説明

熱現像写真感光材料及び画像形成方法

【課題】カブリが低く、経時保存性に優れ、かつ銀色調に優れた熱現像感光材料、及び該感光材料を用いた画像形成方法を提供する。
【解決手段】支持体上に、有機銀、ハロゲン化銀、バインダー及び還元剤を含有する画像形成層を有する熱現像感光材料において、分子内に少なくとも1個のカルボキシル基を有するメチレンビスフェノール化合物を、前記還元剤に対して0.01〜20モル%含有することを特徴とする熱現像感光材料。前記分子内に少なくとも1個のカルボキシル基を有するメチレンビスフェノール化合物が一般式(1)又は(2)で表されること、前記還元剤が一般式(3)で表されることは好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハロゲン化銀写真感光材料に関するものであり、特に加熱により画像を形成する熱現像写真感光材料及びそれを用いた画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷製版や医療の分野では、画像形成材料の湿式処理に伴う廃液が、作業性の上で問題となっており、更に、環境保全、省スペースの観点からも処理廃液の減量が強く望まれている。そして、このような要望に応える技術として、熱現像により、高解像度で鮮明な黒色画像を形成する技術が知られており、例えば米国特許3,152,904号、同3,457,075号及びD.モーガン(Morgan)による「ドライシルバー写真材料(Dry SilverPhotographic Materials)」(Handbook of Imaging Materials,Marcel Dekker,Inc.,48頁,1991)等に記載されている。これらの写真材料は、通常、80℃以上の温度で現像が行われるので熱現像写真感光材料と呼ばれている。
【0003】
このような熱現像写真感光材料は、通常、還元可能な非感光性の銀塩(例えば有機銀塩)とその還元剤(現像剤)及び光触媒(例えば感光性ハロゲン化銀)を有機バインダーマトリックス中に分散した状態で含有する感光層を支持体上に有し、常温では安定であるが、露光後、高温に加熱すると還元可能な銀塩(酸化剤として作用する)と還元剤との間の酸化還元反応により銀を生成する。この酸化還元反応は、露光で生じた潜像の触媒作用によって促進される。露光領域中の有機銀塩の反応によって生成した銀は黒色像を形成し、これは非露光領域と対照をなし画像の形成が為される。
【0004】
従来から、このタイプの熱現像写真感光材料の多くは、保存時にカブリが高くなる欠点を有していた。この欠点を改良するため、熱現像写真感光材料用のカブリ抑制剤として、置換アルケン誘導体が開示されている(例えば特許文献1、2、3参照)。しかしながら、これらの化合物は保存時のカブリ抑制効果が未だ十分ではなく、特に高温下でのカブリ抑制効果に問題を有していた。更に、これらの化合物を使用した熱現像写真感光材料は、感度、画像保存性及び銀色調が満足できるものではなく、更なる改善が望まれていた。
【特許文献1】米国特許5,686,228号明細書
【特許文献2】特開2002−207273号公報
【特許文献3】特開2003−140298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の事情に鑑みて為されたものであり、その目的は、カブリが抑制され、経時保存性に優れた熱現像写真感光材料及び画像形成方法を提供することにあり、詳しくは、低カブリで、経時保存による特性変化が少なく、かつ銀色調に優れた熱現像写真感光材料(以下、熱現像感光材料とも記す)及びそれを用いる画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
1.
支持体上に、有機銀、ハロゲン化銀、バインダー及び還元剤を含有する画像形成層を有する熱現像感光材料において、分子内に少なくとも1個のカルボキシル基を有するメチレンビスフェノール化合物を、前記還元剤に対して0.01〜20モル%含有することを特徴とする熱現像写真感光材料。
2.
前記分子内に少なくとも1個のカルボキシル基を有するメチレンビスフェノール化合物が、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする前記1項に記載の熱現像写真感光材料。
【0007】
【化1】

【0008】
〔式中、R11及びR12は各々脂肪族基を表し、Arは芳香族基又は芳香族複素環基を表す。R13及びR14は各々脂肪族基を表す。ただし、R11、R12、Ar、R13及びR14の少なくとも一つは、少なくとも1個のカルボキシル基を有する。〕
3.
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(2)で表されることを特徴とする前記2項に記載の熱現像写真感光材料。
【0009】
【化2】

【0010】
〔式中、R21及びR22は各々アルキル基又はシクロアルキル基を表し、R23及びR24は各々アルキル基を表す。Lは2価の連結基を表し、nは0又は1を表す。〕
4.
前記還元剤が下記一般式(3)で表されることを特徴とする前記1、2又は3項に記載の熱現像写真感光材料。
【0011】
【化3】

【0012】
〔式中、R31及びR32は各々2級もしくは3級のアルキル基又はシクロアルキル基を表し、R33は水素原子又は脂肪族基を表す。R34及びR35は各々脂肪族基を表す。ただし、R31、R32、R33、R34及びR35は何れもカルボキシル基を含むことはない。〕
5.
前記1〜4の何れか1項に記載の熱現像写真感光材料をレーザー光線で像用露光した後、80〜250℃で現像することを特徴とする画像形成方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、高感度・低カブリで、保存安定性が良好であり、かつ銀色調に優れた熱現像写真感光材料を提供できる。特に、現像処理済み試料が、経時でカブリ上昇したりすることがない熱現像感光材料を提供すること、高感度・低カブリで、感光材料の生保存性が良好なレーザーイメージャー用熱現像感光材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。まず、分子内に少なくとも1個のカルボキシル基を有するメチレンビスフェノール化合物(以下、本発明のメチレンビスフェノール化合物とも記す)について説明する。
【0015】
本発明のメチレンビスフェノール化合物は、フェノールの2位もしくは3位、4位がメチレン基で連結されたビスフェノールであって、任意の位置に置換基を有する。そして該ビスフェノールのベンゼン環上の置換基もしくはメチレン基上の置換基の何れかに少なくとも1個のカルボキシル基を有することを特徴とする。本発明のメチレンビスフェノール化合物は、構造上、熱現感光材料の分野で還元剤(現像剤)として用いられる化合物と類似しているが、分子内にカルボキシル基を有することにより、還元剤としての機能ではなく、カブリ抑制、現像抑制の機能が発現する。現像抑制、カブリ抑制機能を発現する上で、フェノールの2位同士又は4位同士がメチレン基で連結されたビスフェノールが好ましく、特に2位同士がメチレン基で結合されたビスフェノールが好ましい。
【0016】
本発明のメチレンビスフェノール化合物は、上記のように、カブリ抑制剤、現像抑制剤として機能するため、通常の還元剤に対して20モル%より多くを添加すると、感度の低下及び最高濃度の低下を引き起こす。又、0.01モル%より少ない添加量では、カブリ抑制効果が小さい。
【0017】
このような機能を発現する化合物としては、一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物が好ましい。以下、これについて詳述する。
【0018】
一般式(1)において、R11及びR12は脂肪族基を表すが、該脂肪族基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ノルマルブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、デシル、ドデシル、ペンタデシル、ビニル、アリル、エチニル、プロパルギル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロブテニル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプチル、シクロヘプチニル、シクロヘプタジエニル、シクロオクタニル、シクロオクテニル、シクロオクタジエニル、シクロオクタトリエニル、シクロノナニル、シクロノネニル、シクロノナジエニル、シクロノナトリエニルシクロデカニル、シクロデケニル、シクロデカジエニル、シクロデカトリエニル等の基を挙げることができる。これらは更に置換基を有してもよい。
【0019】
Arは芳香族基、芳香族複素環基を表す。芳香族基は単環でも縮合環でもよく、例えばフェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、ナフタセニル、トリフェニレニル等の基を挙げることができる。芳香族複素環基の具体例としては、ピロール、インドール、フラン、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、カルバゾール、チアゾール、ピリジン、オキサジアゾール、ベンゾキノリン、チアジアゾール、テトラゾール、オキサゾール等から誘導される基を挙げることができる。これらは更に置換基を有してもよい。
【0020】
13及びR14は脂肪族基を表すが、該脂肪族基の具体例としては、前記R11,R12で例示した基が挙げられる。R13及びR14としては炭素数1〜4の1級アルキル基が好ましい。
【0021】
11,R12,Ar,R13及びR14の少なくとも一つは、少なくとも1個のカルボキシル基を有するが、カルボキシル基の総数は1〜4個が好ましい。
【0022】
一般式(2)において、R21及びR22はアルキル基、シクロアルキル基を表すが、炭素数12以下のアルキル基及びシクロアルキル基が好ましく、特に2級又は3級のアルキル基が好ましく、t−ブチル及びt−アミル基が最も好ましい。
【0023】
23及びR24はアルキル基を表すが、炭素数4以下の1級アルキル基が好ましい。
【0024】
Lが表す2価の連結基としては特に制限は無いが、具体的には−N(R)−,−N(R)−CO−,−N(R)−SO2−,−O−,−OCO−,−S−,−SO−,−SO2−,−CO−,−CO2−,−CO−N(R)−,アルキレン基、アリーレン基、2価の複素環基又はこれらの任意の組合せで形成される2価の連結基が挙げられる。Rは水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基を表す。
【0025】
以下に、本発明のメチレンビスフェノール化合物を例示するが、本発明はこれらに限定されない。
【0026】
【化4】

