熱成形方法および熱成形装置
【課題】 簡易かつ簡便にして手軽に熱成形を行なうことを可能とする簡素で安価な熱成形方法および熱成形装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 熱可塑性樹脂シート5を挟持する上枠体2と下枠体3とから成る熱成形装置1において、熱可塑性樹脂シート5の下側に型7を配置し、上側より流動性可変形性熱媒体(熱水)8を載置して熱可塑性樹脂シート5を加熱すると共に流動性可変形性熱媒体(熱水)8の重量により型7に圧着することにより変形させて成形する。
【解決手段】 熱可塑性樹脂シート5を挟持する上枠体2と下枠体3とから成る熱成形装置1において、熱可塑性樹脂シート5の下側に型7を配置し、上側より流動性可変形性熱媒体(熱水)8を載置して熱可塑性樹脂シート5を加熱すると共に流動性可変形性熱媒体(熱水)8の重量により型7に圧着することにより変形させて成形する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性の樹脂シートを加熱して型に圧着することにより変形させて成形する熱成形方法および熱成形装置に関するものであり、より詳しくは、簡易かつ簡便にして手軽に熱成形を行なうことを可能とする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱成形装置については従来より様々なものが考案され使用されている。基本的には熱可塑性樹脂シートを加熱して型に圧着することにより変形させて成形するのであるが、実際の装置においては効率良く大量に成形加工を行なうため種々の付属装置を備え、自動あるいは半自動とした一連の加工機械として構成されている。例えば、ロール状に巻かれた熱可塑性樹脂シートを伸長して装置に送る搬入装置、送られてきたシートを裁断して保持するカッターや保持装置、シートを加熱して軟化させる加熱装置、シートと型を圧着させる上下動機構や圧搾空気を送り込む加圧装置、型とシートの間の空気を除去する真空吸引装置、成形されたシートを取出して次工程へと送る搬出装置、その他にも成形後にシートを冷却する冷却装置、型とシートを剥離し易くするための剥離材を塗布する噴霧装置など、多くの装置や機構が付属しており、そのための動力装置や電源設備なども備えている。
【0003】
このため、熱成形装置は多くの装置類の組み合せから成る複雑な集積機械あるいはトランスファーマシンとなり、更に、一定程度の大きさの成形品を得られるようにするため、汎用機においても大型化する傾向がある。また、自動あるいは半自動の高度な制御を伴うため、その設定や調整も煩雑化する傾向にある。
一方、各種成形加工製品の多様化や多種類化に伴い、熱成形加工も多品種・少量生産に対応してフレキシブルに小ロットの成形品を迅速かつ効率良く製造することが求められる傾向もある。
【0004】
しかしながら、上記のような複雑な構成・制御の熱成形装置にあっては、ロット製造に先立ち行なう試作作業やサンプル製造作業は、少なからず困難性あるいは不経済性を伴うものである。即ち、単に1個の試作を行なう場合であっても、先ず規定寸法の材料ロールを搬入装置にセットし、次いで型を型置き台に固定し、そして加熱装置や加圧装置および真空吸引装置や搬出装置その他の装置類を全て過不足・矛盾なく順序通り円滑に連動するよう設定・調整してワンショット製造を行なう必要がある。更には、熱可塑性樹脂シートの加熱・加圧の程度や各装置の動作速度など、種々の条件を最適に整えつつ成形品の出来具合を確認しながら、何度も試行錯誤して試作作業やサンプル製造作業を行なうのである。
このような作業にあっては、材料の無駄が多く発生すると共に煩雑な調整に多くの時間を要することから、簡易かつ簡便にして手軽に熱成形を行なうことができる熱成形装置が切望されていた。
また、工業的な試作やサンプル製造に限らず、趣味や教材あるいは工芸などの創作用や極少量の製造用としても、自動や半自動など大型で複雑な機械装置ではなく、簡素で安価な熱成形装置が求められていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような現状に鑑みて成されたものであり、簡易かつ簡便にして手軽に熱成形を行なうことを可能とする簡素で安価な熱成形方法および熱成形装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記のような課題を解決するために、請求項1に係る本発明の熱成形方法は、熱可塑性樹脂シートの下側に型を配置し、上側より流動性可変形性熱媒体を載置して熱可塑性樹脂シートを加熱すると共に流動性可変形性熱媒体の重量により型に圧着することにより変形させて成形するものである。
また、請求項2に係る本発明の熱成形装置は、請求項1に記載の熱成形方法に用いる熱成形装置であって、熱可塑性樹脂シートを挟持する上枠体と下枠体とから成るものである。
請求項3に係る本発明の熱成形装置は、請求項1に記載の熱成形方法に用いる熱成形装置であって、熱可塑性樹脂シートを挟持する上枠体と下枠体および型を載置する型置き台とから成るものである。
請求項4に係る本発明の熱成形装置は、請求項1に記載の熱成形方法に用いる熱成形装置であって、熱可塑性樹脂シートを挟持する上枠体および型を載置する型置き台と一体とした下枠体とから成るものである。
請求項5に係る本発明の熱成形装置は、請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の熱成形装置であって、上枠体、下枠体、型置き台、型置き台と一体とした下枠体、の少なくともいずれかに流動性可変形性熱媒体を保持する熱媒体受けを備えたものである。
請求項6に係る本発明の熱成形装置は、請求項2乃至請求項5のいずれかに記載の熱成形装置であって、下枠体、型置き台、型置き台と一体とした下枠体、の少なくともいずれかに熱可塑性樹脂シートの下側空間の空気を外部に排出する通気部を備えたものである。
請求項7に係る本発明の熱成形装置は、請求項6に記載の熱成形装置であって、通気部は一方を熱可塑性樹脂シートの下側空間に開口した通気孔の他方を外部に開口したものである。
請求項8に係る本発明の熱成形装置は、請求項6に記載の熱成形装置であって、通気部は一方を熱可塑性樹脂シートの下側空間に開口した複数の通気孔の他方を集合して外部に開口したものである。
請求項9に係る本発明の熱成形装置は、請求項7または請求項8のいずれかに記載の熱成形装置であって、通気孔の外部への開口に接続する手動式の脱気ポンプを備えたものである。
請求項10に係る本発明の熱成形装置は、請求項6乃至請求項9のいずれかに記載の熱成形装置であって、下枠体の底面に空気の流通を遮断するパッキンを備えたものである。
請求項11に係る本発明の熱成形装置は、請求項6に記載の熱成形装置であって、下枠体に備える通気部は一方を熱可塑性樹脂シートの下側空間に開口し他方を外部に開口した溝状部を下枠体の底面に設けたものである。
請求項12に係る本発明の熱成形装置は、請求項1に記載の熱成形方法に用いる熱成形装置であって、互いに螺合して熱可塑性樹脂シートを挟持する上枠体と下枠体とから成り、上枠体は側面部を蛇腹状とすると共に開閉自在な蓋を有する天板を備えたものである。
