説明

熱線遮蔽機能付き採光ブラインド及び熱線遮蔽機能付き遮光・採光両用ブラインド及び照明システム

【課題】
透光性のブラインドによって、外光を光拡散して部屋中に採りこみ、空調の消費電力は上げずに、照明装置の消費電力を削減する。遮光して部屋を暗くする。
【解決手段】
ブラインドのスラットやスクリーンに透光性の基材12を使用し、光拡散層13と、熱線遮蔽層16を設け熱線遮蔽光拡散シートを作成してスラットやスクリーンとする。これと自動照度制御付き照明装置40を組み合わせて消費電力を削減する。更に遮光スラットと熱線遮蔽光拡散スラットを組み合わせて、部屋を暗くできるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置の消費電力を削減するため、窓からの外光を採り入れるブラインドと、ブラインドと照明装置を連携させて照度を制御する照明制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、窓際に取り付けられるブラインドとして、アルミニウム製の遮光スラットからなるベネシャンブラインド、バーチカルブラインドや、布製のロールブラインドような遮光ブラインドが一般的に使用されてきた。
これらの中で例えば前記遮光スラットからなるベネシャンブラインドは、スラットの角度を適宜調整することで、太陽光の眩しさを防ぎながら部屋を明るくでき、前期遮光スラットを垂直方向に閉じれば部屋を暗くでき、プロジェクター等を使用する場合にも便利なブラインドである。
【0003】
その反面、自動照度制御機能付き照明装置(外光と照明装置からの照射光を合わせたトータルでの照度を一定に制御する機能のついた調光可能な照明装置や照明システム)を設置して、外光を採り入れて前記自動照度制御機能付き照明装置の消費電力を削減する場合、1日の中で前記遮光スラットの角度を適宜調整して、眩しくないように、かつできるだけ多くの外光を採り入れなければならない。しかし、前記遮光スラットの角度を、太陽の動きに合わせて、眩しさと採光のバランスを取って適宜調整するのは煩わしいため、通常は太陽光の眩しさを防ぐため、閉じた状態にしておくことが多い。そのため、前記自動照度制御機能付き照明装置の消費電力の削減は限定的であり、前期自動照度制御機能を有効に活用できていないのが現状である。
【0004】
一方、光拡散機能を持った半透明の部材を光拡散スラットとして使用し、前記光拡散スラットを完全に閉じても、眩しさを抑えつつ部屋中に外光を採り入れることができる採光ブラインドが発明、考案されている。(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4)
前記採光ブラインドを窓際に設置することで、部屋の奥まで外光が届き、たとえ窓から離れた壁際に設置された前記自動照度制御機能付き照明装置であっても消費電力を効果的に削減できるようになる。また、前記光拡散スラットを完全に閉じた状態でも外光を採り入れられるので、前記光拡散スラットの角度を調整する必要が無く、自動照度制御機能付き照明装置と組み合わせたときに、照明の消費電力削減において有効なブラインドとなる。
また、自動で遮光スラットの角度調整を行う電動ブラインドと調光可能な照明装置を連携させて、適切な照度を得る照明制御システムが発明されている。(特許文献5)
このような照明制御システムを用いることで、人手の煩わしさを無くし、自動で照明の消費電力の削減を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】公開実用新案公報平1−177398
【特許文献2】特許第1149867
【特許文献3】特許第3895298
【特許文献4】特開2002−81275
【特許文献5】特開2010−186700
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1から4の採光ブラインドを設置すると、太陽光の熱線も部屋中に拡散されてしまうので、部屋の温度を上昇させ、照明装置の消費電力は減少するものの、空調装置の消費電力が増加してしまうという弊害が生じる。また、光拡散シートからなるロールブラインドの場合、空気が透過しないので、換気の際には、巻き取る必要があるが、複数のロールブラインドを定期的に昇降させるのは面倒である。
