説明

熱転写型画像保護フィルム

【課題】画像保護層の剥離層からの剥離を良好する。
【解決手段】基材2上に非転写性の剥離層3を介して、少なくとも熱転写性の画像保護層4が設けられ、熱転写時に画像保護層4が剥離層3より剥離して、画像保護層4が画像上に貼り合わされる熱転写型画像保護フィルムにおいて、剥離層3及び画像保護層4の軟化点を40℃以上とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印画紙等の被記録媒体に形成された画像の表面保護のために、その画像上に熱転写して貼り合わされ、画像を保護する透明な画像保護層を有する熱転写型画像保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録方式や、昇華性又は熱拡散性染料を使用する昇華型熱転写方式をはじめとする各種プリント方式では、銀塩写真並みの画質の印画物が得られるようになってきている。特に昇華型熱転写方式の場合、他の方式と比較して高い解像度が得られることから銀塩写真の代替として期待されておリ、この方式で得られた画像の保存安定性を銀塩写真に近づけるために、画像上に画像を保護する透明フィルムを画像保護層としてラミネートすることが従来から行われている。
【0003】
透明フィルムをラミネートする方法としは、種々の方法が行われている。最近では、基材シート上に熱可塑性樹脂からなる画像保護層(透明フィルム)を積層した熱転写型画像保護フィルムを使用し、この転写型画像保護フィルムの画像保護層を被記録媒上の保護する画像上に熱転写し画像をラミネートする方法が採用されている(例えば、特許文献1乃至特許文献3参照。)。画像上に熱転写される画像保護層には、画像の耐光性を向上させるため、通常、紫外線吸収剤、光安定剤等が添加されている。
【0004】
また、画像保護層は、基材シート上に設けることに限らず、インクリボンに組み込み、インクリボンの染料層に続いて画像保護層を設けることによって、サーマルヘッドを使用するプリンタ装置の内部で、染料を熱転写して画像を形成した後、連続して、形成した画像上に画像保護層をセルフラミネートすることが可能となる。また、画像保護層がラミネートされた画像は、画像保護層に配合された紫外線吸収剤や光安定剤によって、保存安定性も良好となる。
【0005】
ところで、熱転写型画像保護フィルムは、画像保護層を保護する画像上にスムーズに確実に転写させるため、基材シート上に予め非転写性の剥離層を設け、この剥離層上に熱転写性の画像保護層を設けている。また、画像保護層をインクリボンに組み込む場合にも、インクリボンの基材シート上に非転写性の剥離層を介して画像保護層を設けている。このような熱転写型画像保護フィルムやインクリボンでは、サーマルヘッドや熱ローラ等で基材シート側から画像保護層が加熱されることによって、画像保護層が非転写性の剥離層との界面で剥離し、基材シートから剥がれ、スムーズに画像上に熱転写されるようになる。
【0006】
しかしながら、このような熱転写型画像保護フィルム等では、非転写性の剥離層から剥離して画像保護層を熱転写させる際に、使用環境の温度が30℃以上になると、サーマルヘッドや熱ローラからの熱の他に、使用している環境の温度により、熱転写型画像保護フィルムやインクリボンの温度が高くなり過ぎ、画像保護層と剥離層が軟化し、画像保護層が剥離層から剥離しにくくなる。これにより、熱転写型画像保護フィルム等では、画像保護層が完全に画像が形成された印画紙上に熱転写されず、画像保護層が浮いたり、画像保護層が転写されなかったりといった転写不良を引き起こしてしまう。
【0007】
【特許文献1】特開昭60−204397号公報
【特許文献2】特開昭59−85793号公報
【特許文献3】特開昭59−76298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、使用環境温度が高くなっても、画像保護層の非転写性の剥離層からの剥離を良好にし、画像保護層の被記録媒体に対する転写不良を防止することができる熱転写型画像保護フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成する本発明に係る熱転写型画像保護フィルムは、基材上に非転写性の剥離層を介して、少なくとも熱転写性の画像保護層が設けられ、熱転写時に画像保護層が剥離層より剥離して、画像保護層が画像上に貼り合わされ、剥離層及び画像保護層は、軟化点が40℃以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、剥離層及び画像保護層の軟化点を40℃以上とすることによって、仕様環境温度が30℃以上となっても、画像保護層の剥離層からの剥離が良好であり、画像保護層の転写不良が発生することが防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を適用した熱転写型画像保護フィルムについて、図面を参照して詳細に説明する。