説明

熱発電携帯機器および熱発電携帯機器の発電制御方法

【課題】生体への装着状態において発電効率の低下を抑制し、所望の発電量を確保する。
【解決手段】熱発電携帯機器10は、生体に装着され、該生体の熱により発電可能であって、熱源である生体と熱発電携帯機器10からの放熱の放熱先との間における熱源側位置の温度と放熱先側位置の温度との温度差に基づき発電する熱発電部材20と、生体と放熱先との間における伝熱経路の少なくとも一部の熱抵抗を変更可能な可動部材22と、を備える。可動部材22は、回転軸22a周りに回転可能または所定方向にスライド移動可能であって、回転またはスライド移動に伴って、伝熱経路に対する干渉の有無または伝熱経路に干渉する位置が変化することによって伝熱経路の少なくとも一部の熱抵抗を変更可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱発電携帯機器および熱発電携帯機器の発電制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、熱発電素子を裏蓋と本体内部の放熱リングとの間に設置し、人体の腕から体温が裏蓋を介して伝達される発熱側の温度と放熱側の温度との温度差によって発電電圧を得る熱発電腕時計が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3054933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術に係る熱発電腕時計においては、人体の腕に装着された後に熱発電腕時計全体の温度が飽和するように熱的平衡状態に向かい変化することに伴い、熱発電素子の発熱側の温度と放熱側の温度との温度差が小さくなり、熱発電素子の発電電圧が低下することで所望の発電量を確保することができなくなると共に、発電効率が低下してしまう虞がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、生体への装着状態において発電効率の低下を抑制し、所望の発電量を確保することが可能な熱発電携帯機器および熱発電携帯機器の発電制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の請求項1に係る熱発電携帯機器は、生体に装着され、該生体の熱により発電可能な熱発電携帯機器(例えば、実施の形態での熱発電携帯機器10)であって、熱源である前記生体と前記熱発電携帯機器からの放熱の放熱先との間における熱源側位置の温度と放熱先側位置の温度との温度差に基づき発電する熱発電部材(例えば、実施の形態での熱発電部材20)と、前記生体と前記放熱先との間における伝熱経路の少なくとも一部の熱抵抗を変更可能な熱抵抗変更手段(例えば、実施の形態での可動部材22、部材駆動部51、手動操作部材61)と、を備える。
【0007】
さらに、本発明の請求項2に係る熱発電携帯機器では、前記熱抵抗変更手段は、前記伝熱経路の少なくとも一部の熱抵抗(例えば、実施の形態での各熱抵抗R1,R2,R3,R5)が第1熱抵抗になる状態と、前記伝熱経路の少なくとも一部の熱抵抗が前記第1熱抵抗とは異なる第2熱抵抗になる状態とを切り替え可能である。
【0008】
さらに、本発明の請求項3に係る熱発電携帯機器では、前記熱抵抗変更手段は、回転軸(例えば、実施の形態での回転軸22a)周りに回転可能または所定方向にスライド移動可能であって、前記回転または前記スライド移動に伴って、前記伝熱経路に対する干渉の有無または前記伝熱経路に干渉する位置が変化することによって前記伝熱経路の少なくとも一部の熱抵抗を変更可能な可動部材(例えば、実施の形態での可動部材22)を備える。
【0009】
さらに、本発明の請求項4に係る熱発電携帯機器では、前記可動部材は板状部材であって、該板状部材は前記伝熱経路に交差可能である。
【0010】
さらに、本発明の請求項5に係る熱発電携帯機器では、前記回転軸周りに回転可能な前記可動部材は、前記回転軸の軸心に対して点対称な形状を有する。
【0011】
さらに、本発明の請求項6に係る熱発電携帯機器では、前記回転軸周りに回転可能な前記可動部材は、前記回転軸の軸心に対して非点対称な形状を有する。
【0012】
さらに、本発明の請求項7に係る熱発電携帯機器は、時間を計る計時手段(例えば、実施の形態での制御部31)と、前記熱発電部材の発電電圧を検出する電圧検出手段(例えば、実施の形態での電圧センサ52)と、前記熱発電部材の発電電力を蓄電する蓄電手段(例えば、実施の形態での蓄電部34)および該蓄電手段の蓄電量を検出する蓄電量検出手段(例えば、実施の形態での蓄電量センサ53)とのうち、少なくとも何れか1つを備え、前記熱抵抗変更手段は、前記計時手段の計時動作と、前記電圧検出手段の検出結果と、前記蓄電量検出手段の検出結果とのうち、少なくとも何れか1つに応じて前記可動部材を自動的に駆動する部材駆動手段(例えば、実施の形態での部材駆動部51)を備える。
【0013】
さらに、本発明の請求項8に係る熱発電携帯機器では、前記計時手段は、時刻の秒を示す秒針(例えば、実施の形態での秒針17a)と、前記時刻の分を示す分針(例えば、実施の形態での分針17b)と、前記時刻の時を示す時針(例えば、実施の形態での時針17c)とのうち、少なくとも何れか1つを駆動する針駆動手段(例えば、実施の形態での針駆動部32)を備え、少なくとも前記計時手段の計測動作に応じて前記可動部材を自動的に駆動する前記部材駆動手段は、前記針駆動手段により駆動される前記秒針と前記分針と前記時針とのうち少なくとも何れか1つに連動して前記可動部材を自動的に駆動する。
【0014】
さらに、本発明の請求項9に係る熱発電携帯機器では、前記熱抵抗変更手段は、前記可動部材を手動により操作可能な手動操作部材(例えば、実施の形態での手動操作部材61)を備える。
【0015】
さらに、本発明の請求項10に係る熱発電携帯機器では、前記熱抵抗変更手段は、前記伝熱経路の前記生体と前記熱発電部材との間と、前記伝熱経路の前記放熱先と前記熱発電部材との間とのうち、少なくとも何れか1つの熱抵抗(例えば、実施の形態での各熱抵抗R1,R2,R5)を変更可能である。
【0016】
さらに、本発明の請求項11に係る熱発電携帯機器では、前記伝熱経路の前記生体と前記熱発電部材との間の熱抵抗を変更可能な前記熱抵抗変更手段は、前記生体に接触する部材(例えば、実施の形態での裏蓋14)の熱抵抗(例えば、実施の形態での熱抵抗R5)を変更可能である。
【0017】
さらに、本発明の請求項12に係る熱発電携帯機器では、前記伝熱経路の前記放熱先と前記熱発電部材との間の熱抵抗を変更可能な前記熱抵抗変更手段は、前記伝熱経路の前記放熱先と前記熱発電部材との間に設けられて前記熱発電部材に接触する部材(例えば、実施の形態での保持部材15)の熱抵抗(例えば、実施の形態での熱抵抗R2)を変更可能である。
【0018】
さらに、本発明の請求項13に係る熱発電携帯機器では、前記伝熱経路の前記放熱先と前記熱発電部材との間の熱抵抗を変更可能な前記熱抵抗変更手段は、前記伝熱経路の前記放熱先と前記熱発電部材との間に設けられた筐体(例えば、実施の形態での筐体11)と前記放熱先との間の放熱領域(例えば、実施の形態での放熱部)の熱抵抗(例えば、実施の形態での熱抵抗R1)を変更可能である。
【0019】
また、本発明の請求項14に係る熱発電携帯機器の発電制御方法は、請求項1に記載の熱発電携帯機器の発電制御方法であって、前記熱発電部材による発電時に前記伝熱経路の少なくとも一部の熱抵抗を変更し、該変更後に前記伝熱経路の少なくとも一部の熱抵抗を変更前の値に向かい変更する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の請求項1に係る熱発電携帯機器によれば、例えばペルチェ素子などからなる熱発電部材は、熱源である生体の温度(体温)と熱発電携帯機器外部の雰囲気などの放熱先の温度との温度差に起因して熱発電部材の熱源側位置と放熱先側位置との間に生じる温度差の大きさに応じた発電電圧を出力する。
このため、熱源と放熱先との間の所定の温度差に対して、伝熱経路のうち局在的に熱発電部材の熱源側位置と放熱先側位置との間で温度差が増大するようにして伝熱経路の少なくとも一部の熱抵抗を変更することにより、発電電圧を増大させて所望の発電量を確保することができると共に、発電効率の低下を抑制することができる。
【0021】
例えば、先ず、熱発電携帯機器が熱源である生体に装着された初期状態においては、伝熱経路を構成する直列的な各領域(例えば、機器本体を構成する部材や機器内部の空気などにより構成される各領域)の熱抵抗を同等あるいは熱発電部材の熱抵抗よりも小さな値に設定しておくことにより、熱発電部材の熱源側位置と放熱先側位置との間の温度差を、熱源と放熱先との間の所定の温度差に応じた最大発電状態の温度差まで迅速に増大させることができ、発電効率を増大させることができる。
【0022】
