熱媒体加熱装置およびそれを備えた車両用空調装置
【課題】扁平熱交チューブとPTCヒータとを多層に積層化してその間の接触熱抵抗を低減し、伝熱性能を向上するとともに、扁平熱交チューブとPTCヒータとの組み付けを容易化し、小型軽量でかつ安価な熱媒体加熱装置を提供することを目的とする。
【解決手段】複数枚の扁平熱交チューブ17と、複数枚の扁平熱交チューブ17の扁平チューブ部間に組み込まれるPTCヒータ18と、積層された扁平熱交チューブ17およびPTCヒータ18を扁平熱交チューブ17の一面側から押圧して密着させる熱交押え部材16と、を備え、各扁平熱交チューブ17は、一端に入口ヘッダ部21および出口ヘッダ部22が並設され、他端にUターン部が形成されているとともに、扁平チューブ部が入口ヘッダ部21からUターン部を経て出口ヘッダ部22に至るUターン流路を形成したチューブとされ、該扁平熱交チューブ17とPTCヒータ18とが交互に多層に積層配設されている。
【解決手段】複数枚の扁平熱交チューブ17と、複数枚の扁平熱交チューブ17の扁平チューブ部間に組み込まれるPTCヒータ18と、積層された扁平熱交チューブ17およびPTCヒータ18を扁平熱交チューブ17の一面側から押圧して密着させる熱交押え部材16と、を備え、各扁平熱交チューブ17は、一端に入口ヘッダ部21および出口ヘッダ部22が並設され、他端にUターン部が形成されているとともに、扁平チューブ部が入口ヘッダ部21からUターン部を経て出口ヘッダ部22に至るUターン流路を形成したチューブとされ、該扁平熱交チューブ17とPTCヒータ18とが交互に多層に積層配設されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PTCヒータを用いて熱媒体を加熱する熱媒体加熱装置およびそれを備えた車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド車等に適用される車両用空調装置にあって、暖房用の熱源となる被加熱媒体を加熱する熱媒体加熱装置の1つに、正特性サーミスタ素子(Positive Temperature Coefficient;以下、PTC素子という。)を発熱要素とするPTCヒータを用いたものが知られている。PTCヒータは、正特性のサーミスタ特性を有しており、温度の上昇と共に抵抗値が上昇し、これによって消費電流が制御されるとともに温度上昇が緩やかになり、その後、消費電流および発熱部の温度が飽和領域に達して安定するものであり、自己温度制御特性を備えている。
【0003】
上記のような熱媒体加熱装置において、特許文献1には、熱媒体の入口および出口を備えたハウジング内に、該ハウジング内を加熱室と熱媒体の循環室とに分割する多数の隔壁を設け、この隔壁によって区画された加熱室側に隔壁と接するようにPTC加熱素子を挿入設置し、隔壁を介して循環室側に流通される熱媒体を加熱するようにした熱媒体加熱装置が提示されている。
【0004】
また、特許文献2には、PTC素子を挟んでその両面に電極板、絶縁層および伝熱層を設けて平板状のPTCヒータを構成し、該PTCヒータの両面に、熱媒体の入口および出口を備えた互いに連通されている一対の熱媒体流通ボックスを積層するとともに、更にその外面側に制御基板を収容する基板収容ボックスおよび蓋体を設けた積層構造の熱媒体加熱装置が提示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−7106号公報
【特許文献2】特開2008−56044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に示されるものでは、隔壁により形成された加熱室にPTC加熱素子が挿入設置される構成とされている。このため、伝熱面となる隔壁間にPTC加熱素子を隔壁と密着性を保って挿入設置するのは難しく、隔壁とPTC加熱素子間の接触熱抵抗が大きくなってしまい、伝熱効率が低くなるという課題があり、一方、隔壁間の間隔を狭くして密着性を高めようとすると、組み付けの作業性が著しく低下し、その工数が増加してしまう等の課題があった。
【0007】
また、特許文献2のものは、PTCヒータの両面に放熱フィンを有る一対の熱媒体流通ボックスを積層し、その外面に制御基板を収容する基板収容ボックスおよび蓋体を積層してボルトにより締結した構成とされているため、PTCヒータと熱媒体流通ボックスとを密着させ、その間の接触熱抵抗を低減させることができる。しかし、PTCヒータを多層配置することが困難なため、平面面積が大きくなるとともに、熱媒体流通ボックスや専用の基板収容ボックスが必要で、これらは、耐熱性や伝熱性等の面からアルミダイカスト製とされるため、小型軽量化には限界があるとともに、高価になる等の課題があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、複数枚の扁平熱交チューブとPTCヒータとを多層に積層化してその間の接触熱抵抗を低減し、伝熱性能を向上するとともに、扁平熱交チューブとPTCヒータとの組み付けを容易化し、小型軽量でかつ安価な熱媒体加熱装置およびそれを備えた車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために、本発明の熱媒体加熱装置およびそれを備えた車両用空調装置は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる熱媒体加熱装置は、入口ヘッダ部から流入された熱媒体が扁平チューブ部を流通後、出口ヘッダ部から流出される複数枚の扁平熱交チューブと、互いに積層される複数枚の前記扁平熱交チューブの前記扁平チューブ部間に組み込まれるPTCヒータと、積層された複数枚の前記扁平熱交チューブおよび前記PTCヒータを前記扁平熱交チューブの一面側から押圧して密着させる熱交押え部材と、を備え、前記各扁平熱交チューブは、一端部に前記入口ヘッダ部および前記出口ヘッダ部が並設され、他端部に熱媒体流れのUターン部が形成されているとともに、前記扁平チューブ部が前記入口ヘッダ部から前記Uターン部を経て前記出口ヘッダ部に至るUターン流路を形成したチューブとされ、前記扁平熱交チューブと前記PTCヒータとが交互に多層に積層配設されていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、一端部に入口ヘッダ部および出口ヘッダ部が並設され、他端部に熱媒体流れのUターン部が形成されているとともに、扁平チューブ部が入口ヘッダ部からUターン部を経て出口ヘッダ部に至るUターン流路を形成している扁平熱交チューブの扁平チューブ部間にPTCヒータを組み込むに当たり、扁平熱交チューブとPTCヒータとを交互に多層に積層配設し、それを一面側から熱交押え部材により押圧して密着させるようにしているため、扁平チューブ部間へのPTCヒータの組み込みを容易化することができるとともに、扁平チューブ部とPTCヒータとの密着性を熱交押え部材の押圧により高めることができる。従って、扁平熱交チューブとPTCヒータ間の密着性を高め、その間の接触熱抵抗を低減することによって伝熱効率を向上し、熱媒体加熱装置の高性能化を図ることができる。また、一端部に入口ヘッダ部および出口ヘッダ部が並設された扁平熱交チューブでは、低負荷となる出口ヘッダ部側でのPTCヒータの加熱能力を入口ヘッダ部側で有効に利用できるため、一層高効率化することができる。更に、複数枚の扁平熱交チューブが一端部に入口ヘッダ部および出口ヘッダ部が並設された片端ヘッダ構造とされているため、両端ヘッダ構造のものに比べて扁平熱交チューブの長さ方向寸法を小さくすることができ、大型の熱媒体流通ボックス等を省略できること等と相俟って、熱媒体加熱装置の小型軽量化、低コスト化を図ることができる。
【0011】
さらに、本発明の熱媒体加熱装置は、上記の熱媒体加熱装置において、前記扁平熱交チューブの前記入口ヘッダ部および前記出口ヘッダ部に設けられている連通穴周りに、シール材が配設されていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、扁平熱交チューブの入口ヘッダ部および出口ヘッダ部に設けられている連通穴周りに、シール材が配設されているため、互いに積層された複数枚の扁平熱交チューブの入口ヘッダ部および出口ヘッダ部を熱交押え部材で押圧することにより、出入口ヘッダ部の連通穴周りに配設されているシール材を確実に密着させて連通穴周りをシールすることができる。従って、出入口ヘッダ部からの熱媒体の漏えいを防止し、そのシール性を向上することができる。
【0013】
さらに、本発明にかかる熱媒体加熱装置は、入口ヘッダ部から流入された熱媒体が扁平チューブ部を流通後、出口ヘッダ部から流出される複数枚の扁平熱交チューブと、互いに積層される複数枚の前記扁平熱交チューブの前記扁平チューブ部間に組み込まれるPTCヒータと、積層された複数枚の前記扁平熱交チューブおよび前記PTCヒータを前記扁平熱交チューブの一面側から押圧して密着させる熱交押え部材と、を備え、前記各扁平熱交チューブは、一端部に前記入口ヘッダ部および前記出口ヘッダ部が並設され、他端部に熱媒体流れのUターン部が形成されているとともに、前記扁平チューブ部が前記入口ヘッダ部から前記Uターン部を経て前記出口ヘッダ部に至るUターン流路を形成し、前記Uターン部側の端部が積層方向に非拘束のチューブとされていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、複数枚の扁平熱交チューブが積層され、その扁平チューブ部間にPTCヒータが組み込まれた状態で、各扁平熱交チューブおよびPTCヒータが熱交押え部材により押圧されて密着される構成とされており、更に各扁平熱交チューブが、一端部に入口ヘッダ部および出口ヘッダ部が並設され、他端部にUターン部が形成されているとともに、扁平チューブ部が入口ヘッダ部からUターン部を経て出口ヘッダ部に至るUターン流路を形成し、Uターン部側の端部が積層方向に非拘束のチューブとされているため、複数枚の扁平熱交チューブの扁平チューブ部間にPTCヒータを組み込んで積層する際、非拘束とされている扁平熱交チューブのUターン部側の端部からPTCヒータを挿入することにより、扁平チューブ部間に容易にPTCヒータを組み込むことができる。従って、扁平チューブ部間へのPTCヒータの組み込み作業を容易化することができるとともに、出入口ヘッダ部でのチューブ間間隔をPTCヒータ厚さ寸法相当とすることにより、扁平チューブ部およびPTCヒータを密着させる時のチューブ湾曲によるチューブ付け根の応力集中を緩和することができる。また、扁平チューブ部とPTCヒータとの密着性を向上させるには、少なくとも扁平熱交チューブの扁平チューブ部を熱交押え部材により押圧すればよく、出入口ヘッダ部が押圧時に潰れないようにするために強度を高くする必要はなく、当該部の構造を簡素化することができるとともに、扁平熱交チューブとPTCヒータ間の密着性を高め、その間の接触熱抵抗を低減することにより伝熱効率を向上し、熱媒体加熱装置を高性能化することができる。特に、低負荷となる出口ヘッダ部側でのPTCヒータの加熱能力を入口ヘッダ部側で有効利用できるため、一層高効率化することができる。更に、複数枚の扁平熱交チューブが一端部に入口ヘッダ部および出口ヘッダ部が並設された片端ヘッダ構造とされているため、両端ヘッダ構造のものに比べチューブ長さ方向寸法を小さくでき、大型の熱媒体流通ボックス等を省略できること等と相俟って、熱媒体加熱装置の小型軽量化、低コスト化を図ることができる。
【0015】
さらに、本発明の熱媒体加熱装置は、上記の熱媒体加熱装置において、前記各扁平熱交チューブは、前記入口ヘッダ部および前記出口ヘッダ部と前記扁平チューブ部とが一体成形された一対の成形プレート部材を重ね合わせてロウ付けした扁平なチューブとされていることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、各扁平熱交チューブが、入口ヘッダ部および出口ヘッダ部と扁平チューブ部とが一体に成形された一対のプレート部材を重ね合わせてロウ付けした扁平なチューブとされているため、扁平熱交チューブを一対の成形プレート部材を積層した薄い扁平なチューブとし、その間にPTCヒータを多層に積層配設することによって、平面面積の小さい薄形構造の熱交換モジュールを構成することができる。従って、この熱交換モジュールの組み込みにより熱媒体加熱装置の小型軽量化、低コスト化を図ることができるとともに、PTCヒータの組み込みを容易化することができる。
【0017】
さらに、本発明の熱媒体加熱装置は、上述のいずれかの熱媒体加熱装置において、前記各扁平熱交チューブには、前記Uターン流路を形成している2流路間に熱遮断部が設けられていることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、各扁平熱交チューブのUターン流路を形成している2流路間に、熱遮断部が設けられているため、Uターン流路を形成している2流路内を流通する入口ヘッダ部近傍の温度が低い熱媒体と、PTCヒータにより加熱されて温度が高くなった出口ヘッダ部側の熱媒体との間の熱媒体間伝熱を、例えばスリット等によって構成される熱遮断部を介して遮断することができる。従って、熱媒体間での伝熱による熱ロスを低減し、熱媒体加熱装置を一段と高性能化することができる。
【0019】
さらに、本発明にかかる熱媒体加熱装置は、入口ヘッダ部から流入された熱媒体が扁平チューブ部を流通後、出口ヘッダ部から流出される複数枚の扁平熱交チューブと、互いに積層される複数枚の前記扁平熱交チューブの前記扁平チューブ部間に組み込まれるPTCヒータと、積層された複数枚の前記扁平熱交チューブおよび前記PTCヒータを前記扁平熱交チューブの一面側から押圧して密着させる熱交押え部材と、を備え、前記各扁平熱交チューブは、一端部に前記入口ヘッダ部、他端部に前記出口ヘッダ部が設けられ、その間が前記扁平チューブ部とされているとともに、該扁平チューブ部のチューブ長手方向の少なくとも一辺側のチューブ間間隔が非組み立て状態において外方側に向って漸次拡大されたチューブとされていることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、複数枚の扁平熱交チューブが積層され、その扁平チューブ部間にPTCヒータが組み込まれた状態で、各扁平熱交チューブおよびPTCヒータが熱交押え部材により押圧されて密着される構成とされており、更に各扁平熱交チューブが、一端部に入口ヘッダ部、他端部に出口ヘッダ部が設けられ、その間が扁平チューブ部とされているとともに、該扁平チューブ部のチューブ長手方向の少なくとも一辺側のチューブ間間隔が非組み立て状態において外方側に向って漸次拡大されたチューブとされているため、複数枚の扁平熱交チューブの扁平チューブ部間にPTCヒータを組み込んで積層する際、チューブ間間隔が非組み立て状態において外方側に向って漸次拡大されているチューブ長手方向の一辺側からPTCヒータを挿入することにより、扁平チューブ部間に容易にPTCヒータを組み込むことができる。従って、扁平チューブ部間へのPTCヒータの組み込み作業を容易化することができるとともに、出入口ヘッダ部でのチューブ間間隔をPTCヒータ厚さ寸法相当とすることにより、扁平チューブ部およびPTCヒータを密着させる時のチューブ湾曲によるチューブ付け根の応力集中を緩和することができる。また、扁平チューブ部とPTCヒータとの密着性を向上させるには、少なくとも扁平熱交チューブの扁平チューブ部を熱交押え部材により押圧すればよく、出入口ヘッダ部を押圧時に潰れないようにするために強度を高くする必要はなく、当該部の構造を簡素化することができるとともに、扁平熱交チューブとPTCヒータ間の密着性を高め、その間の接触熱抵抗を低減することによって伝熱効率を向上し、熱媒体加熱装置を高性能化することができる。更に、複数枚の扁平熱交チューブとPTCヒータとを多層に積層配設することにより平面面積を小さくでき、大型の熱媒体流通ボックス等を省略できること等と相俟って、熱媒体加熱装置の小型軽量化、低コスト化を図ることができる。
