説明

熱硬化性樹脂微粒子の製造方法

【課題】
本発明は、ミクロンサイズの粒度分布の狭い熱硬化性樹脂球状微粒子組成物に関する。本発明にて得られる熱硬化性樹脂微粒子は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、あるいは光硬化性樹脂等に加えた際には、フィルムあるいはコーティング膜に均一に分散し、ブロッキング防止剤、光拡散剤、光散乱剤、スペーサー、マット剤、滑剤として使用できる。

【解決手段】
トリアジン系モノマー(A)とアルデヒド化合物(B)との水溶性縮合物を、シリカ化合物(C)を含む水性液体中で、酸触媒存在下、さらに縮合反応させる熱硬化性樹脂微粒子の製造方法であって、前記酸触媒が、多塩基酸であることを特徴とする熱硬化性樹脂微粒子の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂微粒子の製造方法に関し、さらに詳しくは、ミクロンサイズであり、かつ、粒度分布の狭い熱硬化性樹脂球状微粒子に関する。本発明にて得られる熱硬化性樹脂微粒子は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、あるいは光硬化性樹脂等に加えた際には、フィルムあるいはコーティング膜に均一に分散し、ブロッキング防止剤、光拡散剤、光散乱剤、スペーサー、マット剤、滑剤として使用できる。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱硬化性樹脂の球状微粒子を得る試みは種々行われている。例えば、アミノ樹脂水溶液に硫酸等の硬化触媒を加え、攪拌下該樹脂を重合させ微細硬化樹脂とする方法(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)は古くから知られているが、アミノ樹脂が急速に硬化し不溶不融の硬化樹脂となるため、微粒子を得るには厳密に管理された条件下で硬化させる必要があり、それでもなお均一な粒子径とすることが困難である。
【0003】
メラミンとホルムアルデヒドの水溶性初期縮合物を保護コロイドの存在下でpH6.0〜8.0の範囲で硬化させる方法(特許文献2参照)、ベンゾグアナミンもしくはベンゾグアナミンとメラミンとの混合物とアルデヒド化合物の特定の可溶可融性樹脂を攪拌下にある保護コロイド水溶液に投入して得られる乳化物に重合触媒を加え加熱硬化させて得る方法(特許文献5参照)、メラミンとアルデヒド化合物の水溶性初期縮合物を水溶性ポリマーと酸触媒が共存する溶液に添加して得る方法(特許文献6参照)、該水溶性初期縮合物あるいはメラミンのメチルエーテル化物と水溶性ポリマーを含む溶液に酸触媒を加え硬化して得る方法(特許文献7参照)等が提案されているが、親水性高分子保護コロイドを用いるため、反応中に二次凝集を起こしやすく粉砕処理の必要があるという問題がある。
【0004】
水性媒体中で塩基性触媒と実質的に水に不溶性の無機塩類存在下にメラミンとアルデヒドを反応させる方法(特許文献8参照)があるが、メラミン樹脂微粒子の表面が水に不溶の無機塩類で被覆されるため、架橋構造を有するメラミン樹脂に比べて、耐摩耗性、耐溶剤性が劣る問題がある。
【0005】
ホルムアルデヒド溶液中に、トリアジン系モノマー、界面活性剤、酸性触媒を逐次反応させ、ホルムアルデヒドの低減と粒子制御アップを図った方法(特許文献9参照)等も提案されているが、溶液中に懸濁液を滴下して反応させるため、操作が煩雑で再現性に問題がある。
【0006】
従来のような界面活性剤や保護コロイドの存在下、水溶性縮合物を酸性条件下で縮合させて得られる重縮合物は、粒子が極めて細かく、二次凝集も起こりやすい。一方、界面活性剤や保護コロイドを使用せず、メラミンとホルムアルデヒドの水溶性縮合物に酸を添加し、弱酸性化して得られる重縮合物は、一部μm単位の微粒子が生成するものの、結果として数百から数十mmの巨大な塊状固体が形成される。
【0007】
このように、当該技術分野では適度な粒径(0.5〜10μm)の単分散熱硬化性樹脂微粒子(変動係数が10%未満)を得るのは困難であった。
【0008】
【特許文献1】特公昭32−5743号公報
【特許文献2】特公昭43−29159号公報
【特許文献3】特公昭46−28087号公報
【特許文献4】英国特許第1301007号
【特許文献5】特公昭56−42614号公報
