説明

熱電変換材料及び熱電変換素子

【課題】高い熱起電力を示す熱電変換材料、及びそれを用いた熱電変換素子を提供する。
【解決手段】導電性高分子と熱励起アシスト剤とを含有する熱電変換材料であって、熱励起アシスト剤が導電性高分子にドープ準位を形成しない化合物であり、熱励起アシスト剤のLUMO(最低空軌道)のエネルギー準位と導電性高分子のHOMO(最高被占軌道)のエネルギー準位とが下記数式(I)を満たす熱電変換材料。
数式(I)
0.1eV≦|導電性高分子のHOMO|−|熱励起アシスト剤のLUMO|≦1.9eV
(数式(I)中、|導電性高分子のHOMO|は導電性高分子のHOMOのエネルギー準位の絶対値を、|熱励起アシスト剤のLUMO|は熱励起アシスト剤のLUMOのエネルギー準位の絶対値をそれぞれ表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電変換材料及び当該材料を用いた熱電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
熱エネルギーと電気エネルギーを相互に変換することができる熱電変換材料は、熱電発電素子やペルチェ素子のような熱電変換素子に用いられている。熱電変換材料や熱電変換素子を応用した熱電発電は、熱エネルギーを直接電力に変換することができ、可動部を必要とせず、体温で作動する腕時計や僻地用電源、宇宙用電源等に用いられている。
熱電変換材料には良好な熱電変換効率が要求され、現在主に実用化されているのは無機材料である。しかし、これらの無機材料は材料自体が高価であったり、有害物質を含んでいたり、熱電変換素子への加工工程が複雑である等の問題を有している。そのため、比較的廉価に製造でき、成膜等の加工も容易な有機熱電変換材料の研究が進められ、導電性高分子を用いた熱電変換材料や素子が報告されている。
【0003】
例えば、特許文献1にはポリアニリン等の導電性高分子を用いた熱電素子が、特許文献2にはポリチエニレンビニレンを含む熱電変換材料が、特許文献3及び4にはポリアニリンをドーピングしてなる熱電材料がそれぞれ記載されている。また、特許文献5にはポリアニリンを有機溶剤に溶解させ基板上にスピンコートして薄膜を形成すること、及びそれを用いた熱電材料が記載されているが、その製造プロセスは複雑である。特許文献6には、ポリ(3−アルキルチオフェン)をヨウ素でドープした導電性高分子からなる熱電変換材料が記載され、実用レベルの熱電変換特性を発揮すると報告されている。特許文献7には、ポリフェニレンビニレン又はアルコキシ置換ポリフェニレンビニレンをドーピング処理して得られる導電性高分子からなる熱電変換材料が開示されている。
しかしながら、これらの熱電変換材料は熱電変換効率が未だ十分とは言えず、より高い熱電変換効率を有する有機熱電変換材料の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−95688号公報
【特許文献2】特開2009−71131号公報
【特許文献3】特開2001−326393号公報
【特許文献4】特開2000−323758号公報
【特許文献5】特開2002−100815号号公報
【特許文献6】特開2003−322638号号公報
【特許文献7】特開2003−332639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、優れた熱起電力を備える熱電変換材料、及び当該材料を用いた熱電変換素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題に鑑み、導電性高分子を用いた熱電変換材料の熱電変換効率の向上について鋭意検討を行った。そして、導電性高分子の分子軌道のエネルギー準位に対して特定のエネルギー準位差の分子軌道を持った物質を導電性高分子とともに配合することで、高い熱起電力を備えた熱電変換材料が得られること、これを用いた素子では熱電変換性能が向上することを見出した。本発明は、この知見に基づき成されたものである。
【0007】
すなわち、上記の課題は以下の手段により達成された。
<1> 導電性高分子と熱励起アシスト剤とを含有する熱電変換材料であって、熱励起アシスト剤が導電性高分子にドープ準位を形成しない化合物であり、熱励起アシスト剤のLUMO(最低空軌道)のエネルギー準位と導電性高分子のHOMO(最高被占軌道)のエネルギー準位とが下記数式(I)を満たす、熱電変換材料。
数式(I)
0.1eV≦|導電性高分子のHOMO|−|熱励起アシスト剤のLUMO|≦1.9eV
