説明

熱転写記録方法および熱転写記録装置

【課題】階調性豊かなカラー画像のような多値画像、文字画像のような2値画像、および、偽変造防止可能な蛍光画像をそれぞれ高画質な画像で記録することができる熱転写記録方法および熱転写記録装置を提供することである。
【解決手段】実施形態に係る熱転写記録方法は、記録する画像データに応じてサーマルヘッドの各発熱体を選択的に通電駆動して、熱転写インクリボンから熱溶融性インク層のインクを中間転写体の受像層に熱転写することにより中間転写体の受像層に画像を形成し、この画像が形成された中間転写体の受像層を被記録媒体に圧力と熱により転写することにより画像記録を行なうもので、多値画像を記録するときは、偶数番目と奇数番目の画素を記録ラインごとに交互に形成し、2値画像を記録するときは、サーマルヘッドの発熱体並びに画素を形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、熱転写記録方法および熱転写記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の運転免許証、パスポート、クレジットカード、会員証などの個人認証用の顔画像が入った画像表示体に顔画像を記録する方法としては、昇華型熱転写記録方法が主流となっている。この昇華型熱転写記録方法は、フィルム状支持体の上に昇華性(あるいは、熱移行性)の染料を熱転写可能にコーティングしてなる熱転写リボンと、昇華性染料を受容できる受容層を有する被記録媒体とを重ね合わせ、サーマルヘッドなどにより、画像データに基づき熱転写リボンを選択的に加熱し、被記録媒体に所望の画像を昇華転写記録するものである。
【0003】
この昇華型熱転写記録方法によれば、階調性豊かなカラー画像が手軽に記録できることは広く一般的に知られている。しかし、昇華型熱転写記録方法では、昇華性材料で染色できる材料が限られており、限られた被記録媒体に対してのみしか適応できないという欠点がある。また、一般的に昇華性染料は、耐光性、耐溶剤性などの画像耐久性が劣っているという欠点もある。さらに、昇華性染料には、紫外線励起型の蛍光染料はなく、偽造防止策は別に設けなければならない。
【0004】
一方、溶融型熱転写記録方法は、フィルム状支持体の上に着色顔料あるいは染料を樹脂やワックスなどのバインダに分散させたものをコーティングしてなる熱転写リボンを選択的に加熱し、被記録媒体にバインダごと転写し、所望の画像を記録するものである。
【0005】
この溶融型熱転写記録方法によれば、着色材料を一般的に耐光性のよいといわれる無機および有機顔料を選択できる。また、バインダに用いる樹脂やワックスなどを工夫することができるため、耐溶剤性を向上させることができる。基本的にバインダに対する接着性を有している被記録媒体であれば何でもよく、幅広い被記録媒体を選択することができるなど、昇華型熱転写記録方法に対して利点がある。
【0006】
しかし、溶融型熱転写記録方法は、転写したドットのサイズを変化させて階調記録を行なうドット面積階調法を用いているため、ドットサイズを正確にコントロールして多階調記録を行なうのには、様々な工夫が必要となる。たとえば、転写ドットの配列をいわゆる千鳥状に並べて記録する方法(以降、これを交互駆動方法と称す)がある。この交互駆動方法を用いると、サーマルヘッドの隣り合う発熱体の熱干渉が減らせられ、隣接画素の影響を受けることなく、ドットサイズをコントロールすることができるため、良好な多階調記録を行なうことができる。
【0007】
また、ドットサイズを正確にコントロールするためには、被記録媒体の表面状態が良好であることが必要であるが、幅広い被記録媒体の選択性を有する溶融型熱転写記録方法の利点を阻害してしまう。
【0008】
そこで、表面状態が良好な受像層を有する中間転写体上に多階調記録を行なった後、中間転写体の受像層を、被記録媒体に転写するような間接転写記録方式が考案されている。この方式によれば、中間転写体を被記録媒体に転写可能なように調整しさえすれば、被記録媒体を選ぶ必要がないため、どのような被記録媒体に対しても、多階調記録を行なうことができる。
【0009】
