説明

熱転写リボンロール

【課題】 ニアエンドマークを付設する熱転写リボンにおいて、リボン巻軸に捲回された際に該ニアエンドマークがブロッキング等の不具合を誘発しないようにした熱転写リボンおよびそれをリボン巻軸に捲回した熱転写リボンロールを提案すること。
【解決手段】 熱転写リボン上の終端付近にニアエンドマークを付設し、該熱転写リボンをリボン巻軸にロール状に捲回したときに、該ニアエンドマークが熱転写リボン上の印字領域に重ならないよう位置決めして設けられたものであることなどを特徴とする熱転写リボンロール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はニアエンドマークが付設された熱転写リボンロールに関し、さらに詳しくは、リボン巻軸に捲回された際に該ニアエンドマークが当接した熱転写リボンの転写性低下等の不具合を起こさないようにした熱転写リボンロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、熱転写リボンにおいて、その終端部近傍にニアエンドマークを設け、これを各種センサーで検知することによって、印刷動作を制御し、印刷可能残存量を通知し、被印字媒体の途中でリボン切れを発生しないようにしたものがある。この場合、印刷可能残存量を確保するために、センサー検知されるニアエンドマークは熱転写リボンの終端部近傍であって、終端からある程度の印字枚数を確保できる量を残した位置の熱転写インク層上、またはその背面に設け、ニアエンドマークのある部分がセンサーを通過してもある程度の量の印字が可能なように構成されている。
【0003】
熱転写リボンのニアエンドマークとしては、電気的、光学的、磁気的に検知可能な検知マークなどを印刷により設けるものが知られているが、単に、ニアエンドマークをインク面に設けると印字不良を起こす原因になる。インク面にニアエンドマークを設ける場合、印字不良になりにくいよう成分の調整等を行うが、それでも大なり小なり印字感度に影響を及ぼしてしまう。また、インクの色調にも影響があり、黒色以外の色調の場合は特に顕著にその色調の変化を伴う。したがって、ニアエンドマークを薄くしたり、小さく付設したりすることが必要であるが、その場合、検知感度が劣る結果になるなどの問題があった。
【0004】
また、印刷によるニアエンドマークは、光学的検知等に用いられることが多いが、簡易に設けることができる半面、バラツキを生じやすく、センサーがうまく働かないことがある。そこで、印刷を厚くし、該バラツキを吸収したものもあるが、上記の印字感度および色調への問題が大きくなるほか、印刷の厚みによる段差が大きくなり、その段差によるブロッキングの発生が見られることもあった。
【0005】
また、当該ブロッキングを防止するため、ニアエンドマーク印刷成分の調整を施したものがある。一例を挙げると、印刷を施す白色インク中に粒子状ワックスを配合したものを、終端部の所定部位にベタ状に全面塗布したり、終端部のエッジ部分に長手方向に塗布したり、終端部にゼブラ状に塗布した形状のニアエンドマークがあり、特開平10−157308号公報などに提案されている。当該構成により、海島構造のニヤエンドマークが得られ、経時ブロッキング安定性の改善を試みるというものである。
しかしながら、当該熱転写記録媒体は、ブロッキング防止効果はある程度あるものの、接触面積を減らすことで課題解決しようとするその構成上、ある程度の厚みを要し、インク塗布面の段差は無くならず、抜本的解決にはならないものである。また、使用する粒子の大きさには限りがあり、巨大粒子を配合すると、そのことが直接的に起因してブロッキングを生じてしまうこともある。したがって、ニアエンドマークのインク塗布厚には制約があり、該技術では検知感度とブロッキング防止の両立は達成できていない。
【0006】
ニヤエンドマークを施す手段として印刷インクの代わりに金属蒸着膜または金属蒸着部材を所定の位置に貼着したものなどが使用されている。このようなものは、光学的な検知方法に好ましく用いられ、光学的検知以外の電気的、磁気的な検知方法にも用いられる利点がある上、確実に光を遮断したり反射したりすることができるなど、検知感度としては十分な利点が多い。しかしながら、金属蒸着によるものはその性質上、金属の高熱伝導率により周辺温度の影響を受けやすく、また、別の基材上に金属蒸着膜を形成したものを貼着したニアエンドマークなどにおいてはエッジが鋭くなりやすいことから、巻装した際、段差部分に巻装圧力が集中し、ブロッキングを発生することが多々あり、その問題を解決する必要があった。
【0007】
