説明

熱発電装置および当該装置を搭載したベーパライザー

【課題】 発電量と容積との関係で発電装置をコンパクト化する。未利用だった低温エネルギーを利用して無駄のない発電を行う。

【解決手段】 発電装置は、断面多角形の輸送管C、Hを組み合わせて、隣接する輸送管の間に熱電素子11を密着させて配する。容積比率で効率よく発電量を増大させることが出来る。この発電装置をベーパライザーに適用し、極低温のLPG等のガス化処理に用いれば、ガス化に必要な高温媒体の無駄なエネルギーロスを抑えて、極低温の液化天然ガスがもつ潜在的な発電エネルギー(低温エネルギー)を効率的に回収し利用することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温の流体と低温の流体の温度差に基づいて発電を行う熱発電装置に係り、とくに、装置のコンパクト化を図るとともに、未利用の潜在的発電エネルギーを回収してエネルギーロスのない発電を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
熱電素子は、素子の表裏の温度差に応じて電気的エネルギーを発生させる。このような熱電素子の用い方としては、従来、例えば特許文献1のように、河川水の表層と下層の水温差を利用して発電する装置や、特許文献2のように、バーナー装置を利用した強制的な温度差条件の創出による発電装置が知られている。
【特許文献1】特開2002−136160号
【特許文献2】特開2004−350335号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、従来提案されている熱電素子利用の発電装置(熱発電装置)は、熱電素子を利用した発電の方法、換言すれば、熱電素子をどのように利用して発電を行うかという点に技術開発の着眼がおかれているのが実状であって、効率的な発電を行うための設計、とくに装置のコンパクト化を図る点までは考慮されていない。
【0004】
そこで、本発明の第一の目的は、熱電素子に供給できる低温および高温の熱源の温度条件が同一の場合でも、容積比率でより効率的に大きな発電量を取得できる熱発電装置を提案することにある。
【0005】
また、従来の熱発電装置は、河川水の深度の温度差、温泉水の利用のように自然エネルギーを利用するものや、強制加熱など人為的な温度差の創出を行うものとなっている。
【0006】
しかし、自然に存在する熱エネルギーを利用する発電方式では、大きな温度差を得にくいという問題があるほか、温泉水のように高温水を利用するためには、温泉水を得るための掘削工事など発電のための初期投資が必要となるため、採算がとれない事態も想定される。強制加熱による発電方式は、単なるエネルギーの変換利用であり、あえて熱発電装置に応用しなくても他に同等以上の発電量を取得できる可能性があって、効率的な発電方式とは言い難い面がある。
【0007】
そこで、本発明の第二の目的は、従来利用されなかった未利用の温度エネルギーを回収利用することによって大量の発電を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記第一の目的を達成するため、請求項1に係る熱発電装置は、断面多角形の輸送管を組み合わせて、隣接する輸送管の間に熱電素子を密着させて配する。
【0009】
この熱発電装置は、高温流体と低温流体の輸送管、例えば角管を格子状に組み合わせ、温度差が生じる部分に熱電素子を密着させて配するので、容積比率における発電効率が確実に向上し、装置構成のコンパクト化を実現できる。
【0010】
請求項2は、前記第二の目的を達成するためのものである。これは、従来利用されることのなかった極低温の液化ガスの潜在エネルギーを発電用に利用するものである。
【0011】
マイナス100℃以下の液化ガスは、通常、これを利用するために加熱の処理を行っているが、極低温のマイナス温度は、潜在的な発電エネルギーであって、高温の熱媒体との強制的な熱交換を行う前に利用すべき重要な資源である。請求項2記載の発明は、液化ガスのガス化処理における強制的な熱供給の際に、極低温のマイナス温度を発電用エネルギーとして回収し利用するベーパライザーである。
【0012】