しかし、上記方法にも以下のような課題がある。
たとえば、画像解像度が上がると、より小さいサイズにドットサイズをコントロールする必要があるが、インク層の厚みが1μm以上ある従来のインクリボンでは、300dpi以上の解像度では追従できず、画質が劣化してしまうという課題がある。
【0010】
インクリボンのインク層の厚みを1μm以下にすれば、高解像度に追従できるようになるが、1つの発熱体で1画素を形成するような従来のサーマルヘッドで交互駆動すると、発熱体中央部の温度が高温になりすぎるため、インク層を破壊してしまい、画質が劣化してしまうという課題がある。
【0011】
また、熱転写記録方法、特に溶融型熱転写記録で階調記録を行なう場合、サーマルヘッドとインクリボンと被記録媒体とを圧接するためのプラテンローラの表面平滑度が低いと、プラテンローラ表面の凹凸によりインク層と被記録媒体の受像層との接触が阻害され、画質が劣化してしまうという課題がある。
【0012】
多階調記録を行なう場合は、交互駆動にし、文字画像のような2値画像の記録を行なう場合は、画素並び通りに駆動するように設定しなければならないが、従来はプリンタに装備されている画像処理部でこの設定を行なっていて、画像処理部が複雑になるばかりでなく、価格も高価なものになってしまうという課題がある。
【0013】
また、文字画像などの2値画像を記録するためのブラックインクや偽造防止などのための蛍光インクなどは、顔画像などの多階調画像の記録を行なうためのカラーインクとは異なった組成で作成されており、ブラックのみのグレースケールや蛍光画像の多階調記録では、ディザなどの疑似階調方式で記録を行なうか、あるいは、ブラックのグレースケールあるいはカラーインクを重ね合わせることにより実現させていた。このため、画質が劣化したり、カラーインクの消費量が増加するため、コストアップになってしまったりという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特公平6−59739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明が解決しようとする課題は、階調性豊かなカラー画像のような多値画像、文字画像のような2値画像、および、偽変造防止可能な蛍光画像をそれぞれ高画質な画像で記録することができる熱転写記録方法および熱転写記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
実施形態に係る熱転写記録方法は、複数色の熱溶融性インク層をフィルム状支持体の一方の面に形成してなり、かつ、前記複数色の熱溶融性インク層の厚みが0.4〜1μmの間の所望の値に設定された熱転写インクリボンと、この熱転写インクリボンから前記複数色の熱溶融性インク層のインクを熱転写可能な受像層がフィルム状支持体の一方の面に形成されてなる中間転写体と、複数の発熱体をライン状に配列してなるサーマルヘッドと、これらサーマルヘッドと熱転写インクリボンと中間転写体とを重ねた状態で圧接するゴム硬度が80度以上の弾性体により形成されたプラテンローラとを有し、記録する画像データに応じて前記サーマルヘッドの各発熱体を選択的に通電駆動して、前記熱転写インクリボンから熱溶融性インク層のインクを前記中間転写体の受像層に熱転写することにより前記中間転写体の受像層に画像を形成し、この画像が形成された前記中間転写体の受像層を被記録媒体に圧力と熱により転写することにより画像記録を行なうもので、多値画像を記録するときは、偶数番目と奇数番目の画素を記録ラインごとに交互に形成し、2値画像を記録するときは、前記サーマルヘッドの発熱体並びに画素を形成することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係るサーマルヘッドの発熱体を交互駆動したときのドットの配置例を示す図。
【図2】実施形態に係るサーマルヘッドの発熱体と熱転写インクリボンのインク層内での温度分布を示す概略図。
【図3】実施形態に係るサーマルヘッドの発熱体の概略構成とそれに対応するインク層内での温度分布を示す概略図。