【特許文献6】特開平3−239735号公報
【特許文献7】特開平4−304220号公報
【特許文献8】特開昭62−10126号公報
【特許文献9】特開2000−256432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、0.5〜10μmの粒径であり、かつ、変動係数10%未満である熱硬化性樹脂微粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、トリアジン系モノマー(A)とアルデヒド化合物(B)との水溶性縮合物を、シリカ化合物(C)を含む水性液体中で、酸触媒存在下、さらに縮合反応させる熱硬化性樹脂微粒子の製造方法であって、前記酸触媒が、多塩基酸である熱硬化性樹脂微粒子の製造方法に関する。
【0011】
また、本発明は、アルデヒド化合物(B)が、トリアジン系モノマー(A)に対して2.0〜4.0倍モルである熱硬化性樹脂微粒子の製造方法に関する。
【0012】
また、本発明は、シリカ化合物(C)が、トリアジン系モノマー(A)とアルデヒド化合物(B)とを合計した重量に対して0.5〜20重量%含む上記記載の熱硬化性球状樹脂微粒子の製造方法に関し、該シリカ化合物(C)が、pH7未満の水分散体である熱硬化性樹脂微粒子の製造方法に関する。
【0013】
また、本発明は、水溶性縮合物を、最終pH6以下に調整し得る量の酸触媒の存在下、15〜100℃で縮合反応させる熱硬化性樹脂微粒子の製造方法に関する。
【0014】
また、本発明は、水溶性縮合物を、反応液中の固形分濃度5〜30重量%の範囲に維持して縮合反応させる熱硬化性樹脂微粒子の製造方法に関し、また酸触媒が、ポリカルボン酸である熱硬化性樹脂微粒子の製造方法に関する。
【0015】
また、本発明は、微粒子の平均粒径が0.5〜10μm、かつ、変動係数が10%未満である熱硬化性樹脂微粒子の製造方法に関する。
【0016】
また、本発明は、上記いずれか記載の製造方法で得られた熱硬化性樹脂微粒子と、該熱硬化性樹脂微粒子を、非水系有機溶媒に分散する熱硬化性樹脂微粒子分散体に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、0.5〜10μmの粒径であり、かつ、変動係数10%未満である熱硬化性樹脂微粒子の製造方法を提供することができた。本発明により得られる熱硬化性樹脂微粒子は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、あるいは光硬化性樹脂等に加えた際には、フィルムあるいはコーティング膜に均一に分散し、ブロッキング防止剤、光拡散剤、光散乱剤、スペーサー、マット剤、滑剤として利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明でいう熱硬化性樹脂微粒子とは、トリアジン系モノマー(A)とアルデヒド化合物(B)との水溶性縮合物を、さらに重縮合して得られる熱硬化性樹脂の均一な粒径の球状微粒子のことを言う。本発明の製造方法により、平均粒径が0.5〜10μmで変動係数が10%未満の単分散微粒子を得ることができる。
【0019】
本発明で言う平均粒径は、光学顕微鏡で測定した50個の粒子の数平均であり、変動係数は、その50個の粒子径を統計計算し、次式によって求められた数値である。
【0020】
変動係数(%)=(標準偏差/平均粒径)×100
【0021】
本発明のトリアジン系モノマー(A)は、トリアジン環を有するアミノ化合物のことであり、例えばメラミン、ベンゾグアナミンやアセトグアナミンなどのグアナミン類が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、2種類以上併用することもできる。通常、最も安価で官能基も多いメラミンを主体的に用い、他のトリアジン系モノマーを共縮合させて諸物性を調節する。
【0022】
また、本発明では、上述のトリアジン系モノマー(A)と共縮合しうる化合物、例えば尿素、チオ尿素、エチレン尿素などの尿素類、フェノール、クレゾール、アルキルフェノール、レゾルシン、ハイドロキノン、ピロガロールなどのフェノール類、アニリン等を併用することも可能である。
【0023】
