説明

熱媒体加熱装置

【課題】従来必要とされた多数のバネを使用することなくPTCヒータとチューブとの密着性を向上させ、その結果、従来必要とされた多数のバネを不要とし、組付(組立)性を向上させるとともに、軽量化および製造コストの低減化を図ること。
【解決手段】PTC素子18を挟んで少なくともその両面にそれぞれ電極板14および絶縁体が順次積層されたPTCヒータと、入口ヘッダ部21、出口ヘッダ部22、および前記入口ヘッダ部21と前記出口ヘッダ部22とを連通する連通部23を備えたチューブ17と、前記PTCヒータおよび前記チューブ17を収容するケーシング11とを備えた熱媒体加熱装置10であって、前記PTCヒータが、その両面が前記連通部23の表面と密着するようにして、前記連通部23の長さ方向における途中で折り曲げられた前記連通部23の間に挟み込まれるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータを用いて熱媒体を加熱する熱媒体加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、被加熱媒体を加熱する熱媒体加熱装置の1つとして、正特性サーミスタ素子(PTC素子)を発熱要素とするPTCヒータを用いたものが知られている。
PTCヒータは、正特性のサーミスタ特性を有しており、温度の上昇とともに抵抗値が上昇し、これによって消費電流が制御されるとともに温度上昇が緩やかになり、その後、消費電流および発熱部の温度が飽和領域に達して安定するものであり、自己温度制御特性を備えている。
【0003】
このように、PTCヒータは、ヒータの温度が上昇すると消費電流が低くなり、その後一定温度の飽和領域に達すると、消費電流が低い値で安定するという特性を有する。この特性を利用することにより、消費電力を節減することができるとともに、発熱部温度の異常上昇を防止することができるという利点が得られる。
このような特長を有することから、PTCヒータは、多くの技術分野において用いられており、空調の分野においても、例えば、車両用空調装置において、空気加温用の放熱器に供給する熱媒体(ここでは、エンジンの冷却水)を加熱するための加熱装置に適用したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−56044号公報
【0005】
また、近年においては、図15に示すような熱媒体加熱装置が提案されている。
図15に示すように、近年提案されている熱媒体加熱装置90では、概略以下のような組み付け(組み立て)が行われている。
まず、アルミニウム製の二枚の電極板91の間にPTC素子92および樹脂製のフレーム93を挟み込み、これらをさらにアルミナセラミック製の二枚の絶縁・伝熱板94の間に挟み込んだPTCヒータモジュール95を複数個(図15に示すものでは16個)用意し、樹脂製の中ケース96の下面からPTCヒータモジュール95が露出するようにして、PTCヒータモジュール95を中ケース96内に収める。
【0006】
つぎに、入口ヘッダ部97と、出口ヘッダ部98と、これらを連通する複数本(本実施形態では10本)のチューブ99とを備えた熱交換器100内に、チューブ99間にPTCヒータモジュール95が挿入されるようにして中ケース96を収め、図示しない締結部材(例えば、ボルト)で中ケース96を熱交換器100に固定する。
つづいて、中ケース96が組み付けられた熱交換器100を樹脂製の下ケース101内に収め、図示しない締結部材(例えば、ボルト)で熱交換器100を下ケース101に固定する。
そして、樹脂製の上ケース102を被せ、図示しない締結部材(例えば、ボルト)で上ケース102を下ケース101に固定し、樹脂製の入口フィッティング103が入口ヘッダ部97に接続(連結)されるようにして図示しない締結部材(例えば、ボルト)で入口フィッティング103を下ケース101に取り付けるとともに、樹脂製の出口フィッティング104が出口ヘッダ部98に接続(連結)されるようにして図示しない締結部材(例えば、ボルト)で出口フィッティング104を下ケース101に取り付ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図15に示す熱媒体加熱装置90では、PTCヒータモジュール95とチューブ99との密着性を高める(良くする)ために、要所に多数のバネ(図示せず)が使用されており、そのため、組付(組立)性が悪く、また、多数のバネによって重量が増加するとともに製造コストが嵩んでしまうといった問題点があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、従来必要とされた多数のバネを使用することなくPTCヒータとチューブとの密着性を向上させることができ、その結果、従来必要とされた多数のバネを不要とすることができて、組付(組立)性を向上させることができるとともに、軽量化および製造コストの低減化を図ることができる熱媒体加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