【0027】
【化5】

【0028】
【化6】

【0029】
【化7】

【0030】
【化8】

【0031】
次に、本発明で好ましく用いられる一般式(3)で表される還元剤について述べる。
【0032】
一般式(3)において、R31及びR32は2級もしくは3級のアルキル基又はシクロアルキル基を表すが、具体的にはi−プロピル、t−ブチル、t−アミル、t−オクチル、シクロプロピル、シクロヘキシル、シクロペンチル、メチルシクロヘキシル等の基が挙げられる。R31、R32としては3級アルキル基が好ましい。
【0033】
33は水素原子又は脂肪族基を表すが、脂肪族基としては、前述の一般式(1)のR11及びR12で脂肪族基として例示した基が挙げられる。R33としては、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基が好ましく、特に炭素数8以下の置換基が好ましい。
【0034】
34及びR35が表す脂肪族基としては、これも前述のR11及びR12で脂肪族基として例示した基が挙げられる。R34、R35としては、炭素数4以下の1級アルキル基が好ましく、エチル基が特に好ましい。
【0035】
以下に、一般式(3)で表される還元剤を例示するが、本発明はこれらに限定されない。
【0036】
【化9】

【0037】
【化10】

【0038】
【化11】

【0039】
続いて、本発明の熱現像感光材料について説明する。
【0040】
本発明に係る有機銀塩は還元可能な銀源であり、還元可能な銀イオン源を含有する有機酸である。用いられる有機酸としては、脂肪族カルボン酸、炭素環式カルボン酸、複素環式カルボン酸、複素環式化合物等があるが、特に長鎖(10〜30、好ましくは15〜25の炭素数)の脂肪族カルボン酸及び含窒素複素環を有する複素環式カルボン酸等が好ましく用いられる。又、配位子が4.0〜10.0の銀イオンに対する総安定定数を有する有機銀塩錯体も有用である。このような有機酸銀塩の例としては、Research Disclosure(以下、RDと略す)17029及び29963に記載されている。中でも脂肪酸の銀塩が好ましく用いられ、特に好ましく用いられるのはベヘン酸銀、アラキジン酸銀及びステアリン酸銀である。
【0041】
前述の有機銀塩化合物は、水溶性銀化合物と銀と錯形成する化合物を混合することにより得られるが、正混合法、逆混合法、同時混合法等が好ましく用いられる。又、特開平9−127643号に記載される様なコントロールド・ダブルジェット法を用いることも可能である。
【0042】
有機銀塩は、平均粒径が1μm以下であり、かつ単分散であることが好ましい。有機銀塩の平均粒径とは、有機銀塩粒子が、例えば球状、棒状、あるいは平板状の粒子の場合には、有機銀塩粒子の体積と同等な球を考えた時の直径を言う。平均粒径は、好ましくは0.01〜0.8μm、特に0.05〜0.5μmが好ましい。又、単分散とは、後述のハロゲン化銀の場合と同義であり、好ましくは単分散度が1〜30%である。
【0043】
本発明においては、有機銀塩が平均粒径1μm以下の単分散粒子であることがより好ましく、この範囲にすることで濃度の高い画像が得られる。更に、有機銀塩は、平板状粒子が全有機銀の60個数%以上であることが好ましい。平板状粒子とは、平均粒径と厚さの比、いわゆる下記式で表されるアスペクト比(ARと略す)が3以上のものを言う。
【0044】
AR=平均粒径(μm)/厚さ(μm)
このような有機銀粒子は、必要に応じてバインダーや界面活性剤などと共に予備分散した後、メディア分散機又は高圧ホモジナイザ等で分散粉砕することが好ましい。上記予備分散で用いることのできる分散機としては、例えばアンカー型、プロペラ型等の一般的攪拌機や高速回転遠心放射型攪拌機(ディゾルバ)、高速回転剪断型撹拌機(ホモミキサ)を使用することができる。又、上記メディア分散機としては、例えばボールミル、遊星ボールミル、振動ボールミル等の転動ミルや、媒体攪拌ミルであるビーズミル、アトライター、その他バスケットミル等を挙げることができ、又、高圧ホモジナイザとしては、例えば壁、プラグ等に衝突するタイプ、液を複数に分けてから高速で液同士を衝突させるタイプ、細いオリフィスを通過させるタイプ等、様々なタイプを用いることができる。
【0045】
有機銀粒子を分散する際に用いられる装置類において、該有機銀粒子が接触する部材の材質として、例えばジルコニア、アルミナ、窒化珪素、窒化硼素などのセラミックス類又はダイヤモンドを用いることが好ましく、特にジルコニアを用いることが好ましい。
【0046】
有機銀粒子は、銀1g当たり0.01〜0.5mgのZrを含有することが好ましく、特に好ましくは0.01〜0.3mgのZrを含有する場合である。上記分散を行う際、バインダー濃度、予備分散方法、分散機運転条件、分散回数などを最適化することは、本発明に用いられる有機銀塩粒子を得る方法として非常に好ましい。
【0047】
本発明に係る感光性ハロゲン化銀は、画像形成後の白濁を低く抑えるため及び良好な画質を得るために、平均粒子サイズが小さい方が好ましく、平均粒子サイズが0.1μm以下、より好ましくは0.01〜0.1μm、特に0.02〜0.08μmが好ましい。ここで言う粒子サイズとは、電子顕微鏡で観察される個々の粒子像と等しい面積を有する円の直径(円相当径)を指す。又、ハロゲン化銀は単分散であることが好ましい。ここで言う単分散とは、下記式で求められる単分散度が40%以下を言う。更に好ましくは30%以下であり、特に好ましくは20%以下となる粒子である。
【0048】
単分散度=(粒径の標準偏差)/(平均粒径値)×100
感光性ハロゲン化銀粒子の形状については特に制限はないが、ミラー指数〔100〕面の占める割合が高いことが好ましく、この割合が50%以上、更には70%以上、特に80%以上であることが好ましい。ミラー指数〔100〕面の比率は、増感色素の吸着における〔111〕面と〔100〕面との吸着依存性を利用したT.Tani,J.Imaging Sci.,29,165(1985)により求めることができる。
【0049】
もう一つの好ましい感光性ハロゲン化銀の形状は、平板粒子である。ここで言う平板粒子とは、投影面積の平方根を粒径rμmとし、垂直方向の厚みをhμmとした時のアスペクト比(r/h)が3以上のものを言う。その中でも、好ましくはアスペクト比が3〜50である。又、平板粒子の粒径は0.1μm以下であることが好ましく、更に0.01〜0.08μmが好ましい。これらの平板粒子は、米国特許5,264,337号、同5,314,798号、同5,320,958号等に記載されており、容易に目的の平板粒子を得ることができる。
【0050】
ハロゲン組成としては特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀、沃化銀の何れであってもよい。本発明に用いられる乳剤は、P.Glafkides著:Chimie et Physique Photographique(Paul Montel社刊,1967年)、G.F.Duffin著:Photographic Emulsion Chemistry(The Focal Press刊,1966年)、V.L.Zelikman et al著:Making and Coating Photographic Emulsion(The Focal Press刊,1964年)等に記載された方法に基づいて調製することができる。
【0051】
感光性ハロゲン化銀には、周期表の6〜11族に属する金属イオンを含有することが好ましい。上記の金属としては、W、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt、Auが好ましい。これらの金属イオンは、金属錯体又は金属錯体イオンの形でハロゲン化銀に導入できる。これらの金属錯体又は金属錯体イオンとしては、下記一般式で表される6配位金属錯体が好ましい。
【0052】
一般式〔ML6m
式中、Mは周期表の6〜11族の元素から選ばれる遷移金属、Lは配位子、mは0、−、2−、3−又は4−を表す。Lで表される配位子の具体例としては、例えばハロゲン化物(弗化物、塩化物、臭化物及び沃化物)、シアン化物、シアナート、チオシアナート、セレノシアナート、テルロシアナート、アジド及びアコの各配位子、ニトロシル、チオニトロシル等が挙げられ、好ましくはアコ、ニトロシル及びチオニトロシル等である。アコ配位子が存在する場合には、配位子の一つ又は二つを占めることが好ましい。Lは同一でもよく、又、異なってもよい。
【0053】
Mとしては、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)及びオスミウム(Os)が好ましく、これらを含む遷移金属錯体イオンの具体例としては、〔RhCl63-、〔RuCl63-、〔ReCl63-、〔RuBr63-、〔OsCl63-、〔IrCl64-、〔Ru(NO)Cl52-、〔RuBr4(H2O)〕2-、〔Ru(NO)(H2O)Cl4-、〔RhCl5(H2O)〕2-、〔Re(NO)Cl52-、〔Re(NO)(CN)52-、〔Re(NO)Cl(CN)4〕、〔Rh(NO)2Cl4-、〔Rh(NO)(H2O)Cl4-、〔Ru(NO)(CN)52-、〔Fe(CN)63-、〔Rh(NS)Cl52-、〔Os(NO)Cl52-、〔Cr(NO)Cl52-、〔Re(NO)Cl5-、〔Os(NS)Cl4(TeCN)〕2-、〔Ru(NS)Cl52-、〔Re(NS)Cl4(SeCN)〕2-、〔Os(NS)Cl(SCN)42-、〔Ir(NO)Cl52-、〔Ir(NS)Cl52-等が挙げられる。
【0054】
前述した金属イオン、金属錯体又は金属錯体イオンは、1種類でもよいし、同種の金属及び異種の金属を2種以上併用してもよい。これらの金属イオン、金属錯体又は金属錯体イオンの含有量としては、一般的には、ハロゲン化銀1モル当たり1×10-9〜1×10-2モルが適当であり、好ましくは1×10-8〜1×10-4モルである。
