説明

熱応動スイッチ、定着装置及び画像形成装置

【課題】変位部材の復帰動作に伴う電極の損傷または変形を抑制する。
【解決手段】筐体の内部に対して凹状に前記筐体に保持され、温度変化に応じて前記筐体の内部に対して凸状に変位する変位部材と、前記筐体の内部に設けられた第1接点を有する第1電極と、前記変位部材と前記第1電極との間に設けられた第2接点を有し、前記変位部材側へ付勢された前記第1接点に前記第2接点が接触する第2電極と、前記変位部材と前記第2電極との間から前記第1電極へ延び設けられ、前記変位部材の凸状の変位により一端部が押されることで前記第1電極を押して前記第1接点を前記第2接点から離すと共に他端部が筐体外部へ突出し、該他端部が筐体外部から前記変位部材側へ押されることで前記第1電極を介さずに前記変位部材を押して凹状に復帰させる押し部材と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱応動スイッチ、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バイメタル15のスナップ動作によって接続端子10,11間の内部接続が遮断され、リセット軸9の挿入によって内部接続が復旧する手動復帰型サーモスタットTH1であって、バイメタル15のスナップ動作またはリセット軸9の挿入動作に応答して移動する可動接点3,4と、可動接点3,4に対面して固定配置される固定接点1a,2aとからなる開閉接点を2組備えて、バイメタル15がスナップ動作した場合には、開閉接点1a,3が開離される一方、リセット軸9が挿入された場合には開閉接点2a,4が開離され、リセット軸9が挿入されている限りその状態を維持するようになっている構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−198980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、変位部材の復帰動作に伴う電極の損傷または変形を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、筐体と、前記筐体の内部に対して凹状に前記筐体に保持され、温度変化に応じて前記筐体の内部に対して凸状に変位する変位部材と、前記筐体の内部に設けられた第1接点を有する第1電極と、前記変位部材と前記第1電極との間に設けられた第2接点を有し、前記変位部材側へ付勢された前記第1接点に前記第2接点が接触する第2電極と、前記変位部材と前記第2電極との間から前記第1電極へ延び設けられ、前記変位部材の凸状の変位により一端部が押されることで前記第1電極を押して前記第1接点を前記第2接点から離すと共に他端部が筐体外部へ突出し、該他端部が筐体外部から前記変位部材側へ押されることで前記第1電極を介さずに前記変位部材を押して凹状に復帰させる押し部材と、を備える熱応動スイッチである。
【0006】
請求項2の発明は、前記押し部材の前記変位部材側への移動を規制する規制部材を備える請求項1に記載の熱応動スイッチである。
【0007】
請求項3の発明は、記録媒体上の画像を加熱する加熱部材と、前記加熱部材へ給電するための回路と、前記第1電極及び第2電極が前記回路内に設けられ、前記変位部材が前記加熱部材から受ける放射熱による温度変化に応じて変位して前記第1接点と前記第2接点とが離れることで前記回路を遮断する請求項1又は2に記載の熱応動スイッチと、を備える、前記画像を前記記録媒体に定着させる定着装置である。
【0008】
請求項4の発明は、画像を記録媒体に形成する画像形成部と、前記画像形成部で形成された画像を記録媒体へ定着させる請求項3に記載の定着装置と、を備える画像形成装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1の構成によれば、本構成における押し部材を備えない構成に比べ、変位部材の復帰動作に伴う電極の損傷または変形を抑制できる。
【0010】
本発明の請求項2の構成によれば、本構成における規制部材を備えない構成に比べ、変位部材の復帰動作に伴う変位部材の損傷または変形を抑制できる。
【0011】
本発明の請求項3の構成によれば、本構成における熱応動スイッチを備えない構成に比べ、変位部材の復帰動作後においても、熱応動スイッチによる加熱部材の過熱防止が機能する。
【0012】
本発明の請求項4の構成によれば、本構成における定着装置を備えない構成に比べ、変位部材の復帰動作後においても、熱応動スイッチによる定着装置の過熱防止が機能する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置の構成を示す概略図である。