更にプロジェクターを使用するときのように部屋を暗くしたいときに、前記光拡散スラットを完全に閉じても部屋を暗くできないだけでなく、拡散光が、壁に配置した投影スクリーンにまで達し、投影された画像等が見えづらくなってしまうという弊害が生じる。
またブラインドと照明装置を連携した特許文献5は、外光の状態によって自動で開閉制御するブラインドの集中制御装置から、スラットの開閉状態を照明装置に送信し、その情報から照明装置側の照度の目標値を補正する照明制御システムであり、照明装置の消費電力は削減できるが初期投資のかかるものである。
【0007】
そこで第1の発明は、外光を採り入れるときは、熱線を遮蔽し、主に可視光を拡散することで、部屋の温度上昇を抑制しながら、部屋中を明るくするブラインドの提供を目的としている。(請求項1から請求項5)
第2の発明は、1台のブラインドに、遮光と採光の両方の機能を持たせ、プロジェクター等を使用するときは、光拡散性を発現させず画像の視認性を良好にするブラインドの提供を目的としている。(請求項6、請求項7、請求項8)
第3の発明は、自動照度制御機能付き照明装置の消費電力を効果的に削減するために、採光ブラインドと組み合わせた初期投資を抑えた照明システムを提供することを目的としている。(請求項9、請求項10)
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するため鋭意検討した結果なされたものであり、以下に説明する。
【0009】
請求項1に記載の発明にあたっては、ベネシャンブラインド、バーチカルブラインド用のスラットやロールブラインド用のスクリーンが透光性樹脂シートからなり、前記透光性樹脂シートの少なくとも片面に、光拡散材を含有した光拡散層を積層し、又は片面をエンボス加工し、又は光拡散材や気泡を含有させた光拡散スラットや光拡散スクリーンにおいて、少なくとも片面に熱線遮蔽層を設けたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項2に記載の発明にあたっては、ベネシャンブラインド、バーチカルブラインド用のスラットやロールブラインド用のスクリーンが透光性樹脂シートからなり、前記透光性樹脂シートの少なくとも片面に、可視光において、ミー散乱及び幾何光学散乱が発生しない小径粒子と、ミー散乱又は幾何光学散乱が発生する大径粒子の2種類からなる透光性の熱線遮蔽性粒子と、熱硬化型樹脂あるいは電離放射線硬化型樹脂を含有した塗料を塗布し、塗膜の素地内部に小径粒子が埋まり熱線遮蔽効果を有し、塗膜表面に前記大径粒子の頂部で半球状の突起を形成し光拡散層としたことを特徴とするものである。
【0011】
請求項3に記載の発明にあたっては、ベネシャンブラインド、バーチカルブラインド用のスラットやロールブラインド用のスクリーンが透光性樹脂シートからなり、前記透光性樹脂シートの少なくとも片面に、可視光において、ミー散乱及び幾何光学散乱が発生しない小径の熱線遮蔽粒子と、ミー散乱又は幾何光学散乱が発生する大径の透光性有機粒子あるいは無機粒子と、熱硬化型樹脂あるいは電離放射線硬化型樹脂を含有した塗料を塗布し、塗膜の素地内部に熱線遮蔽粒子が埋まり熱線遮蔽効果を有し、塗膜表面に前記透光性の有機粒子あるいは無機粒子の頂部で半球状の突起を形成し光拡散層としたことを特徴とするものである。
【0012】
請求項4に記載の発明にあたっては、ベネシャンブラインド、バーチカルブラインド用のスラットやロールブラインド用のスクリーンが透光性樹脂シートからなり、前記透光性樹脂シートの少なくとも片面に、ミー散乱又は幾何光学散乱が発生する大径の透光性有機粒子あるいは無機粒子の表面に、ミー散乱及び幾何光学散乱が発生しない承継の透光性熱線遮蔽性粒子を結合させた複合粒子と、熱硬化型樹脂あるいは電離放射線硬化型樹脂を含有した塗料を塗布し、塗膜表面に前記複合粒子の頂部で半球状の突起を形成し光拡散層としたことを特徴とするものである。
【0013】
請求項5に記載の発明にあたっては、ベネシャンブラインド、バーチカルブラインド用のスラットやロールブラインド用のスクリーンが熱線遮蔽粒子を含有した可視光透過性の熱線遮蔽樹脂シートからなり、前記樹脂熱線遮蔽樹脂シートの少なくとも片面に、光拡散材を含有した光拡散層を積層し、又は熱線遮蔽樹脂シートの少なくとも片面をエンボス加工したことを特徴とするものである。
【0014】