【0055】
これらの金属を提供する化合物は、ハロゲン化銀粒子形成時に添加し、ハロゲン化銀粒子中に組み込まれることが好ましく、ハロゲン化銀粒子の調製、即ち、核形成、成長、物理熟成、化学増感の前後の任意の段階で添加してもよいが、特に核形成、成長、物理熟成の段階で添加するのが好ましく、更には核形成、成長の段階で添加するのが好ましく、最も好ましくは核形成の段階で添加する。
【0056】
添加に際しては、数回に亘ってて分割して添加してもよく、ハロゲン化銀粒子中に均一に含有させることもできるし、特開昭63−29603号、特開平2−306236号、同3−167545号、同4−76534号、同6−110146号、同5−273683号等に記載される様に、粒子内に分布を持たせて含有させることもできる。好ましくは、粒子内部に分布を持たせることができる。これらの金属化合物は、水又は適当な有機溶媒(アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類)に溶解して添加することができるが、例えば金属化合物の粉末の水溶液もしくは金属化合物と塩化ナトリウム、塩化カリウムとを一緒に溶解した水溶液を、粒子形成中の水溶性銀塩溶液又は水溶性ハライド溶液中に添加しておく方法、あるいは銀塩溶液とハライド溶液が同時に混合される時、第3の水溶液として添加し、3液同時混合の方法でハロゲン化銀粒子を調製する方法、粒子形成中に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入する方法、あるいはハロゲン化銀調製時に、予め金属のイオン又は錯体イオンをドープしてある別のハロゲン化銀粒子を添加して溶解させる方法等がある。特に、金属化合物の粉末の水溶液もしくは金属化合物と塩化ナトリウム、塩化カリウムとを一緒に溶解した水溶液を、水溶性ハライド溶液に添加する方法が好ましい。
【0057】
粒子表面に添加する時には、粒子形成直後又は物理熟成時途中、もしくは終了時又は化学熟成時に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入することもできる。
【0058】
感光性ハロゲン化銀粒子は、粒子形成後に脱塩してもしなくてもよいが、脱塩を施す場合は、例えばヌードル法、フロキュレーション法等、当業界で知られている方法により水洗、脱塩することができる。
【0059】
ハロゲン化銀粒子は、化学増感されていることが好ましい。好ましい化学増感法としては、当業界でよく知られている硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法等を用いることができる。又、金化合物や白金、パラジウム、イリジウム化合物等の貴金属増感法や還元増感法を用いることができる。
【0060】
前述の硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法に好ましく用いられる化合物としては、公知の化合物を用いることができるが、例えば特開平7−128768号等に記載の化合物を使用することができる。テルル増感剤としては、例えばジアシルテルリド類、ビス(オキシカルボニル)テルリド類、ビス(カルバモイル)テルリド類、ジアシルテルリド類、ビス(オキシカルボニル)ジテルリド類、ビス(カルバモイル)ジテルリド類、P=Te結合を有する化合物、テルロカルボン酸塩類、Te−オルガニルテルロカルボン酸エステル類、ジ(ポリ)テルリド類、テルリド類、テルロール類、テルロアセタール類、テルロスルホナート類、P−Te結合を有する化合物、含Te複素環類、テルロカルボニル化合物、無機テルル化合物、及びコロイド状テルル等を用いることができる。
【0061】
貴金属増感法に好ましく用いられる化合物としては、例えば塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金、金セレナイド、あるいは米国特許2,448,060号、英国特許618,061号等に記載される化合物が挙げられる。
【0062】
還元増感法に用いられる化合物としては、例えばアスコルビン酸、二酸化チオ尿素の他に、例えば塩化第一錫、アミノイミノメタンスルフィン酸、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、ポリアミン化合物等を用いることができる。又、ハロゲン化銀乳剤のpHを7以上又はpAgを8.3以下に保持して熟成することにより、還元増感することができる。又、粒子形成中に銀イオンのシングルアディション部分を導入することにより、還元増感することができる。
【0063】
熱現像感光材料には還元剤を内蔵させる。用いられる還元剤としては、一般に知られているものが挙げられ、例えばフェノール類、2個以上のフェノールを有するポリフェノール類、ナフトール類、ビスナフトール類、2個以上のヒドロキシル基を有するポリヒドロキシベンゼン類、ポリヒドロキシナフタレン類、アスコルビン酸類、3−ピラゾリドン類、ピラゾリン−5−オン類、ピラゾリン類、フェニレンジアミン類、ヒドロキシルアミン類、ハイドロキノンモノエーテル類、ヒドロオキサミン酸類、ヒドラジド類、アミドオキシム類、N−ヒドロキシ尿素類等があり、更に詳しくは、例えば米国特許3,615,533号、同3,679,426号、同3,672,904号、同3,751,252号、同3,782,949号、同3,801,321号、同3,794,488号、同3,893,863号、同3,887,376号、同3,770,448号、同3,819,382号、同3,773,512号、同3,839,048号、同3,887,378号、同4,009,039号、同4,021,240号、英国特許1,486,148号、ベルギー特許786,086号、特開昭50−36143号、同50−36110号、同50−116023号、同50−99719号、同50−140113号、同51−51933号、同51−23721号、同52−84727号、特公昭51−35851号等に具体的に例示された還元剤等を挙げることができ、上記の公知な還元剤の中から適宜選択して使用することが出来る。選択方法としては、実際に還元剤を含む熱現像感光材料を作製し、その写真性能を直接評価することにより、還元剤の適否を確認する方法が最も効率的である。
【0064】
上記還元剤の中で、有機銀塩として脂肪族カルボン酸銀塩を使用する場合の好ましい還元剤としては、2個以上のフェノールがアルキレン基又は硫黄によって連結されたポリフェノール類、特にフェノールのヒドロキシ置換位置に隣接した位置の少なくとも一つにアルキル基(メチル、エチル、プロピル、t−ブチル、シクロヘキシル等)又はアシル基(アセチル、プロピオニル等)が置換したフェノールの2個以上がアルキレン基又は硫黄によって連結されたポリフェノール類、例えば1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)メタン、(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メタン、6,6′−ベンジリデン−ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノール)、6,6′−ベンジリデン−ビス(2−t−ブチル−4−メチルフェノール)、6,6′−ベンジリデン−ビス(2,4−ジメチルフェノール)、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−メチルプロパン、1,1,5,5−テトラキス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2,4−エチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロパン等の米国特許3,589,903号、同4,021,249号、英国特許1,486,148号、特開昭51−51933号、同50−36110号、同50−116023号、同52−84727号、特公昭51−35727号に記載されたポリフェノール化合物;米国特許3,672,904号に記載されたビスナフトール類、例えば2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル、6,6′−ジブロモ−2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル、6,6′−ジニトロ−2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル、ビス(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)メタン、4,4′−ジメトキシ−1,1′−ジヒドロキシ−2,2′−ビナフチル等、更に米国特許3,801,321号に記載されるようなスルホンアミドフェノール又はスルホンアミドナフトール類;例えば4−ベンゼンスルホンアミドフェノール、2−ベンゼンスルホンアミドフェノール、2,6−ジクロロ−4−ベンゼンスルホンアミドフェノール、4−ベンゼンスルホンアミドナフトール、特開2003−3302723及び同2004−4767に記載されたポリフェノール化合物等を挙げることが出来る。特に好ましくは、上記特開2003−3302723及び同2004−4767に記載されたポリフェノール化合物である。
【0065】
熱現像感光材料に使用される還元剤の適量は、使用する有機銀塩や還元剤の種類、その他の添加剤により一様ではないが、一般的には有機銀塩1モル当たり0.05〜10モル、好ましくは0.1〜3モルの範囲が適当である。又、この範囲内においては、上述した還元剤を2種以上併用してもよい。本発明においては、前記還元剤を塗布直前に感光層塗布液に添加し塗布することが、感光層塗布液の停滞時間による写真性能変動を小さくする上で好ましい。
【0066】
次に、本発明の熱現像感光材料の上記説明した項目を除いた構成要素について説明する。