(数式(I)中、|導電性高分子のHOMO|は導電性高分子のHOMOのエネルギー準位の絶対値を、|熱励起アシスト剤のLUMO|は熱励起アシスト剤のLUMOのエネルギー準位の絶対値をそれぞれ表す。)
<2> ドーパント及び/又はカーボンナノチューブを含有する、<1>項記載の熱電変換材料。
<3> 前記導電性高分子が、チオフェン系化合物、ピロール系化合物、アニリン系化合物、アセチレン系化合物、p−フェニレン系化合物、p−フェニレンビニレン系化合物、p−フェニレンエチニレン系化合物、及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種のモノマーから誘導される繰り返し単位を有する共役系高分子である、<1>又は<2>項記載の熱電変換材料。
<4> 前記熱励起アシスト剤が、ベンゾチアジアゾール骨格、ベンゾチアゾール骨格、ジチエノシロール骨格、シクロペンタジチオフェン骨格、チエノチオフェン骨格、チオフェン骨格、フルオレン骨格、及びフェニレンビニレン骨格から選ばれる少なくとも1種の構造を含む高分子化合物、フラーレン系化合物、フタロシアニン系化合物、ペリレンジカルボキシイミド系化合物、又はテトラシアノキノジメタン系化合物である、<1>〜<3>のいずれか1項に記載の熱電変換材料。
<5> 前記ドーパントがオニウム塩化合物である、<2>〜<4>のいずれか1項に記載の熱電変換材料。
<6> さらに溶媒を含む、<1>〜<5>のいずれか1項に記載の熱電変換材料。
<7> <1>〜<6>のいずれか1項に記載の熱電変換材料を用いた熱電変換素子。
<8> 2層以上の熱電変換層を有し、該熱電変換層の少なくとも1層が<1>〜<6>のいずれか1項に記載の熱電変換材料を含有してなる、<7>項記載の熱電変換素子。
<9> 2層以上の熱電変換層のうち、隣接する熱電変換層が互いに異なる導電性高分子を含有する、<8>項記載の熱電変換素子。
<10> 基材と、該基材上に設けられた熱電変換層とを備えた、<7>〜<9>のいずれか1項に記載の熱電変換素子。
<11> さらに電極を有する、<7>〜<10>のいずれか1項に記載の熱電変換素子。
<12> <7>〜<11>のいずれか1項に記載の熱電変換素子用いた熱電発電用物品。
【発明の効果】
【0008】
本発明の熱電変換材料は、優れた熱起電力を備え、熱電変換素子や種々の熱電発電用物品に好適に用いることができる。また、当該熱電変換材料を用いてなる熱電変換素子や物品は優れた熱電変換性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の熱電変換素子の一例を模式的に示す図である。図1中の矢印は素子の使用時に付与される温度差の方向を示す。
【図2】本発明の熱電変換素子の一例を模式的に示す図である。図2中の矢印は素子の使用時に付与される温度差の方向を示す。
【図3】本発明の熱電変換素子の一例を模式的に示す図である。図3中の矢印は素子の使用時に付与される温度差の方向を示す。
【図4】本発明の熱電変換素子の一例を模式的に示す図である。図4中の矢印は素子の使用時に付与される温度差の方向を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の熱電変換材料は、導電性高分子と、導電性高分子の分子軌道のエネルギー準位に対して特定のエネルギー準位差の分子軌道を持った物質である熱励起アシスト剤とを含有する。導電性高分子とともに熱励起アシスト剤を用いることで、熱励起効率を高め、優れた熱起電力を備える材料を得ることができる。
以下、本発明について詳述する。
【0011】
[導電性高分子]
導電性高分子としては、共役系の分子構造を有する高分子化合物を用いることができる。ここで、共役系の分子構造を有する高分子とは、高分子の主鎖上の炭素−炭素結合において、一重結合と二重結合とが交互に連なる構造を有している高分子である。
このような共役系高分子としては、チオフェン系化合物、ピロール系化合物、アニリン系化合物、アセチレン系化合物、p−フェニレン系化合物、p−フェニレンビニレン系化合物、p−フェニレンエチニレン系化合物、p−フルオレニレンビニレン系化合物、ポリアセン系化合物、ポリフェナントレン系化合物、金属フタロシアニン系化合物、p−キシリレン系化合物、ビニレンスルフィド系化合物、m−フェニレン系化合物、ナフタレンビニレン系化合物、p−フェニレンオキシド系化合物、フェニレンスルフィド系化合物、フラン系化合物、セレノフェン系化合物、アゾ系化合物、金属錯体系化合物、及びこれらの化合物に置換基を導入した誘導体などをモノマーとし、当該モノマーから誘導される繰り返し単位を有する共役系高分子が挙げられる。
【0012】
上記の誘導体に導入される置換基としては特に制限はないが、他の成分との相溶性や用いる媒体の種類等を考慮して、適宜選択して導入することが好ましい。