本発明に係る熱媒体加熱装置は、PTC素子を挟んで少なくともその両面にそれぞれ電極板および絶縁体が順次積層されたPTCヒータと、入口ヘッダ部、出口ヘッダ部、および前記入口ヘッダ部と前記出口ヘッダ部とを連通する連通部を備えたチューブと、前記PTCヒータおよび前記チューブを収容するケーシングとを備えた熱媒体加熱装置であって、前記PTCヒータは、その両面が前記連通部の表面と密着するようにして、前記連通部の長さ方向における途中で折り曲げられた前記連通部の間に挟み込まれている。
【0010】
本発明に係る熱媒体加熱装置によれば、その長さ方向における途中で折り曲げられた連通部の間に挟み込まれるだけでPTCヒータとチューブとが密着して、PTCヒータの熱がチューブに伝わり、PTCヒータによりチューブが効率よく加熱され、チューブ内を通過する熱媒体が効率よく加熱されることになる。
これにより、従来必要とされた多数のバネを不要とすることができて、組付(組立)性を向上させることができるとともに、軽量化および製造コストの低減化を図ることができる。
【0011】
上記熱媒体加熱装置において、前記PTCヒータの前記両面以外の面と密着するように、前記連通部がさらに折り曲げられているとさらに好適である。
【0012】
このような熱媒体加熱装置によれば、PTCヒータとチューブとの接触面積が増大して、PTCヒータの熱がより多くチューブに伝わることになるので、加熱効率を向上させることができる。
【0013】
上記熱媒体加熱装置において、前記PTCヒータと前記チューブとの間に形成される隙間に、熱伝導率の高い物質が充填されているとさらに好適である。
【0014】
このような熱媒体加熱装置によれば、PTCヒータとチューブとの接触面積が増大して、PTCヒータの熱がより多くチューブに伝わることになるので、加熱効率を向上させることができる。
【0015】
上記熱媒体加熱装置において、前記絶縁体が薄膜により構成(形成)されているとさらに好適である。
【0016】
このような熱媒体加熱装置によれば、絶縁体が非常に軽量な薄い膜によって構成(形成)されることになるので、さらなる軽量化を図ることができる。
【0017】
上記熱媒体加熱装置において、前記ケーシングと前記連通部との間に、前記連通部を前記PTCヒータに対して押圧する付勢部材が設けられているとさらに好適である。
【0018】
このような熱媒体加熱装置によれば、付勢部材によりチューブがPTCヒータにより大きな力で押し付けられて、PTCヒータとチューブとの密着性がより高められることになり、PTCヒータの熱がより多くチューブに伝わることになるので、加熱効率をさらに向上させることができる。
【0019】
本発明に係る車両用空調装置は、上記いずれかの熱媒体加熱装置を具備している。
【0020】
本発明に係る車両用空調装置によれば、従来必要とされた多数のバネを不要とすることができて、組付(組立)性を向上させることができるとともに、軽量化および製造コストの低減化を図ることができる熱媒体加熱装置を具備しているので、車両用空調装置全体の軽量化および製造コストの低減化を図ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る熱媒体加熱装置によれば、従来必要とされた多数のバネを使用することなくPTCヒータとチューブとの密着性を向上させることができ、その結果、従来必要とされた多数のバネを不要とすることができて、組付(組立)性を向上させることができるとともに、軽量化および製造コストの低減化を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係る熱媒体加熱装置を具備した車両用空調装置の概略構成図である。
【図2】チューブにPTCヒータを組み付けた状態を示す平面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る熱媒体加熱装置の断面図である。
【図4】チューブの斜視図である。
【図5】図4のV−V矢視断面図である。
【図6】チューブにPTCヒータを組み付ける手順を説明するための図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るチューブにPTCヒータを組み付けた状態を示す図であって、図6と同様の図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係るチューブにPTCヒータを組み付けた状態を示す図であって、図6と同様の図である。