【0067】
本発明の熱現像感光材料は、上述の有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、及び還元剤などを含有する画像形成層及び保護層を、この順に支持体上に積層させたもので、更に、必要に応じて支持体と上記画像形成層との間に中間層を設置して成るものが好ましい。
【0068】
又、画像形成層とは反対の面に、搬送性確保や、保護層とのブロッキング防止のためにバッキング層を設置した熱現像感光材料も好適に用いることができる。尚、各層は単一層でもよいし、組成が同一あるいは異なる2層以上の複数の層で構成されてもよい。
【0069】
本発明では、上述の各層を形成するためにバインダー樹脂が好ましく用いられる。このようなバインダー樹脂としては、従来から用いられている透明又は半透明なバインダー樹脂を適時選択して用いることができ、そのようなバインダー樹脂としては、例えばポリビニルホルマール、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール系樹脂;エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、酢酸酪酸セルロー等のセルロース系樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリルゴム共重合体等のスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル、塩素化ポリポロピレン等の塩化ビニル系樹脂;ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、エポキシ樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種以上の樹脂を併用して用いてもよい。
【0070】
尚、前記バインダー樹脂は、本発明の目的を損なわない限り、保護層、中間層、あるいは必要な場合に設けられるバックコート層の各層に適時選択して用いることができる。尚、中間層やバックコート層には、活性エネルギー線で硬化可能なエポキシ樹脂やアクリルモノマー等を層形成バインダー樹脂として使用してもよい。本発明では、以下に示す水系バインダー樹脂も好ましく用いられる。
【0071】
好ましい樹脂としては、水溶解性ポリマー又は水分散性疎水性ポリマー(ラテックス)を使用することができる。例えばポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン−アクリル酸共重合体、塩化ビニリデン−イタコン酸共重合体、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−酢酸部ニル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリル酸共重合体等である。これらは、水性の塗布液を構成するが、塗布後乾燥し、塗膜を形成する段階で均一な樹脂膜を形成するものである。これらを使用する場合には、有機銀塩、ハロゲン化銀、還元剤等を水性の分散液として、これらのラテックスと混合して均一な分散液とした後、塗布することで熱現像画像形成層を形成することができる。乾燥により、ラテックスは粒子が融合し均一な膜を形成する。更に、ガラス転位点(Tg)が−20〜80℃のポリマーが好ましく、特に−5〜60℃のものが好ましい。Tgが高いと熱現像する温度が高くなり、低いとカブリ易くなり、感度低下や軟調化を招くからである。水分散ポリマーは、平均粒子径が1nm〜数μmの範囲の微粒子にして分散されたものが好ましい。水分散疎水性ポリマーはラテックスと呼ばれ、水系塗布のバインダーとして広く使用されている中で耐水性を向上させるというラテックスが好ましい。
【0072】
バインダーとして耐水性を得る目的のラテックス使用量は、塗布性を勘案して決められるが、耐湿性の観点からは多いほど好ましい。全バインダー質量に対するラテックスの比率は50〜100%が好ましく、特に80%〜100%が好ましい。
【0073】
これらのバインダー樹脂としては、固形分量として、銀付量に対して0.25〜10倍の量、例えば銀付量が2.0g/m2の場合、ポリマーの付量は0.5〜20g/m2であることが好ましい。又、更に好ましくは銀付量の0.5〜7倍量、例えば銀付量が2.0g/m2なら、1.0〜14g/m2である。バインダー樹脂量が銀付量の0.25倍以下では銀色調が大幅に劣化し、使用に耐えない場合があるし、銀付量の10倍以上では軟調になり、使用に耐えなくなる場合がある。
【0074】
更に、本発明に係る画像形成層には、上述した必須成分、バインダー樹脂以外に、必要に応じてカブリ防止剤、調色剤、増感色素、強色増感を示す物質(強色増感剤とも言う)など各種添加剤を添加してもよい。
【0075】
カブリ防止剤としては、例えば米国特許3,874,946号及び同4,756,999号に開示されているような化合物、−C(X1)(X2)(X3)(ここでX1及びX2はハロゲン原子を表し、X3は水素又はハロゲン原子を表す)で表される置換基を1以上備えた複素環状化合物、特開平9−288328号、同9−90550号、米国特許5,028,523号及び欧州特許600,587号、同605,981号、同631,176号等に開示される化合物等を適時選択して用いることができる。
【0076】
現像後の銀色調を改良する目的で添加される色調剤としては、例えばイミド類(フタルイミド等);環状イミド類、ピラゾリン−5−オン類、及びキナゾリノン(スクシンイミド、3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−フェニルウラゾール、キナゾリン及び2,4−チアゾリジンジオン等);ナフタールイミド類(N−ヒドロキシ−1,8−ナフタールイミド等);コバルト錯体(コバルトのヘキサミントリフルオロアセテート等)、メルカプタン類(3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール等);N−(アミノメチル)アリールジカルボキシイミド類(N−(ジメチルアミノメチル)フタルイミド等);ブロックされたピラゾール類、イソチウロニウム誘導体及び或る種の光漂白剤の組合せ(N,N′−ヘキサメチレン(1−カルバモイル−3,5−ジメチルピラゾール)、1,8−(3,6−ジオキサオクタン)ビス(イソチウロニウムトリフルオロアセテート)、及び2−(トリブロモメチルスルホニル)ベンゾチアゾールの組合せ);メロシアニン染料(3−エチル−5−((3−エチル−2−ベンゾチアゾリニリデン(ベンゾチアゾリニリデン))−1−メチルエチリデン)−2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン);フタラジノン、フタラジノン誘導体又はこれらの誘導体の金属塩(4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメチルオキシフタラジノン、及び2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン等);フタラジノンとスルフィン酸誘導体の組合せ(6−クロロフタラジノン+ベンゼンスルフィン酸ナトリウム又は8−メチルフタラジノン+p−トリスルホン酸ナトリウム);フタラジン+フタル酸の組合せ;フタラジン(フタラジンの付加物を含む)とマレイン酸無水物、及びフタル酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸又はo−フェニレン酸誘導体及びその無水物(フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸及びテトラクロロフタル酸無水物)から選択される少なくとも一つの化合物との組合せ;キナゾリンジオン類、ベンズオキサジン、ナルトキサジン誘導体;ベンズオキサジン−2,4−ジオン類(1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオン等);ピリミジン類及び不斉−トリアジン類(2,4−ジヒドロキシピリミジン等)、及びテトラアザペンタレン誘導体(3,6−ジメルカプト−1,4−ジフェニル−1H,4H−2,3a,5,6a−テトラザペンタレン等)を挙げることができ、好ましい色調剤としては、フタラゾン、フタラジンである。尚、色調剤は、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、後述する保護層に添加してもよい。
【0077】
又、強色増感剤としては、RD17643、特公平9−25500号、同43−4933号、特開昭59−19032号、同59−192242号、特開平5−341432号等に記載される化合物を適時選択して用いることができ、本発明では、下記一般式(M)で表される複素芳香族メルカプト化合物、実質的に前記のメルカプト化合物を生成する一般式(Ma)で表されるジスルフィド化合物を用いることができる。
【0078】
一般式(M) Ar−SM
一般式(Ma) Ar−S−S−Ar
一般式(M)において、Mは水素原子又はアルカリ金属原子を表し、Arは1個以上の窒素、硫黄、酸素、セレニウムもしくはテルリウム原子を有する複素芳香環又は縮合複素芳香環を表す。複素芳香環は、好ましくはベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、ベンゾチアゾール、ナフトチアゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、ベンゾセレナゾール、ベンゾテルラゾール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、トリアジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピリジン、プリン、キノリン又はキナゾリンである。又、一般式(Ma)において、Arは上記一般式(M)の場合と同義である。