【図4】実施形態に係るサーマルヘッドの概略構成図。
【図5】実施形態に係るサーマルヘッドの発熱体の電気的な等価回路を示す回路図。
【図6】実施形態に係る中間転写体の構成を模式的に示す縦断側面図。
【図7】実施形態に係る熱転写インクリボンの構成を模式的に示すもので、(a)図は平面図、(b)図は縦断側面図。
【図8】実施形態に係るプリンタシステムの概略的に示すブロック図。
【図9】実施形態に係る画像情報の画素配列を示す概略図。
【図10】実施形態に係る画像情報の画素配列を示す概略図。
【図11】図8におけるプリンタの構成を模式的に示す概略構成図。
【図12】図11のプリンタの動作を説明するための図。
【図13】実施形態に係るインク層の厚みに対する反射濃度の特性を示すグラフ。
【図14】実施形態に係るプラテンの硬度に対する反射濃度の特性を示すグラフ。
【図15】実施形態に係るサーマルヘッドとプラテンとの圧接力に対する反射濃度の特性を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。
まず、本実施形態に係るサーマルヘッドの発熱体の交互駆動、詳しくはドットを千鳥状に配列させて記録する方法について説明する。
【0019】
サーマルヘッドの発熱体の交互駆動は、奇数ラインの奇数番目の発熱体と偶数ラインの偶数番目の発熱体とを記録ラインごとに交互に駆動する方法である。このように交互駆動した場合、記録されたドット1は、図1に示すように千鳥状に配列されて画像を形成する。ここで、主走査方向は、サーマルヘッドの発熱体並び方向であり、副走査方向はそれと直行する方向である。
【0020】
図2は、サーマルヘッドの発熱体と熱転写インクリボンのインク層内での温度分布を示すもので、図中の符号2はサーマルヘッドの発熱体を示している。交互駆動ではなく、全部の発熱体2を駆動して記録する場合は、図2(a)に示すように、隣接する発熱体2間の距離が狭いため、熱干渉を起こし、温度分布が平坦な形状になっている(図中の実線a)。すなわち、隣接する発熱体2間で温度コントラストがない状態になっている。このため、正確なドットサイズ変調が行なえず、多階調記録が困難になる。
【0021】
一方、図2(b)に示すように、記録ラインごとに隣接する発熱体2を駆動しない交互駆動の場合、駆動している発熱体2間の距離が広いこと(詳しくは発熱体並びピッチの2倍の距離)、サーマルヘッド内では駆動していない発熱体2に熱が逃げるため、熱干渉をほとんど起こすことがなく、温度分布は急峻な形状になっている(図中の実線b)。すなわち、隣接する発熱体2間で温度コントラストを取ることができている。
【0022】
このように、交互駆動を行なうことにより、孤立ドットを確実に形成でき、さらに、ドットサイズを隣接ドットの影響を受けることなく、確実に変調することができ、面積階調を利用した多階調記録が可能になる。
【0023】
図3は、サーマルヘッドの発熱体の概略構成と、それに対応するインク層内での温度分布を示し、図4はサーマルヘッドの概略構成を示すものである。本実施形態では、サーマルヘッドは、図4(a)に示すようなエッジ型のサーマルヘッド3であり、発熱体2がサーマルヘッド3の先端近傍に形成されている。エッジ型のサーマルヘッド3は、後述する図11に示すように、プラテン押当部の接線方向に対して傾けて設置できるため、被記録媒体の給紙が容易に行なわれ、また、平面型のサーマルヘッドと比べてスペースを要しないため、装置の小型化に優位であるという利点がある。
【0024】
また、本実施形態のエッジ型のサーマルヘッド3では、図3(a)に示すように、2つの発熱体2a,2bを1組として1画素を形成するような構成になっている。発熱体を発熱させるために流す電流は、図示矢印cで示すように、2つの発熱体2a,2bを直列に通り、図示しない駆動回路を経て、電源へと戻ってくる。すなわち、他の組の発熱体とは、電源への配線を除いて、電流路を共通にしていない。
【0025】
一方、図4(b)に示す通常の平面型のサーマルヘッド4では、図3(b)に示すように、1つの発熱体2で1画素を形成するような構成になっている。発熱体を発熱させるために流す電流は、図示矢印dで示すように、発熱体2を通り、全ての発熱体2が接続された共通電極5を経て、電源に戻ってくる。
