説明

熱可逆記録媒体及びそれを用いた画像処理方法

【課題】記録感度が良好で、耐熱保存性にも優れ、さらに低温低湿環境においても十分な消去性を有する熱可逆記録媒体および該熱可逆記録媒体を用いた画像処理方法を提供すること。
【解決手段】支持体上に、電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物を有する熱可逆記録層を具備する熱可逆性記録媒体において、該電子受容性化合物として下記式(1)で表わされるフェノール化合物を用いることを特徴とする熱可逆記録媒体。


(式(1)中、mは11以上の整数を表し、nは22以上の整数を表す)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物との間の発色反応を利用し、熱エネルギーを制御することにより発色画像の形成と消去が可能な熱可逆記録媒体、及び該熱可逆記録媒体を用いた画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子供与性呈色性化合物(以下、発色剤またはロイコ染料ともいう)と電子受容性化合物(以下、顕色剤ともいう)との間の発色反応を利用した熱記録媒体が広く知られている。熱記録媒体は、OA化の進展と共に、ファクシミリ、ワードプロセッサー、科学計測機などの出力用紙として、また最近ではプリペイドカードやポイントカードなどの磁気感熱カードとしても広く使用されている。また環境問題、リサイクルの視点からも、何度でも書き換え可能な熱可逆記録媒体の開発が望まれている。
本発明者らは顕色剤として長鎖脂肪族炭化水素基をもつ有機リン酸化合物、脂肪族カルボン酸化合物またはフェノール化合物を用い、これらと発色剤であるロイコ染料とを組み合わせた発明を提案している(特許文献1参照)。この文献において、発色と消色を加熱冷却条件により容易に行なわせることができ、その発色状態と消色状態を常温において安定に保持させることができ、しかも発色と消色を繰り返すことができる熱可逆発色組成物およびこれを記録層に用いた熱可逆記録媒体を提案した。その後、長鎖脂肪族炭化水素基をもつフェノール化合物について特定の構造のものも提案されている(例えば、特許文献2〜4)。
【0003】
しかし、このような材料を用いた熱可逆記録媒体では、消色速度が遅く、書き替えに時間がかかる、消色が不十分、あるいは発色画像の熱安定性が低いなどの問題を有していた。
そこで、さらに本発明者らは特許文献5において、フェノール化合物を用いることで、発色と消色のコントラストが高く、高速消去が可能であり、画像部の発色安定性に優れる記録媒体を提案した。
【0004】
ところで特許文献5に記載のフェノール化合物は高融点なものが多く、発色および消色の際に高温に加熱するなど、高エネルギーの印加が必要であった。高エネルギーの印加のために、記録時に長時間加熱するため記録速度が遅く、また、高温になるため記録媒体へのダメージが大きくその劣化に基づく消去残りが発生しやすく、さらには記録装置、特にその電源が大きくなってしまうなどの問題があった。
一方、特許文献2に記載のフェノール化合物には比較的低融点のものも提案されている。しかしながら、これらの化合物を用いた記録媒体は、発色感度は良好なものの、熱記録した画像の保存性が悪く、実用性の低いものであった。
これらの問題を改良するために本発明者らは、特定のフェノール化合物を用い、これとロイコ染料を組合せることによって、発色感度が良好で、さらに画像の保存性にも優れる熱可逆記録媒体を提案している(特許文献6及び7参照)。
【0005】
これら熱可逆記録媒体が実際に使用される環境は、低温低湿から高温高湿までの広範囲であるため、熱可逆記録媒体としてそれに対応できる必要がある。上記した特許文献6及び7に記載のフェノール化合物では、常温常湿環境では十分な消去性を有するが、低温低湿環境では消去性が悪化して、消去が不十分となる惧れが残されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来技術における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、記録感度が良好で、耐熱保存性にも優れ、さらに低温低湿環境においても十分な消去性を有する熱可逆記録媒体および該熱可逆記録媒体を用いた画像処理方法を提供することを目的とする。
【0007】
本発明者らは、このようなロイコ染料と顕色剤の組成物の可逆的な発色−消色現象では、長鎖脂肪族基をもつ顕色剤のロイコ染料を発色させる能力と分子間の凝集力のバランスが重要であり、さらに記録感度を高めるためには顕色剤の融点を低融点化することが必要であると考え、種々の化合物を検討した。その結果、特定の構造を有するフェノール化合物を顕色剤として用いることにより、上記課題が一挙に解決できることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、上記課題は本発明の(1)〜(12)によって解決される。
(1)支持体上に、電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物を有する熱可逆記録層を具備する熱可逆記録媒体において、該電子受容性化合物として下記式(1)で表わされるフェノール化合物を用いることを特徴とする。
【0009】
【化1】

【0010】
(式(1)中、mは11以上の整数を表し、nは22以上の整数を表わす)
(2)前記(1)に記載の熱可逆記録媒体において、前記mが11から18の整数であり、前記nが22から39の整数であることを特徴とする。
(3)前記(1)または(2)に記載の熱可逆記録媒体において、前記mと前記nの合計値が40以上の整数であることを特徴とする。
(4)前記(1)から(3)のいずれかに記載の熱可逆記録媒体において、前記熱可逆記録層中に、分子中に少なくとも1つ以上のN原子またはO原子を含む2価の基を有する消色促進剤を含有することを特徴とする。
(5)前記(1)から(4)のいずれかに記載の熱可逆記録媒体において、前記熱可逆記録層中に、光熱変換材料を含むことを特徴とする。
(6)前記(1)から(4)のいずれかに記載の熱可逆記録媒体において、光熱変換材料を含有する光熱変換層と前記熱可逆記録層が積層されている。
(7)前記(1)から(4)または(6)のいずれかに記載の熱可逆記録媒体において、前記光熱変換層の上下の層に前記熱可逆記録層が設けられることを特徴とする。
(8)前記(1)から(4)または(6)から(7)のいずれかに記載の熱可逆記録媒体において、光熱変換材料を含有する光熱変換層と前記熱可逆記録層の間に中間層を有する。
(9)前記(1)から(8)のいずれかに記載の熱可逆記録媒体において、さらに酸素遮断層を有することを特徴とする。
(10)前記(9)に記載の熱可逆記録媒体において、前記酸素遮断層が、無機蒸着フィルムを用いて形成されたものである。
(11)前記(1)から(10)のいずれかに記載の熱可逆記録媒体に、レーザ光を照射して加熱して該熱可逆記録媒体に記録する記録工程と、前記熱可逆記録媒体に光を照射して加熱して該熱可逆記録媒体の記録を消去する消去工程の少なくともいずれかの工程を行う画像処理方法を特徴とする。
(12)前記(11)に記載の画像処理方法において、照射するレーザ光がYAGレーザ光、ファイバーレーザ光、及び半導体レーザ光の少なくともいずれかである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、従来技術における問題を解決することができ、記録感度が良好で、画像部の耐熱保存性にも優れ、さらに低温低湿環境においても十分な消去性を有する実用性が高い熱可逆記録媒体及び該熱可逆記録媒体を用いた画像処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)は、熱可逆記録媒体の発色−消色特性を示すグラフであり、(b)は、熱可逆記録媒体の発色−消色変化のメカニズムを表す概略説明図である。
【図2】本発明の画像処理方法に用いられる画像処理装置の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の熱可逆記録媒体について詳細に説明する。
本発明の熱可逆記録媒体は、加熱温度および/または加熱後の冷却速度により相対的に発色した状態と消色した状態を形成し得るものである。この基本的な発色・消色現象を説明する。
図1(a)はこの熱可逆記録媒体の発色濃度と温度との関係を示したものである。初め消色状態Aにある熱可逆記録媒体を昇温していくと、溶融し始める温度T1でロイコ染料と顕色剤が溶融混合し、発色が起こり溶融発色状態Bとなる。溶融発色状態Bから急冷すると発色状態のまま室温に下げることができ、固定された発色状態Cとなる。この発色状態が得られるかどうかは、溶融状態からの降温の速度に依存しており、徐冷では降温の過程で消色が起き、初期と同じ消色状態Aあるいは急冷発色状態Cより相対的に濃度の低い状態が形成される。一方、急冷発色状態Cを再び昇温していくと発色温度より低い温度T2で消色が起き(DからE)、ここから降温すると初期と同じ消色状態Aに戻る。実際の発色温度、消色温度は、用いる顕色剤とロイコ染料の組合せにより変化するので目的に合わせて選択できる。また溶融発色状態の濃度と急冷したときの発色濃度は、必ずしも一致するものではなく、異なる場合もある。
【0014】
本発明の熱記録媒体では、図1(b)に示すように、溶融状態から急冷して得た発色状態(C)は顕色剤とロイコ染料が分子同士で接触反応し得る状態で混合された状態であり、これは固体状態を形成していることが多い。この状態は顕色剤とロイコ染料が凝集して発色を保持した状態(C)であり、この凝集構造の形成により発色が安定化していると考えられる。一方、消色状態(A)または(E)は両者が相分離した状態である。この状態(A)または(E)は少なくとも一方の化合物の分子が集合してドメインを形成して結晶化した状態であり、凝集あるいは結晶化することによりロイコ染料と顕色剤が分離して安定化した状態であると考えられる。本発明では多くの場合、両者が相分離し顕色剤が結晶化することによって、より完全な消色が起きる。図1に示した溶融状態から徐冷による消色((B)から(A))および発色状態からの昇温による消色((C)から(D))は、いずれもこの温度で凝集構造が変化し、相分離や顕色剤の結晶化が起きている。
【0015】
顕色剤は発色性と消去性を与える重要な基本骨格として、発色寄与部位であるフェノール基と、凝集構造を支配している水素結合性会合基及び長鎖脂肪族基から成り立っている。
発色状態の安定性は、顕色剤とロイコ染料の凝集構造が安定であるほどより安定となると考えられ、消去性については、顕色剤が凝集し結晶化しやすいほど、より消去しやすくなると考えられる。このため、これまで顕色剤分子の水素結合性を強くすることが検討されてきた。しかしながら、顕色剤分子の水素結合が強くなると顕色剤が高融点となり、発色開始温度が高くなってしまい記録媒体の発色感度が低下してしまう。
そのため、本発明者らは顕色剤分子構造中に水素結合性の会合基である尿素基とエーテル基を導入することを試み、前記した特許文献6あるいは特許文献7に記載の化合物を用いることにより、顕色剤の高融点化を伴わずに発色の安定性が向上し、記録感度と画像の保存性を両立させることが可能になった。
しかしながらエーテル基を導入したことで、長鎖脂肪族基同士の相互作用が低下し、低温低湿環境での顕色剤の凝集力が不十分となり、その結果、低温低湿環境での消去性が不十分となることに気づいた。
そこで本発明者らは、顕色剤の分子構造中に尿素基とエーテル基を導入し、さらにエーテル基の両側のアルキル基をいずれも従来より長くすることで、顕色剤の高融点化を伴わずに発色の安定性を向上させ、さらに低温低湿環境においても良好な消去性が得られることを見出した。
ここで、本発明において顕色剤として用いられるフェノール化合物は下記式(1)で示されるものである。
【0016】
【化2】