【図2】本実施形態に係る定着装置の構成を示す断面図である。
【図3】本実施形態に係るサーモスタットの外観を示す外観図である。
【図4】図4は、図3における4−4線断面図であり、(A)は、加熱ロール(筐体内部)の温度が、予め定められた温度(通常動作温度)の範囲内である場合のサーモスタットを示し、(B)は加熱ロール(筐体内部)の温度が予め定められた温度(通常動作温度)を超えた場合のサーモスタットを示す。
【図5】図4における5−5線断面図である。
【図6】押しピンが第1電極に差し通された構成を示す概略斜視図である。
【図7】バイメタルを復帰させた場合の図3における4−4線断面図である。
【図8】バイメタル復帰時における押しピンの押し込み量を説明するための説明図である。
【図9】押しピンの変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
(本実施形態に係る画像形成装置の構成)
まず、本実施形態に係る画像形成装置の構成を説明する。図1は、本実施形態に係る画像形成装置の構成を示す概略図である。なお、図中に示す矢印UPは、鉛直方向上方を示している。
【0015】
画像形成装置10は、図1に示すように、各構成部品が内部に収容される画像形成装置本体11を備えている。画像形成装置本体11の内部には、用紙等の記録媒体Pが収容される収容部12と、記録媒体Pに画像を形成する画像形成部14と、収容部12から画像形成部14へ記録媒体Pを搬送する搬送部16と、画像形成装置10の各部の動作を制御する制御部20と、画像形成装置10の各部に給電する給電部21と、が設けられている。また、画像形成装置本体11の上部には、画像形成部14によって画像が形成された記録媒体Pが排出される排出部18が設けられている。
【0016】
画像形成部14は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー画像を形成する画像形成ユニット22Y、22M、22C、22K(以下、22Y〜22Kと示す)と、画像形成ユニット22Y〜22Kで形成されたトナー画像が転写される中間転写ベルト24と、画像形成ユニット22Y〜22Kで形成されたトナー画像を中間転写ベルト24に転写する第1転写ロール26と、第1転写ロール26によって中間転写ベルト24に転写されたトナー画像を中間転写ベルト24から記録媒体Pへ転写する第2転写ロール28と、を備えている。なお、画像形成部14は、上記の構成に限られず、他の構成であっても良く、記録媒体Pに画像を形成するものであればよい。
【0017】
画像形成ユニット22Y〜22Kは、水平方向に対して傾斜した状態で、画像形成装置10の上下方向中央部に並んで配置されている。また、画像形成ユニット22Y〜22Kは、一方向(例えば、図1における時計回り方向)へ回転する感光体32をそれぞれ有している。なお、画像形成ユニット22Y〜22Kは、同様に構成されているので、図1において、画像形成ユニット22M、22C、22Kの各部の符号を省略している。
【0018】
各感光体32の周囲には、感光体32の回転方向上流側から順に、感光体32を帯電させる帯電装置の一例としての帯電ロール23と、帯電ロール23によって帯電した感光体32を露光して感光体32に静電潜像を形成する露光装置36と、露光装置36によって感光体32に形成された静電潜像を現像してトナー画像を形成する現像装置38と、感光体32に接触して感光体32に残留しているトナーを除去する除去部材40と、が設けられている。
【0019】
露光装置36は、制御部20から送られた画像信号に基づき静電潜像を形成するようになっている。制御部20から送られる画像信号としては、例えば、制御部20が外部装置から取得した画像信号がある。
【0020】
現像装置38は、感光体32へ現像剤を供給する現像剤供給体38Aと、現像剤供給体38Aへ付与される現像剤を攪拌しながら搬送する複数の搬送部材38Bと、を備えている。
【0021】
中間転写ベルト24は、環状に形成されると共に、画像形成ユニット22Y〜22Kの上側に配置されている。中間転写ベルト24の内周側には、中間転写ベルト24が巻き掛けられる巻掛ロール42・44が設けられている。中間転写ベルト24は、巻掛ロール42・44のいずれかが回転駆動することによって、感光体32と接触しながら一方向(例えば、図1における反時計回り方向)へ循環移動(回転)するようになっている。なお、巻掛ロール42は、第2転写ロール28に対向する対向ロールとされている。
【0022】
