説明

熱源水供給システム

【課題】熱源水を加熱するための熱源として太陽熱を用いることができながら、システム全体としてその太陽熱を有効に活用して、エネルギー効率の向上を図ること。
【解決手段】熱源装置2にて加熱された熱源水N1を複数の熱需要家に順に供給して熱源装置2に戻す熱源水循環ライン4において複数の熱需要家に供給する熱源水N1よりも低温の熱源水N1が通流する低温通流部位には、太陽熱回収装置51にて回収した太陽熱を有する熱媒体N3と熱源水N1とを熱交換させる太陽熱熱交換器52が備えられ、複数の熱需要家に給水する水N4と太陽熱回収装置51にて回収した太陽熱を有する熱媒体N3とを熱交換させる給水予熱熱交換器54と、太陽熱回収装置51にて回収した太陽熱を有する熱媒体N3を太陽熱熱交換器52に通流する第1通流状態と給水予熱熱交換器54に通流する第2通流状態とに切換自在な通流状態切換手段20,57とが備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱源装置にて加熱された熱源水を複数の熱需要家に順に供給して前記熱源装置に戻す熱源水循環ラインを備え、各熱需要家には、前記熱源水循環ラインから熱源水を取り込んでその取り込んだ熱源水を前記熱源水循環ラインの取り込み箇所よりも熱源水の流れ方向の下流側に戻すとともに、取り込んだ熱源水を利用して熱消費部への熱供給を行う熱供給装置が備えられている熱源水供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような熱源水供給システムは、例えば、熱需要家である各家庭にて給湯や暖房等の熱消費部への熱供給を行うに当り、複数の家庭をある一つのグループとし、その一つのグループに対して熱源装置としてのコージェネレーション設備等を設け、コージェネレーション設備が発生する熱を複数の家庭で共用の熱源とすることにより、トータルとしてエネルギー効率の向上を図るものである。
【0003】
従来の熱源水供給システムでは、各熱需要家に、熱源水循環ラインから熱源水を取り込んでその熱源水が有する熱を蓄熱可能な蓄熱タンクを備え、その蓄熱タンクに蓄熱された熱を給湯箇所や暖房端末等の熱消費部に供給する熱供給装置が備えられている。この熱供給装置は、熱源水循環ラインから取り込んだ熱源水を蓄熱タンクに通流させて、熱源水が有する熱を蓄熱タンクに貯留されている蓄熱水にて回収して、蓄熱タンクへの蓄熱を行っている。そして、熱供給装置は、蓄熱タンクに貯留されている蓄熱水を給湯箇所に供給することで給湯を行い、熱源水循環ラインから取り込んだ熱源水を蓄熱タンクに通流させて、蓄熱タンクの内部に備えられた熱交換器において熱源水にて熱媒体を加熱しその加熱された熱媒体を熱消費部としての暖房端末等に供給することで暖房を行う(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−2504000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載のシステムでは、熱源水循環ラインにて複数の熱需要家に供給する熱源水を加熱するために、コージェネレーション設備等の熱源装置が設けられているが、熱源水を加熱するための熱源として、熱源装置に加えて、太陽熱を用いることが考えられている。
【0006】
しかしながら、太陽熱を回収した熱媒体にて熱源水を加熱することを想定すると、夏季等には、十分な太陽熱を回収して熱媒体を高い温度にすることができるが、冬季等には、十分な太陽熱を回収することができず、熱媒体の温度が低くなり、熱媒体にて熱源水を加熱できなくなる可能性がある。
また、複数の熱需要家の熱需要を賄うために、熱源水循環ラインの熱源水の温度は比較的高温に維持されていることから、この比較的高温の熱源水を太陽熱にて加熱するためには、十分な太陽熱が回収されている(即ち、比較的高温の熱が得られている)必要がある。しかしながら、上述の如く、冬季等には、十分な太陽熱を回収することができず、太陽熱を用いて熱源水を加熱できなくなる。
以上のことから、単に、太陽熱を回収した熱媒体にて熱源水を加熱するだけでは、熱媒体にて熱源水を加熱できなくなることがあり、熱源水を加熱するための熱源として、太陽熱を用いることは難しいものとなっていた。
【0007】
本発明は、かかる点に着目してなされたものであり、その目的は、熱源水を加熱するための熱源として太陽熱を用いることができながら、システム全体としてその太陽熱を有効に活用して、エネルギー効率の向上を図ることができる熱源水供給システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明に係る熱源水供給システムの特徴構成は、熱源装置にて加熱された熱源水を複数の熱需要家に順に供給して前記熱源装置に戻す熱源水循環ラインを備え、各熱需要家には、前記熱源水循環ラインから熱源水を取り込んでその取り込んだ熱源水を前記熱源水循環ラインの取り込み箇所よりも熱源水の流れ方向の下流側に戻すとともに、取り込んだ熱源水を利用して熱消費部への熱供給を行う熱供給装置が備えられている熱源水供給システムにおいて、
前記熱源水循環ラインにおいて複数の熱需要家に供給する熱源水よりも低温の熱源水が通流する低温通流部位には、太陽熱回収装置にて回収した太陽熱を有する熱媒体と熱源水とを熱交換させる太陽熱熱交換器が備えられ、複数の熱需要家に給水する水と前記太陽熱回収装置にて回収した太陽熱を有する熱媒体とを熱交換させる給水予熱熱交換器と、前記太陽熱回収装置にて回収した太陽熱を有する熱媒体を前記太陽熱熱交換器に通流する第1通流状態と前記給水予熱熱交換器に通流する第2通流状態とに切換自在な通流状態切換手段とが備えられている点にある。
【0009】
