説明

熱硬化性フラン樹脂組成物及びこれを用いたフラン樹脂積層体

【課題】 水分含有量が少ないにもかかわらず粘度が低く、積層体のマトリックス樹脂として使用した場合に含浸性が良好であり、しかも、硬化後の寸法収縮が小さい熱硬化性フラン樹脂組成物及びこれを用いたフラン樹脂積層体の提供。
【解決手段】 フラン樹脂(A)と硬化触媒(B)とからなる熱硬化性フラン樹脂組成物において、フラン樹脂(A)は、フルフリルアルコールとホルムアルデヒドとの共縮合物(a1)と、反応性希釈剤(a2)とからなることを特徴とする熱硬化性フラン樹脂組成物及びこれを用いたフラン樹脂積層体による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性フラン樹脂組成物及びこれを用いたフラン樹脂積層体に関し、更に詳しくは、水分含有量が少ないにもかかわらず粘度が低く、積層体のマトリックス樹脂として使用した場合に含浸性が良好であり、しかも、硬化後の寸法収縮が小さい熱硬化性フラン樹脂組成物及びこれを用いたフラン樹脂積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フルフリルアルコールとホルムアルデヒドとの共縮合物からなる、いわゆるフラン樹脂を主成分とする熱硬化性フラン樹脂組成物は、その硬化物が耐熱性・耐溶剤性・耐薬品性に優れていることから、鋼管ライニング、メジセメント、FRP等の積層体及び複合材のマトリックス樹脂として各種産業分野において使用されている。
【0003】
しかしながら、従来の熱硬化性フラン樹脂組成物は、フラン樹脂合成時の縮合反応に由来する水分を含有しているため、積層体のマトリックス樹脂として使用した際、水分放散による積層体の寸法収縮が大きな問題となった。
【0004】
これを踏まえ、フラン樹脂の縮合水を合成終了後留去することで水分含有量を低下させる方法(特許文献1参照)が提案されている。
【0005】
しかしながら、この方法では、水分の減少に伴いフラン樹脂の粘度が指数的に増加し、積層体のマトリックス樹脂として必要不可欠である含浸性を確保することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許3219769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、水分含有量が少ないにもかかわらず粘度が低く、積層体のマトリックス樹脂として使用した場合に含浸性が良好であり、しかも、硬化後の寸法収縮が小さい熱硬化性フラン樹脂組成物及びこれを用いたフラン樹脂積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、フルフリルアルコールとホルムアルデヒドとの共縮合物(a1)と、反応性希釈剤(a2)とからなるフラン樹脂(A)と、硬化触媒(B)とからなる熱硬化性フラン樹脂組成物により、さらにはこれを用いたフラン樹脂積層体により、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、フラン樹脂(A)と硬化触媒(B)とからなる熱硬化性フラン樹脂組成物において、フラン樹脂(A)は、フルフリルアルコールとホルムアルデヒドとの共縮合物(a1)と、反応性希釈剤(a2)とからなることを特徴とする熱硬化性フラン樹脂組成物が提供される。
【0010】
また、本発明に第2の発明によれば、第1の発明において、反応性希釈剤(a2)は、フルフリルアルコールとホルムアルデヒドとの共縮合物(a1)に対し、求電子置換反応、求核置換反応及びDiels−Alder反応よりなる群から選ばれる少なくとも1つの反応が可能な反応点を有することを特徴とする熱硬化性フラン樹脂組成物が提供される。
【0011】
また、本発明に第3の発明によれば、第1または2の発明において、反応性希釈剤(a2)は、フルフリルアルコール、フルフラール及びアニスアルコールよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする熱硬化性フラン樹脂組成物が提供される。
【0012】
