説明

熱感知器

【課題】従来の熱感知器では、警報を行うために圧電振動板から警報音を出すとき、温度測定部から圧電振動板を切り離して駆動部に接続する。つまり、温度測定部からセンサである圧電振動板が切り離されているため、警報を行っている間は温度測定をすることができなかった。これを解決するために、圧電振動板により警報音を鳴動中においても、圧電振動板の誘電率に基づき温度測定して火災を判定できる熱感知器を得る。
【解決手段】制御部16と、制御部16の制御によりトランジスタ12のベースに電圧パルスを出力する振動制御部13と、トランジスタ12のスイッチングにより電圧がオンオフされることで振動して警報音を鳴動する圧電振動板5と、その両端に接続された温度測定部9を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災を検出する熱感知器に関するものであり、特に圧電振動板の誘電率に基づき温度を測定して火災を検出する熱感知器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧電振動板を温度測定部に接続して圧電振動板の誘電率に基づき温度を測定して、測定した温度が火災閾値を超え火災と判断すると、圧電振動板を振動させて警報音を鳴動する熱感知器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−15777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の熱感知器では、警報を行うために圧電振動板から警報音を出すとき、温度測定部から圧電振動板を切り離して駆動部に接続する。つまり、温度測定部からセンサである圧電振動板が切り離されているため、警報を行っている間は温度測定をすることができなかった。そのため、例えば、調理による一時的な熱によって、火災と判定して警報音を出してしまうと、人の手により警報を解除しない限り、通常の監視状態に戻らないため煩雑であった。また、たとえば、熱感知器の一部の機能が故障して故障を知らせるための警報音を鳴動するような場合にも、警報を行っている間は、温度測定部から圧電振動板が切り離されているため、温度を検出することができず、火災が発生しても火災を検出できない(失報する)可能性があった。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、圧電振動板により警報音を出している間も、圧電振動板の誘電率に基づき温度の検出を継続する熱感知器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係わる熱感知器は、圧電振動板と、圧電振動板の誘電率に基づいて監視領域の温度を測定する温度測定部と、警報音を発生させるために圧電振動板に電圧パルスを印加するための振動制御部とを備えた熱感知器において、温度測定部は、振動制御部により、圧電振動板に電圧パルスを印加したときに、圧電振動板の両端電圧が所定の電圧に達するまでの時間を測定することにより、圧電振動板の誘電率を判定して温度を測定するものである。
【0007】
本発明に係わる熱感知器は、圧電振動板に電圧パルスを印加したときに、圧電振動板の両端電圧が基準の電圧に達してから、所定の電圧に達するまでの時間を測定することにより、前記圧電振動板の誘電率を判定して温度を測定するものである。
【0008】
本発明に係わる熱感知器は、圧電振動板に電圧パルスを所定の幅以上で印加したときに、温度を測定するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係わる熱感知器は、圧電振動板と、圧電振動板の誘電率に基づいて監視領域の温度を測定する温度測定部と、警報音を発生させるために圧電振動板に電圧パルスを印加するための振動制御部とを備えた熱感知器において、温度測定部は、振動制御部により、圧電振動板に電圧パルスを印加したときに、圧電振動板の両端電圧が所定の電圧に達するまでの時間を測定することにより、圧電振動板の誘電率を判定して温度を測定するため、警報音を鳴動している場合にも、圧電振動板の誘電率に基づく火災検出を継続できるので、実際の火災ではない一時的な火災と同様な状態を検出して警報音を鳴動したとしても、監視環境が平常状態な状態にもどると、警報音を停止することができるので人の手を煩わせない。