請求項6に記載の発明にあたっては、非透光性部材からなる遮光スラットの一方の長辺と、請求項1又は請求項2又は請求項3又は請求項4又は請求項5に記載した熱線遮蔽光拡散スラットの一方の長辺とを接合し、前記接合部を主軸として前記遮光スラットと、前記熱線遮蔽光拡散スラットと、が互いに独立して回動する、一体のスラットに形成したことを特徴とするものである。
【0015】
請求項7に記載の発明にあたっては、非透光性部材からなる遮光スラットの一方の長辺と、請求項1又は請求項2又は請求項3又は請求項4又は請求項5に記載した熱線遮蔽光拡散スラットの一方の長辺同士を、狭角側が略90度となるように固定して接合し、一体のスラットに形成したことを特徴とするものである。
【0016】
請求項8に記載の発明にあたっては、請求項6又は請求項7に記載の遮光スラットの少なくとも太陽光が直接あたる面が高反射率になるように鏡面加工したことを特徴とするものである。
【0017】
請求項9に記載の発明にあたっては、窓全面に取り付けられたヘッドボックス内にモータードライブを内蔵して自動で昇降する2台以上のブラインド群において、それぞれのヘッドボックスの一端側に電源受給用のプラグが配設され、他端側に電源供給用のコネクタが配設され、ブラインド同士が電気的に連結されることを特徴とするものである。
【0018】
請求項10に記載の発明にあたっては、窓全面に請求項1又は請求項2又は請求項3又は請求項4又は請求項5又は請求項6又は請求項7又は請求項8又は請求項9に記載のブラインドが配置され、部屋内部に個別に照度センサーを内蔵した自動照度制御機能を有する照明装置が配置され、部屋内部に採光された外光と照明装置からの照射光全体を、照明装置1台毎に、照度制御することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の発明によれば、光拡散スラットや光拡散スクリーンの外光が入射する面、あるいは出射する面に熱線遮蔽層を積層しており、部屋内部には、主に可視光が光拡散され、温度上昇を抑えた状態で、眩しくなく、部屋中を明るくできるブラインドを提供できる。
【0020】
請求項2、請求項3、請求項4、請求項5に記載の発明によれば、一回の塗布工程でスラットの片面に、1μm以上の大径粒子による光拡散する凹凸が形成される。熱線遮蔽用の50nm以下の粒子は塗膜の中に分散されており光拡散性は少なく、主に熱線遮蔽性の機能を有する。大径粒子の添加量と塗布厚によって、全光線透過率とヘイズを簡単に調整でき、所望の熱線遮蔽光拡散機能を持たせたスラットやスクリーンを、低コストで生産性の良好な工程で生産でき、温度上昇を抑えた状態で、眩しくなく、部屋中を明るくできるブラインドを提供できる。
【0021】
請求項6、請求項7の発明によれば、遮光スラットを閉じれば、部屋を暗くでき、熱線遮蔽光拡散スラットを閉じれば、温度上昇を抑えた状態で、眩しくなく、部屋中を明るくできるブラインドを提供できる。
【0022】
請求項8の発明によれば、遮光スラットから反射した外光が、熱線遮蔽光拡散スラットを通り、部屋に採光されるので、より部屋を明るくできるブラインドを提供できる。
【0023】
請求項9の発明によれば、窓全面に配置された複数のブラインドを、簡単な配線で昇降できるブラインドシステムを提供できる。
【0024】
請求項10の発明によれば、光拡散スラットを全閉あるいは、光拡散スクリーンからなるロールブラインドを窓の下部まで降ろした状態にしても、眩しくなく、部屋の奥まで外光が届くので、1日の間、ブラインドを調製する手間をかけずに、効果的に、照明装置の消費電力を削減することができる。
更に、照明装置の1個、1個に照度センサーが内蔵され1台毎に照度制御されるので、照明装置が設置された近傍の場所毎に照度制御され、部屋全体の照度を均一にし、効果的に消費電力を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】ベネシャンブラインドの外観図
【図2】ロールブラインドの外観図
【図3】(実施の形態1)の熱線遮蔽光拡散シートの拡大断面図
【図4】(実施の形態1)の別構造の熱線遮蔽光拡散シートの拡大断面図
【図5】(実施の形態2)の熱線遮蔽光拡散シートの拡大断面図
【図6】(実施の形態3)の熱線遮蔽光拡散シートの拡大断面図
【図7】(実施の形態4)の熱線遮蔽光拡散シートの拡大断面図
【図8】(実施の形態5)の熱線遮蔽光拡散シートの拡大断面図
【図9】(実施の形態6)の遮光採光両用ベネシャンブラインドの断面図
