説明

熱硬化性樹脂成形材料の製造方法

【課題】 成形品としての諸特性を実質的に損なうことなく、多品種少量生産にも対応できる簡易な工程で熱硬化性樹脂成形材料を製造する方法を提供する。
【解決手段】 熱硬化性樹脂と充填材とを含有する熱硬化性樹脂成形材料の製造方法であって、粉末状の熱硬化性樹脂と、固形状の充填材とを含む原材料成分を混合する混合工程を有し、かつ、上記熱硬化性樹脂を実質的に溶融させる工程を経ずに成形材料を得ることを特徴とする、熱硬化性樹脂成形材料の製造方法。好ましくは、上記混合工程の前に、熱硬化性樹脂、2種類以上の熱硬化性樹脂の混合物、あるいは、1種類以上の熱硬化性樹脂と1種類以上の硬化剤との混合物を平均粒径0.5〜50μmに粉砕する粉末化工程を有し、無機充填材の表面を液状のカップリング剤で処理する表面処理工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂成形材料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性樹脂成形材料の成形品は、機械的特性、電気的特性、化学的特性に優れ、軽量であり加工も容易であることから、産業用、民生用の機械・電気電子部品のほか、一般家庭用品などにも用いられ、その用途はきわめて多岐にわたっている。
【0003】
熱硬化性樹脂成形材料は、通常、熱硬化性樹脂、硬化剤のほか、充填材、可塑剤、離型剤、顔料などの原材料成分を所定量配合して予備混合したものを、プラネタリミキサーなどの混合装置で予備混練を行った後、二軸押出混練装置や混練ロール装置などの溶融混練装置で混練して、冷却後にこれを粉砕する方法(例えば、特許文献1参照。)、あるいは、ニーダーなどの混練装置を用いて混練し、溶融させた材料を造粒する方法などにより製造されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
熱硬化性樹脂成形材料を用いた成形品の基本的特性は、主として熱硬化性樹脂が有する特性と、充填材により付与される特性により支配されると考えられる。そして、この諸特性を効果的に発現させるためには、熱硬化性樹脂や充填材などの原材料成分が高精度に混合されていることが必要である。
このため、従来の熱硬化性樹脂成形材料は、上記原材料成分を予備的に混合した混合物を調製後、熱硬化性樹脂の溶融温度以上に加温するとともに、高いずり剪断力を与えて溶融混練する方法により製造されてきた。
【0005】
しかし、このような方法では、溶融混練時の材料粘度が高いため、特に配合量が少ない成分については混合分散性が充分ではなく、また、溶融混練時に高い熱履歴を与えるため、熱硬化性樹脂の硬化反応が促進され、成形材料としての熱溶融特性にバラツキを生ずる一因となっていた。このような特性バラツキは、この成形材料を用いて成形品を成形する際に、成形不良、バリの発生、連続成形性などに影響を与えることが知られている。
【0006】
さらに、従来の熱硬化性樹脂成形材料の製造方法は、通常は上記のような製造ラインを要するため、装置として大がかりになるだけでなく、一生産単位が大きく、品種の切り替え時には工程上のロスが大きいという問題もあった。このため、多品種少量生産にも簡易に対応できるような熱硬化性樹脂成形材料の製造方法が望まれていた。
【0007】
【特許文献1】特開平07−170062号公報
【特許文献2】特開平05−337935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、成形品としての諸特性を実質的に損なうことなく、多品種少量生産にも対応できる簡易な工程で熱硬化性樹脂成形材料を製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、以下の本発明(1)〜(12)によって達成される。
(1)熱硬化性樹脂と充填材とを含有する熱硬化性樹脂成形材料の製造方法であって、
粉末状の熱硬化性樹脂と、固形状の充填材とを含む原材料成分を混合する混合工程を有し、かつ、
前記熱硬化性樹脂を実質的に溶融させる工程を経ずに成形材料を得ることを特徴とする、熱硬化性樹脂成形材料の製造方法。
(2)上記混合工程の前に、熱硬化性樹脂を平均粒径0.5〜50μmに粉砕する第1の形態の粉末化工程により、上記粉末状の熱硬化性樹脂を調製するものである上記(1)に記載の熱硬化性樹脂成形材料の製造方法。
(3)上記混合工程の前に、2種類以上の熱硬化性樹脂の混合物を、平均粒径0.5〜50μmに粉砕する第2の形態の粉末化工程により、上記粉末状の熱硬化性樹脂を調製するものである上記(1)に記載の熱硬化性樹脂成形材料の製造方法。
(4)上記混合工程の前に、1種類以上の熱硬化性樹脂と、1種類以上の硬化剤との混合物を、平均粒径0.5〜50μmに粉砕する第3の形態の粉末化工程により、上記粉末状の熱硬化性樹脂を調製するものである上記(1)に記載の熱硬化性樹脂成形材料の製造方法。
(5)上記第2の形態、又は、第3の形態の粉末化工程は、ジェットミル、オングミル、多段石臼型混練押し出し機から選ばれる装置を用いて行うものである上記(3)又は(4)に記載の熱硬化性樹脂成形材料の製造方法。
(6)上記固形状の充填材として、無機充填材を含む上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の熱硬化性樹脂成形材料の製造方法。
