説明

熱水消毒に使用した透析装置内の熱水排水システム

【課題】 排水管を耐熱用排水管に変えることなく、効率よく排水を行うことのできる、透析装置内の熱水消毒に使用した熱水の排水システムを提供する。
【解決手段】 透析装置1と、透析装置1の透析液系回路11内に熱水を供給する熱水供給路2と、透析液系回路11から熱水を排出する排水路5と、透析液系回路11に供給された熱水を循環させる循環用回路14と、循環用回路14に設けられ透析液系回路11に供給された熱水を冷却するための熱交換器3と、排水路5に設けられた温度センサ4とを備えてなり、熱水供給開始後に排水温度が設定値以上に上昇したときに排水を停止させて透析液系回路11内の熱水を循環させるとともに、熱水消毒終了後、熱交換器3に冷却水を流して透析液系回路11内の熱水を冷却させ、熱水が所定の温度以下に冷却されたときに排水が開始されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析用監視装置や個人用透析装置(以下、透析装置という)内の配管を熱水消毒した際に、使用した熱水を効率的に排水するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
病院等の医療現場では、市水から精製水を製造する精製水製造装置と、該精製水製造装置から送られてくる精製水により透析液を調製して透析を行う透析装置とを連結した透析システムを用いて透析治療が行われている。これらの装置は、透析液が細菌やエンドトキシンにより汚染されないようにするため、繰り返し消毒を行うことが必要である。
【0003】
特許文献1には、精製水製造装置内で精製水を加熱して熱水とし、該熱水を透析装置に供給することにより、精製水製造装置、透析装置、及びそれらの連結部分を消毒する方法であって、熱水による消毒時に精製水製造装置と透析装置を連動させるための情報を受発信させることで、効率的に消毒が行える透析システムが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−23325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の透析システムでは、透析装置を熱水消毒する場合、使用した熱水は、排水管が耐熱用排水管の場合はそのまま排水できるが、排水管がVP管の場合、耐熱性が60℃程度であるため、非効率ではあるが、熱水が冷めるまで待って排水する必要がある。現行の透析装置はコスト的に有利なVP管を使用している場合が多く、熱水消毒を行う場合、効率よく排水を行うためには、排水設備に耐熱用排水管を採用する必要があった。しかしながら、そのためには建築設備を全てやり直す必要があり、多大なコストを要するため導入が困難であった。冷却水を供給して熱水と一緒に排水する方法や、冷却水を供給して熱水と混合して排水する方法なども考えられるが、前者は温度管理が難しく、また、後者は別途撹拌するための部屋を設ける必要があり、問題であった。
【0006】
本発明は、如上の事情に鑑みてなされたもので、排水管を耐熱用排水管に変えることなく、効率よく排水を行うことのできる、透析装置内の熱水消毒に使用した熱水の排水システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の、透析装置内の熱水消毒に使用した熱水の排水システムは、透析装置と、この透析装置の透析液系回路の上流端に接続され、この透析液系回路内に熱水を供給する熱水供給路と、前記透析液系回路の下流端に接続され、この透析液系回路から熱水を排出する排水路と、前記透析液系回路に供給された熱水を循環させるために前記透析液系回路の上流端と下流端とを接続する循環用回路と、この循環用回路に設けられ前記透析液系回路に供給された熱水を冷却するための熱交換器とを備えてなり、熱水供給開始後に排水温度が設定値以上に上昇したときに排水を停止させて透析液系回路内の熱水を循環させるとともに、熱水消毒終了後、前記熱交換器に冷却水を流して前記透析液系回路内の熱水を冷却させ、該熱水が所定の温度以下に冷却されたときに排水が開始されるようにされてなる、ことを特徴とする。
ここで、排水路には、透析液系回路の下流端に近接して温度センサを設けてもよい。
但し、ここ透析装置とは、透析用監視装置および個人用透析装置をいう。
【0008】
以上、一般的に本発明を記述したが、より一層の理解は、いくつかの特定の実施例を参照することによって得ることが出来る。これらの実施例は本明細書に例示の目的のためにのみ提供されるものであり、他の旨が特定されない限り、限定的なものではない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、以下のような効果が期待できる。すなわち、透析装置内に冷却手段として熱交換器を設けているので、排水機構全体を自動化することが可能となり、手間がかからず、また、コストも比較的小さいので、熱水消毒に使用した透析装置内の熱水を、効率的に排水することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1の概略説明図である。
【図2】熱水排水の制御機構のフロー図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
透析装置と、この透析装置の透析液系回路の上流端に接続され、この透析液系回路内に熱水を供給する熱水供給路と、前記透析液系回路の下流端に接続され、この透析液系回路から熱水を排出する排水路と、前記透析液系回路に供給された熱水を循環させるために前記透析液系回路の上流端と下流端とを接続する循環用回路と、この循環用回路に設けられた前記透析液系回路に供給された熱水を冷却するための熱交換器と、排水路に透析液系回路の下流端に近接して設けられた温度センサとを備えてなり、熱水供給開始後に排水温度が設定値以上に上昇したときに排水を停止させて透析液系回路内の熱水を循環させるとともに、熱水消毒終了後、前記熱交換器に冷却水を流して前記透析液系回路内の熱水を冷却させ、該熱水が所定の温度以下に冷却されたときに排水が開始されるようにされてなる。