【0079】
上記の複素芳香環は、例えばハロゲン原子(塩素、臭素、沃素)、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、アルキル基(1個以上の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)及びアルコキシ基(1個以上の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)から成る群から選ばれる置換基を有することができる。
【0080】
強色増感剤は、有機銀塩及びハロゲン化銀粒子を含む乳剤層中に、銀1モル当たり0.001〜1.0モルの範囲で用いるのが好ましく、特に銀1モル当たり0.01〜0.5モルの範囲にするのが好ましい。
【0081】
画像形成層には、ヘテロ原子を含む大環状化合物を含有させることができる。ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、硫黄原子及びセレン原子の少なくとも1種を含む9員環以上の大環状化合物が好ましく、12〜24員環がより好ましく、更に好ましいのは15〜21員環である。代表的な化合物としてはクラウンエーテルで、下記のPedersonが1967年に合成し、その特異な報告以来、数多く合成されているものである。これらの化合物は、C.J.Pederson:Journal of American chemical society vol,86(2495),7017〜7036(1967)、G.W.Gokel,S.H,Korzeniowski:Macrocyclic polyethr synthesis,Springer−Vergal(1982)等に記載されている。
【0082】
画像形成層には、上述した添加剤以外に、例えば界面活性剤、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤、被覆助剤等を用いてもよい。これらの添加剤及び上述したその他の添加剤は、RD17029(1978年6月,9〜15頁)に記載される化合物が好ましく用いられる。
【0083】
熱現像感光材料には、例えば特開昭63−159841号、同60−140335号、同63−231437号、同63−259651号、同63−304242号、同63−15245号、米国特許4,639,414号、同4,740,455号、同4,741,966号、同4,751,175号、同4,835,096号に記載された増感色素が使用できる。有用な増感色素の具体例は、例えばRD17643IV−A項(1978年12月,23頁)、同18431X項(1979年8月,437頁)に記載もしくは引用された文献に記載される。
【0084】
本発明においては、特に各種スキャナー光源の分光特性に適合した分光感度を有する増感色素を有利に選択することができる。例えばA)アルゴンレーザー光源に対しては、特開昭60−162247号、特開平2−48653号、米国特許2,161,331号、西独特許936,071号、特開平5−11389号等に記載のシンプルメロシアニン類、B)ヘリウム−ネオンレーザー光源に対しては、特開昭50−62425号、同54−18726号、同59−102229号等に記載の三核シアニン色素類、特開平7−287338号に記載のメロシアニン類、C)LED光源及び赤色半導体レーザーに対しては特公昭48−42172号、同51−9609号、同55−39818号、特開昭62−284343号、特開平2−105135号に記載されたチアカルボシアニン類、D)赤外半導体レーザー光源に対しては特開昭59−191032号、同60−80841号に記載されたトリカルボシアニン類、特開昭59−192242号、特開平3−67242号の一般式(IIIa)、一般式(IIIb)に記載された4−キノリン核を含有するジカルボシアニン類等が有利に選択される。
【0085】
これらの増感色素は単独に用いても、あるいはそれらの組合せを用いてもよく、増感色素の組合せでは、特に強色増感の目的でしばしば用いられる増感色素と共にそれ自身分光増感作用を持たない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感を示す物質をハロゲン化銀乳剤中に含んでもよい。
【0086】
画像形成層は単層でもよく、組成が同一あるいは異なる複数の層で構成してもよい。尚、画像形成層の膜厚は通常10〜30μmである。
【0087】
次に、熱現像感光材料の層構成として必須である支持体と保護層について詳述する。
【0088】
本発明の熱現像感光材料においては、感光層を透過する光の量又は波長分布を制御するために感光層と同じ側又は反対の側にフィルター層を形成するか、感光層に染料又は顔料を含有させることが好ましい。
【0089】
用いられる染料としては、感光材料の感色性に応じて種々の波長領域の光を吸収する公知の化合物が使用できる。例えば、本発明の熱現像感光材料を赤外光による画像記録材料とする場合には、特開2001−83655号に開示されるようなチオピリリウム核を有するスクアリリウム染料(本明細書ではチオピリリウムスクアリリウム染料と呼ぶ)及びピリリウム核を有するスクアリリウム染料(本明細書ではピリリウムスクアリリウム染料と呼ぶ)、又、スクアリリウム染料に類似したチオピリリウムクロコニウム染料、又はピリリウムクロコニウム染料を使用することが好ましい。
【0090】
尚、スクアリリウム核を有する化合物とは、分子構造中に1−シクロブテン−2−ヒドロキシ−4−オンを有する化合物であり、クロコニウム核を有する化合物とは分子構造中に1−シクロペンテン−2−ヒドロキシ−4,5−ジオンを有する化合物である。ここで、ヒドロキシル基は解離していてもよい。以下、これらの色素を便宜的に一括してスクアリリウム染料と呼ぶ。
【0091】
尚、染料としては特開平8−201959号に記載の化合物も好ましい。
【0092】
熱現像感光材料に用いられる支持体としては、例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ナイロン(Ny)、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、トリアセチルセルロース(TAC)等の各樹脂フィルム、更には前記樹脂を2層以上積層して成る樹脂フィルム等を挙げることができる。
【0093】
本発明に用いる支持体は、後述の画像形成方法において、潜像形成後、熱で現像して画像形成することから、フィルム状に延伸しヒートセットしたものが寸法安定性の点で好ましい。尚、本発明の効果を阻害しない範囲で酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等のフィラーを添加してもよい。支持体の厚みは10〜500μm程度、好ましくは25〜250μmである。
【0094】
熱現像感光材料に用いられる保護層としては、上述の画像形成層で記載したバインダー樹脂を必要に応じて選択して用いることができる。保護層に添加される添加剤としては、熱現像後の画像の傷付き防止や搬送性を確保する目的でフィラーを含有することが好ましく、フィラーを添加する場合の含有量は、保護層形成成分の0.05〜30質量%が好ましい。
【0095】
更に、滑り性や帯電性を改良するため、保護層には、潤滑剤、帯電防止剤を含有してもよい。このような潤滑剤としては、例えば脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、(変性)シリコーンオイル、(変性)シリコーン樹脂、弗素樹脂、弗化カーボン、ワックス等を挙げることができ、又、帯電防止剤としては、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、非イオン性界面活性剤、高分子帯電防止剤、金属酸化物又は導電性ポリマー等、「11290の化学商品」化学工業日報社,875〜876頁等に記載の化合物、米国特許5,244,773号カラム14〜20に記載された化合物等を挙げることができる。更に、本発明の目的を阻害しない範囲で、画像形成層に添加される各種添加剤を保護層に添加してもよく、これら添加剤の添加量は、保護層層形成成分の0.01〜20質量%程度が好ましく、更に好ましくは、0.05〜10質量%である。
【0096】
上記保護層は単層でもよく、組成が同一あるいは異なる複数の層で構成してもよい。尚、保護層の膜厚は、通常、1.0〜5.0μmである。
【0097】
本発明では、上述の画像形成層、支持体及び保護層以外に、支持体と画像形成層との膜付を改良するための中間層を、又、搬送性や帯電防止を目的としてバックコート層を設置してもよく、設置する場合の中間層の厚みは、通常、0.05〜2.0μmであり、バックコート層の厚みは通常0.1〜10μmである。
【0098】
本発明に係る画像形成層用塗布液、保護層用塗布液及び必要に応じて設置される中間層及びバックコート層用の各塗布液は、上述で述べた成分を、それぞれ溶媒に溶解又は分散して調製することができる。
【0099】
