説明

熱媒体加熱装置およびそれを備えた車両用空調装置

【課題】小型高性能化を図るとともに、出・入口ヘッダ部の密着性を向上し、出・入口ヘッダ部に設けられている連通穴周りのシール性を確保することができる熱媒体加熱装置およびそれを備えた車両用空調装置を提供することを目的とする。
【解決手段】扁平熱交チューブ17とPTCヒータとを多層に積層し、その一面側を熱交押え部材により押圧してケーシング11の内底面に締め付け固定した熱媒体加熱装置10において、熱交押え部材を締め付け固定するボス部11eを、扁平熱交チューブ17の4コーナー部に対応したケーシング11の4隅のデッドスペース部に設けるとともに、該4隅のボス部11e以外の第5ボス部11fを、扁平熱交チューブ17の出・入口ヘッダ部21,22間であって、該出・入口ヘッダ部21,22側の2隅に設けられているボス部11eの中心と、該ボス部11eと対応する出・入口ヘッダ部21,22の中心を通る線の交点付近に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PTCヒータを用いて熱媒体を加熱する熱媒体加熱装置およびそれを備えた車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド車等に適用される車両用空調装置にあって、暖房用の熱源となる被加熱媒体を加熱する熱媒体加熱装置の1つに、正特性サーミスタ素子(Positive Temperature Coefficient;以下、PTC素子という。)を発熱要素とするPTCヒータを用いたものが知られている。このような熱媒体加熱装置において、特許文献1には、熱媒体の入口および出口を備えたハウジング内を加熱室と熱媒体の循環室とに分割する多数の隔壁を設け、該隔壁により区画された加熱室側に隔壁と接するようにPTC加熱素子を挿入設置し、隔壁を挟んで循環室側を流通する熱媒体を加熱するようにしたものが提示されている。
【0003】
また、特許文献2には、PTC素子を挟んでその両面に電極板、絶縁層および伝熱層を設けて平板状のPTCヒータを構成し、該PTCヒータの両面に、熱媒体の入口および出口を備えた互いに連通されている一対の熱媒体流通ボックスを積層するとともに、更にその外面側に制御基板を収容する基板収容ボックスおよび蓋体を設けた積層構造の熱媒体加熱装置が提示されている。
【0004】
しかし、特許文献1のものでは、伝熱面となる隔壁間にPTC加熱素子を密着させて挿入設置するのは難しく、隔壁とPTC加熱素子間の接触熱抵抗が大きくなり、伝熱効率が低下するという課題があった。また、特許文献2のものでは、PTCヒータと熱媒体流通ボックスとの密着性を高め、接触熱抵抗を低減させることができるが、PTCヒータを多層配置することが困難なため、平面面積が大きくなるとともに、熱媒体流通ボックスや専用の基板収容ボックスが必要で、小型軽量化、低コスト化するには限界があった。
【0005】
そこで、扁平構造の熱交チューブを用い、該扁平熱交チューブとPTCヒータとを多層に積層した熱交換エレメントをケーシング内に組み込んだ構成の熱媒体加熱装置が開発されている。また、このような積層構造の熱交換エレメントを用いたものにおいて、特許文献3には、積層された扁平熱交チューブに対して積層方向から圧縮荷重をかけて組み立て製造することにより、扁平熱交チューブ間に積層されている被冷却部品と扁平熱交チューブとを密着させることができるようにしたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−7106号公報
【特許文献2】特開2008−56044号公報
【特許文献3】特許第4100328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の如く、扁平熱交チューブとPTCヒータとを多層に積層したエレメントを用いたものでは、それを押圧して組み付けることにより、両者間の接触熱抵抗を低減し、伝熱効率を向上することができる。しかしながら、扁平熱交チューブの一端側に設けられている入口ヘッダ部および出口ヘッダ部の連通穴周りをOリング等のシール材によりシールするには、出・入口ヘッダ部の直上部を押圧してシール材を密着させることが望ましく、この場合、押圧用の部材を出・入口ヘッダ部の直上部で締め付け固定する必要がある。
【0008】
然るに、押圧用の部材を出・入口ヘッダ部の直上部で締め付け固定するには、熱交換エレメント等を収容設置するケーシング側に設けられるボス部を、図4(B)に示されるように、出・入口ヘッダ部の両側位置に配設する必要があり、このため、ケーシング幅が大きくなって熱媒体加熱装置が大型化してしまい、狭いエンジンルーム内に設置されることから、小型化のニーズが非常に高い車両用空調装置の熱媒体加熱装置として、車両への搭載性が低下する等の課題があった。