一例として、媒体として有機溶媒を用いる場合、直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アルコキシ基、チオアルキル基のほか、アルコキシアルキレンオキシ基、アルコキシアルキレンオキシアルキル基、クラウンエーテル基、アリール基等を好ましく用いることができる。これらの基は、さらに置換基を有してもよい。また、置換基の炭素数に特に制限はないが、好ましくは1〜12個、より好ましくは4〜12個であり、特に炭素数6〜12個の長鎖のアルキル基、アルコキシ基、チオアルキル基、アルコキシアルキレンオキシ基、アルコキシアルキレンオキシアルキル基が好ましい。
水系の媒体を用いる場合は、各モノマーの末端又は上記置換基にさらに、カルボン酸基、スルホン酸基、水酸基、リン酸基等の親水性基を導入することが好ましい。
他にも、ジアルキルアミノ基、モノアルキルアミノ基、アミノ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、カルバメート基、ニトロ基、シアノ基、イソシアネート基、イソシアノ基、ハロゲン原子、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基などを置換基として導入することができ、好ましい。
導入されうる置換基の数も特に制限されず、導電性高分子の分散性や相溶性、導電性等を考慮して、1個又は複数個の置換基を適宜導入することができる。
【0013】
チオフェン系化合物及びその誘導体から誘導される繰り返し単位を有する共役系高分子としては、ポリチオフェン、チオフェン環に置換基が導入されたモノマーから誘導される繰り返し単位を含む共役系高分子、及びチオフェン環を含む縮合多環構造を有するモノマーから誘導される繰り返し単位を含む共役系高分子が挙げられる。
【0014】
チオフェン環に置換基が導入されたモノマーから誘導される繰り返し単位を含む共役系高分子としては、ポリ−3−メチルチオフェン、ポリ−3−ブチルチオフェン、ポリ−3−ヘキシルチオフェン、ポリ−3−シクロヘキシルチオフェン、ポリ−3−(2’−エチルヘキシル)チオフェン、ポリ−3−オクチルチオフェン、ポリ−3−ドデシルチオフェン、ポリ−3−(2’−メトキシエトキシ)メチルチオフェン、ポリ−3−(メトキシエトキシエトキシ)メチルチオフェンなどのポリ−アルキル置換チオフェン類、ポリ−3−メトキシチオフェン、ポリ−3−エトキシチオフェン、ポリ−3−ヘキシルオキシチオフェン、ポリ−3−シクロヘキシルオキシチオフェン、ポリ−3−(2’−エチルヘキシルオキシ)チオフェン、ポリ−3−ドデシルオキシチオフェン、ポリ−3−メトキシ(ジエチレンオキシ)チオフェン、ポリ−3−メトキシ(トリエチレンオキシ)チオフェン、ポリ−(3,4−エチレンジオキシチオフェン)などのポリ−アルコキシ置換チオフェン類、ポリ−3−メトキシ−4−メチルチオフェン、ポリ−3−ヘキシルオキシ−4−メチルチオフェン、ポリ−3−ドデシルオキシ−4−メチルチオフェンなどのポリ−3−アルコキシ置換−4−アルキル置換チオフェン類、ポリ−3−チオヘキシルチオフェン、ポリ−3−チオオクチルチオフェン、ポリ−3−チオドデシルチオフェンなどのポリ−3−チオアルキルチオフェン類が挙げられる。
【0015】
なかでも、ポリ−3−アルキルチオフェン類、ポリ−3−アルコキシチオフェン類が好ましい。3位に置換基を有するポリチオフェンに関しては、チオフェン環の2,5位での結合の向きにより異方性が生じる。3−置換チオフェンの重合において、チオフェン環の2位同士が結合したもの(HH結合体:head−to−head)、2位と5位が結合したもの(HT結合体:head−to−tail)、5位同士が結合したもの(TT結合体:tail−to−tail)の混合物になるが、2位と5位が結合したもの(HT結合体)の割合が多いほど、重合体主鎖の平面性が向上し、ポリマー間のπ−πスタッキング構造を形成しやすく、電荷の移動を容易にする上で好ましい。これら結合様式の割合は、H−NMRにより測定することができる。チオフェン環の2位と5位が結合したHT結合体の重合体中における割合は50質量%以上が好ましく、さらに好ましくは70質量%以上、特に90質量%以上のものが好ましい。
【0016】
より具体的に、チオフェン環に置換基が導入されたモノマーから誘導される繰り返し単位を含む共役系高分子、及びチオフェン環を含む縮合多環構造を有するモノマーから誘導される繰り返し単位を含む共役系高分子として、下記の化合物が例示できる。なお下記式中、nは10以上の整数を示す。
【0017】
【化1】