熱転写型画像保護フィルム1は、熱転写型プリンタ装置に設けられたサーマルヘッドによって熱転写型インクリボン(以下、単にインクリボンという。)が加熱され、インクリボンの染料が印画紙等の記録媒体に熱転写して形成された画像を保護する。具体的に、この熱転写型画像保護フィルム1は、図1に示すように、インクリボンとは別に形成され、基材シート2上に、剥離性を向上させるための非転写性の剥離層3が設けられ、この剥離層3上に画像が形成された印画紙上に熱転写される画像保護層4が設けられ、この画像保護層4上に、画像が形成された印画紙と画像保護層4との接着性を向上させるための接着層5が設けられている。この熱転写型画像保護フィルム1も、インクリボンと同様に、サーマルヘッドによって、基材シート2の画像保護層4等が形成されていない裏面側が加熱され、画像保護層4が剥離層3との界面で剥離し、剥離層3から剥がれ、画像保護層4及び接着層5が画像が形成された印画紙上に熱転写される。熱転写型画像保護フィルム1では、熱転写時にサーマルヘッドとの融着を防ぎ、走行性を向上させる目的で、基材シート2の裏面に、耐熱滑性層6が設けられている。この耐熱滑性層6は、必要に応じて設けるようにしてもよい。
【0012】
熱転写型画像保護フィルム1で画像を保護する場合には、インクリボンの染料を拡散又は溶融させて、印画紙上に熱転写して画像を形成した後、基材シート2の接着層5が設けられている面を印画紙側にして、印画紙に重ね合わせ、重ね合わせた状態で基材シート2の裏面側から印画紙側に向かってサーマルヘッドで加熱加圧する。熱転写型画像保護フィルム1は、基材シート2の裏面から加熱加圧されることによって、画像保護層4と剥離層3との界面で、画像保護層4が剥離層3から剥離しつつ、最上層に設けられた接着層5が印画紙と直接接し、接着層5が印画紙に接着し、接着層5が画像保護層4との間に介在して、画像保護層4が印画紙上に熱転写される。これにより、熱転写型画像保護フィルム1は、画像が形成された印画紙上に、接着層5を介して画像保護層4を貼り合わせ、画像保護層4で画像が光等から保護する。
【0013】
具体的に、熱転写型画像保護フィルム1の基材シート2には、従来公知のシート状の各種基材を用いることができる。例えば、基材シート2としては、ポリエステルフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、アラミドフィルム等が挙げられる。基材シート2の厚みは、特に限定されることなく、通常2〜10μm厚である。
【0014】
この基材シート2上に設けられる剥離層3及び画像保護層4は、軟化点が40℃になっている。これにより、熱転写型画像保護フィルム1を使用している場所の温度(使用環境温度)が30℃以上となっても、印画紙上に画像保護層4及び接着層5を熱転写する際、画像保護層4の剥離層3からの剥離が良好となる。
【0015】
具体的に、非転写性の剥離層3は、画像保護層4を画像上に熱転写する際に、画像保護層4が基材シート2から剥離しやすいように設けたものである。剥離層3は、軟化点が40℃以上を示す樹脂で形成することができ、樹脂に紫外線吸収剤や光安定剤を配合した構成とすることもできる。例えば、軟化点が40℃以上の樹脂としては、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、セルロースアセテートブチレート等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。剥離層3は、これらの樹脂のみで形成してもよく、これらの樹脂に、紫外線吸収剤又は光安定剤のいずれか一方又は両方を配合し、更に必要に応じて離型用フィラーやシリコーン樹脂等の各種離型剤を加えて形成してもよい。
【0016】