(7)上記混合工程の前に、無機充填材の表面を液状のカップリング剤で処理する表面処理工程を有する上記(6)に記載の熱硬化性樹脂成形材料の製造方法。
(8)上記表面処理工程は、スプレー装置から噴霧され、旋回流を与えられて流動している無機充填材表面に、ノズル霧化装置により微粒子化された液状のカップリング剤を噴霧する方法により行われるものである上記(7)に記載の熱硬化性樹脂成形材料の製造方法。
(9)上記固形状の充填材として、ガラス繊維のチョップドストランドを含む上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の熱硬化性樹脂成形材料の製造方法。
(10)上記混合工程は、ダイナミックミル、アイリッヒミキサー、レーディゲミキサー、アキシャルミキサー、ボールミルから選ばれる1種以上の混合装置を用いて行われるものである上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の熱硬化性樹脂成形材料の製造方法。(11)さらに、上記混合工程の後、上記熱硬化性樹脂を実質的に溶融させることなく造粒する造粒工程を有する上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の熱硬化性樹脂成形材料の製造方法。
(12)上記造粒工程は、乾式造粒装置を用いて行われるものである上記(11)に記載の熱硬化性樹脂成形材料の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の熱硬化性樹脂成形材料の製造方法によれば、成形品としての諸特性を実質的に損なうことなく、多品種少量生産にも対応できる簡易な工程で熱硬化性樹脂成形材料を製造することができる。
そして、本発明の熱硬化性樹脂成形材料の製造方法によれば、熱硬化性樹脂成形材料を低コストに生産することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の熱硬化性樹脂成形材料の製造方法について説明する。
本発明の熱硬化性樹脂成形材料の製造方法は、熱硬化性樹脂と充填材とを含有する熱硬化性樹脂成形材料の製造方法であって、
粉末状の熱硬化性樹脂と、固形状の充填材とを含む原材料成分を混合する混合工程を有し、かつ、
上記熱硬化性樹脂を実質的に溶融させる工程を経ずに成形材料を得ることを特徴とする。
【0012】
本発明の熱硬化性樹脂成形材料(以下、単に「成形材料」ということがある)の製造方
法において用いられる熱硬化性樹脂としては特に限定されないが、例えば、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、未変性のレゾールフェノール樹脂、桐油、アマニ油、クルミ油等で変性した油変性レゾールフェノール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂等のフェノール樹脂、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂等のトリアジン環を有する樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、シアネートエステル樹脂等が挙げられる。
【0013】
上記熱硬化性樹脂は、目的とする成形材料の特性に応じて、1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。これらの中でも、軟化温度が70〜130℃であるフェノール樹脂、エポキシ樹脂などを好適に用いることができる。これにより、平均粒径の小さい粉末状の熱硬化性樹脂を容易に調製することができる。
【0014】
本発明の成形材料の製造方法においては、上記混合工程の前に、粉末状の熱硬化性樹脂を得るために、配合に応じて3種類の形態の粉末化工程を有することができる。
【0015】
例えば、熱硬化性樹脂として、自己硬化性を有する熱硬化性樹脂1種類を単独で用いる場合は、熱硬化性樹脂を平均粒径0.5〜50μmに粉砕する第1の形態の粉末化工程により、粉末状の熱硬化性樹脂を調製することができる。この工程では特に、平均粒径1〜10μmに粉末化することが好ましい。
これにより、熱硬化性樹脂成分と、充填材など他の原材料成分との混合精度を向上させることができる。
【0016】
また、熱硬化性樹脂として、2種類以上の熱硬化性樹脂を用いる場合は、これらの混合物を、平均粒径0.5〜50μmに同時粉砕する第2の形態の粉末化工程により、粉末状の熱硬化性樹脂を調製することができる。この工程では特に、平均粒径1〜10μmに粉末化することが好ましい。
これにより、熱硬化性樹脂成分どうしの混合精度を高め、化学反応の均一性を向上させることができるとともに、熱硬化性樹脂成分と、充填材など他の原材料成分との混合精度を向上させることができる。
【0017】
また、熱硬化性樹脂として、1種類以上の熱硬化性樹脂と、1種類以上の硬化剤との混合物を用いる場合は、これらの混合物を、平均粒径0.5〜50μmに粉砕する第3の形態の粉末化工程により、粉末状の熱硬化性樹脂を調製することができる。この工程では特に、平均粒径1〜10μmに粉末化することが好ましい。