【図9】第1実施形態から第3実施形態に係る熱媒体加熱装置の要部を拡大して示した断面図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係る熱媒体加熱装置の要部を拡大して示した断面図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係るチューブに絶縁体を電着する方法を説明するための図である。
【図12】本発明の他の実施形態に係るチューブにPTCヒータを組み付けた状態を示す図であって、図6と同様の図である。
【図13】本発明の別の実施形態に係るチューブにPTCヒータを組み付けた状態を示す図であって、図6と同様の図である。
【図14】本発明のさらに別の実施形態に係るチューブにPTCヒータを組み付けた状態を示す図であって、図6と同様の図である。
【図15】近年提案されている熱媒体加熱装置の構成を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔第1実施形態〕

本発明の第1実施形態に係る熱媒体加熱装置について、図1から図6を参照しながら説明する。
図1は本実施形態に係る熱媒体加熱装置を具備した車両用空調装置の概略構成図、図2はチューブにPTCヒータを組み付けた状態を示す平面図、図3は本実施形態に係る熱媒体加熱装置の断面図、図4はチューブの斜視図、図5は図4のV−V矢視断面図、図6はチューブにPTCヒータを組み付ける手順を説明するための図である。
【0024】
図1に示すように、車両用空調装置1は、外気または車室内空気を取り込んで温調し、それを車室内へと導く空気流路2を形成するためのケーシング3を備えている。
ケーシング3の内部には、空気流路2の上流側から下流側にかけて順次、外気または車室内空気を吸い込んで昇圧し、それを下流側へと圧送するブロア4と、ブロア4により圧送される空気を冷却する冷却器5と、冷却器5を通過して冷却された空気を加熱する放熱器6と、放熱器6を通過する空気量と放熱器6をバイパスして流れる空気量との割合を調整し、その下流側でミックスされる空気の温度を調節するエアミックスダンパ7と、が設置されている。
【0025】
ケーシング3の下流側は、図示しない吹き出しモード切替ダンパおよびダクトを介して温調された空気を車室内に吹き出す複数の吹き出し口に接続されている。
冷却器5は、図示しない圧縮機、凝縮器、膨張弁とともに冷媒回路を構成し、膨張弁で断熱膨張された冷媒を蒸発させることにより、そこを通過する空気を冷却するものである。
放熱器6は、タンク8、ポンプ9および熱媒体加熱装置10とともに熱媒体循環回路10Aを構成し、熱媒体加熱装置10により加熱された熱媒体(例えば、水)がポンプ9を介して循環されることにより、そこを通過する空気を加温するものである。
【0026】
図3に示すように、本実施形態に係る熱媒体加熱装置10は、ケーシング(筐体)11と、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)12を備えた基板13と、電極板14と、支持板(背板)15と、板バネ(付勢部材)16と、チューブ17と、PTC(Positive Temperature Coefficient)素子18とを備えている。
なお、電極板14、PTC素子18、および後述する絶縁体50または絶縁体60により、PTCヒータが構成される。
【0027】
ケーシング11は、上側半分と下側半分とに二分割された構成となっており、上側半分に位置するアッパーケース(第1のケーシング)11aと、下側半分に位置するロアケース(第2のケーシング)11bとを備えている。また、ケーシング11の内部には、IGBT12を備えた基板13、電極板14、支持板15、板バネ16、チューブ17、およびPTC素子18を収容するための空間Sが形成されるようになっている。
一方、アッパーケース11aとロアケース11bとの接合部(アッパーケース11aとロアケース11bとを重ね合わせた際、互いに接することになるアッパーケース11aおよびロアケース11bの周縁部)には、周方向に沿って外方に突出するフランジ部(鍔部)11c,11dが連続して、または所定の間隔をあけて断続的に複数箇所設けられている。そして、フランジ部11cとフランジ部11dとを、複数個のクリップ19で結合することにより、ケーシング11の内部に空間Sが形成されることになる。
【0028】
電極板14は、PTC素子18を作動させるための電力を供給する平面視矩形状を呈するアルミニウム製の板状部材であり、PTC素子18の上面(図3において左側の面)に接するようにして一枚、PTC素子18の下面(図3において右側の面)に接するようにして一枚設けられていて、これら二枚の電極板14により、PTC素子18の上面と、PTC素子18の下面とが挟み込まれるようになっている。また、PTC素子18の上面側に位置する電極板14は、その上面がチューブ17の内側面に接するようにして配置され、PTC素子18の下面側に位置する電極板14は、その下面がチューブ17の内側面に接するようにして配置される。