剥離層3に含有させる紫外線吸収剤としては、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤等を挙げることができ、好ましくは、トリアジン系紫外線吸収剤である。トリアジン系紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤と比べて、紫外線の吸収力が大きいため、含有量が少なくても、紫外線吸収剤の効果を得ることができる。また、光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定化剤等を挙げることができる。
【0017】
剥離層3の軟化点を40℃以上にするには、軟化点が40℃以上の樹脂のみで剥離層3を形成する方法の他に、剥離層3の軟化点が40℃よりも低くならないように、軟化点が40℃以上の樹脂に、紫外線吸収剤や光安定剤を含有させて形成する方法がある。紫外線吸収剤の含有させる場合の含有量は、少なすぎると、紫外線吸収剤や光安定化剤の効果が得られず、多すぎると、紫外線吸収剤や光安定化剤が析出や結晶化し、また、剥離層3を構成する熱可塑性樹脂の可塑化により熱転写時の画像保護層4の剥離性が低下し、転写不良を引き起こしてしまう。紫外線吸収剤を含有させる場合には、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤よりも紫外線の吸収力が高く、少量で効果が得られるトリアジン系紫外線吸収剤を用いることで、含有量を少なくでき、剥離層3の軟化点が低下することをより抑えることができるので、トリアジン系紫外線吸収剤を用いることが好ましい。
【0018】
このような剥離層3は、樹脂や紫外線吸収剤、光安定剤等を溶剤に溶解又は分散させて得られた塗工液を、基材シート2上に塗布し乾燥することにより形成することができる。この剥離層3は、厚さ0.1μm〜1μm程度とすることが好ましい。
【0019】
この剥離層3上に形成される画像保護層4は、主として熱可塑性樹脂から構成されている。熱可塑性樹脂としては、非転写性の剥離層3から容易に剥離し、更に、雰囲気ガス、水等による汚れを防止することが可能であり、軟化点が40℃以上である樹脂を使用する。画像保護層4を形成する軟化点が40℃以上の樹脂としては、例えば、スチレン樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂等を挙げることができる。
【0020】
画像保護層4には、画像の耐光性を向上させるために、紫外線吸収剤や光安定剤を配合することが好ましい。紫外線吸収剤及び光安定剤は、剥離層3に用いたものと同様のものを用いることができる。その他に、帯電防止剤等の公知の添加剤を配合するようにしてもよい。
【0021】
画像保護層4の軟化点を40℃以上にするには、軟化点が40℃以上の熱可塑性樹脂のみ画像保護層4を形成する方法の他に、画像保護層4の軟化点が40℃よりも低くならないように、軟化点が40℃以上の樹脂に、紫外線吸収剤や光安定剤を含有させて形成する方法がある。紫外線吸収剤の含有させる場合の含有量は、少なすぎると、紫外線吸収剤や光安定化剤の効果が得られず、多すぎると、紫外線吸収剤や光安定化剤が析出や結晶化し、また、画像保護層4を構成する熱可塑性樹脂の可塑化により熱転写時に剥離性が低下し、転写不良を引き起こしてしまう。紫外線吸収剤を含有させる場合には、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤よりも紫外線の吸収力が高く、少量で効果が得られるトリアジン系紫外線吸収剤を用いることで、含有量を少なくでき、画像保護層4の軟化点が低下することをより抑えることができるので、トリアジン系紫外線吸収剤を用いることが好ましい。
【0022】
このような画像保護層4は、熱可塑性樹脂や紫外線吸収剤、光安定剤等を溶剤に溶解又は分散させて得られた塗工液を、剥離層3上に塗布し乾燥することにより形成することができる。この画像保護層4の厚さは、熱可塑性樹脂の種類、熱転写時のエッジ切れ(尾引き)等が生じないように適宜定め、通常は印画紙への転写性の点から、約0.5〜10μm程度とすることが好ましい。
【0023】
この画像保護層4上に形成される接着層5は、主として熱可塑性樹脂から構成されている。熱可塑性樹脂としては、画像が形成された印画紙に加熱加圧により良好に接着する樹脂を使用することが好ましく、例えば、セルロースアセテートブチレート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂等を挙げることができる。