これにより、用いる熱硬化性樹脂と硬化剤との混合精度を高め、化学反応の均一性を向上させることができるとともに、熱硬化性樹脂及び硬化剤成分と、充填材など他の原材料成分との混合精度を向上させることができる。
なお、ここでいう硬化剤としては、硬化剤のほか、硬化促進剤も含むものとする。
【0018】
上記3種の形態の粉末化工程において用いることができる装置としては特に限定されないが、例えば、ボールミル、ハンマーミル、カッターミルなどの、通常の粉砕装置のほか、旋回流型ジェットミル、対向型ジェットミル、壁衝突型ジェットミルなどのジェットミル、オングミル(ホソカワミクロン社製・メカノフュージョン装置)、多段石臼型混練押し出し機(KCK社製:メカノケミカルディスパージョン装置)などを用いることができる。
【0019】
これらの中でも、上記第1の形態の粉末化工程においては、ジェットミルを用いることが好ましい。これにより、粉末化工程を連続的かつ効率的に実施することができる。
【0020】
また、上記第2の形態、又は、第3の形態の粉末化工程においては、ジェットミル、オングミル、多段石臼型混練押し出し機から選ばれるものを用いることが好ましい。
これらの装置を用いることにより、原材料を単に微粉砕できるだけでなく、粉砕時に、被粉砕物に衝突、ずり剪断などのエネルギーが作用するため、異なる熱硬化性樹脂成分どうし、あるいは、熱硬化性樹脂と硬化剤との間に、その少なくとも一部において複合化などの作用が働くと考えられる。これにより、混合精度や化学反応の均一性をさらに高めることができる。特に、ジェットミル、多段石臼型混練押し出し機を用いた場合には、上記効果に加えて、粉末化工程を連続的かつ効率的に実施することができる。
【0021】
上記粉砕化工程においてジェットミルを用いる場合、その粉砕条件としては特に限定されないが、一例を挙げると、ホソカワミクロン社製・「カウンタージェットミル200AFG(ノズル径5mm×3本)」を用い、熱硬化性樹脂として軟化温度が100℃程度のノボラック型フェノール樹脂、硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを用い、これらを混合したものを粉砕する場合は、空気圧600kPa、圧空量5.5m/minで処理し、分級ローター回転数を5000〜12000rpmとすることにより、平均粒径1〜10μmの粉砕物を得ることができる。
【0022】
上記粉末化工程は、本発明の成形材料の製造方法において必須のものではないが、熱硬化性樹脂、あるいは、固形の硬化剤として、平均粒径が50μmを超えるものを用いる場合には、実施することが好ましい。
【0023】
本発明の成形材料の製造方法においては、固形状の充填材を用いる。
固形状の充填材としては、無機充填材、有機充填材などを挙げることができる。
ここで無機充填材としては特に限定されないが、例えば、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラス等のケイ酸塩、酸化チタン、アルミナ、シリカ、溶融シリカ等の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩または亜硫酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素等の窒化物等などのほか、アルミナ繊維、ガラス繊維等の繊維状無機充填材を挙げることができる。
【0024】
また、有機充填材としては特に限定されないが、例えば、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル、アクリル樹脂、アセタール樹脂、ポリエチレン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の各種熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂の粉末、またはこれらの樹脂で構成される共重合体等の粉末状有機充填材、木粉、パルプ、ケナフ、アラミド繊維、ポリエステル繊維等の繊維状有機充填材等が挙げられる。
【0025】
上記に挙げた無機充填材、有機充填材は、目的とする成形材料の特性に応じて、1種または2種以上併せて用いることができる。
【0026】
本発明の成形材料の製造方法において、上記固形状の充填材として、その表面がカップリング剤により処理されていない無機充填材を用いる場合には、上記混合工程の前に、無機充填材の表面を液状のカップリング剤で処理する表面処理工程を有することが好ましい。
これにより、無機材料である無機充填材と、有機材料である熱硬化性樹脂との親和性を向上させ、成形品の機械的特性、耐熱性、吸湿時の耐熱性などを向上させることができる。
【0027】
無機充填材の表面を液状のカップリング剤で処理する方法としては特に限定されないが、例えば、スプレー装置から噴霧され、旋回流を与えられて流動している無機充填材に、ノズル霧化装置により微粒子化された液状のカップリング剤を噴霧する方法が好ましい。
これにより、無機充填材に対する液状のカップリング剤の配合量が少量であっても、無機充填材とカップリング剤とを高い精度で接触させ、無機充填材の表面処理を行うことができる。また、無機充填材が凝集性を有したものであっても、スプレー装置で噴霧するため、凝集の解離を促進させることができるので、無機充填材の表面をむらなくカップリング剤で処理することができる。