そして、熱発電携帯機器全体の温度が飽和するように熱的平衡状態に向かい変化することに伴い、熱発電部材の熱源側位置と放熱先側位置との間の温度差および熱発電部材の発電電圧が低下した後においては、例えば熱源と放熱先との間における伝熱経路で熱発電部材に対して直列接続の関係を有する適宜の領域の熱抵抗を増大させるなどによって、伝熱経路の少なくとも一部の熱抵抗を変更する。
これにより、いわば、熱源と放熱先との間の所定の温度差が伝熱経路の全体に亘って配分されたような熱的平衡状態が変更されて、この所定の温度差が伝熱経路の一部に局在的に集中するような熱的平衡状態が形成される。
【0023】
そして、熱源と放熱先との間の所定の温度差に基づいて伝熱経路の一部に局在的な温度差が形成された後、伝熱経路の熱抵抗を変更前の状態(例えば、伝熱経路を構成する直列的な各領域の熱抵抗が同等あるいは熱発電部材の熱抵抗よりも小さい状態)などに変更する。
これにより、熱的過渡状態において熱発電部材の熱源側位置と放熱先側位置との間の温度差および熱発電部材の発電電圧を初期状態の程度(例えば、最大発電状態での温度差および発電電圧など)まで再度増大させることができ、所望の発電量を確保することができると共に、発電効率の低下を抑制することができる。
【0024】
さらに、本発明の請求項2に係る熱発電携帯機器によれば、伝熱経路の少なくとも一部の熱抵抗を第1熱抵抗と第2熱抵抗とに切り替えることによって熱源と放熱先との間の伝熱経路での温度分布を変更して、熱発電部材の熱源側位置と放熱先側位置との間に、熱源と放熱先との間の所定の温度差に基づく所望の大きさの温度差を確保することができる。
これにより、所望の発電電圧および発電量を確保することができると共に、発電効率の低下を抑制することができる。
【0025】
さらに、本発明の請求項3に係る熱発電携帯機器によれば、例えば適宜の熱抵抗を有する可動部材による伝熱経路に対する干渉の有無によって、あるいは、例えば位置に応じて異なる熱抵抗を有する可動部材による伝熱経路に対する干渉の位置の変化によって、伝熱経路の少なくとも一部の熱抵抗を変更することができる。
これにより、回転軸周りに回転可能または所定方向にスライド移動可能な可動部材を備えるだけで、機器構成が複雑化することを抑制しつつ、伝熱経路の少なくとも一部の熱抵抗を容易に変更することができる。
【0026】
さらに、本発明の請求項4に係る熱発電携帯機器によれば、例えば適宜の熱抵抗を有する板状部材による伝熱経路に対する交差状態の有無によって、あるいは、例えば位置に応じて異なる熱抵抗を有する板状部材による伝熱経路に対する交差位置の変化によって、伝熱経路の少なくとも一部の熱抵抗を変更することができる。
これにより、回転軸周りに回転可能または所定方向にスライド移動可能な板状部材を備えるだけで、機器構成が複雑化することを抑制しつつ、伝熱経路の少なくとも一部の熱抵抗を容易に変更することができる。
【0027】
さらに、本発明の請求項5に係る熱発電携帯機器によれば、可動部材の回転性を向上させることができ、回転に伴う伝熱経路に対する干渉の有無あるいは回転に伴う伝熱経路に対する干渉の位置の変化を容易に生じさせることができ、伝熱経路の少なくとも一部の熱抵抗を容易に変更することができる。
【0028】
さらに、本発明の請求項6に係る熱発電携帯機器によれば、例えば重力の作用による可動部材の回転性を向上させることができ、回転に伴う伝熱経路に対する干渉の有無あるいは回転に伴う伝熱経路に対する干渉の位置の変化を容易に生じさせることができ、伝熱経路の少なくとも一部の熱抵抗を容易に変更することができる。
【0029】
さらに、本発明の請求項7に係る熱発電携帯機器によれば、例えば所定の時間や時刻に応じて、あるいは、例えば発電電圧の低下に応じて、あるいは、例えば蓄電量の低下に応じて、自動的に伝熱経路の少なくとも一部の熱抵抗を変更することにより、所望の発電電圧および発電量を確保することができると共に、発電効率の低下を抑制することができる。
【0030】
さらに、本発明の請求項8に係る熱発電携帯機器によれば、針駆動手段と部材駆動手段との連動的な動作により、機器構成が複雑化することを抑制しつつ、所望の発電電圧および発電量を確保することができると共に、発電効率の低下を抑制することができる。
【0031】
さらに、本発明の請求項9に係る熱発電携帯機器によれば、操作者の意思に応じて所望の発電電圧および発電量を確保することができると共に、発電効率の低下を抑制することができる。
【0032】
さらに、本発明の請求項10から請求項13の何れか1つに係る熱発電携帯機器によれば、熱発電携帯機器が生体に装着された状態において熱発電部材の熱源側位置と放熱先側位置との間の温度差が低下した場合であっても、少なくとも伝熱経路の生体と熱発電部材との間または放熱先と熱発電部材との間の熱抵抗を一時的に増大させた後に低下させることによって、熱発電部材の熱源側位置と放熱先側位置との間の温度差を再度増大させることができる。
これにより、所望の発電電圧および発電量を確保することができると共に、発電効率の低下を抑制することができる。
【0033】
また、本発明の請求項14に係る熱発電携帯機器の発電制御方法によれば、生体に装着された熱発電携帯機器全体の温度が飽和するようにして熱的平衡状態に向かい変化することに伴い、熱発電部材の熱源側位置と放熱先側位置との間の温度差および熱発電部材の発電電圧が低下した場合であっても、熱発電部材の熱源側位置と放熱先側位置との間の温度差を再度増大させることができる。
これにより、所望の発電電圧および発電量を確保することができると共に、発電効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態に係る熱発電携帯機器の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る熱発電携帯機器のムーブメントの構成図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る熱発電携帯機器において、筐体および保持部材からなる領域の熱抵抗が、小さい値の第1熱抵抗になる状態と大きい値の第2熱抵抗になる状態とにおける、可動部材の状態を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る熱発電携帯機器の熱抵抗モデルを示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る熱発電携帯機器が生体に装着された状態における熱抵抗モデルでの温度分布の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る熱発電携帯機器が生体に装着された以後における熱発電部材の熱源側位置の温度と放熱先側位置の温度との間に生じる温度差ΔTpの変化の一例を示すグラフ図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る熱発電携帯機器が生体に装着された以後における、可動部材の状態に応じて変化する筐体および保持部材からなる領域の熱抵抗と、熱抵抗モデルでの温度分布の変化とを示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る熱発電携帯機器が生体に装着された以後における、可動部材の状態に応じて変化する筐体および保持部材からなる領域の熱抵抗と、熱発電部材の熱源側位置の温度と放熱先側位置の温度との間に生じる温度差ΔTpの変化とを示す図である。
【図9】本発明の実施の形態の第1変形例に係る熱発電携帯機器において、筐体および保持部材からなる領域の熱抵抗が、小さい値の第1熱抵抗になる状態と大きい値の第2熱抵抗になる状態とにおける、可動部材の状態を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態の第2変形例に係る熱発電携帯機器において、筐体および保持部材からなる領域の熱抵抗が、小さい値の第1熱抵抗になる状態と大きい値の第2熱抵抗になる状態とにおける、可動部材の状態を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態の第3変形例に係る熱発電携帯機器において、筐体および保持部材からなる領域の熱抵抗が、小さい値の第1熱抵抗になる状態と大きい値の第2熱抵抗になる状態とにおける、可動部材の状態を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態の第3変形例に係る熱発電携帯機器のムーブメントの構成図である。
【図13】本発明の実施の形態の第4変形例に係る熱発電携帯機器において、筐体および保持部材からなる領域の熱抵抗が、小さい値の第1熱抵抗になる状態と大きい値の第2熱抵抗になる状態とにおける、可動部材の状態を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態の第5変形例に係る熱発電携帯機器において、筐体および保持部材からなる領域の熱抵抗が、小さい値の第1熱抵抗になる状態と大きい値の第2熱抵抗になる状態とにおける、可動部材の状態を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態の第6変形例に係る熱発電携帯機器において、筐体および保持部材からなる領域の熱抵抗が、小さい値の第1熱抵抗になる状態と大きい値の第2熱抵抗になる状態とにおける、可動部材の状態を示す図である。