【0021】
さらに、本発明の熱媒体加熱装置は、上記の熱媒体加熱装置において、前記入口ヘッダ部および前記出口ヘッダ部は、チューブ長手方向の一辺側に偏位されて配設され、前記扁平チューブ部は、前記一辺側から他辺側に向ってチューブ間間隔が漸次拡大された構成とされていることを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、入口ヘッダ部および出口ヘッダ部が、チューブ長手方向の一辺側に偏位されて配設され、扁平チューブ部が、その一辺側から他辺側に向ってチューブ間間隔が漸次拡大された構成とされているため、PTCヒータが組み込まれる扁平チューブ部のチューブ間間隔を、チューブ長手方向の一辺側から他辺側に向ってチューブ幅方向全体にわたり漸次拡大させることができる。従って、複数枚の扁平熱交チューブの扁平チューブ部間に対してPTCヒータをより挿入し易くし、PTCヒータの組み込み作業を更に容易化することができる。
【0023】
さらに、本発明にかかる車両用空調装置は、空気流路中に配設されている放熱器に対して、熱媒体加熱装置で加熱された熱媒体が循環可能に構成されている車両用空調装置において、前記熱媒体加熱装置が、上述のいずれかの熱媒体加熱装置とされていることを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、空気流路中に配設されている放熱器に対して、上述のいずれかの熱媒体加熱装置により加熱された熱媒体が循環可能な構成とされているため、空気流路中に配設されている放熱器に対して供給される熱媒体を、小型軽量でかつ高性能化された上述の熱媒体加熱装置により加熱して供給することができる。従って、車両用空調装置における空調性能、特に暖房性能の向上を図ることができるとともに、車両に対する空調装置の搭載性を向上することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の熱媒体加熱装置によると、扁平熱交チューブとPTCヒータとを交互に多層に積層して組み込めばよく、扁平チューブ部間へのPTCヒータの組み込みを容易化することができるとともに、扁平チューブ部とPTCヒータとの密着性を熱交押え部材の押圧により高めることができるため、扁平熱交チューブとPTCヒータ間の密着性を高め、その間の接触熱抵抗を低減することによって伝熱効率を向上し、熱媒体加熱装置の高性能化を図ることができる。また、一端部に入口ヘッダ部および出口ヘッダ部が並設された扁平熱交チューブでは、低負荷となる出口ヘッダ部側でのPTCヒータの加熱能力を入口ヘッダ部側で有効に利用できるため、一層高効率化することができる。更に、複数枚の扁平熱交チューブが一端部に入口ヘッダ部および出口ヘッダ部が並設された片端ヘッダ構造とされているため、両端ヘッダ構造のものに比べて扁平熱交チューブの長さ方向寸法を小さくすることができ、大型の熱媒体流通ボックス等を省略できること等と相俟って、熱媒体加熱装置の小型軽量化、低コスト化を図ることができる。
【0026】
本発明の熱媒体加熱装置によると、複数枚の扁平熱交チューブの扁平チューブ部間にPTCヒータを組み込んで積層する際、非拘束とされている扁平熱交チューブのUターン部側の端部からPTCヒータを挿入することによって、扁平チューブ部間に容易にPTCヒータを組み込むことができるため、扁平チューブ部間へのPTCヒータの組み込み作業を容易化することができるとともに、出入口ヘッダ部でのチューブ間間隔をPTCヒータ厚さ寸法相当とすることによって、扁平チューブ部およびPTCヒータを密着させる時のチューブ湾曲によるチューブ付け根の応力集中を緩和することができる。また、扁平チューブ部とPTCヒータとの密着性を向上させるには、少なくとも扁平熱交チューブの扁平チューブ部を熱交押え部材により押圧すればよく、出入口ヘッダ部を押圧時に潰れないようにするために強度を高くする必要はなく、当該部の構造を簡素化することができるとともに、扁平熱交チューブとPTCヒータ間の密着性を高め、その間の接触熱抵抗を低減することにより伝熱効率を向上し、熱媒体加熱装置を高性能化することができる。特に、低負荷となる出口ヘッダ部側でのPTCヒータの加熱能力を入口ヘッダ部側で有効利用できるため、一層高効率化することができる。さらに、複数枚の扁平熱交チューブが一端部に入口ヘッダ部および出口ヘッダ部が並設された片端ヘッダ構造とされているため、両端ヘッダ構造のものに比べチューブ長さ方向寸法を小さくでき、大型の熱媒体流通ボックス等を省略できること等と相俟って、熱媒体加熱装置の小型軽量化、低コスト化を図ることができる。
【0027】
また、本発明の熱媒体加熱装置によると、複数枚の扁平熱交チューブの扁平チューブ部間にPTCヒータを組み込んで積層する際、チューブ間間隔が非組み立て状態において外方側に向って漸次拡大されているチューブ長手方向の一辺側からPTCヒータを挿入することにより、扁平チューブ部間に容易にPTCヒータを組み込むことができるため、扁平チューブ部間へのPTCヒータの組み込み作業を容易化することができるとともに、出入口ヘッダ部でのチューブ間間隔をPTCヒータ厚さ寸法相当とすることによって、扁平チューブ部およびPTCヒータを密着させる時のチューブ湾曲によるチューブ付け根の応力集中を緩和することができる。また、扁平チューブ部とPTCヒータとの密着性を向上させるには、少なくとも扁平熱交チューブの扁平チューブ部を熱交押え部材で押圧すればよく、出入口ヘッダ部を押圧時に潰れないようにするために強度を高くする必要はなく、当該部の構造を簡素化することができるとともに、扁平熱交チューブとPTCヒータ間の密着性を高め、その間の接触熱抵抗を低減することによって伝熱効率を向上し、熱媒体加熱装置を高性能化することができる。さらに、複数枚の扁平熱交チューブとPTCヒータとを多層に積層配設することにより平面面積を小さくでき、大型の熱媒体流通ボックス等を省略できること等と相俟って、熱媒体加熱装置の小型軽量化、低コスト化を図ることができる。
【0028】
さらに、本発明の車両用空調装置によると、空気流路中に配設されている放熱器に対して供給される熱媒体を、小型軽量でかつ高性能化された上述の熱媒体加熱装置により加熱して供給することができるため、車両用空調装置における空調性能、特に暖房性能の向上を図ることができるとともに、車両に対する空調装置の搭載性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1実施形態に係る熱媒体加熱装置を備えた車両用空調装置の概略構成図である。
【図2】図1に示す熱媒体加熱装置の組み立て手順を説明するための分解斜視図である。
【図3】図2に示す熱媒体加熱装置の平面視図(A)と側面視図(B)である。
【図4】図2に示す熱媒体加熱装置に適用する扁平熱交チューブの平面図である。
【図5】図4に示す扁平熱交チューブの側面図である。
【図6】図4,5に示す扁平熱交チューブとPTCヒータとの組み立て手順のイメージ図(A),(B),(C)である。
【図7】図2に示す熱媒体加熱装置の扁平熱交チューブとPTCヒータと熱交換状態の説明図(A),(B)である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る熱媒体加熱装置に適用する扁平熱交チューブの平面図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る熱媒体加熱装置に適用する扁平熱交チューブの平面図である。
【図10】図9に示す扁平熱交チューブとPTCヒータとの組み立て手順のイメージ図(A),(B)である。
【図11】本発明の第4実施形態に係る熱媒体加熱装置に適用する扁平熱交チューブの平面図である。
【図12】図11に示す扁平熱交チューブとPTCヒータとの組み立て手順のイメージ図(A),(B)である。
【図13】本発明の第5実施形態に係る熱媒体加熱装置の扁平熱交チューブとPTCヒータとの積層状態の側面図(A)とその積層前の分解図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1ないし図7を用いて説明する。
図1には、本発明の第1実施形態に係る熱媒体加熱装置を備えた車両用空調装置の概略構成図が示されている。
車両用空調装置1は、外気または車室内空気を取り込んで温調した後、それを車室内へと導くための空気流通路2を形成するケーシング3を備えている。
【0031】
ケーシング3の内部には、空気流通路2の上流側から下流側にかけて順次、外気または車室内空気を吸い込んで昇圧し、それを下流側へと圧送するブロア4と、該ブロア4により圧送される空気を冷却する冷却器5と、冷却器5を通過して冷却された空気を加熱する放熱器6と、放熱器6を通過する空気量と放熱器6をバイパスする空気量との流量割合を調整し、その下流側でエアミックスさせることによって、温調風の温度を調節するエアミックスダンパ7と、が設置されている。
【0032】
ケーシング3の下流側は、図示省略された吹き出しモード切替えダンパおよびダクトを介して温調された空気を車室内に吹き出す複数の吹き出し口に接続されている。
冷却器5は、図示省略された圧縮機、凝縮器、膨張弁等と共に冷媒回路を構成し、膨張弁で断熱膨張された冷媒を蒸発させることによって、そこを通過する空気を冷却するものである。放熱器6は、タンク8、ポンプ9および熱媒体加熱装置10とともに熱媒体循環回路10Aを構成し、熱媒体加熱装置10により高温に加熱された熱媒体(例えば、不凍液、温水等)がポンプ9を介して循環されることにより、そこを通過する空気を加温するものである。
【0033】
図2には、図1に示された熱媒体加熱装置10の組み立て手順を説明するための分解斜視図が示され、図3には、その熱媒体加熱装置10の平面視図(A)と側面視図(B)が示されている。熱媒体加熱装置10は、図2に示されるように、制御基板13と、複数枚の電極板14(図3(B)参照)と、IGBT等からなる複数個の半導体スイッチング素子12(図3(B)参照)と、熱交押え部材16と、複数枚(例えば、3枚)の扁平熱交チューブ17と、複数組のPTC素子(Positive Temperature Coefficient)18a(図3(B)参照)と、これらの制御基板13、電極板14、半導体スイッチング素子12、複数枚の扁平熱交チューブ17、熱交押え部材16および複数組のPTC素子18a等を収容するケーシング11と、を備えている。なお、電極板14、PTC素子18aおよび後述の絶縁部材(図示せず)等によってPTCヒータ18が構成されている。
【0034】
ケーシング11は、上半部と下半部とに2分割された構成とされており、上半部に位置するアッパケース11a(図3(B)参照)と、下半部に位置するロアケース11bとを備えている。また、アッパケース11aおよびロアケース11bの内部には、ロアケース11bの上方からロアケース11bの開口部11cにアッパケース11aを載置することによって、上記の制御基板13、半導体スイッチング素子12、電極板14、熱交押え部材16、積層された複数枚の扁平熱交チューブ17および複数組のPTCヒータ18等を収容する空間が形成されるようになっている。
【0035】
ロアケース11bの下面には、積層された3枚の扁平熱交チューブ17に導入される熱媒体を導くための熱媒体入口路11dおよび扁平熱交チューブ17内を流通した熱媒体を導出するための熱媒体出口路11eが一体に形成されている。ロアケース11bは、その内部空間に収容される扁平熱交チューブ17を形成しているアルミ合金材と線膨張が近い樹脂材料(例えば、PPS)により成形されている。なお、アッパケース11aも、ロアケース11bと同様の樹脂材料により成形されることが望ましい。このように、ケーシング11を樹脂材料で構成することにより、軽量化を図ることができる。
【0036】
また、ロアケース11bの下面には、電源ハーネス27およびLVハーネス28の先端部を貫通するための電源ハーネス用孔11fおよびLVハーネス用孔11g(図3(A)参照)が開口されている。電源ハーネス27は、制御基板13および半導体スイッチング素子12を介してPTCヒータ18に電力を供給するものであり、先端部が2又状に分岐され、制御基板13に設けられている2つの電源ハーネス用端子台13cに電極ハーネス接続用ネジ13bを介してネジ止め可能とされている。また、LVハーネス28は、制御基板13に制御用の信号を送信するものであり、その先端部は、制御基板13にコネクタ接続可能とされている。
【0037】
半導体スイッチング素子12および制御基板13は、上位制御装置(ECU)からの指令に基づいて複数組のPTCヒータ18に対する通電制御を行う制御系を構成するものであり、IGBT等の複数個の半導体スイッチング素子12を介して複数組のPTCヒータ18に対する通電状態が切替え可能な構成とされている。そして、この複数組のPTCヒータ18をその両面側から挟み込むように複数枚の扁平熱交チューブ17が積層されるようになっている。
【0038】
扁平熱交チューブ17は、アルミ合金材製のチューブであり、図2および図3(B)に示されるように、3枚の扁平熱交チューブ17が互いに平行になるように、下段、中段および上段の扁平熱交チューブ17c、17b、17aの順に順次積層されている。これらの扁平熱交チューブ17は、図4および図5に示されるように、扁平チューブ部20の一端部に入口ヘッダ部21および出口ヘッダ部22が並設され、他端部に熱媒体流れをUターンさせるUターン部23が形成されているとともに、扁平チューブ部20に入口ヘッダ部21からUターン部23を経て出口ヘッダ部22に至るUターン流路24が形成された構成とされている。
【0039】