【図10】(実施の形態6)のスラット角度調整機構部
【図11】(実施の形態6)の採光状態を示す断面図
【図12】(実施の形態6)の遮光状態を示す断面図
【図13】(実施の形態7)の遮光採光両用ベネシャンブラインドの断面図
【図14】(実施の形態7)の採光状態を示す断面図
【図15】(実施の形態7)の遮光状態を示す断面図
【図16】(実施の形態8)のロールブラインド外観図
【図17】(実施の形態8)のロールブラインド群の外観図
【図18】(実施の形態8)のロールブラインド群の別形態
【図19】(実施の形態8)のロールブラインド群の別形態
【図20】(実施の形態9)の部屋内部概略図
【図21】熱線遮蔽性能試験機の概略図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0027】
(実施の形態1)
図1は、本発明のスラットが用いられるベネシャンブラインドの一例である。スラット2が、昇降コード6とスラット角度調整コード7よって、多数段吊下支持され、スラット2の傾斜角度の調整や昇降によって部屋の明るさを調整するものである。図2はロールブラインドの一例で、一端が巻き取りロッド8に固定されたスクリーンを、前記巻き取りロッドを回転させることによって昇降し、部屋の明るさを調整するものである。
【0028】
図3は、本実施の形態1のスラットやスクリーンの部材となる熱線遮蔽光拡散シート の拡大断面を示したものである。熱線遮蔽光拡散シートを、所望の大きさに裁断して、スラットやスクリーンが作成される。本発明の熱線遮蔽光拡散シートは、基材12と、この基材12の片面に設けられた光拡散層13と、その裏面に設けられた熱線遮蔽層16とを備える。
光拡散層13は、可視光をミー散乱又は幾何光学散乱する大きさの光拡散性粒子14 が、樹脂15で基材12に固定され、前記粒子14の頂部近傍が空気界面側に露出し微細な突起を形成した構造からなっている。この凹凸表面によって、矢印で示したように出射する光が拡散し、眩しさがやわらげられ部屋の四方に外光が届くようになる。
熱線遮蔽層16は、可視光をミー散乱及び幾何光学散乱しない大きさの熱線遮蔽性粒子17が、樹脂15内に略1次粒子で分散した状態の構造からなっている。可視光は散乱されず、熱線のみ遮光された状態で出射されるので、全光線透過率やくもり度(ヘイズ)を、前記光拡散層の構造で調整できるものである。
【0029】
図4は、基材の片面に熱線遮蔽層16を形成し、この熱線遮蔽層16表面に光拡散層を積層した構造からなる熱線遮蔽光拡散シートの拡大断面であり、実施の形態1の別構造であり、同様な熱線遮蔽光拡散性を示す。
【0030】
基材12としては、例えば透光性のプラスチックフィルムを使用することができる。透光性のプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、トリアセチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート等の公知の高分子フィルムが挙げられる。これらの中から、フィルムの機械強度を考慮して、スラットやスクリーンに適した基材の厚みのものを適宜選択する。また必要に応じ、難燃剤、紫外線吸収剤、可塑剤等を含有したプラスチックフィルムを使用する。
【0031】
光拡散性粒子14としては、透光性で、可視光をミー散乱あるいは幾何光学散乱する大きさを持つ粒径のものが好ましく、例えば粒子径が1μm以上のアクリル粒子、メタクリル粒子、スチレン粒子、アクリルスチレン共重合体粒子、ベンゾグアナミン粒子などの公知の樹脂製粒子や、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ等の無機粒子を使用するのが好ましい。特に樹脂と粒子の屈折率差が小さい樹脂製粒子を使用するのが、全光線透過率を大きくでき部屋へ採光しやすくなるのでより好ましい。また粒子径が1μm以下になると光散乱性が低下していくので、粒子同士を凝集させて微細突起を形成する等の工夫が必要となる。
【0032】
熱線遮蔽粒子17としては、ミー散乱、幾何光学散乱が発生しない200nm以下の粒子径で、可視光透過率と熱線遮蔽率の高い、6ホウ化ランタンなどの6ホウ化物や、タングステン酸化物、アンチモン・スズ酸化物(ATO)、インジウム・スズ酸化物(ITO)、酸化チタン等の金属酸化物からなる粒子を使用することが好ましい。またレイリー散乱も発生しにくいようにするために、粒子径が数nmから数十nmの超微粒子を用いるのが特に好ましい。