【0026】
これを電気的な等価回路で表わしたものが図5である。図5(a)は、エッジ型のサーマルヘッド3のもの、図5(b)は平面型のサーマルヘッド4のものである。図5(a)のRi1、Ri2は、発熱体2a,2bの抵抗を示している。図5(b)のRiは、発熱体2の抵抗を示し、Rcは共通電極5の抵抗を示している。図5(b)のように、平面型のサーマルヘッド4の発熱体2は、共通電極5と直列に接続された並列抵抗群として表わすことができる。抵抗RcはRiよりも小さいため、駆動する発熱体が少ない場合は、そこでの電圧降下は無視できる状態になっている。
【0027】
しかし、駆動する発熱体の数が多くなると、並列抵抗群である発熱体全体の値が下がるため、抵抗Rcでの電圧降下が無視できなくなり、発熱体にかかる電圧が下がり、発熱量が減ってしまう。すなわち、発熱量が駆動数で変化してしまう。これに対し、図5(a)のように、エッジ型サーマルヘッド3では、共通電極5がないため、発熱体にかかる電圧は駆動数により変化しない。このため、エッジ型のサーマルヘッド3では、平面型サーマルヘッド4のように、駆動数に応じた制御が必要なくなり、駆動制御が簡素化されるという利点もある。
【0028】
また、エッジ型のサーマルヘッド3では、2つの発熱体2a,2bを1組としているため、インク層内での温度分布は、図3(a)に示すeのように、発熱体の中央部が高温で、2つの発熱体2a,2b間の温度が多少下がった分布になり、画素の中央部が高温になることはない。
【0029】
一方、平面型のサーマルヘッド4では、1つの発熱体2を発熱させているため、インク層内での温度分布は、図3(b)に示すfのように、発熱体2の中央部の温度は高温になっている。
【0030】
交互駆動をする場合、隣の発熱体位置まで転写温度に熱してやらなければならないため、平面型サーマルヘッド4では、発熱体の中央部の温度が上がりすぎ、インクリボンの破損などを引き起こす可能性があった。これに対し、高温部が隣の発熱体に近づき、画素の中央部が高温にならないエッジ型のサーマルヘッド3では、交互駆動をしてもインクリボンの破損などを引き起こすことがないという利点もある。
【0031】
次に、本実施形態に係る中間転写体および熱転写インクリボンについて説明する。
図6は、本実施形態に係る中間転写体の構成を模式的に示すものである。中間転写体6は、長尺フィルム状の支持体7の一面に、ワックスからなる離型層8、樹脂からなる保護層9、受像層10の順に積層形成されている。支持体7は、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(以降、単にPETと略称する)、あるいは、ポリエチレンナフタレート(以降、単にPENと略称する)などのフィルム状合成樹脂が好適に使われる。本実施形態では、たとえば、厚さが25μmのPETとした。
【0032】
受像層10は、後述するインクリボンのインク層と相性が良いこと、受像表面が平滑であることが要求され、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、スリレン系樹脂、あるいは、これらの混合樹脂などが好適に使われる。本実施形態では、たとえば、ウレタン系樹脂とエポキシ系樹脂を主とした混合樹脂とし、厚さが5μmで、支持体上にコートした。
【0033】
ここで、保護層9には、ホログラムなどの偽変造防止策を施してある場合が多い。本実施形態でも、ホログラムを施したものを使用した。保護層9の厚みは10μmとした。
【0034】
図7は、本実施形態に係る熱転写インクリボンの構成を模式的に示すものである。熱転写インクリボン11は、長尺フィルム状の支持体12の一面に、複数色の熱溶融性インク層としてのイエローインク層13、マゼンタインク層14、シアンインク層15、ブラックインク層16、蛍光インク層17がその順に並んで形成されている。ここで、上記各インク層13〜17の順番は、上記順番である必要性はなく、インク層の透明度などから決まる順番で並べられていればよい。
【0035】