本発明に使用されるアルデヒド化合物(B)とは、例えば、ホルマリンやパラアルデヒドであり、通常、アルデヒド化合物が溶解している溶液で用いることができる。一般的にはホルマリン水溶液やパラアルデヒド化合物溶液を用いることができる。市販の濃度37%のホルマリン水溶液が最も安価であり容易に使用することができる。
【0024】
トリアジン系モノマー(A)とアルデヒド化合物(B)との縮合物は、上記トリアジン系モノマー(A)と、アルデヒド化合物(B)とを縮合反応させてなるが、一般に当該縮合物は、縮合反応を繰り返して非水溶性となる。しかし、反応初期の重合度の低い場合には、水溶性の化合物となり、本発明でいう水溶性縮合物となる。ここでいう水溶性とは、目視で透明であることで確認できる。
【0025】
また、メチロールメラミン、アルキルメチロール化メラミン、メチロールベンゾグアナミン、アルキルメチロール化ベンゾグアナミンなどは、トリアジン系モノマーとホルムアルデヒドとの水溶性縮合物であるから、これらの化合物も、水溶性縮合物としても、使用することができる。
【0026】
トリアジン系モノマー(A)とアルデヒド化合物(B)とを反応させて熱硬化性樹脂を合成するには、例えば、メラミンとホルムアルデヒドであれば、メラミン1モルに対してホルムアルデヒド6モルまで反応させることができる。通常、等モルで反応させると直鎖状ポリマーが生成する。架橋構造を付与させ球状微粒子とするためには、さらに数割のアルデヒド化合物(B)が必要とされる。理論的には、トリアジン系モノマー(A)に対して1.0倍モルより多いアルデヒド化合物(B)によって熱硬化性樹脂微粒子が合成される。
【0027】
本発明では、水溶性縮合物が三次元架橋により不溶化して微粒子を生成させるため、ある程度アルデヒド化合物(B)が過剰な方が均一な微粒子が得やすい。アルデヒド化合物(B)が少ないと反応初期の架橋点が減り、二次元架橋のまま不溶化、あるいは微粒子の生成過程で粒子同士の癒着の原因になるため、異形微粒子、融着微粒子、あるいは凝集微粒子が目立つようになり、目的とする単分散微粒子を得ることができない。しかし、あまり過剰にアルデヒド化合物(B)が存在すると、未反応物として系内に残存し、環境汚染の原因のとなる場合がある。このため本発明では、アルデヒド化合物(B)はトリアジン系モノマー(A)に対して2.0〜4.0倍モルが好ましく、さらには2.5〜3.5倍モル用いることがより好ましい。
【0028】
トリアジン系モノマー(A)とアルデヒド化合物(B)との反応には塩基性触媒を用いてもよい。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水、トリエチルアミン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また2種類以上を併用することも可能である。
【0029】
また、トリアジン系モノマー(A)とアルデヒド化合物(B)から得られる水溶性縮合物をさらに縮重合して熱硬化性樹脂微粒子を得る際には酸触媒を使用する。ここで用いる酸は多塩基酸、さらにはポリカルボン酸類であることが重要である。
【0030】
多塩基酸とは、1分子中に塩基を中和することのできる水素原子が2個以上含まれている酸、すなわち塩基度が2以上の酸のことである。例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族飽和ジカルボン酸類、またマレイン酸、フマル酸などの脂肪族不飽和ジカルボン酸類、さらにはフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸類、そして硫酸などの無機酸類といった二塩基酸が挙げられる。また、トリカルバリル酸、ベンゼントリカルボン酸などのトリカルボン酸類、そしてリン酸、ヒ酸、ホウ酸などの無機酸といった三塩基酸が挙げられる。さらにベンゼンテトラカルボン酸などの四塩基酸、ベンゼンヘキサカルボン酸などの六塩基酸が挙げられるが、これに限るものではない。
【0031】
このうち、ポリカルボン酸類とは、1分子内に塩基を中和することのできる水素原子が2個以上含まれているカルボン酸、すなわち上記多塩基酸のうち、ジカルボン酸類、トリカルボン酸類、テトラカルボン酸類、さらにはヘキサカルボン酸類などのことをいう。また、モノオールポリカルボン酸、ジオールポリカルボン酸類などのように、1分子内にカルボキシル基以外の官能基を有するカルボン酸含有化合物もこれに含まれる。さらには酸無水物なども用いることができる。これらは2種類以上を併用することもできる。