第1転写ロール26は、中間転写ベルト24を挟んで感光体32に対向している。第1転写ロール26と感光体32との間が、感光体32に形成されたトナー画像が中間転写ベルト24に転写される第1転写位置とされている。
【0023】
第2転写ロール28は、中間転写ベルト24を挟んで巻掛ロール42に対向している。第2転写ロール28と巻掛ロール42との間が、中間転写ベルト24に転写されたトナー画像が記録媒体Pに転写される第2転写位置とされている。
【0024】
搬送部16は、収容部12に収容された記録媒体Pを送り出す送出ロール46と、送出ロール46に送り出された記録媒体Pが搬送される搬送路48と、搬送路48に沿って配置され送出ロール46によって送り出された記録媒体Pを第2転写位置へ搬送する複数の搬送ロール50と、が設けられている。
【0025】
第2転写位置より搬送方向下流側には、画像形成部14によって記録媒体Pに形成されたトナー画像を記録媒体Pに定着させる定着装置60が設けられている。この定着装置60より搬送方向下流側には、トナー画像が定着された記録媒体Pを排出部18へ排出する排出ロール52が設けられている。なお、定着装置60の具体的な構成については後述する。
【0026】
次に、本実施形態に係る画像形成装置10における、記録媒体Pへ画像を形成する画像形成動作について説明する。
【0027】
本実施形態に係る画像形成装置10では、収容部12から送出ロール46によって送り出された記録媒体Pが、複数の搬送ロール50によって第2転写位置へ送り込まれる。
【0028】
一方、画像形成ユニット22Y〜22Kでは、帯電ロール23によって帯電した感光体32が、露光装置36によって露光されて感光体32に静電潜像が形成される。その静電潜像が現像装置38によって現像されて感光体32にトナー画像が形成される。画像形成ユニット22Y〜22Kで形成された各色のトナー画像は、第1転写位置にて中間転写ベルト24に重ねられて、カラー画像が形成される。そして、中間転写ベルト24に形成されたカラー画像が、第2転写位置にて記録媒体Pへ転写される。
【0029】
トナー画像が転写された記録媒体Pは、定着装置60へ搬送され、転写されたトナー画像が定着装置60により定着される。トナー画像が定着された記録媒体Pは、排出ロール52によって排出部18に排出される。以上のように、一連の画像形成動作が行われる。
【0030】
(本実施形態に係る定着装置60の構成)
次に、本実施形態に係る定着装置60の構成を説明する。図2は、本実施形態に係る定着装置60の構成を示す概略図である。なお、図中に示す矢印UPは、鉛直方向上方を示している。
【0031】
本実施形態に係る定着装置60は、図2に示すように、画像形成装置本体11(図1参照)に対して着脱可能に設けられ、各構成部品が内部に設けられる筐体62を備えている。筐体62の内部には、記録媒体上の画像を加熱する加熱部材の一例としての加熱ロール64と、加圧部材の一例としての加圧ベルト66と、が設けられている。
【0032】
加熱ロール64は、円筒状の円筒部材64Aと、円筒部材64Aの内部空間に設けられたハロゲンランプ等の加熱源64Bと、を備えて構成されている。円筒部材64Aは、アルミニウム・ステンレス等の金属材料により形成されている。
【0033】
加熱源64Bは、加熱ロール64(加熱源64B)へ給電するための回路の一例としての電気回路25によって、給電部21と電気的に接続されている。これにより、加熱源64Bは、給電部21から電気回路25を通じて給電されるように構成されている。
【0034】
加圧ベルト66は、加熱ロール64との間に記録媒体Pを挟んで回転し、該記録媒体Pを加圧しながら搬送する環状の搬送ベルトとして構成されている。
【0035】
加熱ロール64及び加圧ベルト66によって挟まれて搬送される記録媒体Pは、加熱ロール64によってトナーが加熱されると共に加圧ベルト66によってトナーが加圧されて、加熱ロール64と加圧ベルト66との接触領域において画像が定着されるようになっている。なお、図2においては、加熱ロール64・加圧ベルト66によって、記録媒体Pが搬送される搬送経路が二点鎖線で示されている。
【0036】
定着装置60の筐体62には、熱応動スイッチの一例としてのサーモスタット70が設けられている。具体的には、サーモスタット70は、後述のバイメタル76(図3参照)を加熱ロール64側に向けて、加熱ロール64に対して予め定められた隙間をあけて、定着装置60の筐体62に設けられている。サーモスタット70は、図1に示すように、電気回路25内に設けられており、加熱ロール64(筐体62内部)の温度が予め定められた温度になった場合に電気回路25を遮断し、給電部21から加熱源64Bへの給電を停止するように構成されている。