さらに、特開平11−105441号公報などには、ニアエンドマーク端部に生ずる段差の問題を解決すべく、一旦塗工した熱転写インク層を部分的に除去し、その上にニヤエンドマークを付設したものもある。その際、インク除去が不十分であると、ニアエンドマーク付設に不具合を生ずる。さらに、例えば、当該技術としては最も一般的に用いられている熱による溶融除去を試みると、基材に損傷を及ぼすおそれがあり、薄膜基材を用いることができにくく、その対策を要する上、その後、機械的強度が低下した同じ部分にニアエンドマークを、例えば熱的手段、具体的にはホットスタンプ法などで設けると、さらに損傷が進行し、リボン切断のおそれもあるものであった。また、インク除却が不十分なまま、粘着テープ型のニアエンドマークなどを貼着すると、貼着面が粗雑であったり、定着性の悪い状態であったりと不適切なままであることがあり、十分な粘着力が得られず、ニアエンドマーク脱落のおそれもあるものであった。
【0008】
一方、3色以上の色材層を面順次に複数塗布したものに各印字領域の検知マークとしてニアエンドマークと類似するマークを配設したものが特開平8-34173号公報に提案されている。これは、3色以上の色材層セット毎に当該色調を検知する検知マークを設けるというもので、各色材層領域毎に検知マークを設けるものと比して検知マークの存在数を減じることができるので、ブロッキング等の課題解決が図られるというものである。当該公報には印字領域間に検知マークを配する記載があるが、色材層と重なっているのか、熱転写インクを塗工していない部分に設けてあるのか不明で、重ねて設けた際には、やはりそのマーク部分の厚みによる段差が生じ、検知マークの絶対数減少という確率統計的な効果が得られるに過ぎない。また、熱転写インクを塗工していない部分に設けてあったとしても、上記と同様に、インク層が存在しないことによるブロッキング抑制作用のみで、当接する熱転写インク層の印字性能低下は防止できにくいものであった。
【0009】
【特許文献1】特開平10−157308号公報
【特許文献2】特開平11−105441号公報
【特許文献3】特開平8-34173号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ニアエンドマークを付設する熱転写リボンを巻軸に捲回したものであって、リボン巻軸に捲回された際に該ニアエンドマークが重なった熱転写インク層の転写性低下等の不具合を誘発しないようにした熱転写リボンロールを提案することを目的とし、そのような課題の解決手段を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するために、熱転写リボンロールについて、ニアエンドマークを熱転写リボン上の終端付近の印字領域に設けるものであって、熱転写リボンをリボン巻軸にロール状に捲回したときに、印字領域に重ならないよう位置決めして設けたことなどを特徴とする。
すなわち、本発明は、
「1.複数のインク層を面順次に繰り返し塗工した熱転写リボン上の終端付近のインク面および/または背面の印字領域に設けられたニアエンドマークを有する熱転写リボンをリボン巻軸にロール状に捲回した熱転写リボンロールであって、該熱転写リボンをリボン巻軸にロール状に捲回したときに、該ニアエンドマークが熱転写リボン上の印字領域に重ならないよう位置決めして設けられたものであることを特徴とする、熱転写リボンロール。
2.ニアエンドマークが熱転写リボン上の熱転写インク層側に少なくとも設けられ、熱転写リボンをリボン巻軸にインク面を外側にロール状に捲回したときに、ニアエンドマークが熱転写リボンの背面側に当接するよう設けられたものであることを特徴とする、第1項に記載の熱転写リボンロール。
3.熱転写リボンが、インク層間未塗工部分を設けつつ複数のインク層を面順次に繰り返し塗工したものであることを特徴とする、第1項または第2項の何れかに記載の熱転写リボンロール。」に関する。
【発明の効果】
【0012】
上記構成によれば、熱転写リボンをリボン巻軸に捲回した際に、ある程度の厚みを有するニアエンドマークを用いても、リボンのブロッキングを防止することができ、また、ニアエンドマークが当接した熱転写リボンの転写性低下等の不具合を誘発することもない熱転写リボンロールを得ることができる優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
熱転写リボンにニアエンドマークを付設する上では、印字性能低下の防止などの観点から、インクリボンの側端部近傍の僅かな隙間に長手方向に渡り、設けられるものが多い。しかし、ニアエンド検知の面では必ずしも好ましいとは言えず、検知洩れがあると、リボン破断や制御系損傷のおそれもある。そこで、本発明においては、ニアエンドの検知洩れを極力無くす観点等によりニアエンドマークをある程度大きくとる。すなわち印字領域に渡り、ニアエンドマークを設けることにより確実なニアエンド検知を実現するものである。