各扁平熱交チューブ17は、扁平チューブ部20と入口ヘッダ部21および出口ヘッダ部22が一体成形された、アルミ合金材製の薄い一対の成形プレート部材25a,25bが重ね合わされてロウ付けされたもので、入口ヘッダ部21および出口ヘッダ部22の厚さ方向寸法が、Uターン流路24を形成している扁平チューブ部20の厚さ方向寸法よりも厚くされており、扁平熱交チューブ17c、17b、17aの順に積層したとき、図5に示されるように、扁平チューブ部20間に所定寸法のチューブ間間隔Sが形成されるようになっている。このチューブ間間隔Sは、上下両面を電極板14および図示省略の絶縁体等によってサンドイッチされたPTCヒータ18が挿入可能な寸法に設定されている。
【0040】
また、各扁平熱交チューブ17は、順次積層されたとき、図5に示されるように、入口ヘッダ部21および出口ヘッダ部22同士が互いに密着され、入口ヘッダ部21および出口ヘッダ部22に設けられている連通穴21a,22a同士が互いに連通されるようになっている。一方、Uターン部23とされている各チューブの他端部は、積層方向において非拘束状態とされている。更に、各扁平熱交チューブ17は、平面視した場合、図4の左右方向(以下、軸方向という。)に長くされた扁平な長方形状とされており、扁平熱交チューブ17c、17b、17aの順に積層され、後述するように基板サブアッセンブリ15を介してロアケース11bの内底面の方向に押圧されるようになっている。
【0041】
さらに、上記3枚の扁平熱交チューブ17の扁平チューブ部20間には、そのチューブ間間隔Sに対して、複数組のPTCヒータ18が、電極板14および図示省略の絶縁シート等を介して以下に記載の如く組み込まれるようになっている。
電極板14は、図3(B)に示されるように、PTC素子18aに電力を供給するためのものであり、平面視において、矩形状を呈するアルミ合金製の板材とされている。この電極板14は、PTC素子18aを挟んでその両面に、PTC素子18aの上面に接するように一枚、PTC素子18aの下面に接するように一枚それぞれ積層されている。これら2枚の電極板14によって、PTC素子18aの上面と、PTC素子18aの下面とが上下から挟み込まれるようになっている。
【0042】
そして、PTC素子18aの上面側に配置される電極板14は、その上面が絶縁部材を介して扁平熱交チューブ17の下面に接するように配置され、PTC素子18aの下面側に配置される電極板14は、その下面が絶縁部材を介して扁平熱交チューブ17の上面に接するように配置される。本実施形態において、電極板14は、下段の扁平熱交チューブ17cと中段の扁平熱交チューブ17bとの間および中段の扁平熱交チューブ17bと上段の扁平熱交チューブ17aとの間に各々2枚、合計4枚が配置され、これらの電極板14で挟まれた状態でPTCヒータ18が、3枚の扁平熱交チューブ17の扁平チューブ部20間にそれぞれ多層に積層配設されるようになっている。
【0043】
4枚の各電極板14は、各扁平熱交チューブ17の扁平チューブ部20と略同形とされている。各電極板14には、その長辺側に1つの端子14aが設けられている。この電極板14に設けられている端子14aは、各電極板14を積層したとき、互いに重ならないように、電極板14の長辺方向に沿って配置されている。すなわち、各電極板14に設けられている端子14aは、その長辺方向に少しずつ位置がずらされて設けられ、各電極板14が積層された場合に直列に配列されるように設けられている。各端子14aは、上方に突出するように設けられ、制御基板13に設けられている端子台13aに端子接続用ネジ14bを介して接続されるようになっている。
【0044】
基板サブアッセンブリ15は、制御基板13と熱交押え部材16を平行に配設し、熱交押え部材16の上面に設置されているIGBT等の複数個の半導体スイッチング素子12を間に挟み込んでいるものである。制御基板13と熱交押え部材16は、例えば4本の基板サブアッセンブリ接続用ネジ15aで固定されており、これによって、基板サブアッセンブリ15は、一体化されている。
【0045】
基板サブアッセンブリ15を構成している制御基板13には、各電極板14に直列に配列されている4つの端子14aに対応して、その一辺の下面に直列に4つの端子台13aが配列されている。また、4つの端子台13aと両端側に直列に並ぶように、電源ハーネス27の2分岐されている先端部と接続される2つの電源ハーネス用端子台13cが設けられている。これらの端子台13aおよび電源ハーネス用端子台13cは、制御基板13の下面から下方に突出するように設けられている。また、各端子台13aおよび電源ハーネス用端子台13cは、積層されている扁平熱交チューブ17a、17b、17cの長辺に沿って直列になるように設けられている。
【0046】
さらに、制御基板13に設けられている各端子台13aおよび電源ハーネス用端子台13cは、ロアケース11bの開口部11cよりも少し上方に位置されるように設けられている。これによって、各端子台13aおよび電源ハーネス用端子台13cに接続される電極板14の端子14aや電源ハーネス27の先端部が固定し易い構成とされている。
【0047】
一方、基板サブアッセンブリ15を構成している熱交押え部材16は、平面視において扁平状のアルミ合金製板材とされている。熱交押え部材16の上面には、図3(B)に示されるように、IGBT等からなる半導体スイッチング12が設置されている。この半導体スイッチング12は、略長方形状に樹脂成形されたトランジスタであり、作動することによって発熱する素子から構成されているため、熱交押え部材16の上面において、上段の扁平熱交チューブ17aの入口ヘッダ部21近傍に接続用ネジ12aを介してねじ止めされ、熱交押え部材16をヒートシンクとして冷却可能とされている。
【0048】
上記熱交押え部材16は、制御基板13よりも軸方向(図3(A)の左右方向)に大きくされたもので、各扁平熱交チューブ17a、17b、17cの扁平チューブ部20および出入口ヘッダ部21,22の上面を覆うことができる大きさとされている。この軸方向に大きくされている部分には、熱交押え部材16をロアケース11bのボス部に固定する基板サブアッセンブリ固定用ネジ15b(図3(A)参照)を通す貫通孔(図示せず)が4コーナー部に設けられている。
【0049】
基板サブアッセンブリ15は、積層された上段の扁平熱交チューブ17aの上面に載せられ、熱交押え部材16の下面が、上段の扁平熱交チューブ17aの扁平チューブ部20および出入口ヘッダ部21,22の上面に接するようにして配設されている。この基板サブアッセンブリ15は、熱交押え部材16を4本の固定用ネジ15bを介してロアケース11b側にネジ止め固定することにより、熱交押え部材16の下面とロアケース11bの内底面との間で、積層されている3枚の扁平熱交チューブ17a、17b、17cの扁平チューブ部20と、その間に挟まれている2枚のPTCヒータ18とを押圧して互いに密着させ、締め付け固定できるようになっている。
【0050】
これによって、熱媒体入口路11dから流入された熱媒体は、各扁平熱交チューブ17の入口ヘッダ部21から扁平チューブ部20内へと導入され、扁平チューブ部20のUターン流路24内を流通する間に、PTCヒータ18により加熱、昇温されて出口ヘッダ部22に至り、出口ヘッダ部22から熱媒体出口路11eを経て外部に流出されるように構成されている。熱媒体加熱装置10から流出された熱媒体は、熱媒体循環回路10A(図1参照)を介して放熱器6に供給されるようになっている。
【0051】
また、基板サブアッセンブリ15を構成している熱交押え部材16は、熱伝導性が良好なアルミ合金材製とされ、その下面が扁平熱交チューブ17の上面と接触されるように構成されている。このため、熱交押え部材16は、上記の如く、扁平熱交チューブ17内を流れる熱媒体を冷熱源とし、熱交押え部材16上に設置されているIGBT等の半導体スイッチング素子12を冷却するヒートシンクとしても機能されるようになっている。
【0052】
上記のように構成されている熱媒体加熱装置10は、まず3枚の扁平熱交チューブ17a、17b、17cが、図5に示されるように、互いに平行になるように積層され、各々の出入口ヘッダ部21,22同士が連通穴21a,22aを介して互いに連通されるようにロウ付け等で一体に接合される。この積層された3枚の扁平熱交チューブ17a、17b、17cの扁平チューブ部20間には、図5に示されるように、チューブ間間隔Sが設定されるため、該チューブ間間隔Sに対して、図6(B)に示されるように、Uターン部23側の端部からPTCヒータ18を両面に絶縁部材を挟んで挿入することにより、図6(C)に示されるように、各扁平熱交チューブ17の扁平チューブ部20間にそれぞれPTCヒータ18を多層に積層配設することができる。
【0053】
こうしてサブアッセンブリした3枚の扁平熱交チューブ17と2組のPTCヒータ18をロアケース11bの所定の内底面位置に組み込んだ後、その最上段の扁平熱交チューブ17aの上面に基板サブアッセンブリ15を載せ、基板サブアッセンブリ15の熱交押え部材16を4本の固定用ネジ15bを介してロアケース11b側にネジ止め固定することによって、3枚の扁平熱交チューブ17a、17b、17cの扁平チューブ部20と各PTCヒータ18とを互いに密着させてロアケース11b内に組み込むことができる。
【0054】
その後、熱交押え部材16上に設けられている制御基板13の端子台13a,13cに対して、電源ハーネス27の端子および電極板14の端子14aをネジ13b,14bを介してネジ止め固定するとともに、LVハーネス28をコネクタ接続することにより電気系統の結線を行い、その上部覆うように、アッパケース11aをロアケース11bにネジ止め固定することによって、熱媒体加熱装置10を組み立てることができる。この熱媒体加熱装置10は、熱媒体入口路11dを経て入口ヘッダ部21に流入された熱媒体を複数枚の扁平熱交チューブ17内に流通させ、PTCヒータ18によって加熱した後、出口ヘッダ部22から熱媒体出口路11eを介して流出させることにより、熱媒体循環回路10A内を循環される熱媒体の加熱に供される。
【0055】
斯くして、本実施形態の熱媒体加熱装置10および車両用空調装置1によれば、以下の作用効果を奏する。
複数枚(3枚)の扁平熱交チューブ17a、17b、17cが積層され、その扁平チューブ部20間にそれぞれPTCヒータ18が組み込まれた状態で、各扁平熱交チューブ17a、17b、17cおよび複数組のPTCヒータ18が熱交押え部材16により押圧されて密着される構成とされており、更に各々の扁平熱交チューブ17a、17b、17cが、一端部に入口ヘッダ部21および出口ヘッダ部22が並設され、他端部にUターン部23が形成されているとともに、扁平チューブ部20が入口ヘッダ部21からUターン部23を経て出口ヘッダ部22に至るUターン流路24を形成し、Uターン部23側の端部が積層方向に非拘束のチューブとされている。
【0056】
このため、複数枚の扁平熱交チューブ17a、17b、17cの扁平チューブ部20間にそれぞれPTCヒータ18を組み込んで積層する際、非拘束とされている扁平熱交チューブ17a、17b、17cのUターン部23側の端部からPTCヒータ18を挿入することにより、扁平チューブ部20間に容易にPTCヒータ18を組み込むことができる。従って、扁平チューブ部20間へのPTCヒータ18の組み込み作業を容易化することができるとともに、出入口ヘッダ部21,22でのチューブ間間隔SをPTCヒータ18の厚さ寸法相当とすることによって、扁平チューブ部20およびPTCヒータ18を密着させる時のチューブ湾曲によるチューブ付け根の応力集中を緩和することができる。
【0057】
また、扁平チューブ部20とPTCヒータ18との密着性を向上させるには、少なくとも各扁平熱交チューブ17a、17b、17cの扁平チューブ部20を熱交押え部材16によって押圧すればよく、出入口ヘッダ部21,22を押圧時に潰れないようにするために強度を高くする必要はなく、該出入口ヘッダ部21,22の構造を簡素化することができるとともに、各扁平熱交チューブ17a、17b、17cとPTCヒータ18間の密着性を高め、その間の接触熱抵抗を低減することによって伝熱効率を向上し、熱媒体加熱装置10を高性能化することができる。
【0058】
特に、各扁平熱交チューブ17a、17b、17cが、一端部に入口ヘッダ部21および出口ヘッダ部22が並設され、入口ヘッダ部21からUターン部23を経て出口ヘッダ部22に至るUターン流路24を形成したチューブとされているため、各扁平熱交チューブ17とPTCヒータ18との間の熱交換特性は、図7(A)に示されるように、PTCヒータ18の温度に対して熱媒体(温水)の温度および交換熱量が、図示の如く変化される特性を示す。従って、図7(B)に示されるように、低負荷となる出口ヘッダ部22側において余剰となるPTCヒータ18の加熱能力を、入口ヘッダ部21側に移動させて有効に利用することができるため、一層高効率化することができる。
【0059】
さらに、複数枚の扁平熱交チューブ17a、17b、17cは、一端部に入口ヘッダ部21および出口ヘッダ部22が並設された片端ヘッダ構造とされているため、チューブの両端に出入口ヘッダ部を設けた両端ヘッダ構造のものに比べチューブ長さ方向寸法を小さくでき、大型の熱媒体流通ボックス等を省略できること等と相俟って、熱媒体加熱装置10の小型軽量化、低コスト化を図ることができる。
【0060】
また、各扁平熱交チューブ17a、17b、17cは、入口ヘッダ部21および出口ヘッダ部22と扁平チューブ部20とが一体に成形された一対のプレート部材25a,25bを重ね合わせてロウ付けした扁平なチューブとされているため、扁平熱交チューブ17a、17b、17cを一対の成形プレート部材25a,25bを積層した薄い扁平なチューブとし、その間にPTCヒータ18を多層に積層配設することによって、平面面積の小さい薄形構造の熱交換モジュールを構成することができる。従って、この熱交換モジュールの組み込みによって熱媒体加熱装置10の小型軽量化、低コスト化を図ることができるとともに、PTCヒータ18の組み込みを容易化することができる。
【0061】
さらに、本実施形態によると、空気流路2中に配設されている放熱器6に対して供給される熱媒体を、上記の如く小型軽量化され、かつ高性能化された熱媒体加熱装置10により加熱して供給することができるため、車両用空調装置1における空調性能、特に暖房性能の向上を図ることができるとともに、その設置スペースを低減し、車両に対する空調装置1の搭載性を向上することができる。
【0062】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、図8を用いて説明する。
本実施形態は、上記した第1実施形態に対して、扁平熱交チューブ17のUターン流路24間に熱遮断部を設けている点が異なる。その他の点については、第1実施形態と同様であるので説明は省略する。
本実施形態においては、図8に示されるように、複数枚の扁平熱交チューブ17のUターン流路24を形成している2流路間に、チューブ長さ方向に沿って、例えばスリット等により構成される熱遮断部26を設けた構成とされている。
【0063】