【0037】
(本実施形態に係るサーモスタット70の具体的な構成)
次に、本実施形態に係るサーモスタット70の具体的な構成を説明する。図3〜5は、サーモスタット70の構成を示す概略図である。
【0038】
本実施形態に係るサーモスタット70は、図2及び図3に示すように、定着装置60の筐体62に形成された挿入孔62Aに挿入される装置本体71を備えている。装置本体71は、挿入孔62Aに挿入されることにより、定着装置60の筐体62に取り付けられる。
【0039】
サーモスタット70の装置本体71は、図3及び図4に示すように、一端部(図4における上端部)が開放された開放部72A(図4参照)を有する円筒状の筐体72と、筐体72の開放部72Aに設けられた保持部材の一例としてのキャップ74と、筐体72に設けられた第1電極81及び第2電極82と、を備えている。
【0040】
筐体72の底壁72Cには、筐体72の平面視における中央部(中心部)において筐体72の軸方向へ貫通し、後述の押しピン78が挿入される挿入孔72Dが、形成されている。筐体72は、絶縁性を有する材料で構成されている。絶縁性を有する材料としては、例えば、セラミック、フェノール樹脂、ポリフェニレンスルフィルド等が用いられる。なお、筐体72の形状、材料は、上記に限られるものではない。
【0041】
筐体72の開放部72Aには、温度変化に応じて変位する変位部材の一例としてのバイメタル76が設けられている。バイメタル76は、皿バネ状に形成(絞り形成)されており、キャップ74によって、筐体72の内部に対して凹状(図4(A)に示す状態)に筐体72へ保持されている。また、バイメタル76は、線膨張率の異なる2種類の金属を接合することによって構成されており、予め定められた温度になると、筐体72の内部に対して凸状(図4(B)に示す状態)に変位(反転)するようにされている。
【0042】
キャップ74の平面視における中央部には、図3に示すように、バイメタル76の表面を外部に露出される円形状の開口部74Aが形成されている。キャップ74は、筐体72に対してカシメられることにより、筐体72に対して固定されている。
【0043】
第1電極81は、図4に示すように、筐体72の径方向(図4における矢印X方向)へ長さを有すると共に、耐熱性及び導電性を有する板状電極で構成されている。第1電極81の一端部81Aは、筐体72内部において、筐体72の平面視における中央部よりも径方向外側に配置されている。第1電極81は、筐体72の平面視における中央部を通る長手方向中間部で屈曲すると共に他端部81Bが筐体72の外部へ引き出されている。
【0044】
第1電極81は、筐体72の内部に配置された一端部81Aに第1接点91を有している。第1接点91は、バイメタル76側(図4における矢印Y方向)へ向けられている。第1電極81は、後述の第2接点92との接触状態で第1接点91がバイメタル76側(図4における矢印Y方向)へ付勢されている。具体的には、第1電極81は、板バネで構成されており、自らの弾性力により、バイメタル76側(図4における矢印Y方向)へ付勢されている。
【0045】
また、第1電極81には、筐体72の平面視における中央部(中心部)において筐体72の軸方向へ貫通し、後述の押しピン78が挿入される挿入孔81Cが、形成されている(図6参照)。
【0046】
第2電極82は、筐体72の径方向(図4における矢印X方向)へ長さを有すると共に、耐熱性及び導電性を有する板状電極で構成されている。第2電極82は、一端部82Aが筐体72内部の第1接点91とバイメタル76との間に配置され、長手方向中間部で屈曲すると共に他端部82Bが筐体72の外部へ引き出されている。
【0047】
第2電極82は、バイメタル76と第1接点91との間に配置された一端部82Aに第2接点92を有している。第2接点92は、第1接点91(図4における−Y方向)へ向けられており、バイメタル76側(図4における矢印Y方向)へ付勢された第1接点91と接触するようになっている。
【0048】
従って、第1電極81は、付勢力に対抗して第1接点91が第2接点92から離れる側(図4における−Y方向)への対抗力が作用することで、第1接点91が第2接点92と離れ、その対抗力が作用しなくなることで、第1接点91が第2接点92と接触するようになっている。
【0049】
なお、耐熱性、導電性及び弾性(ばね性)を有する部材(電極)としては、例えば、ステンレス、銅、リン青銅等からなる部材、又はこれらの部材をスズ、ニッケル、銀若しくは金等でめっきした部材が用いられる。
【0050】