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ケーシング幅を小さくして熱媒体加熱装置をコンパクト化し、小型高性能化するとともに、出・入口ヘッダ部の密着性を向上し、出・入口ヘッダ部に設けられている連通穴周りのシール性を確保することができる熱媒体加熱装置およびそれを備えた車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するために、本発明の熱媒体加熱装置およびそれを備えた車両用空調装置は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる熱媒体加熱装置は、一端側に入口ヘッダ部および出口ヘッダ部が並設され、前記入口ヘッダ部から流入した熱媒体が他端側のUターン部で折返し、前記出口ヘッダ部から流出される略長方形状をなす複数枚の扁平熱交チューブと、積層される複数枚の前記扁平熱交チューブ間に組み込まれるPTCヒータと、前記扁平熱交チューブおよび前記PTCヒータが交互に多層に積層されて組み込まれるケーシングと、多層に積層された前記扁平熱交チューブの一面側を押圧し、前記ケーシングの内底面に対して締め付け固定する熱交押え部材と、を備えた熱媒体加熱装置であって、前記熱交押え部材を締め付け固定するボス部を、前記扁平熱交チューブの4コーナー部に対応した前記ケーシングの4隅のデッドスペース部に設けるとともに、該4隅のボス部以外の第5ボス部を、前記扁平熱交チューブの前記出・入口ヘッダ部間であって、該出・入口ヘッダ部側の2隅に設けられている前記ボス部の中心と、該ボス部と対応する前記出・入口ヘッダ部の中心とを通る線の交点付近に設けたことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、扁平熱交チューブとPTCヒータとが交互に多層に積層され、その扁平熱交チューブの一面側が熱交押え部材により押圧されてケーシングの内底面に締め付け固定される熱媒体加熱装置にあって、熱交押え部材を締め付け固定するボス部を、扁平熱交チューブの4コーナー部に対応したケーシングの4隅のデッドスペース部に設けるとともに、該4隅のボス部以外の第5ボス部を、扁平熱交チューブの出・入口ヘッダ部間であって、該出・入口ヘッダ部側の2隅に設けられているボス部の中心と、該ボス部と対応する出・入口ヘッダ部の中心を通る線の交点付近に設けた構成としているため、熱交押え部材をケーシング側に締め付け固定するボス部を4隅のデッドスペース部に設けたことによって、入口ヘッダ部の中心と出口ヘッダ部の中心とを結ぶ線の延長線上の扁平熱交チューブの両側にボス部を設けた場合に比べ、その延長線方向のケーシング幅寸法を小さくすることができるとともに、出・入口ヘッダ部側のボス部をケーシングの2隅のデッドスペース部に設けたとしても、その2隅のボス部と出・入口ヘッダ部間に設けられた第5ボス部との間で熱交押え部材を締め付け固定することにより、該熱交押え部材を介して出・入口ヘッダ部をその中心を通る線上でケーシングの内底面に対して押圧することができる。従って、ケーシング幅を小さくして熱媒体加熱装置をコンパクト化し、小型高性能化することができるとともに、出・入口ヘッダ部の密着性を向上し、出・入口ヘッダ部に設けられている連通穴周りのシール性を確保することができる。
【0012】
さらに、本発明の熱媒体加熱装置は、上記の熱媒体加熱装置において、前記扁平熱交チューブの前記入口ヘッダ部間および前記出口ヘッダ部間には、各々の連通穴周りをシールするシール材が、前記熱交押え部材による前記出・入口ヘッダ部の押圧により密着シールされるように設置されていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、扁平熱交チューブの入口ヘッダ部間および出口ヘッダ部間に、各々の連通穴周りをシールするシール材が、熱交押え部材による出・入口ヘッダ部の押圧により密着シールされるように設置されているため、出・入口ヘッダ部の連通穴周りに設置されているOリングや液状ガスケット等のシール材を、出・入口ヘッダ部の中心を通る線上で熱交押え部材を締め付け該出・入口ヘッダ部を押圧することにより、その全周を略均一に押圧して密着させることができる。従って、シール材によるシール性を確保し、熱媒体の漏れ防止に対する信頼性を向上することができる。
【0014】
さらに、本発明の熱媒体加熱装置は、上述のいずれかの熱媒体加熱装置において、前記第5ボス部は、前記ケーシングの内底面に、複数枚の前記扁平熱交チューブの前記出・入口ヘッダ部間のスペースに設けられている開口部を貫通してその上面側に突出されるように設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、第5ボス部が、ケーシングの内底面に、複数枚の扁平熱交チューブの出・入口ヘッダ部間のスペースに設けられている開口部を貫通してその上面側に突出されるように設けられているため、第5ボス部に対しても、他の4隅のボス部と同様に熱交押え部材をネジ等で締め付け固定することにより、ケーシングの2隅のデッドスペース部に設けられている2隅のボス部と第5ボス部との間で、出・入口ヘッダ部を各々の中心を通る線上で熱交押え部材を介してケーシングの内底面に対して押圧することができる。従って、Oリングや液状ガスケット等のシール材を確実に密着させ、連通穴周りのシール性を確保することができる。
【0016】
さらに、本発明の熱媒体加熱装置は、上述のいずれかの熱媒体加熱装置において、前記出・入口ヘッダ部の間隔は、前記ケーシングの底面に前記出・入口ヘッダ部の連通穴と連通するように設けられ、その底面から互いに平行に延長されている熱媒体入口流路および熱媒体出口流路のホース接続時に必要な最小流路間ピッチと略同一間隔とされていることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、出・入口ヘッダ部の間隔が、ケーシングの底面に出・入口ヘッダ部の連通穴と連通するように設けられ、その底面から互いに平行に延長されている熱媒体入口流路および熱媒体出口流路のホース接続時に必要な最小流路間ピッチと略同一間隔とされているため、熱媒体入口流路および熱媒体出口流路に対して接続される熱媒体循環用ホースの接続スペースを確保した状態で、出・入口ヘッダ部の間隔をその最小流路間ピッチと略同一間隔とすることにより、ケーシングの幅寸法を扁平熱交チューブ、熱交押え部材等を収容設置するための最小幅寸法とすることができる。従って、熱媒体加熱装置の外形寸法を更に小さくし、小型高性能化することができるとともに、車両に対する搭載性を向上することができる。