請求項3は、液化ガス蒸発器の熱交換器が熱発電装置とするもので、液化ガスの熱交換を行うと同時に発電用の熱量を回収して利用する。極低温の液化ガスの潜在的な発電エネルギーを利用する箇所は、請求項2の構成では、ベーパライザーの熱交換器の前段でも後段でもよいのであるが、ベーパライザー自体のコンパクト化を図るうえでは、熱交換器そのものに請求項1記載の熱発電装置を適用することが最も望ましい。熱交換器のほかに、別途、熱発電装置を配する必要がないからである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の熱発電装置によれば、多角形の輸送管を組み合わせて、隣接する輸送管の間に熱電素子を配して熱発電を行うので、熱の交換接触面を最大に利用して発電装置のコンパクト化を図ることが出来る。
【0014】
請求項2および請求項3のベーパライザーによれば、断面多角形の輸送管を組み合わせて液化ガスの低温度を利用した発電を行うため、液化ガスを強制的にガス化するための熱量の無駄な損失が抑えられ、エネルギーの回収/再利用という点で優れた発電システムを構築することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、請求項1に係る熱発電装置を例示するものである。この熱発電装置は、例えば、断面略正方形の輸送管を使用し、縦横それぞれ三列に配した、低温流体用の輸送管Cと高温流体用の輸送管Hを備えてなる。20は、輸送管C、Hの外周に配した断熱材、21は、輸送管C、Hを収めるためのケース体である。ケース体21と断熱材20は、輸送管C、Hに対する外気温の影響を最小にする。
【0016】
低温流体用の輸送管Cと高温流体用の輸送管Hは、内面および外面が方形のいわゆる角管を利用することが望ましい。両者(H、C)の接合面に熱電素子11を密着させやすいからである。
【0017】
低温流体用の輸送管Cと高温流体用の輸送管Hとが接する部分には、低温流体と高温流体の温度差を利用した発電を行うための熱電素子11を例えば直列に接続させて密着させて配設する。熱電素子11を配すべき箇所を斜線で示した。熱電素子11を配するときは、素子電極面の外側に絶縁材(例えばセラミック板)を配した素子ユニットを用いても良い。素子ユニットは、例えば熱伝導率が大きいシリコングリースなどを介して、輸送管H、Cとの間の空気層を除去するように接着剤やビス固定など適当な固定手段を用いて装着する。
【0018】
16は、ケース体21の端部に配する蓋体である。この蓋体16には、輸送管C、Hに対して流体を注入し、または流体を外部に排出させるためのパイプの接続孔17を設けておく。パイプの接続孔17に、例えばカプラ(継手)を接続する等によって、低温または高温の流体を供給または排出する。
【0019】
なお、輸送管C、Hの製造コストを十分に低減できるようになるまでは、輸送管C、Hを短く成形して表面に熱電素子11を配したモジュールを利用しても良い。図2に示すように、モジュールMは、縦横寸法を、例えば155mm程度の立方体に成形し、外周面に例えば30mm角の熱電素子11を縦横五列×五列に配して、輸送管C、Hの長さを適宜連接して自由な長さに調整できるようにしておく。目的とする発電量、高温流体あるいは低温流体の流量、平均温度、気体/液体の相違などにより、輸送管C、Hを構成するモジュールMの断面積、前後方向の長さ、表面に密着して配する熱電素子11の数も、適宜設計変更してかまわない。
【0020】
このように、輸送管C、Hを格子状に配した熱発電装置によれば、例えば9本の輸送管C、Hを用いて12面の熱電素子11の装着面を得る。この実施形態では1面につき例えば25個の熱電素子11を配するので、全体としては9本の輸送管C、Hにつき、モジュールMの一単位で300個の熱電素子11が搭載可能となる。モジュールMの接続段数を増加させれば、熱電素子11の数を任意に増大させることが出来る。
【0021】
この熱発電装置は、空間的な余裕の少ない箇所における省スペース型の発電に適する。例えば、自動車のエンジンルームに搭載し、高温熱源としてエンジンの廃熱またはエンジンを冷却させた高温水を、低温熱源としてエンジン冷却前の水または外気を利用する等である、自動車のエンジンルームのように、スペースが限られている箇所では輸送管C、Hの断面寸法も小さく設計してよい。
【0022】