本特徴構成によれば、太陽熱を回収した熱媒体(太陽熱を有する熱媒体)の放熱対象を、熱源水循環ラインの熱源水とする太陽熱熱交換器に加え、複数の熱需要家に給水する水とする給水予熱熱交換器が備えられている。そして、通流状態切換手段が太陽熱を有する熱媒体の通流形態を第1通流状態と第2通流状態とに切り換えることで、太陽熱回収装置にて回収した太陽熱を有する熱媒体の放熱対象を、熱源水循環ラインの熱源水とするか又は複数の熱需要家に給水する水とするかを切り換えることができる。
【0010】
これにより、夏季等、十分な太陽熱を回収できるときには、通流状態切換手段が第1通流状態に切り換えて、太陽熱を回収して高温となった熱媒体にて熱源水を加熱することができる。そして、太陽熱熱交換器は、複数の熱需要家に供給する熱源水よりも低温の熱源水が通流する低温通流部位に備えられているので、太陽熱熱交換器では、十分な太陽熱を回収して高温となった熱媒体と複数の熱需要家に供給する熱源水よりも低温の熱源水とを熱交換させるので、熱媒体による熱源水の加熱を確実に行える。
また、夏季以外等、十分な太陽熱を回収できないときには、通流状態切換手段が第2通流状態に切り換えて、太陽熱を回収した熱媒体にて複数の熱需要家に給水する水を予熱することができる。
【0011】
このように、十分な太陽熱を回収できるときには、通流状態切換手段が第1通流状態に切り換えて、熱源水を加熱するための熱源として太陽熱を用いることができながら、十分な太陽熱を回収できないときであっても、通流状態切換手段が第2通流状態に切り換えて、太陽熱にて複数の熱需要家に給水する水を予熱して、システムとしてその太陽熱を有効に活用することができ、エネルギー効率の向上を図ることができる熱源水供給システムを実現できるに至った。
【0012】
本発明に係る熱源水供給システムの更なる特徴構成は、前記熱源水循環ラインの前記低温通流部位は、複数の熱需要家に供給したのち前記熱源装置に熱源水を戻す部位に設定されている点にある。
【0013】
本特徴構成によれば、複数の熱需要家に供給したのち熱源装置に戻す熱源水の温度は低温になっていることから、その低温の熱源水が通流する部位に太陽熱熱交換器を備えることができる。したがって、太陽熱熱交換器では、熱媒体と熱源水との温度差をより大きくすることができ、熱媒体にて熱源水を効率よく加熱することができる。その結果、システムとして活用できる太陽熱の熱量を増やすことができ、エネルギー効率の向上をより一層図ることができる。
【0014】
本発明に係る熱源水供給システムの更なる特徴構成は、前記熱源水循環ライン内の熱源水の減少に伴って熱源水を補給する補給手段を備え、前記熱源水循環ラインの前記低温通流部位は、前記熱源水循環ラインに前記補給手段により熱源水を補給する部位に設定されている点にある。
【0015】
本特徴構成によれば、補給手段は、通常、給水することで熱源水循環ラインに熱源水を補給しているので、熱源水循環ラインに補給手段により熱源水を補給する熱源水の温度は低温になっている。よって、その低温の熱源水が通流する部位に太陽熱熱交換器を備えることができ、太陽熱熱交換器では、熱媒体と熱源水との温度差をより大きくすることができ、熱媒体にて熱源水を効率よく加熱することができる。その結果、システムとして活用できる太陽熱の熱量を増やすことができ、エネルギー効率の向上をより一層図ることができる。
【0016】
本発明に係る熱源水供給システムの更なる特徴構成は、前記熱源水循環ライン内の熱源水の減少に伴って熱源水を補給する補給手段を備え、前記熱供給装置は、前記熱源水循環ラインから取り込んだ熱源水を前記熱消費部としての給湯箇所に給湯自在に構成されている点にある。
【0017】
本特徴構成によれば、熱供給装置が、熱源水循環ラインから取り込んだ熱源水を給湯箇所に給湯するので、熱源水循環ラインの熱源水の流量が減少する。よって、補給手段により熱源水循環ラインに熱源水が補給されることになる。そして、上述の如く、補給手段により補給される熱源水は通常低温となっていることから、その熱源水の補給により熱源水循環ラインの低温通流部位での熱源水の温度も低くすることができる。つまり、補給手段により補給された低温の熱源水が、熱源装置に供給されて加熱されたのち、複数の熱需要家に供給されるので、上述の如く、複数の熱需要家に供給したのち熱源装置に熱源水を戻す部位を低温通流部位として設定した場合には、その低温通流部を通流する熱源水の温度を低くすることができる。また、上述の如く、補給手段により熱源水を補給する部位を低温通流部位として設定した場合には、補給手段により補給される低温の熱源水が低温通流部を通流するので、低温通流部位の熱源水の温度を確実に低くできる。したがって、低温通流部位に備えられる太陽熱熱交換器では、熱源水の温度を極力低くでき、熱媒体と熱源水との温度差を大きくして、システムとして活用できる太陽熱の熱量を増加させ易いものとなる。
【0018】
本発明に係る熱源水供給システムの更なる特徴構成は、前記通流状態切換手段が、前記太陽熱回収装置にて回収した太陽熱を有する熱媒体の温度が前記太陽熱熱交換器に供給される熱源水の温度よりも高いと、前記第1通流状態に切り換え、前記熱媒体の温度が前記熱源水の温度以下であると、前記第2通流状態に切り換える点にある。
【0019】
本特徴構成によれば、通流状態切換手段における第1通流状態と第2通流状態との切り換えについて、太陽熱を回収した熱媒体の温度と太陽熱熱交換器に供給される熱源水の温度との大小関係に基づいて行う。このように、太陽熱を回収した熱媒体の温度と熱源水の温度との大小関係を判別することで、実際に太陽熱を回収した熱媒体にて熱源水を加熱できるか否かを的確に判別することができる。よって、通流状態切換手段が、実際に太陽熱を回収した熱媒体にて熱源水を加熱できるかを判別し、その判別結果に基づいて、第1通流状態と第2通流状態とに切り換えるので、第1通流状態と第2通流状態との切り換えを実際の状況に応じて適切に行うことができる。
【0020】