【0017】
式中、mは11以上の整数を表し、好ましくは11から18の整数を表す。また、nは22以上の整数を表し、好ましくは22から29の整数を表す。さらに、mとnの合計値は40以上の整数を表す。
ここで、mが長くなるほど、発色画像の安定化が向上することから、mは11以上が好ましい。また、nが長くなるほど消去性が向上し、特にnが22以上になると低温低湿環境での消去性が大きく向上することから、nは22以上が好ましい。しかし、理由は定かではないが、mおよびnを同時に長くしていくと、mが18を超えた場合にnを22以上にすると低温低湿環境での消去性が低下するという予想外の結果が得られた。また、nが30を超えると原料が高価で入手が困難になるため実用性に問題が生じる。そこで、mとnの合計値が33以上、好ましくは40以上の鎖長であることによって、発色画像の安定性や低温低湿環境での消去性といった記録媒体特性が良好であって、さらに比較的安価に原料が入手可能となり、実用性の高いものとなる。上記したmとnでは、これらが同時に22以上となることはない。またmが18を超えた場合、nは22以上にはならない。
以下に本発明の熱可逆記録媒体に用いられるフェノール化合物を例示する。
【0018】
【化3】

【0019】
中でも、下記式(2)で示されるフェノール化合物を用いることが好ましい。
【0020】
【化4】

【0021】
これらの化学式(1)で表されるフェノール化合物は、例えば、エーテル含有長鎖脂肪族イソシアネート化合物とp−アミノフェノールとのカップリング反応により得られる。また化学式(1)で表されるフェノール化合物は、上記エーテル含有長鎖脂肪族イソシアネート化合物をエーテル含有長鎖脂肪酸またはエーテル含有長鎖脂肪酸エステルから酸クロリド、次いでアジド化、イソシアネートを経由して合成し、p−アミノフェノールとのカップリング反応により得られる。なお、本発明のフェノール化合物は、これらの合成法に何ら限定されるものではない。他のアミノフェノール誘導体化合物も、同様の又は極めて類似の方法で合成することができ、これらの合成法に何ら限定されるものではない。
【0022】
また、本発明において用いられるロイコ染料は、単独又は混合して用いることができ、たとえば、フタリド化合物、アザフタリド化合物、フルオラン化合物など公知の染料前駆体である。
本発明において用いられるロイコ染料の具体例としては、以下のものが挙げられる。2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ(n−ブチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−プロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−イソプロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−イソブチル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−アミル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−sec−ブチル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−アミル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−iso−アミル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−プロピル−N−イソプロピルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−(3−トルイジノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(m−トリクロロメチルアニリノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(m−トリフロロメチルアニリノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(m−トリクロロメチルアニリノ)−3−メチル−6−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−(2,4−ジメチルアニリノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(N−エチル−p−トルイジノ)−3−メチル−6−(N−エチルアニリノ)フルオラン、2−(N−エチル−p−トルイジノ)−3−メチル−6−(N−プロピル−p−トルイジノ)フルオラン、2−アニリノ−6−(N−n−ヘキシル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−(o−クロロアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(o−クロロアニリノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、2−(m−トリフロロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2,3−ジメチル−6−ジメチルアミノフルオラン、3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−ブロモ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロロ−6−ジプロピルアミノフルオラン、3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、3−ブロモ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−クロロ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(o−クロロアニリノ)−3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−(m−トリフロロメチルアニリノ)−3−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(2,3−ジクロロアニリノ)−3−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンゾ−6−ジエチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−(m−トリフロロメチルアニリノ)フルオラン、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド、3−(1−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−メチル−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−メチル−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(4−N−n−アミル−N−メチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−メチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−ヘキシルオキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−3−エトキシプロピル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−テトラヒドロフルフリル−N−エチルアミノ)フルオラン、等が挙げられる。
【0023】
この中で特に、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−3−エトキシプロピル−N−エチルアミノ)フルオラン等の、フルオランの6位のアミノ側鎖の中にエーテル基を有する構造を持つと、画像の消去性能を向上させることができる。
エーテル基を有するアミノ側鎖の構造としては、例えば、N−エチル−N−メトキシメチルアミノ、N−エトキシメチル−N−エチルアミノ、N−3−エトキシプロピル−N−エチルアミノ、N,N−ジ(3−エトキシプロピル)アミノ、N−エチル−N−3−オクタデシルオキシプロピルアミノなどが挙げられる。
【0024】
ロイコ染料と顕色剤の割合は、使用する化合物の組み合わせにより適切な範囲が変化するが、おおむねモル比で発色剤1に対し顕色剤が0.1から20の範囲であり、好ましくは0.2から10の範囲である。この範囲より顕色剤が少なくても多くても発色状態の濃度が低下し問題となる。また、ロイコ染料と顕色剤はマイクロカプセルに内包して用いることもできる。
【0025】
前記電子受容性化合物(顕色剤)は、消色促進剤として分子中に少なくとも1つ以上のN原子またはO原子を含む2価の基を有する化合物を併用することにより、消去状態を形成する過程において消色促進剤と顕色剤の間に分子間相互作用が誘起され、消去速度が格段に速くなる。
本発明の熱可逆記録媒体に具備される熱可逆記録層(以下、「記録層」と言うことがある)に好ましく用いられる消色促進剤としては分子中にアミド基(−NHCO−)、2級アミド基(>NCO−)、ウレタン基(−NHCOO−)、尿素基(−NHCONH−)、カルボニル基(−CO−)、ジアシルヒドラジド基(−CONHNHCO−)、スルホン基(−SO−)等を有する化合物が好ましく、中でも、アミド基、2級アミド基、ウレタン基、カルボニル基を有する化合物が特に好ましい。
また、消色促進剤としてベタイン構造を有する化合物を用いると、少量の添加量で良好な消去性が得られることから好ましい。
【0026】
前記記録層には、バインダー樹脂、更に必要に応じて記録層の塗布特性や発色消色特性を改善したり、制御するための各種添加剤を用いることができる。これらの添加剤としては、例えば、界面活性剤、導電剤、充填剤、酸化防止剤、光安定化剤、発色安定化剤、消色促進剤、可塑剤などが挙げられる。
【0027】
前記バインダー樹脂としては、支持体上に記録層を結着することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、従来から公知の樹脂の中から1種、又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、繰り返し時の耐久性を向上させるため、また前記記録層中に光熱変換材料を含有させる場合は、繰返し時の加熱による光熱変換材料の周囲の樹脂成分や光熱変換材料自体の熱分解によるガス化を防止するため、熱、紫外線、電子線などによって架橋可能な樹脂が好ましく用いられ、特にイソシアネート系化合物などを架橋剤として用いた樹脂が好適である。前記バインダー樹脂としては、例えば、水酸基やカルボキシル基等の、前記した架橋剤と反応する基を持つ樹脂、又は水酸基やカルボキシル基等を持つモノマーとそれ以外のモノマーを共重合した樹脂であって水酸基やカルボキシル基等の、前記した架橋剤と反応する基を持つ共重合体などが挙げられる。このような樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂、等が挙げられる。これらの中でも、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂が特に好ましい。
【0028】
前記バインダー樹脂において、その水酸基価は、十分な塗膜強度が得られ、有機溶剤への溶解性が良好である50mg−KOH/g〜400mg−KOH/gのものであることが好ましく、100mg−KOH/g〜350mg−KOH/gのものがより好ましい。水酸基価が50mg−KOH/gを下回った場合、十分な塗膜強度を得ることができず、繰り返し印字消去を行なうと記録媒体の劣化がおきやすくなったり、光熱変換材料の周囲の樹脂成分や光熱変換材料自体が熱分解してガスが発生しやすくなる。一方、400mg−KOH/gを超える場合は完全に膜を架橋することができず、未架橋成分が発色系に悪影響を与えるため、好ましくない。また、有機溶剤に対する溶解性が低下し、完全に有機溶剤に溶解できない場合がある。
【0029】
前記記録層中における前記発色剤とバインダー樹脂との混合割合(質量比)は、発色剤1に対して0.1〜10が好ましい。バインダー樹脂が少なすぎると前記記録層の熱強度が不足することがあり、一方、バインダー樹脂が多すぎると、発色濃度が低下して問題となることがある。
【0030】
前記架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソシアネート類、アミノ樹脂、フェノール樹脂、アミン類、エポキシ化合物、等が挙げられる。これらの中でも、イソシアネート類が好ましく、イソシアネート基を複数持つポリイソシアネート化合物が特に好ましい。
【0031】
バインダー樹脂に対する前記架橋剤の添加量は、バインダー樹脂中に含まれる活性基の数に対する架橋剤の官能基の比は0.01〜5が好ましい。これ以下では熱強度が不足してしまい、また、これ以上添加すると発色及び消色特性に悪影響を及ぼす。
更に、架橋促進剤としてこの種の反応に用いられる触媒を用いてもよい。
【0032】
前記架橋した場合の樹脂のゲル分率は、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、70%以上が更に好ましい。前記ゲル分率が30%未満であると、架橋状態が十分でなく、耐久性に劣ることがある。
【0033】
前記バインダー樹脂が架橋状態にあるのか非架橋状態にあるのかを区別する方法としては、例えば、MEK(メチルエチルケトン)やTHF(テトラヒドロフラン)等の溶解性の高い溶剤中に塗膜を浸すことによって区別することができる。即ち、非架橋状態にあるバインダー樹脂は、溶剤中に該樹脂が溶けだし溶質中には残らなくなる。
【0034】
前記記録層形成用塗布液(記録層用塗布液とも言う)に用いられる溶剤、塗液の分散装置、塗工方法、乾燥・架橋方法等は公知の方法を用いることができる。
【0035】
