説明

熱量計を動作させるための方法

【課題】熱量計、特に反応熱量計を動作させるための方法、およびその方法を実施するために動作可能な熱量計を提供すること。
【解決手段】装置は、反応媒体を受け取るための反応器(1)と、反応器ジャケット(2)と、反応器(1)内に配置され、第1のコントローラ(6)を用いて制御される内部ヒータ(4)と、反応器(1)と熱接触し、第2のコントローラ(10)を用いて制御される外部サーモスタット(9)と、反応器温度(T)を決定するために反応器(1)内に配置される測定センサ(5)とを含み、反応器温度(T)が、内部ヒータ(4)によって反応器(1)に供給される熱によってならびに外部サーモスタット(9)によって運び込まれるおよび/または運び出される熱によって制御されること、ならびに内部ヒータ(4)のおよび外部サーモスタットの加熱パワーが、反応器温度の変化または偏差(ΔT)に応じて動的に制御されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱量計、特に反応熱量計を動作させるための方法、およびその方法を実施するのに適した熱量計に関する。
【背景技術】
【0002】
熱量計は、化学的および/または物理的な反応および変換に関連する熱流量を測定する。これらの熱流量は、反応媒体の熱力学的および運動学的な量を決定するように働く。使用できる反応媒体は、ほとんどの場合適切な溶媒中に溶解される純物質または物質の混合物を含む。反応媒体は、液体または気体とすることができる。
【0003】
反応熱量計はさらに、化学的および/もしくは物理的反応の安全性に関連するデータを得るために、または例えばいわゆるスケールアッププロセスに、即ち、大容量処理システム内で小容量実験室反応を再現するのに必要とされる種類のデータを構築するために使用することができる。
【0004】
反応熱量計は、少なくとも部分的には反応器ジャケット内に入れられた、反応媒体を受け取るための、反応器または適切な容器を含むことができる。反応媒体の温度は、いろいろな方法で制御することができる。
【0005】
最新技術の反応熱量計は、多くの場合、熱流量原理に従ってまたはパワー補償の原理に従って動作される。
ほとんどの場合に等温条件で実施されるパワー補償原理のもとでは、補償ヒータは、熱量計の反応器内に配置される。補償ヒータは、反応媒体に直接作用することができ、反応器内の温度および/または反応媒体の温度を制御するために使用される。関連するサーモスタットを用いて、反応器ジャケットの温度は、本質的に反応温度より下のレベルで一定に保たれる。
【0006】
測定の始めに、ある量の加熱パワーが、補償ヒータによって反応媒体に供給される。反応の過程では、反応が、吸熱性または発熱性反応であるかに応じて、加熱パワーの供給は、増加されまたは減少される。
【0007】
熱の直接供給のため、反応器内の温度変動は、素早く補償することができる。加えて、供給された熱量は、直接決定することができるので、結果の分析は、比較的簡単である。
しかしながら、補償ヒータは、加熱できるだけであり、冷却することはできず、その結果、反応器への最小パワー供給は約ゼロワットである。これは、補償ヒータが、発熱性に対して測定されるべき最大発熱率に対応する速度でシステムにエネルギーを永久に供給しなければならない、即ち反応が、熱を生成しないということになる。最大発熱率は、実験の始めに常に正確に知られてはおらず、推定できるだけである。したがって、安全性の理由で、実験は、非常に高く設定される仮定最大発熱率で大部分行われ、これは、熱が、全実験中に相当にかなりの速度で補償ヒータによって反応器に供給され、続いて反応器壁を通って運び去られる必要があるということになる。
【0008】
熱が高速度で持ち込まれるため、反応媒体は、補償ヒータの近くで局所的に過熱する可能性がある。これは、反応器内で起こる反応の過程にも反応の安全性にも悪影響を有する可能性がある。加えて、測定結果は、熱伝達条件の変化に対する、したがって全体的な熱伝達係数に対する強い依存性を示し、後者は、熱流量が、例えば反応媒体の粘度の変化のために実験中に変化した場合、時間がたつと変化を受けやすい。変化は、物質を加えるまたは標本を採取する結果として、化学的または物理的処理のために、熱交換表面内で同様に生じる可能性があり、それによって全体の熱伝達係数もまた影響を受ける可能性がある。
【0009】
熱流量原理のもとでは、反応器内の温度は、反応器ジャケットの温度によって制御される。後者はほとんどの場合、冷却も加熱もできるサーモスタットに接続される。この原理は、反応媒体内での局所的過熱の状態が本質的に回避できるように、反応器ジャケットが、比較的大きな熱交換表面を反応器に提供するという利点を有する。しかしながら、温度制御は、パワー補償と比較して比較的応答が遅く、反応器ジャケットの熱容量は、測定されるべき量を決定する過程で考慮される必要がある。