また、本発明に第4の発明によれば、第1〜3の発明において、反応性希釈剤(a2)は、共縮合物(a1)100重量部に対して、10〜100重量部含有されることを特徴とする熱硬化性フラン樹脂組成物が提供される。
【0013】
また、本発明に第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、フラン樹脂(A)は、粘度が50〜2000mPa・sであることを特徴とする熱硬化性フラン樹脂組成物が提供される。
【0014】
また、本発明に第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、フラン樹脂(A)は、水分含有量が3重量%以下であることを特徴とする熱硬化性フラン樹脂組成物が提供される。
【0015】
また、本発明に第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明の熱硬化性フラン樹脂組成物を、強化繊維からなる積層体に含浸・硬化させたことを特徴とするフラン樹脂積層体が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の熱硬化性フラン樹脂組成物によれば、高粘度のフルフリルアルコールとホルムアルデヒドとの共縮合物を、低粘度の反応性希釈剤で希釈することで、水分含有量が小さくともフラン樹脂の低粘度化を図る事ができ、低水分量と低粘度の両立を実現できるという効果がある。
【0017】
また、本発明のフラン樹脂積層体によれば、反応性希釈剤は、熱硬化性フラン樹脂組成物が硬化する際にフルフリルアルコールとホルムアルデヒドとの共縮合物と、反応・固化するため放散が起こりにくく、硬化後の寸法収縮の小さな積層体であるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の熱硬化性フラン樹脂組成物及びこれを用いたフラン樹脂積層体を、以下に、具体的かつ詳細に説明する。
【0019】
1.熱硬化性フラン樹脂組成物
本発明の熱硬化性フラン樹脂組成物は、フラン樹脂(A)と硬化触媒(B)とからなる熱硬化性フラン樹脂組成物であって、フラン樹脂(A)が、フルフリルアルコールとホルムアルデヒドとの共縮合物(a1)と、反応性希釈剤(a2)とからなることを特徴とする。
【0020】
(1)フラン樹脂(A)
本発明において、フラン樹脂(A)は、フルフリルアルコールとホルムアルデヒドとの共縮合物(a1)と、反応性希釈剤(a2)とからなることが必要である。
本発明においては、硬化時の硬化速度が早く、最終硬化度が高いため、フルフリルアルコールとホルムアルデヒドとの共縮合物(a1)が最適である。
【0021】
本発明において使用される反応性希釈剤(a2)は、フルフリルアルコールとホルムアルデヒドとの共縮合物(a1)と相溶性があり、熱硬化性フラン樹脂組成物が硬化する際に共縮合物(a1)等と反応・固化するものであれば特に限定されないが、フルフリルアルコールとホルムアルデヒドとの共縮合物(a1)に対し、求電子置換反応、求核置換反応及びDiels−Alder反応よりなる群から選ばれる少なくとも1つの反応が可能な反応点を有するものが好ましい。
【0022】
フルフリルアルコールとホルムアルデヒドとの共縮合物(a1)に対し、求電子置換反応、求核置換反応及びDiels−Alder反応よりなる群から選ばれる少なくとも1つの反応が可能な反応点を有する反応性希釈剤(a2)としては、求電子剤としてアセトン・メチルエチルケトン等のケトン類、求核剤としてベンンジルアルコール、アニスアルコール等の芳香族アルコール類、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイン酸エステル等の不飽和酸エステル類、フルフラール、フルフリルアルコール、5−ヒドロキシフルフラール等のフラン類があげられるが、フルフリルアルコールとホルムアルデヒドとの共縮合物(a1)と相溶性の点から、フルフリルアルコール、フルフラール及びアニスアルコールよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上のものが好ましい。したがって、反応性希釈剤(a2)としては、上記したような求電子置換反応、求核置換反応及びDiels−Alder反応よりなる群から選ばれる少なくとも1つの反応が可能な反応点を有する化合物の単独あるいは混合物が好ましく用いられる。