【図16】本発明の実施の形態の第7変形例に係る熱発電携帯機器において、筐体および保持部材からなる領域の熱抵抗が、小さい値の第1熱抵抗になる状態と大きい値の第2熱抵抗になる状態とにおける、可動部材の状態を示す図である。
【図17】本発明の実施の形態の第8変形例に係る熱発電携帯機器において、裏蓋および導熱部材からなる領域の熱抵抗が、小さい値の第1熱抵抗になる状態と大きい値の第2熱抵抗になる状態とにおける、可動部材の状態を示す図である。
【図18】本発明の実施の形態の第8変形例に係る熱発電携帯機器が生体に装着された以後における、可動部材の状態に応じて変化する裏蓋および導熱部材からなる領域の熱抵抗と、熱抵抗モデルでの温度分布の変化とを示す図である。
【図19】本発明の実施の形態の第8変形例に係る熱発電携帯機器が生体に装着された以後における、可動部材の状態に応じて変化する裏蓋および導熱部材からなる領域の熱抵抗と、熱発電部材の熱源側位置の温度と放熱先側位置の温度との間に生じる温度差ΔTpの変化とを示す図である。
【図20】本発明の実施の形態の第9変形例に係る熱発電携帯機器において、熱発電携帯機器の表面および表面付近の領域からなる放熱部の熱抵抗が、小さい値の第1熱抵抗になる状態と大きい値の第2熱抵抗になる状態とにおける、可動部材の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の一実施形態に係る熱発電携帯機器および熱発電携帯機器の発電制御方法について添付図面を参照しながら説明する。
本実施の形態による熱発電携帯機器10は、例えば人体の腕に装着される腕時計であって、図1に示すように、筐体11と、枠体12と、カバーガラス13と、裏蓋14と、保持部材15と、文字盤16と、指針部17と、ムーブメント18と、基板19と、熱発電部材20と、導熱部材21と、可動部材22と、を備えて構成されている。
【0036】
筐体11は、例えば金属などにより筒状に形成され、一方の開口端はカバーガラス13により閉塞され、他方の開口端には筒状の枠体12の一方の開口端が接続されている。
枠体12は、例えば合成樹脂などにより筒状に形成され、他方の開口端は裏蓋14により閉塞されている。
【0037】
保持部材15は、例えばアルミニウム、銅、真鍮等の金属により形成され、筐体11および枠体12の内部に収容されている。
文字盤16は、例えば時刻の秒、分、時に係る数字などの表示が設けられた表面16Aがカバーガラス13を介して外部から視認可能になるようにして、裏面16Bがムーブメント18により保持されている。
【0038】
指針部17は、例えば、時刻の秒を示す秒針17aと、時刻の分を示す分針17bと、時刻の時を示す時針17cとを備えて構成され、文字盤16の表面16A上から突出して設けられ、ムーブメント18により回転駆動されて文字盤16の表面16A上に設けられた時刻に係る適宜の表示を指し示す。
【0039】
ムーブメント18は、例えば、文字盤16の裏面16B側に配置されて保持部材15により保持されている。
ムーブメント18は、例えば図2に示すように、制御部31と、針駆動部32と、昇圧部33と、蓄電部34とを備えて構成されている。
【0040】
制御部31は、例えば蓄電部34から供給される電力により作動する発振回路および分周回路およびモータ駆動パルス出力回路などを備え、分周回路から出力される計時の基準となる信号に応じて、針駆動部32を駆動するための駆動パルスをモータ駆動パルス出力回路から出力する。
【0041】
針駆動部32は、例えばステッピングモータなどを備え、制御部31から出力される駆動パルスに応じて指針部17の秒針17aと分針17bと時針17cとを回転駆動する。
昇圧部33は、例えば発振回路およびチャージポンプ回路などを備え、熱発電部材20に接続され、熱発電部材20から出力される発電電圧を昇圧して昇圧電圧を出力する。
蓄電部34は、例えば2次電池やコンデンサなどを備え、昇圧部33に接続され、昇圧部33から出力される電力を蓄電する。
【0042】
基板19は、例えば保持部材15により保持されている。
熱発電部材20は、例えばペルチェ素子や熱電対などからなり、保持部材15と導熱部材21とによって挟み込まれるようにして保持されている。
導熱部材21は、例えば銅などにより板状に形成され、裏蓋14の内面14A側に配置されている。
【0043】
可動部材22は、例えば図3(A),(B)に示すように、金属などにより楕円形板状や長板状に形成され、回転軸22aの軸心に対して点対称な形状を有し、保持部材15の内部に収容されて回転軸22a周りに回転可能に支持されている。
これにより、可動部材22は、例えば熱発電携帯機器10に対して外部から加えられる外力に応じて回転する。
そして、可動部材22は、例えば、この可動部材22が収容される保持部材15内部の雰囲気(空気など)の熱抵抗とは異なる熱抵抗(例えば、空気より小さな熱抵抗)を有するように形成されている。
【0044】
さらに、可動部材22は、例えば、回転軸22aの軸心に対して点対称の位置に配置された2つの熱発電部材20,20に対して、カバーガラス13から裏蓋14に向かう方向から見て、例えば図3(A)に示すように長辺方向においては2つの熱発電部材20,20を覆うように重畳可能な形状を有すると共に、例えば図3(B)に示すように短辺方向においては2つの熱発電部材20,20間に収まるようにして2つの熱発電部材20,20に重畳しない形状(つまり、短辺方向の長さが2つの熱発電部材20,20間の間隔よりも短い形状)を有するように形成されている。
【0045】
これにより、例えば、順次、裏蓋14と、導熱部材21と、熱発電部材20と、保持部材15と、筐体11とを伝達する熱流に対して、可動部材22の回転に応じて、図3(A)に示すように可動部材22を経由する場合と、図3(B)に示すように可動部材22を経由せずに保持部材15内部の雰囲気(空気など)中を経由する場合とが切り替わる。
【0046】
ここで、上記構成の熱発電携帯機器10に対して、例えば図4に示すような熱抵抗モデルを適用すると、金属からなる可動部材22の熱抵抗は保持部材15内部の雰囲気(空気など)の熱抵抗に比べて小さいことから、可動部材22の回転に応じて、筐体11および保持部材15からなる領域の熱抵抗R2が変化することになる。
つまり、順次、裏蓋14と、導熱部材21と、熱発電部材20と、保持部材15と、筐体11とを伝達する熱流の伝熱経路に対して、図3(A)に示すように可動部材22が干渉(つまり、交差)する場合には筐体11および保持部材15からなる領域の熱抵抗R2が小さな値の第1熱抵抗R2aになり、図3(B)に示すように可動部材22が干渉(つまり、交差)しない場合には熱抵抗R2が大きな値の第2熱抵抗R2b(>第1熱抵抗R2a)になる。
【0047】
なお、例えば図4に示す熱抵抗モデルでは、裏蓋14に接触する熱源である生体と、熱発電携帯機器10外部の雰囲気などの放熱先との間において、裏蓋14および導熱部材21からなる領域の熱抵抗R5と、熱発電部材20の熱抵抗R4と、枠体12および枠体12内部の雰囲気からなる領域の熱抵抗R3と、筐体11および保持部材15からなる領域の熱抵抗R2と、熱発電携帯機器10の表面(例えば、筐体11の表面11Aなど)および該表面付近の領域からなる放熱部の熱抵抗R1とに対して、各熱抵抗R1,R2,R3,R5は直列に接続され、かつ熱抵抗R2,R5間において熱抵抗R4は熱抵抗R3に並列に接続されている。
【0048】
そして、熱発電部材20は、熱源である生体の温度(熱源温度Tc)と熱発電携帯機器10外部の雰囲気などの放熱先の温度(雰囲気温度Ta)との温度差に起因して熱発電部材20の熱源側位置の温度Tp2と放熱先側位置の温度Tp1との間に生じる温度差ΔTp(=Tp2−Tp1)の大きさに応じた発電電圧を出力する。
【0049】
なお、熱発電携帯機器10は、例えば、各熱抵抗R1,R5および第1熱抵抗を示す熱抵抗R2が、熱発電部材20の熱抵抗R4と同等あるいは熱発電部材20の熱抵抗R4よりも小さくなるように構成されている。また、熱抵抗R3は、例えば、各熱抵抗R1,R2,R4,R5よりも大きくなるように構成されている。
【0050】
なお、例えば、筐体11と保持部材15との間、保持部材15と熱発電部材20との間、導熱部材21と裏蓋14との間などには、熱伝導性のグリス23が塗布されている。
【0051】
本実施の形態による熱発電携帯機器10は上記構成を備えており、次に、この熱発電携帯機器10の動作について説明する。
【0052】