さらに、サーモスタット70は、バイメタル76と第2電極82との間から第1電極81を越えて延び設けられた押し部材の一例の押しピン78を備えている。この押しピン78は、筐体72の軸方向へ(図4における矢印Y方向)へ長さを有しており、棒状(例えば、円柱状)に形成されている。
【0051】
また、押しピン78は、図5に示すように、筐体72の平面視における中央部(中心部)に配置されており、いずれの部材へも固定されていない。押しピン78には、後述の第1ピンガイド80と第1電極81との間の位置に、図6に示すように、押しピン78の径方向外側に円盤状に張り出し、後述の第1ピンガイド80の挿入孔80A及び第1電極81の挿入孔81Cよりも大径とされたフランジ部88が設けられている。
【0052】
この筐体72の中央部には、図5に示すように、押しピン78のバイメタル76側(図4における矢印Y方向)への移動を規制する規制部材の一例としての第1ピンガイド80が設けられている。第1ピンガイド80は、図4に示すように、筐体72の軸方向(図4における矢印Y方向)へ貫通し押しピン78が挿入される挿入孔80Aを内部に有する円筒状に形成されている。
【0053】
挿入孔80Aに挿入された押しピン78がバイメタル76側(図4における矢印Y方向)へ移動すると、フランジ部88が、第1ピンガイド80の第1電極81側の面(図4における下面)に当たり、押しピン78のバイメタル76側(図4における矢印Y方向)への移動が、予め定められた量で規制されるようになっている。
【0054】
第1ピンガイド80では、押しピン78が第1ピンガイド86に挿入された状態において、第1ピンガイド80の挿入孔80Aに沿って筐体72の軸方向(図4における矢印Y方向)への移動が許容されると共に、第1ピンガイド80の内壁に当ることで筐体72の径方向(図4における矢印X方向)への移動が規制されるようになっている。
【0055】
第1ピンガイド80には、第1ピンガイド80を支持する支持部84が設けられている。具体的には、支持部84は、図5に示すように、第1ピンガイド80を挟んで第1ピンガイド80の径方向外側に一対で設けられている。
【0056】
一対の支持部84は、それぞれ、第1電極81の長さ方向と直交する方向であってかつ筐体72の径方向へ、第1ピンガイド80の外周面から筐体72の側壁72Bの内周面へ延びて設けられている。一対の支持部84の一端部が、それぞれ、第1ピンガイド80の外周面に固定され、一対の支持部84の他端部が、筐体72の側壁72Bの内周面に固定されている。これにより、第1ピンガイド80が支持部84に支持されている。
【0057】
図4に示すように、筐体72の内部であって、かつ第1ピンガイド80とバイメタル76との間には、筐体72の軸方向(図4における矢印Y方向)へ押しピン78を案内する第2ピンガイド86が設けられている。第2ピンガイド86は、筐体72の軸方向(図4における矢印Y方向)へ貫通し押しピン78が挿入される挿入孔86Aを内部に有する円板状に形成されている。
【0058】
ここで、本実施形態では、押しピン78は、筐体72の内部に対して凸状(図4(B)に示す状態)に変位するバイメタル76によって第1電極81側(図4における矢印−Y方向)へ押される部分としての一端部78Aが、バイメタル76と第2ピンガイド86との間に配置されている。
【0059】
また、押しピン78は、一端部78Aが第1電極81側へ押されることで、第1電極81を筐体72の底壁72C側(図4における矢印−Y方向)へ押す部分としてのフランジ部88が、第1ピンガイド80と第1電極81との間に配置されている。
【0060】
押しピン78は、一端部78Aが第1電極81側へ押されることで、筐体72の底壁72Cから外側(図4における矢印−Y方向)へ突出する部分としての他端部78Bが、筐体72の底壁72Cの外面よりも筐体72内部側に配置されている。
【0061】
また、押しピン78は、他端部78Bが筐体72外部からバイメタル76側(図4における矢印Y方向)へ押されることで、押しピン78の第1電極81よりもバイメタル76側部分(フランジ部88から一端部78Aまでの部分)が、第1電極81を介さずにバイメタル76側(図4における矢印Y方向)へ移動するようになっている。これにより、図7に示すように、押しピン78は、他端部78Bが筐体72外部からバイメタル76側へ押されることで第1電極81を介さずに、一端部78Aでバイメタル76を押して凹状に復帰させるようになっている。このとき、フランジ部88が、第1ピンガイド80の第1電極81側の面(図4における下面)に当たり、押しピン78のバイメタル76側(図4における矢印Y方向)への移動が規制され、押しピン78の一端部78Aによるバイメタル76の押し込み量が規制されるようになっている。