【0029】
支持板15は、その上面がチューブ17の下側(入口側:上流側)に位置するチューブ17の外側面に接するようにして配置される平面視矩形状を呈する金属製の板状部材であり、板バネ16は、その下側の頂点がチューブ17の上側(出口側:下流側)に位置するチューブ17の外側面に接するようにして配置される金属製の付勢部材であり、これら支持板15と板バネ16との間にチューブ17が挟み込まれ、チューブ17が支持板15の方向に付勢(押圧)されるようになっている。
【0030】
図2から図4に示すように、チューブ17は、上流側(入口側)の一端に円筒状の入口ヘッダ部21を備え、下流側(出口側)の他端に円筒状の出口ヘッダ部22を備えるとともに、入口ヘッダ部21と出口ヘッダ部22とを連通する連通部23を備えている。
図2および図3に示すように、入口ヘッダ部21の一側面(図2において右側に位置する面)には、(熱媒体)入口管24が接続され、出口ヘッダ部22の一側面(図2において右側に位置する面)には、(熱媒体)出口管25が接続されており、入口管24から入口ヘッダ部21を通って連通部23に流入した熱媒体は、連通部23を通過する際に昇温(加熱)されて、連通部23から出口ヘッダ部22を通って出口管25に流入し、熱媒体循環回路10Aを介して放熱器6に供給されることになる。
【0031】
また、図5に示すように、連通部23は、その断面視形状が、幅方向(図2において左右方向)に長く、幅方向と直交する厚さ方向(図2において左右方向)に短い偏平な形状を呈するとともに、その内部に少なくとも一本の流路26が形成されたチューブ状の部材であり、その長さ方向における中央よりも下流側で折り曲げられて(湾曲させられて)二つ折りにされる(折り曲げ部から上流側の部分と下流側の部分とが折り重ねられる)とともに、外側面と内側面とが(略)平行になるように形成されている。
なお、入口ヘッダ部21の他側面(図2において左側に位置する面)、および出口ヘッダ部22の他側面(図2において左側に位置する面)はそれぞれ、閉塞されている。
【0032】
つぎに、図6を用いて本実施形態に係る熱媒体加熱装置10の組み付け(組み立て)手順を説明する。
なお、図面および説明の簡略化を図るため、図6にはケーシング11、チューブ17、およびPTC素子18のみを示し、少なくとも一個(本実施形態では三個)あるPTC素子18を、一個のPTC素子18として示している。
【0033】
まず、図6(a)に示すように、長さ方向に直線状に形成された連通部23を、その長さ方向における中央よりも下流側で軽く折り曲げる(PTC素子18を受け入れる(収容する)ことができるように折り曲げる)。
つぎに、図6(b)に示すように、折り曲げ部と反対の側に位置する入口ヘッダ部21と出口ヘッダ部22との間に形成された開口27からPTC素子18を挿入し、つづいて、図6(c)に示すように、連通部23を、その長さ方向における中央よりも下流側で完全に折り曲げて、折り曲げ部から上流側に位置する連通部23と、折り曲げ部から下流側に位置する連通部23との間にPTC素子18を挟み込むようにする。
最後に、図6(d)に示すように、折り曲げ部から上流側に位置する連通部23と、折り曲げ部から下流側に位置する連通部23との間にPTC素子18が挟み込まれたチューブ17を、アッパーケース11aとロアケース11bとの間に形成された空間S内に収め、上述した複数個のクリップ19でフランジ部11cとフランジ部11dとが結合され、熱媒体加熱装置10の組み付けを完了(終了)する。
【0034】
本実施形態に係る熱媒体加熱装置10によれば、その長さ方向における途中で折り曲げられた連通部23の間に挟み込まれるだけでPTCヒータとチューブ17とが密着して、PTCヒータの熱がチューブ17に伝わり、PTCヒータによりチューブ17が効率よく加熱され、チューブ17内を通過する熱媒体が効率よく加熱されることになる。
これにより、従来必要とされた多数のバネを不要とすることができて、組付(組立)性を向上させることができるとともに、軽量化および製造コストの低減化を図ることができる。
また、板バネ16によりチューブ17がPTCヒータにより大きな力で押し付けられて、PTCヒータとチューブ17との密着性がより高められることになり、PTCヒータの熱がより多くチューブ17に伝わることになるので、加熱効率をさらに向上させることができる。
【0035】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態に係る熱媒体加熱装置について、図7を参照しながら説明する。
図7は本実施形態に係るチューブにPTCヒータを組み付けた状態を示す図であって、図6と同様の図である。