【0024】
接着層5は、画像保護層4と一緒に画像上に熱転写されるため、画像の耐光性を向上させる目的で、紫外線吸収剤や光安定剤を配合することが好ましい。その他に、帯電防止剤等の公知の添加剤を配合するようにしてもよい。紫外線吸収剤や光安定剤は、ブロックキング性を考慮して、40部以下とすることが好ましい。
【0025】
接着層5の厚さは、熱可塑性樹脂の種類、所望の接着力の程度、熱転写時のエッジ切れ(尾引き)等が生じないように適宜定め、通常は印画紙への転写性の点から、約0.5〜10μm程度とすることが好ましい。
【0026】
耐熱滑性層6としては、ポリビニルアセタール樹脂等の耐熱性樹脂、酢酸セルロース、エポキシ樹脂等の高軟化点の樹脂で形成する。また、耐熱滑性層6には、シリコーンオイル、ワックス、脂肪酸アミド、リン酸エステル等の滑剤を塗布したり添加したりしてもよく、フィラーを添加してもよい。このような耐熱滑性層6には、熱転写型プリンタ装置内での走行性や貼り付きを防止するために各種の潤滑剤や帯電防止剤を添加してもよい。
【0027】
以上のような構成の熱転写型画像保護フィルム1は、基材シート2上に、剥離層用塗工液を公知の塗布方法により塗布し、乾燥して剥離層3を形成した後、形成した剥離層3上に画像保護層用塗工液を公知の塗布方法により塗布し、乾燥して画像保護層4を形成した後、形成した画像保護層4上に、接着層用塗工液を公知の塗布方法に塗布し、乾燥することにより作製することができる。
【0028】
この熱転写型画像保護フィルム1では、剥離層3及び画像保護層4の軟化点が40℃以上となっていることによって、使用環境の温度が30℃以上になり、サーマルヘッドからの熱の他に、使用環境の温度によって、熱転写型画像保護フィルム1自体の温度が高くなっても、剥離層3や画像保護層4が軟化せず、剥離層3と画像保護層4の剥離力を低下させることで、画像保護層4を印画紙に熱転写する際に、画像保護層4が剥離層3の界面から剥離する。これにより、この熱転写型画像保護フィルム1では、画像保護層4が印画紙に適切に熱転写され、印画紙上に熱転写された画像保護層4が浮いてしまったり、熱転写されなかったりといった画像保護層4の転写不良が発生することを防止でき、画像を適切に保護することができる。
【0029】
また、本発明を適用した他の熱転写型画像保護フィルム10について説明する。この熱転写型画像保護フィルム10は、図2及び図3に示すように、同一の基材シート11上に画像を形成するイエローの染料層12Y、マゼンタの染料層12M、シアンの染料層12C、剥離層13を介して画像保護層14及び接着層15が並設されている。この熱転写型画像保護フィルム10は、基材シート11上に染料層12Y、12M、12C(以下、染料層12ともいう。)と画像保護層14とが形成されており、上述した熱転写型画像保護フィルム1のように基材シート2上に染料層12が形成されず、剥離層3、画像保護層4、接着層5のみが形成されているものとは構成が異なる。
【0030】
この熱転写型画像保護フィルム10は、上述した熱転写型画像保護フィルム10と同様の構成からなる基材シート11、剥離層13、画像保護層14、接着層15については詳細な説明を省略する。この熱転写型画像保護フィルム10においても、上述した熱転写型画像保護フィルム1と同様に、剥離層13及び画像保護層14の軟化点が40℃以上となっていることによって、画像保護層14を印画紙に熱転写する際に、画像保護層14が剥離層13との界面で剥離し、画像保護層14の熱転写が良好となる。
【0031】
また、この熱転写型画像保護フィルム10には、基材シート11の染料層12が形成されている面と同一の面に、イエローの染料層12Y、マゼンタの染料層12M、シアンの染料層12C、画像保護層14を1つのまとまりとして、この1つのまとまりを検出するための検出マーク16がイエローの染料層12Y及び画像保護層14の隣に並設されている。
【0032】
また、この熱転写型画像保護フィルム10には、基材シート11の染料層12が設けられている面とは反対側の裏面に、上述した熱転写型画像保護フィルム1と同様に、耐熱滑性層を有していてもよい。耐熱滑性層の構成は、上述した熱転写型画像保護フィルム1の耐熱滑性層6と同様である。
【0033】
なお、熱転写型画像保護フィルム10では、染料層12をイエロー、マゼンタ、シアンのみに限らず、更にブラックの染料層を有していてもよく、任意の単一色の染料層のみを有していてもよい。
