説明

熱膨張性グラフェン(intumescentgraphene)を伴うポリマー複合材

本発明のポリマー組成物は、有機ポリマー及びナノグラフェンを含む難燃性組成物である。好適な有機ポリマーには、ポリオレフィン及びポリビニルクロリドなどのポリマーが含まれる。好ましくは、ナノグラフェンは約1000:1以上のアスペクト比を有しなければならず、かつ、100m/グラム(窒素表面吸収面積)以上である表面積を有しなければならず、かつ、膨張させられなければならない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリマー複合材に関する。具体的には、本発明は難燃性のポリマー複合材に関する。
【背景技術】
【0002】
多くのポリマー複合材用途のためには、難燃性性能が依然として非常に重要な問題である。物理的特性、熱伝導性及び電気伝導性などの特性と一緒にされるときには特に、難燃性は達成困難であることが多い。難燃性性能が、様々な用途において、例えば、床材、建築材料及び建設材料、配管、ワイヤ、ケーブル、並びに、運搬用表面(採鉱用のコンベヤーベルトを含む)などでは特に非常に重要である。熱伝導性及び電気伝導性が、電磁遮蔽又は高周波遮蔽を要求する用途では非常に重要である。
【0003】
難燃剤技術では、3つの基本的な取り組みがワイヤ及びケーブルにおいて広範囲に適用されている:(1)気相難燃剤、(2)吸熱的難燃剤、及び、(3)チャー形成(char-forming)難燃剤。
【0004】
気相難燃剤は燃焼熱(ΔH)を低下させ、これにより、不完全燃焼を、ラジカルを様々なプロセスで消滅させることによって生じさせる。欠点の1つが、気相難燃剤(例えば、ハロゲン化合物又はホスファート化合物)の環境問題の可能性である。
【0005】
吸熱的難燃剤は熱を炎から取り去る。吸熱的難燃剤はHOの吸熱的放出により気相及び凝縮相において機能し、その結果、ポリマー系が冷やされ、気相が希釈される。しかしながら、吸熱的難燃剤は大きい負荷量(例えば、30重量%〜50重量%)を必要とし、このことは機械的特性に対する負の影響をもたらす。吸熱的難燃剤が典型的には、金属水和物(metal hydrate)(例えば、アルミナ三水和物(ATH)及び水酸化マグネシウムなど)から得られる。
【0006】
チャー形成難燃剤は凝縮相において作用し、これにより、下にあるポリマーのための断熱と、質量輸送バリアとをもたらし、そしてまた、燃料が気相に逃散することを防止するか、又は遅らせる。チャー形成難燃剤もまた、大きい負荷量(20重量%〜50重量%)を必要とし、このことはポリマー系の機械的特性に対する負の影響をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そのようなものとして、(1)より低い充填剤レベルを有する難燃性組成物の酸素指数を増大させ、(2)UL94水平燃焼試験における均一な熱膨張性チャー(intumescent chars)の形成によって明らかにされるような改善された自己消火挙動を有する組成物を提供し、かつ、(3)コーン熱量計試験によって測定されるような平均発熱速度を低下させることが求められている。ポリマー複合材を構成する添加された難燃剤は、(1)非毒性であり、(2)重金属を全く有さず、(3)ハロゲン非含有であり、(4)水及び他の溶媒に不溶性であり、(5)熱源にさらされるときには改善された煙放出及び毒性ガス放出を有し、かつ、(6)気相難燃剤及び吸熱的難燃剤と相乗的に働くということもまた求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のポリマー組成物は有機ポリマー及びナノグラフェン(nanographene)を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
好適な有機ポリマーには、ポリオレフィン及びポリビニルクロリドなどのポリマーが含まれる。好適なポリオレフィンポリマーには、エチレンポリマー、プロピレンポリマー及びそれらのブレンド混合物が含まれる。
【0010】