なお、記録層用塗布液の調製には、前記分散装置を用いて各材料を溶剤中に分散してもよいし、各々単独で溶剤中に分散しこれらを混ぜ合わせてもよい。更に加熱溶解して急冷又は徐冷によって析出させてもよい。
【0036】
前記記録層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、
(1)前記樹脂、及び前記電子供与性呈色化合物及び電子受容性化合物を溶剤中に溶解乃至分散させた記録層用塗布液を支持体上に塗布し、該溶剤を蒸発させてシート状等にするのと同時に又はその後に架橋する方法、(2)前記樹脂のみを溶解した溶剤に前記電子供与性呈色化合物及び電子受容性化合物を分散させた記録層用塗布液を支持体上に塗布し、該溶剤を蒸発させてシート状等にすると同時に又はその後に架橋する方法、
(3)溶剤を用いず、前記樹脂と前記電子供与性呈色化合物及び電子受容性化合物とを加熱溶融して互いに混合し、この溶融混合物をシート状等に成形して冷却した後に架橋する方法、などが好適に挙げられる。なお、これらにおいて、前記支持体を用いることなく、シート状の熱可逆記録媒体として成形することもできる。
【0037】
前記(1)又は(2)において用いる溶剤としては、前記樹脂及び前記電子供与性呈色化合物及び電子受容性化合物の種類等によって異なり一概には規定することはできないが、例えば、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、クロロホルム、四塩化炭素、エタノール、トルエン、ベンゼンなどが挙げられる。
なお、前記電子受容性化合物は、前記記録層中において粒子状に分散して存在している。
【0038】
前記記録層形成用塗布液に、コーティング材料用としての高度な性能を発現させる目的で、各種顔料、消泡剤、分散剤、スリップ剤、防腐剤等を添加してもよい。
【0039】
前記記録層を形成する場合の塗工方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ロール状のものを用いこれを巻き戻して連続したシート状のものを支持体としたり、又は所定の大きさのシート状に裁断した支持体を搬送し、該支持体上に、例えば、ブレード塗工、ワイヤーバー塗工、スプレー塗工、エアナイフ塗工、ビード塗工、カーテン塗工、グラビア塗工、キス塗工、リバースロール塗工、ディップ塗工、ダイ塗工等公知の塗工方法で塗布する。
【0040】
前記記録層用塗布液の乾燥条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、室温〜140℃の温度で、10秒間〜10分間程度加熱する方法などが挙げられる。
【0041】
前記記録層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1μm〜20μmが好ましく、3μm〜15μmがより好ましい。記録層の厚みが薄すぎると発色濃度が低くなるため画像のコントラストが低くなることがあり、一方、厚すぎると層内での熱分布が大きくなり、加熱しても発色温度に達しないために発色しない部分が発生したり、発色したとしても希望とする発色濃度を得ることができなくなることがある。
【0042】
本発明において前記記録層に添加される光熱変換材料は、無機系材料と有機系材料とに大別できる。
前記無機系材料としては、例えば、カーボンブラックやGe、Bi、In、Te、Se、Cr等の金属又は半金属及びそれを含む合金などが挙げられ、これらは、真空蒸着法や粒子状の材料を樹脂等で接着して層状に形成される。
前記有機系材料としては、吸収すべき光波長に応じて各種の染料または顔料を適宜用いることができるが、光源として半導体レーザを用いる場合には、600〜1,200nm付近に吸収ピークを有する近赤外吸収色素が用いられる。具体的には、シアニン色素、キノン系色素、インドナフトールのキノリン誘導体、ニッケル錯体等の金属錯体、フタロシアニン系色素などが挙げられる。繰返し画像処理を行うためには、耐熱性に優れた光熱変換材料を選択するのが好ましく、この点からフタロシアニン系色素が特に好ましい。
【0043】
前記近赤外吸収色素は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。その添加量は1mg/mから200mg/mの範囲が好ましく、5mg/m〜100mg/mの範囲がより好ましい。この量より少ないと、十分な画像濃度が得られず、この量より多いと、前記光熱変換材料は可視領域に若干の吸収を有していることから地肌着色が大きくなり、画像のコントラストが低下する。
【0044】
<光熱変換層>
本発明において、前記熱可逆記録層がロイコ染料及び可逆性顕色剤を含有する場合、光熱変換材料を前記記録層中に添加すると、ロイコ染料との相互作用により光熱変換材料の耐光性が低下する場合がある。このため、その場合には前記記録層に隣接して光熱変換層として新たに層を設けることが好ましい。前記光熱変換層は、少なくとも前記光熱変換材料とバインダー樹脂を含有してなる。
【0045】
前記光熱変換層に用いられるバインダー樹脂としては、繰り返し時の耐久性の向上及び繰返し時の加熱による光熱変換材料の周囲の樹脂成分や光熱変換材料自体の熱分解によるガス化を防止するため、熱、紫外線、電子線などによって架橋可能な樹脂が好ましく用いられ、前記記録層で用いられた架橋可能なバインダー樹脂と同様なものを好適に用いることができる。前記架橋可能なバインダー樹脂としては、例えば、架橋剤と反応する水酸基やカルボキシル基等の基を持つ樹脂、又は水酸基やカルボキシル基等を持つモノマーとそれ以外のモノマーを共重合した樹脂などが挙げられる。このような樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂、等が挙げられる。これらの中でも、前記記録層との接着性の観点から、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂が特に好ましい。特にイソシアネート系化合物などを架橋剤として用いた熱架橋樹脂が好ましい。
【0046】
前記バインダー樹脂において、水酸基価は、50mg−KOH/gから400mg−KOH/gのものであることが好ましく、100mg−KOH/gから350mg−KOH/gのものがより好ましい。水酸基価が50mg−KOH/gを下回った場合、十分な塗膜強度を得ることができず、繰り返し印字消去を行なうと記録媒体の劣化がおきやすくなったり、光熱変換材料の周囲の樹脂成分や光熱変換材料自体が熱分解してガスが発生しやすくなる。一方で400mg−KOH/gを超える場合は完全に膜を架橋することができず、未架橋成分が発色系に悪影響を与えるために好ましくない。また、有機溶剤に対する溶解性が低下し、完全に有機溶剤に溶解できない場合がある。
【0047】
前記光熱変換層中における前記光熱変換材料とバインダー樹脂との混合割合(質量比)は、光熱変換材料による地肌の着色が少なく、記録感度が良好で、かつ十分な塗膜強度が得られることから、光熱変換材料0.1に対して0.1〜100が好ましい。バインダー樹脂が少なすぎると、前記光熱変換層の熱強度が不足することがあり、一方、バインダー樹脂が多すぎると、記録感度が低下して問題となることがある。
【0048】
前記架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソシアネート類、アミノ樹脂、フェノール樹脂、アミン類、エポキシ化合物、等が挙げられる。これらの中でも、イソシアネート類が好ましく、イソシアネート基を複数持つポリイソシアネート化合物が特に好ましい。
【0049】
前記架橋剤のバインダー樹脂に対する添加量は、バインダー樹脂中に含まれる活性基の数に対する架橋剤の官能基の比は0.1〜5が好ましい。これ以下では熱強度が不足したり、光熱変換材料の周囲の樹脂成分や光熱変換材料自体の熱分解によりガスが発生しやすくなり、また、これ以上添加すると架橋反応に時間がかかり、ブロッキングなどの悪影響を及ぼすことがある。
更に、架橋促進剤としてこの種の反応に用いられる触媒を用いてもよい。
【0050】
前記熱架橋した場合の樹脂のゲル分率は、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、70%以上が更に好ましい。
【0051】
前記バインダー樹脂が架橋状態にあるのか非架橋状態にあるのかを区別する方法としては、前記記録層と同様である。
【0052】
前記光熱変換層におけるその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、従来公知の各種添加剤、顔料等を添加してもよい。
【0053】
前記光熱変換層用塗液に用いられる溶剤、塗液の分散装置、塗工方法、乾燥・架橋方法等は公知の方法を用いることができる。
【0054】
前記光熱変換層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1μm〜30μmが好ましく、0.5μm〜20μmがより好ましい。
【0055】
また、前記光熱変換層を設ける場合、前記記録層を前記光熱変換層の片側に設ける事もできるが、記録感度向上の点から、前記光熱変換層の両側に前記記録層が積層されていることが好ましい。前記光熱変換層を前記記録層で挟み込む構成にすることにより、光熱変換層で発生した熱を効率よく利用することが可能となり、記録感度が向上し、前記記録層中に光熱変換材料を含有させた時と同程度の記録感度が得られるようになる。この時の記録層の厚みは目的に応じて適宜選択することができ、両側ともに同じ厚みでもよいし、異なっていてもよいが、光熱変換層の、支持体に近い面側の記録層より支持体に遠い面側の記録層の厚みが厚いほうが、記録感度の点で好ましい。
【0056】
<中間層>
本発明においては、前記光熱変換層を設ける場合、前記光熱変換層の塗布、あるいは前記記録層の塗布による前記光熱変換材料と前記ロイコ染料の混合、および画像記録、消去の繰返しによる前記光熱変換材料の前記記録層への移行、あるいは前記ロイコ染料の前記光熱変換層への移行を防止する目的で、前記光熱変換層と前記記録層の間に中間層を設けることが好ましく、これによって前記光熱変換材料と前記ロイコ染料との相互作用による耐光性低下が改善できる。
前記中間層は、少なくともバインダー樹脂を含有し、更に必要に応じて、フィラー、滑剤等のその他の成分を含有してなる。
【0057】
前記中間層に用いられるバインダー樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、前記記録層などで用いられるバインダー樹脂や、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の樹脂を用いることができる。中でも繰り返し時の耐久性の向上のため、熱、紫外線、電子線などによって架橋可能な樹脂、もしくは溶剤に可溶な高耐熱性樹脂が好ましく用いられる。例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの中でも、前記記録層及び前記光熱変換層との接着性の観点から、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂が特に好ましい。
【0058】
前記中間層の厚みは、0.1μm〜20μmが好ましく、0.2μm〜5μmがより好ましい。前記中間層の塗液に用いられる溶媒、塗液の分散方法および分散装置、中間層の塗工方法、中間層の乾燥・架橋方法等は、公知の方法を用いることができる。
【0059】
<紫外線吸収層>
本発明においては、前記記録層中のロイコ染料または前記熱可逆記録媒体中の光熱変換材料の紫外線による分解を防止する目的で、支持体が存在する熱可逆記録層の面とは反対側の面に紫外線吸収層を設けることが好ましく、これによって前記熱可逆記録媒体の耐光性が改善できる。
【0060】
前記紫外線吸収層は、少なくとも紫外線吸収剤を含有し、更に必要に応じて、バインダー樹脂、フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有してなる。
【0061】
前記バインダー樹脂としては、前記同様に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記記録層のバインダー樹脂や熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の樹脂成分を用いることができる。該樹脂成分としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、飽和ポリエステル、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミドなどが挙げられる。
【0062】
前記紫外線吸収剤としては、有機系及び無機系化合物のいずれでも用いることができる。
【0063】
また、紫外線吸収構造を持つポリマー(以下、「紫外線吸収ポリマー」と称することもある)を用いることが長期保存での紫外線吸収性能の安定性の点から、より好ましい。
ここで、前記紫外線吸収構造を持つポリマーとは、紫外線吸収構造(例えば、紫外線吸収性基)を分子中に有するポリマーを意味する。該紫外線吸収構造としては、例えば、サリシレート構造、シアノアクリレート構造、ベンゾトリアゾール構造、ベンゾフェノン構造などが挙げられ、これらの中でも、ロイコ染料の光劣化の原因である340〜400nmの紫外線を吸収するベンゾトリアゾール構造、ベンゾフェノン構造を有するポリマーが特に好ましい。
【0064】
また前記紫外線吸収ポリマーは架橋されていることが好ましい。従って紫外線吸収ポリマーとしては、例えば水酸基、アミノ基、カルボキシル基等のような、架橋剤と反応する基を有しているものを用いることが好ましく、特に水酸基を有しているポリマーが好ましい。該紫外線吸収構造を持つポリマー含有層の強度を向上させるために該ポリマーの水酸基価が10mg−KOH/g以上のポリマーを用いると十分な塗膜強度が得られ、より好ましくは30mg−KOH/g以上であり、更に好ましくは40mg−KOH/g以上である。十分な塗膜強度を持たせることで繰り返し消去、印字を行っても記録媒体の劣化が抑えることができる。
【0065】
前記紫外線吸収層の厚みは、0.1μm〜30μmが好ましく、0.5μm〜20μmがより好ましい。前記紫外線吸収層の塗液に用いられる溶剤、塗液の分散装置、塗工方法、乾燥・架橋方法等は、公知の方法を用いることができる。