さらに、この工程を連続的に実施することができ、液状のカップリング剤で表面処理した無機充填材を効率的に調製することができる。
【0028】
上記の方法は、2種類以上の無機充填材を用いる場合でも同様に適用することができる。この場合、各々の無機充填材を液状のカップリング剤で表面処理してもよいし、予め所定の比率で予備混合した無機充填材の混合物を用いて、液状のカップリング剤で表面処理することもできる。
上記の方法は、特に、無機充填材として粉末状の無機充填材を用いる場合に好適に適用することができる。これにより、上記処理を効率的に実施することができる。
【0029】
ここで用いられるカップリング剤としては特に限定されないが、例えば、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤などを挙げることができる。
【0030】
上記表面処理を行う方法の一例を、図面を用いて説明する。
図1は上記表面処理を行うための装置の一例であり、無機充填材をスプレー装置から供給するとともに、処理装置内で旋回流を与えて流動させ、これにノズル噴霧装置により微粒子化した液状のカップリング剤を供給し、両者を接触させることにより表面処理を行うものである。
図1において、(a)は無機充填材を供給する装置、(b)はカップリング剤を供給する装置、(c)は処理装置と表面処理された無機充填材の回収装置の各々側断面図である。
【0031】
図1(a)において、無機充填材1は、予め粉末状に調製され、ホッパ2にストックされている。ホッパ2内部でのブリッジ発生を防ぐため、必要に応じて撹拌装置3を用いることができる。無機充填材1は、カップリング剤との混合比率に応じて、ロータリーバルブ4により順次定量供給され、スプレー装置5により処理装置内に供給される。装置6は無機充填材1の供給に用いられる圧縮空気の供給装置である。
【0032】
図1(b)において、液状のカップリング剤8は、流量調整弁9により流量を調整しながら順次供給され、ノズル霧化装置10により、処理装置内に供給される。装置11はカップリング剤の供給に用いられる圧縮空気の供給装置である。
【0033】
図1(c)において、無機充填材14は供給部7から処理装置13内に供給される。図示した処理装置13は円筒形状であり、無機充填材14は供給された後、処理装置13内で旋回流16を与えられ、装置内を旋回しながら下降していく。一方、カップリング剤15は供給部12から処理装置13内の中心に向かって噴霧される。カップリング剤の一部は噴霧時に無機充填材と接触するとともに、無機充填材の旋回流にのって無機充填材と同じ方向へ流動し、流動中に両材料が接触することにより、ここでも表面処理が行われる。
表面処理後の無機充填材18は、回収装置17へ回収される。サイクロン装置19は、処理装置13内に供給された空気を排出するとともに、微粉を回収することができる。
【0034】
なお、液状のカップリング剤の種類によっては、粘性が高いなど、そのままの状態では噴霧や霧化を行うのに適していないことがある。このような場合は、カップリング剤や無機充填材の性状に影響を与えない範囲で、カップリング剤を溶媒で希釈し、低粘度化して用いることができる。あるいは、カップリング剤の配合量が非常に少ない場合には、液状成分を一定量確保するため、カップリング剤を溶剤と混合して増量してもよい。
【0035】
上記表面処理工程は、本発明の成形材料の製造方法において必須のものではないが、表面処理を施していない無機充填材を用いる場合、特に、このような無機充填材の配合量が多い場合においては実施することが好ましい。
【0036】
本発明の成形材料の製造方法においては、以上に説明した成分のほか、目的とする成形材料の特性に応じて、原材料成分として、可塑剤、離型剤、顔料などを併せて用いることができる。
【0037】
本発明の成形材料の製造方法においては、以上に説明した原材料成分を混合する混合工程を有する。そして、本発明の成形材料の製造方法は、熱硬化性樹脂を実質的に溶融させる工程を経ずに成形材料を得ることを特徴とするものであり、従って、上記混合工程においても、熱硬化性樹脂を実質的に溶融させることなく混合できる装置を用いる。
【0038】
上記混合工程において用いられる混合装置としては特に限定されないが、例えば、通常の撹拌羽根を有した混合装置、ヘンシェルミキサー、プラネタリミキサーなどのほか、ダイナミックミル(三井鉱山社製・連続式ボールミル装置)、アイリッヒミキサー(アイリッヒ社製・逆流式高速混合装置)、レーディゲミキサー(レーディゲ社製・チョッパー付き混合装置)、アキシャルミキサー(杉山重工社製・傾斜型円筒混合装置)、ボールミルなどを用いることができる。
これらの中でも、ダイナミックミル、アイリッヒミキサー、レーディゲミキサー、アキシャルミキサー、ボールミルから選ばれる装置を用いると、原材料混合物に適度な大きさのずり剪断力を付与することができるので、成形材料中における各原材料成分の混合精度を高め、原材料成分どうしの一部を複合化することができる。
【0039】
また、本発明の成形材料の製造方法においては、無機充填材として、ガラス繊維のチョップドストランドを用いることができる。