エチレンポリマーは、その用語が本明細書中で使用される場合、エチレンのホモポリマー、或いは、エチレンと、小さい割合の、3個〜12個の炭素原子(好ましくは4個〜8個の炭素原子)を有する1つ又はそれ以上のα−オレフィンと、場合によりジエンとのコポリマー、或いは、そのようなホモポリマー及びコポリマーのブレンド混合物である。混合物は、機械的なブレンド混合物又はイン・サイチュでのブレンド混合物が可能である。α−オレフィンの例が、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン及び1−オクテンである。ポリエチレンはまた、エチレン及び不飽和エステル(例えば、ビニルエステル(例えば、ビニルアセタート、或いは、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル)など)のコポリマー、エチレン及び不飽和酸(例えば、アクリル酸など)のコポリマー、又は、エチレン及びビニルシラン(例えば、ビニルトリメトキシシラン及びビニルトリエトキシシラン)のコポリマーが可能である。
【0011】
ポリエチレンは均一型又は不均一型が可能である。均一ポリエチレンは通常、1.5〜3.5の範囲での多分散性(Mw/Mn)と、本質的に一様なコモノマー分布とを有しており、かつ、示差走査熱量計によって測定されるようなただ1つの、しかも、比較的低い融点によって特徴づけられる。不均一ポリエチレンは通常、3.5を超える多分散性(Mw/Mn)を有しており、一様なコモノマー分布を有していない。Mwは重量平均分子量として定義され、Mnは数平均分子量として定義される。
【0012】
ポリエチレンは密度を0.860グラム/立方センチメートル〜0.960グラム/立方センチメートルの範囲に有することができ、好ましくは密度を0.870グラム/立方センチメートル〜0.955グラム/立方センチメートルの範囲に有することができる。ポリエチレンはまた、メルトインデックスを0.1グラム/10分〜50グラム/10分の範囲に有することができる。ポリエチレンがホモポリマーであるならば、そのメルトインデックスが好ましくは、0.75グラム/10分〜3グラム/10分の範囲にある。メルトインデックスは、ASTM D−1238(条件E)に従って求められ、190℃及び2160グラムで測定される。
【0013】
低圧プロセス又は高圧プロセスにより、ポリエチレンを製造することができる。ポリエチレンは、従来の技術によって、気相プロセスで、又は、液相プロセス(すなわち、溶液プロセス又はスラリープロセス)で製造することができる。低圧プロセスが典型的には、1000ポンド/平方インチ(「psi」)よりも低い圧力で行われ、これに対して、高圧プロセスが典型的には、15,000psiを超える圧力で行われる。
【0014】
これらのポリエチレンを調製するための典型的な触媒系には、マグネシウム/チタンに基づく触媒系、バナジウムに基づく触媒系、クロムに基づく触媒系、メタロセン触媒系及び他の遷移金属触媒系が含まれる。これらの触媒系の多くは、チーグラー・ナッタ触媒系又はフィリップス触媒系と呼ばれることが多い。有用な触媒系には、クロム又はモリブデンの酸化物をシリカ−アルミナ担体表面で使用する触媒が含まれる。
【0015】
有用なポリエチレンには、高圧プロセスによって作製されるエチレンの低密度ホモポリマー(HP−LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、極低密度ポリエチレン(ULDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)及びメタロセンコポリマーが含まれる。
【0016】
高圧プロセスは、典型的にはフリーラジカルにより開始される重合であり、管状リアクター又は撹拌型オートクレーブにおいて行われる。管状リアクターでは、圧力が25,000psi〜45,000psiの範囲内にあり、温度が200℃〜350℃の範囲にある。撹拌型オートクレーブでは、圧力が10,000psi〜30,000psiの範囲にあり、温度が175℃〜250℃の範囲にある。