【0023】
反応性希釈剤(a2)の添加量は、反応性希釈剤の種類、フルフリルアルコールとホルムアルデヒドとの共縮合物(a1)の粘度により異なるが、少なすぎると積層体成形時の含浸性が低下するおそれがあり、一方、多すぎると積層体成形時タレが発生するおそれがあることから、共縮合物(a1)100重量部に対して、10〜100重量部であることが好ましく、20〜90重量部が更に好ましく、30〜80重量部が最も好ましい。
【0024】
本発明における、フラン樹脂(A)の製造方法としては、特に限定されないが、フルフリルアルコールとホルムアルデヒドとの共縮合物(a1)を製造する工程の後、反応性希釈剤(a2)を添加する工程を行うことにより製造する方法、または、フルフリルアルコールとホルムアルデヒドとの共縮合物(a1)を製造する工程の後、過剰に添加され、フラン樹脂(A)中に残ることとなったフルフリルアルコールを、そのまま、反応性希釈剤(a2)として使用する製造方法等があげられる。
【0025】
本発明において、フラン樹脂(A)の粘度は、積層体の成形方法等により決定される為、特に限定されないが、大きすぎると積層体成形時の含浸性が低下するおそれがあり、一方、小さすぎると積層体成形時タレが発生するおそれがあることから、50〜2000mPa・sが好ましく、100〜1500mPa・sが更に好ましく、200〜1000mPa・sが最も好ましい。
【0026】
本発明において、フラン樹脂(A)の水分含有量は、積層体の寸法精度等により決定される為、特に限定されないが、小さい程硬化収縮が小さくなる事から、3重量%以下が好ましく、2重量%以下が更に好ましく、1重量%以下が最も好ましい。
【0027】
(2)硬化触媒(B)
本発明において、硬化触媒(B)としては、はフラン樹脂(A)を硬化できるものであれば特に限定されず、塩酸、硫酸等の無機酸等の無機酸、キシレンスルホン酸、トルエンスルホン酸、フェノールスルホン酸等の有機酸の水溶液が使用できる。
【0028】
硬化時間の短縮とポットライフの両立を狙いとして、硬化触媒(B)として、熱反応型潜在性酸触媒を使用する事も好ましく、熱反応型潜在性酸触媒としては、フラン系樹脂に含有する成分と常温では反応しにくく硬化時の加熱ですばやく反応し酸を発生させるものであれば特に限定されないが、常温時の安定性と硬化時の加熱による反応速度の点から、無機アンモニウム塩、1級アミン塩、2級アミン塩・3級アミン塩の少なくともいずれかを含有することが好ましく、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、エチルアミン塩酸塩、ジエチルアミン塩酸塩、トリエチルアミン塩酸塩、トリエタノールアミン塩酸塩の少なくともいずれかを含有することが特に好ましい。
【0029】
硬化触媒(B)の添加量は、フラン樹脂(A)および硬化触媒(B)の種類や希釈濃度、目的とする硬化温度・硬化時間により調整されるため特に限定されないが、フラン樹脂(A)100重量部に対し、1〜20重量部が好ましく、2〜10重量部とするのが特に好ましい。1重量部より少ないと、硬化不良の問題となるおそれがある。一方、20重量部より多いと、ポットライフが短くなるおそれがある。
【0030】
(3)熱硬化性フラン樹脂組成物
本発明の熱硬化性フラン樹脂組成物は、フラン樹脂(A)と硬化触媒(B)とからなることが必要である。
【0031】
2.フラン樹脂積層体
本発明のフラン樹脂積層体は、上記熱硬化性フラン樹脂組成物を、強化繊維からなる積層体に含浸・硬化させたことを特徴とする。
【0032】
本発明において、強化繊維は特に限定されないが、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維等が好ましく、得られるフラン樹脂積層体の強度と価格のバランスからガラス繊維が最も好ましい。また、強化繊維は繊維径が3〜25μmの範囲のものであることが好ましく、強度面及び価格面の観点から5〜20μmの繊維径のものがより好ましい。