【0032】
ポリカルボン酸類を酸触媒に用いることで、系内に余分な無機物を混在させることなく樹脂微粒子を製造することができ、光学材料等の特殊な用途における無機物の除去操作を省くことができる。
【0033】
その他の酸触媒、例えば、塩酸等の無機酸、酢酸、アルキルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ポリオキシエチレンおよびその誘導体のスルホン化物等の有機酸などを用いても熱硬化性樹脂微粒子を得ることは可能である。しかし粒子の単分散性は劣る。
【0034】
酸触媒の添加量は、重合系がpH6以下になる量が好ましく、より好ましくは、pHが2〜5になるようにする。pHが6より高いと粒度分布が広くなる、凝集が発生する等の原因となる場合がある。
【0035】
反応中の固形分濃度は、反応開始より終了までの間、5〜30重量%が望ましい。5重量%より低いと生産性が低く、30重量%より高いと粒子の凝集が起こる場合がある。ここで言う固形分とは、トリアジン系モノマー(A)とアルデヒド化合物(B)とシリカ化合物(C)総量を意味する。
【0036】
濃度の調整には、原則的には水を使用する。所望によっては本発明の特徴を損なわない程度にアルコールを加えることも可能であるが、メチロール基がアルコールによりエーテル化し、アルコールに対して親和性が高くなると、微粒子を生成せず溶液全体がゲル化する場合があるので必要最低限に抑える必要がある。
【0037】
本発明で使用されるシリカ化合物(C)は、微粒子の分散安定剤として機能する。好ましくは、1〜100nmのシリカ粒子がSiO2として10〜50重量%、コロイド状に分散しているもので、市販の各種グレードが使用できる。例えば商品名で言えば、ルドックス(デュポン株式会社製)、スノーテックス(日産化学工業株式会社製)、Cataloid(触媒化成工業株式会社製)、アデライトAT(旭電化工業株式会社製)等が挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0038】
酸性領域における縮合反応によって微粒子を生成させるため、pH7未満の水分散体であり、酸性領域で安定に使用できるシリカ化合物(C)を用いるのが好ましい。例えば、ルドックスTMA(デュポン株式会社製)、スノーテックスO(日産化学工業株式会社製)、スノーテックスOXS(日産化学工業株式会社)、CatalodSN(触媒化成工業株式会社製)、アデライトAT−20Q(旭電化工業株式会社製)等の酸性シリカ化合物や、ルドックスAM(デュポン株式会社製)、スノーテックスC(日産化学工業株式会社製)、CataloidSC−30(触媒化成工業株式会社製)、アデライトAT−20A(旭電化工業株式会社製)等の特殊処理によりpH変動に影響されないシリカ化合物(C)が挙げられる。
【0039】
シリカ化合物(C)の添加量は、トリアジン系のモノマー(A)とアルデヒド化合物(B)とを合計した重量に対して、0.5〜20重量%であることが好ましい。0.5重量%より少ないと微粒子が安定化せず凝集物が多くなり、20重量%より多いと粒子表面に残存し、結果的に被覆されるシリカ量が多くなって熱硬化性樹脂の特徴を損なう場合がある。より好ましくは、1〜15重量%である。
【0040】
次に、熱硬化性樹脂微粒子の合成方法について具体的に説明する。
【0041】
先に挙げたトリアジン系モノマー(A)とアルデヒド化合物(B)を塩基性触媒下で加熱し、水溶性縮合物を合成する。この時の反応温度は、15〜100℃の範囲が好ましく、さらには20〜90℃であることがより好ましい。
【0042】
反応中は、系が均一になるように十分攪拌する。攪拌が不十分だと粒径がばらついたり、液面に皮ばりを生じたり、凝集物を生じたりする場合がある。
【0043】
続いて水溶性縮合物にシリカ化合物(C)を添加し、酸触媒添加後、1〜5分で白濁するが、内部架橋を完結させるためさらに1時間以上そのままの温度で攪拌を続ける。架橋が不十分だと、後処理で微粒子が融着したり破壊したりする場合がある。初期の反応温度が40℃以下の低温である場合は、内部架橋の進行を促進するため、途中昇温してもよい。
【0044】