【0062】
具体的には、図8に示すように、復帰後(又は反転前)の筐体72内部に対する凹状態におけるバイメタル76の押しピン78側の面76Aを超えてバイメタル76を矢印Y方向側へ押さない位置であって、バイメタル76がその弾性力により復帰可能な押し位置(例えば、バイメタル76の保持点A同士を結ぶ線Bを矢印Y方向側へ超える位置)の範囲(図8に示すLの範囲)でバイメタル76を押すように、第1ピンガイド80によって、押しピン78の一端部78Aによるバイメタル76の押し込み量が規制されるようになっている。
【0063】
(本実施形態に係る作用)
次に、本実施形態に係る作用を説明する。
【0064】
本実施形態の構成によれば、加熱ロール64(筐体62内部)の温度が、予め定められた温度(通常動作温度)の範囲内である場合には、図4(A)に示すように、バイメタル76は、筐体72の内部に対して凹状とされている凹状態となっている。
【0065】
この場合では、第1電極81は、その付勢力に対抗する対抗力が作用していない無負荷状態とされ、第1接点91が、第2電極82の第2接点92と接触する。これにより、電気回路25が遮断されず、給電部21から電気回路25を通じて加熱源64Bへ給電がなされる。
【0066】
ここで、定着装置60において、加熱ロール64(筐体62内部)の温度が、予め定められた温度(通常動作温度)を超えて高温になると、図4(B)に示すように、バイメタル76が筐体72の内部に対して凸状に変位(反転)する。
【0067】
バイメタル76が筐体72の外部に対して凸状に変位(反転)すると、押しピン78は、一端部78Aがバイメタル76によって第1電極81側(図4における矢印−Y方向)へ押されて、第1電極81側へ移動する。これにより、フランジ部88が、第1電極81をその付勢力に対抗して筐体72の底壁72C側(図4における矢印−Y方向)へ押し、第1電極81は、第1接点91が底壁72C側へ移動して、第2接点92と第1接点91とが離れる。これにより、電気回路25が遮断され、給電部21から加熱源64Bへの給電が停止される。
【0068】
図7に示すように、バイメタル76を復帰させる場合において、押しピン78の他端部78Bが筐体72の外部(底壁72Cの外側(図7における矢印−Y方向))からバイメタル76側(図7における矢印Y方向)へ押されると、押しピン78は、第1電極81を介さずにバイメタル76側(図7における矢印Y方向)へ移動する。
【0069】
これにより、押しピン78は、第1電極81をバイメタル76側に押すことなく、一端部78Aでバイメタル76を押して凹状に復帰させるようになっている。このとき、フランジ部88が、第1ピンガイド80の第1電極81側の面(図7における下面)に当たり、押しピン78のバイメタル76側(図7における矢印Y方向)への移動が規制され、押しピン78の一端部78Aによるバイメタル76の押し込み量が規制される。
【0070】
このように、本実施形態では、バイメタル76の復帰の際に、第1電極81が押しピン78によって押されないので、第1電極81の損傷または変形が抑制される。また、バイメタル76の復帰の際に、第1ピンガイド80によって、バイメタル76に対する押しピン78の押し込み量が規制されるので、バイメタル76の損傷または変形が抑制される。
【0071】
なお、本実施形態では、押しピン78が挿入される挿入孔81Aが第1電極81に形成されていたが、これに限られず、挿入孔81Aは、押しピン78が通される切り欠きであってもよい。
【0072】
また、押しピン78は、図9に示すように構成されていてもよい。図9に示す押しピン78は、一端部78Aを含み筐体72の軸方向(矢印Y方向)へ延びる第1軸部781と、他端部78Bを含み筐体72の軸方向(矢印−Y方向)へ延びる第2軸部782と、第1軸部781から第1電極81を迂回して第2軸部782に達する迂回部783と、第1軸部781から迂回部783とは反対側(矢印Z方向)へ第1電極81を迂回して第2軸部782に達する迂回部784と、を備えている。
【0073】
迂回部783は、第1軸部781に対する接続部分781Aから矢印−Z方向へ延びる第1辺部783Aと、第1辺部783Aの−Z方向側端部から矢印−Y方向へ延びる第2辺部783Bと、第2辺部783Bの矢印−Y方向側端部から矢印Z方向へ延びて第2軸部782に接続される第3辺部783Cと、を備えて構成されている。
【0074】
迂回部784は、第1軸部781に対する接続部分781Aから矢印Z方向へ延びる第1辺部784Aと、第1辺部784AのZ方向側端部から矢印−Y方向へ延びる第2辺部784Bと、第2辺部784Bの矢印−Y方向側端部から矢印−Z方向へ延びて第2軸部782に接続される第3辺部784Cと、を備えて構成されている。