先ず、例えば図5に示すように、熱発電携帯機器10外部の雰囲気の温度(雰囲気温度)Taに比べて、より高い温度(熱源温度)Tcを有する熱源である生体に対して、熱発電携帯機器10が生体に装着されて裏蓋14が生体に接触すると、裏蓋14および導熱部材21からなる領域を経由して、熱源から熱発電部材20の熱源側位置に熱流が伝達される。
この熱的過渡状態において、熱発電部材20の熱源側位置の温度Tp2が上昇し、例えば図6に示すように、熱発電部材20の熱源側位置の温度Tp2と放熱先側位置の温度Tp1との間に生じる温度差ΔTp(=Tp2−Tp1)および熱発電部材20の発電電圧が極大値に向かい増大する。
【0053】
なお、温度差ΔTpの最大値は、例えば、熱源から放熱先までの間の伝熱経路全体の熱抵抗Rと、熱発電部材20の熱抵抗R4と、枠体12および枠体12内部の雰囲気からなる領域(つまり、図4に示す熱抵抗モデルにおいて熱発電部材20に対して並列接続の関係を有する領域)の熱抵抗R3と、雰囲気温度Taおよび熱源温度Tcとにより、下記数式(1)に示すように記述される。
【0054】
【数1】

【0055】
そして、熱発電部材20および枠体12および枠体12内部の雰囲気からなる領域を経由して、熱発電部材20の放熱先側位置、さらに放熱先に向かい熱流が伝達されることに伴い、温度差ΔTpが極大値から低下傾向に変化し、熱発電携帯機器10全体の温度が飽和する熱的平衡状態、いわば、熱源と放熱先との間の所定の温度差(Tc−Ta)が伝熱経路の全体に亘って配分されることで局所的な温度勾配が小さくなる熱的平衡状態が形成される。
【0056】
このような熱発電携帯機器10全体の温度が飽和する熱的平衡状態が維持されると、温度差ΔTpおよび発電電圧が低下した状態が維持されることになるが、熱源と放熱先との間における伝熱経路の少なくとも一部の熱抵抗(例えば、熱抵抗R2)が可動部材22の回転に応じて変更されると、再度、熱的過渡状態が生じ、温度差ΔTpおよび発電電圧が増大する。
【0057】
例えば、先ず、熱発電携帯機器10が熱源である生体に装着された初期状態において、図3(A)に示すように可動部材22が伝熱経路に交差することで筐体11および保持部材15からなる領域の熱抵抗R2が小さな値の第1熱抵抗R2aになっていると、図7(A)に示すように、裏蓋14および導熱部材21からなる領域を経由して熱源から熱発電部材20の熱源側位置に熱流が伝達されて熱源側位置の温度Tp2が上昇する。一方、熱発電部材20の放熱先側位置は、放熱部と筐体11および保持部材15からなる領域とを介して熱発電携帯機器10外部の雰囲気により冷却され、放熱先側位置の温度Tp1の上昇が抑制される。
これにより、例えば図8に示す時刻t1に到る期間のように、熱発電部材20の熱源側位置の温度Tp2と放熱先側位置の温度Tp1との間に生じる温度差ΔTp(=Tp2−Tp1)および熱発電部材20の発電電圧は極大値に向かい増大する。
【0058】
次に、熱発電携帯機器10全体の温度が飽和するように熱的平衡状態に向かい変化することに伴い、いわば、熱源と放熱先との間の所定の温度差(Tc−Ta)が伝熱経路の全体に亘って配分されることで局所的な温度勾配が小さくなり、例えば図8に示す時刻t1から時刻t2に到る期間のように、熱発電部材20の熱源側位置の温度Tp2と放熱先側位置の温度Tp1との間に生じる温度差ΔTp(=Tp2−Tp1)および熱発電部材20の発電電圧が低下傾向に変化する。
【0059】
次に、可動部材22が回転軸22a周りに回転して、図3(B)に示すように可動部材22が伝熱経路に交差しなくなることで筐体11および保持部材15からなる領域の熱抵抗R2が大きな値の第2熱抵抗R2bに変化すると、図7(B)に示すように、裏蓋14および導熱部材21からなる領域と熱発電部材20または枠体12および枠体12内部の雰囲気からなる領域とを経由して熱源から熱発電部材20の放熱先側位置に伝達された熱流は、いわば、筐体11および保持部材15からなる領域でせき止められる。
【0060】
これにより、例えば図8に示す時刻t2から時刻t3に到る期間のように、熱発電部材20の放熱先側位置の温度Tp1は熱源側位置の温度Tp2に等しくなるように上昇し、温度差ΔTpおよび熱発電部材20の発電電圧がゼロに向かい低下傾向に変化する。一方、筐体11および保持部材15からなる領域は、熱発電携帯機器10外部の雰囲気により冷却され易くなり、筐体11および保持部材15からなる領域の温度Tbが低下する。
【0061】
つまり、可動部材22が回転軸22a周りに回転することで熱源と放熱先との間の伝熱経路での温度分布が変更されて、熱発電部材20の放熱先側位置の温度Tp1と筐体11および保持部材15からなる領域の温度Tbとの間の温度差が増大する。
これにより、いわば、熱源と放熱先との間の所定の温度差(Tc−Ta)が伝熱経路の全体に亘って配分されたような熱的平衡状態が変更されて、この所定の温度差(Tc−Ta)が伝熱経路の一部(つまり、筐体11および保持部材15からなる領域)に局在的に集中するような熱的平衡状態が形成される。
【0062】
次に、可動部材22が回転軸22a周りに回転して、再度、図3(A)に示すように可動部材22が伝熱経路に交差することで筐体11および保持部材15からなる領域の熱抵抗R2が小さな値の第1熱抵抗R2aに変化すると、図7(C)に示すように、熱発電部材20の放熱先側位置は、放熱部と筐体11および保持部材15からなる領域とを介して熱発電携帯機器10外部の雰囲気により冷却され、放熱先側位置の温度Tp1が低下する。
これにより、例えば図8に示す時刻t3から時刻t4に到る期間のように、熱発電部材20の放熱先側位置の温度Tp1が低下する熱的過渡状態において、熱発電部材20の熱源側位置の温度Tp2と放熱先側位置の温度Tp1との間に生じる温度差ΔTp(=Tp2−Tp1)および熱発電部材20の発電電圧は極大値に向かい増大する。
【0063】
そして、例えば図8に示す時刻t4以降の期間のように、温度差ΔTp(=Tp2−Tp1)および熱発電部材20の発電電圧が極大値に到達した以後においては、熱発電携帯機器10全体の温度が飽和するように熱的平衡状態に向かい変化することに伴い、いわば、熱源と放熱先との間の所定の温度差(Tc−Ta)が伝熱経路の全体に亘って配分されることで局所的な温度勾配が小さくなり、熱発電部材20の熱源側位置の温度Tp2と放熱先側位置の温度Tp1との間に生じる温度差ΔTp(=Tp2−Tp1)および熱発電部材20の発電電圧が低下傾向に変化する。
【0064】
上述したように、本実施の形態による熱発電携帯機器10によれば、可動部材22の回転軸22a周りの回転に応じて、可動部材22が収容される保持部材15および筐体11からなる領域の熱抵抗R2が変更されることにより、熱源と放熱先との間の所定の温度差(Tc−Ta)に対して、局在的に熱発電部材20の熱源側位置と放熱先側位置との間で温度差ΔTp(=Tp2−Tp1)を増大させることができ、発電電圧を増大させて所望の発電量を確保することができると共に、発電効率の低下を抑制することができる。
【0065】
より具体的には、可動部材22が収容される保持部材15および筐体11からなる領域の熱抵抗R2が第1熱抵抗R2aと第2熱抵抗R2bとに切り替えられることによって熱源と放熱先との間の伝熱経路での温度分布が変更され、これに起因する熱的過渡状態において熱発電部材20の熱源側位置と放熱先側位置との間に、熱源と放熱先との間の所定の温度差(Tc−Ta)に基づく所望の大きさの温度差ΔTp(=Tp2−Tp1)を確保することができる。
【0066】
さらに、回転軸22a周りに回転可能な可動部材22を備えるだけで、伝熱経路に対する可動部材22の干渉(つまり、交差)の有無を容易に切り替えることができ、機器構成が複雑化することを抑制しつつ、伝熱経路の少なくとも一部(つまり、保持部材15および筐体11からなる領域)の熱抵抗R2を容易に変更することができる。
【0067】
さらに、可動部材22は回転軸22aの軸心に対して点対称な形状として、楕円形板状や長板状に形成されていることで回転性が高められており、回転に伴う伝熱経路に対する干渉(つまり、交差)の有無を容易に生じさせることができ、伝熱経路の少なくとも一部(つまり、保持部材15および筐体11からなる領域)の熱抵抗R2を容易に変更することができる。
【0068】
なお、上述した実施の形態においては、可動部材22を楕円形板状や長板状として、可動部材22の回転軸22a周りの回転に応じて伝熱経路に対する干渉(つまり、交差)の有無が切り替わるとしたが、これに限定されず、例えば図9(A)、(B)に示す第1変形例のように、可動部材22を位置に応じて異なる熱抵抗を有する円板状として、可動部材22の回転軸22a周りの回転に応じて伝熱経路に対する干渉(つまり、交差)の位置および熱抵抗が変化するように形成してもよい。
【0069】
この第1変形例に係る熱発電携帯機器10の可動部材22は、例えば、金属などにより楕円形板状や長板状に形成されて第1の熱抵抗Raを有する第1部材41と、合成樹脂などにより円板状に形成されて第1の熱抵抗Raよりも大きな第2の熱抵抗Rbを有すると共に、第1部材41を内部に収容する第2部材42とを備えて構成されている。