【実施例1】
【0012】
先ず、実施例1について、図1を用いて説明する。
図1は実施例1の概略説明図である。
実施例1の熱水排水システムは、透析装置1と、この透析装置1の透析液系回路11の上流端111に接続され、この透析液系回路11内に熱水を供給する熱水供給路2と、透析液系回路11の下流端112に接続され、この透析液系回路11から熱水を排出する排水路5と、透析液系回路11に供給された熱水を循環させるために透析液系回路11の上流端111と下流端112とを接続する循環用回路14と、この循環用回路14に設けられ透析液系回路11に供給された熱水を冷却するための熱交換器3と、排水路5に透析液系回路の下流端に近接して設けられた温度センサ4を備えてなり、熱水供給開始後に排水温度が設定値以上に上昇したときに排水を停止させて透析液系回路11内の熱水を循環させるとともに、熱水消毒終了後、熱交換器3に冷却水を流して透析液系回路11内の熱水を冷却させ、熱水が所定の温度以下に冷却されたときに排水が開始されるようになっている。
【0013】
透析装置1内には透析液系回路11が設けられており、回路11には上流側から下流側に、ヒーター12と温度センサ13、ポンプP1がこの順番で設けられている(但し、ポンプP1と排水路5の間の配管に存在するチャンバやポンプ等は本発明の要部でないので省略している)。また、熱水供給路2には開閉弁V1が設けられている。熱交換器3には、熱水を冷却する冷却水を供給するための冷却水供給路31と、使用済の冷却水を回収するための冷却水回収路32が接続されており、冷却水供給路31には開閉弁V2が設けられている。また、循環用回路14には熱交換器3より上流側に透析液系回路11の下流端112に近接して開閉弁V4が設けられている。排水路5には開閉弁V3が設けられており、温度センサ4はこの開閉弁V3の上流側に透析液系回路11の下流端112に近接して設けられている。尚、水温を60℃よりかなり低い温度(例えば40℃以下)に制御する場合には、温度センサ4は温度センサ13で代用可能なので、省略しても良い。
【0014】
次に、熱水消毒に使用した透析装置内の熱水排水の制御機構について図2を用いて説明する。
図2は、熱水排水の制御機構のフロー図である。
熱水供給路2の開閉弁V1と排水路5の開閉弁V3が開き(S1)、ポンプP1が駆動して(S2)透析装置1の透析液系回路11内に熱水(通常加熱されたRO水)が供給され、排水路5から透析液系回路11内を流通する間に冷却された熱水は、排水路5を通って排水される。温度センサ4で測定した水温が50℃以上になったら(S3)、開閉弁V3が閉じ、開閉弁V4が開いて(S4)循環回路14に熱水が供給される。循環回路14が熱水で充填されると(S5)、開閉弁V1が閉じ(S6)、ヒーター12がONになって(S7)、熱水は透析液系回路11と循環用回路14内を循環し始める。次に温度センサ13で測定した水温が80℃以上になり(S8)、水温80℃以上での熱水循環時間が10分以上になったら(S9)、ヒーター12がOFFになり(S10)、開閉弁V2が開いて(S11)、冷却水供給路31から熱交換器3に冷却水が供給され、冷却水回収路か32ら使用済の冷却水を回収する操作が行われる。次に、温度センサ13の水温が50℃以下になったら(S12)、開閉弁V2が閉じ、開閉弁V1、V3が開いて(S13)、透析液系回路11内に熱水供給路2から常温のRO水が導入され、冷却された熱水は常温のRO水によって置換され、排水路5を通って排水される。熱水の排水が終了すると(S14)、開閉弁V4が閉じ(S15)、ポンプ1が停止し、開閉弁V1、V3が閉じる(S16)。
尚、S5は例えば開閉弁V4を開いたときからの経過時間で判断できるようにすることが可能であり、又、S16は開閉弁V3を開いたときからの経過時間で判断できるようにすることが可能である。
【符号の説明】
【0015】
1 透析装置
11 透析液系回路
12 ヒーター
13 温度センサ
14 循環用回路
2 熱水供給路
3 熱交換器
31 冷却水供給路
32 冷却水回収路
4 温度センサ
5 排水路
V1、V2、V3、V4 開閉弁
P1 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透析装置と、該透析装置の透析液系回路の上流端に接続され、該透析液系回路内に熱水を供給する熱水供給路と、前記透析液系回路の下流端に接続され、該透析液系回路から熱水を排出する排水路と、前記透析液系回路に供給された熱水を循環させるために前記透析液系回路の上流端と下流端とを接続する循環用回路と、該循環用回路に設けられ前記透析液系回路に供給された熱水を冷却するための熱交換器とを備えてなり、熱水供給開始後に排水温度が設定値以上に上昇したときに排水を停止させて透析液系回路内の熱水を循環させるとともに、熱水消毒終了後、前記熱交換器に冷却水を流して前記透析液系回路内の熱水を冷却させ、該熱水が所定の温度以下に冷却されたときに排水が開始されるようにされてなる、透析装置内の熱水消毒に使用した熱水の排水システム。
【請求項2】
排水路に透析液系回路の下流端に近接して温度センサを設けてなる請求項1に記載の排水システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−100790(P2012−100790A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250383(P2010−250383)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】