【0010】
また、火災以外の要因で、警報音を鳴動するとき、例えば、電池電圧が低下したことによる故障を知らせる警報音を鳴動している間も圧電振動板の誘電率に基づく火災検出を継続できるため、火災以外の要因の警報音を鳴動している間も失報することはない。
【0011】
また、本発明に係わる熱感知器は、圧電振動板に電圧パルスを印加したときに、圧電振動板の両端電圧が基準の電圧に達してから、所定の電圧に達するまでの時間を測定することにより、前記圧電振動板の誘電率を判定して温度を測定するため、温度が高くなったり、圧電振動板を様々な周波数で振動させ警報音を発したりして、圧電振動板の両端電圧に電圧が残る場合にも、正確に圧電振動板の誘電率に基づく火災検出を行うことができる。
【0012】
また、本発明に係わる熱感知器は、圧電振動板に電圧パルスを所定の幅以上で印加したときに、温度を測定するため、圧電振動板を様々な周波数で振動させ警報音を発する場合でも、正確に圧電振動板の誘電率に基づき火災検出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態1に係わる熱感知器の斜視図である。
【図2】実施の形態1に係わる熱感知器のブロック図である。
【図3】実施の形態1に係わる振動制御部が出力する電圧パルスと圧電振動板の両端電圧の波形の一例を示す図である。
【図4】実施の形態1に係わる単一の音色で警報音が鳴動するときの振動制御部が出力する電圧パルスと圧電振動板の両端電圧の波形の一例を示す図である。
【図5】実施の形態1に係わる熱感知器のブロック図であり、圧電振動板への電圧の印加をスイッチングするためにPNP型のトランジスタを用いた場合のブロック図である。
【図6】実施の形態2に係わる振動制御部が出力する電圧パルスと圧電振動板の両端電圧の波形の一例を示す図である。
【図7】実施の形態2に係わる単一の音色で警報音が鳴動するときの振動制御部が出力する電圧パルスと圧電振動板の両端電圧の波形の一例を示す図である。
【図8】実施の形態3に係わる複数の音色で警報音が鳴動するときの振動制御部が出力する電圧パルスと圧電振動板の両端電圧の波形の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施の形態1について図1〜5に基づいて説明する。
(熱感知器の構成)
図1は、本実施の形態1に係わる熱感知器1の斜視図であり、この熱感知器1は、円筒形の周壁2と周壁2の一端側に蓋をするように覆う円盤状の天面3を有するカバー4と、カバー4の天面3に取り付けられた円盤状の圧電振動板5と、カバー4の周壁2の一端側と逆の他端側に蓋をするように挿入される図示しない円盤状の本体6と、カバー4の内部に位置するように本体6に取り付けられ電子部品等による回路を搭載する図示しないプリント基板7によって構成されている。圧電振動板5は、配線により、プリント基板7に搭載されている回路へ接続される。感知器ベース8は、火災を監視する部屋の壁面または天井面にネジなどで取り付けられる。この感知器ベース8に熱感知器1を差し込み設置する。
【0015】
(ブロック図構成)
図2は、本実施の形態1に係わるブロック図であり、圧電振動板5とプリント基板7に搭載される電子部品等による回路で構成される。圧電振動板5は、金属板に圧電セラミックを接着して構成される。圧電振動板5の金属板と圧電セラミック(以後、両端と呼ぶ)に電圧を印加すると圧電セラミックは伸縮するが、金属板は伸縮しないため、圧電振動板5が歪む。この状態で圧電振動板5の両端への電圧の印加を解除すると、圧電セラミックは元の大きさに戻るため、圧電振動板5の歪みが無くなる、これを繰り返すことにより、圧電振動板5は振動して、音波を発生して警報音を発生させる。
【0016】
圧電振動板5の両端は、温度測定部9のA端子とB端子に接続されている。また、圧電振動板5には、圧電振動板5の放電用の抵抗10が並列に接続されている。
【0017】