【0070】
そして、可動部材22の第1部材41は、例えば、回転軸22aの軸心に対して点対称の位置に配置された2つの熱発電部材20,20に対して、カバーガラス13から裏蓋14に向かう方向から見て、例えば図9(A)に示すように長辺方向においては2つの熱発電部材20,20を覆うように重畳可能な形状を有すると共に、例えば図9(B)に示すように短辺方向においては2つの熱発電部材20,20間に収まるようにして2つの熱発電部材20,20に重畳しない形状(つまり、短辺方向の長さが2つの熱発電部材20,20間の間隔よりも短い形状)を有するように形成されている。
そして、可動部材22の第2部材42は、例えば図9(B)に示すように第1部材41が2つの熱発電部材20,20に重畳しない状態において、2つの熱発電部材20,20を覆うように重畳する形状を有している。
【0071】
これにより、例えば、順次、裏蓋14と、導熱部材21と、熱発電部材20と、保持部材15と、筐体11とを伝達する熱流に対して、可動部材22の回転に応じて、図9(A)に示すように可動部材22の第1部材41を経由する場合と、図9(B)に示すように可動部材22の第2部材42を経由する場合とが切り替わり、可動部材22を内部に収容する保持部材15および筐体11からなる領域の熱抵抗R2が変化する。
【0072】
なお、上述した実施の形態においては、可動部材22は回転軸22aの軸心に対して点対称な形状を有するとしたが、これに限定されず、例えば図10(A)、(B)に示す第2変形例のように、可動部材22を回転軸22aの軸心に対して非点対称な形状を有するように形成してもよい。
【0073】
この第2変形例に係る熱発電携帯機器10の可動部材22は、例えば、金属などにより楕円形板状や長板状に形成され、中心からずれた位置、例えば長辺方向の一方の端部の位置に回転軸22aが設けられている。
そして、可動部材22は、例えば、回転軸22aの軸心からずれた位置に配置された熱発電部材20に対して、カバーガラス13から裏蓋14に向かう方向から見て、例えば図10(A)に示すように長辺方向の一方の端部から他方の端部に向かう方向においては熱発電部材20を覆うように重畳可能な形状を有すると共に、例えば図10(B)に示すように短辺方向あるいは長辺方向の他方の端部から一方の端部に向かう方向においては熱発電部材20に重畳しない形状(つまり、短辺方向あるいは長辺方向の他方の端部から一方の端部に向かう方向における回転軸22aの軸心からの長さが、回転軸22aの軸心から熱発電部材20までの間隔よりも短い形状)を有するように形成されている。
【0074】
これにより、例えば、順次、裏蓋14と、導熱部材21と、熱発電部材20と、保持部材15と、筐体11とを伝達する熱流に対して、可動部材22の回転に応じて、図10(A)に示すように可動部材22を経由する場合と、図10(B)に示すように可動部材22を経由せずに保持部材15内部の雰囲気(空気など)中を経由する場合とが切り替わり、可動部材22を内部に収容する保持部材15および筐体11からなる領域の熱抵抗R2が変化する。
【0075】
この第2変形例によれば、例えば重力の作用による可動部材22の回転性が高められており、可動部材22の回転に伴う伝熱経路に対する干渉(つまり、交差)の有無を容易に生じさせることができ、伝熱経路の少なくとも一部(つまり、保持部材15および筐体11からなる領域)の熱抵抗R2を容易に変更することができる。
【0076】
なお、上述した実施の形態においては、例えば図11(A),(B)に示す第3変形例に係る熱発電携帯機器10のように、可動部材22を自動的に駆動する部材駆動部51を備えてもよい。
【0077】
この第3変形例に係る熱発電携帯機器10は、例えば図12に示すように、熱発電部材20の発電電圧を検出する電圧センサ52と、蓄電部34の蓄電量を検出する蓄電量センサ53とを備えている。
部材駆動部51は、例えばムーブメント18に備えられ、可動部材22を回転駆動するモータなどを備え、制御部31から出力される計時の基準となる信号と、電圧センサ52から出力される発電電圧の検出結果の信号と、蓄電量センサ53から出力される蓄電量の検出結果の信号とのうち、少なくとも何れか1つに応じて、可動部材22を回転駆動するタイミングおよび回転速度などを制御しつつ可動部材22を自動的に駆動する。
【0078】
以下に、この第3変形例に係る熱発電携帯機器10の動作、つまり発電制御方法について説明する。
例えば、部材駆動部51は、制御部31から出力される計時の基準となる信号に基づき、予め設定された時間に応じて、あるいは指針部17の秒針17aと分針17bと時針17cとのうち少なくとも何れか1つに連動して、可動部材22を回転駆動し、可動部材22を内部に収容する保持部材15および筐体11からなる領域の熱抵抗R2を変更する。
これにより、順次、裏蓋14と、導熱部材21と、熱発電部材20と、保持部材15と、筐体11とを伝達する熱流に対して、図11(A)に示すように熱流が可動部材22を経由する場合と、図11(B)に示すように熱流が可動部材22を経由せずに保持部材15内部の雰囲気(空気など)中を経由する場合とが切り替えられ、熱抵抗R2が、第1熱抵抗R2aと第2熱抵抗R2bとに切り替えられる。
【0079】
また、例えば、部材駆動部51は、電圧センサ52から出力される発電電圧の検出結果の信号に基づき、発電電圧が所定の閾値(例えば、昇圧部33の昇圧動作が可能な下限電圧や熱発電携帯機器10の作動に要する下限電圧など)以上である場合には、図11(A)に示すように熱流が可動部材22を経由するように可動部材22を回転駆動して、熱抵抗R2を小さな値の第1熱抵抗R2aに設定する。
そして、発電電圧が所定の閾値未満になった以後においては、一時的に(例えば、図8に示す時刻t2から時刻t3に亘る所定期間などにおいて)、図11(B)に示すように熱流が可動部材22を経由せずに保持部材15内部の雰囲気(空気など)中を経由するように可動部材22を回転駆動して、熱抵抗R2を一時的に大きな値の第2熱抵抗R2bに増大させる。
そして、例えば所定期間の経過後などにおいて、再度、図11(A)に示すように熱流が可動部材22を経由するように可動部材22を回転駆動して、熱抵抗R2を小さな値の第1熱抵抗R2aに設定する。
【0080】
また、例えば、部材駆動部51は、蓄電量センサ53から出力される蓄電量の検出結果の信号に基づき、蓄電量が所定の閾値(例えば、熱発電携帯機器10の作動の要する下限電力など)以上である場合には、図11(A)に示すように熱流が可動部材22を経由するように可動部材22を回転駆動して、熱抵抗R2を小さな値の第1熱抵抗R2aに設定する。
そして、蓄電量が所定の閾値未満になった以後においては、一時的に(例えば、図8に示す時刻t2から時刻t3に亘る所定期間などにおいて)、図11(B)に示すように熱流が可動部材22を経由せずに保持部材15内部の雰囲気(空気など)中を経由するように可動部材22を回転駆動して、熱抵抗R2を一時的に大きな値の第2熱抵抗R2bに増大させる。
そして、例えば所定期間の経過後などにおいて、再度、図11(A)に示すように熱流が可動部材22を経由するように可動部材22を回転駆動して、熱抵抗R2を小さな値の第1熱抵抗R2aに設定する。
【0081】
この第3変形例によれば、例えば所定の時間や時刻に応じて、あるいは、例えば熱発電部材20の発電電圧の低下に応じて、あるいは、例えば蓄電部34の蓄電量の低下に応じて、自動的に伝熱経路の少なくとも一部(つまり、保持部材15および筐体11からなる領域)の熱抵抗R2を変更することにより、所望の発電電圧および発電量を容易に確保することができると共に、発電効率の低下を抑制することができる。
【0082】
なお、この第3変形例において、部材駆動部51は、例えば針駆動部32の動力により可動部材22を回転駆動する駆動機構であってもよく、例えば可動部材22に対する針駆動部32の動力の伝達を断接する機構と変速機構となどを備えて構成されてもよい。
また、この第3変形例において、少なくとも電圧センサ52または蓄電量センサ53は省略されてもよい。この場合には、少なくとも制御部31から出力される計時の基準となる信号に基づき可動部材22の駆動が制御される。
【0083】
なお、上述した実施の形態においては、可動部材22の回転軸22a周りの回転に応じて伝熱経路に対する干渉(つまり、交差)の有無が切り替わるとしたが、これに限定されず、例えば図13(A)、(B)に示す第4変形例のように、可動部材22のスライド移動に応じて伝熱経路に対する干渉(つまり、交差)の有無が切り替わるように構成されてもよい。
【0084】
この第4変形例に係る熱発電携帯機器10の可動部材22は、例えば、金属などにより楕円形板状や長板状に形成され、長辺方向にスライド移動可能に保持部材15の内部に収容されている。