【0017】
エチレン及び不飽和エステル又は不飽和酸から構成される様々なコポリマーが周知であり、これらのコポリマーは従来の高圧技術によって調製することができる。不飽和エステルは、アルキルアクリラート、アルキルメタクリラート又はビニルカルボキシラートが可能である。アルキル基は1個〜8個の炭素原子を有することができ、好ましくは1個〜4個の炭素原子を有することができる。カルボキシラート基は2個〜8個の炭素原子を有することができ、好ましくは2個〜5の炭素原子を有することができる。エステルコモノマーに起因すると考えられるコポリマーの部分が、コポリマーの重量に基づいて5重量パーセント〜50重量パーセントの範囲で可能であり、好ましくは15重量パーセント〜40重量パーセントの範囲である。アクリラート及びメタクリラートの例が、エチルアクリラート、メチルアクリラート、メチルメタクリラート、t−ブチルアクリラート、n−ブチルアクリラート、n−ブチルメタクリラート及び2−エチルヘキシルアクリラートである。ビニルカルボキシラートの例が、ビニルアセタート、ビニルプロピオナート及びビニルブタノアートである。不飽和酸の例には、アクリル酸系化合物又はマレイン酸系化合物が挙げられる。
【0018】
エチレン/不飽和エステルコポリマー又はエチレン/不飽和酸コポリマーのメルトインデックスが0.5グラム/10分〜50グラム/10分の範囲で可能であり、好ましくは2グラム/10分〜25グラム/10分の範囲である。
【0019】
エチレン及びビニルシランのコポリマーもまた使用することができる。好適なシランの例がビニルトリメトキシシラン及びビニルトリエトキシシランである。そのようなコポリマーは典型的には、高圧プロセスを使用して作製される。そのようなエチレンビニルシランコポリマーの使用が、水分架橋性の組成物が所望されるときには望ましい。場合により、水分架橋性の組成物を、ビニルシランがフリーラジカル開始剤の存在下でグラフト化されたポリエチレンを使用することによって得ることができる。シラン含有ポリエチレンが使用されるとき、配合物における架橋触媒(例えば、ジブチルスズジラウラート又はドデシルベンゼンスルホン酸)、或いは、別のルイス型又はブレンステッド型の酸触媒又は塩基触媒を含むこともまた望ましい場合がある。
【0020】
VLDPE又はULDPEは、エチレンと、3個〜12個の炭素原子(好ましくは3個〜8個の炭素原子)を有する1つ又はそれ以上のα−オレフィンとのコポリマーが可能である。VLDPE又はULDPEの密度が0.870グラム/立方センチメートル〜0.915グラム/立方センチメートルの範囲で可能である。VLDPE又はULDPEのメルトインデックスが0.1グラム/10分〜20グラム/10分の範囲で可能であり、好ましくは0.3グラム/10分〜5グラム/10分の範囲である。エチレン以外のコモノマーに起因すると考えられるVLDPE又はULDPEの部分が、コポリマーの重量に基づいて1重量パーセント〜49重量パーセントの範囲で可能であり、好ましくは15重量パーセント〜40重量パーセントの範囲である。
【0021】
第3のコモノマーを含むことができ、例えば、別のα−オレフィン又はジエン、例えば、エチリデンノルボルネン、ブタジエン、1,4−ヘキサジエン又はジシクロペンタジエンなどを含むことができる。エチレン/プロピレンのコポリマーは一般にはEPRと呼ばれ、エチレン/プロピレン/ジエンのターポリマーは一般にはEPDMと呼ばれる。第3のコモノマーはコポリマーの重量に基づいて1重量パーセント〜15重量パーセントの量で存在することができ、好ましくは1重量パーセント〜10重量パーセントの量で存在する。コポリマーは、エチレンを含めて2つ又は3つのコモノマーを含有することが好ましい。
【0022】
LLDPEには、VLDPE、ULDPE及びMDPE(これらもまた線状である)が含まれ得るが、LLDPEは一般には、密度を0.916グラム/立方センチメートル〜0.925グラム/立方センチメートルの範囲に有する。LLDPEは、エチレンと、3個〜12個の炭素原子(好ましくは3個〜8個の炭素原子)を有する1つ又はそれ以上のα−オレフィンとのコポリマーが可能である。メルトインデックスが1グラム/10分〜20グラム/10分の範囲で可能であり、好ましくは3グラム/10分〜8グラム/10分の範囲である。