本発明の製造方法で製造された熱硬化性球状微粒子は、粒径0.5〜10μmかつ変動係数10%未満の単分散の既架橋微粒子であり、界面活性剤や水溶性ポリマー等の後工程に悪影響を及ぼす分散剤を使用していない。さらに、熱的特性に影響を及ぼさないシリカ化合物(C)を、光学的特性にほとんど影響を及ぼさない量しか使用していなくてもよいため、簡単な濾過洗浄および乾燥と溶剤や樹脂への分散だけで、ブロッキング防止剤、光拡散剤、光散乱剤、スペーサー、マット剤、滑剤等、微粒子の一般用途から精密用途まで幅広く使用できる。
【0045】
さらに、得られた熱硬化性樹脂微粒子は、そのまま水性分散体、もしくは一般的なろ過・乾燥操作により粉末状の粒子として得ることができるが、非水系有機溶媒に置換して、非水系熱硬化性樹脂微粒子分散体とすることも可能である。
【0046】
非水系有機溶媒とは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、メチルセロソルブ、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、等のケトン類;などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
粒子を得る際に使用しているシリカ化合物(C)は、水性分散体である。このため得られた樹脂微粒子を非水系有機溶媒に置換すると粒子が凝集してしまう。本発明では、水に可溶な有機溶剤を介在させ、徐々に非水系有機溶剤に置換することで、粒子凝集を起こさず非水系有機溶媒分散粒子を得ることができる。
【0048】
ここで使用するアルコール溶媒とは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0049】
次に実施例により本発明を具体的に説明する。実施例において部及び%とあるのは、特に指定のない限り、すべて重量基準であるものとする。
【0050】
(実施例1)
攪拌機、還流冷却器、温度計がついた反応器に37%ホルマリン液113部(和光純薬工業、1.4mol)、トリエチルアミン(TEA;和光純薬工業)0.30部仕込み、pHが9以上であることを確認した後に、イオン交換水600部、メラミン58部(和光純薬工業、0.5mol)を仕込み攪拌しながら80℃まで昇温した。80℃でメラミンが溶解し無色透明になっていることを確認後、分散安定剤としてスノーテックスOXS(日産化学工業株式会社製、SiO2分11.5%、粒子径4nm、pH 3〜4)59部、続いてシュウ酸20部を水100部に溶解したものを添加し、この時のpH4.1であることを確認した。2分後白濁してから3時間、そのまま80℃で攪拌を続けることによって微粒子分散液を得た。その分散液は固形分8.5%、平均粒径1.79μm、変動係数6.62%の単分散微粒子分散液であった。
【0051】
得られた水分散液にエチレングリコールモノイソプロピルエーテル(和光純薬工業)700部を添加し、150℃まで加熱し、水を蒸発除去した。さらにシクロヘキサノン(和光純薬工業)2000部を数回に分けて添加し、最終的に固形分20%のシクロヘキサノン分散体を得た。
【0052】
(実施例2)
実施例1と同様の反応器に37%ホルマリン液203部(和光純薬工業、2.5mol)、トリエチルアミン(TEA;和光純薬工業)0.30部仕込み、pHが9以上であることを確認した後に、イオン交換水555部、メラミン105部(和光純薬工業、0.8mol)を仕込み攪拌しながら80℃まで昇温した。80℃でメラミンが溶解し無色透明になっていることを確認後、スノーテックスOXS(日産化学工業株式会社製、SiO2分11.5%、粒子径4nm、pH 3〜4)47部、続いてシュウ酸0.5部を水40部に溶解したものを添加し、この時のpH5.0であることを確認した。2分後白濁してから3時間、そのまま80℃で攪拌を続けることによって微粒子分散液を得た。その分散液は固形分15.3%、平均粒径5.07μm、変動係数5.18%の単分散微粒子分散液であった。
【0053】
(実施例3)
実施例1と同様の反応器に37%ホルマリン液225部(和光純薬工業、2.8mol)、トリエチルアミン(TEA;和光純薬工業)0.30部仕込み、pHが9以上であることを確認した後に、イオン交換水555部、メラミン117部(和光純薬工業、0.9mol)を仕込み攪拌しながら80℃まで昇温した。80℃でメラミンが溶解し無色透明になっていることを確認後、スノーテックスOXS(日産化学工業株式会社製、SiO2分11.5%、粒子径4nm、pH 3〜4)52部、続いてシュウ酸0.5部を水40部に溶解したものを添加し、この時のpH5.0であることを確認した。2分後白濁してから3時間、そのまま80℃で攪拌を続けることによって微粒子分散液を得た。その分散液は固形分15.3%、平均粒径6.26μm、変動係数7.31%の単分散微粒子分散液であった。