【0018】
ピロール系化合物及びその誘導体から誘導される繰り返し単位を有する共役系高分子としては、下記の化合物が例示できる。なお下記式中、nは10以上の整数を示す。
【0019】
【化2】

【0020】
アニリン系化合物及びその誘導体から誘導される繰り返し単位を有する共役系高分子としては、下記の化合物が例示できる。なお下記式中、nは10以上の整数を示す。
【0021】
【化3】

【0022】
アセチレン系化合物及びその誘導体から誘導される繰り返し単位を有する共役系高分子としては、下記の化合物が例示できる。なお下記式中、nは10以上の整数を示す。
【0023】
【化4】

【0024】
p−フェニレン系化合物及びその誘導体から誘導される繰り返し単位を有する共役系高分子としては、下記の化合物が例示できる。なお下記式中、nは10以上の整数を示す。
【0025】
【化5】

【0026】
p−フェニレンビニレン系化合物及びその誘導体から誘導される繰り返し単位を有する共役系高分子としては、下記の化合物が例示できる。なお下記式中、nは10以上の整数を示す。
【0027】
【化6】

【0028】
p−フェニレンエチニレン系化合物及びその誘導体から誘導される繰り返し単位を有する共役系高分子としては、下記の化合物が例示できる。なお下記式中、nは10以上の整数を示す。
【0029】
【化7】

【0030】
上記以外の化合物及びその誘導体から誘導される繰り返し単位を有する共役系高分子としては、下記の化合物が例示できる。なお下記式中、nは10以上の整数を示す。
【0031】
【化8】