【0033】
強化繊維に熱硬化性フラン樹脂組成物を含浸させる方法は特に限定されず、例えば、強化繊維に熱硬化性フラン樹脂組成物を含浸ロールにて含浸させる方法等が挙げられる。
【0034】
強化繊維に含浸させた熱硬化性フラン樹脂組成物の硬化方法は特に限定されず、例えば、強化繊維に含浸させた熱硬化性フラン樹脂組成物を入れた容器を熱風にて硬化する方法、金型内に熱硬化性フラン樹脂組成物を注ぎ入れ、熱風であるいは熱板に挟み込んで加熱硬化する方法等が挙げられる。
上記本発明の熱硬化性フラン樹脂組成物を加熱硬化する際の温度は、特に限定されないが、一般的に、例えば70〜130℃が好ましい。
【0035】
本発明のフラン樹脂積層体は、上記のような本発明の熱硬化性フラン樹脂組成物を使用することにより、低水分量と低粘度の両立が実現されていることから、強化樹脂に簡易に含浸させることができるものである。
【0036】
また、本発明のフラン樹脂積層体によれば、反応性希釈剤が、熱硬化性フラン樹脂組成物が硬化する際にフルフリルアルコールとホルムアルデヒドとの共縮合物と、反応・固化するため放散が起こりにくく、硬化後の寸法収縮の小さな積層体を簡便に与える事ができる。したがって、本発明により、品質が良好なフラン樹脂積層体を低コストにて製造することができるものであり、例えばFRPなどの用途に特に好適に用いることができるものである。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例によりなんら限定されるものではない。
本発明における各物性値の測定方法を以下に示す。
【0038】
1.測定法
(1)粘度(単位:%)
JIS K7117−1『ブルックフィールド形回転粘度計による見かけ粘度の測定方法』におけるB型粘度計法に準拠してフラン樹脂の粘度を測定した。
【0039】
(2)水分含有量
JIS K0113−8『カールフィッシャー滴定方法』における定量滴定方法に準拠してフラン樹脂の水分含有量を測定した。
【0040】
(3)含浸性
フラン樹脂積層体の成形時の基材に対する熱硬化性フラン樹脂組成物の含浸度合いを目視にて観察した。
【0041】
(4)寸法保持率
成形したフラン樹脂積層体を100mm×100mmにカット後寸法測定し、25℃の恒温室で10日間養生した後、以下の式を元に比較、寸法保持率を求めた。
寸法保持率(%)=10日後の寸法(mm)/カット後寸法(mm)×100
【0042】
2.実施例および比較例
(フラン樹脂(A)の調整)
<実施例1>
フルフリルアルコールとホルムアルデヒドとの共縮合物(a1:表1中単に共縮合物と記す、以下同様。粘度2700mPa・s、水分含有量7.4重量%)100重量部に対し、フルフリルアルコール(表1において、「FA」で示す。)50重量%を添加した後、ホモディスパーを用い、1000rpmで5分間攪拌し、フラン樹脂(A)を得た。
【0043】
<実施例2>
フルフリルアルコールとホルムアルデヒドとの共縮合物(a1:粘度2700mPa・s、水分含有量7.4重量%)100重量部に対し、フルフラール(表1において、「FL」で示す。)40重量%を添加した後、ホモディスパーを用い、1000rpmで5分間攪拌し、フラン樹脂(A)を得た。
【0044】
<実施例3>
フルフリルアルコールとホルムアルデヒドとの共縮合物(a1:粘度2700mPa・s、水分含有量7.4重量%)100重量部に対し、アニスアルコール(表1において、「AA」で示す。)65重量%を添加した後、ホモディスパーを用い、1000rpmで5分間攪拌し、フラン樹脂(A)を得た。
【0045】
<実施例4>
フルフリルアルコールとホルムアルデヒドとの共縮合物(a1:粘度14000mPa・s、水分含有量1.3重量%)100重量部に対し、フルフリルアルコール(表1において、「FA」で示す。)70重量%を添加した後、ホモディスパーを用い、1000rpmで5分間攪拌し、フラン樹脂(A)を得た。
【0046】
<比較例1>
フルフリルアルコールとホルムアルデヒドとの共縮合物(a1:粘度2700mPa・s、水分含有量7.4重量%)をホモディスパーを用い、1000rpmで5分間攪拌し、フラン樹脂(A)を得た。