【0033】
樹脂15としては、公知の電子線硬化樹脂、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等から機械特性を考慮して適宜選択できる。光拡散層13がスラットやロールの最表面に位置する場合は、硬化処理後に2H以上の鉛筆硬度を示すものが好ましい。これによって傷のつきにくいスラットやスクリーンを得ることができる。
【0034】
光拡散層13や熱線遮蔽層16は、各粒子14、17と樹脂15と、必要に応じて分散剤とを添加して溶剤に混合、分散処理して塗料を調製後、湿式塗布、乾燥、硬化の工程を経て形成される。なお、低粘度の紫外線硬化樹脂を使用し、無溶剤タイプの塗料にすることで環境負荷の小さい工程で光拡散層と熱線遮蔽層を形成できより好ましい。また熱線遮蔽層は、各熱線遮蔽用の材料をスパッタ等の乾式塗布によって形成してもよい。
【0035】
光拡散層13の樹脂15と粒子14の含有率と、塗膜の平均厚みによって、全光線透過率やヘイズを調整でき、所望の光学特性を持った光拡散シートを作成できる。塗膜中の樹脂の体積含有率を、粒子の体積含有率よりも小さくしておくことで、粒子頂部近傍が空気界面に露出しやすくなり好ましい。特に樹脂体積含有率を粒子体積含有率の半分以下にすることで、半球状の突起を形成でき、広い角度で光を拡散できるようになりより好ましい。
【0036】
(実施の形態2)
図5は、実施の形態2の熱線遮蔽光拡散シートの拡大断面を示したものである。本発明の熱線遮蔽光拡散シートは、基材12と、この基材12の片面に設けられた熱線遮蔽光拡散層18とを備える。
この熱線遮蔽光拡散層18は、実施の形態1で使用した熱線遮蔽性粒子17と、可視光をミー散乱又は幾何光学散乱する大きさの1μm以上の熱線遮蔽性粒子19と、樹脂15からなる。熱線遮蔽性粒子19の頂部近傍が空気界面側に露出し微細な突起が形成され、光拡散し眩しさをやわらげ、部屋の四方に外光が届くようになる。この熱線遮蔽性粒子19を基材12に固定している樹脂15の中に、略1次粒子に分散した熱線遮蔽粒子17が含有されており熱線を遮蔽する。基材12、熱線遮蔽性粒子17、19の種類、樹脂15は実施の形態1で使用されるものと同じである。なお熱線遮蔽粒子19によって、褐色に着色したシートが得られる。
【0037】
(実施の形態3)
図6は、実施の形態3の熱線遮蔽光拡散シートの拡大断面を示したものである。本発明の熱線遮蔽光拡散シートは、基材12と、この基材12の片面に設けられた熱線遮蔽光拡散層18とを備える。
この熱線遮蔽光拡散層18は、実施の形態1で使用した光拡散性粒子14と、実施の形態1で使用した熱線遮蔽性粒子17と、樹脂15とからなる。光拡散性粒子14の頂部近傍が空気界面側に露出し微細な突起が形成され、光拡散し眩しさをやわらげ、部屋の四方に外光が届くようになる。光拡散性粒子14を基材に固定している樹脂15の中に、略1次粒子に分散した熱線遮蔽粒子17が含有されており熱線を遮蔽する。なお基材12、樹脂15は実施の形態1で使用されるものと同じであり、光拡散性粒子14として樹脂製粒子を使用することによって、全光線透過率の大きな、着色の少ない熱線遮蔽光拡散シートが得られる。
【0038】
(実施の形態4)
図7は、実施の形態4の熱線遮蔽光拡散シートの拡大断面を示したものである。本発明の熱線遮蔽光拡散シートは、基材12と、この基材12の片面に設けられた熱線遮蔽光拡散層18とを備える。
実施の形態1で使用される光拡散性粒子14の表面を、実施の形態1で使用される熱線遮蔽性粒子17で化学修飾した複合粒子20を合成する。複合粒子20は、たとえばホソカワミクロン製のメカノフュージョンを用いることによって合成する。
熱線遮蔽光拡散層18は、この複合粒子20と、実施の形態1で使用する樹脂15からなる構造で、複合粒子20の頂部近傍が空気界面側に露出し微細な突起が形成され、光拡散された可視光が、熱線遮蔽されて、部屋の四方に届くようになる。
【0039】
(実施の形態5)
図8は、実施の形態1で使用する基材12の原材料粉末と、実施の形態1で使用する熱線遮蔽性粒子17を混合し、二軸混練押出機で熔融混練し、Tダイでシート成形し熱線遮蔽シート21としたものを基材として使用する。片面に実施の形態1と同様の光拡散層13を形成し、熱線遮蔽光拡散シートを作成する。なおTダイでのシート成形後に、サンドブラスト処理、機械加工による彫刻、レーザー加工による彫刻等で作成したエンボスロールによって、熱線遮蔽シート21の表面に賦型転写し凹凸を形成することで、光拡散性を持たせてもよい。