【0054】
(実施例4)
実施例1と同様の反応器に37%ホルマリン液225部(和光純薬工業、2.8mol)仕込み、pHが9以上であることを確認した後に、イオン交換水515部、メラミン117部(和光純薬工業、0.9mol)を仕込み攪拌しながら80℃まで昇温した。80℃でメラミンが溶解し無色透明になっていることを確認後、スノーテックスOXS(日産化学工業株式会社製、SiO2分11.5%、粒子径4nm、pH 3〜4)52部、続いてシュウ酸0.5部を水40部に溶解したものを添加し、この時のpH2.6であることを確認した。2分後白濁してから3時間、そのまま70℃で攪拌を続けることによって微粒子分散液を得た。その分散液は固形分5.1%、平均粒径6.26μm、変動係数7.31%の単分散微粒子分散液であった。
【0055】
(実施例5)
実施例1と同様の反応器に37%ホルマリン液79部(和光純薬工業、1.0mol)仕込み、pHが9以上であることを確認した後に、イオン交換水634部、メラミン41部(和光純薬工業、0.3mol)を仕込み攪拌しながら80℃まで昇温した。80℃でメラミンが溶解し無色透明になっていることを確認後、スノーテックスOXS(日産化学工業株式会社製、SiO2分11.5%、粒子径4nm、pH 3〜4)37部、続いてシュウ酸14部を水146部に溶解したものを添加し、この時のpH2.5であることを確認した。2分後白濁してから3時間、そのまま80℃で攪拌を続けることによって微粒子分散液を得た。その分散液は固形分6.0%、平均粒径2.17μm、変動係数7.22%の単分散微粒子分散液であった。
【0056】
(実施例6)
実施例1と同様の反応器に37%ホルマリン液79部(和光純薬工業、1.0mol)仕込み、pHが9以上であることを確認した後に、イオン交換水616部、メラミン41部(和光純薬工業、0.3mol)を仕込み攪拌しながら80℃まで昇温した。80℃でメラミンが溶解し無色透明になっていることを確認後、スノーテックスOXS(日産化学工業株式会社製、SiO2分11.5%、粒子径4nm、pH 3〜4)37部、続いてシュウ酸9部を水100部に溶解したものを添加し、この時のpH2.6であることを確認した。2分後白濁してから3時間、そのまま80℃で攪拌を続けることによって微粒子分散液を得た。その分散液は固形分6.0%、平均粒径2.01μm、変動係数4.59%の単分散微粒子分散液であった。
【0057】
(実施例7)
実施例1と同様の反応器に37%ホルマリン液113部(和光純薬工業、1.4mol)仕込み、pHが9以上であることを確認した後に、イオン交換水558部、メラミン58部(和光純薬工業、0.5mol)を仕込み攪拌しながら70℃まで昇温した。70℃でメラミンが溶解し無色透明になっていることを確認後、スノーテックスOXS(日産化学工業株式会社製、SiO2分11.5%、粒子径4nm、pH 3〜4)105部、続いてシュウ酸15部を水100部に溶解したものを添加し、この時のpH2.5であることを確認した。2分後白濁してから3時間、そのまま70℃で攪拌を続けることによって微粒子分散液を得た。その分散液は固形分8.5%、平均粒径1.60μm、変動係数3.82%の単分散微粒子分散液であった。
【0058】
(実施例8)
実施例1と同様の反応器に37%ホルマリン液113部(和光純薬工業、1.4mol)仕込み、pHが9以上であることを確認した後に、イオン交換水557部、メラミン58部(和光純薬工業、0.5mol)を仕込み攪拌しながら70℃まで昇温した。70℃でメラミンが溶解し無色透明になっていることを確認後、スノーテックスOXS(日産化学工業株式会社製、SiO2分11.5%、粒子径4nm、pH 3〜4)105部、続いて硫酸16部を水100部に溶解したものを添加し、この時のpH2.6であることを確認した。2分後白濁してから3時間、そのまま70℃で攪拌を続けることによって微粒子分散液を得た。その分散液は固形分8.5%、平均粒径1.60μm、変動係数3.82%の単分散微粒子分散液であった。
【0059】