上記調製で用いることのできる溶媒としては、有機合成化学協会編の「溶剤ポケットブック」等に示されている溶解度パラメーターの値が6.0〜15.0の範囲のものであればよく、各層を形成する塗布液に用いることのできる溶媒としては、ケトン類として、例えばアセトン、イソホロン、エチルアミルケトン、メチルエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン等が挙げられる。アルコール類として、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。グリコール類として、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等が挙げられる。エーテルアルコール類として、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。エーテル類として、例えばエチルエーテル、ジオキサン、i−プロピルエーテル等が挙げられる。エステル類としては、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸−i−プロピル等が挙げられる。炭化水素類としてペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。塩化物類として、例えば塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロベンゼン等が挙げられる。ただし、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、これらに限定されない。
【0100】
又、これらの溶媒は、単独又は数種類を組み合わせて使用できる。尚、熱現像感光材料中の上記溶媒の残留量は、塗布後の乾燥工程の温度条件等を適宜設定することにより調整でき、残存溶媒量は合計量で5〜1000mg/m2が好ましく、更に好ましくは、10〜300mg/m2である。
【0101】
塗布液を調製する際に、分散が必要な場合には、例えば二本ロールミル、三本ロールミル、ボールミル、ペブルミル、コボルミル、トロンミル、サンドミル、サンドグラインダー、Sqegvariアトライター、高速インペラー分散機、高速ストーンミル、高速度衝撃ミル、ディスパー、高速ミキサー、ホモジナイザ、超音波分散機、オープンニーダー、連続ニーダー等、従来から公知の分散機を適時選択して用いることができる。
【0102】
上述のようにして調製した塗布液を塗布するには、例えばエクストルージョン方式の押出しコータ、リバースロールコータ、グラビアロールコータ、エアドクターコータ、ブレードコータ、エアナイフコータ、スクイズコータ、含浸コータ、バーコータ、トランスファロールコータ、キスコータ、キャストコータ、スプレーコータ等の公知の各種コータステーションを適時選択して用いることができる。これらのコータの中で、形成層の厚みムラを無くすためには、エクストルージョン方式の押出しコータやリバースロールコータ等のロールコータを用いることが好ましい。
【0103】
又、保護層を塗布する場合、画像形成層がダメージを受けないものであれば特に制限はないが、保護層形成塗布液に用いられる溶媒が、画像形成層を溶解する可能性がある場合には、上述したコータステーションの中で、エクストルージョン方式の押出しコータ、グラビアロールコータ、バーコータ等を使用することができる。尚、これらの中で、グラビアロールコータ、バーコータ等、接触する塗布方法を用いる場合には、搬送方向に対して、グラビアロールやバーの回転方向は順転でもリバースでもよく、又、順転の場合には等速でも周速差を設けてもよい。
【0104】
更に、各構成層を積層する際には、各層毎に塗布乾燥を繰り返してもよいが、ウェット・オン・ウェット方式で同時重層塗布して乾燥させてもよい。その場合、例えばリバースロールコータ、グラビアロールコータ、エアドクターコータ、ブレードコータ、エアナイフコータ、スクイズコータ、含浸コータ、バーコータ、トランスファロールコータ、キスコータ、キャストコータ、スプレーコータ等とエクストルージョン方式の押出しコータとの組合せにより塗布することができ、この様なウェット・オン・ウェット方式における重層塗布においては、下側の層が湿潤状態になったままで上側の層を塗布するので、上下層間の接着性が向上する。
【0105】
更に、本発明では、少なくとも画像形成層用塗布液を塗布した後、本発明の効果を有効に引き出すために、塗膜を乾燥させる温度は65〜100℃の範囲であることが好ましい。乾燥温度が65℃よりも低い場合は、反応が不十分であるため経時による感度の変動が起こる場合があり、又、100℃よりも高い場合には、製造直後の熱現像感光材料自身にカブリ(着色)を生じる場合があるため好ましくない。又、乾燥時間は乾燥時の風量により一概に規定できないが、通常2〜30分の範囲で乾燥させることが好ましい。
【0106】
尚、上述の乾燥温度は、塗布後直ぐに前述の温度範囲の乾燥温度で乾燥させてもよいし、乾燥の際に生じる塗布液のマランゴニーや、温風の乾燥風によって生じる表面近傍が初期に乾燥することにより生ずるムラ(柚子肌)を防止する目的から、初期の乾燥温度を65℃よりも低温で行い、その後、前述の温度範囲の乾燥温度で乾燥させてもよい。
【0107】
以上、本発明の熱現像感光材料及びその好適な製造方法により、本発明の目的を達成することはできるが、更に、画像記録方法を最適化することにより、干渉縞のない鮮明な画像を得ることができる。
【0108】
次いで、本発明の熱現像感光材料に好適な画像形成方法について詳述する。
【0109】
用いることのできる画像形成方法としては、露光面とレーザ光の為す角度、レーザの波長、使用するレーザの数により三つの態様に大別され、それらを単独で行ってもよいし、2種以上の態様を組み合わせてもよく、このような画像形成方法にすることで干渉縞のない鮮明な画像を得ることができる。
【0110】
本発明の画像形成方法として好適な態様として、熱現像感光材料の露光面とレーザ光の為す角度が実質的に垂直になることが無いレーザ光を用いて、走査露光により画像を形成することが挙げられる。このように、入射角を垂直からずらすことにより、仮に層間界面での反射光が発生した場合においても、画像形成層に達する光路差が大きくなることで、レーザ光の光路での散乱や減衰が生じて干渉縞が発生し難くなる。尚、「実質的に垂直になることが無い」とは、レーザ走査中に最も垂直に近い角度として、好ましくは55〜88度、より好ましくは60〜86度、更に好ましくは65〜84度であることを言う。
【0111】
又、本発明の画像形成方法における更に好適な態様としては、露光波長が単一でない縦マルチレーザを用いて、走査露光により画像を形成することが挙げられる。このような、波長に幅を有する縦マルチレーザ光で走査すると、縦単一モードの走査レーザ光に比べて干渉縞の発生が低減される。尚、ここで言う縦マルチとは、露光波長が単一でないことを意味し、通常、露光波長の分布が5nm以上、好ましくは10nm以上になるとよい。露光波長の分布の上限には特に制限はないが、通常60nm程度である。
【0112】
更に、上述の画像形成方法において、走査露光に用いるレーザとしては、一般によく知られているルビーレーザ、YAGレーザ、ガラスレーザ等の固体レーザ;He−Neレーザ、Arイオンレーザ、Krイオンレーザ、CO2レーザ、COレーザ、He−Cdレーザ、N2レーザ、エキシマーレーザ等の気体レーザ;InGaPレーザ、AlGaAsレーザ、GaAsPレーザ、InGaAsレーザ、InAsPレーザ、CdSnP2レーザ、GaSbレーザ等の半導体レーザ;化学レーザ、色素レーザ等を用途に併せて適時選択して使用できるが、請求項5に係る画像形成方法においては、これらの中でもメンテナンスや光源の大きさの問題から、波長が600〜1200nmの半導体レーザを好ましく用いることが特徴である。
【0113】
尚、レーザ・イメージャやレーザ・イメージセッタで使用されるレーザにおいて、熱現像感光材料に走査される時の熱現像感光材料露光面でのビームスポット径は、一般に短軸径として5〜75μm、長軸径として5〜100μmの範囲であり、レーザ光走査速度は熱現像感光材料固有のレーザ発振波長における感度とレーザパワーによって、熱現像感光材料毎に最適な値に設定することができる。
【実施例】
【0114】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。尚、特に断りない限り、実施例中の「%」は「質量%」を「部」は「質量部」を表す。
【0115】
実施例1
〔下引済み写真用支持体の作製〕
〈PET下引済み写真用支持体の作製〉
市販の2軸延伸熱固定済みの厚さ175μmの、光学濃度で0.170(コニカ社製デンシトメータPDA−65にて測定)に青色着色したPETフィルムの両面に8W/m2・分のコロナ放電処理を施し、一方の面に下記下引塗布液a−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し乾燥させて下引層A−1とし、又、反対側の面に下記下引塗布液b−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し乾燥させて下引層B−1とした。
《下引塗布液a−1》
ブチルアクリレート/t−ブチルアクリレート/スチレン/2−ヒドロキシエチルア
クリレート(30/20/25/25%)の共重合体ラテックス液(固形分30%)
270g
C−1 0.6g
ヘキサメチレン−1,6−ビス(エチレンウレア) 0.8g
水で1lに仕上げる
《下引塗布液b−1》
ブチルアクリレート/スチレン/グリシジルアクリレート(40/20/40%)の
共重合体ラテックス液(固形分30%) 270g
C−1 0.6g
ヘキサメチレン−1,6−ビス(エチレンウレア) 0.8g
水で1リットルに仕上げる。
【0116】
引き続き、下引層A−1及び下引層B−1の上表面に、8W/m2・分のコロナ放電を施し、下引層A−1の上には下記下引上層塗布液a−2を乾燥膜厚0.1μmになる様に、下引層B−1の上には下記下引上層塗布液b−2を乾燥膜厚0.8μmになる様に塗設して、それぞれ下引上層A−2及び帯電防止機能を持つ下引上層B−2を形成した。
《下引上層塗布液a−2》
ゼラチン 0.4g/m2になる質量
C−1 0.2g
C−2 0.2g
C−3 0.1g
シリカ粒子(平均粒径3μm) 0.1g
水で1リットルに仕上げる
《下引上層塗布液b−2》
C−4 60g
C−5を成分とするラテックス液(固形分20%) 80g
硫酸アンモニウム 0.5g
C−6 12g
ポリエチレングリコール(重量平均分子量600) 6g
水で1リットルに仕上げる。
【0117】
【化12】