【0023】
どのようなポリプロピレンでも、これらの組成物において使用することができる。例には、プロピレンのホモポリマー、プロピレンと、他のオレフィンとのコポリマー、及び、プロピレンと、エチレンと、ジエン(例えば、ノルボルナジエン及びデカジエン)とのターポリマーが挙げられる。加えて、ポリプロピレンを他のポリマー(例えば、EPR又はEPDMなど)とともに分散させることができ、又はブレンド混合することができる。ポリプロピレンの様々な例が、POLYPROPYLENE HANDBOOK: POLYMERIZATION, CHARACTERIZATION, PROPERTIES, PROCESSING, APPLICATIONS、3〜14、113〜176(E.Moore,Jr.編、1996年)に記載される。
【0024】
好適なポリプロピレンが、TPE、TPO及びTPVの成分である場合がある。そのようなポリプロピレン含有TPE、ポリプロピレン含有TPO及びポリプロピレン含有TPVを本適用において使用することができる。
【0025】
好適なポリビニルクロリドポリマーが、PVCホモポリマー、PVCコポリマー、ポリビニルジクロリド(PVDC)、並びに、ビニルクロリドと、ビニルコモノマー、アクリル系コモノマー及び他のコモノマーとのポリマーからなる群より選択される。
【0026】
ナノグラフェンはアスペクト比を約100:1以上の範囲に有しなければならず、好ましくは約1000:1以上の範囲に有しなければならない。さらに、ナノグラフェンは、約40m/グラム(窒素表面吸収面積)以上である表面積を有しなければならない。好ましくは、表面積は、約100m/グラム(窒素表面吸収面積)以上である。好ましくは、ナノグラフェンは膨張させられる(expanded)。
【0027】
グラフェンへの経路がいくつかある。1つが、部分的酸化を混合された硫酸/硝酸において行いながら、黒鉛をインターカレーション処理することである。別の1つが、黒鉛を高濃度の酸において強力な酸化剤で酸化することである。酸化された黒鉛、黒鉛酸化物又は石墨酸が、その後、化学的プロセス又は熱プロセスによって、或いは、マイクロ波支援加熱プロセスによりグラフェンに還元される。
【0028】
ポリマー組成物はさらに、他の難燃性充填剤(例えば、金属水和物充填剤、ホスファート化合物など)及び他の難燃性添加物を含むことができる。好適な難燃剤は金属水酸化物及びホスファートを含む。好ましくは、好適な金属水酸化物化合物には、三水酸化アルミニウム(これはまた、ATH又はアルミニウム三水和物として公知である)及び水酸化マグネシウム(これはまた、二水酸化マグネシウムとして公知である)が含まれる。他の遅炎性金属水酸化物が当業者には公知である。それらの金属水酸化物の使用は本発明の範囲内であると見なされる。
【0029】
金属水酸化物の表面を、シラン、チタン酸塩、ジルコン酸塩、カルボン酸及び無水マレイン酸グラフト化ポリマーを含めて、1つ又はそれ以上の物質により被覆することができる。好適な被覆には、米国特許第6,500,882号に開示される被覆が含まれる。平均粒子サイズが0.1マイクロメートル未満から50マイクロメートルにまで及び得る。場合により、ナノスケールの粒子サイズを有する金属水酸化物を使用することが望ましい場合がある。金属水酸化物は天然物又は合成物であり得る。
【0030】
好ましいホスファートには、エチレンジアミンホスファート、メラミンホスファート、メラミンピロホスファート、メラミンポリホスファート及びアンモニウムポリホスファートが含まれる。
【0031】