【0034】
染料層12は、昇華型熱転写記録用のインク層又は熱溶融型熱転写記録用のインク層のいずれでもよく、それぞれ公知のインクリボンのインク層と同様に構成することができる。例えば、昇華型熱転写記録用のインク層とする場合には、例えば、昇華型熱転写記録用のインク層とする場合には、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセトアセタール、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン等のビニル系樹脂、その他各種ウレタン樹脂等に昇華性あるいは熱拡散性染料を分散させたものから構成することができる。
【0035】
イエロー、マゼンタのインク層に含有させる染料としては、従来公知の染料を使用でき、例えばイエロー染料としてはアゾ系染料、ジスアゾ系染料、メチン系染料、スチリル系染料、ピリドン・アゾ系染料等を挙げることができる。また、マゼンタ染料としてはアゾ系染料、アントラキノン系染料、スチリル系染料、複素環系アゾ染料等が挙げられる。シアン系染料としてはインドアニリン系染料、アントラキノン系染料、ナフトキノン系染料、複素環系アゾ染料等を使用することができる。
【0036】
また、この熱転写型画像保護フィルム10では、印画紙等の被記録媒体に染料受容層が形成されていなくても、染料が被記録媒体に熱転写され、良好に画像を形成できるように、画像の転写に先立って、被記録媒体に染料受容層を転写できるように、染料層12よりも先に熱転写されるように、基材シート11の染料層12と同一面側に染料受容層を形成するようにしてもよい。
【0037】
染料受容層としては、熱転写性の公知の染料受容層を用いることができ、染着性の良好な熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、UV硬化樹脂等で形成することができる。樹脂としては、具体的に、ポリエステル系樹脂、セルロースエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、尿素樹脂、その他上記の共重合体等が挙げられる。
【0038】
以上のような熱転写型画像保護フィルム10は、基材シート11上に、染料層12や染料受容層、耐熱滑性層を公知の手法により形成し、染料層12と並設して、剥離層形成用塗工液を公知の塗布方法により塗布し、乾燥して非転写性の剥離層13を形成した後、剥離層13上に、画像保護層用塗工液を公知の塗布方法により塗布し、乾燥して画像保護層14を形成し、画像保護層14上に接着層用塗工液を公知の塗布方法に塗布し、乾燥することによって接着層15を形成して作製することができる。
【0039】
以上のような構成の熱転写型画像保護フィルム10では、各色の染料層12Y、12M、12Cが並設されている順、即ちイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の順に染料層12Y、12M、12Cの染料が印画紙上に熱転写されて画像を形成した後、続いて、画像が形成されている印画紙上に続けて画像保護層14を熱転写して画像を保護することができる。この熱転写型画像保護フィルム10では、画像を形成した後、続けて画像上に画像保護層14を熱転写することができるため、容易に画像を保護することができる。
【0040】
また、この熱転写型画像保護フィルム10は、上述した熱転写型画像保護フィルム1と同様に、剥離層13及び画像保護層14の軟化点が40℃以上となっているため、使用環境の温度が30℃以上になり、サーマルヘッドからの熱の他に、使用環境の温度によって、熱転写型画像保護フィルム10自体の温度が高くなっても、剥離層3や画像保護層4が軟化せず、画像保護層4を剥離しやすくし、剥離層3と画像保護層4の剥離力を低下させることで、画像保護層4を印画紙に熱転写する際に、画像保護層4が剥離層3の界面から剥離し、印画紙に適切に熱転写され、印画紙上に熱転写された画像保護層4が浮いてしまったり、熱転写されなかったりといった画像保護層4の転写不良が発生することを防止することができる。
【実施例】
【0041】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を適用した熱転写型画像保護フィルムについて説明する。
【0042】