上記のように、複数枚の扁平熱交チューブ17のUターン流路24を形成している2流路間に、熱遮断部26を設けることにより、Uターン流路24を形成している2流路内を流通する入口ヘッダ部21近傍の温度が低い熱媒体と、PTCヒータ18により加熱されて温度が高くなった出口ヘッダ部22側の熱媒体との間の熱媒体間伝熱を、例えばスリット等により構成される熱遮断部26を介して遮断することができる。従って、熱媒体間での伝熱による熱ロスを低減し、熱媒体加熱装置10を一段と高性能化することができる。
【0064】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について、図9および図10を用いて説明する。
本実施形態は、上記した第1および第2実施形態に対して、扁平熱交チューブ17の両端に入口ヘッダ部31および出口ヘッダ部32を設けた構成としている点が異なる。その他の点については、第1実施形態と同様であるので説明は省略する。
本実施形態において、複数枚の扁平熱交チューブ17a、17b、17cは、一端側に連通穴31aを有する入口ヘッダ部31が、他端側に連通穴32aを有する出口ヘッダ部32が設けられ、その間が扁平チューブ部30とされた構成とされている。
【0065】
そして、扁平チューブ部30のチューブ長手方向の少なくとも一辺側(本実施形態のものでは、互いに平行な2辺側共)のチューブ間間隔Sが、非組み立て状態において、図10(B)に示されるように、中央側から外方側に向って漸次拡大されたチューブ構成とされており、この外方側に向って漸次拡大されているチューブ間間隔Sの一方側から3枚の扁平熱交チューブ17a、17b、17cの扁平チューブ部30間に、PTCヒータ18を挿入することによって、各扁平熱交チューブ17の扁平チューブ部30間にPTCヒータ18が積層された状態で組み込み可能とされている。
【0066】
この各扁平熱交チューブ17の扁平チューブ部30とPTCヒータ18とは、上記第1実施形態と同様、基板サブアッセンブリ15の熱交押え部材16によって押圧され、互いに密着状態とされてケーシング11内に組み込まれるようになっている。なお、本実施形態では、扁平チューブ部30のチューブ長手方向の互いに平行な2辺を共に中央側から外方側に向って漸次拡大させているが、PTCヒータ18を挿入するいずれか一辺側のみを外方側に向って漸次拡大させておけばよい。
【0067】
上記のように、各扁平熱交チューブ17a、17b、17cを、一端部に入口ヘッダ部31、他端部に出口ヘッダ部32が設けられ、その間が扁平チューブ部30とされたチューブとなすとともに、この扁平チューブ部30のチューブ長手方向の少なくとも一辺側のチューブ間間隔Sが非組み立て状態において外方側に向って漸次拡大された構成とすることによっても、3枚の扁平熱交チューブ17の扁平チューブ部30間にPTCヒータ18を組み込んで積層する際に、チューブ間間隔Sが非組み立て状態において外方側に向って漸次拡大されているチューブ長手方向の一辺側からPTCヒータ18を挿入することによって、扁平チューブ部30間に容易にPTCヒータ18を組み込むことができる。
【0068】
従って、第1実施形態と同様、扁平チューブ部30間へのPTCヒータ18の組み込み作業を容易化することができるとともに、出入口ヘッダ部31,32でのチューブ間隔をPTCヒータ厚さ寸法相当とすることによって、扁平チューブ部30およびPTCヒータ18を密着させる時のチューブ湾曲によるチューブ付け根の応力集中を緩和することができる。また、扁平チューブ部30とPTCヒータ18との密着性を向上させるには、少なくとも各扁平熱交チューブ17の扁平チューブ部30を熱交押え部材16により押圧すればよく、出入口ヘッダ部31,32を押圧時に潰れないようにするために強度を高くする必要はなく、該部の構造を簡素化することができる。
【0069】
さらに、各扁平熱交チューブ17とPTCヒータ18間の密着性を高め、その間の接触熱抵抗を低減することにより伝熱効率を向上し、熱媒体加熱装置10を高性能化することができるとともに、複数枚の扁平熱交チューブ17とPTCヒータ18とを多層に積層配設することによって平面面積を小さくできるため、大型の熱媒体流通ボックス等を省くことができること等と相俟って、熱媒体加熱装置10の小型軽量化、低コスト化を図ることができる。
【0070】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について、図11および図12を用いて説明する。
本実施形態は、上記した第3実施形態に対して、扁平熱交チューブ17の両端に設けられる入口ヘッダ部41および出口ヘッダ部42が一辺側に偏位されて設けられている点が異なる。その他の点については、第3実施形態と同様であるので説明は省略する。
本実施形態では、複数枚の扁平熱交チューブ17a、17b、17cの一端側に設けられた連通穴41aを有する入口ヘッダ部41および他端側に設けられた連通穴42aを有する出口ヘッダ部42が、チューブ長手方向の一辺側に偏位されて設けられており、その間が扁平チューブ部40とされた構成とされている。
【0071】
そして、上記扁平熱交チューブ17a、17b、17cの扁平チューブ部40は、上記一辺側から他辺側に向ってチューブ間間隔Sが漸次拡大された構成とされており、そのチューブ間間隔Sに対して、PTCヒータ18を挿入することにより、各扁平熱交チューブ17a、17b、17cの扁平チューブ部30間にPTCヒータ18が積層された状態で組み込み可能とされている。
【0072】
斯くして、本実施形態によると、入口ヘッダ部41および出口ヘッダ部42がチューブ長手方向の一辺側に偏位されて配設され、その間の扁平チューブ部40が、一辺側から他辺側に向ってチューブ間間隔Sが漸次拡大された構成とされている。このため、PTCヒータ18が組み込まれる扁平チューブ部40のチューブ間間隔Sを、チューブ長手方向の一辺側から他辺側に向ってチューブ幅方向全体にわたり漸次拡大させることができる。従って、複数枚の扁平熱交チューブ17の扁平チューブ部40間に対してPTCヒータ18をより挿入し易くし、PTCヒータ18の組み込み作業を更に容易化することができる。
【0073】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態について、図13を用いて説明する。
本実施形態は、上記した第1ないし第3実施形態に対して、複数枚の扁平熱交チューブ17a、17b、17cとPTCヒータ18との組み付け構造が異なっている。その他の点については、第3実施形態と同様であるので説明は省略する。
本実施形態においては、複数枚の扁平熱交チューブ17a、17b、17cとPTCヒータ18とをロアケース11bの内底面に、扁平熱交チューブ17間にPTCヒータ18を挟み込みながら交互に積層配設し、上段の扁平熱交チューブ17aを積層した後、その最上段の扁平熱交チューブ17aの上面に基板サブアッセンブリ15を載せ、該基板サブアッセンブリ15の熱交押え部材16を4本の固定用ネジ15bを介してロアケース11b側にネジ止め固定することによって、3枚の扁平熱交チューブ17a、17b、17cの入口ヘッダ部21間と出口ヘッダ部22間、並びに扁平チューブ部20と各PTCヒータ18とを互いに密着させてロアケース11b内に組み込み可能な構成とされている。
【0074】
つまり、第1ないし第3実施形態では、複数枚の扁平熱交チューブ17の入口ヘッダ部21,31,41間および出口ヘッダ部22,32,42間を密着させて接合し、扁平チューブ部20,30,40の一端もしくは一辺側からPTCヒータ18を挿入して積層配設することにより、3枚の扁平熱交チューブ17と2組のPTCヒータ18とをサブアッセンブリした後、それをロアケース11b内に基板サブアッセンブリ15の熱交押え部材16により上方から押圧して組み付けるように構成しているが、本実施形態では、図13に示されるように、まず、下段の扁平熱交チューブ17cをロアケース11bの内底面に組み込み、その扁平チューブ部20の上にPTCヒータ18を積層するとともに、入口ヘッダ部21および出口ヘッダ部22に設けられている連通穴21a,22aの周りにOリング、液状ガスケット等のシール材29を配設するようにしている(図13(B)参照)。
【0075】
そのPTCヒータ18およびシール材29の上面に中段の扁平熱交チューブ17cを積層し、更にその上にPTCヒータ18およびシール材29を同様に積層配置した後、上段の扁平熱交チューブ17aを積層することにより、図13(A)に示されるように、3枚の扁平熱交チューブ17a、17b、17cと2組のPTCヒータ18とが交互に順次多層に積層されて組み込まれ、それが基板サブアッセンブリ15の熱交押え部材16により上方から押圧されてロアケース11bに組み付けられる構成とされている。
【0076】
このように、3枚の17a、17b、17cと2組のPTCヒータ18とを予めサブアッセンブリしなくても、扁平熱交チューブ17a、17b、17cとPTCヒータ18とを1枚ずつ交互に順次積層しながら組み込むことによっても、第1実施形態と同様、ロアケース11b内に3枚の扁平熱交チューブ17と2組のPTCヒータ18とを互いに密着させて組み込むことができる。
【0077】
斯くして、本実施形態によると、扁平熱交チューブ17a、17b、17cとPTCヒータ18とを交互に多層に積層して組み込めばよく、扁平チューブ部20間へのPTCヒータ18の組み込み作業を容易化することができるとともに、入口ヘッダ部21および出口ヘッダ部22の連通穴21a,22a周りにシール材26を配設し、そのシール材26を確実に密着させてシールすることができるため、熱媒体の漏えいを防止し、そのシール性を向上することができる。また、扁平チューブ部20とPTCヒータ18との密着性を高めるには、扁平熱交チューブ17の扁平チューブ部20を熱交押え部材16により押圧すればよく、扁平熱交チューブ17とPTCヒータ18間の密着性を高め、その間の接触熱抵抗を低減することにより伝熱効率を向上し、熱媒体加熱装置10を高性能化することができる。
【0078】
特に、一端部に入口ヘッダ部21および出口ヘッダ部22が並設された扁平熱交チューブ17においては、低負荷となる出口ヘッダ部22側でのPTCヒータ18の加熱能力を入口ヘッダ部21側で有効に利用できるため、一層高効率化することができる。更に、複数枚の扁平熱交チューブ17が一端部に入口ヘッダ部21および出口ヘッダ部22が並設された片端ヘッダ構造とされているため、両端ヘッダ構造のものに比べ扁平熱交チューブ17の長さ方向寸法を小さくでき、大型の熱媒体流通ボックス等を省略できること等と相俟って、熱媒体加熱装置10の小型軽量化、低コスト化を図ることができる。
【0079】
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、上記した実施形態では、扁平熱交チューブ17を3層に積層し、各々の間にPTCヒータ18を組み込んだ構成としているが、これに限らず、扁平熱交チューブ17およびPTCヒータ18の積層枚数を増減してもよいことはもちろんである。また、ケーシング11を樹脂成形品とした例について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、アルミ合金等の金属製としてもよいことは云うまでもない。
【符号の説明】
【0080】
1 車両用空調装置
6 放熱器
10 熱媒体加熱装置
10A 熱媒体循環回路
11 ケーシング
16 熱交押え部材
17,17a,17b,17c 扁平熱交チューブ
18 PTCヒータ
20,30,40 扁平チューブ部
21,31,41 入口ヘッダ部
22,32,42 出口ヘッダ部
23 Uターン部
24 Uターン流路
25a,25b 成形プレート部材
26 熱遮断部
29 シール材
S チューブ間間隔
【技術分野】
【0001】
本発明は、PTCヒータを用いて熱媒体を加熱する熱媒体加熱装置およびそれを備えた車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド車等に適用される車両用空調装置にあって、暖房用の熱源となる被加熱媒体を加熱する熱媒体加熱装置の1つに、正特性サーミスタ素子(Positive Temperature Coefficient;以下、PTC素子という。)を発熱要素とするPTCヒータを用いたものが知られている。PTCヒータは、正特性のサーミスタ特性を有しており、温度の上昇と共に抵抗値が上昇し、これによって消費電流が制御されるとともに温度上昇が緩やかになり、その後、消費電流および発熱部の温度が飽和領域に達して安定するものであり、自己温度制御特性を備えている。
【0003】
上記のような熱媒体加熱装置において、特許文献1には、熱媒体の入口および出口を備えたハウジング内に、該ハウジング内を加熱室と熱媒体の循環室とに分割する多数の隔壁を設け、この隔壁によって区画された加熱室側に隔壁と接するようにPTC加熱素子を挿入設置し、隔壁を介して循環室側に流通される熱媒体を加熱するようにした熱媒体加熱装置が提示されている。
【0004】
また、特許文献2には、PTC素子を挟んでその両面に電極板、絶縁層および伝熱層を設けて平板状のPTCヒータを構成し、該PTCヒータの両面に、熱媒体の入口および出口を備えた互いに連通されている一対の熱媒体流通ボックスを積層するとともに、更にその外面側に制御基板を収容する基板収容ボックスおよび蓋体を設けた積層構造の熱媒体加熱装置が提示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−7106号公報
【特許文献2】特開2008−56044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に示されるものでは、隔壁により形成された加熱室にPTC加熱素子が挿入設置される構成とされている。このため、伝熱面となる隔壁間にPTC加熱素子を隔壁と密着性を保って挿入設置するのは難しく、隔壁とPTC加熱素子間の接触熱抵抗が大きくなってしまい、伝熱効率が低くなるという課題があり、一方、隔壁間の間隔を狭くして密着性を高めようとすると、組み付けの作業性が著しく低下し、その工数が増加してしまう等の課題があった。
【0007】