【0047】
<比較例2>
フルフリルアルコールとホルムアルデヒドとの共縮合物(a1:粘度14000mPa・s、水分含有量1.3重量%)をホモディスパーを用い、1000rpmで5分間攪拌し、フラン樹脂(A)を得た。
【0048】
(熱硬化性フラン樹脂組成物の調整)
実施例1〜4及び比較例1〜2で得られたフラン樹脂(A)100重量部に、硬化触媒(B)として、パラトルエンスルホン酸50%水溶液2.5重量部を添加し、ホモディスパーを用いて1000rpm5分間攪拌することで熱硬化性フラン樹脂組成物を得た。
【0049】
(フラン樹脂積層体の成形)
上記、熱硬化性フラン樹脂組成物(8400g/m)をガラス繊維ステッチ(繊維径13μm、1500g/m、縦横比1:1)の両面に不織布(3mm、600g/m)を重ね合わせた基材に含浸ロールにて均一に含浸した後、内寸240mm×240mm×7mmの金型内に静置し、90℃で12時間硬化し、フラン樹脂積層体を得た。
【0050】
上記実施例及び比較例により得られたフラン樹脂及びフラン樹脂積層体について、各評価を行った。評価結果を表1に示した。
【0051】
【表1】

【0052】
3.評価
表1から明らかなように、実施例1〜4と比較例1、2とを対比すると、本発明の特定事項である「フラン樹脂(A)は、フルフリルアルコールとホルムアルデヒドとの共縮合物(a1)と、反応性希釈剤(a2)とからなる」との要件を満たさない比較例1、2で得られたものは、粘度が高く含浸不良であり、しかも、寸法保持性が不良であったのに対して、本願発明の実施例1〜3においては、低粘度かつ水分含有量が小さな熱硬化性フラン樹脂組成物となっており、これにより含浸性の確保と低寸法収縮との両者を同時に実現する熱硬化性フラン樹脂組成物及びフラン樹脂積層体が得られることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の熱硬化性フラン樹脂組成物は、硬化後の寸法収縮が小さいフラン樹脂積層体を与える熱硬化性フラン樹脂組成物であり、FRP等積層体のマトリックス樹脂として効果的な熱硬化性樹脂組成物が、少工程で簡便に得られるため、産業上大いに有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラン樹脂(A)と硬化触媒(B)とからなる熱硬化性フラン樹脂組成物において、
フラン樹脂(A)は、フルフリルアルコールとホルムアルデヒドとの共縮合物(a1)と、反応性希釈剤(a2)とからなることを特徴とする熱硬化性フラン樹脂組成物。
【請求項2】
反応性希釈剤(a2)は、フルフリルアルコールとホルムアルデヒドとの共縮合物(a1)に対し、求電子置換反応、求核置換反応及びDiels−Alder反応よりなる群から選ばれる少なくとも1つの反応が可能な反応点を有することを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性フラン樹脂組成物。
【請求項3】
反応性希釈剤(a2)は、フルフリルアルコール、フルフラール及びアニスアルコールよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱硬化性フラン樹脂組成物。
【請求項4】
反応性希釈剤(a2)は、共縮合物(a1)100重量部に対して、10〜100重量部含有されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱硬化性フラン樹脂組成物。
【請求項5】
フラン樹脂(A)は、粘度が50〜2000mPa・sであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱硬化性フラン樹脂組成物。
【請求項6】
フラン樹脂(A)は、水分含有量が3重量%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱硬化性フラン樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱硬化性フラン樹脂組成物を、強化繊維からなる積層体に含浸・硬化させたことを特徴とするフラン樹脂積層体。