【0014】
当該ニアエンドマーク部分はニアエンドマークを介してそのまま印字したのでは、印字不良が発生するおそれがあるので、検知後、そのまま印字せず、当該熱転写インク部分または繰り返し単位のインクセット単位分をスキップさせる。すなわち本発明の熱転写リボンロールは、熱転写リボンロールとニアエンドマーク検知手段と印字ヘッドとを少なくとも有し、ニアエンド検知後、該ニアエンドマーク部分を印字ヘッドからスキップさせるスキップ手段を有する印字システムに使用されることが好ましい。なお、スキップ手段を要せずとも印字不良を防止する手段のあるものについてはこの限りではない。
【0015】
本発明に用いる熱転写リボンは、複数のインク層を面順次に繰り返し塗工し、かつニアエンドマークを有する熱転写リボンをリボン巻軸にロール状に捲回した熱転写リボンロールであって、該ニアエンドマークは熱転写リボン上の終端付近のインク面および/または背面の印字領域に設けるものである。
さらに、当該構成では、インクリボン捲回時、ニアエンドマークが当接した熱転写リボンがニアエンドマークにより損傷を受けているおそれがあるので、ニアエンド検知後、該ニアエンドマーク部分を印字ヘッドからスキップさせるスキップ手段を有する印字システムに使用されると好ましい組合せとなる。
【0016】
また、本発明に用いる熱転写リボンロールは、熱転写リボンをリボン巻軸にロール状に捲回したときに、熱転写リボンのニアエンドマーク部分が、内側および/または外側に捲回された熱転写リボンの印字領域と重ならないよう設けられたものであることを特徴とする。ニアエンドマーク部分が熱転写リボンと当接する際、その内側および外側、両者とも効果はあるが、外側の時に効果が大きくなる。つまり、外側にあたる印字領域部分は印字により熱転写インクリボンが消費されていく際に、その構成上、ニアエンドマークより先に印字ヘッドに到達するので、ニアエンド検知により当該部分をプリンタの制御系によりスキップするなどの操作が不可能であるからである。すなわち、本発明の構成のように、ニアエンドマークと当接した熱転写リボン部分が印字領域と重ならないように構成されたものであれば、当該部分を印字することはないので、印字不良が発生することはないのである。
【0017】
一方、内側であった場合には、ニアエンドマーク検知後に印字ヘッドに到達する順序になるので、ニアエンドマークをスキップさせる機構を設けてあれば、同様の制御により、当該部分をスキップさせることで、たとえ、重なる部分が印字領域であっても印字不良が回避可能である。制御系により回避可能であっても、内側についても該印字領域と重ならない位置に構成されれば、当該回避手段を設けることなく、使用できるのでより好ましい。
【0018】
また、本発明に用いる熱転写リボンロールは、ニアエンドマークが熱転写リボン上の熱転写インク層側に少なくとも設けられ、熱転写リボンをリボン巻軸にロール状に捲回したときに、ニアエンドマークが熱転写リボンの背面側に当接するよう設けられたものであると、効果が大きくなる。
【0019】
さらに、熱転写リボンが、インク層間未塗工部分を設けつつ複数のインク層を面順次に繰り返し塗工したものであると、ニアエンドマークをインク層間未塗工部分に当接するよう構成することも可能で、ニアエンドマークの段差を少なからず吸収できるので、より好ましい。
【0020】
すなわち、本発明の技術思想は、熱転写リボンをリボン巻軸に捲回した際、ニアエンドマークがその外側および/または内側に位置する印字領域と面積的に重ならないよう構成された熱転写リボンロールである。
【0021】
以下に、本発明の熱転写リボンの例を挙げ、図面により本発明を具体的に説明する。
図1は、本発明の熱転写リボンの一例を示す斜視図であり、基材上に熱転写インク層(2)を面順次に繰り返し設けた熱転写リボン(1)がインク面を外側にして、リボン巻軸(3)にロール状に捲回されている。
そして、該熱転写リボン(1)上の終端付近のインク面の印字領域に渡る位置にアルミ蒸着シートよりなるニアエンドマーク(4)が貼着してある。さらに、該ニアエンドマーク(4)は、熱転写インクリボンを捲回した際に印字領域と重ならないように、その際のリボン外径分であるLの長さ分長手方向に離間した位置に設けてある。
【0022】
図2は、図1の熱転写リボンをニアエンドマーク部分(4)付近まで捲回した状態を示す斜視図であり、さらに捲回するとニアエンドマーク(4)と熱転写インク層の印字領域(5)とが重ならないように構成されている。
【0023】