図3は、輸送管C、Hを格子状に配する熱発電装置を、液化ガス(例えばLPG)を加熱によってガス化する装置(ベーパライザー)に適用する場合を例示するものである。通常のベーパライザーは、LPGタンク30の低温流体を螺旋形の輸送管に導き、加熱した温水によって低温流体を温める。図2において、符号35は、LPGタンク30の低温流体を加熱するための熱交換器であり、内部には、通常のベーパライザーと同様に、LPGタンク30から供給される低温流体の流路となる螺旋形の輸送管31を配してある。そして、輸送管31を、ボイラ装置32によって加熱した温水33によって加熱する。34は、温水33によってガス化された流体を貯蔵するガス貯留部である。
【0023】
通常のベーパライザーとの相違は、熱交換器35の前段(流体経路の上流)に、格子状に配列した角管(C、H)を利用した熱発電装置を設ける点にある。この熱発電装置は、すでに説明したように例えば三列×三列に配した格子状の角管(C、H)の間に熱電素子11を備え、極低温の液化ガスを通す輸送管Cと、ボイラ装置32によって加熱した温水33を通す輸送管Hとを格子状に配することで、大きな温度差に基づく発電を行うものである。36は、熱電素子11によって得た電力を蓄える蓄電装置である。なお、熱交換器35に温水を供給するボイラ装置32と、輸送管Hに温水を供給するボイラ装置は別体として構成しても良い。
【0024】
従って、かかるベーパライザーによれば、熱交換器35においてLPGの加熱を行う前に極低温のLPGの冷熱を利用した発電を行い、温水との熱交換によって流体温度が上昇したLPGを熱交換器35によって加熱する構造とするため、LPGをガス化するための熱量を電気的エネルギーとして効率よく回収できるとともに、熱交換器35において必要となる強制加熱用の熱的エネルギーを確実に低減することが可能になる。
【0025】
図4は、請求項1に係る熱発電装置を利用したベーパライザーの他の構成を例示するものである。このベーパライザーは、螺旋形の輸送管(31)をもった熱交換器(30)を使用せず、すべて、格子状の輸送管C、Hの間に熱電素子11を配した熱発電装置を通してLPGを強制的に加熱してガス化する。
【0026】
LPGの流路として螺旋形の輸送管(31)を用いないため、この場合には、装置を小型化するために、断面から見た場合の格子状の輸送管C、Hの数を増やすことが望ましい。例えば、上下/左右の輸送管C、Hの数を五列×五列あるいはそれ以上とする等である。また、空間的な余裕があれば、適当な長さに設計したモジュールの接続段数を増やして熱発電装置の左右幅(流体経路の上流から下流までの距離)を大きくとることも出来る。38は温水をボイラ装置32に戻す等の熱媒回収部、39はヘッダーである。
【0027】
かかる構造によれば、LPGの低温エネルギーと、LPGをガス化するために必要な高温の熱エネルギーとの熱交換時に、熱交換のエネルギーを最大効率で回収し、電気的エネルギーとして利用することが出来る。熱的エネルギーの差異を電気的エネルギーに変換するときの効率は、もっぱら熱電素子11の性能に依存するが、熱電素子11に与え得る熱的エネルギーの差としては大きな発電量を期待できる。ベーパライザーで発生する電気は、蓄電装置またはレギュレーターなどを介して例えば照明、ガス検知器、温度センサーなどに利用できる。このように、LPGのガス化のために無駄に捨てられていた熱量分を電気的エネルギーに変換して利用できるので、LPGのガス化事業にとっても経済効率は格段に高まるし、いわゆる京都議定書に基づくエネルギー資源の効率的利用という趣旨にも合致する。
【0028】
なお、本発明に係るベーパライザーにおいて利用する液化ガスの平均温度は、天然ガス(−160℃)、水素(−253℃)、プロパンガス(−42℃)、酸素(−183℃)、窒素(−196℃)、アルゴン(−186℃)、ヘリウム(−269℃)、アンモニア(−33℃)、炭酸ガス(−78.5℃)等である。
【0029】
熱電素子11を選定する際には、流体(例えば天然ガス、LNG)の平均温度を勘案することが望ましい。室温以下を低温、室温から数百度までを中温、数百度以上を高温とした場合、ベーパライザーのように低温流体を利用するときは例えばビスマス・テルルを使用することが出来る。またベーパライザー以外のもので、高温流体の温度に適合する熱電素子11を選定する際には、中温用としては例えば鉛・テルル、高温用は珪素化合物(シリサイド等)を使用することが出来る。