本発明に係る熱源水供給システムの更なる特徴構成は、前記熱源水循環ラインにて複数の熱需要家に供給する熱源水の温度を高温用目標温度範囲内に調整する高温調整状態と低温用目標温度範囲内に調整する低温調整状態とに切換自在な熱源水温度調整手段が備えられている点にある。
【0021】
本特徴構成によれば、熱源水温度調整手段が高温調整状態と低温調整状態とに切り換えることで、複数の熱需要家に供給する熱源水の温度を高温用目標温度範囲内とするか低温用目標温度範囲内とするかを切り換えることができる。冬季等では、熱需要家の熱需要が多いが、夏季等では、熱需要家の熱需要が少ないので、例えば、冬季等では、熱源水温度調整手段が高温調整状態に切り換え、夏季等では、熱源水温度調整手段が低温調整状態に切り換えることができ、熱需要家の熱需要に応じて熱需要家に供給する熱源水の温度を調整することができる。即ち、季節で異なる複数の熱需要を満たすことができる。
また、熱源水温度調整手段が低温調整状態に切り換えると、低温用目標温度範囲内の熱源水を熱需要家に供給するので、低温通流部位を通流する熱源水の温度は、高温調整状態に切り換えたときよりも低温となる。そこで、例えば、夏季等には、熱源水温度調整手段を低温状態に切り換えておくことで、通流状態切換手段を第1通流状態に切り換えたときに、太陽熱熱交換器での熱源水の温度をより低くでき、熱媒体と熱源水との温度差をより大きくして、太陽熱を回収した熱媒体にて熱源水を効率よく加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態における熱源水供給システムの全体構成図
【図2】熱供給装置の構成図
【図3】第2実施形態における熱源水供給システムの全体構成図
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る熱源水供給システムの実施形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
この熱源水供給システムは、図1に示すように、熱源水N1を貯留する熱源水タンク1と、熱源水N1を加熱する熱源装置2と、熱源水タンク1に熱源水N1を給水する給水手段3と、熱源装置2にて加熱された熱源水N1及び熱源水タンク1に貯留されている熱源水N1を複数の熱需要家に順に供給して熱源装置2に戻す熱源水循環ライン4とを備えている。そして、複数の熱需要家の夫々には、熱源水循環ライン4の取り込み箇所B1から熱源水N1を取り込んでその取り込んだ熱源水N1を熱源水循環ライン4の取り込み箇所B1よりも熱源水N1の流れ方向の下流側の戻し箇所B2に戻すとともに、取り込んだ熱源水N1が有する熱を給湯箇所や暖房端末等の熱消費部に供給する熱供給装置5が備えられている。これにより、熱源装置2を共用の熱源として、エネルギー効率の向上を図りながら、各熱需要家における熱供給装置5での熱消費を実現可能としている。
【0024】
〔熱源装置〕
熱源装置2は、例えば、都市ガスを燃料とするガスエンジンや燃料電池を備えて熱と電気とを発生する熱電併給装置である。そして、熱電併給装置にて発生した熱を回収した排熱搬送流体N2を循環させる排熱搬送流体循環路6が備えられ、その排熱搬送流体循環路6には、熱電併給装置にて発生した熱を回収した排熱搬送流体N2と熱源水N1とを熱交換させる排熱熱交換器7と、排熱搬送流体N2を循環させる排熱搬送流体循環ポンプ8とが備えられている。
【0025】
〔給水手段〕
給水手段3は、熱源水タンク1の下部に熱源水N1を供給する給水路にて構成されており、例えば給水圧や給水ポンプの作動により熱源水N1を熱源水タンク1に給水している。ここで、給水手段3にて熱源水タンク1に給水した熱源水N1を熱源水循環ライン4に補給するので、補給手段が、熱源水タンク1及び給水手段3にて構成されている。
【0026】
〔熱源水循環ライン〕
熱源水循環ライン4は、往き部位4aにて順序付けられた各熱需要家に熱源水N1を供給するとともに、戻り部位4bにて各熱需要家を一巡した後の熱源水N1を熱源装置2及び熱源水タンク1に戻すシングルループ配管にて構成されている。熱源水タンク1と排熱熱交換器7とは、往き部位4a及び戻り部位4bの夫々に接続され、並列状態で設けられている。熱源水タンク1の上部は往き部位4aに接続され且つ熱源水タンク1の下部は戻り部位4bに接続されている。これにより、熱源水循環ライン4は、熱源水タンク1の下部から取り出した熱源水N1を排熱熱交換器7にて加熱し、その加熱した熱源水N1を熱源水タンク1の上部に戻す循環路としても作用するように構成されている。つまり、熱源水循環ライン4に備えられた第2熱源水循環ポンプ10を作動させることで、熱源水タンク1の下部から取り出した熱源水N1を排熱熱交換器7にて加熱し、その加熱した熱源水N1を熱源水タンク1の上部に戻すことができる。このようにして、熱源装置2は、熱源水タンク1に貯留されている熱源水N1を加熱自在に構成されている。
【0027】
熱源水循環ライン4の往き部位4aには、熱源水N1の流れ方向において熱源水タンク1の上部との接続箇所よりも下流側に、第1熱源水循環ポンプ9、熱源水N1の温度を検出する第1熱源水温度センサT1、熱源水N1の流量を検出する第1熱源水流量センサR1が設けられている。
【0028】
熱源水循環ライン4の戻り部位4bには、熱源水N1の流れ方向において熱源水タンク1の下部との接続箇所よりも上流側に、熱源水N1の流量を検出する第2熱源水流量センサR2、熱源水N1の温度を検出する第2熱源水温度センサT2が設けられている。熱源水N1の流れ方向において熱源水タンク1の下部との接続箇所よりも下流側の戻り路4bには、熱源水N1の温度を検出する第3熱源水温度センサT3、第2熱源水循環ポンプ10が設けられている。
【0029】
〔太陽熱熱交換器〕