請求項13に係る本発明の熱成形装置は、請求項12に記載の熱成形装置であって、天板や蓋の少なくとも一部を透明部材にて構成したものである
【発明の効果】
【0007】
本発明の熱成形方法および熱成形装置は、このような構成としたことにより、簡易かつ簡便にして手軽に熱成形を行なうことを可能とし、簡素で安価なものとすることができる。
即ち、流動性可変形性熱媒体を用いて熱可塑性樹脂シートを加熱し、その重量により型に圧着して成形することにより、ヒーターなどの加熱装置を不要とすることができるほか、熱可塑性樹脂シートと型を圧着する上下動機構や加圧装置などを不要とすることができ、熱成形装置を簡素化することができると共に、簡易かつ簡便にして手軽に熱成形を行なうことができる。
また、上枠体、下枠体、型置き台、型置き台と一体とした下枠体などによる構成とすることにより、搬入・搬出装置やカッターおよび保持装置などを不要とすることができ、熱成形装置を簡素で安価なものとすることができる。そして、机の天板など略水平面を利用した場合には、型を載置する型置き台を不要とすることができ、簡易かつ簡便にして手軽に熱成形を行なうことができ、熱成形装置を簡素で安価なものとすることができる。
更には、熱可塑性樹脂シートの下側空間の空気を外部に排出する通気部を備えたことにより、型とシートの間の空気を除去する真空吸引装置を不要とすることができ、また、通気孔の外部への開口に接続する手動式の脱気ポンプを備えた場合には、安価な構成で利便性の良い熱成形装置とすることができる。
そして、互いに螺合して熱可塑性樹脂シートを挟持する上枠体と下枠体とから構成し、上枠体の側面部を蛇腹状とし、開閉自在な蓋を有する天板を備えた場合には、加圧装置を一体に備えたものとすることができ、更に利便性の良い熱成形装置とすることができる。また、天板や蓋の少なくとも一部を透明部材にて構成して覗き窓とした場合には、内部を観察することができ一層利便性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
【実施例】
【0009】
本案の実施例を以下、図面に基づいて説明する。尚、各図に共通する部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図1は本発明の熱成形装置の実施例を示す概略図であり、(a)は分解斜視図、(b)は組立状態の概略側面図である。
熱成形装置1は図1(a)に示すように上枠体2および下枠体3とから成り、下枠体3には通気孔4が複数設けられている。使用にあたっては上枠体2および下枠体3とで熱可塑性シート5を挟持して、図1(b)に示すように机の天板など略水平面6に載置する。
図2は図1に示す熱成形装置1の使用状態を示す説明図であり、(a)(b)(c)(d)はそれぞれ各段階の状態を示す概略断面図である。この図2(a)(b)(c)(d)に基づき熱成形装置1の使用について具体的に説明する。
先ず、図2(a)に示すように上枠体2および下枠体3とで熱可塑性シート5を挟持し、型7を置いた机や作業台の天板など略水平面6に載置する。次いで、図2(b)に示すように熱可塑性シート5の上側に流動性可変形性熱媒体としての熱水8を注いで載置する。すると、図2(c)に示すように熱可塑性シート5は熱水8により加熱されて軟化すると共に熱水8の重量により下方へと押圧され中央付近から変形が始まり型7に圧着される。そして、図2(d)に示すように熱可塑性シート5は型7の全体と略水平面6とに密着した状態となり成形が行なわれる。この際に熱可塑性シート5の下側空間の空気は通気孔4を通過して外部へ排出されるようになっている。この後、冷却して上枠体2と下枠体3を分離して熱可塑性シート5を開放すると共に、熱可塑性シート5から型7を抜き外し成形を完了する。冷却については熱水8を取除き冷水を注ぐ方法や一定時間放置するなど適宜の方法が採られる。
【0010】
本発明の熱成形方法および熱成形装置において用いられる流動性可変形性熱媒体とは、上記実施例の熱水8のほか、天然あるいは合成の可溶性ポリマーなどの比熱増大化物質を溶質として何らかの溶媒に溶解した溶液、油類、粉末粒状物質、粘士状物質、ゲル状物、発泡物類を含むゴム類や樹脂類、その他の流動性あるいは変形可能な物質など、および、これらを柔軟性の袋容器に内包したものなどを含むものである。即ち、熱可塑性シートを加熱・軟化することができる程度の蓄熱性を有し、更に流動性あるいは型に密着する程度に変形可能なものを広く意味するものである。液状であれば流動性が良く好都合であり、また、粘土状物質およびゴム類や樹脂類などは自重に加えて手などにより押圧して変形し熱可塑性シートを型7に密着させることも可能であるため好適なものである。
更に、これらの流動性可変形性熱媒体を柔軟性の袋容器に内包した場合には、予め加熱しておく際や熱可塑性シート5に載置する際、そして冷却のため取除く際などに取扱いが容易となり利便性を高めることでき好都合である。
これらの流動性可変形性熱媒体を予め加熱しておく方法については、例えば何らかの容器に収容あるいは皿などに載置して加熱手段により加熱する方法など、既知の方法を適宜に用いることとし、説明は省略する。また、流動性可変形性熱媒体を熱可塑性シート5の上側に予め載置しておき、本装置ごと電子レンジなどにて加熱する方法も可能である。
熱可塑性シート5については、例えばナイロン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカプロラクトンなど種々のものが利用可能である。
【0011】
上記実施例では上枠体2および下枠体3の形状を平面視長方形の矩形としたが、これに限るものではなく、例えば円形や楕円形あるいは任意の形状など、種々の形状とすることができるものであり、使用する用途や条件などに合せた形状や寸法として利便性を高めることが好ましい。
また、上枠体2および下枠体3の材質も木製や金属製あるいは樹脂製とするなど、使用する用途や条件に合せた材質として利便性を高めることが好ましい。
【0012】
上記実施例の熱成形方法および熱成形装置1は、このような構成としたことにより簡易かつ簡便にして手軽に熱成形を行なうことを可能とし、簡素で安価なものとすることができる。特に、型7を置くと共に上枠体2および下枠体3を載置する略水平面6は、机や作業台の天板などを利用することができ、一層簡素で安価なものとすることができる。
【0013】
図3は他の実施例を示す概略断面図であり、先に示した実施例の熱成形装置1について、更に型置き台9を備えたものである。このような型置き台9を備えることにより、略水平面6の表面に汚れや凹凸がある場合、あるいは略水平面が手近にない場合などにも熱成形装置1を安全に安定して使用することができるものである。
【0014】
図4は他の実施例を示す概略断面図であり、熱成形装置10は上枠体2および型置き台と一体とした下枠体11とから成るものである。下枠体11は枠体部11aと型置き台部11bとから成っており、このように枠体部11aと型置き台部11bを一体化することにより部品点数を減らし簡素化しつつ利便性を高めたものである。