実施例としては、実施例1〜実施例4を作製した。実施例1〜実施例4では、以下の表1〜表4に示す非転写性剥離層形成用塗工液A、B及び画像保護層形成用塗工液A、Bを用いて、表11に示すように、これらの塗工液を組み合わせて熱転写型画像保護フィルムを作製した。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
【表3】

【0046】
【表4】

【0047】
各表中の非転写性剥離層形成用塗工液A、B及び画像保護層形成用塗工液A、Bの軟化点は、株式会社レスカ製の粘弾性測定器(RD−1100AD)を使用し、ガラス繊維に各塗工液を含浸させ、120℃で1分乾燥させたものをTBA法で測定した。
【0048】
また、非転写性剥離層形成用塗工液Bにおいて、ポリビニルアセトセタール系樹脂に対する紫外線吸収剤の割合は、10重量%である。画像保護層形成用塗工液A、Bにおいて、スチレン樹脂に対する紫外線吸収剤の割合は、10重量%、20重量%である。
【0049】
具体的に、実施例1は以下のようにして作製した。なお、実施例2〜実施例4は、表11に示す塗工液を用いたこと以外は実施例1と同様に作製したため、詳細な説明は省略する。
【0050】
〈実施例1〉
実施例1では、次のようにして熱転写型画像保護フィルムを作製した。具体的には、先ず、基材シートとして、厚み4.5μmのポリエチレンテフタレートフィルム(東レ(株)製、商品名ルミラー)を用意し、この基材シートの片面に、以下の表5の組成からなる耐熱滑性層用塗工液をグラビアコート方式により塗工し、55℃のオーブンにて5日間硬化させることにより耐熱活性層を形成した。
【0051】
【表5】

【0052】
次に、耐熱滑性層を形成した基材シートの他面に、表1に示す組成の剥離層形成用塗工液Aを、バーコーティングにより、乾燥時の厚みが約1.0μmになるように塗布し120℃のオーブンにて1分間乾燥させ、非転写性の剥離層を形成した。
【0053】
次に、表3に示す組成の画像保護層形成用塗工液Aをバーコーティングにより、乾燥時の厚みが約1.0μmになるように剥離層上に塗布し、120℃のオーブンにて乾燥させて熱転写性の画像保護層を形成した。
【0054】
次に、以下の表6に示す組成の接着層用塗工液Aをバーコーティングにより、乾燥時の厚みが約1.0μmになるように画像保護層上に塗布し、120℃のオーブンにて乾燥させて熱転写性の接着層を形成することにより熱転写型画像保護フィルムを作製した。
【0055】
【表6】

【0056】
次に、比較例については、比較例1〜比較例12を作製した。比較例1〜比較例12では、表1〜表4に示す非転写性剥離層形成用塗工液A、B、画像保護層形成用塗工液A、Bの他に、以下の表7〜表10に示す非転写性剥離層形成用塗工液C、D及び画像保護層形成用塗工液C、Dを用いて、表11に示すように、これらの塗工液を組み合わせて熱転写型画像保護フィルムを作製した。なお、これらの比較例1〜比較例12は、表11に示す塗工液を用いたこと以外は実施例1と同様にして作製したため、詳細な説明は省略する。また、非転写性剥離層形成用塗工液C、D及び画像保護層形成用塗工液C、Dの軟化点は、非転写性剥離層形成用塗工液A等の軟化点を測定する方法と同様の方法で行った。
【0057】
また、非転写性剥離層形成用塗工液Dにおいて、ポリビニルアセトセタール系樹脂に対する紫外線吸収剤の割合は、10重量%である。画像保護層形成用塗工液C、Dにおいて、スチレン樹脂に対する紫外線吸収剤の割合は、40重量%、20重量%である。
【0058】
【表7】

【0059】
【表8】

【0060】
【表9】

【0061】
【表10】

【0062】
以上のようにして作製した実施例及び比較例の熱転写型画像保護フィルムに対して、画像保護層の転写性について評価した。
【0063】
評価方法は、ソニー株式会社製のインクリボン(UP−DR150)を使用し、このインクリボンの熱転写型画像保護フィルムの部分を切除し、その部分に実施例及び比較例で作製した熱転写型画像保護フィルムを貼り合わせ、インク層(染料層)と画像保護層とを備えたインクリボンを作製した。
【0064】
試験に使用した被記録媒体は、UP−DR150用印画紙を使用した。
【0065】
このインクリボンを、サーマルヘッドを有する熱転写型プリンタ装置(UP−DR150、ソニー株式会社製)に装着し、以下の印画操作と画像保護層の転写を行った。
【0066】