【0018】
さらに、本発明にかかる車両用空調装置は、空気流路中に配設されている放熱器に対して、熱媒体加熱装置で加熱された熱媒体が循環可能に構成されている車両用空調装置において、前記熱媒体加熱装置が、上述のいずれかの熱媒体加熱装置とされていることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、空気流路中に配設されている放熱器に循環される熱媒体を、上述のようにケーシング内のデッドスペースを減少して小型高性能化を図った熱媒体加熱装置により加熱し、循環させることができる。従って、車両用空調装置の空調性能、特に暖房性能の向上を図ることができるとともに、車両に対する空調装置の搭載性を向上することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の熱媒体加熱装置によると、熱交押え部材をケーシング側に締め付け固定するボス部を4隅のデッドスペース部に設けたことにより、入口ヘッダ部の中心と出口ヘッダ部の中心とを結ぶ線の延長線上の扁平熱交チューブの両側にボス部を設けた場合に比べ、その延長線方向のケーシング幅寸法を小さくすることができるとともに、出・入口ヘッダ部側のボス部をケーシングの2隅のデッドスペース部に設けたとしても、その2隅のボス部と出・入口ヘッダ部間に設けられた第5ボス部との間で熱交押え部材を締め付け固定することにより、該熱交押え部材を介して出・入口ヘッダ部をその中心を通る線上でケーシングの内底面に対して押圧することができるため、ケーシング幅を小さくして熱媒体加熱装置をコンパクト化し、小型高性能化することができる。また、出・入口ヘッダ部の密着性を向上し、出・入口ヘッダ部に設けられている連通穴周りのシール性を確保することができる。
【0021】
また、本発明の車両用空調装置によると、空気流路中に配設されている放熱器に循環される熱媒体を、ケーシング内のデッドスペースを減少して小型高性能化を図った熱媒体加熱装置により加熱し、循環させることができるため、車両用空調装置の空調性能、特に暖房性能の向上を図ることができるとともに、車両に対する空調装置の搭載性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る熱媒体加熱装置を備えた車両用空調装置の概略構成図である。
【図2】図1に示す熱媒体加熱装置の組み立て手順を説明するための分解斜視図である。
【図3】図2に示す熱媒体加熱装置の熱媒体入口路(または熱媒体出口路)に沿った縦断面相当図である。
【図4】図2に示す熱媒体加熱装置のケーシングに対する扁平熱交チューブの収納設置状態を示す平面視図(A)とその比較例の平面視図(B)である。
【図5】図4中のA−A断面相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の一実施形態について、図1ないし図5を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る熱媒体加熱装置を備えた車両用空調装置の概略構成図が示されている。
車両用空調装置1は、外気または車室内空気を取り込んで温調した後、それを車室内へと導くための空気流通路2を形成するケーシング3を備えている。
【0024】
このケーシング3の内部には、空気流通路2の上流側から下流側にかけて順次、外気または車室内空気を吸い込んで昇圧し、それを下流側へと圧送するブロア4と、該ブロア4により圧送される空気を冷却する冷却器5と、冷却器5を通過して冷却された空気を加熱する放熱器6と、放熱器6を通過する空気量と放熱器6をバイパスする空気量との流量割合を調整し、その下流側でエアミックスすることにより、温調風の温度を調節するエアミックスダンパ7とが設置されている。
【0025】
ケーシング3の下流側は、図示省略された吹き出しモード切替えダンパおよびダクトを介して温調された空気を車室内に吹き出す複数の吹き出し口に接続されている。
冷却器5は、図示省略された圧縮機、凝縮器、膨張弁等と共に冷媒回路を構成し、膨張弁で断熱膨張された冷媒を蒸発させることにより、そこを通過する空気を冷却するものである。また、放熱器6は、タンク8、ポンプ9および熱媒体加熱装置10とともに熱媒体循環回路10Aを構成し、熱媒体加熱装置10で高温に加熱された熱媒体(例えば、不凍液、温水等)がポンプ9を介して循環されることにより、そこを通過する空気を加温するものである。
【0026】
図2には、図1に示された熱媒体加熱装置10の組み立て手順を説明するための分解斜視図が示され、図3には、該熱媒体加熱装置10の熱媒体入口路(または熱媒体出口路)に沿った縦断面相当図が示されている。
熱媒体加熱装置10は、図2に示されるように、制御基板13と、複数枚の電極板14(図3参照)と、制御基板13上に設けられたIGBT等の複数個のパワートランジスタ12(図3参照)と、熱交押え部材16と、複数枚(例えば、3枚)の扁平熱交チューブ17と、複数組のPTC素子18a(図3参照)と、複数枚の絶縁シート19と、これら制御基板13、電極板14、半導体スイッチング素子12、扁平熱交チューブ17、熱交押え部材16、PTC素子18aおよび熱伝導性絶縁シート19等を収容するケーシング11とを備えている。