【0015】
図5は他の実施例を示す概略断面図であり、熱成形装置12は上枠体2および溝状部13を有する下枠体14とから成るものである。溝状部13は下枠体14の底面に複数設けてあり、一方を熱可塑性樹脂シート5の下側空間に開口し、他方を外部に開口したものとなっており、熱可塑性樹脂シート5の下側空間の空気が溝状部13を通過して外部へ排出されるようになっている。
熱成形装置12は、このように通気部を溝状部13としたことにより、先の実施例における通気孔4よりも簡素な構成とすることができ、加工コストを低減して安価なものとすることができる。
【0016】
図6は他の実施例を示す概略断面図であり、熱成形装置15は上枠体2および溝状部13を有し更に型置き台と一体とした下枠体16とから成るものである。下枠体16は枠体部16aと型置き台部16bをから成っており、型置き台部16bには通気孔17が設けられている。熱可塑性樹脂シート5の下側空間の空気は通気孔17を通過し、更に溝状部13を通過して外部へ排出されるようになっている。
熱成形装置12は、このような構成としたことにより、熱可塑性樹脂シート5の下側空間の空気を円滑に外部へ排出することができると共に、部品点数を減らし簡素化しつつ利便性を高めることができるものである。
【0017】
図7は他の実施例を示す概略断面図であり、熱成形装置18は上枠体2および型置き台と一体とした下枠体19とから成るものである。下枠体19は枠体部19aと型置き台部19bとから成っており、それぞれ複数の通気孔20を備えている。型置き台部19bに備えた複数の通気孔20は集合管21を介して枠体部19aに設けた開口部22に接続されており、枠体部19aに備えた複数の通気孔20も同じく集合管(不図示)を介して同様に開口部22に接続されている。
熱成形装置18は、このような構成としたことにより、開口部22に真空吸引装置(不図示)を接続して使用することも可能となり、熱可塑性樹脂シート5の下側空間の空気を一層円滑に外部へ排出することができる。
【0018】
図8は他の実施例を示す概略断面図であり、熱成形装置23は上枠体2および型置き台と一体とした下枠体24とから成るものである。下枠体24は枠体部24aと型置き台部24bとから成っており、それぞれ複数の通気孔20、20、17を備えている。型置き台部24bに備えた複数の通気孔17は、一方を熱可塑性樹脂シート5の下側空間に開口し他方を型置き台部24bの下側空間に開口したものとなっている。枠体部24aに備えた複数の通気孔20、20のうち、上部のものは一方を熱可塑性樹脂シート5の下側空間に開口し他方は集合管(不図示)を介して枠体部24aに設けた開口部22に接続したものとなっており、下部のものは一方を型置き台部24bの下側空間に開口し他方を同じく開口部22に接続したものとなっている。更に、下枠体24の底面には空気の流通を遮断するパッキン25が備えられている。
熱成形装置23は、このような構成としたことにより、図7に示す先の実施例における型置き台19bの集合管21を省くことができ、加工コストを低減して安価なものとすることができる。また、パッキン25を備えたことにより略水平面6を利用して型置き台部24bの下側空間を一定容積の真空吸引チャンバVとすることができる。真空吸引チャンバVは型置き台部24bに備えた複数の通気孔17の全てに強力な吸引力を施すことができ、開口部22に真空吸引装置(不図示)を接続して熱可塑性樹脂シート5の下側空間の空気をより一層円滑に外部へ排出することができるものである。
【0019】
図9は他の実施例を示す概略断面図であり、熱成形装置26は上枠体2と下枠体3および型置き台27とから成るものである。型置き台27には通気孔17および通気孔4が設けられている。熱可塑性樹脂シート5の下側空間の空気は通気孔17を通過し、更に通気孔4を通過して外部へ排出されるようになっている。
熱成形装置26は、このような構成としたことにより、略水平面6の表面に汚れや凹凸がある場合、あるいは略水平面が手近にない場合などにも安全に安定して使用することができると共に、熱可塑性樹脂シート5の下側空間の空気を円滑に外部へ排出することができるものである。
【0020】
図10は他の実施例を示す概略斜視図であり、図7あるいは図8に示す実施例の熱成形装置18あるいは23の開口部22にホース28を介して脱気ポンプ29を接続し備えたものである。脱気ポンプ29は側面部が蛇腹状の手動式であり、伸縮することにより熱可塑性樹脂シート5の下側空間の空気を内部に吸引し排出口29aより排出するようになっているものである。このように手動式の脱気ポンプを備えた場合には、必要に応じて強力に熱可塑性樹脂シート5の下側空間の空気を真空吸引して排出することができる。
【0021】
図11は他の実施例を示す概略断面図であり、(a)は分解概略断面図、(b)は組立状態の概略断面図、(c)は型置き台についての別の実施例を示す概略断面図である。
熱成形装置30は上枠体31と下枠体32および型置き台33とから成るものである。上枠体31は枠体部31aと熱媒体受け部31bとから成っている。下枠体32は枠体部32aと熱媒体受け部32bとから成っている。型置き台33は型置き台部33aと熱媒体受け部33bとから成っている。型置き台部33aには通気孔17が設けられており、更に底面部には溝状部13が設けられている。
熱成形装置30は平面視(不図示)が矩形状となっており、図11(b)に示すように上枠体31と下枠体32とで熱可塑性樹脂シート5を挟持し、型7を置いた型置き台部33aに載置して使用するものである。それぞれの熱媒体受け部31b、32b、33bは同じ角度で上部が拡開しており、順次積層することにより上枠体31と下枠体32および型置き台33とが嵌合状態で合体するように寸法・形状を設定し構成したものである。
図11(c)は上記の型置き台についての別の実施例であり、多数の溝状部331cを備えた型置き台331を示すものである。型置き台331は型置き台部331aと熱媒体受け部331bとから成っており、溝状部331cは型置き台部331aおよび熱媒体受け部331bに亘って平面視(不図示)直線状に備えられている。また、溝状部331cは平面視(不図示)矩形状とした型置き台331において縦横に交差する状態で型置き台331の内面全面に多数備えられている。従って熱可塑性樹脂シート5の下側空間の空気は溝状部331cを通り熱媒体受け部331bの端部から外部へ排出されるようになっているものである。
このように熱媒体受けを備えた構成としたことにより、熱可塑性樹脂シート5の上側に多くの量の流動性可変形性熱媒体を流出あるいは散逸することなく載置し保持することが可能となり、安全に熱成形を行なうことができるものである。また、不使用時の収納に際しても小型化して纏めることができ利便性の良いものとなる。
尚、この実施例についても先の実施例と同様に平面視形状や材質は任意・適宜とすることができるものであり、使用する用途や条件に合せて利便性を高めることが好ましい。
【0022】
図12は他の実施例を示す概略図であり、(a)は斜視図、(b)は組立状態の概略断面図である。