【0040】
(実施の形態6)
図9は、本実施形態の遮光採光両用ベネシャンブラインドの真横から見た、スラット上段近傍の断面である。アルミ等の非透光性部材からなる遮光スラット22と、前記実施の形態1から5で作成される熱線遮蔽光拡散スラット23とからなり、遮光スラット22の一方の長辺と、熱線遮蔽光拡散スラット23の一方の長辺とを、可撓性部材24を介して接合し、一体の遮光・熱線遮蔽光拡散スラットが作成される。前記可撓性部材24を主軸として前記遮光スラット22と、前記熱線遮蔽光拡散スラット23と、が互いに独立して回動する構造となっている。
【0041】
図10に示したようにヘッドボックス1内にある遮光スラット角度調整機構部32から垂下した遮光スラット角度調整コード25が、遮光スラット22の長辺端部の一部に結合コード27を介して取り付けられ、熱線遮蔽光拡散スラット角度調整機構部33から垂下した熱線遮蔽光拡散スラット角度調整コード26が、熱線遮蔽光拡散スラット23の長辺端部の一部に結合コード27を介して固定して取り付けられる。
遮光スラット固定コード28が、可撓性部材24の遮光スラット22側近傍で、遮光スラット22の最上段のスラットから、回動可能にヒンジ31で接合されている2分割されているエンドレール30まで垂下し、全スラット及びヒンジ31で固定されている。同様に熱線遮蔽光拡散スラット固定コード29が、可撓性部材の熱線遮蔽光拡散スラット23側近傍で、熱線遮蔽光拡散スラット23の最上段のスラットからエンドレール30まで垂下し、全スラット及びヒンジ31で固定されている。前記エンドレール30のそれぞれの一端に遮光スラット角度調整コード25と、熱線遮蔽光拡散スラット角度調整コード26が固定して取り付けられる。可撓性部材24に昇降コード6を通す貫通孔が開いており、昇降コード6が孔の中を通って、可撓性部材24に固定されないで垂下し、エンドレール30に固定して取り付けられる。
図11に示したように、熱線遮蔽光拡散スラット角度調整機構部を回転させることで、熱線遮蔽光拡散スラットを全閉にし、必要に応じて遮光スラットの角度を調整し、部屋を明るくできる。また図12に示したように、遮光スラット角度調整機構部を回転させることで、遮光スラットを全閉にし部屋を暗くできる。また、遮光スラットの外光が反射する面を、アルミ蒸着等によって鏡面化にすることで、熱線遮蔽光拡散スラットを通る外光を増やせ、更に部屋を明るくできる。
【0042】
(実施の形態7)
図13は、本実施形態の遮光採光両用ベネシャンブラインドの真横から見た断面の一部である。アルミ等の非透光性部材からなる遮光スラット23と、前記実施の形態1から5で作成される熱線遮蔽光拡散スラット23とからなり、遮光スラット22の一方の長辺と、熱線遮蔽光拡散スラット23の一方の長辺とを、狭角側が略90度となるように固定して接合し、一体の遮光・熱線遮蔽光拡散スラットが作成される。接合部が主軸となり、一体の遮光・熱線遮蔽光拡散スラットが回動する構造となっている。ヘッドボックス1内にある図示しないスラット角度調整機構部から垂下した2本のスラット角度調整コード7が、遮光・熱線遮蔽光拡散スラットの長辺の両端にそれぞれ1本づつ固定して取り付けられている。
接合部に、昇降コード6を通す貫通孔が開いており、昇降コード6が孔の中を通って、固定されないで垂下し、エンドレール5に固定して取り付けられる。
図14に示したように、スラット角度調整機構部を回転させることによって、熱線遮蔽光拡散スラットを通して採光して、部屋を明るくし、また図15に示したように遮光スラットによって、部屋を暗くすることができる。
【0043】
(実施の形態8)
図16は、リモコンで動作制御するモータードライブが内蔵されたロールブラインドの一例である。モータードライブ内蔵ヘッドボックス34内のモーターの回転が、巻き取りロッド35に伝達され、巻き取りロッド35を回転させスクリーン9が自動で昇降する。前記ヘッドボックス34の一端側に、商用電源から電力を受給するためのプラグ36が配設されている。またその他端側には、受給した電力を、別のモータードライブが内蔵されたロールブラインドに供給するためのコネクタ37が配設されている。