温度測定部9のB端子には、抵抗11が接続され、抵抗11の他端には、NPN型のトランジスタ12のコレクタが接続されている。トランジスタ12のベースには、警報音を出す時にトランジスタ12をオンさせる電圧パルスを出力する振動制御部13が接続されている。トランジスタ12のエミッタと温度測定部9のA端子の間には、トランジスタ12のエミッタ側が負電極となるように電池14が接続されている。さらに、電池14の正電極は、電池監視部15に接続されていて、電池14の電圧を監視している。
【0018】
温度測定部9は、圧電振動板5の両端電圧の測定を行い、温度を測定する。
【0019】
制御部16は、温度測定部9と、振動制御部13と、電池監視部15とそれぞれ接続されていて、温度測定部9が測定した温度に基づき火災を判定したり、電池監視部15からの電池14の電池電圧異常情報に基づき異常を判定したり、振動制御部13への制御を行う。
【0020】
(火災の検出方法)
図3は本実施の形態1に係わる通常の監視状態のときに振動制御部13が出力する電圧パルスと圧電振動板5の両端電圧の波形の一例を示す図であり、火災検出のための温度測定の方法は、以下の通りである。
【0021】
制御部16の制御により、振動制御部13は、図3(a)で示される電圧が所定の時間継続する電圧パルスをトランジスタ12のベースに出力する。トランジスタ12は、NPN型であるため、電圧パルスがベースに入力されたときオンして、電圧パルスが入力していないときにオフしている。トランジスタ12がオンすると、抵抗11を介して、圧電振動板5に電池14により電圧が印加される。電圧が印加されると、圧電振動板5は、歪むとともに、充電され、圧電振動板5の両端の電圧波形(充電波形)は、図3(b)に示す通り時間とともに上昇する。
【0022】
温度測定部9は、A端子とB端子の電位差により圧電振動板5の両端電圧の測定を行い、振動制御部13が電圧パルスを出力してから、その両端電圧が所定の電圧Vに変化するまでの充電時間t1を測定する。測定した充電時間t1により、温度測定部9は、圧電振動板5の誘電率を判定して、その誘電率に基づき温度を測定し、制御部16に測定した温度を通知する。
【0023】
温度測定部9としては、A端子とB端子の電位差をA/Dコンバータでデジタル値に変換して、そのデジタル値が所定の電圧に相当するデジタル値になるまでの時間を測定しても良いし、A端子とB端子の電位差をコンパレータ等の電子回路によって所定の電圧と比較することで所定の電圧を超えるまでの時間を測定しても良い。
【0024】
ここで、図3(c)に示される波形は、図3(b)よりも温度が高いときの圧電振動板5の充電波形である。図3(c)においては、圧電振動板5の両端電圧が電圧Vに変化するまでの充電時間t2は、充電時間t1よりも長い時間となっている。これは温度が高くなるほど圧電振動板5の誘電率が大きくなり、静電容量が大きくなるためである。そのため、温度が高くなると、充電により多くの電荷が必要となり、電圧Vまでの充電時間が長くなる。
【0025】
上記のように温度測定行った後に、電圧パルスが終了すると、トランジスタ12はオフするため、圧電振動板5に電圧が印加されなくなる。電圧が印加されなくなると、圧電振動板5は歪みが戻るとともに、充電されていた電荷が抵抗10により放電される。
【0026】
温度測定部9は、上記のように測定した温度を制御部16に通知し、制御部16は、測定した温度が所定の温度を超えたときに火災を判定する。
【0027】
なお、温度測定は連続して行うと、圧電振動板5が振動を繰り返して音が発生してしまうので、警報音を鳴動していない通常監視状態おいては、音が発生しない程度の間隔(例えば人間の耳の可聴音領域外である20Hz以下となる電圧パルスの幅1秒、電圧パルス間1秒で行う。)ので温度測定を行うようにしている。
【0028】
(警報音の鳴動方法)
制御部16は、温度測定の結果が所定の温度以上の場合に、火災と判断して警報音を鳴動するための制御を行う。
【0029】
図4は、本実施の形態1に係わる単一の音色で警報音が鳴動するときの振動制御部が出力する電圧パルスと圧電振動板の両端電圧の波形の一例を示す図であり、警報音を鳴動する方法は以下の通りである。
【0030】