また、特許文献2のものは、PTCヒータの両面に放熱フィンを有る一対の熱媒体流通ボックスを積層し、その外面に制御基板を収容する基板収容ボックスおよび蓋体を積層してボルトにより締結した構成とされているため、PTCヒータと熱媒体流通ボックスとを密着させ、その間の接触熱抵抗を低減させることができる。しかし、PTCヒータを多層配置することが困難なため、平面面積が大きくなるとともに、熱媒体流通ボックスや専用の基板収容ボックスが必要で、これらは、耐熱性や伝熱性等の面からアルミダイカスト製とされるため、小型軽量化には限界があるとともに、高価になる等の課題があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、複数枚の扁平熱交チューブとPTCヒータとを多層に積層化してその間の接触熱抵抗を低減し、伝熱性能を向上するとともに、扁平熱交チューブとPTCヒータとの組み付けを容易化し、小型軽量でかつ安価な熱媒体加熱装置およびそれを備えた車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために、本発明の熱媒体加熱装置およびそれを備えた車両用空調装置は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる熱媒体加熱装置は、入口ヘッダ部から流入された熱媒体が扁平チューブ部を流通後、出口ヘッダ部から流出される複数枚の扁平熱交チューブと、互いに積層される複数枚の前記扁平熱交チューブの前記扁平チューブ部間に組み込まれるPTCヒータと、積層された複数枚の前記扁平熱交チューブおよび前記PTCヒータを前記扁平熱交チューブの一面側から押圧して密着させる熱交押え部材と、を備え、前記各扁平熱交チューブは、一端部に前記入口ヘッダ部および前記出口ヘッダ部が並設され、他端部に熱媒体流れのUターン部が形成されているとともに、前記扁平チューブ部が前記入口ヘッダ部から前記Uターン部を経て前記出口ヘッダ部に至るUターン流路を形成したチューブとされ、前記扁平熱交チューブと前記PTCヒータとが交互に多層に積層配設されていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、一端部に入口ヘッダ部および出口ヘッダ部が並設され、他端部に熱媒体流れのUターン部が形成されているとともに、扁平チューブ部が入口ヘッダ部からUターン部を経て出口ヘッダ部に至るUターン流路を形成している扁平熱交チューブの扁平チューブ部間にPTCヒータを組み込むに当たり、扁平熱交チューブとPTCヒータとを交互に多層に積層配設し、それを一面側から熱交押え部材により押圧して密着させるようにしているため、扁平チューブ部間へのPTCヒータの組み込みを容易化することができるとともに、扁平チューブ部とPTCヒータとの密着性を熱交押え部材の押圧により高めることができる。従って、扁平熱交チューブとPTCヒータ間の密着性を高め、その間の接触熱抵抗を低減することによって伝熱効率を向上し、熱媒体加熱装置の高性能化を図ることができる。また、一端部に入口ヘッダ部および出口ヘッダ部が並設された扁平熱交チューブでは、低負荷となる出口ヘッダ部側でのPTCヒータの加熱能力を入口ヘッダ部側で有効に利用できるため、一層高効率化することができる。更に、複数枚の扁平熱交チューブが一端部に入口ヘッダ部および出口ヘッダ部が並設された片端ヘッダ構造とされているため、両端ヘッダ構造のものに比べて扁平熱交チューブの長さ方向寸法を小さくすることができ、大型の熱媒体流通ボックス等を省略できること等と相俟って、熱媒体加熱装置の小型軽量化、低コスト化を図ることができる。
【0011】
さらに、本発明の熱媒体加熱装置は、上記の熱媒体加熱装置において、前記扁平熱交チューブの前記入口ヘッダ部および前記出口ヘッダ部に設けられている連通穴周りに、シール材が配設されていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、扁平熱交チューブの入口ヘッダ部および出口ヘッダ部に設けられている連通穴周りに、シール材が配設されているため、互いに積層された複数枚の扁平熱交チューブの入口ヘッダ部および出口ヘッダ部を熱交押え部材で押圧することにより、出入口ヘッダ部の連通穴周りに配設されているシール材を確実に密着させて連通穴周りをシールすることができる。従って、出入口ヘッダ部からの熱媒体の漏えいを防止し、そのシール性を向上することができる。
【0013】
さらに、本発明にかかる熱媒体加熱装置は、入口ヘッダ部から流入された熱媒体が扁平チューブ部を流通後、出口ヘッダ部から流出される複数枚の扁平熱交チューブと、互いに積層される複数枚の前記扁平熱交チューブの前記扁平チューブ部間に組み込まれるPTCヒータと、積層された複数枚の前記扁平熱交チューブおよび前記PTCヒータを前記扁平熱交チューブの一面側から押圧して密着させる熱交押え部材と、を備え、前記各扁平熱交チューブは、一端部に前記入口ヘッダ部および前記出口ヘッダ部が並設され、他端部に熱媒体流れのUターン部が形成されているとともに、前記扁平チューブ部が前記入口ヘッダ部から前記Uターン部を経て前記出口ヘッダ部に至るUターン流路を形成し、前記Uターン部側の端部が積層方向に非拘束のチューブとされていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、複数枚の扁平熱交チューブが積層され、その扁平チューブ部間にPTCヒータが組み込まれた状態で、各扁平熱交チューブおよびPTCヒータが熱交押え部材により押圧されて密着される構成とされており、更に各扁平熱交チューブが、一端部に入口ヘッダ部および出口ヘッダ部が並設され、他端部にUターン部が形成されているとともに、扁平チューブ部が入口ヘッダ部からUターン部を経て出口ヘッダ部に至るUターン流路を形成し、Uターン部側の端部が積層方向に非拘束のチューブとされているため、複数枚の扁平熱交チューブの扁平チューブ部間にPTCヒータを組み込んで積層する際、非拘束とされている扁平熱交チューブのUターン部側の端部からPTCヒータを挿入することにより、扁平チューブ部間に容易にPTCヒータを組み込むことができる。従って、扁平チューブ部間へのPTCヒータの組み込み作業を容易化することができるとともに、出入口ヘッダ部でのチューブ間間隔をPTCヒータ厚さ寸法相当とすることにより、扁平チューブ部およびPTCヒータを密着させる時のチューブ湾曲によるチューブ付け根の応力集中を緩和することができる。また、扁平チューブ部とPTCヒータとの密着性を向上させるには、少なくとも扁平熱交チューブの扁平チューブ部を熱交押え部材により押圧すればよく、出入口ヘッダ部が押圧時に潰れないようにするために強度を高くする必要はなく、当該部の構造を簡素化することができるとともに、扁平熱交チューブとPTCヒータ間の密着性を高め、その間の接触熱抵抗を低減することにより伝熱効率を向上し、熱媒体加熱装置を高性能化することができる。特に、低負荷となる出口ヘッダ部側でのPTCヒータの加熱能力を入口ヘッダ部側で有効利用できるため、一層高効率化することができる。更に、複数枚の扁平熱交チューブが一端部に入口ヘッダ部および出口ヘッダ部が並設された片端ヘッダ構造とされているため、両端ヘッダ構造のものに比べチューブ長さ方向寸法を小さくでき、大型の熱媒体流通ボックス等を省略できること等と相俟って、熱媒体加熱装置の小型軽量化、低コスト化を図ることができる。
【0015】
さらに、本発明の熱媒体加熱装置は、上記の熱媒体加熱装置において、前記各扁平熱交チューブは、前記入口ヘッダ部および前記出口ヘッダ部と前記扁平チューブ部とが一体成形された一対の成形プレート部材を重ね合わせてロウ付けした扁平なチューブとされていることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、各扁平熱交チューブが、入口ヘッダ部および出口ヘッダ部と扁平チューブ部とが一体に成形された一対のプレート部材を重ね合わせてロウ付けした扁平なチューブとされているため、扁平熱交チューブを一対の成形プレート部材を積層した薄い扁平なチューブとし、その間にPTCヒータを多層に積層配設することによって、平面面積の小さい薄形構造の熱交換モジュールを構成することができる。従って、この熱交換モジュールの組み込みにより熱媒体加熱装置の小型軽量化、低コスト化を図ることができるとともに、PTCヒータの組み込みを容易化することができる。
【0017】
さらに、本発明の熱媒体加熱装置は、上述のいずれかの熱媒体加熱装置において、前記各扁平熱交チューブには、前記Uターン流路を形成している2流路間に熱遮断部が設けられていることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、各扁平熱交チューブのUターン流路を形成している2流路間に、熱遮断部が設けられているため、Uターン流路を形成している2流路内を流通する入口ヘッダ部近傍の温度が低い熱媒体と、PTCヒータにより加熱されて温度が高くなった出口ヘッダ部側の熱媒体との間の熱媒体間伝熱を、例えばスリット等によって構成される熱遮断部を介して遮断することができる。従って、熱媒体間での伝熱による熱ロスを低減し、熱媒体加熱装置を一段と高性能化することができる。
【0019】
さらに、本発明にかかる熱媒体加熱装置は、入口ヘッダ部から流入された熱媒体が扁平チューブ部を流通後、出口ヘッダ部から流出される複数枚の扁平熱交チューブと、互いに積層される複数枚の前記扁平熱交チューブの前記扁平チューブ部間に組み込まれるPTCヒータと、積層された複数枚の前記扁平熱交チューブおよび前記PTCヒータを前記扁平熱交チューブの一面側から押圧して密着させる熱交押え部材と、を備え、前記各扁平熱交チューブは、一端部に前記入口ヘッダ部、他端部に前記出口ヘッダ部が設けられ、その間が前記扁平チューブ部とされているとともに、該扁平チューブ部のチューブ長手方向の少なくとも一辺側のチューブ間間隔が非組み立て状態において外方側に向って漸次拡大されたチューブとされていることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、複数枚の扁平熱交チューブが積層され、その扁平チューブ部間にPTCヒータが組み込まれた状態で、各扁平熱交チューブおよびPTCヒータが熱交押え部材により押圧されて密着される構成とされており、更に各扁平熱交チューブが、一端部に入口ヘッダ部、他端部に出口ヘッダ部が設けられ、その間が扁平チューブ部とされているとともに、該扁平チューブ部のチューブ長手方向の少なくとも一辺側のチューブ間間隔が非組み立て状態において外方側に向って漸次拡大されたチューブとされているため、複数枚の扁平熱交チューブの扁平チューブ部間にPTCヒータを組み込んで積層する際、チューブ間間隔が非組み立て状態において外方側に向って漸次拡大されているチューブ長手方向の一辺側からPTCヒータを挿入することにより、扁平チューブ部間に容易にPTCヒータを組み込むことができる。従って、扁平チューブ部間へのPTCヒータの組み込み作業を容易化することができるとともに、出入口ヘッダ部でのチューブ間間隔をPTCヒータ厚さ寸法相当とすることにより、扁平チューブ部およびPTCヒータを密着させる時のチューブ湾曲によるチューブ付け根の応力集中を緩和することができる。また、扁平チューブ部とPTCヒータとの密着性を向上させるには、少なくとも扁平熱交チューブの扁平チューブ部を熱交押え部材により押圧すればよく、出入口ヘッダ部を押圧時に潰れないようにするために強度を高くする必要はなく、当該部の構造を簡素化することができるとともに、扁平熱交チューブとPTCヒータ間の密着性を高め、その間の接触熱抵抗を低減することによって伝熱効率を向上し、熱媒体加熱装置を高性能化することができる。更に、複数枚の扁平熱交チューブとPTCヒータとを多層に積層配設することにより平面面積を小さくでき、大型の熱媒体流通ボックス等を省略できること等と相俟って、熱媒体加熱装置の小型軽量化、低コスト化を図ることができる。
【0021】
さらに、本発明の熱媒体加熱装置は、上記の熱媒体加熱装置において、前記入口ヘッダ部および前記出口ヘッダ部は、チューブ長手方向の一辺側に偏位されて配設され、前記扁平チューブ部は、前記一辺側から他辺側に向ってチューブ間間隔が漸次拡大された構成とされていることを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、入口ヘッダ部および出口ヘッダ部が、チューブ長手方向の一辺側に偏位されて配設され、扁平チューブ部が、その一辺側から他辺側に向ってチューブ間間隔が漸次拡大された構成とされているため、PTCヒータが組み込まれる扁平チューブ部のチューブ間間隔を、チューブ長手方向の一辺側から他辺側に向ってチューブ幅方向全体にわたり漸次拡大させることができる。従って、複数枚の扁平熱交チューブの扁平チューブ部間に対してPTCヒータをより挿入し易くし、PTCヒータの組み込み作業を更に容易化することができる。
【0023】
さらに、本発明にかかる車両用空調装置は、空気流路中に配設されている放熱器に対して、熱媒体加熱装置で加熱された熱媒体が循環可能に構成されている車両用空調装置において、前記熱媒体加熱装置が、上述のいずれかの熱媒体加熱装置とされていることを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、空気流路中に配設されている放熱器に対して、上述のいずれかの熱媒体加熱装置により加熱された熱媒体が循環可能な構成とされているため、空気流路中に配設されている放熱器に対して供給される熱媒体を、小型軽量でかつ高性能化された上述の熱媒体加熱装置により加熱して供給することができる。従って、車両用空調装置における空調性能、特に暖房性能の向上を図ることができるとともに、車両に対する空調装置の搭載性を向上することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の熱媒体加熱装置によると、扁平熱交チューブとPTCヒータとを交互に多層に積層して組み込めばよく、扁平チューブ部間へのPTCヒータの組み込みを容易化することができるとともに、扁平チューブ部とPTCヒータとの密着性を熱交押え部材の押圧により高めることができるため、扁平熱交チューブとPTCヒータ間の密着性を高め、その間の接触熱抵抗を低減することによって伝熱効率を向上し、熱媒体加熱装置の高性能化を図ることができる。また、一端部に入口ヘッダ部および出口ヘッダ部が並設された扁平熱交チューブでは、低負荷となる出口ヘッダ部側でのPTCヒータの加熱能力を入口ヘッダ部側で有効に利用できるため、一層高効率化することができる。更に、複数枚の扁平熱交チューブが一端部に入口ヘッダ部および出口ヘッダ部が並設された片端ヘッダ構造とされているため、両端ヘッダ構造のものに比べて扁平熱交チューブの長さ方向寸法を小さくすることができ、大型の熱媒体流通ボックス等を省略できること等と相俟って、熱媒体加熱装置の小型軽量化、低コスト化を図ることができる。
【0026】
本発明の熱媒体加熱装置によると、複数枚の扁平熱交チューブの扁平チューブ部間にPTCヒータを組み込んで積層する際、非拘束とされている扁平熱交チューブのUターン部側の端部からPTCヒータを挿入することによって、扁平チューブ部間に容易にPTCヒータを組み込むことができるため、扁平チューブ部間へのPTCヒータの組み込み作業を容易化することができるとともに、出入口ヘッダ部でのチューブ間間隔をPTCヒータ厚さ寸法相当とすることによって、扁平チューブ部およびPTCヒータを密着させる時のチューブ湾曲によるチューブ付け根の応力集中を緩和することができる。また、扁平チューブ部とPTCヒータとの密着性を向上させるには、少なくとも扁平熱交チューブの扁平チューブ部を熱交押え部材により押圧すればよく、出入口ヘッダ部を押圧時に潰れないようにするために強度を高くする必要はなく、当該部の構造を簡素化することができるとともに、扁平熱交チューブとPTCヒータ間の密着性を高め、その間の接触熱抵抗を低減することにより伝熱効率を向上し、熱媒体加熱装置を高性能化することができる。特に、低負荷となる出口ヘッダ部側でのPTCヒータの加熱能力を入口ヘッダ部側で有効利用できるため、一層高効率化することができる。さらに、複数枚の扁平熱交チューブが一端部に入口ヘッダ部および出口ヘッダ部が並設された片端ヘッダ構造とされているため、両端ヘッダ構造のものに比べチューブ長さ方向寸法を小さくでき、大型の熱媒体流通ボックス等を省略できること等と相俟って、熱媒体加熱装置の小型軽量化、低コスト化を図ることができる。