熱成形装置34は上枠体35と下枠体36とから成るものであり、両者は各々にネジ部35a、36aを備え互いに螺合して合体し熱可塑性樹脂シート5を挟持することができるようになっている。上枠体35の側面部35bは蛇腹状となっており、天板部35cには開閉自在とした蓋37を備えている。
使用にあたっては、先ず、図12(b)に示すように上枠体35と下枠体36を螺合して合体すると共に熱可塑性樹脂シート5を挟持し、型7を置いた机や作業台の天板など略水平面6に載置する。次いで、蓋37を開けて熱水などの流動性可変形性熱媒体を熱可塑性樹脂シート5の上側に載置して蓋37を閉じる。そして、熱可塑性シート5が軟化した頃に天板部35cおよび蓋37を押圧すると側面部35bが蛇腹状のため縮んで熱可塑性シート5の上側空間の空気が加圧される。この加圧された空気により熱可塑性シート5が型7および略水平面6に圧着され成形が行なわれる。
この天板部35cや蓋37の一部あるいは全部を透明部材にて構成した場合には、熱成形装置34の内部で行なわれる熱成形の様子を直接に観察することが可能となり、熱可塑性シート5の軟化の状態や型7との密着の状態などを確かめながら熱成形を行なうことができ好適なものとなる。
熱成形装置34は、このような構成としたことにより熱可塑性シート5を型7に対して強力に圧着することができ、手軽に高精度の成形加工を行なうことができるものである。
尚、この実施例では熱成形装置34の形状は平面視において円形としたものであるが、先の実施例と同様に平面視形状や材質は任意・適宜とすることができるものであり、使用する用途や条件に合せて利便性を高めることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
以上、説明してきた如く本発明の熱成形方法および熱成形装置は、簡易かつ簡便にして手軽に熱成形を行なうことを可能とし、簡素で安価なものとすることができるものである。
試作作業やサンプル製造作業あるいは小ロットの製造作業においては、材料の無駄を省き煩雑な調整などの時間も要さず、熱成形を円滑に行なうことができ好適なものである。
また、趣味や教材あるいは工芸などの創作用としても好適なものであり、場所を選ばず身近なところで特殊な器具や装置も用いず、熱成形による創作を存分に堪能することができるものである。
熱成形の用途は極めて多彩なものが考えられ、状況や条件に応じて本装置の形状や材質あるいは寸法などを設定して構成することにより更に利便性を高めることができ、製造に創作に大いに活用が期待されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】 本発明の実施例を示す概略図。(a)は分解斜視図、(b)は組立状態の概略側面図。
【図2】 本発明の使用状態を示す説明図。(a)(b)(c)(d)はそれぞれ各段階の状態を示す概略断面図。
【図3】 本発明の他の実施例を示す概略断面図。
【図4】 本発明の他の実施例を示す概略断面図。
【図5】 本発明の他の実施例を示す概略断面図。
【図6】 本発明の他の実施例を示す概略断面図。
【図7】 本発明の他の実施例を示す概略断面図。
【図8】 本発明の他の実施例を示す概略断面図。
【図9】 本発明の他の実施例を示す概略断面図。
【図10】 本発明の他の実施例を示す概略斜視図。
【図11】 本発明の他の実施例を示す概略断面図。(a)は分解概略断面図、(b)は組立状態の概略断面図。
【図12】 本発明の他の実施例を示す概略図。(a)は斜視図、(b)は組立状態の概略断面図。
【符号の説明】
1、10、12、15、18、23、26、30、34…熱成形装置
2、31,35…………………………………………………上枠体
3,11、14,16、19,24,32、36…………下枠体
4、17、20…………………………………………………通気孔
5…………………………………………………………………熱可塑性樹脂シート
7…………………………………………………………………型
8…………………………………………………………………流動性可変形性熱媒体(熱水)
9、27、33、331………………………………………型置き台
13、331c…………………………………………………溝状部
25………………………………………………………………パッキン
29………………………………………………………………脱気ポンプ
31b、32b、33b………………………………………熱媒体受け部
37………………………………………………………………蓋
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性の樹脂シートを加熱して型に圧着することにより変形させて成形する熱成形方法および熱成形装置に関するものであり、より詳しくは、簡易かつ簡便にして手軽に熱成形を行なうことを可能とする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱成形装置については従来より様々なものが考案され使用されている。基本的には熱可塑性樹脂シートを加熱して型に圧着することにより変形させて成形するのであるが、実際の装置においては効率良く大量に成形加工を行なうため種々の付属装置を備え、自動あるいは半自動とした一連の加工機械として構成されている。例えば、ロール状に巻かれた熱可塑性樹脂シートを伸長して装置に送る搬入装置、送られてきたシートを裁断して保持するカッターや保持装置、シートを加熱して軟化させる加熱装置、シートと型を圧着させる上下動機構や圧搾空気を送り込む加圧装置、型とシートの間の空気を除去する真空吸引装置、成形されたシートを取出して次工程へと送る搬出装置、その他にも成形後にシートを冷却する冷却装置、型とシートを剥離し易くするための剥離材を塗布する噴霧装置など、多くの装置や機構が付属しており、そのための動力装置や電源設備なども備えている。
【0003】
このため、熱成形装置は多くの装置類の組み合せから成る複雑な集積機械あるいはトランスファーマシンとなり、更に、一定程度の大きさの成形品を得られるようにするため、汎用機においても大型化する傾向がある。また、自動あるいは半自動の高度な制御を伴うため、その設定や調整も煩雑化する傾向にある。
一方、各種成形加工製品の多様化や多種類化に伴い、熱成形加工も多品種・少量生産に対応してフレキシブルに小ロットの成形品を迅速かつ効率良く製造することが求められる傾向もある。
【0004】
しかしながら、上記のような複雑な構成・制御の熱成形装置にあっては、ロット製造に先立ち行なう試作作業やサンプル製造作業は、少なからず困難性あるいは不経済性を伴うものである。即ち、単に1個の試作を行なう場合であっても、先ず規定寸法の材料ロールを搬入装置にセットし、次いで型を型置き台に固定し、そして加熱装置や加圧装置および真空吸引装置や搬出装置その他の装置類を全て過不足・矛盾なく順序通り円滑に連動するよう設定・調整してワンショット製造を行なう必要がある。更には、熱可塑性樹脂シートの加熱・加圧の程度や各装置の動作速度など、種々の条件を最適に整えつつ成形品の出来具合を確認しながら、何度も試行錯誤して試作作業やサンプル製造作業を行なうのである。