印画操作は、先ず、パーソナルコンピュータにて、Adobe社製のPhotoShopを使用して、ブラックベタのパターンを作成し、そのデータを熱転写型プリンタ装置(UP−DR150)に転送し、グラックベタを印画を行った後、画像保護層を転写して試験印画サンプルを得た。その際の印画環境は、30℃*60RH%である。
【0067】
試験印画サンプルの画像保護層の転写状態は、表11及び表12に示すようになった。
【0068】
【表11】

【0069】
【表12】

【0070】
表11に示す結果から、比較例1〜比較例12では、転写された画像保護層に浮きや未転写部が発生した。このことから、比較例1〜比較例12のように、剥離層及び画像保護層の軟化点が共に40℃よりも低かったり、剥離層又は画像保護層のどちらか一方の軟化点が40℃よりも低い場合には、使用環境温度が30℃になると、サーマルヘッドからの熱の他に、使用環境温度によって、画像保護層及び剥離層の温度が高くなり、剥離層や画像保護層が軟化して、画像保護層が剥離層の界面から剥離しにくくなり、画像保護層の転写性が悪くなることが確認できた。
【0071】
このような比較例に対して、実施例1では、転写された画像保護層の光沢及び印画紙に対する接着性が良好であった。このことから、実施例1では、紫外線吸収剤が含有されず、軟化点が73℃の剥離層形成用塗工液Aを用いて剥離層を形成し、トリアジン系紫外線吸収剤をスチレン樹脂に対して10重量%が含有させ、軟化点が75℃の画像保護層形成用塗工液Aを用いて画像保護層を形成することによって、剥離層及び画像保護層の軟化点が共に40℃以上となり、サーマルヘッドからの熱の他に、印画環境温度が30℃で、剥離層及び画像保護層の温度が高くなっても、画像保護層及び剥離層が軟化せず、画像保護層の剥離層からの剥離が良好となり、画像保護層の転写性が良好となることが確認できた。
【0072】
実施例2〜実施例4においても、光沢がやや低下したが、接着性が良好であり、使用上問題がないものとなった。このことから、実施例2〜実施例4においても、剥離層及び画像保護層の軟化点が共に40℃以上とすることによって、使用環境温度が30℃であっても、画像保護層の転写性が良好となることが分かった。
【0073】
以上のことから、実施例1〜実施例4のように、剥離層及び画像保護層の軟化点を40℃以上とすることによって、画像保護層の転写性が良好になる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明を適用した画像保護フィルムの断面図である。
【図2】本発明を適用した他の画像保護フィルムの平面図である。
【図3】同画像保護フィルムの断面図である。
【符号の説明】
【0075】
1 熱転写型画像保護フィルム、2 基材、3 剥離層、4 画像保護層、5 接着層、6 耐熱滑性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に非転写性の剥離層を介して、少なくとも熱転写性の画像保護層が設けられ、熱転写時に上記画像保護層が上記剥離層より剥離して、上記画像保護層が画像上に貼り合わされる熱転写型画像保護フィルムにおいて、
上記剥離層及び上記画像保護層は、軟化点が40℃以上であることを特徴とする熱転写型画像保護フィルム。
【請求項2】
上記剥離層には、ポリビニルアセトアセタール樹脂が含有されていることを特徴とする請求項1記載の熱転写型画像保護フィルム。
【請求項3】
上記剥離層には、更に紫外線吸収剤が含有されていることを特徴とする請求項2記載の熱転写型画像保護フィルム。
【請求項4】
上記紫外線吸収剤は、トリアジン系紫外線吸収剤であることを特徴とする請求項3記載の熱転写型画像保護フィルム。
【請求項5】
上記画像保護層には、スチレン樹脂が含有されていることを特徴とする請求項1記載の熱転写型画像保護フィルム。
【請求項6】
上記画像保護層には、更に紫外線吸収剤が含有されていることを特徴とする請求項5記載の熱転写型画像保護フィルム。
【請求項7】
上記紫外線吸収剤は、トリアジン系紫外線吸収剤であることを特徴とする請求項6記載の熱転写型画像保護フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−172802(P2009−172802A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−11954(P2008−11954)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】