熱源水循環ライン4には、排熱熱交換器7に加えて、太陽熱回収装置51にて回収した太陽熱を有する熱媒体N3(例えば温水)にて熱源水N1を加熱する太陽熱熱交換器52が設けられている。太陽熱熱交換器52は、熱源水循環ライン4の戻り部位4bにおいて第3熱源水温度センサT3と第2熱源水循環ポンプ10との間に配設されており、熱源水循環ライン4において複数の熱需要家に供給したのち熱源装置2に熱源水N1を戻す戻り部位4bに配設されている。これにより、熱源水循環ライン4において複数の熱需要家を一巡して低温となった熱源水N1が通流する低温通流部位に太陽熱熱交換器52を配設することができ、太陽熱熱交換器52において熱媒体N3と熱源水N1との温度差を極力大きくして熱源水N1を効率よく加熱することができる。
【0030】
上述の如く、熱源水循環ライン4は、熱源水タンク1の下部から取り出した熱源水N1を排熱熱交換器7にて加熱し、その加熱した熱源水N1を熱源水タンク1の上部に戻す循環路としても作用するように構成されている。このように熱源水タンク1に貯留されている熱源水N1を排熱熱交換器7にて加熱する場合に、熱源水タンク1の下部から取り出した熱源水N1が太陽熱熱交換器52を通流するので、排熱熱交換器7に加えて、太陽熱熱交換器52によっても熱源水N1を加熱することができる。そして、給水手段3により熱源水タンク1に熱源水N1を給水してその熱源水N1を排熱熱交換器7にて加熱する場合には、給水手段3が熱源水タンク1の下部に熱源水N1を給水するので、熱源水タンク1の下部から取り出した熱源水N1が低温になっており、その低温の熱源水N1が太陽熱熱交換器52に供給される。これにより、熱源水N1を熱源装置2にて加熱する場合に低温の熱源水N1が通流する低温通流部位に太陽熱熱交換器52を配設している。
【0031】
太陽熱回収装置51と太陽熱熱交換器52との間で熱媒体N3を循環させる熱媒体循環路53が設けられており、この熱媒体循環路53により太陽熱回収装置51にて回収した太陽熱を有する熱媒体N3が太陽熱熱交換器52に供給され、太陽熱熱交換器52を通過した熱媒体N3が太陽熱回収装置51に戻される。ここで、熱媒体循環路53は、例えば、真空管等により高温の熱媒体を通流可能なもので構成されており、太陽熱回収装置51にて回収した太陽熱により高温となった熱媒体N3を通流可能に構成されている。
【0032】
〔給水予熱熱交換器〕
熱媒体循環路53には、太陽熱熱交換器52と並列状態で給水予熱熱交換器54が設けられている。つまり、熱媒体循環路53は、その途中にて分岐したのち合流する第1分岐合流部位53aと第2分岐合流部位53bとを並列状態で備えており、第1分岐合流部位53aに太陽熱熱交換器52が備えられ、第2分岐合流部位53bに給水予熱熱交換器54が備えられている。
【0033】
給水予熱熱交換器54は、給水タンク54に貯留されている水N4と太陽熱回収装置51にて回収した太陽熱を有する熱媒体N3とを熱交換させており、給水タンク55には、複数の熱需要家に給水する水N4が貯留されている。ここで、給水予熱熱交換器54は、給水タンク55の下部に貯留されている水N4と熱媒体N3とを熱交換させるように配設されており、熱媒体N3と水N4との温度差をより大きくして熱媒体N3にて水N4を効率よく加熱できる。給水タンク55に貯留されている水N4は、図外の給水ポンプ等を作動させることで、熱需要家用給水路56により複数の熱需要家の熱供給装置5に供給自在に構成されている。
【0034】
〔熱媒体の通流形態〕
熱媒体循環路53において第1分岐合流部位53aと第2分岐合流部位53bとの分岐箇所には、太陽熱回収装置51にて太陽熱を回収した熱媒体N3を第1分岐合流部位53aに通流させて太陽熱熱交換器52に通流させる第1通流状態(図中実線矢印参照)と、太陽熱回収装置51にて太陽熱を回収した熱媒体N3を第2分岐合流部位53bに通流させて給水予熱熱交換器54に通流させる第2通流状態(図中点線矢印参照)とに切換自在な通流状態切換用三方弁57が備えられている。
【0035】
〔補助加熱装置〕
熱源水循環ライン4には、排熱熱交換器7及び太陽熱熱交換器52に加えて、熱源水N1を加熱する補助加熱装置11が設けられている。補助加熱装置11は、排熱熱交換器7及び熱源水タンク1と並列状態になるように、戻り部位4bと往き部位4aとを接続する分岐循環路12に設けられている。分岐循環路12には、補助加熱装置11への熱源水N1の供給を断続するともに、その供給量を制御する通流制御弁13が設けられている。補助加熱装置11は、例えば、ガスバーナを燃焼させて熱源水N1を加熱するように構成されている。
【0036】
〔熱源水供給システムの制御構成〕
熱源水供給システムの運転を制御する運転制御装置20が設けられている。運転制御装置20は、熱源装置2、排熱搬送流体循環ポンプ8、第1熱源水循環ポンプ9、第2熱源水循環ポンプ10、通流制御弁13、補助加熱装置11、太陽熱回収装置51、通流状態切換用三方弁57の夫々の作動を各別に制御するように構成されている。運転制御装置20には、第1熱源水温度センサT1、第2熱源水温度センサT2、第3熱源水温度センサT3、第1熱源水流量センサR1、第2熱源水流量センサR2の夫々の検出情報が入力されるように構成されている。また、図示は省略するが、太陽熱回収装置51には、太陽熱を回収した熱媒体N3の温度を検出する熱媒体温度検出センサが備えられており、その熱媒体温度検出センサの検出情報も運転制御装置20に入力されるように構成されている。
【0037】
〔熱供給装置〕
図2に示すように、熱供給装置5は、熱源水循環ライン4の取り込み箇所B1に上流端部が接続されて熱源水循環ライン4の取り込み箇所B1よりも熱源水N1の流れ方向の下流側の戻し箇所B2に下流端部が接続された熱源水通流路21と、その熱源水通流路21の途中部位から分岐された給湯路22とを備えている。これにより、熱源水循環ライン4を通流する熱源水N1の一部が常時熱源水通流路21に通流自在となっており、熱源水通流路21に熱源水循環ライン4から熱源水N1を取り入れている。そして、この熱源水通流路21への熱源水N1の通流により給湯路22には熱源水循環ライン4の熱源水N1の圧力が常時かかっており、その圧力により給湯路22に対して熱源水N1を供給自在となっている。したがって、熱供給装置5は、熱源水循環ライン4から熱源水N1の少なくとも一部を常時取り込んで、その取り込んだ熱源水N1を熱消費部としての給湯栓等の給湯箇所23に給湯自在に構成されている。