【0066】
<酸素遮断層>
本発明では酸素遮断層を設けることが好ましい。この層は、熱可逆記録層に酸素が侵入することを防ぎ、前記熱可逆記録層中のロイコ染料の光劣化を防止でき、たとえば熱可逆記録層の上下の層に酸素遮断層を設けることが好ましい。即ち支持体と熱可逆記録層との間、あるいは支持体の熱可逆記録層が設けてある側と反対側に第1の酸素遮断層を設け、熱可逆記録層上に第2の酸素遮断層を設けることが好ましい。
前記第1及び第2の酸素遮断層には、可視部の透過率が大きく、酸素透過度が低い樹脂又は高分子フィルム等が挙げられる。酸素遮断層は、その用途、酸素透過性、透明性、塗工のしやすさ、接着性等によって選択される。前記酸素遮断層の具体例としては、ポリアクリル酸アルキルエステル、ポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリメタクリロニトリル、ポリアルキルビニルエステル、ポリアルキルビニルエーテル、ポリフッ素化ビニル、ポリスチレン、酢酸ビニル共重合体、酢酸セルロース、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、アセトニトリル共重合体、塩化ビニリデン共重合体、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン−6及びポリアセタール等の樹脂、又はポリエチレンテレフタレートやナイロン等の高分子フィルム上に無機酸化物を蒸着したシリカ蒸着フィルム、アルミナ蒸着フィルム、シリカ/アルミナ蒸着フィルムなどが挙げられる。これらの中でも高分子フィルム上に無機酸化物を蒸着したフィルムが好ましい。
【0067】
前記酸素遮断層の酸素透過度としては、20ml/m/day/MPa以下が好ましく、5ml/m/day/MPa以下がより好ましく、1ml/m/day/MPa以下が更に好ましい。前記酸素透過度が、20ml/m/day/MPaを超えると、前記熱可逆記録層中のロイコ染料の光劣化を抑制できないことがある。
前記酸素透過度は、例えばJIS K7126 B法に準じた測定法により測定することができる。
【0068】
前記第1及び第2の酸素遮断層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、溶融押出し法、コーティング法、ラミネート法、などが挙げられる。
前記第1及び第2の酸素遮断層の厚さは、樹脂又は高分子フィルムの酸素透過性によって異なるが、0.1μm〜100μmが好ましい。これより薄いと酸素遮断が不完全であり、厚いと透明性が低下するので好ましくない。
前記酸素遮断層とその下層の間に、接着層を設けてもよい。前記接着層の形成方法は、特に制限なく通常のコーティング法、ラミネート法等を挙げることができる。接着層の厚さは特に制限ないが、0.1μm〜5μmが好ましい。前記接着層は、架橋剤により硬化してもよい。これらは前記熱可逆記録層で用いられたものと同様のものを好適に用いることができる。
【0069】
<保護層>
本発明の熱可逆記録媒体には、該媒体自体あるいは該媒体を構成する各層を保護する目的で、前記熱可逆記録媒体の最表面に保護層を設けることができる。該保護層は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1層以上に形成してもよい。
【0070】
前記保護層はバインダー樹脂、更に必要に応じて、フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有してなる。
【0071】
前記保護層に用いる樹脂としては、前記同様特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線(UV)硬化性樹脂(以下、UV硬化性樹脂という)、電子線硬化性樹脂、等が好ましく、これらの中でも、UV硬化性樹脂または熱硬化性樹脂が特に好ましい。
【0072】
前記UV硬化性樹脂は、架橋後非常に硬い膜を形成することができ、表面の物理的な接触によるダメージやレーザ加熱による媒体変形を抑止することができるため、繰り返し耐久性に優れた熱可逆記録媒体が得られる。
【0073】
また、前記熱硬化性樹脂は、前記UV硬化性樹脂にはやや劣るが同様に表面を硬くすることができ、繰り返し耐久性に優れる。
【0074】
前記UV硬化性樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ビニル系、不飽和ポリエステル系のオリゴマーや各種単官能、多官能のアクリレート、メタクリレート、ビニルエステル、エチレン誘導体、アリル化合物等のモノマー、オリゴマーなどが挙げられる。これらの中でも、4官能以上の多官能性のモノマー又はオリゴマーが特に好ましい。これらのモノマー又はオリゴマーを2種類以上混合することで樹脂膜の硬さ、収縮度、柔軟性、塗膜強度等を適宜調節することができる。
【0075】
また、前記モノマー又はオリゴマーを、紫外線を用いて架橋させるために、光重合開始剤、光重合促進剤を用いる必要がある。
【0076】
前記光重合開始剤又は光重合促進剤の添加量は、前記保護層の樹脂成分の全質量に対し0.1質量%〜20質量%が好ましく、1質量%〜10質量%がより好ましい。
【0077】
前記紫外線硬化樹脂を架橋させるための紫外線照射は、公知の紫外線照射装置を用いて行うことができ、該装置としては、例えば、光源、灯具、電源、冷却装置、搬送装置等を備えたものが挙げられる。
【0078】
前記光源としては、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、カリウムランプ、水銀キセノンランプ、フラッシュランプなどが挙げられる。該光源の波長は、前記熱可逆記録媒体用組成物に添加されている光重合開始剤及び光重合促進剤の紫外線吸収波長に応じて適宜選択することができる。
【0079】
前記紫外線照射の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記樹脂を架橋するために必要な照射エネルギーに応じてランプ出力、搬送速度等を決めればよい。
【0080】
保護層に用いる前記無機顔料の粒径としては、例えば、0.01μm〜10.0μmが好ましく、0.05μm〜8.0μmがより好ましい。前記無機顔料の添加量としては、保護層に用いる樹脂1質量部に対し、0.001質量部〜2質量部が好ましく、0.005質量部〜1質量部がより好ましい。
【0081】
更に、前記保護層には、添加剤として従来公知の界面活性剤、レベリング剤、帯電防止剤、離型剤、滑剤等を含有してもよい。
【0082】
また、熱硬化性樹脂としては例えば、前記記録層で用いられたバインダー樹脂と同様なものを好適に用いることができる。
更に、前記紫外線吸収構造を持つポリマーを用いてもよい。
【0083】
前記保護層に用いる樹脂は架橋されていることが好ましく、例えば水酸基、アミノ基、カルボキシル基等のような、架橋剤と反応する基を有しているものを用いることが好ましく、特に水酸基を有しているポリマーが好ましい。
【0084】
前記架橋剤としては例えば、前記記録層で用いられた架橋剤と同様なものを好適に用いることができる。
【0085】
前記保護層を、保護層用塗液を用いて塗布して形成する場合、この塗液に用いられる溶剤、塗液の分散装置、塗工方法、乾燥方法等は公知の方法を用いることができる。紫外線硬化樹脂を用いた場合には塗布して乾燥を行った後に紫外線照射による架橋工程が必要となるが、紫外線照射装置、光源、照射条件については前記の通りである。
【0086】
前記保護層の厚みは、0.1μm〜100μmが好ましく、0.5μm〜50μmがより好ましい。
【0087】
<アンダー層>
本発明の熱可逆記録媒体においては、印加した熱を有効に利用し、かつ該媒体を高感度化するため、又は支持体と酸素遮断層あるいは記録層との接着性の改善や支持体への記録層材料の浸透防止を目的として、前記記録層と前記支持体の間あるいは前記酸素遮断層と前記支持体の間にアンダー層を設けてもよい。
前記アンダー層は、少なくとも中空粒子を含有してなり、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0088】
前記中空粒子としては、中空部が粒子内に一つ存在する単一中空粒子、中空部が粒子内に多数存在する多中空粒子、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0089】
前記中空粒子の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、熱可塑性樹脂などが好適に挙げられる。前記中空粒子は、適宜製造したものであってもよいし、市販品であってもよい。該市販品としては、例えば、マイクロスフェアーR−300(松本油脂株式会社製);ローペイクHP1055、ローペイクHP433J(いずれも、日本ゼオン株式会社製);SX866(JSR株式会社製)などが挙げられる。
【0090】
前記中空粒子の前記アンダー層における添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、10質量%〜80質量%が好ましい。
【0091】
前記アンダー層に用いるバインダー樹脂としては、前記した記録層と同様で用いたバインダー樹脂など、従来公知の樹脂を用いることができる。
【0092】
前記アンダー層には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、カオリン、タルクなどの無機フィラー及び各種有機フィラーの少なくともいずれかを含有させることができる。
【0093】
なお、前記アンダー層には、その他、滑剤、界面活性剤、分散剤などを含有させることもできる。
【0094】
前記アンダー層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1μm〜50μmが好ましく、2μm〜40μmがより好まし、12μm〜30μmが更に好ましい。
【0095】
<バック層>
本発明の熱可逆記録媒体においては、前記熱可逆記録媒体のカールや帯電防止、搬送性の向上のために支持体の記録層を設ける面と反対側にバック層を設けてもよい。
前記バック層は、少なくともバインダー樹脂を含有し、更に必要に応じて、フィラー、導電性フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有してなる。
【0096】
前記バック層に用いるバインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線(UV)硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、等が挙げられ、これらの中でも、紫外線(UV)硬化性樹脂、熱硬化性樹脂が特に好ましい。
【0097】
前記紫外線硬化樹脂、前記熱硬化性樹脂、前記フィラー、前記導電性フィラー、及び前記滑剤については、前記した記録層、前記保護層、前記又は紫外線吸収層で用いられた滑剤と同様なものを好適に用いることができる。
【0098】
<接着層又は粘着層>
本発明の熱可逆記録媒体においては、記録層が設けられる支持体の面と異なる支持体の面(支持体の反対側の面)に、接着層又は粘着層を設けて熱可逆記録媒体を熱可逆記録ラベルとすることができる。前記接着層又は粘着層の材料は一般的に使われているものが使用可能である。
【0099】
前記接着層又は粘着層の材料としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えばユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、酢ビ系樹脂、酢酸ビニル−アクリル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、アクリル酸エステル系共重合体、メタクリル酸エステル系共重合体、天然ゴム、シアノアクリレート系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられる。
【0100】
前記接着層又は粘着層の材料はホットメルトタイプでもよい。また設けられた接着層又は粘着層上に剥離紙を用いてもよいし、無剥離紙タイプの熱可逆記録ラベルでもよい。このように接着層又は粘着層を設けることにより、記録層の塗布が困難な磁気ストライプ付塩化ビニルカードなどの厚手の基板の全面若しくは一部に貼ることができる。これにより磁気に記憶された情報の一部を表示することができる等、この媒体の利便性が向上する。このような接着層又は粘着層を設けた熱可逆記録ラベルは、ICカード、光カード等の厚手カードにも適用できる。
【0101】
前記熱可逆記録媒体には、前記支持体と前記記録層との間に視認性を向上させる目的で、着色層を設けてもよい。前記着色層は、着色剤及び樹脂バインダーを含有する溶液、又は分散液を対象面に塗布し、乾燥するか、あるいは単に着色シートを貼り合せることにより形成することができる。
【0102】
前記熱可逆記録媒体には、カラー印刷層を設けることもできる。前記カラー印刷層における着色剤としては、従来のフルカラー印刷に使用されるカラーインク中に含まれる各種の染料及び顔料等が挙げられ、前記樹脂バインダーとしては各種の熱可塑性、熱硬化性、紫外線硬化性又は電子線硬化性樹脂等が挙げられる。該カラー印刷層の厚みとしては、印刷色濃度に対して適宜変更されるため、所望の印刷色濃度に合わせて選択することができる。
【0103】
前記熱可逆記録媒体は、非可逆性記録層を併用しても構わない。この場合、それぞれの記録層の発色色調は同じでも異なってもよい。また、本発明の熱可逆記録媒体の記録層と同一面の一部もしくは全面、および/又は反対面の一部分に、オフセット印刷、グラビア印刷などの印刷、又はインクジェットプリンター、熱転写プリンター、昇華型プリンターなどによって任意の絵柄などを施した着色層を設けてもよく、更に着色層上の一部分もしくは全面に硬化性樹脂を主成分とするOPニス(油性ニス)層を設けてもよい。前記任意の絵柄としては、文字、模様、図柄、写真、赤外線で検知する情報などが挙げられる。また、単純に構成する各層のいずれかに染料や顔料を添加して着色することもできる。
【0104】