【0027】
なお、上記の電極板14、PTC素子18aおよび熱伝導性絶縁シード19等によってPTCヒータ18が構成されている。
ケーシング11は、上半部と下半部とに2分割されており、上半部を構成するアッパケース(図示省略)と、下半部を構成するロアケース11aとを備えている。このアッパケースおよびロアケース11aの内部には、ロアケース11aの上方からロアケース11aの開口部11bにアッパケースを載置することによって、上記制御基板13、半導体スイッチング素子12、電極板14、熱交押え部材16、複数枚の扁平熱交チューブ17および複数組のPTCヒータ18等を収容する空間が形成されるようになっている。
【0028】
ロアケース11aの底面には、3枚の扁平熱交チューブ17に導入される熱媒体を導くための熱媒体入口流路11cおよび扁平熱交チューブ17内を流通した熱媒体を導出するための熱媒体出口流路11dが一体に形成されている。この熱媒体入口流路11cおよび熱媒体出口流路11dは、ロアケース11aの底面から同一の水平方向に互いに平行に延長され、ロアケース11aの一端から側方に突出されている。なお、アッパケースおよびロアケース11aは、その内部に収容される扁平熱交チューブ17を構成するアルミ合金材と線膨張が近い樹脂材(例えば、PPS)により成形されている。このように、ケーシング11を樹脂材料で構成することにより、軽量化を図ることができる。
【0029】
また、ロアケース11aの下面には、電源ハーネス27およびLVハーネス28の先端部を貫通するための電源ハーネス用孔およびLVハーネス用孔(いずれも図示省略)が開口されている。電源ハーネス27は、制御基板13およびパワートランジスタ12を介してPTCヒータ18に電力を供給するものであり、先端部が2又状に分岐され、制御基板13に設けられている2つの電源ハーネス用端子台13cに電極ハーネス接続用ネジ13bを介してネジ止め可能とされている。また、LVハーネス28は、制御基板13に制御用の信号を送信するものであり、その先端部は、制御基板13にコネクタを介して接続可能とされている。
【0030】
パワートランジスタ12および制御基板13は、上位の制御装置(ECU)からの指令に基づいて複数組のPTCヒータ18に対する通電制御を行う制御回路を構成するものであり、IGBT等の複数個のパワートランジスタ12を介して複数組のPTCヒータ18に対する通電状態が切替え可能な構成とされている。そして、この複数組のPTCヒータ18をその両面側から挟み込むように複数枚の扁平熱交チューブ17が積層されるようになっている。
【0031】
扁平熱交チューブ17は、アルミ合金材製のチューブであり、図2ないし図4に示されるように、3枚の扁平熱交チューブ17が互いに平行になるように、下段、中段および上段の扁平熱交チューブ17c、17b、17aの順に積層されるようになっている。これらの扁平熱交チューブ17は、図2ないし図4に示されるように、扁平チューブ部20の一端部に入口ヘッダ部21および出口ヘッダ部22が並設され、他端部に熱媒体流れをUターンさせるUターン部23が形成されているとともに、扁平チューブ部20に入口ヘッダ部21からUターン部23を経て出口ヘッダ部22に至るUターン流路24が形成される構成とされている。
【0032】
扁平熱交チューブ17は、扁平チューブ部20と入口ヘッダ部21および出口ヘッダ部22とが一体成形されたアルミ合金材製の薄い一対の成形プレート部材25a,25bを重ね合わせ、ロウ付け接合したものである。この出・入口ヘッダ部21,22の厚さ方向寸法は、Uターン流路24を形成している扁平チューブ部20の厚さ方向寸法よりも厚くされており、3枚の扁平熱交チューブ17a、17b、17cを積層したとき、扁平チューブ部20間に所定寸法の隙間が形成されるようになっている。この隙間に、上下両面を電極板14および熱伝導性絶縁シート19等でサンドイッチされたPTCヒータ18が挟み込まれることによって、3枚の扁平熱交チューブ17と2組のPTCヒータ18が多層に積層されるようになっている。
【0033】
また、扁平熱交チューブ17は、積層されたとき、図3、図5に示されるように、入口ヘッダ部21および出口ヘッダ部22同士が互いに密着され、入口ヘッダ部21および出口ヘッダ部22に設けられている連通穴21a,22a同士が互いに連通されるようになっている。この際、各連通穴21a,22aは、その周りに配設されるOリング、ガスケット、液状ガスケット等のシール材26(本例では、Oリングが用いられている。)によってシールされるようになっている。
【0034】
シール材(Oリング)26は、扁平熱交チューブ17aと扁平熱交チューブ17bの出入口ヘッダ部21,22間、扁平熱交チューブ17bと扁平熱交チューブ17cの出入口ヘッダ部21,22間、および扁平熱交チューブ17cの出入口ヘッダ部21,22とロアケース11aの内底面間において、扁平熱交チューブ17b,17cを構成する成形プレート部材25b側の連通穴21a,22a周り、およびロアケース11aの内底面に形成されているシール材26の配設部位に設置されるようになっている。
【0035】
さらに、上記3枚の扁平熱交チューブ17の扁平チューブ部20間には、そのチューブ間の隙間に対して、複数組のPTCヒータ18が、電極板14および熱伝導性絶縁シート19等を介して以下に記載の如く組み込まれるようになっている。