このような作業にあっては、材料の無駄が多く発生すると共に煩雑な調整に多くの時間を要することから、簡易かつ簡便にして手軽に熱成形を行なうことができる熱成形装置が切望されていた。
また、工業的な試作やサンプル製造に限らず、趣味や教材あるいは工芸などの創作用や極少量の製造用としても、自動や半自動など大型で複雑な機械装置ではなく、簡素で安価な熱成形装置が求められていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような現状に鑑みて成されたものであり、簡易かつ簡便にして手軽に熱成形を行なうことを可能とする簡素で安価な熱成形方法および熱成形装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記のような課題を解決するために、請求項1に係る本発明の熱成形方法は、熱可塑性樹脂シートの下側に型を配置し、上側より流動性可変形性熱媒体を載置して熱可塑性樹脂シートを加熱すると共に流動性可変形性熱媒体の重量により型に圧着することにより変形させて成形するものである。
また、請求項2に係る本発明の熱成形装置は、請求項1に記載の熱成形方法に用いる熱成形装置であって、熱可塑性樹脂シートを挟持する上枠体と下枠体とから成るものである。
請求項3に係る本発明の熱成形装置は、請求項1に記載の熱成形方法に用いる熱成形装置であって、熱可塑性樹脂シートを挟持する上枠体と下枠体および型を載置する型置き台とから成るものである。
請求項4に係る本発明の熱成形装置は、請求項1に記載の熱成形方法に用いる熱成形装置であって、熱可塑性樹脂シートを挟持する上枠体および型を載置する型置き台と一体とした下枠体とから成るものである。
請求項5に係る本発明の熱成形装置は、請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の熱成形装置であって、上枠体、下枠体、型置き台、型置き台と一体とした下枠体、の少なくともいずれかに流動性可変形性熱媒体を保持する熱媒体受けを備えたものである。
請求項6に係る本発明の熱成形装置は、請求項2乃至請求項5のいずれかに記載の熱成形装置であって、下枠体、型置き台、型置き台と一体とした下枠体、の少なくともいずれかに熱可塑性樹脂シートの下側空間の空気を外部に排出する通気部を備えたものである。
請求項7に係る本発明の熱成形装置は、請求項6に記載の熱成形装置であって、通気部は一方を熱可塑性樹脂シートの下側空間に開口した通気孔の他方を外部に開口したものである。
請求項8に係る本発明の熱成形装置は、請求項6に記載の熱成形装置であって、通気部は一方を熱可塑性樹脂シートの下側空間に開口した複数の通気孔の他方を集合して外部に開口したものである。
請求項9に係る本発明の熱成形装置は、請求項7または請求項8のいずれかに記載の熱成形装置であって、通気孔の外部への開口に接続する手動式の脱気ポンプを備えたものである。
請求項10に係る本発明の熱成形装置は、請求項6乃至請求項9のいずれかに記載の熱成形装置であって、下枠体の底面に空気の流通を遮断するパッキンを備えたものである。
請求項11に係る本発明の熱成形装置は、請求項6に記載の熱成形装置であって、下枠体に備える通気部は一方を熱可塑性樹脂シートの下側空間に開口し他方を外部に開口した溝状部を下枠体の底面に設けたものである。
請求項12に係る本発明の熱成形装置は、請求項1に記載の熱成形方法に用いる熱成形装置であって、互いに螺合して熱可塑性樹脂シートを挟持する上枠体と下枠体とから成り、上枠体は側面部を蛇腹状とすると共に開閉自在な蓋を有する天板を備えたものである。
請求項13に係る本発明の熱成形装置は、請求項12に記載の熱成形装置であって、天板や蓋の少なくとも一部を透明部材にて構成したものである
【発明の効果】
【0007】
本発明の熱成形方法および熱成形装置は、このような構成としたことにより、簡易かつ簡便にして手軽に熱成形を行なうことを可能とし、簡素で安価なものとすることができる。
即ち、流動性可変形性熱媒体を用いて熱可塑性樹脂シートを加熱し、その重量により型に圧着して成形することにより、ヒーターなどの加熱装置を不要とすることができるほか、熱可塑性樹脂シートと型を圧着する上下動機構や加圧装置などを不要とすることができ、熱成形装置を簡素化することができると共に、簡易かつ簡便にして手軽に熱成形を行なうことができる。
また、上枠体、下枠体、型置き台、型置き台と一体とした下枠体などによる構成とすることにより、搬入・搬出装置やカッターおよび保持装置などを不要とすることができ、熱成形装置を簡素で安価なものとすることができる。そして、机の天板など略水平面を利用した場合には、型を載置する型置き台を不要とすることができ、簡易かつ簡便にして手軽に熱成形を行なうことができ、熱成形装置を簡素で安価なものとすることができる。
更には、熱可塑性樹脂シートの下側空間の空気を外部に排出する通気部を備えたことにより、型とシートの間の空気を除去する真空吸引装置を不要とすることができ、また、通気孔の外部への開口に接続する手動式の脱気ポンプを備えた場合には、安価な構成で利便性の良い熱成形装置とすることができる。
そして、互いに螺合して熱可塑性樹脂シートを挟持する上枠体と下枠体とから構成し、上枠体の側面部を蛇腹状とし、開閉自在な蓋を有する天板を備えた場合には、加圧装置を一体に備えたものとすることができ、更に利便性の良い熱成形装置とすることができる。また、天板や蓋の少なくとも一部を透明部材にて構成して覗き窓とした場合には、内部を観察することができ一層利便性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
【実施例】
【0009】
本案の実施例を以下、図面に基づいて説明する。尚、各図に共通する部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図1は本発明の熱成形装置の実施例を示す概略図であり、(a)は分解斜視図、(b)は組立状態の概略側面図である。
熱成形装置1は図1(a)に示すように上枠体2および下枠体3とから成り、下枠体3には通気孔4が複数設けられている。使用にあたっては上枠体2および下枠体3とで熱可塑性シート5を挟持して、図1(b)に示すように机の天板など略水平面6に載置する。
図2は図1に示す熱成形装置1の使用状態を示す説明図であり、(a)(b)(c)(d)はそれぞれ各段階の状態を示す概略断面図である。この図2(a)(b)(c)(d)に基づき熱成形装置1の使用について具体的に説明する。
先ず、図2(a)に示すように上枠体2および下枠体3とで熱可塑性シート5を挟持し、型7を置いた机や作業台の天板など略水平面6に載置する。次いで、図2(b)に示すように熱可塑性シート5の上側に流動性可変形性熱媒体としての熱水8を注いで載置する。すると、図2(c)に示すように熱可塑性シート5は熱水8により加熱されて軟化すると共に熱水8の重量により下方へと押圧され中央付近から変形が始まり型7に圧着される。そして、図2(d)に示すように熱可塑性シート5は型7の全体と略水平面6とに密着した状態となり成形が行なわれる。この際に熱可塑性シート5の下側空間の空気は通気孔4を通過して外部へ排出されるようになっている。この後、冷却して上枠体2と下枠体3を分離して熱可塑性シート5を開放すると共に、熱可塑性シート5から型7を抜き外し成形を完了する。冷却については熱水8を取除き冷水を注ぐ方法や一定時間放置するなど適宜の方法が採られる。