このような場合、上記混合装置を用いると、混合時にチョップを開繊するとともに、ガラス繊維の単繊維を過度に細断することなく、成形材料中に分散させることができる。これにより、ガラス繊維のチョップドストランドを用いる効果を高く発現させることができる。
従来から成形材料の製造において多用されている混練ロール装置は、ロールの回転速度差により、溶融混練中の材料混合物に大きなずり剪断力が作用する。このため、ガラス繊維など比較的折れやすい繊維状充填材を用いた場合には、単繊維が過度に細断されてしまうことがある。
本発明の成形材料の製造方法においては、好ましくは上記混合装置を用いることにより、ガラス繊維の繊維長が保持されやすく、成形品の機械的強度向上効果をより高めることができる。
【0040】
そして、上記装置の中でも特に、ダイナミックミルを用いると、上記効果に加えて、混合工程を連続的に実施することができるので、成形材料を効率的に製造することができる。
【0041】
上記混合工程においてダイナミックミルを用いる場合、その運転条件は成形材料の組成により異なるため特に限定されないが、一例を挙げると、三井鉱山社製・「ダイナミックミルMYD10−X(アルミナ製ボール径5mm)を用い、原材料として下記の組成のものを用いる場合には、供給量7kg/hr、主軸の回転数550rpmの条件で運転することにより、熱硬化性樹脂を溶融させることなく混合工程を実施することができる。
原材料組成の一例は以下の通りである。
・熱硬化性樹脂:軟化温度100℃のノボラック型フェノール樹脂 22重量部
・硬化剤:ヘキサメチレンテトラミン 4重量部
・硬化促進剤:酸化マグネシウム 0.5重量部
・粉末状の無機充填材:焼成クレー 69重量部
・ガラス繊維:チョップドストランド 3重量部
・顔料:カーボンブラック 1重量部
・離型剤:ステアリン酸 0.5重量部
上記組成のうち、熱硬化性樹脂と硬化剤とは、混合物をジェットミルで同時粉砕した平均粒径3.5μmのものを用い、焼成クレーは液状のカップリング剤で表面処理を行ったものを用いた。
【0042】
本発明の成形材料の製造方法においては、以上に説明した方法で得られたものを、さらに、熱硬化性樹脂を実質的に溶融させることなく造粒する造粒工程を有することができる。
このように造粒化することにより、成形方法などによっては成形材料の取り扱い性を向上させることができる。
上記造粒工程を実施する方法としては特に限定されないが、乾式造粒装置を用い、熱履歴を与えることなく、圧力による圧締のみで造粒化する手法を好適に用いることができる。
上記乾式造粒装置としては例えば、ローラーコンパクターなどを好適に用いることができる。
【0043】
本発明の製造方法で得られた成形材料は、通常の射出成形、移送成形、圧縮成形法などを適用して、所定の熱圧条件で成形することにより、熱硬化性樹脂成形材料の成形品とすることができる。
例えば、射出成形や移送成形の場合は、上記本発明の製造方法で得られた成形材料をそのまま用いることができる。また、圧縮成形の場合は、上記本発明の製造方法で得られた成形材料をそのまま用いることができるし、これを用いて、タブレット(予備成形品)を作製し、これを用いて圧縮成形を行うことができる。
ここで、タブレットを製造する条件としては特に限定されないが、本発明の製造方法の主旨から、この段階でも、熱硬化性樹脂を実質的に溶融させることなく、例えば圧力により成形する手法、あるいは、熱硬化性樹脂の反応が促進されない範囲内で、熱硬化性樹脂を溶融させて、より高密度なタブレットを成形する手法などによって製造することが好ましい。
【0044】
また、本発明の製造方法によれば、通常、このような成形材料を得る際に用いられる離型剤の配合量を低減させることができる。
この理由は明確ではないが、以下のように推測される。
従来の成形材料の製造方法、例えば、原材料混合物を混練ロールなどの装置で混練して、熱硬化性樹脂を溶融させて成形材料を得る方法では、原材料混合物中に配合された離型剤の多くが、混練時に樹脂成分と相和して内部に取り込まれてしまい、成形材料を成形する際には、成形品表面すなわち金型との離型面にブリードしにくくなっていると考えられる。このため、充分な離型性を付与するためには、実質的に過剰量の離型剤を配合する必
要があると考えられる。
これに対して、本発明の製造方法では、熱硬化性樹脂を実質的に溶融させる工程を経ずに成形材料を得ることを特徴とする。このため、添加された離型剤の多くが成形時に成形品表面にブリードして、離型剤として有効に機能することができるのではないかと考えられる。
【0045】
通常、成形材料に用いられる離型剤は、成形品と金型との離型性を確保するために添加されるが、成形品の内部に取り込まれた場合には内部滑剤のような作用を発現すると推測され、成形品特性上は本来好ましいものではない。
本発明の製造方法により得られた成形材料は、離型剤の配合量を通常の50〜10重量%程度まで少なくしても、金型からの成形品の離型性を充分に確保することができる。そして、成形品内部に存在する離型剤の含有量が少ないために、機械的強度、特に、熱時の機械的強度を向上させることができると考えられる。また、このように離型剤の配合量を少なくできることから、成形品の低コスト化にも寄与することができるものである。
【0046】