熱転写リボン(1)のニアエンドマーク(4)としては、電気的、光学的、磁気的に検知可能な検知マークにより構成することができ、基材の一面にアルミ蒸着を施し、裏面に粘着層を設けたアルミ蒸着テープは、全厚を薄くしつつ、確実に検知され得るので、好ましい。その他、基材の一面に黒色、白色、金色などの着色層を設け、裏面は同様に粘着層としたものも挙げられる。さらに、取扱いに困難性を有するが、金属蒸着膜自体を箔状にしたものなどは、全厚をかなり薄くすることができるので、直接、接着等して設けてもかまわない。また、印刷によるニアエンドマーク(4)は、バラツキが生じやすくセンサーがうまく働かないことがあり、検知感度を向上させるためにある程度の塗布厚を必要とする場合があるものの、検知性能上利用可能であれば、着色インキ層を直接塗布してもかまわない。
【0024】
ニアエンドマーク(4)の設置は、プリンタの印字ヘッドの汚染や破損を極力低減すべく、基材上のインク面に設けるのが好ましい。基材上の背面に設ける場合、印字領域外の端部付近に設ける方法や、ニアエンド検知後、当該ニアエンドマーク部分をスキップ制御することで印字ヘッドを保護することで問題回避することも不可能ではない。
このようなヘッド汚染や破損の問題は、印刷インクによりニアエンドセンサーマークを配設した場合に発生するおそれが多く、金属蒸着フィルムからなるものを使用すれば、やや低減できる。しかしながら、一般的に、金属蒸着フィルムなどの熱伝導率が高く、ある程度厚みを有する部材を使用すると熱転写インク層の損傷の問題を発生させるおそれがあるので、本発明の熱転写インク層損傷防止効果の有用性が高くなり、好ましい使用態様となる。
【0025】
ニアエンドマーク(4)は、熱転写インク層(2)との関係によりその構成を考慮する必要がある。熱転写インク層(2)の層厚および熱転写インク層自体のインク成分による耐損傷性能に応じて、ニアエンドマーク(4)の材質、構成、全厚を設計するのが好ましい。
【0026】
本発明の熱転写リボン(1)は図1ないし図2に示したように、リボン進行方向に対し、単色ないし複数色の熱転写インク層(2)を、面順次に繰り返し塗工したり、図3に示したように、リボン進行方向に対し、単色ないし複数色の熱転写インク層(2)を、それぞれのインク層間に熱転写インク未塗工部分(6)を設けつつ、面順次にパターン塗りしたものなどが使用できる。
熱転写インク層上にはニアエンドマーク(4)を良好な検知感度を得るために熱転写インクリボン上の被印字領域であるリボン中央部に設けたり、リボン幅方向に短冊状に延ばした長方形、さらにはリボン幅一杯にベタ配設することにより設けられている。
【0027】
また、ニアエンドマーク(4)とインク層間未塗工部分(6)との距離を、面順次に形成した熱転写インク層(2)の長手方向の塗工長さと熱転写インク未塗工部分(6)との合計長と等しくし、ニアエンドマーク部分までリボンを捲回したときの外径とを等しく設計すれば、ニアエンドマーク(4)をインク層間未塗工部分(6)に付設し、さらに、次のインク層間未塗工部分(6)がリボンを捲回した際に、ニアエンドマーク(4)と当接し、ニアエンドマーク(4)の厚みによる段差を吸収するよう機能するので、相互作用により最適なインクリボン損傷防止効果を発揮するのでより好ましい。
【0028】
その他、本発明に使用可能な熱転写リボンの構成要素について述べる。
本発明に用いる支持体としては、従来公知の各種プラスチックフィルムなどが使用可能であるが、裏面に耐熱滑性層を設けた2.0〜20.0μm程度のフィルムなどが使用できる。画像転写時の熱感度や、解像度などの点から2.5〜7.0μmのポリエステルフィルムなどが好ましい。
【0029】
支持体の厚みが薄くなると、支持体自体の剛性が劣るようになり、巻装時にニアエンド
マークによって生じた段差等の影響を直接受けやすくなり、インクリボン損傷等のおそれが大きくなる傾向がある。そのような際、本発明の効果が顕著となり、支持体厚み2.5〜7.0μmの時、効果が大きくなり、比較的薄手の基材である2.5〜5.0μmの時、より好ましい組合せとなる。
【0030】
本発明に用いる各インク層の製造手段としては、構成物を水系または油系などの溶媒中に分散、溶解させ、インク層塗布液を調製し、グラビア、オフセットなどの塗工方法で所望の塗工厚に塗工し熱転写インク層を得ることができ、その構成成分としては、必要に応じて着色剤、ビヒクル、各種添加剤などが使用できる。
【0031】
使用する着色剤としては、カーボンブラック、酸化チタン、群青、クロム黄、カドミウム黄、ハンザイエロー、ジスアゾイエロー、パーマネントレッド、アリザリンレーキ、キナクリドンレッド、ベンズイミダゾロンレッド、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジオキサジンバイオレットなどの顔料や、オーラミン、ローダミンなどの染料、場合によっては昇華性染料などの1種または2種以上が利用できる。