【0010】
本発明の熱成形方法および熱成形装置において用いられる流動性可変形性熱媒体とは、上記実施例の熱水8のほか、天然あるいは合成の可溶性ポリマーなどの比熱増大化物質を溶質として何らかの溶媒に溶解した溶液、油類、粉末粒状物質、粘士状物質、ゲル状物、発泡物類を含むゴム類や樹脂類、その他の流動性あるいは変形可能な物質など、および、これらを柔軟性の袋容器に内包したものなどを含むものである。即ち、熱可塑性シートを加熱・軟化することができる程度の蓄熱性を有し、更に流動性あるいは型に密着する程度に変形可能なものを広く意味するものである。液状であれば流動性が良く好都合であり、また、粘土状物質およびゴム類や樹脂類などは自重に加えて手などにより押圧して変形し熱可塑性シートを型7に密着させることも可能であるため好適なものである。
更に、これらの流動性可変形性熱媒体を柔軟性の袋容器に内包した場合には、予め加熱しておく際や熱可塑性シート5に載置する際、そして冷却のため取除く際などに取扱いが容易となり利便性を高めることでき好都合である。
これらの流動性可変形性熱媒体を予め加熱しておく方法については、例えば何らかの容器に収容あるいは皿などに載置して加熱手段により加熱する方法など、既知の方法を適宜に用いることとし、説明は省略する。また、流動性可変形性熱媒体を熱可塑性シート5の上側に予め載置しておき、本装置ごと電子レンジなどにて加熱する方法も可能である。
熱可塑性シート5については、例えばナイロン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカプロラクトンなど種々のものが利用可能である。
【0011】
上記実施例では上枠体2および下枠体3の形状を平面視長方形の矩形としたが、これに限るものではなく、例えば円形や楕円形あるいは任意の形状など、種々の形状とすることができるものであり、使用する用途や条件などに合せた形状や寸法として利便性を高めることが好ましい。
また、上枠体2および下枠体3の材質も木製や金属製あるいは樹脂製とするなど、使用する用途や条件に合せた材質として利便性を高めることが好ましい。
【0012】
上記実施例の熱成形方法および熱成形装置1は、このような構成としたことにより簡易かつ簡便にして手軽に熱成形を行なうことを可能とし、簡素で安価なものとすることができる。特に、型7を置くと共に上枠体2および下枠体3を載置する略水平面6は、机や作業台の天板などを利用することができ、一層簡素で安価なものとすることができる。
【0013】
図3は他の実施例を示す概略断面図であり、先に示した実施例の熱成形装置1について、更に型置き台9を備えたものである。このような型置き台9を備えることにより、略水平面6の表面に汚れや凹凸がある場合、あるいは略水平面が手近にない場合などにも熱成形装置1を安全に安定して使用することができるものである。
【0014】
図4は他の実施例を示す概略断面図であり、熱成形装置10は上枠体2および型置き台と一体とした下枠体11とから成るものである。下枠体11は枠体部11aと型置き台部11bとから成っており、このように枠体部11aと型置き台部11bを一体化することにより部品点数を減らし簡素化しつつ利便性を高めたものである。
【0015】
図5は他の実施例を示す概略断面図であり、熱成形装置12は上枠体2および溝状部13を有する下枠体14とから成るものである。溝状部13は下枠体14の底面に複数設けてあり、一方を熱可塑性樹脂シート5の下側空間に開口し、他方を外部に開口したものとなっており、熱可塑性樹脂シート5の下側空間の空気が溝状部13を通過して外部へ排出されるようになっている。
熱成形装置12は、このように通気部を溝状部13としたことにより、先の実施例における通気孔4よりも簡素な構成とすることができ、加工コストを低減して安価なものとすることができる。
【0016】
図6は他の実施例を示す概略断面図であり、熱成形装置15は上枠体2および溝状部13を有し更に型置き台と一体とした下枠体16とから成るものである。下枠体16は枠体部16aと型置き台部16bをから成っており、型置き台部16bには通気孔17が設けられている。熱可塑性樹脂シート5の下側空間の空気は通気孔17を通過し、更に溝状部13を通過して外部へ排出されるようになっている。
熱成形装置12は、このような構成としたことにより、熱可塑性樹脂シート5の下側空間の空気を円滑に外部へ排出することができると共に、部品点数を減らし簡素化しつつ利便性を高めることができるものである。
【0017】
図7は他の実施例を示す概略断面図であり、熱成形装置18は上枠体2および型置き台と一体とした下枠体19とから成るものである。下枠体19は枠体部19aと型置き台部19bとから成っており、それぞれ複数の通気孔20を備えている。型置き台部19bに備えた複数の通気孔20は集合管21を介して枠体部19aに設けた開口部22に接続されており、枠体部19aに備えた複数の通気孔20も同じく集合管(不図示)を介して同様に開口部22に接続されている。
熱成形装置18は、このような構成としたことにより、開口部22に真空吸引装置(不図示)を接続して使用することも可能となり、熱可塑性樹脂シート5の下側空間の空気を一層円滑に外部へ排出することができる。
【0018】
図8は他の実施例を示す概略断面図であり、熱成形装置23は上枠体2および型置き台と一体とした下枠体24とから成るものである。下枠体24は枠体部24aと型置き台部24bとから成っており、それぞれ複数の通気孔20、20、17を備えている。型置き台部24bに備えた複数の通気孔17は、一方を熱可塑性樹脂シート5の下側空間に開口し他方を型置き台部24bの下側空間に開口したものとなっている。枠体部24aに備えた複数の通気孔20、20のうち、上部のものは一方を熱可塑性樹脂シート5の下側空間に開口し他方は集合管(不図示)を介して枠体部24aに設けた開口部22に接続したものとなっており、下部のものは一方を型置き台部24bの下側空間に開口し他方を同じく開口部22に接続したものとなっている。更に、下枠体24の底面には空気の流通を遮断するパッキン25が備えられている。
熱成形装置23は、このような構成としたことにより、図7に示す先の実施例における型置き台19bの集合管21を省くことができ、加工コストを低減して安価なものとすることができる。また、パッキン25を備えたことにより略水平面6を利用して型置き台部24bの下側空間を一定容積の真空吸引チャンバVとすることができる。真空吸引チャンバVは型置き台部24bに備えた複数の通気孔17の全てに強力な吸引力を施すことができ、開口部22に真空吸引装置(不図示)を接続して熱可塑性樹脂シート5の下側空間の空気をより一層円滑に外部へ排出することができるものである。
【0019】