【0036】
図7に示すように、本実施形態に係る熱媒体加熱装置は、チューブ17の代わりに、チューブ30を備えているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、上述した第1実施形態と同一の構成要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0037】
図7に示すように、本実施形態に係るチューブ30の連通部23は、当該連通部23の間に挟み込まれた少なくとも一個(本実施形態では三個)のPTC素子18のうち、連通部23の長さ方向における両端に位置するPTC素子18の、上面と下面とを接続(連結)する外側に位置する各側面と平行になり、かつ、接するように形成された接触面増大部31を備えている。
なお、連通部23の間に挟み込まれたPTC素子18が一個の場合、接触面増大部31は、PTC素子18の上面と下面とを接続(連結)する二つの側面と平行になり、かつ、接するように形成される。
【0038】
本実施形態に係る熱媒体加熱装置によれば、PTCヒータとチューブ17との接触面積が増大して、PTCヒータの熱がより多くチューブ17に伝わることになるので、加熱効率を向上させることができる。
その他の作用効果は、上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0039】
〔第3実施形態〕
本発明の第3実施形態に係る熱媒体加熱装置について、図8を参照しながら説明する。
図8は本実施形態に係るチューブにPTCヒータを組み付けた状態を示す図であって、図6と同様の図である。
【0040】
図8に示すように、本実施形態に係る熱媒体加熱装置は、チューブ17の代わりに、チューブ40を備えているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、上述した第1実施形態と同一の構成要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0041】
図8に示すように、本実施形態に係るチューブ40の連通部23は、当該連通部23の間に挟み込まれた複数個(本実施形態では五個)のPTC素子18の上面と下面とを接続(連結)する各側面と平行になり、かつ、接するように形成された接触面増大部41を備えている。
【0042】
本実施形態に係る熱媒体加熱装置によれば、PTCヒータとチューブ17との接触面積が増大して、PTCヒータの熱がより多くチューブ17に伝わることになるので、加熱効率を向上させることができる。
その他の作用効果は、上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0043】
〔第4実施形態〕
本発明の第4実施形態に係る熱媒体加熱装置について、図9から図11を参照しながら説明する。
図9は第1実施形態から第3実施形態に係る熱媒体加熱装置の要部を拡大して示した断面図、図10は本実施形態に係る熱媒体加熱装置の要部を拡大して示した断面図、図11は本実施形態に係るチューブに絶縁体を電着する方法を説明するための図である。
【0044】
本実施形態に係る熱媒体加熱装置は、図9に示すような板状部材からなる絶縁体50の代わりに、図10に示すような塗膜(薄膜)からなる絶縁体60を備えているという点で上述した実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、上述した実施形態と同一の構成要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
また、上述した実施形態においても、電極板14とチューブ17との間には、板状部材からなる絶縁体50が設けられているが、図面および説明の簡略化を図るため、上述した実施形態では、絶縁体50の図示および説明を省略している。
【0045】
図10に示すように、本実施形態に係る熱媒体加熱装置では、チューブ17(より詳しくは、連通部23)の表面(内側面および外側面)に、絶縁体60が電着(エロクトロコーティング)されている。
ここで、電着(エロクトロコーティング)とは、例えば、図11に示すように、電荷を有する(絶縁)塗料粒子を含む液体70中に、ワーク(本実施形態ではチューブ17)71を浸漬し、ワーク71と対極(ここでは+極)との間に直流電流を流して、ワーク71の表面に塗料粒子を析出させるコーティング方法である。そして、このコーティング方法を用いると、塗膜72を均一にコーティングすることができ、さらに焼き付け処理を施すことにより、塗膜72を強靱なものとすることができ、塗膜72の耐熱性や耐薬品性の機能を向上させることができる。
【0046】
本実施形態に係る熱媒体加熱装置によれば、絶縁体60が非常に軽量な薄い膜によって構成(形成)されることになるので、さらなる軽量化を図ることができる。