制御部16の制御により、振動制御部13は、図4(a)で示されるように電圧パルスを連続してトランジスタ12のベースに出力する。トランジスタ12は、前述の温度測定の方法と同様に、電圧パルスがベースに入力されたときオンする。トランジスタ12がオンすると、抵抗11を介して、圧電振動板5に電池14により電圧が印加され、圧電振動板5は、歪むとともに充電される。続いて電圧パルスが終了すると、トランジスタ12はオフして、圧電振動板5に電圧が印加されなくなる。電圧が印加されなくなると圧電振動板5の歪みが無くなるとともに、充電されていた電荷が抵抗10により放電される。振動制御部13は、電圧パルスを連続して出力するため、圧電振動板5は、歪む/元に戻るを繰り返して振動を繰り返すことで、周囲の空気を振動させて音を発生させる。これにより、熱感知器1は警報音を鳴動する。
【0031】
(警報音の鳴動中の火災の判定方法)
単一の音色で警報音を発生しているときの圧電振動板5の両端の充電波形は、図4(b)に示す通りであり、図4(a)の電圧パルスによりトランジスタ12がスイッチングし、電池14から圧電振動板5に電圧の印加/印加解除が繰り返され、図3(b)で示した充電波形と同様の充電波形が繰り返されている。
【0032】
警報音を鳴動中の温度測定は、前述の温度測定の方法と同様であり、警報音を発生させるために振動制御部13が図4(a)で示される電圧パルスをトランジスタ12のベースに出力したときに、温度測定部9は、電圧パルスを出力してから、圧電振動板5の両端電圧が所定の電圧Vに変化するまでの時間t3を測定する。測定した充電時間t3により、温度測定部9は、圧電振動板5の誘電率を判定して、その誘電率に基づき、温度を測定する。
【0033】
温度の測定は、電圧パルスのたびに行っても良いし、所定の間隔で行っても良い。
【0034】
制御部16は、測定した温度が所定の温度を超えており、火災と判定し続けるときには、振動制御部13を制御し続けて、警報音の鳴動を継続する。一方、温度測定の結果、測定した充電時間t4に基づく温度が所定の温度を下回り、火災と判定しなくなると、警報音を停止するために制御部16は、振動制御部13への制御を停止して、通常の監視状態に戻る。
【0035】
上記のように、警報音を鳴動している場合にも、圧電振動板の誘電率に基づく火災検出を継続できるので、実際の火災ではない一時的な火災と同様な状態を検出して警報音を鳴動したとしても、監視環境が平常状態な状態にもどると、警報音を停止することができるので人の手を煩わせることがない。
【0036】
熱感知器1は、火災を検出するほかに、自己の状態を監視していて、その一例として電池を監視している。電池14の電圧が所定の電圧を下回ったとき、電池監視部15が電池電圧異常として電池電圧異常信号を制御部16に出力する。電池電圧異常信号を受けた制御部16は、振動制御部13を制御して、警報音を鳴動させる。電池電圧異常により警報音を鳴動中も、火災時の警報音の鳴動中と同様に火災検出を行う。
【0037】
そのため、火災以外の要因で、警報音を鳴動している間も圧電振動板の誘電率に基づく火災検出を継続できるため、火災以外の要因の警報音を出力している間も火災を逃すことはない。
【0038】
なお、本実施の形態1では、トランジスタ12をNPN型のトランジスタで構成する例を示したが、PNP型のトランジスタで構成することもできる。
【0039】
図5は、トランジスタ12AとしてPNP型のトランジスタを用いた場合の熱感知器1のブロック図である。
【0040】
図5に示すように、圧電振動板5の両端は、温度測定部9のA端子とB端子に接続されている。また、圧電振動板5には、圧電振動板5の放電用の抵抗10が並列に接続されている。温度測定部9のA端子には、抵抗11が接続され、抵抗11の他端には、PNP型のトランジスタ12Aのコレクタが接続されている。トランジスタ12Aのベースには、振動制御部13が接続されている。トランジスタ12Aのエミッタと温度測定部9のB端子の間には、トランジスタ12Aのエミッタ側が正電極となるように電池14が接続されている。さらに、電池14の正電極は、電池監視部15に接続されている。制御部16は、温度測定部9と、振動制御部13と、電池監視部15とそれぞれ接続されている。
【0041】
NPN型のトランジスタ12のときと異なる点としては、トランジスタ12AはPNP型であるため、振動制御部13から電圧パルスがベースに入力されたときにオフして、電圧パルスがないときにオンすることである。