【0038】
給湯路22には、給湯箇所23への給湯を断続自在な給湯制御弁24が設けられている。また、給湯路22には、熱源水N1に熱需要家用給水路56から取り込んだ水N4を混合させる混合弁44が備えられており、この混合弁44にて熱源水N1に対する水N4の混合量を調整することで給湯目標温度に混合された湯水を給湯箇所23に給湯自在に構成されている。
【0039】
ここで、熱源水通流路21に通流せず熱源水循環ライン4をそのまま通流する熱源水N1の流量と熱源水通流路21に取り込まれる熱源水N1の水量との比率は調整自在に構成されている。例えば、流路の抵抗等を調整することでその比率を調整することができ、その調整後の一定の比率に設定することができる。また、例えば、熱源水通流路21や熱源水循環ライン4に流量調整弁等を設けることでその比率を可変にすることもできる。
【0040】
熱源水通流路21には、給湯路22の分岐箇所よりも上流側に、第1熱交換器25及び第2熱交換器26が設けられている。第1熱交換器25は、熱源水循環ライン4から取り込んだ熱源水N1と暖房循環路27にて循環される熱媒体とを熱交換させるように構成されている。そして、暖房循環路27には暖房循環ポンプ28が設けられ、この暖房循環ポンプ28を作動させることで、第1熱交換器25において熱源水N1にて加熱された熱媒体を床暖房パネル等の熱消費部としての暖房端末29に循環供給する。第2熱交換器26は、熱源水循環ライン4から取り込んだ熱源水N1とふろ循環路30にて循環される浴槽水とを熱交換させるように構成されている。そして、ふろ循環路30にはふろ循環ポンプ31が設けられ、このふろ循環ポンプ31を作動させることで、第2熱交換器26において熱源水N1にて加熱された浴槽水を熱消費部としての浴槽32に循環供給する。このように、熱供給装置5は、第1熱交換器25及び第2熱交換器26において熱源水循環ライン4から取り込んだ熱源水N1にて熱消費部に循環供給する熱媒体を加熱して、暖房端末29や浴槽32等の熱消費部への熱供給を行う。
【0041】
図示は省略するが、熱供給装置5の運転を制御する熱供給制御装置が設けられており、熱供給制御装置は、給湯制御弁24、混合弁44、暖房循環ポンプ28、ふろ循環ポンプ31の夫々の作動を各別に制御するように構成されている。そして、熱供給制御装置は、熱源水循環ライン4から取り込んだ熱源水N1を給湯路22に給湯する給湯運転、暖房端末29や浴槽32の熱消費部にて熱を消費する熱消費運転の夫々を実行可能に構成されている。
【0042】
給湯運転では、熱供給制御装置が、給湯栓等の開操作に伴って給湯制御弁24を開動作させることで、熱源水循環ライン4から取り込んだ熱源水N1を給湯路22を通して給湯箇所23に給湯する。この給湯運転では、上述の如く、給湯路22に備えられた混合弁44にて混合後の湯水の温度が給湯目標温度となるように熱源水N1に対して熱需要家用給水路56から取り込んだ水N4の混合量を調整している。そして、熱供給制御装置は、給湯栓等の閉操作に伴って給湯制御弁24を閉動作させて給湯運転を終了する。
【0043】
熱供給制御装置は、熱消費運転として、暖房端末29から運転開始要求があると暖房循環ポンプ28を作動させることで、第1熱交換器25において熱源水循環ライン4から取り込んだ熱源水N1にて熱媒体を加熱し、その加熱された熱媒体を暖房端末29に循環供給して暖房運転を行う。そして、熱供給制御装置は、暖房端末29から運転停止要求があると暖房循環ポンプ28を作動停止させて暖房運転を終了する。
また、熱供給制御装置は、熱消費運転として、浴槽32のリモコン等から追焚開始要求があるとふろ循環ポンプ31を作動させることで、第2熱交換器26において熱源水循環ライン4から取り込んだ熱源水N1にて浴槽水を加熱し、その加熱された浴槽水を浴槽32に循環供給して浴槽水の追焚運転を行う。そして、熱供給制御装置は、浴槽32のリモコン等から追焚停止要求があったり追焚開始から設定時間が経過すると、ふろ循環ポンプ31を作動停止させて追焚運転を終了する。
【0044】
〔熱源水循環運転〕
図1に戻り、運転制御装置20による運転について説明する。
運転制御装置20は、熱源装置2にて加熱された熱源水N1及び熱源水タンク1に貯留されている熱源水N1を熱源水循環ライン4にて循環させる熱源水循環運転を行う。この熱源水循環運転では、運転制御装置20が、熱源装置2、排熱搬送流体循環ポンプ8、第1熱源水循環ポンプ9、及び、第2熱源水循環ポンプ10を作動させて、排熱熱交換器7での排熱搬送流体N2による熱源水N1の加熱を行えるようにするとともに、その排熱熱交換器7にて加熱された熱源水N1及び熱源水タンク1に貯留されている熱源水N1を熱源水循環ライン4にて循環させる。また、運転制御装置20は、太陽熱回収装置51を作動させており、太陽熱熱交換器52において熱媒体N3にて熱源水N1を加熱可能としている。
【0045】
そして、運転制御装置20は、熱源水循環ライン4にて複数の熱需要家に供給する熱源水N1の温度を目標温度範囲内の目標温度に調整するとともに、熱源水循環ライン4にて複数の熱需要家に供給する熱源水N1の流量を目標流量範囲内の目標流量に調整すべく、第1熱源水循環ポンプ9及び第2熱源水循環ポンプ10の回転速度を制御する。
【0046】