更に、本発明の熱可逆記録媒体には、セキュリティのためにホログラムを設けることもできる。また、意匠性付与のためにレリーフ状、インタリヨ状に凹凸を付けて人物像や社章、シンボルマーク等のデザインを設けることもできる。
【0105】
前記熱可逆記録媒体は、その用途に応じて所望の形状に加工することができ、例えば、カード状、タグ状、ラベル状、シート状、ロール状などに加工される。また、カード状に加工されたものについてはプリペイドカード、ポイントカード、更にはクレジットカードなどへの応用が挙げられる。カードサイズよりも小さなタグ状のサイズでは値札等に利用できる。また、カードサイズよりも大きなタグ状のサイズでは工程管理や出荷指示書、チケット等に使用できる。ラベル状のものは貼り付けることができるために、様々な大きさに加工され、繰り返し使用する台車や容器、箱、コンテナ等に貼り付けて工程管理、物品管理等に使用することができる。また、カードサイズよりも大きなシートサイズでは印字する範囲が広くなるため一般文書や工程管理用の指示書等に使用することができる。
【0106】
<画像処理方法>
本発明の画像処理方法は、前記した本発明の熱可逆記録媒体を用い、該媒体に画像記録工程及び画像消去工程の少なくともいずれかを含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程を含む。
本発明の前記画像処理方法においては、画像の記録及び消去の両方を行う態様、画像の記録のみを行う態様、画像の消去のみを行う態様のいずれをも含む。
【0107】
<画像記録工程及び画像消去工程>
本発明の前記画像処理方法における画像記録工程は、本発明の前記熱可逆記録媒体に対し、加熱することにより、前記熱可逆記録媒体に画像を記録する工程である。熱可逆記録媒体を加熱する方法としては、従来既知の加熱方法を挙げられるが、物流ラインを想定した場合、熱可逆記録媒体にレーザ光を照射して加熱する方法が非接触の状態で画像の形成を行うことができるため特に好ましい。
本発明の前記画像処理方法における前記画像消去工程は、前記熱可逆記録媒体に対し、加熱することにより熱可逆記録媒体に記録された画像を消去する工程であり、熱源としてレーザ光を用いてもよく、レーザ光以外の熱源を用いてもよい。熱源の中でも、レーザ光を照射して加熱する場合、一本のレーザ光を走査して所定の面積全体に照射するのに時間を要することから、短時間で消去する場合には、赤外線ランプ、ヒートローラー、ホットスタンプ、ドライヤーなどを用いて加熱することにより消去するのが好ましい。また、物流ラインに用いる搬送用容器として発砲スチロール箱に前記熱可逆記録媒体を装備させた場合、該発泡スチロール箱自体が加熱されると溶融してしまうため、レーザ光を照射して前記熱可逆記録媒体のみを局所的に加熱することにより消去するのが好ましい。
【0108】
前記熱可逆記録媒体に対し、前記レーザ光を照射して加熱することにより、前記熱可逆記録媒体に非接触の状態で画像の記録を行うことができる。
【0109】
本発明の画像処理方法においては、通常、前記熱可逆記録媒体の再使用時に初めて画像の更新(前記画像消去工程)を行い、その後、前記画像記録工程により画像の記録を行うが、画像の記録及び消去の順序はこれに限られるものではなく、前記画像記録工程により画像を記録した後、前記画像消去工程により画像を消去してもよい。
【0110】
前記レーザ光には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、YAGレーザ、ファイバーレーザ、半導体レーザ(LD)などの通常用いられるレーザが挙げられる。中でも装置の小型化、更には低価格化が可能であるという利点から、物流ラインを想定した場合、半導体レーザ光が特に好ましい。
【0111】
前記画像形成工程(記録工程)において照射されるレーザ光の出力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1W以上が好ましく、3W以上がより好ましく、5W以上が更に好ましい。前記レーザ光の出力が、1W未満であると、画像形成に時間がかかり、画像形成時間を短くしようとすると出力が不足して高濃度の画像が得られない。また、前記レーザ光の出力の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、200W以下が好ましく、150W以下がより好ましく、100W以下が更に好ましい。前記レーザ光の出力が、200Wを超えると、レーザ装置の大型化を招くことがある。
【0112】
前記画像形成工程(記録工程)において照射されるレーザ光の走査速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、300mm/s以上が好ましく、500mm/s以上がより好ましく、700mm/s以上が更に好ましい。前記走査速度が、300mm/s未満であると、画像形成に時間がかかる。また、前記レーザ光の走査速度の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、15,000mm/s以下が好ましく、10,000mm/s以下がより好ましく、8,000mm/s以下が更に好ましい。前記走査速度が、15,000mm/sを超えると、均一な画像が形成し難くなる。
【0113】
前記画像形成工程(記録工程)において照射されるレーザ光のスポット径としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、0.02mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましく、0.15mm以上が更に好ましい。また、前記レーザ光のスポット径の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3.0mm以下が好ましく、2.5mm以下がより好ましく、2.0mm以下が更に好ましい。
【0114】
前記スポット径が小さいと、画像の線幅が細くなり、コントラストが小さくなって視認性が低下する。また、スポット径が大きくなると、画像の線幅が太くなり、隣接する線が重なり、小さな文字の画像形成が不可能となる。
【0115】
また、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱する事により画像を消去する画像消去工程において照射される前記レーザ光の出力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5W以上が好ましく、7W以上がより好ましく、10W以上が更に好ましい。
前記レーザ光の出力が、5W未満であると、画像消去に時間がかかり、画像消去時間を短くしようとすると出力が不足して画像の消去不良が発生する。また、前記レーザ光の出力の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、200W以下が好ましく、150W以下がより好ましく、100W以下が更に好ましい。前記レーザ光の出力が、200Wを超えると、レーザ装置の大型化を招く。
【0116】
前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱する事により画像を消去する画像消去工程において照射されるレーザ光の走査速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100mm/s以上が好ましく、200mm/s以上がより好ましく、300mm/s以上が更に好ましい。前記走査速度が、100mm/s未満であると、画像消去に時間がかかる。また、前記レーザ光の走査速度の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20,000mm/s以下が好ましく、15,000mm/s以下がより好ましく、10,000mm/s以下が更に好ましい。前記走査速度が、20,000mm/sを超えると、均一な画像消去がし難くなることがある。
【0117】
前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱する事により画像を消去する画像消去工程において照射されるレーザ光のスポット径としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することが出来るが、0.5mm以上が好ましく、1.0mm以上がより好ましく、2.0mm以上が更に好ましい。
また、前記レーザ光のスポット径の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、14.0mm以下が好ましく、10.0mm以下がより好ましく、7.0mm以下が更に好ましい。
【0118】
前記スポット径が小さいと、画像消去に時間がかかる。また、スポット径が大きくなると、出力が不足して画像の消去不良が発生する。
【0119】
<画像処理装置>
本発明で用いられる画像処理装置は、レーザ光照射手段を少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材を有してなる。
【0120】
<レーザ光出射手段>
画像記録工程および/または画像消去工程に熱源として用いられるレーザ光を出力するレーザ光出射手段としては、熱可逆記録媒体に含有されている光熱変換材料の最大吸収ピーク近傍に最大波長を有するレーザ光を出射するものであれば良く、目的に応じて適宜選択することができる。例えばYAGレーザ、ファイバーレーザ、半導体レーザ(LD)などが挙げられ、これらに限定されるものではない。ここでレーザ光の波長は単波長であることが特に好ましい。
【0121】
前記YAGレーザ、前記ファイバーレーザ、及び前記半導体レーザから出射されるレーザ光の波長は、可視〜近赤外領域(数百μm〜1.2μm)であり、波長が短いため高精細画像の形成が可能であるという利点がある。また、前記YAGレーザ、及び前記ファイバーレーザは高出力であるため、画像処理速度の高速化を量ることができるという利点がある。前記半導体レーザはレーザ自体が小さいため、装置の小型化、更には低価格化が可能であるという利点がある。これより物流ラインを想定した場合、半導体レーザ光が特に好ましい。
【0122】
またレーザ光出射手段から出射されるレーザ光の波長としては、目的に応じて適宜選択することができ、熱可逆記録媒体中に含有させる各種樹脂の吸収が少ない600〜1200nmが好ましく、700〜1100nmがより好ましい。600nmより小さい波長にするとレーザ光照射により、熱可逆記録媒体の劣化が起こりやすくなるという問題がある。1200nmを越す波長にすると熱可逆記録媒体中に含まれる各種樹脂にレーザ光が吸収されてしまうため、高出力な半導体レーザが必要となり装置が大型化するという問題がある。
【0123】
前記画像処理装置は、前記レーザ光出射手段を少なくとも有している以外、その基本構成としては、通常レーザマーカーと呼ばれるレーザビームの力で製品表面に熱をかけ文字を書く機器と同様であり、発振器ユニット、電源制御ユニット、及びプログラムユニットを少なくとも備えている。
【0124】
ここで、図2に、本発明の画像処理装置の一例を、レーザ照射ユニットを中心に示す。図2に示す画像処理装置は、レーザ光源として、LIMO社製ファイバー結合半導体レーザ(商品名:LIMO25F100−DL808−EX362)を用いており、発振波長808nmで、ファイバー径が100μmで、最大25Wまで出力可能である。ファイバーからレーザ光が出射された直後にコリメータで平行光にしており、平行光路中に、光照射強度分布調整手段として、マスクまたは非球面レンズを組み込み、レーザ光の進行方向直交断面における光強度分布を変化するように調整することもできる。
発振器ユニットは、レーザ発振器1、ビームエキスパンダ2、スキャンニングユニット5などで構成されている。
【0125】
前記スキャニングユニット5は、ガルバノメータ(不図示)と、該ガルバノメータに取り付けられたガルバノミラー4とで構成されている。そして、前記レーザ発振器1から出力されたレーザ光を、前記ガルバノメータに取り付けられたX軸方向とY軸方向との2枚のガルバノミラー4で高速回転走査することにより、熱可逆記録媒体7上に、画像の形成又は消去を行うようになっている。
【0126】
前記電源制御ユニットは、レーザ媒質を励起する光源の駆動電源、ガルバノメータの駆動電源、ペルチェ素子などの冷却用電源、画像処理装置全体の制御を司る制御部等などで構成されている。
前記プログラムユニットは、タッチパネル入力やキーボード入力により、画像の記録又は消去のために、レーザ光の強さ、レーザ走査の速度等の条件入力や、記録する文字等の作製及び編集を行うユニットである。
【0127】
なお、前記レーザ照射ユニット、即ち、画像記録/消去用ヘッド部分は、画像処理装置に搭載されているが、該画像処理装置には、このほか、前記熱可逆記録媒体の搬送部及びその制御部、モニタ部(タッチパネル)等を有している。
【0128】
本発明の前記画像処理方法は、ダンボールやプラスチックコンテナ等の容器に貼付したラベル等の熱可逆記録媒体に対して、非接触式にて、高速で繰返し記録及び消去可能で、しかも長時間光に曝されても画像濃度の低下や地肌の着色がなく、十分な消去性を有する熱可逆記録媒体を用いるため、物流・配送システムに特に好適に使用可能である。この場合、例えば、ベルトコンベアに載せた前記ダンボールやプラスチックコンテナを移動させながら、前記ラベルに画像を形成及び消去することができ、ラインの停止が不要な点で、出荷時間の短縮を図ることができる。また、前記ラベルが貼付されたダンボールやプラスチックコンテナは、該ラベルを剥がすことなく、そのままの状態で再利用し、再度、画像の消去及び形成を行うことができる。
【実施例】
【0129】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0130】
(実施例1)
−支持体−
支持体として、厚み125μmの白ポリエステルフィルム(帝人デュポン社製、テトロンフィルムU2L98W)を用いた。
−記録層−
下記構造式(A)で表される顕色剤5質量部、アクリルポリオール(水酸基価=200mg−KOH/g)の50質量%溶液10質量部、及びメチルエチルケトン80質量部を、ボールミルを用いて平均粒径が約1μmになるまで粉砕分散した。
〔顕色剤〕
【0131】
【化5】