支持体12は、たとえば、厚さが2〜6μmのPETなどの合成樹脂フィルムである。本実施形態では、厚さが4.5μmのPETとした。各インク層13〜17は、樹脂などからなるバインダ中に無機顔料、有機顔料と微粒子を分散したものである。
【0036】
バインダとしては、酢ビ−塩ビ共重合体、酢ビ−エチレン共重合体、飽和ポリエステル樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、あるいは、スチレン系樹脂などの熱溶融性で、かつ、無色透明あるいは単色透明の樹脂で、融点が約60℃〜約100℃のものが好適に用いられる。本実施形態においては、中間転写体6との相性から、飽和ポリエステル樹脂を主成分とするバインダとした。また、微粒子は顔料の分散剤などであるが、本実施形態ではシリカを含有した。
【0037】
なお、本実施形態では、各色インクのドットを順次重ねて転写し、所望の色を表現するため、先に転写してあるインクが厚いと、そのドットの凹凸の影響を強く受け、転写不良やドットの欠けなどを生じる場合があるため、インク層13〜17の厚みはできる限り薄い方が好ましい。
【0038】
また、低濃度領域を表現するためには、できるだけ小さいサイズのドットを再現しなければならず、小さいドットを再現するためには、インク層が薄いことが望ましい。後述するように、インク層13〜17の厚みは、0.4μm〜1μmであることが望ましい。本実施形態では0.4μmとした。インクのドットの重ね順や記録濃度との関係から、各色それぞれインク層圧を変えてはいるが、全て0.4μm〜1μmの範囲に入るように調整されている。
【0039】
次に、本実施形態に係るプリンタシステムについて説明する。
図8は、本実施形態に係るプリンタシステムの構成を概略的に示すものである。本プリンタシステムは、ディスプレイ42を備えたパーソナルコンピュータ(以降、単にパソコンと略称する)41とプリンタ43とを双方向通信手段44で接続した構成になっている。パソコン41には、画像処理手段としての画像処理部45、および、画像展開処理手段としての画像展開処理部46が設けられている。また、プリンタ43には、記録制御手段としての記録制御回路47が設けられている。
【0040】
パソコン41には、プリンタ43で記録するための画像情報として、たとえば、図示しないスキャナやデジタルカメラなどから顔画像情報、文字画像情報、その他の多値画像情報などが入力される。パソコン41では、画像処理部45において、入力された顔画像情報およびその他の多値画像情報に対して色変換、エッジ強調などの画像処理が施される。また、文字画像情報は、所望のフォントからビットマップデータへの変換が行なわれる。
【0041】
画像処理部45で画像処理が施された多値画像情報とビットマップデータに変換された文字画像情報は、画像展開処理部46において画像展開が行なわれる。すなわち、画像展開処理部46では、入力された情報が文字画像か多値画像かを判断し、この判断結果が文字画像情報の場合は、ビットマップデータをプリンタ43の記録制御回路47へ記録すべき画像情報として送信する。
【0042】
一方、上記判断結果が多値画像情報の場合は、たとえば、図9、図10に示すように画素配列した後、プリンタ43の記録制御回路47へ記録すべき画像情報として送信する。図9は、画像処理部45から画像展開処理部46に送られた画像情報の画素配列を示しており、図中の数字は画素の主走査方向、副走査方向のライン数である。この副走査方向の1ライン(たとえば、図中の副走査ライン番号1−主走査ライン番号1〜512)の記録は、サーマルヘッド駆動用データに展開した後、図示しないサーマルヘッドに搭載された駆動回路に1ライン分のデータを転送し、サーマルヘッドを駆動して行なわれる。
【0043】
サーマルヘッドの発熱体の交互駆動は、副走査方向の奇数ラインの奇数番目の発熱体と偶数ラインの偶数番目の発熱体を記録ラインごとに交互に駆動するため、画像情報は図10に示すように、記録を行なわない(発熱体を駆動しない)データ、この例では「0」データを千鳥状に配列し、画像情報に応じて記録を行なう画素情報を「0」データではない部分に配列したものになる。
【0044】
このように、画像展開処理部46では、図9の画素配列を図10のような画素配列に変換した後、それをプリンタ43の記録制御回路47へ記録すべき画像情報として送信する。
【0045】
また、プリンタ43の記録制御回路47とパソコン41は、SCSIやUSBなどの双方向通信手段44により接続されていて、記録すべき画像情報をパソコン41からプリンタ43の記録制御回路47へと送信したり、記録開始信号を送信するなどを行なう。プリンタ43の記録制御回路47では、パソコン41から双方向通信手段44を介して画像情報を受信し、それをサーマルヘッド駆動信号に変換したり、全体的な記録動作の制御をするなどしている。
【0046】
上記したように、交互駆動用の画素配列をパソコン41の画像展開処理部46で行なうことにより、プリンタ43の記録制御回路47は、サーマルヘッド駆動信号に変換するだけでよく、回路を複雑にすることはない。このため、記録制御回路47をより簡単かつ安価にすることができる。
【0047】
次に、図8に示したプリンタ43について詳細に説明する。
図11は、プリンタ43の構成を模式的に示すものである。図11において、ゴムなどの弾性体により構成されたプラテンローラ21上には、熱記録手段としてのサーマルヘッド22が設けられている。サーマルヘッド22は、前述したようにエッジ型のサーマルヘッドであり、前述した熱転写インクリボン11と中間転写体6とを介してプラテンローラ21上に接離可能に設けられている。熱転写インクリボン11は、供給コア23によりプラテンローラ21とサーマルヘッド22との間に供給され、巻取りコア24により巻取られるようになっている。
【0048】
プラテンローラ21の近傍で、中間転写体6の搬出側には、搬出される中間転写体6を受取って搬送するクランプローラ25が設けられている。クランプローラ25の上には、中間転写体6を掴むためのクランプ26が設けられている。クランプローラ25の搬出側には、クランプローラ25で搬出される中間転写体6を搬送する搬送ローラ27が設けられている。
【0049】
搬送ローラ27の前方には、転写手段としてのヒートローラ28およびこれに対向する対向ローラ29が設けられている。ヒートローラ28は、対向ローラ29とにより、搬送ローラ27で供給される中間転写体6と別途供給される被記録媒体30(図示しない)とを重ね合わせて圧接し、回転しながら中間転写体6に熱を加えることにより、被記録媒体30に中間転写体6を転写するようになっている。
【0050】
中間転写体6は、供給コア31によりプラテンローラ21とサーマルヘッド22との間に供給された後、クランプローラ25、搬送ローラ27を経てヒートローラ28へと供給され、ここで転写された後、剥離ローラ32を経て図示しない巻取りコアに巻取られるようになっている。
【0051】
このような構成において、パソコン41から記録開始信号が供給されると、熱転写インクリボン11は記録開始位置まで巻取りコア24により巻取りが行なわれる。ついで、クランプ26とクランプローラ25とで中間転写体6を掴むとともに、サーマルヘッド22、熱転写インクリボン11、および、中間転写体6をプラテンローラ21側に所望の圧力で圧接させることにより、記録動作が開始される。
【0052】
記録動作は、記録制御回路47から送られる画像情報に応じたサーマルヘッド駆動信号によりサーマルヘッド22を駆動するとともに、図12(a)に示すように、クランプ26とクランプローラ25とで中間転写体6を掴みながら、記録周期に応じた回転速度でクランプローラ25を回転させることにより行なわれる。このとき、プラテンローラ22は、位置精度の問題から強制回転はさせていない。
【0053】
1色目の記録が終了すると、サーマルヘッド22および熱転写インクリボン11が中間転写体6から離れ、一方、供給コア31、クランプローラ25が記録動作時とは反対方向に回転して、中間転写体6を記録開始位置まで供給コア31側に排出する。ついで、再び記録動作が繰り返され、順次、3色の記録が行なわれる。
【0054】
3色の記録が全て終了すると、供給コア31およびクランプローラ25は記録開始位置まで中間転写体6を供給コア31側に排出し、中間転写体6はクランプ27から解放される。
【0055】
次に、図12(b)に示すように、クランプ26から解放された中間転写体6は、搬送ローラ27によりヒートローラ28へ供給される。ヒートローラ28に中間転写体6が供給されると、図示しない被記録媒体供給トレーから被記録媒体30が供給される。ここで、中間転写体6の画像領域先端部と被記録媒体30の先端部との位置合わせが行なわれ、ヒートローラ28と対向ローラ29とにより中間転写体6と被記録媒体30とが圧接される。ついで、ヒートローラ28が回転し、中間転写体6に熱を加えつつ、被記録媒体30に転写しながら、剥離ローラ32側に排出を行なう。
【0056】
剥離ローラ32は、中間転写体6の離型層8から支持体7を剥離し、保護層9および受像層10を被記録媒体30へと転写を行なう。被記録媒体30の後端がヒートローラ28を通り過ぎたとき、中間転写体6の転写動作が終了する。中間転写体6の転写動作が終了すると、中間転写体6の記録開始位置まで中間転写体6を供給コア31により巻き戻し、再び上記同様な記録動作が開始される。
【0057】
次に、本実施形態に係る熱転写インクリボン11、プラテンローラ21、サーマルヘッド22とプラテンローラ21との圧接力の作用効果について説明する。
【0058】
図13は、代表として、ブラックインク層の厚みを変えたときの多値画像の反射濃度を示している。同図(a)は再現可能な最小濃度を示し、同図(b)は最大濃度を示している。同図は、前記プリンタ43によりグラデーションパターンを記録し、最小濃度部と最大濃度部をマクベス濃度計により、10点の濃度を測定したときの平均濃度である。必要最小濃度は、画像にもよるが、本実施形態は主に顔画像を記録することを目的としており、0.2以下であることが望ましい。同図(a)において、反射濃度が0.2以下になるインク層の厚みは1.0μm以下である。
【0059】
また、必要最大濃度も画像によるが、顔画像を記録するためには1.5以上であることが望ましい。同図(b)によれば、最大濃度が1.5以上になるインク層の厚みは0.4μm以上である。つまり、最小濃度が0.2以下、最大濃度が1.5以上とするためには、インク層の厚みは0.4〜1.0μmである必要があることがわかる。本実施形態においては、全てのインク層を1μm以下にしてあるため、どのインク層を用いても、多値画像を記録できるばかりでなく、2値画像においても充分な濃度を出すことができ、高画質な画像を実現することができる。
【0060】
図14は、プラテン21のゴム硬度を変えたときの多値画像のブラックインクの反射濃度ばらつきを示している。同図の2つの横ライン距離(縦ラインの長さ)は標準偏差を表わしている。同図は、反射濃度が1.0である中間調ベタパターンを記録し、マクベス濃度計により、10点の濃度を測定したときの標準偏差である。
【0061】
顔画像を記録する場合、特に中間調領域の再現性が良いことが望ましく、そのばらつき範囲は±1%以下であることが望ましい。図14のように、プラテン21のゴム硬度が80度以上になると、ばらつき(標準偏差)範囲が±1%以下にできる。つまり、プラテン21のゴム硬度は、80度以上ある必要があることがわかる。
【0062】
図15は、サーマルヘッド22とプラテンローラ21との圧接力を変えたときの多値画像の反射濃度ばらつきを示している。同図の2つの横ライン距離(縦ラインの長さ)は標準偏差を表わしている。同図は、反射濃度が1.0である中間調ベタパターンを記録し、マクベス濃度計により、10点の濃度を測定したときの標準偏差である。同図のように、反射濃度ばらつきを±1%以下にできるのは、圧接力が3.0N/cm以上である。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0064】
2,2a,2b…発熱体、3…エッジ型サーマルヘッド、6…中間転写体、7,12…支持体、8…離型層、9…保護層、10…受像層、11…熱転写インクリボン、13…イエローインク層、14…マゼンタインク層、15…シアンインク層、16…ブラックインク層、17…蛍光インク層、21…プラテンローラ、22…サーマルヘッド、28…ヒートローラ、30…被記録媒体、41…パソコン(コンピュータ)、42…ディスプレイ、43…プリンタ、44…双方向通信手段、45…画像処理部、46…画像展開処理部、47…記録制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数色の熱溶融性インク層をフィルム状支持体の一方の面に形成してなり、かつ、前記複数色の熱溶融性インク層の厚みが0.4〜1μmの間の所望の値に設定された熱転写インクリボンと、この熱転写インクリボンから前記複数色の熱溶融性インク層のインクを熱転写可能な受像層がフィルム状支持体の一方の面に形成されてなる中間転写体と、複数の発熱体をライン状に配列してなるサーマルヘッドと、これらサーマルヘッドと熱転写インクリボンと中間転写体とを重ねた状態で圧接するゴム硬度が80度以上の弾性体により形成されたプラテンローラとを有し、
記録する画像データに応じて前記サーマルヘッドの各発熱体を選択的に通電駆動して、前記熱転写インクリボンから熱溶融性インク層のインクを前記中間転写体の受像層に熱転写することにより前記中間転写体の受像層に画像を形成し、この画像が形成された前記中間転写体の受像層を被記録媒体に圧力と熱により転写することにより画像記録を行なうもので、多値画像を記録するときは、偶数番目と奇数番目の画素を記録ラインごとに交互に形成し、2値画像を記録するときは、前記サーマルヘッドの発熱体並びに画素を形成することを特徴とする熱転写記録方法。
【請求項2】
複数の発熱体をライン状に配列してなるサーマルヘッドと、
複数色の熱溶融性インク層をフィルム状支持体の一方の面に形成してなり、かつ、前記複数色の熱溶融性インク層の厚みが0.4〜1μmの間の所望の値に設定された熱転写インクリボンと、この熱転写インクリボンから前記複数色の熱溶融性インク層のインクを熱転写可能な受像層がフィルム状支持体の一方の面に形成されてなる中間転写体とを前記サーマルヘッドと重ねた状態で圧接するゴム硬度が80度以上の弾性体により形成されたプラテンローラと、
記録する画像データに応じて前記サーマルヘッドの各発熱体を選択的に通電駆動して、前記熱転写インクリボンから熱溶融性インク層のインクを前記中間転写体の受像層に熱転写することにより前記中間転写体の受像層に画像を形成するもので、多値画像を記録するときは、偶数番目と奇数番目の画素を記録ラインごとに交互に形成し、2値画像を記録するときは、前記サーマルヘッドの発熱体並びに画素を形成するように前記サーマルヘッドを駆動する記録制御部と、
この画像が形成された前記中間転写体の受像層を被記録媒体に圧力と熱により転写することにより被記録媒体に画像記録を行なう転写部と、
を具備したことを特徴とする熱転写記録装置。
【請求項3】
前記熱転写インクリボンの複数色の熱溶融性インク層は、着色剤およびバインダ樹脂を主成分として形成されていることを特徴とする請求項2記載の熱転写記録装置。
【請求項4】
前記サーマルヘッドとプラテンローラとの圧接力を3.0N/cm以上としたことを特徴とする請求項2記載の熱転写記録装置。
【請求項5】
前記熱転写インクリボンの複数色の熱溶融性インク層は、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインク、無色あるいは淡色の紫外線励起の蛍光インクからなることを特徴とする請求項2記載の熱転写記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−183811(P2011−183811A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102999(P2011−102999)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【分割の表示】特願2001−248096(P2001−248096)の分割
【原出願日】平成13年8月17日(2001.8.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】