【0118】
【化13】

【0119】
〈バック面側塗布〉
メチルエチルケトン(MEK)830gを攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(EastmanChemical社製:CAB381−20)84.2g及びポリエステル樹脂(Bostic社製:VitelPE2200B)4.5gを添加し、溶解した。次に、溶解液に0.30gの赤外染料1を添加し、更にメタノール43.2gに溶解した弗素系活性剤(旭硝子社製:サーフロンKH40)4.5gと弗素系活性剤(大日本インク社製:メガファッグF120K)2.3gを添加して、溶解するまで十分に攪拌を行った。最後に、MEKに1%の濃度でディゾルバ型ホモジナイザにて分散したシリカ(W.R.Grace社製:シロイド64X6000)を75g添加・攪拌してバック面側用の塗布液を調製した。
【0120】
このように調製したバック面塗布液を、乾燥膜厚が3.5μmになるように押出しコータにて塗布・乾燥を行った。乾燥温度100℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて5分間かけて乾燥した。
【0121】
《感光性ハロゲン化銀乳剤Aの調製》
(A1)
フェニルカルバモイル化ゼラチン 88.3g
化合物A(10%メタノール水溶液) 10ml
臭化カリウム 0.32g
水で5429mlに仕上げる
(B1)
0.67mol/L硝酸銀水溶液 2635ml
(C1)
臭化カリウム 51.55g
沃化カリウム 1.47g
水で660mlに仕上げる
(D1)
臭化カリウム 154.9g
沃化カリウム 4.41g
塩化イリジウム(1%溶液) 0.93ml
水で1982mlに仕上げる
(E1)
0.4mol/L臭化カリウム水溶液 下記銀電位制御量
(F1)
水酸化カリウム 0.71g
水で20mlに仕上げる
(G1)
56%酢酸水溶液 18.0ml
(H1)
無水炭酸ナトリウム 1.72g
水で151mlに仕上げる
化合物A:HO(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)17(CH2CH2O)m
(m+n=5〜7)。
【0122】
特公昭58−58288号、同58−58289号に示される混合攪拌機を用いて溶液(A1)に溶液(B1)の1/4量及び溶液(C1)全量を温度45℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により4分45秒を要して添加し、核形成を行った。1分後、溶液(F1)の全量を添加した。この間pAgの調整を(E1)を用いて適宜行った。6分間経過後、溶液(B1)の3/4量及び溶液(D1)の全量を、温度45℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により14分15秒かけて添加した。5分間攪拌した後、40℃に降温し、溶液(G1)を全量添加し、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分2000mlを残して上澄み液を取り除き、水を10リットル加え、攪拌後、再度ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1500mlを残し、上澄み液を取り除き、更に水を10リットル加え、攪拌後、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1500mlを残し、上澄み液を取り除いた後、溶液(H1)を加え、60℃に昇温し、更に120分攪拌した。最後にpHが5.8になるように調整し、銀量1モル当たり1161gになるように水を添加し、感光性ハロゲン化銀乳剤Aを得た。
【0123】
この乳剤は、平均粒子サイズ0.058μm、粒子サイズの変動係数12%、〔100〕面比率92%の単分散立方体沃臭化銀粒子であった。
【0124】
次に、上記乳剤に硫黄増感剤S−5(0.5%メタノール溶液)240mlを加え、更に、この増感剤の1/20モル相当の金増感剤Au−5を添加し、55℃にて120分間攪拌して化学増感を施した。
【0125】
《粉末有機銀塩Aの調製》
4720mlの純水にベヘン酸130.8g、アラキジン酸67.7g、ステアリン酸43.6g、パルミチン酸2.3gを80℃で溶解した。次に1.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlを添加し濃硝酸6.9mlを加えた後、55℃に冷却して脂肪酸ナトリウム溶液を得た。この脂肪酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、上記感光性ハロゲン化銀乳剤A45.3gと純水450mlを添加し5分間攪拌した。
【0126】
次に1mol/Lの硝酸銀溶液702.6mlを2分間かけて添加し、10分間攪拌して有機銀塩分散物を得た。その後、得られた有機銀塩分散物を水洗容器に移し、脱イオン水を加えて攪拌後、静置させて有機銀塩分散物を浮上分離させ、下方の水溶性塩類を除去した。その後、排水の電導度が2μS/cmになるまで脱イオン水による水洗・排水を繰り返し、遠心脱水を実施した後、得られたケーキ状の有機銀塩を、気流式乾燥機フラッシュジェットドライヤー(セイシン企業社製)を用いて、窒素ガス雰囲気及び乾燥機入口熱風温度の運転条件により含水率が0.1%になるまで乾燥して、有機銀塩の乾燥済み粉末有機銀塩Aを得た。尚、有機銀塩組成物の含水率測定には赤外線水分計を使用した。
【0127】
《予備分散液Aの調製》
ポリビニルブチラール粉末(Monsanto社製:Butvar B−79)14.57gをMEK1457gに溶解し、VMA−GETZMANN社製ディゾルバDISPERMAT CA−40M型にて攪拌しながら、粉末有機銀塩A500gを徐々に添加して十分に混合することにより予備分散液Aを調製した。
【0128】
《感光性乳剤分散液1の調製》
予備分散液Aをポンプを用いてミル内滞留時間が1.5分間となるように、0.5mm径のジルコニアビーズ(東レ社製:トレセラム)を内容積の80%充填したメディア型分散機DISPERMAT SL−C12EX型(VMA−GETZMANN社製)に供給し、ミル周速8m/sにて分散を行うことにより感光性乳剤分散液1を調製した。
【0129】
《安定剤液の調製》
1.0gの安定剤1と0.31gの酢酸カリウムをメタノール4.97gに溶解し、安定剤液を調製した。
【0130】
《赤外増感色素液Aの調製》
19.2mgの増感色素1、1.488gの2−クロロ−安息香酸、2.779gの安定剤2及び365mgの5−メチル−2−メルカプトベンズイミダゾールを31.3mlのMEKに暗所にて溶解し、赤外増感色素液Aを調製した。
【0131】
《添加液aの調製》
還元剤(表1に記載)、一般式(1)又は(2)で表される化合物(表1に記載)、1.54gの4−メチルフタル酸、0.48gの赤外染料1をMEK110gに溶解し、添加液aとした。
【0132】
《添加液bの調製》
9×10-3molのポリハロゲン化合物1及び3.43gのフタラジンをMEK40.9gに溶解し添加液bとした。
【0133】
《感光層塗布液の調製》
不活性気体雰囲気下(窒素97%)において、前記感光性乳剤分散液1の50g及びMEK15.11gを攪拌しながら21℃に保温し、化学増感剤S−5(0.5%メタノール溶液)1000μlを加え、2分後にカブリ防止剤1(10%メタノール溶液)390μlを加え、1時間攪拌した。更に臭化カルシウム(10%メタノール溶液)494μlを添加して10分撹拌した後に、上記の有機化学増感剤の1/20モル相当の金増感剤Au−5を添加し、更に20分攪拌した。続いて、安定剤液167mlを添加して10分間攪拌した後、1.32gの前記赤外増感色素液を添加して1時間攪拌した。その後、温度を13℃まで降温して更に30分攪拌した。13℃に保温したまま、ポリビニルブチラール(前出:B−79)13.31gを添加して30分攪拌した後、テトラクロロフタル酸(9.4%MEK溶液)1.084gを添加して15分間攪拌した。更に攪拌を続けながら、12.43gの添加液a、1.6mlのDesmodurN3300/モーベイ社社製の脂肪族イソシアネート(10%MEK溶液)、4.27gの添加液bを順次添加し攪拌することにより感光層塗布液を得た。
【0134】
《マット剤分散液の調製》
セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社製:7.5gのCAB171−15)をMEK42.5gに溶解し、その中に、炭酸カルシウム(Speciality Minerals社製:Super−Pflex200)5gを添加し、ディゾルバ型ホモジナイザにて8000rpmで30min分散してマット剤分散液を調製した。
【0135】
《表面保護層塗布液の調製》
MEK865gを攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(前出:CAB171−15)96g、ポリメチルメタクリル酸(ローム&ハース社製:パラロイドA−21)4.5g、ビニルスルホン化合物(VSC)1.5g、ベンズトリアゾール1.0g、弗素系活性剤(旭硝子社製:サーフロンKH40)1.0gを添加して溶解した。次に、上記マット剤分散液30gを添加して攪拌し、表面保護層塗布液を調製した。
【0136】
《感光層面側塗布》
前記感光層塗布液と表面保護層塗布液を、押出し(エクストルージョン)コータを用いて同時に重層塗布することにより熱現像感光材料を作製した。塗布は、感光層は塗布銀量1.9g/m2、表面保護層は乾燥膜厚で2.5μmになる様にして行った。その後、乾燥温度75℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて、10分間乾燥を行い、熱現像感光材料の塗布試料(1〜20)を得た。
【0137】
熱現像感光材料作製に用いた添加剤の構造を以下に示す。
【0138】
VSC:HO−CH(CH2SO2CH=CH22
【0139】
【化14】