電極板14は、PTC素子18aに電力を供給するためのものであり、平面視において矩形状を呈するアルミ合金製の板材とされている。この電極板14は、図3に示されるように、PTC素子18aを挟んでその両面に、PTC素子18aの上面に接するように一枚、PTC素子18aの下面に接するように一枚それぞれ積層されている。これら2枚の電極板14によって、PTC素子18aの上面と、下面とが上下から挟み込まれるようになっている。
【0036】
そして、PTC素子18aの上面側に配置される電極板14は、その上面が熱伝導性絶縁シート19を介して扁平熱交チューブ17の下面に接するように配置され、PTC素子18aの下面側に配置される電極板14は、その下面が熱伝導性絶縁シート19を介して扁平熱交チューブ17の上面に接するように配置されている。本実施形態において、電極板14は、下段の扁平熱交チューブ17cと中段の扁平熱交チューブ17bとの間、および中段の扁平熱交チューブ17bと上段の扁平熱交チューブ17aとの間に各々2枚、合計4枚が配置され、これらの電極板14で挟まれた状態でPTCヒータ18が、3枚の扁平熱交チューブ17の扁平チューブ部20間にそれぞれ熱伝導性絶縁シート19を介して積層されるようになっている。
【0037】
4枚の各電極板14は、各扁平熱交チューブ17の扁平チューブ部20と略同形とされている。各電極板14には、その長辺側に端子14a(図2参照)が設けられ、この端子14aは、各電極板14を積層したとき、互いに重ならないように、電極板14の長辺方向に沿って配置されている。つまり、各電極板14に設けられている端子14aは、その長辺方向に少しずつ位置をずらして設けられ、各電極板14が積層された場合に直列に配列されるように設けられている。各端子14aは、上方に突出するように設けられ、制御基板13に設けられている端子台13aに端子接続用ネジ14bを介して接続されるようになっている。
【0038】
基板サブアッセンブリ15は、制御基板13と熱交押え部材16とを熱伝導性絶縁シート29等を挟み込み、例えば4本の基板サブアッセンブリ接続用ネジ15aを介して締結することにより一体化されたものである。なお、制御基板13上に設けられているIGBT等のパワートランジスタ12は、発熱電気部品であり、その発熱は、パワートランジスタ12の設置部に対応して制御基板13に設けられている熱貫通部30を経て熱交押え部材16側に放熱され、扁平熱交チューブ17内を流通する熱媒体により冷却されるようになっている。
【0039】
また、基板サブアッセンブリ15を構成している制御基板13には、各電極板14に直列に配列されている4つの端子14aに対応して、その一辺に直列に4つの端子台13aが配列されている。また、4つの端子台13aと両端側に直列に並ぶように、電源ハーネス27の2分岐されている先端部と接続される2つの電源ハーネス用端子台13cが設けられている。これらの端子台13aおよび電源ハーネス用端子台13cは、制御基板13から下方(または上方)に突出するように設けられている。また、各端子台13aおよび電源ハーネス用端子台13cは、積層された扁平熱交チューブ17a、17b、17cの長辺に沿って直列に配設されている。
【0040】
さらに、制御基板13に設けられている各端子台13aおよび電源ハーネス用端子台13cは、ロアケース11aの開口部11bよりも少し上方に位置されるように設けられている。これによって、各端子台13aおよび電源ハーネス用端子台13cに接続される電極板14の端子14aや電源ハーネス27の先端部が固定し易い構成とされている。
【0041】
一方、基板サブアッセンブリ15を構成している熱交押え部材16は、平面視において扁平状のアルミ合金製板材とされている。熱交押え部材16の上面には、上記したように制御基板13が設置されている。熱交押え部材16は、図2、図3に示されるように、各扁平熱交チューブ17の扁平チューブ部20および出・入口ヘッダ部21,22の上面を覆うことができる大きさとされており、その4コーナー部には、熱交押え部材16をロアケース11aのボス部11eに固定する基板サブアッセンブリ固定用ネジ15bを通す貫通穴16aが設けられている。
【0042】
基板サブアッセンブリ15は、積層された最上段の扁平熱交チューブ17aの上面に載せられ、熱交押え部材16の下面が最上段の扁平熱交チューブ17aの扁平チューブ部20および出・入口ヘッダ部21,22の上面に接するように配置される。該基板サブアッセンブリ15は、熱交押え部材16をロアケース11a側のボス部11eにネジ止め固定することにより、熱交押え部材16の下面とロアケース11aの内底面との間で、積層された扁平熱交チューブ17の扁平チューブ部20と、その間に挟まれている各2枚のPTCヒータ18とを押圧して互いに密着させるとともに、各扁平熱交チューブ17の出・入口ヘッダ部21,22に設けられている連通穴21a,22aの周りに配設されているシール材(本例では、Oリング)26を密着させて締め付け固定できる構成とされている。
【0043】
これにより、熱媒体入口流路11cから流入された熱媒体は、各扁平熱交チューブ17の入口ヘッダ部21から扁平チューブ部20内に導入され、扁平チューブ部20のUターン流路24内を流通する間に、PTCヒータ18により加熱、昇温されて出口ヘッダ部22に至り、出口ヘッダ部22から熱媒体出口流路11dを経て外部に流出される流路内を流通されるようになっている。熱媒体加熱装置10から流出された熱媒体は、熱媒体循環回路10A(図1参照)を介して放熱器6に供給されるように構成されている。