【0027】
また、本発明の熱媒体加熱装置によると、複数枚の扁平熱交チューブの扁平チューブ部間にPTCヒータを組み込んで積層する際、チューブ間間隔が非組み立て状態において外方側に向って漸次拡大されているチューブ長手方向の一辺側からPTCヒータを挿入することにより、扁平チューブ部間に容易にPTCヒータを組み込むことができるため、扁平チューブ部間へのPTCヒータの組み込み作業を容易化することができるとともに、出入口ヘッダ部でのチューブ間間隔をPTCヒータ厚さ寸法相当とすることによって、扁平チューブ部およびPTCヒータを密着させる時のチューブ湾曲によるチューブ付け根の応力集中を緩和することができる。また、扁平チューブ部とPTCヒータとの密着性を向上させるには、少なくとも扁平熱交チューブの扁平チューブ部を熱交押え部材で押圧すればよく、出入口ヘッダ部を押圧時に潰れないようにするために強度を高くする必要はなく、当該部の構造を簡素化することができるとともに、扁平熱交チューブとPTCヒータ間の密着性を高め、その間の接触熱抵抗を低減することによって伝熱効率を向上し、熱媒体加熱装置を高性能化することができる。さらに、複数枚の扁平熱交チューブとPTCヒータとを多層に積層配設することにより平面面積を小さくでき、大型の熱媒体流通ボックス等を省略できること等と相俟って、熱媒体加熱装置の小型軽量化、低コスト化を図ることができる。
【0028】
さらに、本発明の車両用空調装置によると、空気流路中に配設されている放熱器に対して供給される熱媒体を、小型軽量でかつ高性能化された上述の熱媒体加熱装置により加熱して供給することができるため、車両用空調装置における空調性能、特に暖房性能の向上を図ることができるとともに、車両に対する空調装置の搭載性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1実施形態に係る熱媒体加熱装置を備えた車両用空調装置の概略構成図である。
【図2】図1に示す熱媒体加熱装置の組み立て手順を説明するための分解斜視図である。
【図3】図2に示す熱媒体加熱装置の平面視図(A)と側面視図(B)である。
【図4】図2に示す熱媒体加熱装置に適用する扁平熱交チューブの平面図である。
【図5】図4に示す扁平熱交チューブの側面図である。
【図6】図4,5に示す扁平熱交チューブとPTCヒータとの組み立て手順のイメージ図(A),(B),(C)である。
【図7】図2に示す熱媒体加熱装置の扁平熱交チューブとPTCヒータと熱交換状態の説明図(A),(B)である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る熱媒体加熱装置に適用する扁平熱交チューブの平面図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る熱媒体加熱装置に適用する扁平熱交チューブの平面図である。
【図10】図9に示す扁平熱交チューブとPTCヒータとの組み立て手順のイメージ図(A),(B)である。
【図11】本発明の第4実施形態に係る熱媒体加熱装置に適用する扁平熱交チューブの平面図である。
【図12】図11に示す扁平熱交チューブとPTCヒータとの組み立て手順のイメージ図(A),(B)である。
【図13】本発明の第5実施形態に係る熱媒体加熱装置の扁平熱交チューブとPTCヒータとの積層状態の側面図(A)とその積層前の分解図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1ないし図7を用いて説明する。
図1には、本発明の第1実施形態に係る熱媒体加熱装置を備えた車両用空調装置の概略構成図が示されている。
車両用空調装置1は、外気または車室内空気を取り込んで温調した後、それを車室内へと導くための空気流通路2を形成するケーシング3を備えている。
【0031】
ケーシング3の内部には、空気流通路2の上流側から下流側にかけて順次、外気または車室内空気を吸い込んで昇圧し、それを下流側へと圧送するブロア4と、該ブロア4により圧送される空気を冷却する冷却器5と、冷却器5を通過して冷却された空気を加熱する放熱器6と、放熱器6を通過する空気量と放熱器6をバイパスする空気量との流量割合を調整し、その下流側でエアミックスさせることによって、温調風の温度を調節するエアミックスダンパ7と、が設置されている。
【0032】
ケーシング3の下流側は、図示省略された吹き出しモード切替えダンパおよびダクトを介して温調された空気を車室内に吹き出す複数の吹き出し口に接続されている。
冷却器5は、図示省略された圧縮機、凝縮器、膨張弁等と共に冷媒回路を構成し、膨張弁で断熱膨張された冷媒を蒸発させることによって、そこを通過する空気を冷却するものである。放熱器6は、タンク8、ポンプ9および熱媒体加熱装置10とともに熱媒体循環回路10Aを構成し、熱媒体加熱装置10により高温に加熱された熱媒体(例えば、不凍液、温水等)がポンプ9を介して循環されることにより、そこを通過する空気を加温するものである。
【0033】
図2には、図1に示された熱媒体加熱装置10の組み立て手順を説明するための分解斜視図が示され、図3には、その熱媒体加熱装置10の平面視図(A)と側面視図(B)が示されている。熱媒体加熱装置10は、図2に示されるように、制御基板13と、複数枚の電極板14(図3(B)参照)と、IGBT等からなる複数個の半導体スイッチング素子12(図3(B)参照)と、熱交押え部材16と、複数枚(例えば、3枚)の扁平熱交チューブ17と、複数組のPTC素子(Positive Temperature Coefficient)18a(図3(B)参照)と、これらの制御基板13、電極板14、半導体スイッチング素子12、複数枚の扁平熱交チューブ17、熱交押え部材16および複数組のPTC素子18a等を収容するケーシング11と、を備えている。なお、電極板14、PTC素子18aおよび後述の絶縁部材(図示せず)等によってPTCヒータ18が構成されている。
【0034】
ケーシング11は、上半部と下半部とに2分割された構成とされており、上半部に位置するアッパケース11a(図3(B)参照)と、下半部に位置するロアケース11bとを備えている。また、アッパケース11aおよびロアケース11bの内部には、ロアケース11bの上方からロアケース11bの開口部11cにアッパケース11aを載置することによって、上記の制御基板13、半導体スイッチング素子12、電極板14、熱交押え部材16、積層された複数枚の扁平熱交チューブ17および複数組のPTCヒータ18等を収容する空間が形成されるようになっている。
【0035】
ロアケース11bの下面には、積層された3枚の扁平熱交チューブ17に導入される熱媒体を導くための熱媒体入口路11dおよび扁平熱交チューブ17内を流通した熱媒体を導出するための熱媒体出口路11eが一体に形成されている。ロアケース11bは、その内部空間に収容される扁平熱交チューブ17を形成しているアルミ合金材と線膨張が近い樹脂材料(例えば、PPS)により成形されている。なお、アッパケース11aも、ロアケース11bと同様の樹脂材料により成形されることが望ましい。このように、ケーシング11を樹脂材料で構成することにより、軽量化を図ることができる。
【0036】
また、ロアケース11bの下面には、電源ハーネス27およびLVハーネス28の先端部を貫通するための電源ハーネス用孔11fおよびLVハーネス用孔11g(図3(A)参照)が開口されている。電源ハーネス27は、制御基板13および半導体スイッチング素子12を介してPTCヒータ18に電力を供給するものであり、先端部が2又状に分岐され、制御基板13に設けられている2つの電源ハーネス用端子台13cに電極ハーネス接続用ネジ13bを介してネジ止め可能とされている。また、LVハーネス28は、制御基板13に制御用の信号を送信するものであり、その先端部は、制御基板13にコネクタ接続可能とされている。
【0037】
半導体スイッチング素子12および制御基板13は、上位制御装置(ECU)からの指令に基づいて複数組のPTCヒータ18に対する通電制御を行う制御系を構成するものであり、IGBT等の複数個の半導体スイッチング素子12を介して複数組のPTCヒータ18に対する通電状態が切替え可能な構成とされている。そして、この複数組のPTCヒータ18をその両面側から挟み込むように複数枚の扁平熱交チューブ17が積層されるようになっている。
【0038】
扁平熱交チューブ17は、アルミ合金材製のチューブであり、図2および図3(B)に示されるように、3枚の扁平熱交チューブ17が互いに平行になるように、下段、中段および上段の扁平熱交チューブ17c、17b、17aの順に順次積層されている。これらの扁平熱交チューブ17は、図4および図5に示されるように、扁平チューブ部20の一端部に入口ヘッダ部21および出口ヘッダ部22が並設され、他端部に熱媒体流れをUターンさせるUターン部23が形成されているとともに、扁平チューブ部20に入口ヘッダ部21からUターン部23を経て出口ヘッダ部22に至るUターン流路24が形成された構成とされている。
【0039】
各扁平熱交チューブ17は、扁平チューブ部20と入口ヘッダ部21および出口ヘッダ部22が一体成形された、アルミ合金材製の薄い一対の成形プレート部材25a,25bが重ね合わされてロウ付けされたもので、入口ヘッダ部21および出口ヘッダ部22の厚さ方向寸法が、Uターン流路24を形成している扁平チューブ部20の厚さ方向寸法よりも厚くされており、扁平熱交チューブ17c、17b、17aの順に積層したとき、図5に示されるように、扁平チューブ部20間に所定寸法のチューブ間間隔Sが形成されるようになっている。このチューブ間間隔Sは、上下両面を電極板14および図示省略の絶縁体等によってサンドイッチされたPTCヒータ18が挿入可能な寸法に設定されている。
【0040】
また、各扁平熱交チューブ17は、順次積層されたとき、図5に示されるように、入口ヘッダ部21および出口ヘッダ部22同士が互いに密着され、入口ヘッダ部21および出口ヘッダ部22に設けられている連通穴21a,22a同士が互いに連通されるようになっている。一方、Uターン部23とされている各チューブの他端部は、積層方向において非拘束状態とされている。更に、各扁平熱交チューブ17は、平面視した場合、図4の左右方向(以下、軸方向という。)に長くされた扁平な長方形状とされており、扁平熱交チューブ17c、17b、17aの順に積層され、後述するように基板サブアッセンブリ15を介してロアケース11bの内底面の方向に押圧されるようになっている。
【0041】
さらに、上記3枚の扁平熱交チューブ17の扁平チューブ部20間には、そのチューブ間間隔Sに対して、複数組のPTCヒータ18が、電極板14および図示省略の絶縁シート等を介して以下に記載の如く組み込まれるようになっている。
電極板14は、図3(B)に示されるように、PTC素子18aに電力を供給するためのものであり、平面視において、矩形状を呈するアルミ合金製の板材とされている。この電極板14は、PTC素子18aを挟んでその両面に、PTC素子18aの上面に接するように一枚、PTC素子18aの下面に接するように一枚それぞれ積層されている。これら2枚の電極板14によって、PTC素子18aの上面と、PTC素子18aの下面とが上下から挟み込まれるようになっている。
【0042】
そして、PTC素子18aの上面側に配置される電極板14は、その上面が絶縁部材を介して扁平熱交チューブ17の下面に接するように配置され、PTC素子18aの下面側に配置される電極板14は、その下面が絶縁部材を介して扁平熱交チューブ17の上面に接するように配置される。本実施形態において、電極板14は、下段の扁平熱交チューブ17cと中段の扁平熱交チューブ17bとの間および中段の扁平熱交チューブ17bと上段の扁平熱交チューブ17aとの間に各々2枚、合計4枚が配置され、これらの電極板14で挟まれた状態でPTCヒータ18が、3枚の扁平熱交チューブ17の扁平チューブ部20間にそれぞれ多層に積層配設されるようになっている。
【0043】
4枚の各電極板14は、各扁平熱交チューブ17の扁平チューブ部20と略同形とされている。各電極板14には、その長辺側に1つの端子14aが設けられている。この電極板14に設けられている端子14aは、各電極板14を積層したとき、互いに重ならないように、電極板14の長辺方向に沿って配置されている。すなわち、各電極板14に設けられている端子14aは、その長辺方向に少しずつ位置がずらされて設けられ、各電極板14が積層された場合に直列に配列されるように設けられている。各端子14aは、上方に突出するように設けられ、制御基板13に設けられている端子台13aに端子接続用ネジ14bを介して接続されるようになっている。
【0044】
基板サブアッセンブリ15は、制御基板13と熱交押え部材16を平行に配設し、熱交押え部材16の上面に設置されているIGBT等の複数個の半導体スイッチング素子12を間に挟み込んでいるものである。制御基板13と熱交押え部材16は、例えば4本の基板サブアッセンブリ接続用ネジ15aで固定されており、これによって、基板サブアッセンブリ15は、一体化されている。
【0045】
基板サブアッセンブリ15を構成している制御基板13には、各電極板14に直列に配列されている4つの端子14aに対応して、その一辺の下面に直列に4つの端子台13aが配列されている。また、4つの端子台13aと両端側に直列に並ぶように、電源ハーネス27の2分岐されている先端部と接続される2つの電源ハーネス用端子台13cが設けられている。これらの端子台13aおよび電源ハーネス用端子台13cは、制御基板13の下面から下方に突出するように設けられている。また、各端子台13aおよび電源ハーネス用端子台13cは、積層されている扁平熱交チューブ17a、17b、17cの長辺に沿って直列になるように設けられている。
【0046】
さらに、制御基板13に設けられている各端子台13aおよび電源ハーネス用端子台13cは、ロアケース11bの開口部11cよりも少し上方に位置されるように設けられている。これによって、各端子台13aおよび電源ハーネス用端子台13cに接続される電極板14の端子14aや電源ハーネス27の先端部が固定し易い構成とされている。
【0047】