他の好適な非ハロゲン化難燃性添加物には、赤リン、シリカ、アルミナ、チタン酸化物、カーボンナノチューブ、タルク、粘土、有機修飾粘土、シリコーンポリマー、炭酸カルシウム、ホウ酸亜鉛、三酸化アンチモン、ケイ灰石、雲母、ヒンダードアミン系安定剤、オクタモリブデン酸アンモニウム、オクタモリブデン酸メラミン、フリット、中空ガラス微小球、熱膨張性化合物及び発泡性黒鉛が含まれる。好ましくは、シリコーンポリマーがさらなる難燃性添加物である。
【0032】
好適なハロゲン化難燃性添加物には、デカブロモジフェニルオキシド、デカブロモジフェニルエタン、エチレン−ビス(テトラブロモフタルイミド)及びデクロランプラス(dechlorane plus)が含まれる。
【実施例】
【0033】
難燃剤適用におけるナノ分散された膨張グラフェンの効果を調べるために、市販されている外被配合物を選択した。これは、この配合物が、PVC外被化合物との比較において物理的特性及び低い密度の良好なバランスを提供する、主要なポリマーマトリックスとしての線状低密度ポリエチレン(LLDPE)に基づいているからである。膨張グラフェンを加えて、LLDPEとのマスターバッチを作製し、このマスターバッチを、180℃及び30rpmでBrabenderミキサーにおいて、膨張グラフェンが8重量パーセントである外被配合物にした。15重量パーセントのKetjenブラックを含有する商用サンプルのコントロールを使用した。
【0034】
例示された組成物はともに、0.70重量パーセントのAgerite MA(重合された1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリンの酸化防止剤)及び0.15重量パーセントのMB1000(ポリマー加工助剤)を含有した。DFH2065は、0.918g/cmの密度を有する、メルトインデックスが0.7の線状低密度ポリエチレンである。グラフェンを、DFH2065マスターバッチにおける20重量パーセントのGrafTech GT120を使用して調製した。DFNA−1477NTは、0.905g/cmの密度を有する、メルトインデックスが0.9の超低密度ポリエチレンである。
【0035】
【表1】

【0036】
難燃性試験
酸素指数試験(ASTM D2863)は、プラスチック試験片における有炎燃焼を維持する酸素/窒素混合物における酸素の最小濃度を求めるための試験である。酸素指数試験サンプルが、125ミル厚の板状試験片として成形される。サンプルの大きさは、長さが70mmであり、幅が5mmである。試験サンプルはガラス煙突の中に垂直に配置され、酸素/窒素の環境が煙突の底部からの流れにより確立される。試験サンプルの上端に点火され、流れにおける酸素濃度が、炎がもはや維持されなくなるまで低下させられる。(パーセントでの)酸素指数が、試験された最終酸素濃度から計算される。
【0037】
この酸素指数燃焼試験を室温で行って、GT120を伴うDHDA7708と、Ketjenブラックを伴うDHDA7708との正確な相対的可燃性を測定した。GT120を伴うDHDA7708の酸素指数は25であり、一方、Ketjenブラックを伴うDHDA7708の酸素指数は23であった。GT120を伴うDHDA7708配合物は、わずかに8重量パーセントの充填剤を含有するだけであるが、15重量パーセントのカーボンブラックを含有するKetjenブラックを伴うDHDA7708よりも大きい酸素指数をもたらした。
【0038】
GT120を伴うDHDA7708の重要な特筆すべき燃焼挙動が、GT120を伴うDHDA7708は着火後の火炎伝播を25〜28に近い酸素指数範囲で阻害するようであったということであった。しかしながら、Ketjenブラックを伴うDHDA7708は着火し、垂直方向下向きでの大きい燃焼速度を伴うロウソク様の燃焼挙動を示した。酸素指数試験の後、GT120を伴うDHDA7708は、その形状を、チャーを形成することによって維持し、一方、Ketjenを伴うDHDA7708は最少量の残渣とともに燃え尽きた。
【0039】