図17は、2台のロールブラインドを、窓際に設置した一例である。ロールブラインド が、窓際の全幅を覆うように、隙間の出ないように、各ロールブラインドの端部が、重なるように設置したものである。1台目のロールブラインドから出ているプラグを商用電源のコンセントに接続し、2台目のロールブラインドのプラグを1台目のコネクタに接続することで、2台のロールブラインドを電気的に接続できるようにしたものである。配線が簡単で、リモコン等で各ロールブラインドの昇降を自動で行う。なお窓枠との兼ね合いで、図18のように窓枠部で接するように、横1線に配置してもよい。
図19は、2台のロールブラインドが全幅で重なるように設置した例である。1台目は、遮光性ロールブラインド38で、2台目は熱線遮蔽光拡散シートからなる採光ロールブラインド39である。それぞれのブラインドをリモコンで制御することによって、部屋への採光と、遮光ができるようにしたブラインド群である。ロールブラインドの代わりにベネシャンブラインドと組み合わせてもよい。
【0044】
(実施の形態9)
図20は、窓際に熱線遮蔽光拡散ロールブラインド39を設置し、天井に自動照度制御機能を内蔵した直管型LEDランプ40を取り付けた部屋の内部である。LEDランプ40に内蔵された照度センサー41によって床面や机上面の明るさを検知し、LEDランプ40の明るさを自動調整して、床面等の明るさを一定に保つシステムである。日中、太陽の位置によらず前記熱線遮蔽光拡散ロールブラインド39を下げたままにしても眩しくなく、部屋の中に外光を取り入れることができた。また晴れた日の8時から17時までのLEDランプの全消費電力も、従来のアルミスラットからなるベネシャンブラインドを全閉したときに比べて約60%下げることができた。
なお実施の形態5で熱線遮蔽粒子として、6ホウ化ランタンを使用したときの、熱線遮蔽効果は15℃あり、部屋の空調の消費エネルギーも下げることが可能である。熱線遮蔽効果は図21の熱線遮蔽性能試験機を使用し、熱線遮蔽層有りと無しの差で評価した。赤外線照射後、10分で、熱電対の温度が飽和し、そのときの温度で評価した。
【符号の説明】
【0045】
1はヘッドボックス
2はスラット
3はスラット角度調整操作棒
4は昇降操作コード
5はエンドレール
6は昇降コード
7はスラット角度調整コード
8は巻き取りロッド
9はスクリーン
10は昇降チェーン
11はウェイトバー
12は基材
13は光拡散層
14は光拡散性粒子
15は樹脂
16は熱線遮蔽層
17は熱線遮蔽性粒子
18は熱線遮蔽光拡散層
19は大径の熱線遮蔽性粒子
20は複合粒子
21熱線遮蔽シート
22は遮光スラット
23は熱線遮蔽光拡散スラット
24は可撓性部材
25は遮蔽スラット角度調整コード
26は熱線遮蔽光拡散スラット角度調整コード
27はスラット角度調整コードとスラットを結合するコード
28は遮光スラット固定コード
29は熱線遮蔽光拡散スラット固定コード
30は2分割のエンドレール
31はヒンジ
32は遮蔽スラット角度調整機構部
33は熱線遮蔽光拡散スラット角度調整機構部
34はモータードライブ内蔵ヘッドボックス
35は巻き取りロッド
36はプラグ
37はコネクタ
38は遮光ロールブラインド
39は採光ロールブラインド
40は自動照度制御機能を内蔵したLEDランプ
41は照度センサー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベネシャンブラインド、バーチカルブラインド用のスラットやロールブラインド用のスクリーンが透光性樹脂シートからなり、前記透光性樹脂シートの少なくとも片面に、光拡散材を含有した光拡散層を積層し、又は片面をエンボス加工し、又は光拡散材や気泡を含有させた光拡散スラットや光拡散スクリーンにおいて、少なくとも片面に熱線遮蔽層を設けたことを特徴とした熱線遮蔽光拡散スラットや熱線遮蔽光拡散スクリーン、及びそれらからなるブラインド。
【請求項2】
ベネシャンブラインド、バーチカルブラインド用のスラットやロールブラインド用のスクリーンが透光性樹脂シートからなり、前記透光性樹脂シートの少なくとも片面に、可視光において、ミー散乱及び幾何光学散乱が発生しない小径粒子と、ミー散乱又は幾何光学散乱が発生する大径粒子の2種類からなる透光性の熱線遮蔽性粒子と、熱硬化型樹脂あるいは電離放射線硬化型樹脂を含有した塗料を塗布し、塗膜の素地内部に小径粒子が埋まり熱線遮蔽効果を有し、塗膜表面に前記大径粒子の頂部で半球状の突起を形成し光拡散層としたことを特徴とした熱線遮蔽光拡散スラット、熱線遮蔽光拡散スクリーン、及びそれらからなるブラインド。