以上に説明したように、本発明の成形材料の製造方法は、粉末状の熱硬化性樹脂と、固形状の充填材とを含む原材料成分を混合する混合工程を有し、かつ、成形材料の製造工程において、熱硬化性樹脂を実質的に溶融させることなく成形材料を得ることを特徴とするものである。
これにより、成形品としての諸特性を実質的に損なうことなく、多品種少量生産にも対応できる簡易な工程で製造することができる。そして、成形材料の製造に要するエネルギーコストを低減させることができる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
【0048】
1.原材料
実施例及び比較例で使用した原材料は以下の通りである。
(1)ノボラック型フェノール樹脂:住友ベークライト社製「PR−50622」、軟化温度約100℃、粒子径3〜10mmのフレーク状
(2)レゾール型フェノール樹脂:住友ベークライト社製「PR−51723」、軟化温度75℃、直径2mm、長さ5〜10mmの棒状
(3)ヘキサメチレンテトラミン:住友精化社製「ウロトロピン」、平均粒径50μm
(4)硬化促進剤:協和化学社製「キョウワマグ#30」、酸化マグネシウム、平均粒径30μm
(5)カップリング剤:東芝シリコーン社製「TSL8331」、アミノシランカップリング剤
(6)焼成クレー:日本イメリス社製「ポールスター501」、平均粒径10μm
(7)ガラス繊維:日本板硝子社製「チョップドストランドRES」、平均繊維径13μm、平均繊維長3mmのチョップドストランド
(8)顔料:三菱化学社製「カーボンブラック#750B」
(9)離型剤:日本油脂社製「ステアリン酸さくら」
【0049】
2.原材料混合物の調製
(1)熱硬化性樹脂と硬化剤との混合物の粉末化1
ノボラック型フェノール樹脂22重量部に対して、ヘキサメチレンテトラミン4重量部、硬化促進剤0.5重量部の割合で配合したものを、ヘンシェルミキサーで予備混合した。
次に、この混合原料を、ホソカワミクロン社製のカウンタージェットミル200AFG(ノズル径5mm×3本)を用いて、空気圧600kPa、圧空量5.5m/minで
同時粉砕処理し、粉砕されたものを分級ローター(10000rpm)で補集して、粉砕化されたフェノール樹脂組成物Aを得た。フェノール樹脂組成物Aの平均粒径は3.5μmであった。
【0050】
(2)熱硬化性樹脂と硬化剤との混合物の粉末化2
ノボラック型フェノール樹脂14重量部に対して、レゾール型フェノール樹脂12重量部、硬化促進剤0.5重量部の割合で配合したものを、ヘンシェルミキサーで予備混合した。
次に、この混合原料を、ホソカワミクロン社製のカウンタージェットミル200AFG(ノズル径5mm×3本)を用いて、空気圧600kPa、圧空量5.5m/minで同時粉砕処理し、粉砕されたものを分級ローター(8000rpm)で補集して、粉砕化されたフェノール樹脂組成物Bを得た。フェノール樹脂組成物Bの平均粒径は5.0μmであった。
【0051】
(3)粉末状の無機充填材を液状のカップリング剤で表面処理
粉末状の無機充填材として焼成クレーを用い、この表面を液状のカップリング剤を用いて処理した。表面処理は、図1に示した装置を用いて行った。
無機充填材供給用のスプレー装置として、株式会社アトマックス製・BN−90S−ISを用い、空気圧を4kg/cmとして100g/分で供給するとともに、混合装置内に旋回流を発生させた。
液状のカップリング剤供給用のノズル霧化装置として、扶桑精機株式会社製・マジックカットe−ミスト(ノズル型FN−Z40)を用い、空気圧を3.0kg/cmとして1.5g/分で供給した。これを、装置内径300mm×装置内高さ400mmの円筒形状の処理装置を用いて、旋回流を与えられて流動している焼成クレーの表面に、微粒子化された液状のカップリング剤を噴霧することにより、表面処理された無機充填材(無機充填材Aという)を得た。
【0052】
3.実施例
<実施例1>
原材料混合物全体に対して、上記フェノール樹脂組成物A26.5重量%、無機充填材A69重量%、ガラス繊維3重量%のほか、顔料1重量%、離型剤0.5重量%の比率で配合し、これをヘンシェルミキサーで予備混合した。
得られた予備混合物を、三井鉱山社製・「ダイナミックミルMYD10−X」に、7kg/hrの割合で定量供給し、ボール径5mm、主軸の回転数550rpmで運転して、熱硬化性樹脂を溶融させることなく、成形材料を製造した。
【0053】
<実施例2>
原材料混合物全体に対して、上記フェノール樹脂組成物A26.5重量%、焼成クレー68重量%、カップリング剤1重量%、ガラス繊維3重量%のほか、顔料1重量%、離型剤0.5重量%の比率で配合し、これをヘンシェルミキサーで予備混合した。
得られた予備混合物を、三井鉱山社製・「ダイナミックミルMYD10−X」に、7kg/hrの割合で定量供給し、ボール径5mm、主軸の回転数550rpmで運転して、熱硬化性樹脂を溶融させることなく、成形材料を製造した。
【0054】
<実施例3>
原材料混合物全体に対して、上記フェノール樹脂組成物B26.5重量%、無機充填材A69重量%、ガラス繊維3重量%のほか、顔料1重量%、離型剤0.5重量%の比率で配合し、これをヘンシェルミキサーで予備混合した。
得られた予備混合物を、三井鉱山社製・「ダイナミックミルMYD10−X」に、7kg/hrの割合で定量供給し、ボール径5mm、主軸の回転数550rpmで運転して、
熱硬化性樹脂を溶融させることなく、成形材料を製造した。
