族ビニル系単量体を主成分とする重合体ブロックからなるトリブロック共重合体であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
(b−1)成分の(メタ)アクリル酸エステルが、エステル部位の炭素数が1〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルである(ただしメタクリル酸メチルを除く)ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形体。

【公開番号】特開2006−274132(P2006−274132A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−97608(P2005−97608)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】