ここで、運転制御装置20は、第1熱源水温度センサT1の検出温度を、熱源水循環ライン4にて複数の熱需要家に供給する熱源水N1の温度として取得しており、第1熱源水流量センサR1の検出流量を、熱源水循環ライン4にて複数の熱需要家に供給する熱源水N1の流量として取得している。よって、運転制御装置20は、第1熱源水温度センサT1の検出温度が目標温度となり且つ第1熱源水流量センサR1の検出流量が目標流量となるように、第1熱源水循環ポンプ9及び第2熱源水循環ポンプ10の回転速度を制御する。また、運転制御装置20は、第2熱源水温度センサT2の検出温度を、熱源水循環ライン4にて熱源装置2に戻す熱源水N1の温度として取得しており、第2熱源水流量センサR2の検出流量を、熱源水循環ライン4にて熱源装置2に戻す熱源水N1の流量として取得している。
【0047】
例えば、運転制御装置20は、第2熱源水循環ポンプ10の回転速度を調整することで、排熱熱交換器7に供給する熱源水N1の流量を調整することができるので、運転制御装置20は、第1熱源水温度センサT1の検出温度が目標温度になるように、第2熱源水循環ポンプ10の回転速度を制御している。また、運転制御装置20は、第2熱源水循環ポンプ10の回転速度を制御しても、第1熱源水温度センサT1の検出温度が目標温度よりも低いと、通流制御弁13を開弁動作させるとともに、補助加熱装置11を作動させることで、第1熱源水温度センサT1の検出温度を目標温度に調整する。そして、運転制御装置20は、第1熱源水流量センサR1の検出流量が目標流量になるように、第1熱源水循環ポンプ9の回転速度を制御する。ここで、目標流量は、下記の〔数1〕にて求められる。
【0048】
〔数1〕
FQ1=Fset+Ft+Ff
ここで、FQ1が目標流量であり、Fsetが基準流量(例えば、50戸の集合住宅を仮定した場合は30〜60リットル/min、もう少し戸数が少ない場合は40〜50リットル/min)であり、Ftが温度降下による補正流量であり、Ffが流量降下による補正流量である。
【0049】
そして、温度降下による補正流量Ftは下記の〔数2〕にて求められ、流量降下による補正流量Ffは下記の〔数3〕にて求められる。つまり、熱源水循環ライン4の戻り部位4bにて熱源装置2に戻す熱源水N1の流量をゼロよりも多い流量に確保しながら、熱源水循環ライン4の戻り部位4bにて熱源装置2に戻す熱源水N1の温度が65℃以上になると、目標流量を低下させて熱需要家に供給する熱源水N1の流量を低下させ、熱源水循環ライン4の戻り部位4bにて熱源装置2に戻す熱源水N1の温度が60℃以下になると、目標流量を増加させて熱需要家に供給する熱源水N1の流量を増加させる。
【0050】
〔数2〕
Ta>65℃の場合
Ft=(65−Ta)×1×a
Ta<60℃の場合
Ft=(60−Ta)×2×a
ここで、Taは熱源水循環ライン4の戻り部位4bにて熱源装置2に戻す熱源水N1の温度であり、具体的には第2熱源水温度センサT2の検出温度である。aは温度を流量に換算するための定数である。
【0051】
〔数3〕
Ff=(FQ2−FQ3)/1.5
ここで、FQ2は熱源水循環ライン4にて複数の熱需要家に供給する熱源水N1の流量であり、具体的には第1熱源水流量センサR1の検出流量である。FQ3は熱源水循環ライン4の戻り部位4bにて熱源装置2に戻す熱源水N1の流量であり、具体的には第2熱源水流量センサR2の検出流量である。
【0052】
上述の如く、熱源水循環運転では、熱源装置2にて加熱された熱源水N1及び熱源水タンク1に貯留されている熱源水N1を熱源水循環ライン4にて複数の熱需要家に供給するのであるが、本発明に係る熱源水供給システムでは、熱源装置2に加えて、太陽熱熱交換器52を備えており、熱源装置2の熱だけでなく、太陽熱によっても、熱源水N1を加熱可能となっている。しかしながら、太陽熱回収装置51では、夏季以外に十分な太陽熱を回収できず、熱源水N1を加熱できるまで熱媒体N3の温度を高くすることができない可能性がある。そこで、本発明に係る熱源水供給システムでは、上述の如く、太陽熱熱交換器53に加えて、給水予熱熱交換器54を備えており、熱媒体循環路53の通流状態切換用三方弁57により熱媒体N3を太陽熱熱交換器52に通流させる第1通流状態(図中実線矢印参照)と熱媒体N3を給水予熱熱交換器54に通流させる第2通流状態(図中点線矢印参照)とに切換自在に構成されている。
【0053】
第1通流状態と第2通流状態との切り換えについては、運転制御装置20が、太陽熱回収装置51にて回収した太陽熱を有する熱媒体N3の温度と太陽熱熱交換器52に供給される熱源水N1の温度とを比較して、第1通流状態と第2通流状態とに切り換えている。このように、通流状態切換手段が、運転制御装置20及び通流状態切換用三方弁57から構成されている。運転制御装置20は、太陽熱回収装置51に備えられた図外の熱媒体温度検出センサの検出温度を、太陽熱回収装置51にて回収した太陽熱を有する熱媒体N3の温度として取得しており、第3熱源水温度センサT3の検出温度を、太陽熱熱交換器52に供給される熱源水N1の温度として取得している。
【0054】
運転制御装置20は、太陽熱回収装置51に備えられた熱媒体温度検出センサの検出温度が第3熱源水温度センサT3の検出温度よりも高い場合には、通流状態切換用三方弁57を第1通流状態に切り換えて太陽熱熱交換器52に熱媒体N3を通流させ、太陽熱回収装置51に備えられた熱媒体温度検出センサの検出温度が第3熱源水温度センサT3の検出温度以下である場合には、通流状態切換用三方弁57を第2通流状態に切り換えて給水予熱熱交換器54に熱媒体N3を通流させている。
【0055】
例えば、太陽熱熱交換器52に供給される熱源水N1の温度(第3熱源水温度センサT3の検出温度)よりも切換用設定温度(例えば5℃)だけ高い温度を切換基準温度とすると、太陽熱回収装置51に備えられた熱媒体温度検出センサの検出温度が切換基準温度以上であれば、通流状態切換用三方弁57を第1通流状態に切り換える。上水温度よりも上水用設定温度(例えば5℃)だけ高い温度を上水基準温度とすると、太陽熱回収装置51に備えられた熱媒体温度検出センサの検出温度が切換基準温度未満で且つ上水基準温度よりも高いと、通流状態切換用三方弁57を第2通流状態に切り換える。そして、太陽熱回収装置51に備えられた熱媒体温度検出センサの検出温度が上水基準温度以下であると、太陽熱回収装置51を作動停止させることができる。