【0010】
反応器ジャケットおよび補償ヒータを持つ反応熱量計は、DE4405267A1で開示され、ここで反応器ジャケットは、時間がたつと本質的に一定の温度を有し、補償ヒータは、小さな時定数で応答して、反応器を一定の温度に保つ。断熱測定に対しては、反応器ジャケットの温度は、反応器内部の温度に追随するようにすることができ、後者は、この目的のために、補助ヒータを備える。この反応熱量計は、上述の2つの原理の組合せを表す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】DE4405267A1
【特許文献2】EP1764662A1
【特許文献3】EP1890138A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明は、熱量計の安全な動作のための改善された方法を提供する目的、および適切な熱量計を提供する目的を有し、ここでパワー補償原理および熱流量原理の利点は、有利に組み合わされ、反応器ジャケット温度の自動追跡が可能である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
先の目的は、熱量計、特に反応熱量計を動作させるための方法によって満たされ、ここで熱量計は、反応媒体を受け取るための反応器と、反応器内に配置され、第1のコントローラによって制御される内部ヒータと、反応器、特に反応器の少なくとも1つの外面と熱接触し、第2のコントローラによって制御される外部サーモスタットと、反応器温度を決定するために反応器内に配置された測定センサとを含み、ここで反応器温度は、内部ヒータによって反応器に供給される熱によってならびに外部サーモスタットによって運び込まれおよび/または運び出される熱によって制御される。その方法は、内部ヒータおよび外部サーモスタットの加熱パワーが、反応器温度の変化に応じて動的に制御されることを特徴とする。
【0014】
その方法はさらに、次のステップを含む。最初に、反応器設定点温度が設定され、それは入力信号として第1のコントローラに入力される。その後に、反応器温度が、所定の時間間隔で測定されてもよく、反応器温度の設定点温度からの偏差が、第1のコントローラの制御偏差として決定されてもよい。この制御偏差は、所定の基準に従って第1の部分および第2の部分に分けられる。第1の部分は、一方では内部ヒータによって熱として反応器内に入力される。他方では、第1および第2の部分は、外部サーモスタットを制御するための第2のコントローラに入力される。その方法は、反応器に運び込まれるおよび/または反応器から運び出される熱の結果として、反応器温度を、反応器の設定点温度と一致するように調節することができるという効果を有する。
【0015】
両方のヒータの動的制御は、非常に異なる熱係数を有する反応および実験のために、同じ熱量計が使用されることを可能にするので、非常に有利である。加えて、反応器温度の偏差の大きさに応じて、後者は、内部ヒータを用いてかまたは外部サーモスタットを用いて設定点温度に調節することができるので、先の方法に従って動作される熱量計は、本質的に安全である。さらなる態様として、本発明による方法は、実験で除去されるべき熱の量を見積もる際のおよび外部サーモスタットの対応する開始温度を見積もる際の誤差を回避することができ、それによって実験の安全性を向上できるように、外部サーモスタットによって反応器に供給される熱、したがって反応器ジャケットの温度が、使用者がこれらの温度を前もって設定する必要なしにほとんど自動的に制御されることを可能にする。
【0016】
この方法に従って決定されるような制御偏差は、第1および第2のコントローラを通じて内部ヒータのおよび外部サーモスタットの温度を制御するように働く。この種の制御は、反応器設定点温度からの変化または偏差が、反応器それ自身内に配置される、比較的速く、強力な内部ヒータによっておよび、追加としてまたは別法として、もっと応答が遅い外部サーモスタットによって補償されることを可能にし、それによって測定結果の誤差が低減でき、測定がより正確になるので、有利である。
【0017】
制御偏差が、所定の時間間隔でまたは連続して決定できるように、反応器温度は、例えば所定の時間間隔でまたは連続して測定センサで測定されてもよい。
内部ヒータが、より小さな温度偏差を制御するために主として使用され、外部サーモスタットが、より大きな温度偏差を制御するために主として使用されるように、分離した第1の部分は、例えば所定の設定点範囲に対応することができる。さらに、内部ヒータおよび外部サーモスタットのそれぞれの加熱パワーまたは熱供給速度の間の比が、温度偏差の大きさに調節されるように、第1の部分は、シグモイド関数の形を有することができる。どちらの場合にも、内部ヒータの過剰な熱供給による反応媒体の局所的な過熱は、強く低減することができ、好ましくは、完全に回避することさえできる。