【0044】
また、基板サブアッセンブリ15を構成している熱交押え部材16は、熱伝導性が良好なアルミ合金材製とされ、その下面が最上段の扁平熱交チューブ17aの上面と接触されるように構成されている。これによって、熱交押え部材16は、上記の如く、扁平熱交チューブ17内を流れる熱媒体を冷熱源とし、制御基板13上に設置されているIGBT等のパワートランジスタ(発熱電気部品)12を冷却するためのヒートシンクとしても機能されるようになっている。
【0045】
さらに、熱交押え部材16をケーシング11にネジ止め固定するボス部11eは、図4(A)に示されるように、ロアケース11aの4隅のデッドスペース部に設けられる。つまり、この4つのボス部11eは、4コーナー部がR形状とされている扁平熱交チューブ17の4コーナー部に対応したロアケース11aの4隅のデッドスペース部を利用して設けられており、これによって、ケーシング11の幅寸法(図4(A)の上下方向寸法)を極力小さめにしている。一方、ロアケース11aの4隅のデッドスペース部に4つのボス部11eを設けることにより、出・入口ヘッダ部21,22をその中心を通る線上で熱交押え部材16により押圧することができなくなる。
【0046】
そこで、本実施形態では、4隅のボス部11e以外の第5ボス部11fを、扁平熱交チューブ17の出・入口ヘッダ部21,22間であって、その出・入口ヘッダ部21,22側の2隅に設けられているボス部11eの中心と、該ボス部11eと対応する出・入口ヘッダ部21,22の中心とを通る線の交点付近に設け、この第5ボス部11fと、出・入口ヘッダ部21,22側の2隅に設けられているボス部11eとの間で熱交押え部材16を締め付け固定することにより、出・入口ヘッダ部21,22をその中心を通る線上で熱交押え部材16を介して押圧可能な構成としている。
【0047】
第5ボス部11fは、図5に示されるように、3枚の扁平熱交チューブ17の出・入口ヘッダ部21,22間のスペースに設けられている開口部31を貫通するように、ロアケース11aの内底面より上方に立ち上げられている。該第5ボス部11fの上面は、他の4隅のボス部11eと同一高さとされており、他のボス部11eと同様、5本目の基板サブアッセンブリ固定用ネジ15bを介して熱交押え部材16が締め付け固定されるように構成されている。
【0048】
なお、ケーシング11の幅寸法を小さくするには、出・入口ヘッダ部21,22間の間隔を小さくすればよいが、その間隔を小さくすると、出・入口ヘッダ部21,22と連通するようにロアケース11aの底面に設けられている熱媒体入口流路11cと熱媒体出口流路11d間の間隔が小さくなり、熱媒体循環用ホースの接続スペースを確保することが困難となる。このため、熱媒体入口流路11cと熱媒体出口流路11dとの間には、最小流路間ピッチPが存在し、その最小流路間ピッチPより出・入口ヘッダ部21,22間の間隔を小さくすることができない。
【0049】
従って、ケーシング11の幅寸法を小さくするには、出・入口ヘッダ部21,22間の間隔を最小流路間ピッチPと略同一間隔とした上で、熱交押え部材16を締め付け固定するためのボス部11e,11fを如何に配設するかにかかっており、図4(B)に示される比較例ように、入口ヘッダ部21の中心と出口ヘッダ部22の中心とを結ぶ線の延長線上の扁平熱交チューブ17の両側位置にボス部11eを設けたものに比べ、図4(A)に示すように、4隅のボス部11eと第5ボス部11fとを設けた構成の方が、ケーシング11内のデットスペースを縮小できることから、その分だけケーシング11を小型化することができる。
【0050】
以上に説明の熱媒体加熱装置10は、3枚の扁平熱交チューブ17および2組のPTCヒータ18を、以下のようにしてロアケース11a内に組み込むことができる。
まず、ロアケース11aの内底面に開口している熱媒体入口路11cおよび熱媒体出口路11dの開口部周りにシール材26を配置し、その上に下段の扁平熱交チューブ17cを載置する。この下段の扁平熱交チューブ17cの上面に、PTCヒータ18およびシール材26を配置し、その上に中段の扁平熱交チューブ17bを重ね、更に中段の扁平熱交チューブ17bの上面にPTCヒータ18とシール材26を配置し、その上に上段の扁平熱交チューブ17aを重ねることにより、3枚の扁平熱交チューブ17a、17b、17cと上下2組のPTCヒータ18とを、出・入口ヘッダ部21,22の連通穴21a,22a周りにシール材26を介装しながら、多層に積層して組み込むことができる。
【0051】
こうして3枚の扁平熱交チューブ17と上下2組のPTCヒータ18をロアケース11a内底面の所定位置に組み込んだ後、最上端の扁平熱交チューブ17aの上面に基板サブアッセンブリ15を載せ、基板サブアッセンブリ15の熱交押え部材16を5本の固定用ネジ15bを介してロアケース11a側のボス部11e,11fに締付け固定することにより、3枚の扁平熱交チューブ17a、17b、17cの扁平チューブ部20と各PTCヒータ18および出・入口ヘッダ部21,22の連通穴21a,22a周りに配設された3個のシール材26を、熱交押え部材16の押圧力により互いに密着させた状態でロアケース11a内に組み込むことができる。
【0052】
この際、出・入口ヘッダ部21,22については、該出・入口ヘッダ部21,22側の2コーナー部に対応して設けられている2隅のボス部11eと、第5ボス部11fとの間で熱交押え部材16を締め付け固定することにより、それぞれの中心を通る線上で出・入口ヘッダ部21,22を締め付けることができる。従って、出・入口ヘッダ部21,22の連通穴21a,22a周りに配設されているシール材(Oリング)26を全周に亘り略均一に押圧して密着せしめることができる。