一方、基板サブアッセンブリ15を構成している熱交押え部材16は、平面視において扁平状のアルミ合金製板材とされている。熱交押え部材16の上面には、図3(B)に示されるように、IGBT等からなる半導体スイッチング12が設置されている。この半導体スイッチング12は、略長方形状に樹脂成形されたトランジスタであり、作動することによって発熱する素子から構成されているため、熱交押え部材16の上面において、上段の扁平熱交チューブ17aの入口ヘッダ部21近傍に接続用ネジ12aを介してねじ止めされ、熱交押え部材16をヒートシンクとして冷却可能とされている。
【0048】
上記熱交押え部材16は、制御基板13よりも軸方向(図3(A)の左右方向)に大きくされたもので、各扁平熱交チューブ17a、17b、17cの扁平チューブ部20および出入口ヘッダ部21,22の上面を覆うことができる大きさとされている。この軸方向に大きくされている部分には、熱交押え部材16をロアケース11bのボス部に固定する基板サブアッセンブリ固定用ネジ15b(図3(A)参照)を通す貫通孔(図示せず)が4コーナー部に設けられている。
【0049】
基板サブアッセンブリ15は、積層された上段の扁平熱交チューブ17aの上面に載せられ、熱交押え部材16の下面が、上段の扁平熱交チューブ17aの扁平チューブ部20および出入口ヘッダ部21,22の上面に接するようにして配設されている。この基板サブアッセンブリ15は、熱交押え部材16を4本の固定用ネジ15bを介してロアケース11b側にネジ止め固定することにより、熱交押え部材16の下面とロアケース11bの内底面との間で、積層されている3枚の扁平熱交チューブ17a、17b、17cの扁平チューブ部20と、その間に挟まれている2枚のPTCヒータ18とを押圧して互いに密着させ、締め付け固定できるようになっている。
【0050】
これによって、熱媒体入口路11dから流入された熱媒体は、各扁平熱交チューブ17の入口ヘッダ部21から扁平チューブ部20内へと導入され、扁平チューブ部20のUターン流路24内を流通する間に、PTCヒータ18により加熱、昇温されて出口ヘッダ部22に至り、出口ヘッダ部22から熱媒体出口路11eを経て外部に流出されるように構成されている。熱媒体加熱装置10から流出された熱媒体は、熱媒体循環回路10A(図1参照)を介して放熱器6に供給されるようになっている。
【0051】
また、基板サブアッセンブリ15を構成している熱交押え部材16は、熱伝導性が良好なアルミ合金材製とされ、その下面が扁平熱交チューブ17の上面と接触されるように構成されている。このため、熱交押え部材16は、上記の如く、扁平熱交チューブ17内を流れる熱媒体を冷熱源とし、熱交押え部材16上に設置されているIGBT等の半導体スイッチング素子12を冷却するヒートシンクとしても機能されるようになっている。
【0052】
上記のように構成されている熱媒体加熱装置10は、まず3枚の扁平熱交チューブ17a、17b、17cが、図5に示されるように、互いに平行になるように積層され、各々の出入口ヘッダ部21,22同士が連通穴21a,22aを介して互いに連通されるようにロウ付け等で一体に接合される。この積層された3枚の扁平熱交チューブ17a、17b、17cの扁平チューブ部20間には、図5に示されるように、チューブ間間隔Sが設定されるため、該チューブ間間隔Sに対して、図6(B)に示されるように、Uターン部23側の端部からPTCヒータ18を両面に絶縁部材を挟んで挿入することにより、図6(C)に示されるように、各扁平熱交チューブ17の扁平チューブ部20間にそれぞれPTCヒータ18を多層に積層配設することができる。
【0053】
こうしてサブアッセンブリした3枚の扁平熱交チューブ17と2組のPTCヒータ18をロアケース11bの所定の内底面位置に組み込んだ後、その最上段の扁平熱交チューブ17aの上面に基板サブアッセンブリ15を載せ、基板サブアッセンブリ15の熱交押え部材16を4本の固定用ネジ15bを介してロアケース11b側にネジ止め固定することによって、3枚の扁平熱交チューブ17a、17b、17cの扁平チューブ部20と各PTCヒータ18とを互いに密着させてロアケース11b内に組み込むことができる。
【0054】
その後、熱交押え部材16上に設けられている制御基板13の端子台13a,13cに対して、電源ハーネス27の端子および電極板14の端子14aをネジ13b,14bを介してネジ止め固定するとともに、LVハーネス28をコネクタ接続することにより電気系統の結線を行い、その上部覆うように、アッパケース11aをロアケース11bにネジ止め固定することによって、熱媒体加熱装置10を組み立てることができる。この熱媒体加熱装置10は、熱媒体入口路11dを経て入口ヘッダ部21に流入された熱媒体を複数枚の扁平熱交チューブ17内に流通させ、PTCヒータ18によって加熱した後、出口ヘッダ部22から熱媒体出口路11eを介して流出させることにより、熱媒体循環回路10A内を循環される熱媒体の加熱に供される。
【0055】
斯くして、本実施形態の熱媒体加熱装置10および車両用空調装置1によれば、以下の作用効果を奏する。
複数枚(3枚)の扁平熱交チューブ17a、17b、17cが積層され、その扁平チューブ部20間にそれぞれPTCヒータ18が組み込まれた状態で、各扁平熱交チューブ17a、17b、17cおよび複数組のPTCヒータ18が熱交押え部材16により押圧されて密着される構成とされており、更に各々の扁平熱交チューブ17a、17b、17cが、一端部に入口ヘッダ部21および出口ヘッダ部22が並設され、他端部にUターン部23が形成されているとともに、扁平チューブ部20が入口ヘッダ部21からUターン部23を経て出口ヘッダ部22に至るUターン流路24を形成し、Uターン部23側の端部が積層方向に非拘束のチューブとされている。
【0056】
このため、複数枚の扁平熱交チューブ17a、17b、17cの扁平チューブ部20間にそれぞれPTCヒータ18を組み込んで積層する際、非拘束とされている扁平熱交チューブ17a、17b、17cのUターン部23側の端部からPTCヒータ18を挿入することにより、扁平チューブ部20間に容易にPTCヒータ18を組み込むことができる。従って、扁平チューブ部20間へのPTCヒータ18の組み込み作業を容易化することができるとともに、出入口ヘッダ部21,22でのチューブ間間隔SをPTCヒータ18の厚さ寸法相当とすることによって、扁平チューブ部20およびPTCヒータ18を密着させる時のチューブ湾曲によるチューブ付け根の応力集中を緩和することができる。
【0057】
また、扁平チューブ部20とPTCヒータ18との密着性を向上させるには、少なくとも各扁平熱交チューブ17a、17b、17cの扁平チューブ部20を熱交押え部材16によって押圧すればよく、出入口ヘッダ部21,22を押圧時に潰れないようにするために強度を高くする必要はなく、該出入口ヘッダ部21,22の構造を簡素化することができるとともに、各扁平熱交チューブ17a、17b、17cとPTCヒータ18間の密着性を高め、その間の接触熱抵抗を低減することによって伝熱効率を向上し、熱媒体加熱装置10を高性能化することができる。
【0058】
特に、各扁平熱交チューブ17a、17b、17cが、一端部に入口ヘッダ部21および出口ヘッダ部22が並設され、入口ヘッダ部21からUターン部23を経て出口ヘッダ部22に至るUターン流路24を形成したチューブとされているため、各扁平熱交チューブ17とPTCヒータ18との間の熱交換特性は、図7(A)に示されるように、PTCヒータ18の温度に対して熱媒体(温水)の温度および交換熱量が、図示の如く変化される特性を示す。従って、図7(B)に示されるように、低負荷となる出口ヘッダ部22側において余剰となるPTCヒータ18の加熱能力を、入口ヘッダ部21側に移動させて有効に利用することができるため、一層高効率化することができる。
【0059】
さらに、複数枚の扁平熱交チューブ17a、17b、17cは、一端部に入口ヘッダ部21および出口ヘッダ部22が並設された片端ヘッダ構造とされているため、チューブの両端に出入口ヘッダ部を設けた両端ヘッダ構造のものに比べチューブ長さ方向寸法を小さくでき、大型の熱媒体流通ボックス等を省略できること等と相俟って、熱媒体加熱装置10の小型軽量化、低コスト化を図ることができる。
【0060】
また、各扁平熱交チューブ17a、17b、17cは、入口ヘッダ部21および出口ヘッダ部22と扁平チューブ部20とが一体に成形された一対のプレート部材25a,25bを重ね合わせてロウ付けした扁平なチューブとされているため、扁平熱交チューブ17a、17b、17cを一対の成形プレート部材25a,25bを積層した薄い扁平なチューブとし、その間にPTCヒータ18を多層に積層配設することによって、平面面積の小さい薄形構造の熱交換モジュールを構成することができる。従って、この熱交換モジュールの組み込みによって熱媒体加熱装置10の小型軽量化、低コスト化を図ることができるとともに、PTCヒータ18の組み込みを容易化することができる。
【0061】
さらに、本実施形態によると、空気流路2中に配設されている放熱器6に対して供給される熱媒体を、上記の如く小型軽量化され、かつ高性能化された熱媒体加熱装置10により加熱して供給することができるため、車両用空調装置1における空調性能、特に暖房性能の向上を図ることができるとともに、その設置スペースを低減し、車両に対する空調装置1の搭載性を向上することができる。
【0062】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、図8を用いて説明する。
本実施形態は、上記した第1実施形態に対して、扁平熱交チューブ17のUターン流路24間に熱遮断部を設けている点が異なる。その他の点については、第1実施形態と同様であるので説明は省略する。
本実施形態においては、図8に示されるように、複数枚の扁平熱交チューブ17のUターン流路24を形成している2流路間に、チューブ長さ方向に沿って、例えばスリット等により構成される熱遮断部26を設けた構成とされている。
【0063】
上記のように、複数枚の扁平熱交チューブ17のUターン流路24を形成している2流路間に、熱遮断部26を設けることにより、Uターン流路24を形成している2流路内を流通する入口ヘッダ部21近傍の温度が低い熱媒体と、PTCヒータ18により加熱されて温度が高くなった出口ヘッダ部22側の熱媒体との間の熱媒体間伝熱を、例えばスリット等により構成される熱遮断部26を介して遮断することができる。従って、熱媒体間での伝熱による熱ロスを低減し、熱媒体加熱装置10を一段と高性能化することができる。
【0064】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について、図9および図10を用いて説明する。
本実施形態は、上記した第1および第2実施形態に対して、扁平熱交チューブ17の両端に入口ヘッダ部31および出口ヘッダ部32を設けた構成としている点が異なる。その他の点については、第1実施形態と同様であるので説明は省略する。
本実施形態において、複数枚の扁平熱交チューブ17a、17b、17cは、一端側に連通穴31aを有する入口ヘッダ部31が、他端側に連通穴32aを有する出口ヘッダ部32が設けられ、その間が扁平チューブ部30とされた構成とされている。
【0065】
そして、扁平チューブ部30のチューブ長手方向の少なくとも一辺側(本実施形態のものでは、互いに平行な2辺側共)のチューブ間間隔Sが、非組み立て状態において、図10(B)に示されるように、中央側から外方側に向って漸次拡大されたチューブ構成とされており、この外方側に向って漸次拡大されているチューブ間間隔Sの一方側から3枚の扁平熱交チューブ17a、17b、17cの扁平チューブ部30間に、PTCヒータ18を挿入することによって、各扁平熱交チューブ17の扁平チューブ部30間にPTCヒータ18が積層された状態で組み込み可能とされている。
【0066】
この各扁平熱交チューブ17の扁平チューブ部30とPTCヒータ18とは、上記第1実施形態と同様、基板サブアッセンブリ15の熱交押え部材16によって押圧され、互いに密着状態とされてケーシング11内に組み込まれるようになっている。なお、本実施形態では、扁平チューブ部30のチューブ長手方向の互いに平行な2辺を共に中央側から外方側に向って漸次拡大させているが、PTCヒータ18を挿入するいずれか一辺側のみを外方側に向って漸次拡大させておけばよい。
【0067】
上記のように、各扁平熱交チューブ17a、17b、17cを、一端部に入口ヘッダ部31、他端部に出口ヘッダ部32が設けられ、その間が扁平チューブ部30とされたチューブとなすとともに、この扁平チューブ部30のチューブ長手方向の少なくとも一辺側のチューブ間間隔Sが非組み立て状態において外方側に向って漸次拡大された構成とすることによっても、3枚の扁平熱交チューブ17の扁平チューブ部30間にPTCヒータ18を組み込んで積層する際に、チューブ間間隔Sが非組み立て状態において外方側に向って漸次拡大されているチューブ長手方向の一辺側からPTCヒータ18を挿入することによって、扁平チューブ部30間に容易にPTCヒータ18を組み込むことができる。
【0068】
従って、第1実施形態と同様、扁平チューブ部30間へのPTCヒータ18の組み込み作業を容易化することができるとともに、出入口ヘッダ部31,32でのチューブ間隔をPTCヒータ厚さ寸法相当とすることによって、扁平チューブ部30およびPTCヒータ18を密着させる時のチューブ湾曲によるチューブ付け根の応力集中を緩和することができる。また、扁平チューブ部30とPTCヒータ18との密着性を向上させるには、少なくとも各扁平熱交チューブ17の扁平チューブ部30を熱交押え部材16により押圧すればよく、出入口ヘッダ部31,32を押圧時に潰れないようにするために強度を高くする必要はなく、該部の構造を簡素化することができる。
【0069】
さらに、各扁平熱交チューブ17とPTCヒータ18間の密着性を高め、その間の接触熱抵抗を低減することにより伝熱効率を向上し、熱媒体加熱装置10を高性能化することができるとともに、複数枚の扁平熱交チューブ17とPTCヒータ18とを多層に積層配設することによって平面面積を小さくできるため、大型の熱媒体流通ボックス等を省くことができること等と相俟って、熱媒体加熱装置10の小型軽量化、低コスト化を図ることができる。
【0070】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について、図11および図12を用いて説明する。
本実施形態は、上記した第3実施形態に対して、扁平熱交チューブ17の両端に設けられる入口ヘッダ部41および出口ヘッダ部42が一辺側に偏位されて設けられている点が異なる。その他の点については、第3実施形態と同様であるので説明は省略する。
本実施形態では、複数枚の扁平熱交チューブ17a、17b、17cの一端側に設けられた連通穴41aを有する入口ヘッダ部41および他端側に設けられた連通穴42aを有する出口ヘッダ部42が、チューブ長手方向の一辺側に偏位されて設けられており、その間が扁平チューブ部40とされた構成とされている。
【0071】