【0018】
第2のコントローラは、好ましくはカスケード型コントローラとして構成される。この構成では、制御偏差の第1の部分は、比例演算器(P)への入力として送られてもよく、制御偏差の第2の部分は、第2のコントローラの積分演算器(I)への入力として送られてもよい。
【0019】
好ましい実施形態では、内部ヒータは、そのパワーが第1のコントローラによって制御される電気ヒータとして構成される。電気ヒータの一例は、棒または加熱コイルの形で反応器内に配置され、反応媒体と接触させることができる抵抗ヒータである。これらのヒータは、反応器内の特に小さな温度偏差をすぐに補償できるように、制御に素早く応答する。
【0020】
外部サーモスタットの温度は、第2のコントローラによって制御される。外部サーモスタットは、反応器ジャケットと連携することができる。第2のコントローラが、カスケード型コントローラとして構成された場合、反応器ジャケットの温度が、カスケード型コントローラの内部制御ループの変数であれば有利である。反応器ジャケットは、例えばEP1764662A1で開示されるような、例えば熱分配媒体で充填された二重壁ジャケットとすることができる。さらなる可能性として、反応器ジャケットは、反応器のための空洞を含み、その温度が例えばペルチェ素子を用いて制御される金属ブロックとして構成されてもよい。この種の熱量計は、例えばEP1890138A1で述べられる。
【0021】
制御偏差の第2の部分は、好ましくは残留温度に変換され、外部サーモスタットを制御する第2のコントローラへの入力として与えられる。
先の方法に従って動作される熱量計は、反応媒体を受け取るための反応器と、反応器内に配置され、第1のコントローラによって制御できる内部ヒータと、少なくとも1つの反応器壁と熱接触し、第2のコントローラによって制御できる外部サーモスタットとを含み、ここで反応器の温度を決定するための第1の測定センサは、反応器内に配置される。内部ヒータおよび外部サーモスタットが、反応器温度の偏差に応じて動的に制御されてもよいように、反応器温度は、内部ヒータによって反応器に供給される熱によってならびに/または外部サーモスタットによって反応器に運び込まれるおよび/もしくは反応器から運び出される熱によって制御されてもよい。
【0022】
好ましい実施形態では、第2のコントローラは、カスケード型コントローラである。
本発明による方法のステップは、本発明による熱量計の制御ユニットに保存され、熱量計を制御するように働くコンピュータプログラムで実施されてもよい。
【0023】
この実施形態は、例えば熱量計の動作を自動化する可能性もまた提供するので、特に有利である。
本発明による方法を実施する能力を持つ熱量計は、いくつかの主要な比較測定と同様、次の図面に基づいてさらに詳細に論じられるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による熱量計の概略的なブロック図を表す図である。
【図2】本発明による熱量計の温度制御の簡略化された回路を示す図である。
【図3】図2のデルタTスプリッタを簡略化された表現で示す図である。
【図4】10W/L、30W/Lおよび90W/Lのパワーについて、異なる原理に従って動作される熱量計の反応熱量の比較を表す図である。
【図5】10W/L、30W/Lおよび90W/Lのパワーについて、反応器温度の制御の質の比較を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、大幅に簡略化された概略図で示される、本発明による熱量計を表す。熱量計は本質的に、ふた3で閉じることができる、反応器ジャケット2によって囲まれる反応器1を含む。反応器1内に配置されるのは、反応器内ヒータ4および撹拌器12である。ヒータ4は、好ましくは反応器1内に含まれる反応媒体を素早く加熱できる抵抗ヒータである。少なくとも1つの測定センサ5が、反応器内部の温度Tの測定のために反応器1内に配置される。測定センサ5は、センサが反応媒体内へ下降する方向で取り付けられる。
【0026】
反応器内ヒータ4および測定センサ5は、第1のコントローラ6に電子接続される。第1のコントローラ6は、主コントローラ7によって提供される反応器設定点温度Tr、setに基づいて反応器内ヒータ4を制御する。第1のコントローラ6は、主コントローラ7に電子接続される。
【0027】