【0140】
《露光及び現像処理》
上記のように作製した感光材料の乳剤面側から、高周波重畳にて波長800〜820nmの縦マルチモード化された半導体レーザを露光源とした露光機により、レーザ走査による露光を与えた。この際に、感光材料の露光面と露光レーザ光の角度を75度として画像を形成した(当該角度を90度とした場合に比べ、ムラが少なく、かつ予想外に鮮鋭性等が良好な画像が得られた)。
【0141】
その後、ヒートドラムを有する自動現像機を用いて感光材料の保護層とドラム表面が接触するようにして、125℃で10秒間熱現像処理した。その際、露光及び現像は23℃・50%RH(相対湿度)に調湿した部屋で行った。得られた画像の評価を濃度計により行った。測定の結果は、感度(未露光部分よりも1.0高い濃度を与える露光量の比の逆数)及びカブリで評価し、感光材料1の感度を100とする相対値で示した。
【0142】
「生保存性」
内部が25℃・55%RHに保たれた密閉容器中に塗布試料を3枚入れ、50℃で7日間経時した(強制経時)。この中の2枚目の試料と比較用経時(25℃にて遮光容器中に保存)の試料とについて、上記センシトメトリーの評価と同じ処理を行い、カブリ部分の濃度を測定し、下式によりカブリの増加1を求め生保存性として評価した。
【0143】
(カブリの増加1)=(強制経時のカブリ)−(比較用経時のカブリ)
「画像保存性」
センシトメトリーの評価と同じ処理をした2枚の試料を、1枚は25℃・RH55%で7日間遮光保存し、もう1枚は25℃・RH55%で7日間自然光に晒した後、両者のカブリ部分の濃度を測定し、下式によりカブリの増加2を求め画像保存性として評価した。
【0144】
(カブリの増加2)=(自然光に晒した時のカブリ)−(遮光保存した時のカブリ)
「銀色調」
銀色調の評価用として、現像後の濃度が1.1±0.05になるように露光現像した試料を作製した。この試料を色温度7700ケルビン、照度11600ルクスの光源台で10時間照射し、下記5段階で銀の色調を評価した。品質保証上問題のないランクは4以上である。
【0145】
5:純黒調で全く黄色みを感じない
4:純黒ではないが、殆ど黄色味を感じない
3:部分的に僅かに黄色味を感じる
2:全面に僅かに黄色味を感じる
1:一見して黄色味が感じられる
経過を纏めて表1に示す。
【0146】
【表1】

【0147】
【化15】

【0148】
表1より、本発明のビスフェノール化合物を添加しない試料1ではカブリ値が高く、かつカブリの増加も大きい。比較化合物を添加した試料2ではカブリは抑制されているものの、その効果が小さく、かつ感度低下も大きい。又、通常還元剤(現像剤)として用いられる、カルボキシル基を有さないビスフェノール化合物を追加で添加した試料3〜5では、カブリ抑制の効果を示さず、寧ろカブリが劣化している。
【0149】
一方、本発明のビスフェノール化合物を添加した試料7〜20では、十分な感度があり、かつカブリが低く、熱現像感光材料の生保存安定性、画像保存性及び銀色調も良好であることが判る。特に一般式(3)で表される還元剤と併用した場合、感度が高く好ましい結果が得られた。又、試料6からは、添加量を多くした場合、感度低下が大きくなることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、有機銀、ハロゲン化銀、バインダー及び還元剤を含有する画像形成層を有する熱現像感光材料において、分子内に少なくとも1個のカルボキシル基を有するメチレンビスフェノール化合物を、前記還元剤に対して0.01〜20モル%含有することを特徴とする熱現像写真感光材料。
【請求項2】
前記分子内に少なくとも1個のカルボキシル基を有するメチレンビスフェノール化合物が、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の熱現像写真感光材料。
【化1】

〔式中、R11及びR12は各々脂肪族基を表し、Arは芳香族基又は芳香族複素環基を表す。R13及びR14は各々脂肪族基を表す。ただし、R11、R12、Ar、R13及びR14の少なくとも一つは、少なくとも1個のカルボキシル基を有する。〕
【請求項3】
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項2に記載の熱現像写真感光材料。
【化2】

〔式中、R21及びR22は各々アルキル基又はシクロアルキル基を表し、R23及びR24は各々アルキル基を表す。Lは2価の連結基を表し、nは0又は1を表す。〕
【請求項4】
前記還元剤が下記一般式(3)で表されることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の熱現像写真感光材料。
【化3】

〔式中、R31及びR32は各々2級もしくは3級のアルキル基又はシクロアルキル基を表し、R33は水素原子又は脂肪族基を表す。R34及びR35は各々脂肪族基を表す。ただし、R31、R32、R33、R34及びR35は何れもカルボキシル基を含むことはない。〕
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の熱現像写真感光材料をレーザー光線で像用露光した後、80〜250℃で現像することを特徴とする画像形成方法。

【公開番号】特開2007−212515(P2007−212515A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−29520(P2006−29520)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】