【0055】
<実施例4>
原材料混合物全体に対して、上記フェノール樹脂組成物B26.5重量%、焼成クレー68重量%、カップリング剤1重量%、ガラス繊維3重量%のほか、顔料1重量%、離型剤0.5重量%の比率で配合し、これをヘンシェルミキサーで予備混合した。
得られた予備混合物を、三井鉱山社製・「ダイナミックミルMYD10−X」に、7kg/hrの割合で定量供給し、ボール径5mm、主軸の回転数550rpmで運転して、熱硬化性樹脂を溶融させることなく、成形材料を製造した。
【0056】
<実施例5>
原材料混合物全体に対して、上記フェノール樹脂組成物A26.8重量%、無機充填材A69重量%、ガラス繊維3重量%のほか、顔料1重量%、離型剤0.2重量%の比率で配合し、これをヘンシェルミキサーで予備混合した。
得られた予備混合物を、三井鉱山社製・「ダイナミックミルMYD10−X」に、7kg/hrの割合で定量供給し、ボール径5mm、主軸の回転数550rpmで運転して、熱硬化性樹脂を溶融させることなく、成形材料を製造した。
【0057】
<実施例6>
原材料混合物全体に対して、上記フェノール樹脂組成物A26.9重量%、無機充填材A69重量%、ガラス繊維3重量%のほか、顔料1重量%、離型剤0.1重量%の比率で配合し、これをヘンシェルミキサーで予備混合した。
得られた予備混合物を、三井鉱山社製・「ダイナミックミルMYD10−X」に、7kg/hrの割合で定量供給し、ボール径5mm、主軸の回転数550rpmで運転して、熱硬化性樹脂を溶融させることなく、成形材料を製造した。
【0058】
<実施例7>
原材料混合物全体に対して、上記フェノール樹脂組成物B26.8重量%、無機充填材A69重量%、ガラス繊維3重量%のほか、顔料1重量%、離型剤0.2重量%の比率で配合し、これをヘンシェルミキサーで予備混合した。
得られた予備混合物を、三井鉱山社製・「ダイナミックミルMYD10−X」に、7kg/hrの割合で定量供給し、ボール径5mm、主軸の回転数550rpmで運転して、熱硬化性樹脂を溶融させることなく、成形材料を製造した。
【0059】
<実施例8>
原材料混合物全体に対して、上記フェノール樹脂組成物B26.9重量%、無機充填材A69重量%、ガラス繊維3重量%のほか、顔料1重量%、離型剤0.1重量%の比率で配合し、これをヘンシェルミキサーで予備混合した。
得られた予備混合物を、三井鉱山社製・「ダイナミックミルMYD10−X」に、7kg/hrの割合で定量供給し、ボール径5mm、主軸の回転数550rpmで運転して、熱硬化性樹脂を溶融させることなく、成形材料を製造した。
【0060】
4.比較例
<比較例1>
原材料混合物全体に対して、ノボラック型フェノール樹脂22重量%、ヘキサメチレンテトラミン4重量%、硬化促進剤0.5重量%、焼成クレー68重量%、カップリング剤1重量%、ガラス繊維3重量%、顔料1重量%、離型剤0.5重量%の比率で配合したものをヘンシェルミキサーで予備混合した。
得られた予備混合物を、90℃の加熱ロール装置を用いて3分間溶融混練した後、冷却したものを粉砕してフェノール樹脂成形材料を得た。
【0061】
<比較例2>
原材料混合物全体に対して、ノボラック型フェノール樹脂14重量%、レゾール型フェノール樹脂12重量%、硬化促進剤0.5重量%、焼成クレー68重量%、カップリング剤1重量%、ガラス繊維3重量%、顔料1重量%、離型剤0.5重量%の比率で配合したものをヘンシェルミキサーで予備混合して原材料混合物を調製した。
得られた予備混合物を、90℃の加熱ロール装置を用いて3分間溶融混練した後、冷却したものを粉砕してフェノール樹脂成形材料を得た。
【0062】
5.評価
実施例及び比較例で得られた成形材料の原材料組成、及び、成形材料と成形品の特性評価結果を表1に示す。また、特性評価方法を以下に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
6.評価方法
(1)成形材料の見掛け密度
JIS K 6911「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定した。
【0065】
(2)成形材料のスパイラルフロー
実施例及び比較例で得られた成形材料を用い、圧力のみにより、直径30mm、高さ20mmの大きさのタブレットを作製した。
上面5mm、下面4mm、高さ4mmの断面を有する渦巻き状の溝のある金型を使用し、下記の条件で成形材料を注入し、成形材料の硬化までに充填された渦巻き部の長さで流動性を評価した。
・タブレット予熱温度:95〜100℃
・金型温度:150±2℃
・注入圧力:460±10kg/cm
・プランジャー速度:40±5mm/秒
・硬化時間:60秒間
【0066】
(3)充填性
充填が難しい下記絶縁抵抗評価用試験片(JIS K 6911)において、ゲート部から最も遠い部位における成形性を確認した。端部まで成形できているものを○とした。
【0067】
(4)成形品の曲げ強度、曲げ弾性率、シャルピー衝撃強さ、圧縮強さ、絶縁抵抗、比重
JIS K 6911「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定した。なお、特性評価用試験片の成形は下記条件で行った。
・成形方法:トランスファー成形