【0032】
上記共役系高分子のなかでも、直鎖状の共役系高分子を用いることが好ましい。このような直鎖状の共役系高分子は、例えば、ポリチオフェン系高分子、ポリピロール系高分子の場合、各モノマーのチオフェン環又はピロール環が、それぞれ2,5位で結合することにより得られる。ポリ−p−フェニレン系高分子、ポリ−p−フェニレンビニレン系高分子、ポリ−p−フェニレンエチニレン系高分子では、各モノマーのフェニレン基がパラ位(1,4位)で結合することにより得られる。
【0033】
本発明で用いる導電性高分子は、上述の繰り返し単位(以下、この繰り返し単位を与えるモノマーを「第1のモノマー(群)」とも称する)を1種単独で有しても、2種以上を組合わせて有していてもよい。また、第1のモノマーに加えて、他の構造を有するモノマー(以下、「第2のモノマー」と称する)から誘導される繰り返し単位を、併せて有していてもよい。複数種の繰り返し単位からなる高分子の場合、ブロック共重合体であっても、ランダム共重合体であっても、グラフト重合体であってもよい。
【0034】
上記第1のモノマーと併用される、他の構造を有する第2のモノマーとしては、フルオレニレン基、カルバゾール基、ジベンゾ[b,d]シロール基、チエノ[3,2−b]チオフェン基、チエノ[2,3−c]チオフェン基、ベンゾ[1,2−b;4,5−b’]ジチオフェン基、シクロペンタ[2,1−b;3,4−b’]ジチオフェン基、ピロロ[3,4−c]ピロール−1,4(2H,5H)−ジオン基、ベンゾ[2,1,3]チアジアゾール−4,8−ジイル基、アゾ基、1,4−フェニレン基、5H−ジベンゾ[b、d]シロール基、チアゾール基、イミダゾール基、ピロロ[3,4−c]ピロール−1,4(2H、5H)−ジオン基、オキサジアゾール基、チアジアゾール基、トリアゾール基等を有する化合物、及びこれらの化合物にさらに置換基を導入した誘導体が挙げられる。導入する置換基としては、上述した置換基と同様のものが挙げられる。
【0035】
本発明で用いる導電性高分子は、第1のモノマー群から選択された1種又は複数種のモノマーから誘導される繰り返し単位を導電性高分子中、合計で50質量%以上有していることが好ましく、70質量%以上有していることがより好ましく、第1のモノマー群から選択された1種又は複数種のモノマーから誘導される繰り返し単位のみからなることが更に好ましい。特に好ましくは、第1のモノマー群から選択された単一の繰り返し単位のみからなる共役系高分子である。
【0036】
第1のモノマー群のなかでも、チオフェン系化合物及び/又はその誘導体から誘導される繰り返し単位を含むポリチオフェン系高分子がより好ましく用いられる。特に、下記の構造式(1)〜(5)で表されるチオフェン環、又はチオフェン環含有縮合芳香環構造を繰り返し単位として有するポリチオフェン系高分子が好ましい。
【0037】
【化9】