そして、上記扁平熱交チューブ17a、17b、17cの扁平チューブ部40は、上記一辺側から他辺側に向ってチューブ間間隔Sが漸次拡大された構成とされており、そのチューブ間間隔Sに対して、PTCヒータ18を挿入することにより、各扁平熱交チューブ17a、17b、17cの扁平チューブ部30間にPTCヒータ18が積層された状態で組み込み可能とされている。
【0072】
斯くして、本実施形態によると、入口ヘッダ部41および出口ヘッダ部42がチューブ長手方向の一辺側に偏位されて配設され、その間の扁平チューブ部40が、一辺側から他辺側に向ってチューブ間間隔Sが漸次拡大された構成とされている。このため、PTCヒータ18が組み込まれる扁平チューブ部40のチューブ間間隔Sを、チューブ長手方向の一辺側から他辺側に向ってチューブ幅方向全体にわたり漸次拡大させることができる。従って、複数枚の扁平熱交チューブ17の扁平チューブ部40間に対してPTCヒータ18をより挿入し易くし、PTCヒータ18の組み込み作業を更に容易化することができる。
【0073】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態について、図13を用いて説明する。
本実施形態は、上記した第1ないし第3実施形態に対して、複数枚の扁平熱交チューブ17a、17b、17cとPTCヒータ18との組み付け構造が異なっている。その他の点については、第3実施形態と同様であるので説明は省略する。
本実施形態においては、複数枚の扁平熱交チューブ17a、17b、17cとPTCヒータ18とをロアケース11bの内底面に、扁平熱交チューブ17間にPTCヒータ18を挟み込みながら交互に積層配設し、上段の扁平熱交チューブ17aを積層した後、その最上段の扁平熱交チューブ17aの上面に基板サブアッセンブリ15を載せ、該基板サブアッセンブリ15の熱交押え部材16を4本の固定用ネジ15bを介してロアケース11b側にネジ止め固定することによって、3枚の扁平熱交チューブ17a、17b、17cの入口ヘッダ部21間と出口ヘッダ部22間、並びに扁平チューブ部20と各PTCヒータ18とを互いに密着させてロアケース11b内に組み込み可能な構成とされている。
【0074】
つまり、第1ないし第3実施形態では、複数枚の扁平熱交チューブ17の入口ヘッダ部21,31,41間および出口ヘッダ部22,32,42間を密着させて接合し、扁平チューブ部20,30,40の一端もしくは一辺側からPTCヒータ18を挿入して積層配設することにより、3枚の扁平熱交チューブ17と2組のPTCヒータ18とをサブアッセンブリした後、それをロアケース11b内に基板サブアッセンブリ15の熱交押え部材16により上方から押圧して組み付けるように構成しているが、本実施形態では、図13に示されるように、まず、下段の扁平熱交チューブ17cをロアケース11bの内底面に組み込み、その扁平チューブ部20の上にPTCヒータ18を積層するとともに、入口ヘッダ部21および出口ヘッダ部22に設けられている連通穴21a,22aの周りにOリング、液状ガスケット等のシール材29を配設するようにしている(図13(B)参照)。
【0075】
そのPTCヒータ18およびシール材29の上面に中段の扁平熱交チューブ17cを積層し、更にその上にPTCヒータ18およびシール材29を同様に積層配置した後、上段の扁平熱交チューブ17aを積層することにより、図13(A)に示されるように、3枚の扁平熱交チューブ17a、17b、17cと2組のPTCヒータ18とが交互に順次多層に積層されて組み込まれ、それが基板サブアッセンブリ15の熱交押え部材16により上方から押圧されてロアケース11bに組み付けられる構成とされている。
【0076】
このように、3枚の17a、17b、17cと2組のPTCヒータ18とを予めサブアッセンブリしなくても、扁平熱交チューブ17a、17b、17cとPTCヒータ18とを1枚ずつ交互に順次積層しながら組み込むことによっても、第1実施形態と同様、ロアケース11b内に3枚の扁平熱交チューブ17と2組のPTCヒータ18とを互いに密着させて組み込むことができる。
【0077】
斯くして、本実施形態によると、扁平熱交チューブ17a、17b、17cとPTCヒータ18とを交互に多層に積層して組み込めばよく、扁平チューブ部20間へのPTCヒータ18の組み込み作業を容易化することができるとともに、入口ヘッダ部21および出口ヘッダ部22の連通穴21a,22a周りにシール材26を配設し、そのシール材26を確実に密着させてシールすることができるため、熱媒体の漏えいを防止し、そのシール性を向上することができる。また、扁平チューブ部20とPTCヒータ18との密着性を高めるには、扁平熱交チューブ17の扁平チューブ部20を熱交押え部材16により押圧すればよく、扁平熱交チューブ17とPTCヒータ18間の密着性を高め、その間の接触熱抵抗を低減することにより伝熱効率を向上し、熱媒体加熱装置10を高性能化することができる。
【0078】
特に、一端部に入口ヘッダ部21および出口ヘッダ部22が並設された扁平熱交チューブ17においては、低負荷となる出口ヘッダ部22側でのPTCヒータ18の加熱能力を入口ヘッダ部21側で有効に利用できるため、一層高効率化することができる。更に、複数枚の扁平熱交チューブ17が一端部に入口ヘッダ部21および出口ヘッダ部22が並設された片端ヘッダ構造とされているため、両端ヘッダ構造のものに比べ扁平熱交チューブ17の長さ方向寸法を小さくでき、大型の熱媒体流通ボックス等を省略できること等と相俟って、熱媒体加熱装置10の小型軽量化、低コスト化を図ることができる。
【0079】
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、上記した実施形態では、扁平熱交チューブ17を3層に積層し、各々の間にPTCヒータ18を組み込んだ構成としているが、これに限らず、扁平熱交チューブ17およびPTCヒータ18の積層枚数を増減してもよいことはもちろんである。また、ケーシング11を樹脂成形品とした例について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、アルミ合金等の金属製としてもよいことは云うまでもない。
【符号の説明】
【0080】
1 車両用空調装置
6 放熱器
10 熱媒体加熱装置
10A 熱媒体循環回路
11 ケーシング
16 熱交押え部材
17,17a,17b,17c 扁平熱交チューブ
18 PTCヒータ
20,30,40 扁平チューブ部
21,31,41 入口ヘッダ部
22,32,42 出口ヘッダ部
23 Uターン部
24 Uターン流路
25a,25b 成形プレート部材
26 熱遮断部
29 シール材
S チューブ間間隔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口ヘッダ部から流入された熱媒体が扁平チューブ部を流通後、出口ヘッダ部から流出される複数枚の扁平熱交チューブと、
互いに積層される複数枚の前記扁平熱交チューブの前記扁平チューブ部間に組み込まれるPTCヒータと、
積層された複数枚の前記扁平熱交チューブおよび前記PTCヒータを前記扁平熱交チューブの一面側から押圧して密着させる熱交押え部材と、を備え、
前記各扁平熱交チューブは、一端部に前記入口ヘッダ部および前記出口ヘッダ部が並設され、他端部に熱媒体流れのUターン部が形成されているとともに、前記扁平チューブ部が前記入口ヘッダ部から前記Uターン部を経て前記出口ヘッダ部に至るUターン流路を形成したチューブとされ、
前記扁平熱交チューブと前記PTCヒータとが交互に多層に積層配設されていることを特徴とする熱媒体加熱装置。
【請求項2】
前記扁平熱交チューブの前記入口ヘッダ部および前記出口ヘッダ部に設けられている連通穴の周りに、シール材が配設されていることを特徴とする請求項1に記載の熱媒体加熱装置。
【請求項3】
入口ヘッダ部から流入された熱媒体が扁平チューブ部を流通後、出口ヘッダ部から流出される複数枚の扁平熱交チューブと、
互いに積層される複数枚の前記扁平熱交チューブの前記扁平チューブ部間に組み込まれるPTCヒータと、
積層された複数枚の前記扁平熱交チューブおよび前記PTCヒータを前記扁平熱交チューブの一面側から押圧して密着させる熱交押え部材と、を備え、
前記各扁平熱交チューブは、一端部に前記入口ヘッダ部および前記出口ヘッダ部が並設され、他端部に熱媒体流れのUターン部が形成されているとともに、前記扁平チューブ部が前記入口ヘッダ部から前記Uターン部を経て前記出口ヘッダ部に至るUターン流路を形成し、前記Uターン部側の端部が積層方向に非拘束のチューブとされていることを特徴とする熱媒体加熱装置。
【請求項4】
前記各扁平熱交チューブは、前記入口ヘッダ部および前記出口ヘッダ部と前記扁平チューブ部とが一体成形された一対の成形プレート部材を重ね合わせてロウ付けした扁平なチューブとされていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の熱媒体加熱装置。
【請求項5】
前記各扁平熱交チューブには、前記Uターン流路を形成している2流路間に熱遮断部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の熱媒体加熱装置。
【請求項6】
入口ヘッダ部から流入された熱媒体が扁平チューブ部を流通後、出口ヘッダ部から流出される複数枚の扁平熱交チューブと、
互いに積層される複数枚の前記扁平熱交チューブの前記扁平チューブ部間に組み込まれるPTCヒータと、
積層された複数枚の前記扁平熱交チューブおよび前記PTCヒータを前記扁平熱交チューブの一面側から押圧して密着させる熱交押え部材と、を備え、
前記各扁平熱交チューブは、一端部に前記入口ヘッダ部、他端部に前記出口ヘッダ部が設けられ、その間が前記扁平チューブ部とされているとともに、該扁平チューブ部のチューブ長手方向の少なくとも一辺側のチューブ間間隔が非組み立て状態において外方側に向って漸次拡大されたチューブとされていることを特徴とする熱媒体加熱装置。
【請求項7】
前記入口ヘッダ部および前記出口ヘッダ部は、チューブ長手方向の一辺側に偏位されて配設され、前記扁平チューブ部は、前記一辺側から他辺側に向ってチューブ間間隔が漸次拡大された構成とされていることを特徴とする請求項6に記載の熱媒体加熱装置。
【請求項8】
空気流路中に配設されている放熱器に対して、熱媒体加熱装置で加熱された熱媒体が循環可能に構成されている車両用空調装置において、
前記熱媒体加熱装置が、請求項1ないし7のいずれかに記載の熱媒体加熱装置とされていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項1】
入口ヘッダ部から流入された熱媒体が扁平チューブ部を流通後、出口ヘッダ部から流出される複数枚の扁平熱交チューブと、
互いに積層される複数枚の前記扁平熱交チューブの前記扁平チューブ部間に組み込まれるPTCヒータと、
積層された複数枚の前記扁平熱交チューブおよび前記PTCヒータを前記扁平熱交チューブの一面側から押圧して密着させる熱交押え部材と、を備え、
前記各扁平熱交チューブは、一端部に前記入口ヘッダ部および前記出口ヘッダ部が並設され、他端部に熱媒体流れのUターン部が形成されているとともに、前記扁平チューブ部が前記入口ヘッダ部から前記Uターン部を経て前記出口ヘッダ部に至るUターン流路を形成したチューブとされ、
前記扁平熱交チューブと前記PTCヒータとが交互に多層に積層配設されていることを特徴とする熱媒体加熱装置。
【請求項2】
前記扁平熱交チューブの前記入口ヘッダ部および前記出口ヘッダ部に設けられている連通穴の周りに、シール材が配設されていることを特徴とする請求項1に記載の熱媒体加熱装置。
【請求項3】
入口ヘッダ部から流入された熱媒体が扁平チューブ部を流通後、出口ヘッダ部から流出される複数枚の扁平熱交チューブと、
互いに積層される複数枚の前記扁平熱交チューブの前記扁平チューブ部間に組み込まれるPTCヒータと、
積層された複数枚の前記扁平熱交チューブおよび前記PTCヒータを前記扁平熱交チューブの一面側から押圧して密着させる熱交押え部材と、を備え、
前記各扁平熱交チューブは、一端部に前記入口ヘッダ部および前記出口ヘッダ部が並設され、他端部に熱媒体流れのUターン部が形成されているとともに、前記扁平チューブ部が前記入口ヘッダ部から前記Uターン部を経て前記出口ヘッダ部に至るUターン流路を形成し、前記Uターン部側の端部が積層方向に非拘束のチューブとされていることを特徴とする熱媒体加熱装置。
【請求項4】
前記各扁平熱交チューブは、前記入口ヘッダ部および前記出口ヘッダ部と前記扁平チューブ部とが一体成形された一対の成形プレート部材を重ね合わせてロウ付けした扁平なチューブとされていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の熱媒体加熱装置。
【請求項5】
前記各扁平熱交チューブには、前記Uターン流路を形成している2流路間に熱遮断部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の熱媒体加熱装置。
【請求項6】
入口ヘッダ部から流入された熱媒体が扁平チューブ部を流通後、出口ヘッダ部から流出される複数枚の扁平熱交チューブと、
互いに積層される複数枚の前記扁平熱交チューブの前記扁平チューブ部間に組み込まれるPTCヒータと、
積層された複数枚の前記扁平熱交チューブおよび前記PTCヒータを前記扁平熱交チューブの一面側から押圧して密着させる熱交押え部材と、を備え、
前記各扁平熱交チューブは、一端部に前記入口ヘッダ部、他端部に前記出口ヘッダ部が設けられ、その間が前記扁平チューブ部とされているとともに、該扁平チューブ部のチューブ長手方向の少なくとも一辺側のチューブ間間隔が非組み立て状態において外方側に向って漸次拡大されたチューブとされていることを特徴とする熱媒体加熱装置。
【請求項7】
前記入口ヘッダ部および前記出口ヘッダ部は、チューブ長手方向の一辺側に偏位されて配設され、前記扁平チューブ部は、前記一辺側から他辺側に向ってチューブ間間隔が漸次拡大された構成とされていることを特徴とする請求項6に記載の熱媒体加熱装置。
【請求項8】
空気流路中に配設されている放熱器に対して、熱媒体加熱装置で加熱された熱媒体が循環可能に構成されている車両用空調装置において、
前記熱媒体加熱装置が、請求項1ないし7のいずれかに記載の熱媒体加熱装置とされていることを特徴とする車両用空調装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−214207(P2012−214207A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198071(P2011−198071)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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