・金型温度:175℃
・硬化時間:180秒間
【0068】
(5)金型離型性
上記のJIS K 6911「熱硬化性プラスチック一般試験方法」による試験片のうち、曲げ強度評価用試料作製時に、金型からの離型し易さを評価した。金型から問題なく離型できたものを○とした。
【0069】
実施例1〜4はいずれも、本発明の製造方法により得られた成形材料であり、従来の方法で製造された比較例の成形材料と比べて、成形材料としての基本的特性を低下させることなく、簡易な方法で成形材料を製造することができた。
実施例1〜4においてはいずれも、比較例と比べて機械的強度の向上が確認された。これは、加熱ロールを用いて原材料混合物を溶融混練した比較例と比べて、実施例では配合したガラス繊維の繊維長をより長く保持することができたためではないかと考えられる。そして特に、実施例1、3は、無機充填材として、その表面を液状のカップリング剤で処理したものを用いているため、機械的強度の向上効果をさらに高めることができた。
【0070】
また、実施例5、6は実施例1をベースとして、実施例7、8は実施例3をベースとして、各々離型剤の配合量を変えたものであるが、離型剤の配合量を少なくするのに伴い、良好な離型性を維持しつつ、熱時の機械的強度をさらに向上させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の製造方法において用いられる、無機充填材の表面処理を行う装置 (a)無機充填材を供給する装置(側断面図) (b)カップリング剤を供給する装置(側断面図) (c)処理装置と表面処理された無機充填材の回収装置(側断面図)
【符号の説明】
【0072】
1 無機充填材
2 ホッパ
3 撹拌装置
4 ロータリーバルブ
5 スプレー装置
6 圧縮空気の供給装置
8 カップリング剤
9 流量調整弁
10 ノズル霧化装置
11 圧縮空気の供給装置
13 処理装置
14 無機充填材
15 カップリング剤
17 回収装置
18 表面処理された無機充填材
19 サイクロン装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂と充填材とを含有する熱硬化性樹脂成形材料の製造方法であって、
粉末状の熱硬化性樹脂と、固形状の充填材とを含む原材料成分を混合する混合工程を有し、かつ、
前記熱硬化性樹脂を実質的に溶融させる工程を経ずに成形材料を得ることを特徴とする、熱硬化性樹脂成形材料の製造方法。
【請求項2】
前記混合工程の前に、熱硬化性樹脂を平均粒径0.5〜50μmに粉砕する第1の形態の粉末化工程により、前記粉末状の熱硬化性樹脂を調製するものである請求項1に記載の熱硬化性樹脂成形材料の製造方法。
【請求項3】
前記混合工程の前に、2種類以上の熱硬化性樹脂の混合物を、平均粒径0.5〜50μmに粉砕する第2の形態の粉末化工程により、前記粉末状の熱硬化性樹脂を調製するものである請求項1に記載の熱硬化性樹脂成形材料の製造方法。
【請求項4】
前記混合工程の前に、1種類以上の熱硬化性樹脂と、1種類以上の硬化剤との混合物を、平均粒径0.5〜50μmに粉砕する第3の形態の粉末化工程により、前記粉末状の熱硬化性樹脂を調製するものである請求項1に記載の熱硬化性樹脂成形材料の製造方法。
【請求項5】
前記第2の形態、又は、第3の形態の粉末化工程は、ジェットミル、オングミル、多段石臼型混練押し出し機から選ばれる装置を用いて行うものである請求項3又は4に記載の熱硬化性樹脂成形材料の製造方法。
【請求項6】
前記固形状の充填材として、無機充填材を含む請求項1ないし5のいずれかに記載の熱硬化性樹脂成形材料の製造方法。
【請求項7】
前記混合工程の前に、前記無機充填材の表面を液状のカップリング剤で処理する表面処理工程を有する請求項6に記載の熱硬化性樹脂成形材料の製造方法。
【請求項8】
前記表面処理工程は、スプレー装置から噴霧され、旋回流を与えられて流動している無機充填材の表面に、ノズル霧化装置により微粒子化された液状のカップリング剤を噴霧する方法により行われるものである請求項7に記載の熱硬化性樹脂成形材料の製造方法。
【請求項9】
前記固形状の充填材として、ガラス繊維のチョップドストランドを含む請求項1ないし8のいずれかに記載の熱硬化性樹脂成形材料の製造方法。
【請求項10】
前記混合工程は、ダイナミックミル、アイリッヒミキサー、レーディゲミキサー、アキシャルミキサー、ボールミルから選ばれる1種以上の混合装置を用いて行われるものである請求項1ないし9のいずれかに記載の熱硬化性樹脂成形材料の製造方法。
【請求項11】
さらに、前記混合工程の後、前記熱硬化性樹脂を実質的に溶融させることなく造粒する造粒工程を有する請求項1ないし10のいずれかに記載の熱硬化性樹脂成形材料の製造方法。
【請求項12】
前記造粒工程は、乾式造粒装置を用いて行われるものである請求項11に記載の熱硬化性樹脂成形材料の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−152228(P2006−152228A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−7205(P2005−7205)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】