さらなる測定センサ8は、反応器ジャケット2の温度Tを測定するように働く。反応器ジャケット2は、例えば金属のブロックとしてまたは熱分配媒体で充填された二重壁反応器ジャケットとして構成されてもよい。反応器ジャケットの温度Tは、矢印で示されるように、サーモスタット9によって制御されてもよい。反応器ジャケット2の構成に応じて、後者の温度Tは、測定センサ8で測定されてもよく、または反応器ジャケット2の中を通って流れる熱分配媒体の温度を通じて決定されてもよい。
【0028】
さらなる測定センサ8およびサーモスタット9は、所与の設定点値Tj、setに基づいて反応器ジャケット2の温度Tを制御する第2のコントローラ10に電子接続される。反応器ジャケット温度のこれらの設定点値Tj、setは、実際の反応器温度Tr、istの反応器設定点温度Tr、setからの制御偏差ΔTに基づいて主コントローラ7内で計算され、第2のコントローラ10に対する入力として働く。この目的のために、実際の反応器温度Tr、istは、図1での接続11によって示されるように、主コントローラ7への入力として与えられる。したがって、反応器内ヒータ4によって反応器温度Tに寄与される部分も反応器ジャケット2によって寄与される部分も、制御偏差ΔTの温度差によって直接制御され、その両方とも、消費されるパワーおよび/または放出される熱によって制御される。
【0029】
明確にするために、第1および第2のコントローラ6、10も主コントローラ7も、ここでは別個のユニットとして表される。もちろん、3つのコントローラはすべて、単一の制御ユニット内に一緒に組み込まれてもよい。
【0030】
本発明による熱量計は、反応器温度Tが、制御偏差ΔTに基づいて反応器内ヒータ4および反応器ジャケット2によって動的に制御されてもよいことを特徴とする。温度差または温度偏差ΔTは、主として反応器1内の反応媒体の吸熱または放熱によって引き起こされる。
【0031】
本発明による熱量計の動的温度制御のよりよい理解のために、図2は、温度制御の簡略化された回路を示す。図2の回路で使用される種類のデルタTスプリッタは、図3で示される。温度制御は、ここではデジタルブロック図の形で示される。もちろん、この種の温度制御はまた、アナログ回路として実現されてもよい。
【0032】
図2から明らかなように、反応器設定点温度Tr、setが提供され、調査されるべき反応媒体に応じて使用者によって選択される。Tr、setによって表される量は、実験の間一定である温度とすることができ、あるいは、所定の時間間隔でまたは連続して反応器設定点温度Tr、setを指示するまたは調節するプログラムに従って時間依存性の温度とすることもできる。
【0033】
実験中、実際の反応器温度Tr、istは、連続してまたは所与の時間間隔で測定される。次に、2つの温度の差、ΔT=(Tr、set−Tr、ist)が、制御偏差として決定される(図2でのブロック101を参照)。この温度差ΔTは、一方ではデルタTスプリッタ102への3つの信号のうちの1つとして与えられ、他方では、図2でブロック103によって記号で表されるように、ΔTは、反応器ジャケットによって生じる反応器温度制御の比例部分Tr_Pで乗算される。
【0034】
その構成および機能的概念が図3で例示されるデルタTスプリッタ102は、さらなる入力として第1のコントローラの比例部分IRHおよび反応器内ヒータの最大パワーPIRH、maxを受け取る。
【0035】
反応器ジャケットの設定点温度Tj、setの決定のために、デルタTスプリッタ102の出力信号は、図2でのブロック104によって記号で表されるように、一方では反応器ジャケットを経由して生じる反応器温度制御の比例部分Tr_Pで乗算される。Tj、setはこの場合、反応器ジャケットの温度Tのための内部カスケード型コントローラの設定点値を表す。
【0036】
図2で演算器101および103から108を通じて記号で表されるように、先の演算によって生成される信号S1は、制御偏差の第2の部分を表し、次の式に従って生成されるさらなる信号108に加えられる、即ち、
j、set=S1+((ΔT×Tr_P)×Tr_i×Δt+Tr_i、n+1)、
ただし、Tr_i、n+1=(ΔT×Tr_P)×Tr_i×Δt+Tr_i、n
ここで、Tr_iは、Tコントローラの積分部分を表し、Tr_Pは、比例部分を表し、Δtは、2つの測定間の時間間隔を表し、Tr_i、nは、測定列のn番目の点の積分部分を表し、Tr_i、n+1は、測定列の(n+1)番目の点の積分部分を表す。
【0037】
さらなる出力信号として、デルタTスプリッタ102は、パワーPIRHに変換され、熱として反応器内ヒータを通じて反応媒体におよび/または反応器に供給される、制御偏差の第1の部分を生成する。
【0038】