そして、可動部材22は、例えば、熱発電携帯機器10の中心から可動部材22のスライド方向の一方側にずれた位置に配置された熱発電部材20に対して、カバーガラス13から裏蓋14に向かう方向から見て、例えば図13(A)に示すようにスライド方向の一方側に移動した状態で熱発電部材20を覆うように重畳可能な形状を有すると共に、例えば図13(B)に示すようにスライド方向の他方側に移動した状態で熱発電部材20に重畳しない形状(つまり、長辺方向の長さが、スライド移動可能な範囲におけるスライド方向の他方側の端部から熱発電部材20までの間隔よりも短い形状)を有するように形成されている。
【0085】
これにより、例えば、順次、裏蓋14と、導熱部材21と、熱発電部材20と、保持部材15と、筐体11とを伝達する熱流に対して、可動部材22のスライド移動に応じて、図13(A)に示すように可動部材22を経由する場合と、図13(B)に示すように可動部材22を経由せずに保持部材15内部の雰囲気(空気など)中を経由する場合とが切り替わり、可動部材22を内部に収容する保持部材15および筐体11からなる領域の熱抵抗R2が変化する。
【0086】
この第4変形例によれば、例えば熱発電携帯機器10の揺動などによって、可動部材22のスライド移動に伴う伝熱経路に対する干渉(つまり、交差)の有無を容易に生じさせることができ、伝熱経路の少なくとも一部(つまり、保持部材15および筐体11からなる領域)の熱抵抗R2を容易に変更することができる。
【0087】
なお、上述した実施の形態の第4変形例においては、例えば図14(A),(B)に示す第5変形例に係る熱発電携帯機器10のように、可動部材22を自動的に駆動する部材駆動部51を備えてもよい。
【0088】
この第5変形例に係る熱発電携帯機器10は、例えば上述した実施の形態の第3変形例と同様に、図12に示すように、熱発電部材20の発電電圧を検出する電圧センサ52と、蓄電部34の蓄電量を検出する蓄電量センサ53とを備えている。
部材駆動部51は、例えばムーブメント18に備えられ、可動部材22をスライド移動させるためのモータとラック・アンド・ピニオンなどの歯車機構となどを備え、制御部31から出力される計時の基準となる信号と、電圧センサ52から出力される発電電圧の検出結果の信号と、蓄電量センサ53から出力される蓄電量の検出結果の信号とのうち、少なくとも何れか1つに応じて、可動部材22をスライド移動させるタイミングおよび移動速度などを制御しつつ可動部材22を自動的にスライド移動させる。
【0089】
以下に、この第5変形例に係る熱発電携帯機器10の動作、つまり発電制御方法について説明する。
例えば、部材駆動部51は、制御部31から出力される計時の基準となる信号に基づき、予め設定された時間に応じて、あるいは指針部17の秒針17aと分針17bと時針17cとのうち少なくとも何れか1つに連動して、可動部材22をスライド移動させ、可動部材22を内部に収容する保持部材15および筐体11からなる領域の熱抵抗R2を変更する。
これにより、順次、裏蓋14と、導熱部材21と、熱発電部材20と、保持部材15と、筐体11とを伝達する熱流に対して、図14(A)に示すように熱流が可動部材22を経由する場合と、図14(B)に示すように熱流が可動部材22を経由せずに保持部材15内部の雰囲気(空気など)中を経由する場合とが切り替えられ、熱抵抗R2が、第1熱抵抗R2aと第2熱抵抗R2bとに切り替えられる。
【0090】
また、例えば、部材駆動部51は、電圧センサ52から出力される発電電圧の検出結果の信号に基づき、発電電圧が所定の閾値(例えば、昇圧部33の昇圧動作が可能な下限電圧や熱発電携帯機器10の作動に要する下限電圧など)以上である場合には、図14(A)に示すように熱流が可動部材22を経由するように可動部材22をスライド移動させて、熱抵抗R2を小さな値の第1熱抵抗R2aに設定する。
そして、発電電圧が所定の閾値未満になった以後においては、一時的に(例えば、図8に示す時刻t2から時刻t3に亘る所定期間などにおいて)、図14(B)に示すように熱流が可動部材22を経由せずに保持部材15内部の雰囲気(空気など)中を経由するように可動部材22をスライド移動させて、熱抵抗R2を一時的に大きな値の第2熱抵抗R2bに増大させる。
そして、例えば所定期間の経過後などにおいて、再度、図14(A)に示すように熱流が可動部材22を経由するように可動部材22をスライド移動させて、熱抵抗R2を小さな値の第1熱抵抗R2aに設定する。
【0091】
また、例えば、部材駆動部51は、蓄電量センサ53から出力される蓄電量の検出結果の信号に基づき、蓄電量が所定の閾値(例えば、熱発電携帯機器10の作動の要する下限電力など)以上である場合には、図14(A)に示すように熱流が可動部材22を経由するように可動部材22をスライド移動させて、熱抵抗R2を小さな値の第1熱抵抗R2aに設定する。
そして、蓄電量が所定の閾値未満になった以後においては、一時的に(例えば、図8に示す時刻t2から時刻t3に亘る所定期間などにおいて)、図14(B)に示すように熱流が可動部材22を経由せずに保持部材15内部の雰囲気(空気など)中を経由するように可動部材22をスライド移動させて、熱抵抗R2を一時的に大きな値の第2熱抵抗R2bに増大させる。
そして、例えば所定期間の経過後などにおいて、再度、図14(A)に示すように熱流が可動部材22を経由するように可動部材22をスライド移動させて、熱抵抗R2を小さな値の第1熱抵抗R2aに設定する。
【0092】
この第5変形例によれば、例えば所定の時間や時刻に応じて、あるいは、例えば熱発電部材20の発電電圧の低下に応じて、あるいは、例えば蓄電部34の蓄電量の低下に応じて、自動的に伝熱経路の少なくとも一部(つまり、保持部材15および筐体11からなる領域)の熱抵抗R2を変更することにより、所望の発電電圧および発電量を容易に確保することができると共に、発電効率の低下を抑制することができる。
【0093】
なお、部材駆動部51は、例えば針駆動部32の動力により可動部材22をスライド移動させる駆動機構であってもよく、例えば可動部材22に対する針駆動部32の動力の伝達を断接する機構と変速機構となどを備えて構成されてもよい。
また、この第5変形例において、少なくとも電圧センサ52または蓄電量センサ53は省略されてもよい。この場合には、制御部31から出力される計時の基準となる信号に基づき可動部材22の駆動が制御される。
【0094】
なお、上述した実施の形態の第3変形例および第5変形例においては、可動部材22を自動的に駆動する部材駆動部51を備えるとしたが、これに限定されず、例えば図15(A),(B)に示す第6変形例に係る熱発電携帯機器10のように、可動部材22を手動により操作可能な手動操作部材61を備えてもよい。
【0095】
手動操作部材61は、例えば、熱発電携帯機器10の表面上から外部に突出して操作者の手により入力操作(例えば、スライド操作)可能な操作部材61aと、操作部材61aに対する入力操作を可動部材22の駆動(例えば、スライド移動)に変換する歯車機構などからなる駆動部61bとを備えて構成されている。
これにより、例えば、順次、裏蓋14と、導熱部材21と、熱発電部材20と、保持部材15と、筐体11とを伝達する熱流に対して、手動操作部材61の操作部材61aに対する操作者の入力操作に応じて、図15(A)に示すように可動部材22を経由する場合と、図15(B)に示すように可動部材22を経由せずに保持部材15内部の雰囲気(空気など)中を経由する場合とが切り替えられ、可動部材22を内部に収容する保持部材15および筐体11からなる領域の熱抵抗R2が変化する。
【0096】
この第6変形例によれば、操作者の意思に応じて所望の発電電圧および発電量を確保することができると共に、発電効率の低下を抑制することができる。
なお、手動操作部材61は、操作部材61aに対する各種の入力操作(例えば、スライド操作や回転操作や押下操作など)と可動部材22の駆動(例えば、スライド移動や回転駆動など)との対応が適宜の組み合わせとなるように形成されていればよい。
【0097】
なお、上述した実施の形態の第6変形例においては、可動部材22を手動により操作可能な手動操作部材61を備えるとしたが、これに限定されず、例えば図16(A),(B)に示す第7変形例に係る熱発電携帯機器10のように、さらに、可動部材22の移動を補助する移動補助機構62および可動部材22を固定可能な固定機構63を備えてもよい。
【0098】
移動補助機構62は、例えば、一端が保持部材15に接続され、他端が可動部材22に接続されたばねなどの弾性部材を備えて構成され、可動部材22の所定移動(例えば、スライド方向の他方から一方に向かうスライド移動など)を弾性部材の弾性力により補助する。
固定機構63は、例えば、可動部材22の表面上に設けられた係合凹部22bに係合して可動部材22を固定可能な係合部材63aおよび係合部材63aの係合および係合解除を制御する制御機構(図示略)とを備えて構成されている。
【0099】