【0053】
その後、熱交押え部材16の上面に設けられている制御基板13の端子台13a,13cに対して、電源ハーネス27の端子および電極板14の端子14aをネジ13b,14bを介してネジ止め固定するとともに、LVハーネス28等をコネクタ接続することにより電気系統の結線を行い、最後にその上部覆うように、図示省略のアッパケースをロアケース11aに対してネジ止め固定することにより、熱媒体加熱装置10を組み立てることができる。
【0054】
この熱媒体加熱装置10は、熱媒体入口流路11cを経て入口ヘッダ部21に流入された熱媒体を、3枚の扁平熱交チューブ17a、17b、17cに対して、入口ヘッダ部21により分流してそれぞれ流通させ、複数組のPTCヒータ18で加熱した後、出口ヘッダ部22で合流させ、熱媒体出口流路11dを介して流出させることにより、車両用空調装置1の熱媒体循環回路10A内を循環される熱媒体の加熱用に供することができる。
【0055】
斯くして、本実施形態の熱媒体加熱装置10および車両用空調装置1によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態では、出・入口ヘッダ部21,22を備えた複数枚の扁平熱交チューブ17と複数組のPTCヒータ18とを多層に積層し、それを出・入口ヘッダ部21,22と連通する熱媒体入口流路11cおよび熱媒体出口流路11dを備えたケーシング11内に組み込み、その最上段の扁平熱交チューブ17の一面側を熱交押え部材16で押圧してケーシング11の内底面に締め付け固定している熱媒体加熱装置10にあって、熱交押え部材16を締め付け固定するためのボス部11eを、扁平熱交チューブ17の4コーナー部に対応したケーシング11の4隅のデッドスペース部に設けるとともに、この4隅のボス部11e以外の第5ボス部11fを、扁平熱交チューブ17の出・入口ヘッダ部21,22間であって、該出・入口ヘッダ部21,22側の2隅に設けられているボス部11eの中心と、該ボス部11eと対応する出・入口ヘッダ部21,22の中心とを通る線の交点付近に設けた構成としている。
【0056】
このように、熱交押え部材16をケーシング11側に締め付け固定するボス部11eをケーシング11の4隅のデッドスペース部に設けたことによって、入口ヘッダ部21の中心と出口ヘッダ部22の中心とを結ぶ線の延長線上の扁平熱交チューブ17の両側にボス部を設けた図4(B)に示す比較例に比べ、その延長線方向におけるケーシング11の幅寸法を小さくすることができる。また、出・入口ヘッダ部21,22側のボス部11eをケーシング11の2隅のデッドスペース部に設けたとしても、その2隅のボス部11eと出・入口ヘッダ部21,22間に設けられた第5ボス部11fとの間で熱交押え部材16を締め付け固定することにより、熱交押え部材16を介して出・入口ヘッダ部21,22をその中心を通る線上でケーシング11の内底面に対して押圧することができる。
【0057】
従って、ケーシング11内のデッドスペースを縮小することで、そのケーシング幅を小さくして熱媒体加熱装置10をコンパクト化し、熱媒体加熱装置10の小型高性能化を図ることができるとともに、出・入口ヘッダ部21,22の密着性を向上し、出・入口ヘッダ部21,22に設けられている連通穴21a,22a周りのシール性を確保することができる。
【0058】
また、複数枚の扁平熱交チューブ17の入口ヘッダ部21間および出口ヘッダ部22間に、各々の連通穴21a,22a周りをシールするシール材26が、熱交押え部材16による出・入口ヘッダ部21,22の押圧によって密着シールされるように設置されているため、出・入口ヘッダ部21,22の連通穴21a,22a周りに設置されているOリングや液状ガスケット等のシール材26を、出・入口ヘッダ部21,22の中心を通る線上において熱交押え部材16を締め付け固定し、出・入口ヘッダ部21,22を押圧することにより、その全周を略均一に押圧して密着させることができる。従って、シール材26によるシール性を確保し、熱媒体の漏れ防止に対する信頼性を向上することができる。
【0059】
また、上記第5ボス部11fは、ケーシング11の内底面に、複数枚の扁平熱交チューブ17の出・入口ヘッダ部21,22間のスペースに設けられている開口部31を貫通してその上面側に突出されるように設けられている。このため、該第5ボス部11fに対しても、他の4隅のボス部11eと同様に熱交押え部材16をネジ15bで締め付け固定することによって、ケーシング11の2隅のデッドスペース部に設けられている2隅のボス部11eと第5ボス部11fとの間で、出・入口ヘッダ部21,22を各々の中心を通る線上において熱交押え部材16によりケーシング11の内底面に対して押圧することができる。従って、Oリングや液状ガスケット等のシール材26を確実に密着させ、連通穴21a,22a周りのシール性を確保することができる。
【0060】