【0032】
使用するビヒクルとしては、各種樹脂やワックスなどが使用できる。これらは単独でも併用しても配合可能である。また、本発明の熱転写リボンに用いる複数の熱転写インク層の各成分は、各層において異種の成分を用いることも可能であるし、同種の成分で構成することも可能である。
【0033】
使用する樹脂成分としては、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコー
ル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ケトン樹脂、テルペン樹脂、エチレンーメタクリル酸−アクリル酸コポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−エチルアクリレートコポリマー、ポリスチレン−ポリイソプレンコポリマー、ロジンおよびその誘導体、フェノール樹脂、石油系樹脂、キシレン樹脂等の熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0034】
使用するワックスとしては、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ミツロウ、カルナバワックス、ゲイロウ、モクロウ、ヌカロウ、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、エステルワックス、フィッシャートロプスワックスなどの天然または合成ワックス、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、フロメン酸、ベヘニン酸、ラウリン酸、マルガリン酸等の高級脂肪酸ワックス、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等のアミドワックスなどが挙げられる。
【0035】
本発明における各熱転写インク層の厚みは、0.5〜4.0μm程度が好ましいが、ニアエンドマークと当接する熱転写リボン部分がインク層間未塗工部分である場合には、ニアエンドマークの全厚との厚みの差が少ない方がインクリボン損傷防止効果が高くなるので、熱転写インク層の層厚および熱転写インク層自体のインク成分による耐損傷性能に応じて、その材質、構成、全厚を設計するのが好ましい。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0037】
実施例
(熱転写インク層の塗工)
図3に示したように、リボン進行方向に対し、黒インク(2−1)、透明カバーラップ(2−2)の2種の熱転写インク層(2)を、下記インク層成分にてそれぞれのインク層間に5mmの熱転写インク未塗工部分(6)を設けつつ、長手方向に95mmづつ面順次にパターン塗りし、本発明の熱転写リボン(1)の熱転写インク層(2)の塗工を行った。
その際、支持体として背面に耐熱滑性層を施した5μmのポリエステルフィルムを用い、該支持体の上にグラビアコーターを用い、塗工厚2μmとなるよう、熱転写インク層(2)を設けた。なお、塗工厚は電子顕微鏡にて観察し平均値を測定した。(以下同様)
【0038】
(黒色溶融熱転写インク層成分)
ポリエステル樹脂 63質量部
ポリエチレンワックス 15質量部
カーボンブラック 20質量部
分散剤 2質量部
(透明カバーラップ溶融熱転写インク層成分)
ポリエステル樹脂 50質量部
アクリル樹脂 50質量部
【0039】
(ニアエンドマークの形成)
その後、熱転写リボン(1)終端より黒インク(2−1)、透明カバーラップ(2−2)の2種の熱転写インク層(2)2セット分を確保した次のブロックのインク面に、PET基材に3×40mmのアルミ蒸着を施した全厚12μmのアルミ蒸着粘着テープを用いてニアエンドマーク(4)を形成した。
また、本実施例においては、直径12.7mm、巻軸長65mmのリボン巻軸(3)に同幅状にスリット加工しつつ、リーダーテープ(6)を介してインクリボン(1)をインク面を外側にして接合し、リボンを捲回するものとした。
【0040】
本実施例においては、熱転写インクリボンをさらに捲回したときに、印字領域以外の部分である、各インク層(2)間に設けられた面順次塗工の間隙がニアエンドマーク(4)と当接するようにニアエンドマーク(4)を熱転写インク層上の印字領域に渡って貼着し、インクリボン(1)を構成した。
【0041】
上記熱転写リボン(1)をリボン巻軸(3)に残りの熱転写リボン(1)を200m巻装し、熱転写リボンロールを作成した。
【0042】
比較例