そして、例えば図16(A)に示すように、手動操作部材61に対する入力操作に応じて可動部材22がスライド方向の一方側に移動して、カバーガラス13から裏蓋14に向かう方向から見て可動部材22が熱発電部材20を覆うように重畳している状態では、移動補助機構62の弾性部材は自然状態であって可動部材22に弾性力が作用しないように、かつ、固定機構63の係合部材63aは係合解除の状態となるように設定されている。
この場合、例えば、順次、裏蓋14と、導熱部材21と、熱発電部材20と、保持部材15と、筐体11とを伝達する熱流は可動部材22を経由し、可動部材22を内部に収容する保持部材15および筐体11からなる領域の熱抵抗R2は小さな値の第1熱抵抗R2aに設定される。
【0100】
そして、例えば図16(B)に示すように、手動操作部材61に対する入力操作に応じて可動部材22がスライド方向の他方側に移動して、カバーガラス13から裏蓋14に向かう方向から見て可動部材22が熱発電部材20に重畳してない状態では、移動補助機構62の弾性部材は弾性変形して可動部材22にスライド方向の一方側に向かう弾性力が作用するように、かつ、固定機構63の係合部材63aは可動部材22の係合凹部22bに係合して可動部材22を固定する状態となるように設定されている。
この場合、例えば、順次、裏蓋14と、導熱部材21と、熱発電部材20と、保持部材15と、筐体11とを伝達する熱流は可動部材22を経由せずに保持部材15内部の雰囲気(空気など)中を経由し、可動部材22を内部に収容する保持部材15および筐体11からなる領域の熱抵抗R2は大きな値の第2熱抵抗R2bに設定される。
【0101】
固定機構63の制御機構(図示略)は、例えば、係合部材63aの係合の状態を所定期間だけ保持可能に設定されており、係合部材63aが可動部材22の係合凹部22bに係合してから所定期間の経過後には、係合部材63aと係合凹部22bとの係合が自動的に解除される。
これに伴い、可動部材22は移動補助機構62の弾性部材の弾性力に応じてスライド方向の一方側に向かい移動し、再度、例えば図16(A)に示すように、カバーガラス13から裏蓋14に向かう方向から見て可動部材22が熱発電部材20を覆うように重畳する状態となり、可動部材22を内部に収容する保持部材15および筐体11からなる領域の熱抵抗R2は小さな値の第1熱抵抗R2aに設定される。
【0102】
この第7変形例によれば、操作者の意思に応じた手動操作と自動的な可動部材22の駆動との組み合わせによって、適切に所望の発電電圧および発電量を容易に確保することができると共に、発電効率の低下を抑制することができる。
【0103】
なお、上述した実施の形態においては、可動部材22を保持部材15の内部に収容して、可動部材22の移動に応じて保持部材15および筐体11からなる領域の熱抵抗R2を変化させるとしたが、これに限定されず、可動部材22を他の部位に収容して、伝熱経路の他の領域の熱抵抗を可変としてもよい。
【0104】
例えば図17(A),(B)に示す上述した実施の形態の第8変形例に係る熱発電携帯機器10において、可動部材22は、金属などにより楕円形板状や長板状に形成され、裏蓋14の内面14A上に設けられた凹部からなる収容部14aに収容されて回転軸22a周りに回転可能に支持されている。
【0105】
この第8変形例において、可動部材22は、例えば、回転軸22aの軸心に対して点対称の位置に配置された2つの熱発電部材20,20に対して、カバーガラス13から裏蓋14に向かう方向から見て、例えば図17(A)に示すように長辺方向においては2つの熱発電部材20,20を覆うように重畳可能な形状を有すると共に、例えば図17(B)に示すように短辺方向においては2つの熱発電部材20,20間に収まるようにして2つの熱発電部材20,20に重畳しない形状(つまり、短辺方向の長さが2つの熱発電部材20,20間の間隔よりも短い形状)を有するように形成されている。
【0106】
これにより、例えば、順次、裏蓋14と、導熱部材21と、熱発電部材20と、保持部材15と、筐体11とを伝達する熱流に対して、可動部材22の回転に応じて、図17(A)に示すように可動部材22を経由する場合と、図17(B)に示すように可動部材22を経由せずに裏蓋14の収容部14a内部の雰囲気(空気など)中を経由する場合とが切り替わる。
【0107】
以下に、この第8変形例に係る熱発電携帯機器10の動作について説明する。
【0108】
例えば、先ず、熱発電携帯機器10が熱源である生体に装着された初期状態において、図17(A)に示すように可動部材22が伝熱経路に交差することで、裏蓋14および導熱部材21からなる領域の熱抵抗R5が小さな値の第1熱抵抗R5aになっていると、図18(A)に示すように、裏蓋14および導熱部材21からなる領域を経由して熱源から熱発電部材20の熱源側位置に熱流が伝達されて熱源側位置の温度Tp2が上昇する。一方、熱発電部材20の放熱先側位置は、放熱部と筐体11および保持部材15からなる領域とを介して熱発電携帯機器10外部の雰囲気により冷却され、放熱先側位置の温度Tp1の上昇が抑制される。
これにより、例えば図19に示す時刻t1に到る期間のように、熱発電部材20の熱源側位置の温度Tp2と放熱先側位置の温度Tp1との間に生じる温度差ΔTp(=Tp2−Tp1)および熱発電部材20の発電電圧は極大値に向かい増大する。
【0109】
次に、熱発電携帯機器10全体の温度が飽和するように熱的平衡状態に向かい変化することに伴い、いわば、熱源と放熱先との間の所定の温度差(Tc−Ta)が伝熱経路の全体に亘って配分されることで局所的な温度勾配が小さくなり、例えば図19に示す時刻t1から時刻t2に到る期間のように、熱発電部材20の熱源側位置の温度Tp2と放熱先側位置の温度Tp1との間に生じる温度差ΔTp(=Tp2−Tp1)および熱発電部材20の発電電圧が低下傾向に変化する。
【0110】
次に、可動部材22が回転軸22a周りに回転して、図17(B)に示すように可動部材22が伝熱経路に交差しなくなることで裏蓋14および導熱部材21からなる領域の熱抵抗R5が大きな値の第2熱抵抗R5bに変化すると、図18(B)に示すように、熱源から裏蓋14に伝達された熱流は、いわば、裏蓋14および導熱部材21からなる領域でせき止められる。
【0111】
これにより、例えば図19に示す時刻t2から時刻t3に到る期間のように、熱発電部材20は、放熱部と筐体11および保持部材15からなる領域とを介して熱発電携帯機器10外部の雰囲気により冷却され易くなり、熱発電部材20の熱源側位置の温度Tp2は放熱先側位置の温度Tp1に等しくなるように低下し、温度差ΔTpおよび熱発電部材20の発電電圧がゼロに向かい低下傾向に変化する。
【0112】
つまり、可動部材22が回転軸22a周りに回転することで熱源と放熱先との間の伝熱経路での温度分布が変更されて、熱発電部材20の熱源側位置の温度Tp2と熱源の温度Tcとの間の温度差が増大する。
これにより、いわば、熱源と放熱先との間の所定の温度差(Tc−Ta)が伝熱経路の全体に亘って配分されたような熱的平衡状態が変更されて、この所定の温度差(Tc−Ta)が伝熱経路の一部(つまり、裏蓋14および導熱部材21からなる領域)に局在的に集中するような熱的平衡状態が形成される。
【0113】
次に、可動部材22が回転軸22a周りに回転して、再度、図17(A)に示すように可動部材22が伝熱経路に交差することで裏蓋14および導熱部材21からなる領域の熱抵抗R5が小さな値の第1熱抵抗R5aに変化すると、図18(C)に示すように、熱発電部材20の熱源側位置は、裏蓋14および導熱部材21からなる領域を介して熱源により加熱され、熱源側位置の温度Tp2が上昇する。
これにより、例えば図19に示す時刻t3から時刻t4に到る期間のように、熱発電部材20の熱源側位置の温度Tp2が上昇する熱的過渡状態において、熱発電部材20の熱源側位置の温度Tp2と放熱先側位置の温度Tp1との間に生じる温度差ΔTp(=Tp2−Tp1)および熱発電部材20の発電電圧は極大値に向かい増大する。
【0114】
そして、例えば図19に示す時刻t4以降の期間のように、温度差ΔTp(=Tp2−Tp1)および熱発電部材20の発電電圧が極大値に到達した以後においては、熱発電携帯機器10全体の温度が飽和するように熱的平衡状態に向かい変化することに伴い、いわば、熱源と放熱先との間の所定の温度差(Tc−Ta)が伝熱経路の全体に亘って配分されることで局所的な温度勾配が小さくなり、熱発電部材20の熱源側位置の温度Tp2と放熱先側位置の温度Tp1との間に生じる温度差ΔTp(=Tp2−Tp1)および熱発電部材20の発電電圧が低下傾向に変化する。
【0115】
なお、裏蓋14および導熱部材21からなる領域の熱抵抗R5を可変とするための可動部材22は、回転またはスライド移動に伴って伝熱経路に対する干渉(つまり、交差)の有無あるいは伝熱経路に干渉(つまり、交差)する位置が変化するものに限定されず、例えば、裏蓋14から熱源に向かい突出可能であって、裏蓋14と熱源との直接的な接触を一時的に解除する部材などであってもよい。