【0042】
そのため、PNP型のトランジスタを用いる場合は、温度測定および警報音を鳴動するときに振動制御部13の電圧パルスの出力電圧を反転させることで、NPN型のトランジスタを用いた場合と同じ効果を得ることができる。
【0043】
実施の形態2
前述の実施の形態1では、誘電率を判定して温度を測定するために、振動制御部13が電圧パルスを出力してから圧電振動板5の両端電圧が所定の電圧に変化するまでの充電時間を測定した。本実施の形態2では、圧電振動板5の両端電圧の充電時間の測定を基準の電圧から所定の電圧に変化するまでの時間を測定することで行う。なお、本実施の形態2では、前述の実施の形態1との相違点を中心に説明し、実施の形態1と同一又は対応する構成要素には同一の符号を付す。
【0044】
図6は、本実施の形態2に係わる振動制御部13が出力する電圧パルスと圧電振動板5の両端電圧の波形の一例を示す図であり、火災検出のために温度測定の方法は、次の通りである。
【0045】
制御部16の制御により、振動制御部13は、図6(a)で示される電圧パルスをトランジスタ12のベースに出力する。トランジスタ12は、電圧パルスがベースに入力されたときオンする。トランジスタ12がオンすると、抵抗11を介して、圧電振動板5に電池14により電圧が印加される。電圧が印加されると、圧電振動板5は、歪むとともに、充電され圧電振動板5の両端の電圧が図6(b)に示す通り時間とともに上昇する。
【0046】
温度測定部9は、A端子とB端子の電位差により圧電振動板5の両端電圧の測定を行い、振動制御部13が電圧パルスを出力してから、その両端電圧が基準の電圧である電圧V1に達してから所定の電圧である電圧V2に変化するまでの充電時間t5を測定する。測定した充電時間t5により、温度測定部9は、圧電振動板5の誘電率を判定して、その誘電率に基づき、温度を測定する。
【0047】
図7は、本実施の形態2に係わる単一の音色で警報音が鳴動するときの振動制御部13が出力する電圧パルスと、圧電振動板5の両端電圧の波形の一例を示す図であり、特に、温度が高くなり、圧電振動板5の誘電率が増加して静電容量が増加したときなどの波形である。図7(a)は、振動制御部13が、出力する電圧パルス波形を示し、図7(b)は、図7(a)の電圧パルスによってトランジスタ12がスイッチングして、圧電振動板5に電池14から電圧が印加/印加解除したときの充電波形を示している。
【0048】
この例では、圧電振動板5の静電容量が増加すると、電圧パルスが終了して圧電振動板5が放電したとしても、図7(b)のように両端電圧がVxやVyなどのように電圧が残り0になるとは限らない。
【0049】
このような場合は、測定開始時の両端の電圧が測定毎に異なるため、実施の形態1と同様に、所定の電圧V2になるまでの充電時間を測定してしまうと、例えば、あるときは(V2−Vx)であり、あるときは(V2−Vy)の電圧分の充電にかかる時間を測定してしまう。そのため、測定している温度が同じであっても、異なる電圧の上昇にかかる時間を測定するので正確な誘電率が判定できないため、正確な温度が測定できない。
【0050】
それに対して、基準の電圧V1に達してから所定の電圧V2に変化するまでの時間を測定すれば、毎回同じだけの電圧の上昇にかかる時間を測定するため、正確な誘電率が判定できるため、正確な温度が測定できる。
【0051】
上記のように、圧電振動板に電圧パルスを印加したときに、圧電振動板の両端電圧が基準の電圧に達してから、所定の電圧に達するまでの時間を測定することにより、圧電振動板の誘電率を判定して温度を測定するため、温度が高くなったり、圧電振動板を様々な周波数で振動させ警報音を発したりして、圧電振動板の両端電圧に充電の電圧が残る場合にも、正確に圧電振動板の誘電率に基づく火災検出を行うことができる。
【0052】
実施の形態3
前述の実施の形態1では、警報音の鳴動を連続した単一の音色で行った例を示した。本実施の形態3では、順次複数の音色で警報音の鳴動を行う例を示す。なお、本実施の形態3では、前述の実施の形態1との相違点を中心に説明し、実施の形態1と同一又は対応する構成要素には同一の符号を付す。
【0053】