具体的には、例えば、冬季では、太陽熱熱交換器52に供給される熱源水N1の温度(第3熱源水温度センサT3の検出温度)が60℃程度であるが、給水の補給により太陽熱熱交換器52に供給される熱源水N1の温度(第3熱源水温度センサT3の検出温度)が60℃よりも低くなるので、太陽熱回収装置51に備えられた熱媒体温度検出センサの検出温度が60℃以上であると、通流状態切換用三方弁57を第1通流状態に切り換え、太陽熱回収装置51に備えられた熱媒体温度検出センサの検出温度が60℃未満であると、通流状態切換用三方弁57を第2通流状態に切り換えることができる。また、夏季では、後述する如く、熱源水循環ライン4にて複数の熱需要家に供給する熱源水N1の温度を低温用目標温度範囲内に調整する低温調整状態に切り換えることで、複数の熱需要家に供給する熱源水N1の温度を低くしており(例えば60℃程度)、太陽熱熱交換器52に供給される熱源水N1の温度(第3熱源水温度センサT3の検出温度)が例えば40℃程度となる。よって、太陽熱回収装置51に備えられた熱媒体温度検出センサの検出温度が45℃以上であると、通流状態切換用三方弁57を第1通流状態に切り換え、太陽熱回収装置51に備えられた熱媒体温度検出センサの検出温度が45℃未満であると、通流状態切換用三方弁57を第2通流状態に切り換えることができる。
【0056】
これにより、太陽熱回収装置51にて回収した太陽熱を有する熱媒体N3にて熱源水N1を加熱できる場合には、第1通流状態に切り換えて太陽熱にて熱源水N1を加熱しており、それ以外の場合には、第2通流状態に切り換えて複数の熱需要家に給水する水N4を予熱している。その結果、熱源水N1を加熱する熱源として太陽熱を用いることができながら、複数の熱需要家に給水する水N4の予熱のためにも太陽熱を用いることができ、システムとして太陽熱を有効に活用してエネルギー効率の向上を図ることができる。
【0057】
また、運転制御装置20は、熱源水循環ライン4にて複数の熱需要家に供給する熱源水N1の温度を高温用目標温度範囲内に調整する高温調整状態と低温用目標温度範囲内に調整する低温調整状態とに切換自在に構成されている。つまり、上述の如く、運転制御装置20は、第1熱源水温度センサT1の検出温度が目標温度範囲内の目標温度になるように、第1熱源水循環ポンプ9及び第2熱源水循環ポンプ10の回転速度を制御しているが、このときの目標温度として、高温用目標温度範囲内の高温用目標温度と低温用目標温度範囲内の低温用目標温度とに変更設定自在に構成されている。このように、熱源水温度調整手段が、運転制御装置20、第1熱源水循環ポンプ9及び第2熱源水循環ポンプ10から構成されている。そして、運転制御装置20は、目標温度を高温用目標温度に設定することで高温調整状態に切り換え、目標温度を低温用目標温度に設定することで低温調整状態に切り換えている。ここで、高温用目標温度は、例えば80℃程度であり、低温用目標温度は、例えば60℃程度である。
【0058】
高温調整状態と低温調整状態との切り換えについては、運転制御装置20にはカレンダー機能が内蔵されており、そのカレンダー機能により夏季であるか否かを判別して、高温調整状態と低温調整状態とに切り換えている。つまり、運転制御装置20は、夏季には低温調整状態に切り換え、夏季以外であれば高温調整状態に切り換えている。夏季には、各熱需要家の熱需要が少ないので、低温調整状態に切り換えても、複数の熱需要家の熱需要を賄えるだけの熱源水N1を供給することができる。しかも、低温調整状態に切り換えることで、太陽熱熱交換器52に供給される熱源水N1の温度をより低くすることができる。よって、太陽熱熱交換器52において熱源水N1と熱媒体N3との温度差をより大きくすることができ、太陽熱を有する熱媒体N3にて熱源水N1を効率よく加熱することができる。
【0059】
〔第2実施形態〕
この第2実施形態は、上記第1実施形態において太陽熱熱交換器52の設置位置についての別実施形態であり、その他の構成については、上記第1実施形態と同様である。そこで、以下、本発明に係る熱源水供給システムの全体構成の一部のみを示した図3に基づいて、第2実施形態について説明するが、上記第1実施形態と異なる構成である太陽熱熱交換器52の設置位置を中心に説明し、その他の構成については説明を省略する。
【0060】
上記第1実施形態では、太陽熱熱交換器52を、熱源水循環ライン4において複数の熱需要家に供給したのち熱源装置2に熱源水N1を戻す戻り部位4bに配設しているが、この第2実施形態では、図3に示すように、太陽熱熱交換器52を熱源水タンク1の下部に配設し、太陽熱熱交換器52において熱媒体N3にて熱源水タンク1の下部の熱源水N1を加熱している。
【0061】
運転制御装置20が熱源水循環運転を実行中に、熱需要家の熱供給装置5にて給湯運転を行われると、熱源水循環ライン4の熱源水N1が給湯箇所23に給湯される。よって、熱源水循環ライン4の熱源水N1の流量が減少することになるが、熱源水タンク1に貯留されている熱源水N1が熱源水循環ライン4に補給される。熱源水タンク1の下部には、給水手段3により低温の熱源水N1が給水されるので、熱源水循環ライン4に補給される低温の熱源水N1を熱媒体N3の放熱対象とする低温通流部位に太陽熱熱交換器52が配設されている。このように、太陽熱熱交換器52における熱媒体N3の放熱対象を、給水手段3により熱源水タンク1の下部に給水される低温の熱源水N1とすることができ、太陽熱熱交換器52において熱源水N1と熱媒体N3との温度差をより大きくすることができ、太陽熱を有する熱媒体N3にて熱源水N1を効率よく加熱することができる。