この場合には、可動部材22が裏蓋14から突出せずに裏蓋14と熱源とが直接的に接触しているときに裏蓋14および導熱部材21からなる領域の熱抵抗R5が小さな値の第1熱抵抗R5aになり、一方、可動部材22が裏蓋14から突出して裏蓋14と熱源との直接的な接触が解除されているときに裏蓋14および導熱部材21からなる領域の熱抵抗R5が大きな値の第2熱抵抗R5bになる。
【0116】
また、例えば図20(A),(B)に示す上述した実施の形態の第9変形例に係る熱発電携帯機器10において、可動部材22は、例えば円筒状の筐体11の表面11Aを覆う円筒状に形成され、筐体11に対して回転可能に装着されている。
【0117】
この第9変形例において、筐体11は、熱抵抗が異なる複数の部材、例えば、金属などにより形成されて第1の熱抵抗Raを有する第1筐体部材11aと、例えば樹脂などにより形成されて第1の熱抵抗Raよりも大きな第2の熱抵抗Rbを有する第2筐体部材11bとが、周方向に交互に配置されて構成されている。
そして、可動部材22は、熱抵抗が異なる複数の部材、例えば、金属などにより形成されて第1の熱抵抗Raを有する第1部材71と、例えば樹脂などにより形成されて第1の熱抵抗Raよりも大きな第2の熱抵抗Rbを有する第2部材72とが、周方向に交互に配置されて構成されている。
【0118】
これにより、例えば、順次、裏蓋14と、導熱部材21と、熱発電部材20と、保持部材15と、筐体11の第1筐体部材11aとを伝達する熱流に対して、可動部材22の回転に応じて、図20(A)に示すように可動部材22の第1部材71を経由する場合と、図20(B)に示すように可動部材22の第2部材72を経由する場合とが切り替わり、可動部材22が装着された熱発電携帯機器10の表面および表面付近の領域からなる放熱部の熱抵抗R1が、小さい値の第1熱抵抗になる状態と大きい値の第2熱抵抗になる状態とに切り替わる。
【0119】
なお、上述した実施の形態および第1〜第9変形例においては、各熱抵抗R1,R2,R5の何れか1つのみが可変とされることに限定されず、各熱抵抗R1,R2,R5の適宜の組み合わせが、可動部材22の回転またはスライド移動に伴って可変とされてもよい。
つまり、可動部材22は、熱源から放熱先までの伝熱経路において、生体と熱発電部材20との間と、放熱先と熱発電部材20との間とのうち、少なくとも何れか1つの熱抵抗を変更可能に構成されていればよい。
さらには、熱発電部材20の熱抵抗R4に対して並列接続の関係を有する、枠体12および枠体12内部の雰囲気からなる領域の熱抵抗R3が、各熱抵抗R1,R2,R5の少なくとも何れか1つに組み合わされて、可動部材22の回転またはスライド移動に伴って可変とされてもよい。
また、各熱抵抗R1,R2,R3,R5毎を可変とする場合において、可動部材22を自動的に駆動する部材駆動部51と可動部材22を手動により操作可能な手動操作部材61との両方を備えてもよい。
また、各熱抵抗R1,R2,R3,R5の適宜の組み合わせを可変とする場合において、可動部材22を自動的に駆動する部材駆動部51と可動部材22を手動により操作可能な手動操作部材61とを適宜に組み合わせて備えてもよい。
【0120】
なお、上述した実施の形態においては、熱発電携帯機器10を指針部17によるアナログ表示の腕時計としたが、これに限定されず、例えば液晶表示などによるデジタル表示の腕時計であってもよい。
また、上述した実施の形態においては、熱発電携帯機器10を人体に装着される腕時計としたが、これに限定されず、人体や動物に装着される携帯型の電子機器として、例えば、ヘッドフォンや、立体視用の眼鏡や、脈拍と心拍数と呼吸数と血圧と体温となどの生体情報を計測して計測結果を無線送信する電子機器などであってもよい。
【符号の説明】
【0121】
10 熱発電携帯機器
11 筐体
14 裏蓋
15 保持部材
17a 秒針
17b 分針
17c 時針
20 熱発電部材
22 可動部材(熱抵抗変更手段)
22a 回転軸
31 制御部(計時手段)
32 針駆動部(針駆動手段)
34 蓄電部(蓄電手段)
52 電圧センサ(電圧検出手段)
53 蓄電量センサ(蓄電量検出手段)
51 部材駆動部(熱抵抗変更手段、部材駆動手段)
61 手動操作部材(熱抵抗変更手段、手動操作部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体に装着され、該生体の熱により発電可能な熱発電携帯機器であって、
熱源である前記生体と前記熱発電携帯機器からの放熱の放熱先との間における熱源側位置の温度と放熱先側位置の温度との温度差に基づき発電する熱発電部材と、
前記生体と前記放熱先との間における伝熱経路の少なくとも一部の熱抵抗を変更可能な熱抵抗変更手段と、を備える
ことを特徴とする熱発電携帯機器。
【請求項2】
前記熱抵抗変更手段は、前記伝熱経路の少なくとも一部の熱抵抗が第1熱抵抗になる状態と、前記伝熱経路の少なくとも一部の熱抵抗が前記第1熱抵抗とは異なる第2熱抵抗になる状態とを切り替え可能であることを特徴とする請求項1に記載の熱発電携帯機器。
【請求項3】
前記熱抵抗変更手段は、
回転軸周りに回転可能または所定方向にスライド移動可能であって、前記回転または前記スライド移動に伴って、前記伝熱経路に対する干渉の有無または前記伝熱経路に干渉する位置が変化することによって前記伝熱経路の少なくとも一部の熱抵抗を変更可能な可動部材を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱発電携帯機器。
【請求項4】
前記可動部材は板状部材であって、該板状部材は前記伝熱経路に交差可能であることを特徴とする請求項3に記載の熱発電携帯機器。
【請求項5】
前記回転軸周りに回転可能な前記可動部材は、前記回転軸の軸心に対して点対称な形状を有することを特徴とする請求項4に記載の熱発電携帯機器。
【請求項6】
前記回転軸周りに回転可能な前記可動部材は、前記回転軸の軸心に対して非点対称な形状を有することを特徴とする請求項4に記載の熱発電携帯機器。
【請求項7】
時間を計る計時手段と、前記熱発電部材の発電電圧を検出する電圧検出手段と、前記熱発電部材の発電電力を蓄電する蓄電手段および該蓄電手段の蓄電量を検出する蓄電量検出手段とのうち、少なくとも何れか1つを備え、
前記熱抵抗変更手段は、前記計時手段の計時動作と、前記電圧検出手段の検出結果と、前記蓄電量検出手段の検出結果とのうち、少なくとも何れか1つに応じて前記可動部材を自動的に駆動する部材駆動手段を備えることを特徴とする請求項3から請求項6の何れか1つに記載の熱発電携帯機器。
【請求項8】
前記計時手段は、時刻の秒を示す秒針と、前記時刻の分を示す分針と、前記時刻の時を示す時針とのうち、少なくとも何れか1つを駆動する針駆動手段を備え、
少なくとも前記計時手段の計測動作に応じて前記可動部材を自動的に駆動する前記部材駆動手段は、前記針駆動手段により駆動される前記秒針と前記分針と前記時針とのうち少なくとも何れか1つに連動して前記可動部材を自動的に駆動することを特徴とする請求項7に記載の熱発電携帯機器。
【請求項9】
前記熱抵抗変更手段は、前記可動部材を手動により操作可能な手動操作部材を備えることを特徴とする請求項3から請求項6の何れか1つに記載の熱発電携帯機器。
【請求項10】
前記熱抵抗変更手段は、前記伝熱経路の前記生体と前記熱発電部材との間と、前記伝熱経路の前記放熱先と前記熱発電部材との間とのうち、少なくとも何れか1つの熱抵抗を変更可能であることを特徴とする請求項1から請求項9の何れか1つに記載の熱発電携帯機器。
【請求項11】
前記伝熱経路の前記生体と前記熱発電部材との間の熱抵抗を変更可能な前記熱抵抗変更手段は、前記生体に接触する部材の熱抵抗を変更可能であることを特徴とする請求項10に記載の熱発電携帯機器。
【請求項12】
前記伝熱経路の前記放熱先と前記熱発電部材との間の熱抵抗を変更可能な前記熱抵抗変更手段は、前記伝熱経路の前記放熱先と前記熱発電部材との間に設けられて前記熱発電部材に接触する部材の熱抵抗を変更可能であることを特徴とする請求項10に記載の熱発電携帯機器。
【請求項13】
前記伝熱経路の前記放熱先と前記熱発電部材との間の熱抵抗を変更可能な前記熱抵抗変更手段は、前記伝熱経路の前記放熱先と前記熱発電部材との間に設けられた筐体と前記放熱先との間の放熱領域の熱抵抗を変更可能であることを特徴とする請求項10に記載の熱発電携帯機器。
【請求項14】
請求項1に記載の熱発電携帯機器の発電制御方法であって、
前記熱発電部材による発電時に前記伝熱経路の少なくとも一部の熱抵抗を変更し、該変更後に前記伝熱経路の少なくとも一部の熱抵抗を変更前の値に向かい変更することを特徴とする熱発電携帯機器の発電制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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