図9は他の実施例を示す概略断面図であり、熱成形装置26は上枠体2と下枠体3および型置き台27とから成るものである。型置き台27には通気孔17および通気孔4が設けられている。熱可塑性樹脂シート5の下側空間の空気は通気孔17を通過し、更に通気孔4を通過して外部へ排出されるようになっている。
熱成形装置26は、このような構成としたことにより、略水平面6の表面に汚れや凹凸がある場合、あるいは略水平面が手近にない場合などにも安全に安定して使用することができると共に、熱可塑性樹脂シート5の下側空間の空気を円滑に外部へ排出することができるものである。
【0020】
図10は他の実施例を示す概略斜視図であり、図7あるいは図8に示す実施例の熱成形装置18あるいは23の開口部22にホース28を介して脱気ポンプ29を接続し備えたものである。脱気ポンプ29は側面部が蛇腹状の手動式であり、伸縮することにより熱可塑性樹脂シート5の下側空間の空気を内部に吸引し排出口29aより排出するようになっているものである。このように手動式の脱気ポンプを備えた場合には、必要に応じて強力に熱可塑性樹脂シート5の下側空間の空気を真空吸引して排出することができる。
【0021】
図11は他の実施例を示す概略断面図であり、(a)は分解概略断面図、(b)は組立状態の概略断面図、(c)は型置き台についての別の実施例を示す概略断面図である。
熱成形装置30は上枠体31と下枠体32および型置き台33とから成るものである。上枠体31は枠体部31aと熱媒体受け部31bとから成っている。下枠体32は枠体部32aと熱媒体受け部32bとから成っている。型置き台33は型置き台部33aと熱媒体受け部33bとから成っている。型置き台部33aには通気孔17が設けられており、更に底面部には溝状部13が設けられている。
熱成形装置30は平面視(不図示)が矩形状となっており、図11(b)に示すように上枠体31と下枠体32とで熱可塑性樹脂シート5を挟持し、型7を置いた型置き台部33aに載置して使用するものである。それぞれの熱媒体受け部31b、32b、33bは同じ角度で上部が拡開しており、順次積層することにより上枠体31と下枠体32および型置き台33とが嵌合状態で合体するように寸法・形状を設定し構成したものである。
図11(c)は上記の型置き台についての別の実施例であり、多数の溝状部331cを備えた型置き台331を示すものである。型置き台331は型置き台部331aと熱媒体受け部331bとから成っており、溝状部331cは型置き台部331aおよび熱媒体受け部331bに亘って平面視(不図示)直線状に備えられている。また、溝状部331cは平面視(不図示)矩形状とした型置き台331において縦横に交差する状態で型置き台331の内面全面に多数備えられている。従って熱可塑性樹脂シート5の下側空間の空気は溝状部331cを通り熱媒体受け部331bの端部から外部へ排出されるようになっているものである。
このように熱媒体受けを備えた構成としたことにより、熱可塑性樹脂シート5の上側に多くの量の流動性可変形性熱媒体を流出あるいは散逸することなく載置し保持することが可能となり、安全に熱成形を行なうことができるものである。また、不使用時の収納に際しても小型化して纏めることができ利便性の良いものとなる。
尚、この実施例についても先の実施例と同様に平面視形状や材質は任意・適宜とすることができるものであり、使用する用途や条件に合せて利便性を高めることが好ましい。
【0022】
図12は他の実施例を示す概略図であり、(a)は斜視図、(b)は組立状態の概略断面図である。
熱成形装置34は上枠体35と下枠体36とから成るものであり、両者は各々にネジ部35a、36aを備え互いに螺合して合体し熱可塑性樹脂シート5を挟持することができるようになっている。上枠体35の側面部35bは蛇腹状となっており、天板部35cには開閉自在とした蓋37を備えている。
使用にあたっては、先ず、図12(b)に示すように上枠体35と下枠体36を螺合して合体すると共に熱可塑性樹脂シート5を挟持し、型7を置いた机や作業台の天板など略水平面6に載置する。次いで、蓋37を開けて熱水などの流動性可変形性熱媒体を熱可塑性樹脂シート5の上側に載置して蓋37を閉じる。そして、熱可塑性シート5が軟化した頃に天板部35cおよび蓋37を押圧すると側面部35bが蛇腹状のため縮んで熱可塑性シート5の上側空間の空気が加圧される。この加圧された空気により熱可塑性シート5が型7および略水平面6に圧着され成形が行なわれる。
この天板部35cや蓋37の一部あるいは全部を透明部材にて構成した場合には、熱成形装置34の内部で行なわれる熱成形の様子を直接に観察することが可能となり、熱可塑性シート5の軟化の状態や型7との密着の状態などを確かめながら熱成形を行なうことができ好適なものとなる。
熱成形装置34は、このような構成としたことにより熱可塑性シート5を型7に対して強力に圧着することができ、手軽に高精度の成形加工を行なうことができるものである。
尚、この実施例では熱成形装置34の形状は平面視において円形としたものであるが、先の実施例と同様に平面視形状や材質は任意・適宜とすることができるものであり、使用する用途や条件に合せて利便性を高めることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
以上、説明してきた如く本発明の熱成形方法および熱成形装置は、簡易かつ簡便にして手軽に熱成形を行なうことを可能とし、簡素で安価なものとすることができるものである。
試作作業やサンプル製造作業あるいは小ロットの製造作業においては、材料の無駄を省き煩雑な調整などの時間も要さず、熱成形を円滑に行なうことができ好適なものである。
また、趣味や教材あるいは工芸などの創作用としても好適なものであり、場所を選ばず身近なところで特殊な器具や装置も用いず、熱成形による創作を存分に堪能することができるものである。
熱成形の用途は極めて多彩なものが考えられ、状況や条件に応じて本装置の形状や材質あるいは寸法などを設定して構成することにより更に利便性を高めることができ、製造に創作に大いに活用が期待されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】 本発明の実施例を示す概略図。(a)は分解斜視図、(b)は組立状態の概略側面図。
【図2】 本発明の使用状態を示す説明図。(a)(b)(c)(d)はそれぞれ各段階の状態を示す概略断面図。
【図3】 本発明の他の実施例を示す概略断面図。
【図4】 本発明の他の実施例を示す概略断面図。
【図5】 本発明の他の実施例を示す概略断面図。
【図6】 本発明の他の実施例を示す概略断面図。
【図7】 本発明の他の実施例を示す概略断面図。
【図8】 本発明の他の実施例を示す概略断面図。
【図9】 本発明の他の実施例を示す概略断面図。
【図10】 本発明の他の実施例を示す概略斜視図。
【図11】 本発明の他の実施例を示す概略断面図。(a)は分解概略断面図、(b)は組立状態の概略断面図。
【図12】 本発明の他の実施例を示す概略図。(a)は斜視図、(b)は組立状態の概略断面図。
【符号の説明】
1、10、12、15、18、23、26、30、34…熱成形装置