また、火災検出のための温度測定方法は、実施の形態1と同様であり、温度測定部9は、A端子とB端子の電位差により圧電振動板5の両端電圧の測定を行い、振動制御部13が電圧パルスを出力してから、その両端電圧が所定の電圧Vに変化するまでの充電時間を測定する。測定した充電時間により、温度測定部9は、圧電振動板5の誘電率を判定して、その誘電率に基づき温度を測定し、制御部16に測定した温度を通知する。
【0054】
図8は、本実施の形態3に係わる順次複数の音色で警報音が鳴動するときの振動制御部13が出力する電圧パルスと、そのときの電圧振動板5の両端電圧の波形の一例を示す図であり、図8(a)は、振動制御部13が出力する電圧パルスの波形を示し、図8(b)は、図8(a)の電圧パルスによって、トランジスタ12がスイッチングして電圧の印加が制御されたときの圧電振動板5の充電波形を示している。例えば、電圧パルスの幅は、T3<T1<T2の関係が成り立つ。
【0055】
このように電圧パルスの幅を変化させ、圧電振動板5への電圧の印加の周期を変えることによって、圧電振動板5の振動周期が変わり、順次複数の音色で警報音の鳴動を行うことができる。
【0056】
ところが、振動制御部5が出力する電圧パルスの幅が、図8(a)のT3のとき、図8(b)における圧電振動板5の両端の充電電圧は、所定の電圧Vまで上昇しない。そのため、この音色のときに温度測定を行うと、所定の電圧Vになるまでの時間として、次の電圧パルスによって圧電振動板5の両端の電圧が所定の電圧Vになるまでの時間t8を測定してしまい、正しい温度が測定できなくなってしまう。
【0057】
そこで、本実施の形態3では、警報音を鳴動中は、振動制御部13が所定の幅以上で電圧パルスを出力するときに温度測定を行う。例えば、図8(a)で示される電圧パルスの幅がT1以上の時に制御部16からの制御により温度測定部9は、充電時間t9を測定することで温度測定を行う。
【0058】
このようにすれば、警報音が、「火災発生、現場を確認してください。」や「電池電圧が異常です、電池を交換してください。」などの定型音声を繰り返し鳴動する場合や、1kHz〜3kHzまでの音色をスイープさせる場合などは、振動制御部13が電圧パルスを所定の幅以上で出力する機会が繰り返し訪れるため、確実に温度測定が行える。
【0059】
上記のように、圧電振動板に電圧パルスを所定の幅以上で印加したときに、温度を測定するため、圧電振動板を様々な周波数で振動させ警報音を発する場合でも、正確に圧電振動板の誘電率に基づき火災検出を行うことができる。
【0060】
なお、圧電振動板に印加する電圧パルスの幅が1msのときには所定の電圧を3Vに設定し、印加する電圧パルスの幅が0.5msの時には所定の電圧を2.5Vのように、圧電振動板に印加する電圧パルスの幅によって所定の電圧を変化させることで、正確な温度測定を行っても良い。
【符号の説明】
【0061】
1 熱感知器、2 周壁、3 天面、4 カバー、5 圧電振動板、8 感知器ベース、9 温度測定部、10 抵抗、11 抵抗、12 トランジスタ、13 振動制御部、14 電池、15 電池監視部、16 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動板と、圧電振動板の誘電率に基づいて監視領域の温度を測定する温度測定部と、警報音を発生させるために圧電振動板に電圧パルスを印加するための振動制御部とを備えた熱感知器において、前記温度測定部は、前記振動制御部により、前記圧電振動板に電圧パルスを印加したときに、前記圧電振動板の両端電圧が所定の電圧に達するまでの時間を測定することにより、前記圧電振動板の誘電率を判定して温度を測定することを特徴とする熱感知器。
【請求項2】
前記温度測定部は、前記圧電振動板に電圧パルスを印加したときに、前記圧電振動板の両端電圧が基準の電圧に達してから、所定の電圧に達するまでの時間を測定することにより、前記圧電振動板の誘電率を判定して温度を測定することを特徴とする請求項1の熱感知器。
【請求項3】
前記温度測定部は、前記圧電振動板に電圧パルスを所定の幅以上で印加したときに、温度を測定することを特徴とする請求項1または2の熱感知器。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate