説明

熱転写機及び熱転写方法

【課題】転写シートに配されたマークを被転写物に熱転写する際に、熱転写したマークの周囲の被転写物に熱転写跡を生じさせずに、確実な熱転写を行うことができる熱転写機及び熱転写方法を提供することを目的とする。
【解決手段】転写シート50に配された転写マーク51を被転写物60に熱転写する熱転写機10であって、転写シート及び被転写物に上から圧力を加える加圧手段であり転写マークの外形と同形の上加圧部21が下方に突出した上転写型20と、上転写型の上加圧部に対向して転写シート及び被転写物に下から圧力を加える加圧手段であり転写マークの外形と同形の下加圧部31が上方に突出した下転写型30とを有しており、上転写型と下転写型の少なくとも一方は、転写シート及び被転写物に圧力を加えると共に転写シート及び被転写物を加熱する加圧加熱手段となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写シートに配された転写マークを被転写物に熱転写する熱転写機及び熱転写方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、衣料品等の製造工程において、当該衣料品の生地等の被転写物に、ロゴ等のマークを熱転写によりプリントすることが行われている。このときの熱転写方法としては、平面の板面上に生地等の被転写物を配置し、その上に熱転写するマークが配された転写シートを配置して、さらにその上から、熱転写するマークよりも広い範囲を加圧加熱することができる平板状の加圧加熱部を備えた加圧加熱手段で加熱しながら圧力を加えることで、転写シートに配されたマークを被転写物に転写する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−56265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記した特許文献1のような従来の熱転写機を用いた熱転写方法では、加圧・加熱する手段が平板状の部材であり、また、熱転写するマークの部分よりも広い範囲を加圧・加熱するため、熱転写作業を行った後で、熱転写したマークの周囲の被転写物(詳しくは、被転写物における、加圧加熱手段の加圧加熱部が接していた箇所)に、所謂アタリと呼ばれる熱転写跡が残ってしまう、という問題が生じていた。
【0005】
この熱転写跡を消す方法としては、アイロンの蒸気を当てる等の方法が考えられているが、完全には熱転写跡を消すことができない場合が多かった。また、例え完全に熱転写跡を消すことができたとしても、製造工程において余分な工程を行うことになるため、生産効率を下げてしまう、という不具合を解消することはできないものであった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、転写シートに配されたマークを被転写物に熱転写する際に、熱転写したマークの周囲の被転写物に熱転写跡を生じさせずに、確実な熱転写を行うことができる熱転写機及び熱転写方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の発明は、転写シートに配された転写マークを、被転写物に熱転写する熱転写機であって、前記転写シート及び前記被転写物に上から圧力を加える加圧手段であり、前記転写マークの外形と同形の上加圧部が下方に突出した上転写型と、該上転写型の前記上加圧部に対向して前記転写シート及び前記被転写物に下から圧力を加える加圧手段であり、前記転写マークの外形と同形の下加圧部が上方に突出した下転写型と、を有しており、前記上転写型と前記下転写型の少なくとも一方は、前記転写シート及び前記被転写物に圧力を加えると共に前記転写シート及び前記被転写物を加熱する加圧加熱手段となっている熱転写機としたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記下転写型は、該下転写型に前記転写シートを前記転写マークが上側を向くように配置する際に、前記転写マークの外形が前記下加圧部と同形となって重なる位置に配置されるように、前記転写シートの配置位置を規制する転写シート規制部を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明の構成に加え、前記上転写型及び前記下転写型の双方が加圧加熱手段となっており、前記上転写型と前記下転写型の加熱温度が異なるように設定されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項4に記載の発明は、転写シートに配された転写マークを、被転写物に熱転写する熱転写方法において、前記転写シート及び前記被転写物に下から圧力を加える加圧手段であって前記転写マークの外形と同形の下加圧部が上方に突出した下転写型に、前記転写マークが上側を向き、かつ、前記転写マークの外形が前記下加圧部と同形となって重なる位置となるように、前記転写シートを配置し、その上に、前記被転写物を配置し、さらにその上に、前記転写シート及び前記被転写物に上から圧力を加えると共に前記転写シート及び前記被転写物を加熱する加圧加熱手段であって前記転写マークの外形と同形の上加圧部が下方に突出した上転写型を、前記下転写型の前記下加圧部に対向して配置し、前記転写シートとその上に配置された前記被転写物を、前記下転写型と加熱状態の前記上転写型とで挟持して、前記被転写物に前記転写シートの前記転写マークを熱転写させる熱転写方法としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1に記載の発明によれば、熱転写機が、転写マークの外形と同形の上加圧部が下方に突出した上転写型と、当該上転写型の上加圧部に対向して転写マークの外形と同形の下加圧部が上方に突出した下転写型と、を有しており、これらで被転写物と転写シートの転写マークとを挟持して加熱することで、熱転写したマークの周囲の被転写物に熱転写跡を生じさせずに、確実に、被転写物に転写シートの転写マークを熱転写させることができる。
【0012】
その結果、周囲の被転写物が綺麗な状態を保ったままで、確実な熱転写を行うことができ、さらに、熱転写跡を消すための余分な作業を行う必要がないため、生産効率を向上させることができる。
【0013】
また、本発明の請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、転写マークの外形が下加圧部と同形となって重なる位置に配置されるように、転写シートの配置位置を規制する転写シート規制部を下転写型に有しているため、転写ミス等の不具合を防止して、より確実に、かつ、簡単に、転写マークの被転写物への熱転写を行うことができる。
【0014】
また、本発明の請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、上転写型と下転写型の双方が転写シートを加圧・加熱する加圧加熱手段となっており、さらに双方で加熱温度が異なるように設定されているため、熱転写に必要な熱を最適な温度で転写シートに伝えることができ、さらに確実に、かつ、効率的に、転写マークの被転写物への熱転写を行うことができる。
【0015】
また、本発明の請求項4に記載の発明によれば、転写マークの外形と同形の下加圧部が上方に突出した下転写型に、転写マークが上側を向き、かつ、転写マークの外形が下加圧部と同形となって重なる位置となるように、転写シートを配置し、その上に被転写物を配置し、さらにその上に転写マークの外形と同形の上加圧部が下方に突出した加圧加熱手段である上転写型を、下転写型の下加圧部に対向して配置し、転写シートとその上に配置された被転写物を、下転写型と加熱状態の上転写型とで挟持して、被転写物に転写シートの転写マークを熱転写させる熱転写方法とすることで、熱転写したマークの周囲の被転写物に熱転写跡を生じさせずに、確実に、被転写物に転写シートの転写マークを熱転写させることができる。
【0016】
その結果、周囲の被転写物が綺麗な状態を保ったままで、確実な熱転写を行うことができ、さらに、熱転写跡を消すための余分な作業を行う必要がないため、生産効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係る熱転写機を示す概略図である。
【図2】図1の熱転写機のA部拡大図である。
【図3】図1の熱転写機の(a)上転写型及び(b)下転写型を示す拡大図である。
【図4】図1の熱転写機の上転写型と下転写型を対向させた状態を示す概略図である。
【図5】図4の熱転写機の下転写型に転写補助部材を配置した状態を示す概略図である。
【図6】図5の熱転写機の下転写型にさらに転写シートを配置した状態を示す概略図である。
【図7】図6の熱転写機の上転写型と下転写型で転写シートと生地を挟時した状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図7を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係る熱転写機を示す概略図である。図2は、図1の熱転写機のA部拡大図である。図3は、図1の熱転写機の(a)上転写型及び(b)下転写型を示す拡大図である。図4は、図1の熱転写機の上転写型と下転写型を対向させた状態を示す概略図である。図5は、図4の熱転写機の下転写型に転写補助部材を配置した状態を示す概略図である。図6は、図5の熱転写機の下転写型にさらに転写シートを配置した状態を示す概略図である。図7は、図6の熱転写機の上転写型と下転写型で転写シートと生地を挟時した状態を示す概略図である。
【0020】
本実施の形態の熱転写機10は、図1〜図7に示すように、衣料品の生地60(図7に図示)を被転写物として、当該生地60に、転写シート50(図6に図示)に配されたロゴ等の転写マーク51(図6に図示)を熱転写によりプリントするための機器である。
【0021】
この熱転写機10は、図1に示すように、複数の脚部11によって支えられた台盤12に熱転写作業を行う作業台13を備えており、この作業台13に設けられた孔部18の中に丁度収まって動かないように、下転写型30が配置されている。また、熱転写機10の台盤12の両端部には、それぞれ支柱14が設けられており、この支柱14同士を繋ぐ支持部材15が配置されている。そして、この支持部材15において、前記した下転写型30の真上に当たる箇所には、加圧装置16と、その下方の先端部に取り付けられた上転写型20が支持されている。この加圧装置16は、上転写型20を上下動させることができ、かつ、真下に配置された下転写型30に対して接触して所定の圧力(本発明の実施の形態では、1気圧(101325Pa))を掛けるように構成されている。また、台盤12の下方には、前記した加圧装置16を作動させたり、後述するように上転写型20や下転写型30を加熱するための電源装置17を備えている。また、支持部材15には、前記した加圧装置16の作動開始及び作動停止、上転写型20及び下転写型30の加熱開始及び加熱停止を連動して制御する作動スイッチ19が設けられている。
【0022】
次に、上転写型20及び下転写型30について、詳細に説明する。
【0023】
上転写型20は、転写シート50及び生地60に上から圧力を加える加圧手段であり、図3(a)に示すように、略直方体形状の金型であり、熱転写を行う転写マーク51の外形と同形となる上加圧部21が突出形成されており、図4等に示すように、この上加圧部21が下方を向くようにして、加圧装置16の下方の先端部に、ボルト止め等により取り付けられている。また、本発明の実施の形態の上転写型20は、転写シート50及び生地60に圧力を加えると共に転写シート50及び生地60を加熱する加圧加熱手段となっており、金型の内部に発熱装置(図示省略)を備えている。この発熱装置は、電源装置17から電源を供給されており、作動スイッチ19を押すことで発熱装置が作動するようになっている。本発明の実施の形態では、この発熱装置により、上転写型20が160℃まで加熱されるようになっている。
【0024】
下転写型30は、転写シート50及び生地60に下から圧力を加える加圧手段であり、図3(b)に示すように、略直方体形状の金型であり、前記した上転写型20の上加圧部21に対向して形成された下加圧部31が設けられている。この下加圧部31についても、上加圧部21と同様に、転写マーク51の外形と同形となるように突出形成されており、下転写型30の上方に突出するようになっている。また、この下転写型30は、前記したように、台盤12の作業台13に形成された孔部18に動かないように丁度収められており、上転写型20の加圧を受けて転写シート50の転写マーク51及び生地60を挟持するようになっている。
【0025】
そして、この下加圧部31と前記した上加圧部21とは、接触させると丁度同じ外形となるように構成されている。ここで、本発明の実施の形態の上転写型20及び下転写型30では、突出して形成されている上加圧部21と下加圧部31のみが転写シート50及び生地60を介して接触するようになっていて、これにより転写シート50の転写マーク51及び生地60に圧力を加えるようになっており、上転写型20及び下転写型30のその他の部分は、上加圧部21と下加圧部31が転写シート50及び生地60を介して接触しても、双方で接触することがないように、その高さが設定されている。このため、転写シート50や生地60において熱転写する転写マーク51部分以外の周囲の箇所には、圧力が掛からないようになっている。その結果、熱転写する際に、周囲の生地60に熱転写跡が生じないようにすることができるものである。
【0026】
また、本発明の実施の形態の下転写型30は、下加圧部31の周囲に転写シート50の配置位置を規制する転写シート規制部32を有している。本発明の実施の形態の転写シート規制部32は、下加圧部31を囲む略長方形状の枠状のものであり、下加圧部31よりも所定量高さが高くなるように形成されている。この転写シート規制部32により、同じ大きさで同じ位置に転写マーク51を配置した転写シート50を、転写マーク51が上側を向くようにして嵌め込むだけで、丁度、転写マーク51の外形が下加圧部31と同形となって重なる位置に配置されるように構成されている。
【0027】
また、本発明の実施の形態では、下転写型30における転写シート規制部32の高さが、作業台13の高さと面一になるように、下転写型30及び孔部18の高さが決定されている。さらに、この転写シート規制部32の四隅の角部33は丸みを帯びた形状とされており、これにより、鋭い角となっている場合に比べて、配置した転写シート50や生地60を傷付けてしまう可能性が低くなるようにしている。
【0028】
なお、転写シート規制部32の高さを下加圧部31の高さよりも所定量高く形成しているのは、後述する転写補助部材40を下加圧部31の上に配置して、その上に転写シート50を配置した際に、丁度、転写シート50の高さが転写シート規制部32の高さと面一となるようにするためである。このように転写補助部材40を配置することを考慮して下加圧部31及び転写シート規制部32の高さを設定しておくことで、転写シート規制部32により、確実に、転写シート50の配置位置を規制することができると共に、転写補助部材40を使用することによる効果(後述)も得ることができるものである。
【0029】
ここで、転写補助部材40を配置することを考慮せずに、転写シート規制部32の高さを例えば下加圧部31の高さと同じ高さにしてしまうと、転写補助部材40を下加圧部31の上に配置してから、その上に転写シート50を配置したときに、転写シート50が転写シート規制部32の高さより高い位置に配置されてしまうため、転写シート50の配置位置を転写シート規制部32で規制することができなくなり、転写シート規制部32がその役割を果たさなくなってしまうのである。
【0030】
さらに、本発明の実施の形態では、上転写型20に加えて、下転写型30も、転写シート50及び生地60に圧力を加えると共に転写シート50及び生地60を加熱する加圧加熱手段となっており、当該下転写型30にも、金型の内部に発熱装置(図示省略)を備えている。この発熱装置についても、電源装置17から電源を供給されており、作動スイッチ19を押すことで、上転写型20の発熱装置と同時に発熱が開始されるようになっている。本発明の実施の形態では、この発熱装置により、下転写型30は70〜80℃まで加熱されるようになっている。
【0031】
このように、上転写型20に加えて、下転写型30も加圧加熱手段となっていることで、上転写型20のみで転写シート50及び生地60を加熱する場合と比べて、より均一に転写シート50及び生地60に対して加熱することができ、熱転写後に接着不良により転写マーク51が剥離してしまう等の不具合を防止することができるものである。さらに、上転写型の加熱温度は160℃で下転写型30の加熱温度は70〜80℃というように、上転写型20と下転写型30とで加熱温度が異なるように設定したため、熱転写に必要な熱を最適な温度で転写シートに伝えることができ、さらに確実に、かつ、効率的に、転写マークの被転写物への熱転写を行うことができるものである。
【0032】
次に、本発明の実施の形態の熱転写機10を用いた熱転写方法について、図4〜図7を用いて説明する。
【0033】
まず、図1,2,4に示すように、下転写型30を孔部18にその下加圧部31が上側を向くように配置固定し、上転写型20をその上加圧部21が下側を向くうように加圧装置16にボルト等で取り付ける。
【0034】
次に、図5に示すように、下加圧部31の上に重なるように、転写補助部材40を配置する。この転写補助部材40は、耐熱性を有し、かつ、弾性力(反発力)を有するプラスチック等(例えば、ウレタン等)の素材で構成されており、上加圧部21、下加圧部31及び転写マーク51の外形と同形に形成された所定の厚みを有する部材となっている。この転写補助部材40を下加圧部31と転写シート50の間に挟み込むことにより、その弾性力(反発力)によって、転写マーク51が生地60に密着し易くなり、さらに確実に転写マーク51の熱転写を行うことができるものである。また、この転写補助部材40を、上転写型20の上加圧部21と下転写型30の下加圧部31の間に挟むことで、上転写型20を下方に移動させて上加圧部21と下加圧部31を転写シート50及び生地60を介して接触させる際の双方の衝撃を緩和させる効果も得られるものである。
【0035】
次に、図6に示すように、予め、転写シート規制部32の枠の大きさ及び形状に形成された転写シート50を、その転写マーク51が上側を向くように、転写シート規制部32に沿って下転写型30に配置する。すると、転写シート規制部32で転写シート50が規制されて、丁度、転写マーク51の外形が下加圧部31と同形となって上に重なる位置に配置されるようになっている。また、転写シート規制部32の高さと、転写補助部材40と転写シート50を合わせた高さが、丁度同じになるように計算しておくことで、転写シート50を配置した状態で、当該転写シート50と転写シート規制部32が面一となるように構成されている。
【0036】
次に、転写シート50の上に被転写物としての生地60を配置し、作動スイッチ19を押して、加圧装置16、上転写型20の発熱装置及び下転写型30の発熱装置を作動させることで、図7に示すように、加圧装置16により上転写型20を下方に押して、当該上転写型20と下転写型30(本発明の実施の形態では、さらに転写補助部材40)とで転写シート50及び生地60を挟持すると共に、上転写型20及び下転写型30を所定温度で加熱する。これにより、加熱状態の上転写型20と、同じく加熱状態の下転写型30とで転写シート50及び生地60を挟持して、転写マーク51の接着剤を溶融させて、当該転写マーク51を生地60に転写させる。なお、本発明の実施の形態では、上転写型20の加熱温度は160℃、下転写型30の加熱温度は70〜80℃、加圧装置16によって加える圧力は1気圧(101325Pa)、加工時間は10秒で転写作業を行った。
【0037】
その後、上転写型20を上方に移動させて、上転写型20及び下転写型30の発熱装置も停止させて、熱転写機10から転写シート50及び生地60を取り出し、転写シート50及び生地60を自然冷却させた後、生地60から転写マーク51を残して転写シート50を剥がし、熱転写の工程を終了する。
【0038】
以上のように、本発明の実施の形態の熱転写機10によれば、熱転写機10が、転写マーク51の外形と同形の上加圧部21が下方に突出した上転写型20と、当該上転写型20の上加圧部21に対向して転写マーク51の外形と同形の下加圧部31が上方に突出した下転写型30と、を有しており、これらで生地(被転写物)60と転写シート50の転写マーク51とを挟持して加熱することで、熱転写したマーク51の周囲の生地(被転写物)60に熱転写跡を生じさせずに、確実に、生地(被転写物)60に転写シート50の転写マーク51を熱転写させることができる。
【0039】
その結果、周囲の生地(被転写物)60が綺麗な状態を保ったままで、確実な熱転写を行うことができ、さらに、熱転写跡を消すための余分な作業を行う必要がないため、生産効率を向上させることができる。
【0040】
また、本発明の実施の形態の熱転写機10によれば、前記した作用効果に加え、転写マーク51の外形が下加圧部31と同形となって重なる位置に配置されるように、転写シート50の配置位置を規制する転写シート規制部32を下転写型30に有しているため、転写ミス等の不具合を防止して、より確実に、かつ、簡単に、転写マーク51の生地(被転写物)60への熱転写を行うことができる。
【0041】
また、本発明の実施の形態の熱転写機10によれば、前記した作用効果に加え、上転写型20と下転写型30の双方が転写シート50を加圧・加熱する加圧加熱手段となっており、さらに双方で加熱温度が異なるように設定されているため、熱転写に必要な熱を最適な温度で転写シート50に伝えることができ、さらに確実に、かつ、効率的に、転写マーク51の生地(被転写物)60への熱転写を行うことができる。
【0042】
また、本発明の実施の形態の熱転写方法によれば、転写マーク51の外形と同形の下加圧部31が上方に突出した下転写型30に、転写マーク51が上側を向き、かつ、転写マーク51の外形が下加圧部31と同形となって重なる位置となるように、転写シート50を配置し、その上に生地(被転写物)60を配置し、さらにその上に転写マーク51の外形と同形の上加圧部21が下方に突出した加圧加熱手段である上転写型20を、下転写型30の下加圧部31に対向して配置し、転写シート50とその上に配置された生地(被転写物)60を、下転写型30と加熱状態の上転写型20とで挟持して、生地(被転写物)60に転写シート50の転写マーク51を熱転写させる熱転写方法とすることで、熱転写したマーク51の周囲の生地(被転写物)60に熱転写跡を生じさせずに、確実に、生地(被転写物)60に転写シート50の転写マーク51を熱転写させることができる。
【0043】
その結果、周囲の生地(被転写物)60が綺麗な状態を保ったままで、確実な熱転写を行うことができ、さらに、熱転写跡を消すための余分な作業を行う必要がないため、生産効率を向上させることができる。
【0044】
なお、以上説明した実施の形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。
【0045】
例えば、前記した実施の形態では、被転写物として衣料品の生地60を用いたが、本発明はこれに限るものではなく、被転写物としては、布地やフィルム等、転写マークを熱転写した際に熱転写跡が残ってしまう虞のある種々のものが適用可能である。
【0046】
また、被転写物に転写する転写マークとしては、比較的小さなワンポイントのロゴのようなものから、比較的大きなもの(例えば、シャツの背中全面に転写する図柄や模様等)まで、種々の大きさ、形状等のものが適用可能である。
【0047】
また、前記した実施の形態では、上転写型20の加熱温度を160℃、下転写型30の加熱温度を70〜80℃、加圧装置16による上転写型20の加圧する圧力を1気圧、加圧加熱する加工時間を10秒としたものを例に説明したが、本発明はこれに限るものではなく、被転写物や転写シール、転写マークそれぞれの素材や厚さ、接着剤の種類、気候条件等に応じて、これらのパラメータは適宜設定することが可能である。また、上転写型20の加熱のみで十分熱転写を行うことができる場合は、上転写型20のみを加熱し、下転写型30は加熱しない構成も可能である。さらに、下転写型30の加熱のみで十分熱転写を行うことができる場合は、下転写型30のみを加熱し、上転写型20は加熱しない構成も可能である。
【0048】
また、前記した実施の形態では、転写シート規制部32は下加圧部31を囲む略長方形状の枠状のものであったが、本発明はこれに限るものではなく、例えば爪状の部材で転写シートの四辺を係止する等、転写シートの配置位置を規制することができるものであれば、適宜の構成で良い。
【0049】
また、前記した実施の形態では、作動スイッチ19を押すことで上転写型20及び下転写型30の発熱装置を作動させると共に、加圧装置16の作動を開始させるようになっていたが、本発明はこれに限るものではなく、例えば、上転写型や下転写型の加熱は、スイッチ操作に関係なく常に行うようになっており、当該状態で作動スイッチが押された場合に、加圧装置が作動を開始して上転写型が下方に移動を開始するようになっていても良い。このようにすることで、上転写型や下転写型の加熱温度が所定温度に到達するのを待つ必要がなくなり、作業を迅速に行うことができるものである。
【符号の説明】
【0050】
10 熱転写機
11 脚部
12 台盤
13 作業台
14 支柱
15 支持部材
16 加圧装置
17 電源装置
18 孔部
19 作動スイッチ
20 上転写型
21 上加圧部
30 下転写型
31 下加圧部
32 転写シート規制部
33 角部
40 転写補助部材
50 転写シート
51 転写マーク
60 生地(被転写物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写シートに配された転写マークを、被転写物に熱転写する熱転写機であって、
前記転写シート及び前記被転写物に上から圧力を加える加圧手段であり、前記転写マークの外形と同形の上加圧部が下方に突出した上転写型と、
該上転写型の前記上加圧部に対向して前記転写シート及び前記被転写物に下から圧力を加える加圧手段であり、前記転写マークの外形と同形の下加圧部が上方に突出した下転写型と、
を有しており、
前記上転写型と前記下転写型の少なくとも一方は、前記転写シート及び前記被転写物に圧力を加えると共に前記転写シート及び前記被転写物を加熱する加圧加熱手段となっていることを特徴とする熱転写機。
【請求項2】
前記下転写型は、該下転写型に前記転写シートを前記転写マークが上側を向くように配置する際に、前記転写マークの外形が前記下加圧部と同形となって重なる位置に配置されるように、前記転写シートの配置位置を規制する転写シート規制部を有することを特徴とする請求項1に記載の熱転写機。
【請求項3】
前記上転写型及び前記下転写型の双方が加圧加熱手段となっており、
前記上転写型と前記下転写型の加熱温度が異なるように設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱転写機。
【請求項4】
転写シートに配された転写マークを、被転写物に熱転写する熱転写方法において、
前記転写シート及び前記被転写物に下から圧力を加える加圧手段であって前記転写マークの外形と同形の下加圧部が上方に突出した下転写型に、前記転写マークが上側を向き、かつ、前記転写マークの外形が前記下加圧部と同形となって重なる位置となるように、前記転写シートを配置し、
その上に、前記被転写物を配置し、
さらにその上に、前記転写シート及び前記被転写物に上から圧力を加えると共に前記転写シート及び前記被転写物を加熱する加圧加熱手段であって前記転写マークの外形と同形の上加圧部が下方に突出した上転写型を、前記下転写型の前記下加圧部に対向して配置し、
前記転写シートとその上に配置された前記被転写物を、前記下転写型と加熱状態の前記上転写型とで挟持して、前記被転写物に前記転写シートの前記転写マークを熱転写させることを特徴とする熱転写方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−30823(P2012−30823A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170563(P2010−170563)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(504415186)株式会社エスポアール (4)
【Fターム(参考)】