Underwriters Laboratory 94HB(水平燃焼)試験のための試験基準が、燃焼速度が3インチ/分未満である、3mm厚の試験片での遅い水平燃焼であるか、又は、燃焼を5インチの印までに止めさせることである。H−Bと評価される材料は、「自己消化性」であると見なされる。試験では、厚さが125ミルである0.5”×5”の試験片が使用され、試験片は一方の端部で水平配置で保持され、印が自由端から1”及び5”の所にある。炎が、30秒間、又は、炎が1”の印に達するまで自由端に当てられる。燃焼が継続するならば、継続時間が、1”の印と、5”の印との間で計られる。燃焼が5”の印までに止まるならば、燃焼時間と、2つの印の間における損傷した長さとが記録される。材料は、その材料が3”/分未満の燃焼速度を有するならば、又は、燃焼を5”の印までに止めるならば、UL94HBであると分類される。
【0040】
Ketjenを伴うDHDA7708は着火し、125ミル厚の試験片での遅い水平燃焼で燃え続け、その結果、これは、UL94H−Bの格付けについては不合格であった。しかしながら、GT120を伴うDHDA7708は、UL94H−Bの条件のもとでは着火せず、UL94H−Bの格付けに合格した。
【0041】
コーン熱量計試験:試験用試験片を10kW/m〜100kW/mの熱流束で照射するために円錐台型ヒーター素子を使用した場合、コーン熱量計は発熱速度を測定し、また、着火挙動、質量減少、及び、試験用試験片の持続した燃焼の期間中における煙の発生に関する詳細な情報をもたらす。
【0042】
コーン熱量計試験における熱流束は35kW/mであった。GT120を伴うDHDA−7708は、ほぼ完全にその質量を失った、Ketjenブラックを伴うDHDA7708との比較において、わずかに膨張した均質な泡状チャー構造を生じさせた。
【0043】
コーン熱量計試験は、表2に示されるように、Ketjenブラックを伴うDHDA7708との比較において、より遅い着火時間、並びに、より少ない放出された煙、より低い比質量減少率、並びに、より低い平均発熱速度によって働いた、GT120を伴うDHDA7708の難燃性機構についての肯定的な証拠を示した。平均最大発熱速度と、着火時間との比率により、炎が拡がりつつある表面から生じる発熱が近似的に説明されると考えられる。データは、GT120を伴うDHDA7708が、炎が拡がりつつある表面から生じる発熱を低下させることを示唆する。
【0044】
最大発熱速度が、GT120を伴うDHDA−7708については、Ketjenブラックを伴うDHDA7708よりも大きかった。
【0045】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.ポリオレフィン及びポリビニルクロリドからなる群より選択される有機ポリマー、及び
b.ナノグラフェン
を含む難燃性組成物。
【請求項2】
前記有機ポリマーが、エチレンポリマー及びプロピレンポリマーからなる群より選択されるポリオレフィンポリマーである、請求項1に記載の難燃性組成物。
【請求項3】
前記有機ポリマーが、PVCホモポリマー、PVCコポリマー、ポリビニルジクロリド(PVDC)、並びに、ビニルクロリドと、ビニルコモノマー、アクリルコモノマー及び他のコモノマーとのポリマーからなる群より選択されるポリビニルクロリドである、請求項1に記載の難燃性組成物。
【請求項4】
前記ナノグラフェンが100:1以上のアスペクト比を有する、請求項2又は3に記載の難燃性組成物。
【請求項5】
前記ナノグラフェンが、40m/グラム(窒素表面吸収面積)以上である表面積を有する、請求項2から4のいずれか一項に記載の難燃性組成物。
【請求項6】
前記ナノグラフェンが膨張させられている、請求項2から5のいずれか一項に記載の難燃性組成物。

【公表番号】特表2011−526955(P2011−526955A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516755(P2011−516755)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/049020
【国際公開番号】WO2010/002770
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】