【0062】
〔別実施形態〕
(1)上記第1及び第2実施形態では、第1通流状態と第2通流状態との切り換えについて、太陽熱回収装置51にて回収した太陽熱を有する熱媒体N3の温度と太陽熱熱交換器52に供給される熱源水N1の温度との大小関係に基づいて、第1通流状態と第2通流状態とに切り換えているが、例えば、夏季には第1通流状態に切り換え、夏季以外には第2通流状態に切り換えることもできる。また、昼間には第1通流状態に切り換え、朝や晩には第2通流状態に切り換えることもでき、第1通流状態と第2通流状態とに切り換えるための条件については適宜変更が可能である。
【0063】
(2)上記第1及び第2実施形態において、熱供給装置5について、熱源水循環ライン4から取り込んだ熱源水N1が有する熱を蓄熱可能な蓄熱タンクを備えた構成を適応することもできる。例えば、熱源水循環ライン4から取り込んだ熱源水N1を蓄熱タンクに通流させることで蓄熱タンクへの蓄熱を行い、蓄熱タンクに蓄熱された熱にて加熱した温水や熱源水循環ライン4から取り込んだ熱源水N1を給湯箇所23に給湯することで給湯運転を行い、蓄熱タンクに蓄熱された熱にて加熱した熱媒体を熱消費部に供給することで熱消費運転を行うことができる。
このように、熱供給装置5については、熱源水循環ライン4から取り込んだ熱源水N4を利用して熱消費部への熱供給を行うものであればよい。
【0064】
(3)上記第1及び第2実施形態では、給水予熱熱交換器54にて予熱された給水N4を給湯箇所23への給湯に用いる例を示しているが、例えば、寒冷地では、駐車場等の地面を温めて融雪に使用するロードヒーティングの温水として、給水予熱熱交換器54にて予熱された給水N4を用いることもできる。つまり、給水予熱熱交換器54にて予熱された給水N4を各熱需要家にてどのように用いるかについては適宜変更が可能であり、給湯に用いるものに限られない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、熱源装置にて加熱された熱源水を複数の熱需要家に順に供給して前記熱源装置に戻す熱源水循環ラインを備え、各熱需要家には、前記熱源水循環ラインから熱源水を取り込んでその取り込んだ熱源水を前記熱源水循環ラインの取り込み箇所よりも熱源水の流れ方向の下流側に戻すとともに、取り込んだ熱源水を利用して熱消費部への熱供給を行う熱供給装置が備えられ、熱源水を加熱するための熱源として太陽熱を用いることができながら、システム全体としてその太陽熱を有効に活用して、エネルギー効率の向上を図ることができる各種の熱源水供給システムに適応可能である。
【符号の説明】
【0066】
1,3 補給手段
2 熱源装置
4 熱源水循環ライン
5 熱供給装置
9,10,20 熱源水温度調整手段
20,57 通流状態切換手段
23 給湯箇所
29 熱消費部(暖房端末)
32 熱消費部(浴槽)
51 太陽熱回収装置
52 太陽熱熱交換器
54 給水予熱熱交換器
N1 熱源水
N3 熱媒体
N4 複数の熱需要家に給水する水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源装置にて加熱された熱源水を複数の熱需要家に順に供給して前記熱源装置に戻す熱源水循環ラインを備え、各熱需要家には、前記熱源水循環ラインから熱源水を取り込んでその取り込んだ熱源水を前記熱源水循環ラインの取り込み箇所よりも熱源水の流れ方向の下流側に戻すとともに、取り込んだ熱源水を利用して熱消費部への熱供給を行う熱供給装置が備えられている熱源水供給システムであって、
前記熱源水循環ラインにおいて複数の熱需要家に供給する熱源水よりも低温の熱源水が通流する低温通流部位には、太陽熱回収装置にて回収した太陽熱を有する熱媒体と熱源水とを熱交換させる太陽熱熱交換器が備えられ、
複数の熱需要家に給水する水と前記太陽熱回収装置にて回収した太陽熱を有する熱媒体とを熱交換させる給水予熱熱交換器と、前記太陽熱回収装置にて回収した太陽熱を有する熱媒体を前記太陽熱熱交換器に通流する第1通流状態と前記給水予熱熱交換器に通流する第2通流状態とに切換自在な通流状態切換手段とが備えられている熱源水供給システム。
【請求項2】
前記熱源水循環ラインの前記低温通流部位は、複数の熱需要家に供給したのち前記熱源装置に熱源水を戻す部位に設定されている請求項1に記載の熱源水供給システム。
【請求項3】
前記熱源水循環ライン内の熱源水の減少に伴って熱源水を補給する補給手段を備え、前記熱源水循環ラインの前記低温通流部位は、前記熱源水循環ラインに前記補給手段により熱源水を補給する部位に設定されている請求項1に記載の熱源水供給システム。
【請求項4】
前記熱源水循環ライン内の熱源水の減少に伴って熱源水を補給する補給手段を備え、前記熱供給装置は、前記熱源水循環ラインから取り込んだ熱源水を前記熱消費部としての給湯箇所に給湯自在に構成されている請求項1〜3の何れか1項に記載の熱源水供給システム。
【請求項5】
前記通流状態切換手段が、前記太陽熱回収装置にて回収した太陽熱を有する熱媒体の温度が前記太陽熱熱交換器に供給される熱源水の温度よりも高いと、前記第1通流状態に切り換え、前記熱媒体の温度が前記熱源水の温度以下であると、前記第2通流状態に切り換える請求項1〜4の何れか1項に記載の熱源水供給システム。
【請求項6】
前記熱源水循環ラインにて複数の熱需要家に供給する熱源水の温度を高温用目標温度範囲内に調整する高温調整状態と低温用目標温度範囲内に調整する低温調整状態とに切換自在な熱源水温度調整手段が備えられている請求項1〜5の何れか1項に記載の熱源水供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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