【0038】
上記構造式(1)〜(5)中、R〜R13はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、アミノ基、チオエーテル基、ポリエチレンオキシ基、エステル基を表し、Yは炭素原子又は窒素原子を表し、nは1または2の整数を表す。また*は、各繰り返し単位の連結部位を表す。
【0039】
導電性高分子の分子量は特に限定されず、高分子量のものはもちろん、それ未満の分子量のオリゴマー(例えば重量平均分子量1000〜10000程度)であってもよい。
導電性の観点から、導電性高分子は、酸、光、熱に対して分解されにくいものが好ましい。また、高い導電性を得るためには、導電性高分子の長い共役鎖を介した分子内のキャリア伝達、及び分子間のキャリアホッピングが必要となる。そのためには、導電性高分子の分子量がある程度大きいことが好ましく、この観点から、本発明で用いる導電性高分子の分子量は、重量平均分子量で5000以上であることが好ましく、7000〜300,000であることがより好ましく、8000〜100,000であることがさらに好ましい。当該重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定できる。
【0040】
これらの導電性高分子は、構成単位である上記モノマーを通常の酸化重合法により重合させて製造できる。
また、市販品を用いることもでき、例えば、アルドリッチ社製のポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5ージイル) レジオレギュラー品が挙げられる。
熱電変換材料中の導電性高分子の含有量は、全固形分中、30〜90質量%であることが好ましく、35〜80質量%であることがより好ましく、40〜70質量%であることが特に好ましい。
【0041】
[熱励起アシスト剤]
本発明の熱電変換材料に用いる熱励起アシスト剤とは、導電性高分子のLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital;最低空軌道)よりもエネルギー準位の低いLUMOを有する化合物であって、導電性高分子にドープ準位を形成しない化合物をいう。後述のように本発明の熱電変換材料は、任意成分としてドーパントを含有してもよいが、当該ドーパントとは導電性高分子にドープ準位を形成する化合物である。
導電性高分子にドープ準位が形成されるか否かは吸収スペクトルの測定により評価でき、本発明におけるドープ準位を形成する化合物及びドープ準位を形成しない化合物とは、下記の方法によって評価されたものをいう。
−ドープ準位形成の有無の評価法−
ドーピング前の導電性高分子Aと別成分Bとを重量比1:1で混合し、薄膜化したサンプルの吸収スペクトルを観測する。その結果、導電性高分子A単独又は成分B単独の吸収ピークとは異なる新たな吸収ピークが発生し、且つこの新たな吸収ピーク波長が導電性高分子Aの吸収極大波長よりも長波長側である場合にドープ準位が発生したと判断する。この場合、成分Bをドーパントと定義する。
【0042】
熱励起アシスト剤のLUMOは、導電性高分子のLUMOよりもエネルギー準位が低く、導電性高分子のHOMO(Highest Occupied Molecular Orbital;最高被占軌道)から発生した熱励起電子のアクセプター準位として機能する。
さらに、導電性高分子のHOMOのエネルギー準位の絶対値と熱励起アシスト剤のLUMOのエネルギー準位の絶対値とが下記数式(I)を満たす関係にあるとき、熱電変換材料は優れた熱起電力を備えたものとなる。

数式(I)
0.1eV≦|導電性高分子のHOMO|−|熱励起アシスト剤のLUMO|≦1.9eV

上記数式(I)は、熱励起アシスト剤のLUMOと導電性高分子のHOMOとのエネルギー差を表し、これが0.1eVよりも小さい場合(熱励起アシスト剤のLUMOのエネルギー準位が導電性高分子のHOMOのエネルギー準位よりも低い場合を含む)、導電性高分子のHOMO(ドナー)と熱励起アシスト剤のLUMO(アクセプター)との間の電子移動の活性化エネルギーが非常に小さくなるため、導電性高分子と熱励起アシスト剤との間で酸化還元反応が起きて凝集が発生してしまう。その結果、材料の成膜性の悪化や導電率の悪化を招くこととなる。逆に、両軌道のエネルギー差が1.9eVよりも大きい場合、当該エネルギー差が熱励起エネルギーよりも遙かに大きくなってしまうために熱励起キャリアがほとんど発生しない、すなわち熱励起アシスト剤の添加効果がほとんどなくなってしまう。熱電変換材料の熱起電力が向上には、両軌道のエネルギー差が上記数式(I)の範囲内であることが必要である。
なお、導電性高分子及び熱励起アシスト剤のHOMO及びLUMOのエネルギー準位は、HOMOエネルギーレベルに関しては、単一の各成分の塗布膜(ガラス基板)をそれぞれ作製し、光電子分光法によりHOMO準位を測定できる。LUMO準位に関しては、紫外可視分光光度計を用いてバンドギャップを測定した後、上記で測定したHOMOエネルギーに加えることにより、LUMOエネルギーを算出できる。本発明において導電性高分子及び熱励起アシスト剤のHOMO及びLUMOのエネルギー準位は、当該方法により測定・算出された値を用いる。
【0043】
本発明では、熱励起アシスト剤により熱励起効率が向上し、熱励起キャリア数が増加するため、材料の熱起電力が向上する。このような熱励起アシスト剤を用いる本発明は、導電性高分子のドーピング効果によって熱電変換性能を向上させる従来の手法とは異なるものである。
熱電変換材料はゼーベック効果を利用して熱電変換を行うものであるが、その熱電変換性能を表す指標として、下記数式(II)で表される性能指数ZTが用いられている。