2、31,35…………………………………………………上枠体
3,11、14,16、19,24,32、36…………下枠体
4、17、20…………………………………………………通気孔
5…………………………………………………………………熱可塑性樹脂シート
7…………………………………………………………………型
8…………………………………………………………………流動性可変形性熱媒体(熱水)
9、27、33、331………………………………………型置き台
13、331c…………………………………………………溝状部
25………………………………………………………………パッキン
29………………………………………………………………脱気ポンプ
31b、32b、33b………………………………………熱媒体受け部
37………………………………………………………………蓋
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂シートの下側に型を配置し上側より流動性可変形性熱媒体を載置して熱可塑性樹脂シートを加熱すると共に流動性可変形性熱媒体の重量により型に圧着することにより変形させて成形するものである熱成形方法。
【請求項2】
請求項1に記載の熱成形方法に用いる熱成形装置であって、熱可塑性樹脂シートを挟持する上枠体と下枠体とから成る熱成形装置。
【請求項3】
請求項1に記載の熱成形方法に用いる熱成形装置であって、熱可塑性樹脂シートを挟持する上枠体と下枠体および型を載置する型置き台とから成る熱成形装置。
【請求項4】
請求項1に記載の熱成形方法に用いる熱成形装置であって、熱可塑性樹脂シートを挟持する上枠体および型を載置する型置き台と一体とした下枠体とから成る熱成形装置。
【請求項5】
上枠体、下枠体、型置き台、型置き台と一体とした下枠体、の少なくともいずれかに流動性可変形性熱媒体を保持する熱媒体受けを備えたものである請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の熱成形装置。
【請求項6】
下枠体、型置き台、型置き台と一体とした下枠体、の少なくともいずれかに熱可塑性樹脂シートの下側空間の空気を外部に排出する通気部を備えたものである請求項2乃至請求項5のいずれかに記載の熱成形装置。
【請求項7】
通気部は、一方を熱可塑性樹脂シートの下側空間に開口した通気孔の他方を外部に開口したものである請求項6に記載の熱成形装置。
【請求項8】
通気部は、一方を熱可塑性樹脂シートの下側空間に開口した複数の通気孔の他方を集合して外部に開口したものである請求項6に記載の熱成形装置。
【請求項9】
通気孔の外部への開口に接続する手動式の脱気ポンプを備えたものである請求項7または請求項8のいずれかに記載の熱成形装置。
【請求項10】
下枠体の底面に空気の流通を遮断するパッキンを備えたものである請求項6乃至請求項9のいずれかに記載の熱成形装置。
【請求項11】
下枠体に備える通気部は、一方を熱可塑性樹脂シートの下側空間に開口し他方を外部に開口した溝状部を下枠体の底面に設けたものである請求項6に記載の熱成形装置。
【請求項12】
請求項1に記載の熱成形方法に用いる熱成形装置であって、互いに螺合して熱可塑性樹脂シートを挟持する上枠体と下枠体とから成り、上枠体は側面部を蛇腹状とすると共に開閉自在な蓋を有する天板を備えたものである熱成形装置。
【請求項13】
天板および/または蓋の少なくとも一部を透明部材にて構成したものである請求項12に記載の熱成形装置。
【請求項1】
熱可塑性樹脂シートの下側に型を配置し上側より流動性可変形性熱媒体を載置して熱可塑性樹脂シートを加熱すると共に流動性可変形性熱媒体の重量により型に圧着することにより変形させて成形するものである熱成形方法。
【請求項2】
請求項1に記載の熱成形方法に用いる熱成形装置であって、熱可塑性樹脂シートを挟持する上枠体と下枠体とから成る熱成形装置。
【請求項3】
請求項1に記載の熱成形方法に用いる熱成形装置であって、熱可塑性樹脂シートを挟持する上枠体と下枠体および型を載置する型置き台とから成る熱成形装置。
【請求項4】
請求項1に記載の熱成形方法に用いる熱成形装置であって、熱可塑性樹脂シートを挟持する上枠体および型を載置する型置き台と一体とした下枠体とから成る熱成形装置。
【請求項5】
上枠体、下枠体、型置き台、型置き台と一体とした下枠体、の少なくともいずれかに流動性可変形性熱媒体を保持する熱媒体受けを備えたものである請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の熱成形装置。
【請求項6】
下枠体、型置き台、型置き台と一体とした下枠体、の少なくともいずれかに熱可塑性樹脂シートの下側空間の空気を外部に排出する通気部を備えたものである請求項2乃至請求項5のいずれかに記載の熱成形装置。
【請求項7】
通気部は、一方を熱可塑性樹脂シートの下側空間に開口した通気孔の他方を外部に開口したものである請求項6に記載の熱成形装置。
【請求項8】
通気部は、一方を熱可塑性樹脂シートの下側空間に開口した複数の通気孔の他方を集合して外部に開口したものである請求項6に記載の熱成形装置。
【請求項9】
通気孔の外部への開口に接続する手動式の脱気ポンプを備えたものである請求項7または請求項8のいずれかに記載の熱成形装置。
【請求項10】
下枠体の底面に空気の流通を遮断するパッキンを備えたものである請求項6乃至請求項9のいずれかに記載の熱成形装置。
【請求項11】
下枠体に備える通気部は、一方を熱可塑性樹脂シートの下側空間に開口し他方を外部に開口した溝状部を下枠体の底面に設けたものである請求項6に記載の熱成形装置。
【請求項12】
請求項1に記載の熱成形方法に用いる熱成形装置であって、互いに螺合して熱可塑性樹脂シートを挟持する上枠体と下枠体とから成り、上枠体は側面部を蛇腹状とすると共に開閉自在な蓋を有する天板を備えたものである熱成形装置。
【請求項13】
天板および/または蓋の少なくとも一部を透明部材にて構成したものである請求項12に記載の熱成形装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
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【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−179055(P2009−179055A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48707(P2008−48707)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(591109740)株式会社電気工事西川組 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(591109740)株式会社電気工事西川組 (1)
【Fターム(参考)】
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