【0132】
次に、前記顕色剤を粉砕分散させた分散液に、前記ロイコ染料として2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン1質量部、フタロシアニン系光熱変換材料(株式会社山本化成製、YKR−3070)0.025質量部及びイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、コロネートHL)5質量部を加え、よく撹拌させて記録層用塗布液を調製した。
次に、得られた記録層用塗布液を、前記支持体上に、ワイヤーバーを用いて塗布し、100℃にて2分間加熱及び乾燥した後、60℃にて24時間加熱し、厚み10μmの記録層を形成した。
【0133】
−紫外線吸収層−
紫外線吸収ポリマーの40質量%溶液(日本触媒社製、UV−G302)10質量部、イソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、コロネートHL)1.0質量部、及びメチルエチルケトン12質量部を加え、よく攪拌して紫外線吸収層用塗布液を調製した。
次に、前記記録層が形成された支持体上に、前記紫外線吸収層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分間加熱及び乾燥した後、60℃にて24時間加熱し、厚み10μmの紫外線吸収層を形成した。
【0134】
−酸素遮断層−
厚み12μmのシリカ蒸着PET(ポリエチレンテレフタレート樹脂)フィルム(三菱樹脂社製、テックバリアHX、25℃80%RHにおける酸素透過度が0.05ml/m・24hr・atm)の上にウレタン系接着剤(東洋モートン社製、TM−567)5質量部、イソシアネート化合物(東洋モートン社製、CAT−RT−37)0.5質量部、及び酢酸エチル5質量部からなる接着層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、80℃にて1分間加熱及び乾燥した後、前記記録層及び前記紫外線吸収層が形成された支持体の前記紫外線吸収層上に上記接着層を形成したシリカ蒸着PETフィルムをこの接着層と前記紫外線吸収層を接触するように貼合せ、50℃にて24時間加熱し、第1の酸素遮断層を形成した。
【0135】
−バック層−
ペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製、KAYARAD DPHA)7.5質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー(根上工業社製、アートレジンUN−3320HA)2.5質量部、針状導電性酸化チタン(石原産業社製、FT−3000、長軸=5.15μm、短軸=0.27μm、構成:アンチモンドープ酸化スズ被覆の酸化チタン)2.5質量部、光重合開始剤(日本チバガイギー社製、イルガキュア184)0.5質量部、及びイソプロピルアルコール13質量部を加え、ボールミルにてよく攪拌してバック層用塗布液を調製した。
次に、前記支持体の前記記録層が形成されていない側の支持体の面上に、前記バック層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分間加熱及び乾燥した後、80W/cmの紫外線ランプで架橋させて、厚み4μmのバック層を形成した。以上により、実施例1の熱可逆記録媒体を作製した。
【0136】
(実施例2)
実施例1で用いた記録層の代わりに、下記の記録層を用いた以外は実施例1と同様にして熱可逆記録媒体を作製した。
−記録層−
下記構造式(B)で表される顕色剤5質量部、アクリルポリオール50質量%溶液(水酸基価=200mgKOH/g)10質量部、及びメチルエチルケトン80質量部を、ボールミルを用いて平均粒径が約1μmになるまで粉砕分散した。
〔顕色剤〕
【0137】
【化6】