さらに、本実施形態では、出・入口ヘッダ部21,22の間隔を、ケーシング11の底面に出・入口ヘッダ部21,22の連通穴21a,22aと連通するように設けられ、その底面から互いに平行に延長されている熱媒体入口流路11cおよび熱媒体出口流路11dのホース接続時に必要な最小流路間ピッチPと略同一間隔としている。このため、熱媒体入口流路11cおよび熱媒体出口流路11dに対して接続される熱媒体循環回路10Aの一部を構成する熱媒体循環用ホースの接続スペースを確保した状態で、出・入口ヘッダ部21,22の間隔をその最小流路間ピッチPと略同一間隔とすることで、ケーシング11の幅寸法を扁平熱交チューブ17、熱交押え部材16等を収容設置するための最小幅寸法とすることができる。従って、熱媒体加熱装置10の外形寸法を更に小さくし、小型高性能化することができるとともに、車両に対する搭載性を向上することができる。
【0061】
また、本実施形態の車両用空調装置1によれば、空気流路2中に配設されている放熱器6に対して循環される熱媒体を、ケーシング11内のデッドスペースを減少して小型高性能化を図った熱媒体加熱装置10により加熱し、循環させることができるため、車両用空調装置1の空調性能、特に暖房性能の向上を図ることができるとともに、車両に対する空調装置1の搭載性を向上することができる。
【0062】
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、上記した実施形態では、扁平熱交チューブ17を3層に積層し、各々の間にPTCヒータ18を組み込んだ構成としているが、これに限らず、扁平熱交チューブ17およびPTCヒータ18の積層枚数を増減してもよいことはもちろんである。また、ケーシング11を樹脂成形品とした例について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、アルミ合金等の金属製としてもよいことは云うまでもない。
【0063】
さらに、上記実施形態では、ケーシング11(ロアケース11a)に設けられている熱媒体入口流路11cおよび熱媒体出口流路11dを、その底面から側方に水平に互いに平行に延長している例について説明したが、これら熱媒体入口流路11cおよび熱媒体出口流路11dの延長方向は、これに限定されるものではなく、例えば、鉛直下向きに延長する等、上記以外の構成としてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 車両用空調装置
6 放熱器
10 熱媒体加熱装置
10A 熱媒体循環回路
11 ケーシング
11c 熱媒体入口流路
11d 熱媒体出口流路
11e ボス部
11f 第5ボス部
16 熱交押え部材
17,17a,17b,17c 扁平熱交チューブ
18 PTCヒータ
21 入口ヘッダ部
21a 連通穴
22 出口ヘッダ部
22a 連通穴
23 Uターン部
26 シール材
31 開口部
P 最小流路間ピッチ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に入口ヘッダ部および出口ヘッダ部が並設され、前記入口ヘッダ部から流入した熱媒体が他端側のUターン部で折返し、前記出口ヘッダ部から流出される略長方形状をなす複数枚の扁平熱交チューブと、
積層される複数枚の前記扁平熱交チューブ間に組み込まれるPTCヒータと、
前記扁平熱交チューブおよび前記PTCヒータが交互に多層に積層されて組み込まれるケーシングと、
多層に積層された前記扁平熱交チューブの一面側を押圧し、前記ケーシングの内底面に対して締め付け固定する熱交押え部材と、を備えた熱媒体加熱装置であって、
前記熱交押え部材を締め付け固定するボス部を、前記扁平熱交チューブの4コーナー部に対応した前記ケーシングの4隅のデッドスペース部に設けるとともに、
該4隅のボス部以外の第5ボス部を、前記扁平熱交チューブの前記出・入口ヘッダ部間であって、該出・入口ヘッダ部側の2隅に設けられている前記ボス部の中心と、該ボス部と対応する前記出・入口ヘッダ部の中心とを通る線の交点付近に設けたことを特徴とする熱媒体加熱装置。
【請求項2】
前記扁平熱交チューブの前記入口ヘッダ部間および前記出口ヘッダ部間には、各々の連通穴周りをシールするシール材が、前記熱交押え部材による前記出・入口ヘッダ部の押圧により密着シールされるように設置されていることを特徴とする請求項1に記載の熱媒体加熱装置。
【請求項3】
前記第5ボス部は、前記ケーシングの内底面に、複数枚の前記扁平熱交チューブの前記出・入口ヘッダ部間のスペースに設けられている開口部を貫通してその上面側に突出されるように設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の熱媒体加熱装置。
【請求項4】
前記出・入口ヘッダ部の間隔は、前記ケーシングの底面に前記出・入口ヘッダ部の連通穴と連通するように設けられ、その底面から互いに平行に延長されている熱媒体入口流路および熱媒体出口流路のホース接続時に必要な最小流路間ピッチと略同一間隔とされていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の熱媒体加熱装置。
【請求項5】
空気流路中に配設されている放熱器に対して、熱媒体加熱装置で加熱された熱媒体が循環可能に構成されている車両用空調装置において、
前記熱媒体加熱装置が、請求項1ないし4のいずれかに記載の熱媒体加熱装置とされていることを特徴とする車両用空調装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−75616(P2013−75616A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217010(P2011−217010)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】