その他の作用効果は、上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0047】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜必要に応じて変形・変更実施可能である。
例えば、上述した実施形態では、チューブ17が、その長さ方向における中央部(より詳しくは、チューブ17の長さ方向における中央よりも下流側)で折り曲げられて二つ折りにされ、その折り曲げられたチューブ17(より詳しくは、連通部23)の間にPTC素子18が挟み込まれるように構成していた。
しかし、本発明はこのようなものに限定されるものではなく、例えば、図12に示すような構成、すなわち、チューブ17(より詳しくは、連通部23)を、その長さ方向において四等分して、等分される部分で折り曲げて四つ折りにし、その折り曲げられたチューブ17(より詳しくは、連通部23)の間にPTC素子18がそれぞれ挟み込まれるような構成とすることもできる。
【0048】
また、図13に示すような構成、すなわち、図12に示す実施形態において、連通部23の両端に入口ヘッダ部21をそれぞれ設け、チューブ17(より詳しくは、連通部23)の長さ方向における中央に出口ヘッダ部22を設けるようにした構成とすることもできる。
なお、図13に示す実施形態の変形実施として、連通部23の両端に出口ヘッダ部22をそれぞれ設け、チューブ17(より詳しくは、連通部23)の長さ方向における中央に入口ヘッダ部21を設けるようにしてもよい。
【0049】
さらに、図14に示すような構成、すなわち、図13に示す実施形態において、連通部23の両端に設けられた二つの入口ヘッダ部21を、一つの入口ヘッダ部21で構成することもできる。
なお、図14に示す実施形態の変形実施として、連通部23の両端を一つの出口ヘッダ部22で連通し(繋ぎ)、チューブ17(より詳しくは、連通部23)の長さ方向における中央に一つの入口ヘッダ部21を設けるようにしてもよい。
【0050】
さらにまた、チューブ17の連通部23と、PTC素子18との間に形成される空間(隙間)、例えば、図12から図14中に符号80で示す空間内に、熱伝導率の高い物質(例えば、サーマルグリス)を充填して、PTC素子18からチューブ17(より詳しくは、連通部23)への熱伝達量を増大させるようにするとさらに好適である。
【符号の説明】
【0051】
1 車両用空調装置
10 熱媒体加熱装置
11 ケーシング
14 電極板
16 板バネ(付勢部材)
17 チューブ
18 PTC素子
21 入口ヘッダ部
22 出口ヘッダ部
23 連通部
30 チューブ
40 チューブ
50 絶縁体
60 絶縁体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PTC素子を挟んで少なくともその両面にそれぞれ電極板および絶縁体が順次積層されたPTCヒータと、
入口ヘッダ部、出口ヘッダ部、および前記入口ヘッダ部と前記出口ヘッダ部とを連通する連通部を備えたチューブと、
前記PTCヒータおよび前記チューブを収容するケーシングとを備えた熱媒体加熱装置であって、
前記PTCヒータは、その両面が前記連通部の表面と密着するようにして、前記連通部の長さ方向における途中で折り曲げられた前記連通部の間に挟み込まれていることを特徴とする熱媒体加熱装置。
【請求項2】
前記PTCヒータの前記両面以外の面と密着するように、前記連通部がさらに折り曲げられていることを特徴とする請求項1に記載の熱媒体加熱装置。
【請求項3】
前記PTCヒータと前記チューブとの間に形成される隙間に、熱伝導率の高い物質が充填されていることを特徴とする請求項1に記載の熱媒体加熱装置。
【請求項4】
前記絶縁体が、薄膜からなることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の熱媒体加熱装置。
【請求項5】
前記ケーシングと前記連通部との間に、前記連通部を前記PTCヒータに対して押圧する付勢部材が設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の熱媒体加熱装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の熱媒体加熱装置を具備していることを特徴とする車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−255843(P2011−255843A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133832(P2010−133832)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】