【0030】
本発明に係る熱発電装置に用いる輸送管は、内面と外面が断面方形のものに限定されない。輸送管は、少なくとも外面が、隣接する輸送管との組み合わでコンパクトに設計できるものであれば良い。従って、例えば図5に示すように断面略三角形の輸送管C、Hを組み合わせて、全体形状を例えば六角形とし、輸送管C、Hの接合面に熱電素子51を配しても良い。輸送管の外形は断面五角形以上でも良い。例えば断面六角形の形状は、耐圧性にも優れ、組み合わせによる装置のコンパクト化も容易である。
【0031】
低温用の輸送管Cと高温用の輸送管Hの数は同一である必要はない。例えば、図5のように、輸送管C、Hの使用本数が少ない場合は、例えば、高温流体を通す輸送管Hが低温流体を通す輸送管Cを挟む状態で配置する等、流体温度の変化と発電量とを勘案して輸送管C、Hを組み合わせる。熱交換による高温流体と低温流体の温度変化の意味合いは、発電装置を適用するシステムによって異なるため、一方の輸送管が他方の輸送管を挟む状態で配設することが好ましい場合が少なくない。例えば、ベーパライザーでは、低温流体であるLNGはガス化するまでに多大な熱エネルギーを必要とする一方、高温流体である温水はLNGとの熱交換によって急速に温度が低下しやすい。このような場合、高温流体を通す輸送管Hの本数を、低温流体用の輸送管Cの本数より増やしておけば、温水の温度低下を抑えつつLNGを加熱することが出来る。
【0032】
また、輸送管の外形と内部の孔の形状は一致しなくても良い。例えば、断面略正方形の輸送管の内部の孔(流体経路)が円形であっても構わない。熱効率を高めるためには肉厚を一定とすることが望ましいが、耐圧性を高めるなど、種々の事情で肉厚を一定にすることが好ましくない場合もあるからである。
【0033】
図3に示したベーパライザーは、高温水を利用した熱交換器35を用いるように図示してあるが、LNGなどのガス化では工場の温排水や高温排ガスあるいはバーナ火炎を利用した熱交換器を用いる場合もある。熱交換器の前段に輸送管を組み合わせた発電装置を配置するに際しては、温水利用かバーナ利用かなどといった、熱交換器のタイプによる区別はする必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る熱発電装置を断面とともに例示する図である。
【図2】本発明に係る熱発電装置に適用できるモジュールを例示する斜視図である。
【図3】図1の熱発電装置を用いたベーパライザーの第一の実施形態を示す図である。
【図4】図1の熱発電装置を用いたベーパライザーの第二の実施形態を示す図である。
【図5】本発明に係る熱発電装置の他の実施形態を断面から例示する図である。
【符号の説明】
【0035】
11、51 熱電素子
16 蓋体
17 接続孔
20 断熱材
21 ケース体
30 LPGタンク
31 (螺旋形の)輸送管
32 ボイラ装置
34 ガス貯留部
35 熱交換器
36 蓄電装置
38 熱媒回収部
39 ヘッダー
M モジュール
C、H 輸送管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面多角形の輸送管を組み合わせて、隣接する輸送管の間に熱電素子を密着させて配することを特徴とする熱発電装置。
【請求項2】
請求項1記載の熱発電装置を、液化ガスの輸送管の経路上に設けることを特徴とするベーパライザー。
【請求項3】
液化ガス蒸発器の熱交換器が熱発電装置であることを特徴とする請求項2記載のベーパライザー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−345609(P2006−345609A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−167533(P2005−167533)
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【出願人】(597059443)ノーステクノリサーチ株式会社 (5)
【出願人】(504193837)国立大学法人室蘭工業大学 (70)