【請求項3】
ベネシャンブラインド、バーチカルブラインド用のスラットやロールブラインド用のスクリーンが透光性樹脂シートからなり、前記透光性樹脂シートの少なくとも片面に、可視光において、ミー散乱及び幾何光学散乱が発生しない小径の熱線遮蔽粒子と、ミー散乱又は幾何光学散乱が発生する大径の透光性有機粒子あるいは無機粒子と、熱硬化型樹脂あるいは電離放射線硬化型樹脂を含有した塗料を塗布し、塗膜の素地内部に熱線遮蔽粒子が埋まり熱線遮蔽効果を有し、塗膜表面に前記透光性の有機粒子あるいは無機粒子の頂部で半球状の突起を形成し光拡散層としたことを特徴とした熱線遮蔽光拡散スラット、熱線遮蔽光拡散スクリーン、及びそれらからなるブラインド。
【請求項4】
ベネシャンブラインド、バーチカルブラインド用のスラットやロールブラインド用のスクリーンが透光性樹脂シートからなり、前記透光性樹脂シートの少なくとも片面に、ミー散乱又は幾何光学散乱が発生する大径の透光性有機粒子あるいは無機粒子の表面に、ミー散乱及び幾何光学散乱が発生しない小径の透光性熱線遮蔽性粒子を結合させた複合粒子と、熱硬化型樹脂あるいは電離放射線硬化型樹脂を含有した塗料を塗布し、塗膜表面に前記複合粒子の頂部で半球状の突起を形成し光拡散層としたことを特徴とした熱線遮蔽光拡散スラット、熱線遮蔽光拡散スクリーン、及びそれらからなるブラインド。
【請求項5】
ベネシャンブラインド、バーチカルブラインド用のスラットやロールブラインド用のスクリーンが熱線遮蔽粒子を含有した可視光透過性の熱線遮蔽樹脂シートからなり、前記樹脂熱線遮蔽樹脂シートの少なくとも片面に、光拡散材を含有した光拡散層を積層し、又は熱線遮蔽樹脂シートの少なくとも片面をエンボス加工したことを特徴とした熱線遮蔽光拡散スラットや熱線遮蔽光拡散スクリーン、及びそれらからなるブラインド。
【請求項6】
非透光性部材からなる遮光スラットの一方の長辺と、請求項1又は請求項2又は請求項3又は請求項4又は請求項5に記載した熱線遮蔽・光拡散スラットの一方の長辺とを接合し、前記接合部を主軸として前記遮光スラットと、前記熱線遮蔽光拡散スラットと、が互いに独立して回動する、一体のスラットに形成したことを特徴とした遮光・熱線遮蔽光拡散スラット、及びそれらスラットからなるブラインド。
【請求項7】
非透光性部材からなる遮光スラットの一方の長辺と、請求項1又は請求項2又は請求項3又は請求項4又は請求項5に記載した熱線遮蔽光拡散スラットの一方の長辺同士を、狭角側が略90度となるように固定して接合し、一体のスラットに形成したことを特徴とした遮光・熱線遮蔽光拡散両用スラット、及びそれらスラットからなるブラインド。
【請求項8】
遮光スラットの少なくとも太陽光が直接あたる面が高反射率になるように鏡面加工したことを特徴とした請求項6又は請求項7に記載の遮光・熱線遮蔽光拡散両用スラット、及びそれらスラットからなるブラインド。
【請求項9】
窓全面に取り付けられたヘッドボックス内にモータを内蔵して自動で昇降する2台以上のブラインド群において、ブラインド同士の端部近傍と、前記複数のヘッドボックス同士の端部近傍が互いに重なるように配置され、それぞれのヘッドボックスの一端側に電源受給用のプラグが配設され、他端側に電源供給用のコネクタが配設され、ブラインド同士が電気的に連結されることを特徴としたブラインドシステム。
【請求項10】
窓全面に請求項1又は請求項2又は請求項3又は請求項4又は請求項5又は請求項6又は請求項7又は請求項8又は請求項9に記載のブラインドが配置され、部屋内部に個別に照度センサーを内蔵した自動照度制御機能を有する照明装置が配置され、部屋内部に採光された外光と照明装置からの照射光全体を、照明装置1台毎に、照度制御することを特徴とした照明制御システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−2224(P2013−2224A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136962(P2011−136962)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(391001457)アイリスオーヤマ株式会社 (146)
【Fターム(参考)】