【0138】
次に、前記顕色剤を粉砕分散させた分散液に、前記ロイコ染料として2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン1質量部、フタロシアニン系光熱変換材料(株式会社山本化成製、YKR−3070)0.025質量部及びイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、コロネートHL)5質量部を加え、よく撹拌させて記録層用塗布液を調製した。
次に、得られた記録層用塗布液を、前記支持体上に、ワイヤーバーを用いて塗布し、100℃にて2分間加熱及び乾燥した後、60℃にて24時間加熱し、厚み10μmの記録層を形成した。
【0139】
(実施例3)
実施例2の記録層に下記構造式(C)で表される消色促進剤を0.5質量部加えた以外は実施例2と同様にして熱可逆記録媒体を作製した。
〔消色促進剤〕
1735CONHC1837 構造式(C)
【0140】
(実施例4)
実施例3の支持体上に実施例3の記録層からフタロシアニン系光熱変換材料を除き、厚みを4μmにした以外は実施例3と同様に第1の記録層を形成した。
次に、下記の光熱変換層を前記第1の記録層上に形成した。
−光熱変換層−
アクリルポリオール樹脂50質量%溶液(三菱レーヨン社製、LR327)6質量部、フタロシアニン系光熱変換材料(株式会社山本化成製、YKR−3070)を0.038質量部、イソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、コロネートHL)2.4質量部、及びメチルエチルケトン14質量部を加え、よく攪拌して光熱変換層用塗布液を調製した。
次に、前記第1の記録層が形成された支持体上に、前記光熱変換層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分間加熱及び乾燥した後、60℃にて24時間加熱し、厚み2μmの光熱変換層を形成した。
次に、前記光熱変換層上に実施例3の記録層からフタロシアニン系光熱変換材料を除き、厚みを6μmにした以外は実施例3と同様に第2の記録層を形成した。
続いて、第2の記録層上に、実施例3の紫外線吸収層、第1の酸素遮断層を形成し、またこれらの層が形成された支持体の面と反対の支持体面上にバック層を実施例3と同様にして形成し、熱可逆記録媒体を作製した。
【0141】
(実施例5)
実施例4において、支持体と第1の記録層の間に、実施例4の第1の酸素遮断層と同様の層を第2の酸素遮断層として設けた以外は実施例4と同様にして熱可逆記録媒体を作製した。
【0142】
(実施例6)
−中間層−
アクリルポリオール樹脂50質量%溶液(三菱レーヨン社製、LR327)6質量部、イソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、コロネートHL)2.4質量部、及びメチルエチルケトン14質量部を加え、よく攪拌して中間層用塗布液を調製した。
次に、実施例5の前記第2の酸素遮断層及び前記第1の記録層が形成された支持体の前記第1の記録層上に、前記中間層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分間加熱及び乾燥した後、60℃にて24時間加熱し、厚み1.5μmの第1の中間層を形成した。
次に、第1の中間層上に実施例5と同じ光熱変換層を実施例5と同様にして形成し、該光熱変換層上に前記中間層用塗布液を用いて第2の中間層を前記同様に形成した。
続いて、実施例5の第2の記録層、紫外線吸収層、第1の酸素遮断層およびバック層を実施例6と同様にして形成し、熱可逆記録媒体を作製した。
【0143】
(比較例1)
実施例4で用いた顕色剤の代わりに、下記構造式(D)で表される顕色剤を用いた以外は実施例4と同様にして熱可逆記録媒体を作製した。
〔顕色剤〕
【0144】
【化7】