図3は、図2のデルタTスプリッタを示す。いくつかある機能の中で特に、デルタTスプリッタは、図3で分かるように、反応器内ヒータを通じて反応器に供給されるパワーPIRHを決定するように働く。
【0039】
決定された温度差ΔTは、第1のコントローラのP部分で乗算される。これは本質的に、最新技術の補償ヒータの制御に似ている。それによって生成される第2の信号S2は、第1の因子k1で乗算され、最大パワーPIRH、maxで除算される。
【0040】
この演算は、第3の信号S3を生成し、これは次いで、例えば設定点値またはシグモイド関数の形で、関数109によって範囲設定される。ここで第2の因子k2が、第3の信号に加えられる。主要な実験は、第1の因子が好ましくはk1=−4として設定され、第2の因子がk2=1として設定されてもよく、それによって内部ヒータおよび外部サーモスタットの間の最適な動的制御が得られることを示した。これらの2つの因子に対してここで述べられた量は、単に例として意図されており、使用されている熱量計に適合されるべきである。さらに、図2で示される制御パラメータ、特にTr_P、Tr_iおよびIRHは同様に、使用されている熱量計に適合されるべきである。反応器内ヒータの最大パワーPIRH、maxは、自由に選択されてもよく、選択されるパラメータにも実施されるべき反応にも同様に適合されるべきである。反応器内ヒータの最大パワーPIRH、maxはここで、先のステップで生成された第4の信号S4で除算され、その除算の結果は、反応器内ヒータを通じて反応器に供給されるパワーPIRHを表す。
【0041】
加えて、反応器内ヒータのための範囲設定されないおよび範囲設定されたパワー間の差が決定されており、デルタTスプリッタの第2の出力信号D2を表す温度差に変換される。これは、第2の信号S2から範囲設定された出力PIRHの値を引き算し、その差を第2のコントローラのP部分IRHで割ることによって達成される。図2で示されるように、この差は、反応器ジャケットのための設定点温度の決定に入っている。
【0042】
図4および5は、従来技術の熱流量方法(Tr)、従来技術のパワー補償方法(PC)、および本発明の動的パワー補償方法(dPC)を使用する比較測定を表す。図4は、10W/L、30W/Lおよび90W/Lのパワー摂動Qcについて3つの方法に対する反応熱Qrを示す。パワー摂動は、異なる反応およびそれらの反応熱をシミュレートすることを意図されている。図5は、10W/L、30W/Lおよび90W/Lの異なるパワー摂動Qcについて3つの方法のそれぞれの反応器温度Tの比較を示す。その比較は、低いパワー摂動に対しては、本発明の方法に従って動作される熱量計が、パワー補償方法に従って動作される熱量計と同様に振る舞うことを実証する。より高いパワー摂動に対しては、その振舞いは、熱流量原理に従って動作される熱量計とさらに類似している。特に、測定されるべきパワーが、放熱のないときは補償パワーよりも大きいという場合には、90W/Lについて得られる測定値は、パワー補償方法の限界を明らかに示す。パワー補償方法に従って動作される熱量計はこの場合、反応パワーの誤差なしの決定能力を有さず、反応器温度を一定に保つこともできない。対照的に、図4および5で示されるように、両方のこれらの仕事は、本発明による動的パワー補償方法を使って問題なく実施できる。
【符号の説明】
【0043】
1 反応器
2 反応器ジャケット
3 ふた
4 反応器内ヒータ
5 測定センサ
6 第1のコントローラ
7 主コントローラ
8 測定センサ
9 サーモスタット
10 第2のコントローラ
11 接続
12 撹拌器
101 差分演算器
102 デルタTスプリッタ
103 乗算器
104 乗算器
105 乗算器
106 乗算器
107 加算演算器
108 加算演算器
109 関数発生器
S1 第1の信号
S2 第2の信号
S3 第3の信号
S4 第4の信号
D2 第2の出力信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱量計、特に反応熱量計を動作させるための方法において、
前記熱量計が、反応媒体を受け取るための反応器(1)と、反応器ジャケット(2)と、前記反応器(1)内に配置され、第1のコントローラ(6)によって制御される内部ヒータ(4)と、前記反応器(1)と熱接触し、第2のコントローラ(10)によって制御される外部サーモスタット(9)と、前記反応器(1)内に配置される測定センサ(5)とを含み、
前記測定センサ(5)が、反応器温度(T)を決定するように働き、
前記反応器温度(T)が、前記内部ヒータ(4)によって前記反応器(1)に供給される熱によってならびに前記外部サーモスタット(9)によって運び込まれるおよび/または運び出される熱によって制御される、方法であって、