【0075】
この構成では、迂回部783及び迂回部784と第1軸部781との接続部分781A、迂回部783の第1辺部783A、迂回部784の第1辺部784Aが、前述のフランジ部88と同様に機能する。すなわち、接続部分781A、迂回部783の第1辺部783A及び迂回部784の第1辺部784Aが、一端部78Aが第1電極81側へ押されることで、第1電極81を筐体72の底壁72C側(矢印−Y方向)へ押す部分として機能する。
【0076】
また、押しピン78は、他端部78Bが筐体72外部からバイメタル76側(図9における矢印Y方向)へ押された場合に、迂回部783及び迂回部784と第2軸部782との接続部分782A、迂回部783の第3辺部783C及び迂回部784の第3辺部784Cが、第1電極81を押さないように、迂回部783の第2辺部783B及び迂回部784の第2辺部784Bの長さが設定されている。
【0077】
従って、押しピン78は、他端部78Bが筐体72外部からバイメタル76側(図9における矢印Y方向)へ押されることで、押しピン78の第1電極81よりもバイメタル76側部分(フランジ部88から一端部78Aまでの部分)が、第1電極81を介さずにバイメタル76側(図9における矢印Y方向)へ移動するようになっている。
【0078】
これにより、押しピン78は、他端部78Bが筐体72外部からバイメタル76側へ押されることで第1電極81を介さずに、一端部78Aでバイメタル76を押して凹状に復帰させるようになっている。このとき、迂回部783の第1辺部783A及び迂回部784の第1辺部784Aが、第1ピンガイド80の第1電極81側の面に当たり、押しピン78のバイメタル76側への移動が規制され、押しピン78の一端部78Aによるバイメタル76の押し込み量が規制されるようになっている。
【0079】
なお、図9に示す押しピン78の構成においては、迂回部783及び迂回部784は、少なくとも一方が設けられていればよい。
【0080】
本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、種々の変形、変更、改良が可能である。例えば、上記に示した変形例は、適宜、複数を組み合わせて構成しても良い。
【符号の説明】
【0081】
10 画像形成装置
14 画像形成部
25 電気回路(回路の一例)
60 定着装置
64 加熱ロール(加熱部材の一例)
70 サーモスタット(熱応動スイッチの一例)
72 筐体
76 バイメタル(変位部材の一例)
78 押しピン(押し部材の一例)
80 第1ピンガイド(規制部材の一例)
81 第1電極
82 第2電極
91 第1接点
92 第2接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体の内部に対して凹状に前記筐体に保持され、温度変化に応じて前記筐体の内部に対して凸状に変位する変位部材と、
前記筐体の内部に設けられた第1接点を有する第1電極と、
前記変位部材と前記第1電極との間に設けられた第2接点を有し、前記変位部材側へ付勢された前記第1接点に前記第2接点が接触する第2電極と、
前記変位部材と前記第2電極との間から前記第1電極へ延び設けられ、前記変位部材の凸状の変位により一端部が押されることで前記第1電極を押して前記第1接点を前記第2接点から離すと共に他端部が筐体外部へ突出し、該他端部が筐体外部から前記変位部材側へ押されることで前記第1電極を介さずに前記変位部材を押して凹状に復帰させる押し部材と、
を備える熱応動スイッチ。
【請求項2】
前記押し部材の前記変位部材側への移動を規制する規制部材を備える請求項1に記載の熱応動スイッチ。
【請求項3】
記録媒体上の画像を加熱する加熱部材と、
前記加熱部材へ給電するための回路と、
前記第1電極及び第2電極が前記回路内に設けられ、前記変位部材が前記加熱部材から受ける放射熱による温度変化に応じて変位して前記第1接点と前記第2接点とが離れることで前記回路を遮断する請求項1又は2に記載の熱応動スイッチと、
を備える、前記画像を前記記録媒体に定着させる定着装置。
【請求項4】
画像を記録媒体に形成する画像形成部と、
前記画像形成部で形成された画像を記録媒体へ定着させる請求項3に記載の定着装置と、
を備える画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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