【0145】
(比較例2)
比較例1で用いた顕色剤の代わりに、下記構造式(E)で表される顕色剤を用いた以外は比較例1と同様にして熱可逆記録媒体を作製した。
〔顕色剤〕
【0146】
【化8】

【0147】
(比較例3)
比較例1で用いた顕色剤の代わりに、下記構造式(F)で表される顕色剤を用いた以外は比較例1と同様にして熱可逆記録媒体を作製した。
〔顕色剤〕
【0148】
【化9】

【0149】
(評価方法)
<レーザ記録評価>
図2に示すような半導体レーザ光源として、LIMO社製半導体レーザLIMO25−F100−DL808(中心波長:808nm)を備えた半導体レーザ装置を用い、気温23℃湿度50%RHの環境にて、実施例および比較例で作製した熱可逆記録媒体に照射距離152mm、線速1000mm/s、レーザ出力13Wとなるように調整して、0.3mmの間隔で直線状にレーザ光を走査してベタ画像を記録した後、画像濃度をX−Rite938(X−Rite社製)にて測定した。その結果を表1に示す。
【0150】
レーザでの画像消去は、前記半導体レーザ装置を用い、気温23℃湿度50%RHの環境にて、照射距離200mm、線速500mm/s、レーザ出力16W、スポット径3.0mmとなるように調整して、0.5mmの間隔で直線状にレーザ光を走査して画像を消去した後、消去部の消去濃度及び地肌部の地肌濃度をX−Rite938(X−Rite社製)にて測定し、下記式から消去残り濃度を求めた。その結果を表1に示す。
消去残り濃度=消色濃度−地肌濃度
【0151】
次に、上記のレーザ記録評価を気温5℃、湿度30%RHの環境で同様に行い、低温低湿環境での画像濃度および消去残り濃度を同様に測定した。
【0152】
<耐光性評価1>
実施例3〜6の熱可逆記録媒体について、分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製、U−4100)により、まず初期状態において、波長808nmの吸光度を測定した。その結果を表2に示す。
続いて、セリック株式会社製人工太陽光照射装置を用いて、30℃80%RH、130klxの条件で72時間光照射を行なった後、同様に分光光度計により波長808nmの吸光度を測定し、それぞれ初期状態の吸光度と比較した。結果を表2に示す。
【0153】
次に、実施例3〜6の熱可逆記録媒体に対し、前記レーザ記録条件にて画像を記録した後、前記人工太陽光照射装置を用いて、30℃80%RH、130klxの条件で72時間光照射を行ない、次に、前記レーザ消去条件で消去した時の消去部の消去濃度及び地肌部の地肌濃度をX−Rite938(X−Rite社製)にて測定し、前記同様の式から消去残り濃度を求めた。結果を表1に示す。
【0154】
<耐光性評価2>
実施例5および実施例6の熱可逆記録媒体を用いて、上記レーザ記録条件およびレーザ消去条件にて記録と消去を100回繰り返した後、分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製、U−4100)により、まず消去状態において、波長808nmの吸光度を測定した。その結果を表3に示す。
続いて、セリック株式会社製人工太陽光照射装置を用いて、30℃80%RH、130klxの条件で72時間光照射を行なった後、同様に分光光度計により波長808nmの吸光度を測定した。結果を表3に示す。
【0155】
【表1】

【0156】
【表2】

【0157】
【表3】

【0158】
表1の結果から、実施例1〜6は、低温低湿環境下でも良好な消去性を示した。
また、表2の結果から、実施例3では、熱可逆記録層中に光熱変換材料を含むためにロイコ染料との相互作用で耐光性評価後には光熱変換材料の吸収が低下したが、実施例4〜6では光熱変換層を設け、光熱変換材料とロイコ染料との混合を抑えているために、耐光性評価後においても光熱変換材料の吸収はほとんど変化しなかった。さらに、実施例5〜6では、熱可逆記録層の両側に酸素遮断層を設けているので、耐光性評価後においてもロイコ染料が光劣化することなく十分な消去性を有している。
また、表3の結果から、実施例5では、記録と消去を100回繰り返した後では、光熱変換材料とロイコ染料が混合してしまい、耐光性評価後において光熱変換材料の吸光度が低下してしまう。これに対し、実施例6では、中間層を設けることにより、繰返し加熱による光熱変換材料とロイコ染料との混合を抑えることができ、記録と消去を100回繰り返した後の耐光性評価後においても光熱変換材料の吸光度にほとんど変化がなかった。
【符号の説明】
【0159】
1 ファイバー
2 ビームコリメータ
3 ミラー
4 ガルバノミラー
5 スキャニングユニット
6 fθレンズ
7 熱可逆記録媒体
8 レンズ
10 半導体レーザ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0160】
【特許文献1】特許第2981558号公報
【特許文献2】特許第3380277号公報
【特許文献3】特許第3557076号公報
【特許文献4】特開2000−141893号公報
【特許文献5】特許第3557077号公報
【特許文献6】特開2006−51809号公報
【特許文献7】特開2007−182004号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物を有する熱可逆記録層を具備する熱可逆性記録媒体において、
該電子受容性化合物として下記式(1)で表わされるフェノール化合物を用いることを特徴とする熱可逆記録媒体。
【化1】

(式(1)中、mは11以上の整数を表し、nは22以上の整数を表す)
【請求項2】
前記mが11から18の整数であり、前記nが22から29の整数であることを特徴とする請求項1に記載の熱可逆記録媒体。
【請求項3】
前記mと前記nの合計値が40以上の整数であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可逆記録媒体。
【請求項4】
前記熱可逆記録層中に、少なくとも1つ以上のN原子またはO原子を含む2価の基を有する消色促進剤を含有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の熱可逆記録媒体。
【請求項5】
前記熱可逆記録層中に、光熱変換材料を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の熱可逆記録媒体。
【請求項6】
光熱変換材料を含む光熱変換層をさらに有し、該光熱変換層と前記熱可逆記録層が積層されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の熱可逆記録媒体。
【請求項7】
前記光熱変換層の上下の層に前記熱可逆記録層が設けられることを特徴とする請求項1から4または6のいずれかに記載の熱可逆記録媒体。
【請求項8】
前記光熱変換層と前記熱可逆記録層との間に中間層を有することを特徴とする請求項1から4または6から7のいずれかに記載の熱可逆記録媒体。
【請求項9】
酸素遮断層を、さらに有することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の熱可逆記録媒体。
【請求項10】
前記酸素遮断層が、無機蒸着フィルムである請求項9に記載の熱可逆記録媒体。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の熱可逆記録媒体に、レーザ光を照射して加熱して該熱可逆記録媒体に記録する記録工程、及び、前記熱可逆記録媒体に光を照射して加熱して該熱可逆記録媒体上の記録を消去する消去工程の少なくともいずれかの工程を行うことを特徴とする画像処理方法。
【請求項12】
前記レーザ光がYAGレーザ光、ファイバーレーザ光、及び半導体レーザ光の少なくともいずれかを用いることを特徴とする請求項11に記載の画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−235588(P2011−235588A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110474(P2010−110474)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】