実施例1において、ニアエンドマーク(4)と当接する部分を熱転写インク層の印字領域としたほかは実施例1と同様にして熱転写リボン(1)及び熱転写リボンロールを作成した。
【0043】
上記構成により、実施例は、リボン(1)を捲回した際に、ニアエンドマーク(4)と当接する熱転写リボンとの関係は、図4に示すが如く、両者重なり合い、最大限ニアエンドマーク(4)による熱転写インクリボン損傷の弊害を緩和することができた。(55℃/85%Rh/1Week)
【0044】
さらに、実施例の構成において、リボン巻軸の外径、ニアエンドマークの位置、熱転写インク層の処理等を調整することでニアエンドマークをインク未塗工部分に設け、熱転写リボンロールを作成することもでき、その際には、ニアエンドマーク(4)を設けた部分自体も熱転写インクが塗工されていない部分であることから、相互作用により、より厳しい環境条件下でも熱転写インクリボンの損傷を抑制することができる。(図示せず)
【0045】
一方、比較例では、同様の試験において、インクリボンを捲回した際に、ニアエンドマーク(4)が熱転写インク面の印字領域に当接していることから、熱転写インクリボンがブロッキング等の損傷を起こしてしまい、印字進行中においては、ニアエンドマーク(4)によるニアエンド検出より手前に損傷部分が位置するため、当該部分をスキップさせることもできず、印字不良を起こしてしまった。(55℃/85%Rh/1Week)(図示せず)
【0046】
上記実施例の構成は、熱転写インクリボンを繰り返し面順次塗工する際に間隙を設けて塗工したが、上述のように間隙を設けることなく塗工したり、一部重なるように塗工しても、ニアエンドマークと当接する部分が印字領域と重ならないのであれば構わない。
【0047】
また、本実施例では、プリンタとして、熱転写リボンロールとニアエンドマーク検知手段と印字ヘッドとを少なくとも有し、ニアエンド検知後、該ニアエンドマーク部分を印字ヘッドからスキップさせるスキップ手段を有する印字システムに使用され、ニアエンドマーク(4)が直接貼着された熱転写インク層のブロックをスキップさせたので、ヘッド損傷および印字不良を発生することはなかった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、熱溶融転写リボン、熱昇華転写リボン、ホットスタンプリボン、カバーラップリボン、ラミネート転写リボンなどのニアエンドマークを付設可能な熱転写リボンにおいて利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一例を示す斜視図
【図2】図1の例においてニアエンドマーク部分付近までリボンを捲回した状態を示す斜視図
【図3】本発明の別の一例を示す斜視図
【図4】ニヤエンドマークと熱転写インクリボンとが重なった状態を示す拡大模式図
【符号の説明】
【0050】
1 熱転写リボン
2 熱転写インク層
2−1 黒色熱転写インク層
2−2 透明カバーラップ熱転写インク層
3 リボン巻軸
4 ニアエンドマーク
5 印字領域
6 インク層間未塗工部分
7 リーダーテープ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のインク層を面順次に繰り返し塗工した熱転写リボン上の終端付近のインク面および/または背面の印字領域に設けられたニアエンドマークを有する熱転写リボンをリボン巻軸にロール状に捲回した熱転写リボンロールであって、該熱転写リボンをリボン巻軸にロール状に捲回したときに、該ニアエンドマークが熱転写リボン上の印字領域に重ならないよう位置決めして設けられたものであることを特徴とする、熱転写リボンロール。
【請求項2】
ニアエンドマークが熱転写リボン上の熱転写インク層側に少なくとも設けられ、熱転写リボンをリボン巻軸にインク面を外側にロール状に捲回したときに、ニアエンドマークが熱転写リボンの背面側に当接するよう設けられたものであることを特徴とする、請求項1に記載の熱転写リボンロール。
【請求項3】
熱転写リボンが、インク層間未塗工部分を設けつつ複数のインク層を面順次に繰り返し塗工したものであることを特徴とする、請求項1または2の何れかに記載の熱転写リボンロール。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−123231(P2006−123231A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−311940(P2004−311940)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(303022891)株式会社パイロットコーポレーション (647)
【Fターム(参考)】