(比較例1〜4)
実施例1に用いた酸触媒を酢酸、フ゜ロヒ゜オン酸、トリフルオロ酢酸(TFA)、蟻酸にそれぞれ変更して合成を行った。
【0060】
(比較例5〜7)
実施例1に用いた分散安定剤をポリアクリル酸溶液(和光純薬工業株式会社製 濃度25%)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(花王株式会社製、濃度65%)、安定剤非存在下にそれぞれ変更して合成を行った。いずれも直ぐに巨大凝集物が生成し、容器壁や攪拌翼・軸等に付着した。
【0061】
(比較例8)
実施例1と同様の反応器に37%ホルマリン液97部(和光純薬工業、1.7mol)、メラミン50部(和光純薬工業、0.3mol)、スノーテックスN(日産化学工業株式会社製、SiO2分20.3%、粒子径12.0nm、pH9.5)40部、イオン交換水720部仕込み、25%アンモニア水を添加してpH8.5であることを確認した。この溶液を攪拌しながら70℃まで昇温し、30分間反応して水性縮合物を得た。続いて10%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液1部を添加し、この時のpH6.5であることを確認した。酸添加後、すぐに凝集塊が生じ、粒子は得られなかった。
【0062】
【表1】

【0063】
比較例1〜4は、酸触媒として多塩基酸を含まず、比較例5〜7は、分散安定剤としてシリカ化合物を含まない。また、比較例8は、酸触媒として多塩基酸を含まず、かつシリカ化合物の水分散体が、アルカリ性を示す分散安定剤を使用した。
表1より明らかな通り、本発明の実施例1〜8は粒子径0.5μm〜10μmの熱硬化性樹脂微粒子の製造方法として、比較例1〜7より優れている。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の製造方法は、ブロッキング防止剤、光拡散剤、光散乱剤、スペーサー、マット剤、滑剤等、微粒子の一般用途から精密用途まで幅広く使用できる、粒径0.5〜10μmかつ変動係数10%未満の単分散の既架橋熱硬化性樹脂微粒子を提供する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリアジン系モノマー(A)とアルデヒド化合物(B)との水溶性縮合物を、シリカ化合物(C)を含む水性液体中で、酸触媒存在下、さらに縮合反応させる熱硬化性樹脂微粒子の製造方法であって、
前記酸触媒が、多塩基酸であることを特徴とする熱硬化性樹脂微粒子の製造方法。
【請求項2】
アルデヒド化合物(B)が、トリアジン系モノマー(A)に対して2.0〜4.0倍モルである請求項1記載の熱硬化性樹脂微粒子の製造方法。
【請求項3】
シリカ化合物(C)が、トリアジン系モノマー(A)とアルデヒド化合物(B)とを合計した重量に対して0.5〜20重量%含む請求項1または2記載の熱硬化性球状樹脂微粒子の製造方法。
【請求項4】
シリカ化合物(C)が、pH7未満の水分散体である請求項1〜3いずれか記載の熱硬化性球状樹脂微粒子の製造方法。
【請求項5】
水溶性縮合物を、最終pH6以下に調整し得る量の酸触媒の存在下、15〜100℃で縮合反応させる請求項1〜4いずれか記載の熱硬化性樹脂微粒子の製造方法。
【請求項6】
水溶性縮合物を、反応液中の固形分濃度5〜30重量%の範囲に維持して縮合反応させる請求項1〜5いずれか記載の熱硬化性樹脂微粒子の製造方法。
【請求項7】
酸触媒が、ポリカルボン酸である請求項1〜6いずれか記載の熱硬化性樹脂微粒子の製造方法。
【請求項8】
微粒子の平均粒径が0.5〜10μm、かつ、変動係数が10%未満である請求項1〜7いずれか記載の熱硬化性樹脂微粒子の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8いずれか記載の製造方法で得られた熱硬化性樹脂微粒子。
【請求項10】
請求項9記載の熱硬化性樹脂微粒子を、非水系有機溶媒に分散する熱硬化性樹脂微粒子分散体。


【公開番号】特開2007−169440(P2007−169440A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−368541(P2005−368541)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】