前記反応器温度の反応器設定点温度(Tr、set)からの偏差(ΔT)が、前記内部ヒータ(4)のおよび前記外部サーモスタット(9)の動的に制御されるパワー調節を通じて補償され、
a.前記反応器設定点温度(Tr、set)を設定し、前記反応器設定点温度(Tr、set)を前記第1のコントローラ(6)に与えるステップと、
b.前記反応器温度(T)を決定し、前記反応器温度の反応器設定点温度(Tr、set)からの前記偏差(ΔT)を前記第1のコントローラ(6)の制御偏差として決定するステップと、
c.前記制御偏差を所定の基準に従って第1の部分および第2の部分に分けるステップであって、前記第1の部分が、前記内部ヒータ(4)によって熱として前記反応器(1)に供給され、さらに前記第1および第2の部分が、前記外部サーモスタット(9)を制御するために前記第2のコントローラ(10)に入力される、ステップとを含み、
前記反応器(1)に運び込まれるおよび/または前記反応器(1)から運び出される熱の結果として、前記反応器温度(T)が、前記反応器設定点温度(Tr、set)に調節されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記反応器温度(T)が、所定の時間間隔でまたは連続して決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記制御偏差の前記第1の部分が、設定点範囲に対応する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記制御偏差の前記第1の部分が、シグモイド関数の形を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のコントローラ(10)が、カスケード型コントローラとして構成され、前記制御偏差の前記第1の部分が、比例演算器に供給され、前記第2の部分が、前記第2のコントローラ(10)の積分演算器に供給される、請求項1から4の一項に記載の方法。
【請求項6】
前記内部ヒータ(4)が、そのパワー(PIRH)が前記第1のコントローラ(6)によって制御される電気ヒータである、請求項1から5の一項に記載の方法。
【請求項7】
前記外部サーモスタット(9)が、その温度(T)が前記第2のコントローラ(10)によって制御される反応器ジャケット(2)と連携する、請求項1から6の一項に記載の方法。
【請求項8】
前記制御偏差の前記第2の部分が、残留温度に変換され、後者が、前記第2のコントローラに与えられる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1から8の一項による方法で動作可能である熱量計、特に反応熱量計において、
反応媒体を受け取るための反応器(1)と、
前記反応器(1)内に配置され、第1のコントローラ(6)によって制御される内部ヒータ(4)と、
前記反応器(1)と熱接触し、第2のコントローラ(10)によって制御される外部サーモスタット(9)とを備え、
第1の測定センサ(5)が、前記反応器(1)内に配置され、前記測定センサ(5)が、反応器温度(T)を決定するように働き、
前記反応器温度(T)が、前記内部ヒータ(4)によって前記反応器(1)に供給される熱によってならびに前記外部サーモスタット(9)によって運び込まれるおよび/または運び出される熱によって制御される、熱量計であって、
前記反応器温度の反応器設定点温度(Tr、set)からの偏差(ΔT)が、前記内部ヒータ(4)のおよび前記外部サーモスタット(9)の加熱パワーの動的調節を通じて補償されることを特徴とする熱量計。
【請求項10】
前記サーモスタット(9)が、反応器ジャケット(2)と連携する、請求項9に記載の熱量計。
【請求項11】
前記第2のコントローラ(10)が、カスケード型コントローラである、請求項9または10に記載の熱量計。
【請求項12】
請求項9から11の一項による熱量計の制御のためのコンピュータプログラムであって、請求項1から8の一項による方法のステップが実施され、前記熱量計の制御ユニット内に保存される、コンピュータプログラム。

【図3】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−300443(P2009−300443A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141164(P2009−141164)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(599082218)メトラー−トレド アクチェンゲゼルシャフト (130)
【住所又は居所原語表記】Im Langacher, 8606 Greifensee, Switzerland
【Fターム(参考)】