数式(II): ZT=S2σT/κ

数式(II)中、Sは熱電変換材料のゼーベック係数を、σは熱電変換材料の導電率を、κは熱電変換材料の熱伝導率を、そしてTは測定温度を表す。
上記数式(II)から、熱電変換材料の熱電変換性能を高めるためには、材料のゼーベック係数S及び導電率σを大きくし、熱伝導率κを小さくすればよいことがわかる。なお、ゼーベック係数は、絶対温度1Kあたりの熱起電力である。
導電性高分子をドーピングする従来の手法では、材料の導電性を高めることで熱電変換性能の向上を図っている。この手法では、導電性高分子内部に形成されるドープ準位が、熱励起によって発生した電子の存在場所となる。そのため、熱励起によって発生した正孔(ホール)と電子が導電性高分子の近傍に共存することとなり、導電性高分子のドープ準位が熱励起によって発生した電子によって飽和されやすくなり、それ以上の熱励起が進行しにくくなるため、ゼーベック係数が低下してしまう。
一方、本発明は、熱励起アシスト剤の使用によりゼーベック係数を高めることで、熱電変換性能を向上させるものである。本発明では、熱励起によって発生した電子がアクセプター準位である熱励起アシスト剤のLUMOに存在するため、導電性高分子上の正孔と熱励起アシスト剤上の電子とが物理的に離れて存在している。そのため、導電性高分子のドープ準位が熱励起によって発生した電子によって飽和されにくくなり、ゼーベック係数を高めることができる。
【0044】
熱励起アシスト剤としては、ベンゾチアジアゾール骨格、ベンゾチアゾール骨格、ジチエノシロール骨格、シクロペンタジチオフェン骨格、チエノチオフェン骨格、チオフェン骨格、フルオレン骨格、及びフェニレンビニレン骨格から選ばれる少なくとも1種の構造を含む高分子化合物、フラーレン系化合物、フタロシアニン系化合物、ペリレンジカルボキシイミド系化合物、又はテトラシアノキノジメタン系化合物が好ましく、ベンゾチアジアゾール骨格、ベンゾチアゾール骨格、ジチエノシロール骨格、シクロペンタジチオフェン骨格、及びチエノチオフェン骨格から選ばれる少なくとも1種の構造を含む高分子化合物、フラーレン系化合物、フタロシアニン系化合物、ペリレンジカルボキシイミド系化合物、又はテトラシアノキノジメタン系化合物がより好ましい。
【0045】
上述の特徴を満たす熱励起アシスト剤の具体例として下記のものが例示できるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記の例示化合物中、nは整数(好ましくは10以上の整数)を、Meはメチル基を表す。
【0046】
【化10】

【0047】
【化11】

【0048】
【化12】

【0049】
本発明の熱電変換材料には上記熱励起アシスト剤を1種単独で又は2種以上組合わせて使用することができる。
熱電変換材料中の熱励起アシスト剤の含有量は、全固形分中、1〜40質量%であることが好ましく、3〜30質量%であることがより好ましく、5〜25質量%であることが特に好ましい。
【0050】
[ドーパント]
本発明の熱電変換材料は、導電性高分子及び熱励起アシスト剤に加え、ドーパントを含有することが好ましい。前述のとおり、本発明においてドーパントとは導電性高分子にドープ準位を形成する化合物である。当該ドーパントは、熱励起アシスト剤の有無にかかわらずドープ準位を形成する。
ドーパントとしては、導電性高分子に酸を付与するものであればよく、下記のオニウム塩化合物、酸化剤、酸性化合物を用いることができ、好ましい。
【0051】
1.オニウム塩化合物
本発明でドーパントとして用いるオニウム塩化合物は、放射線や電磁波等の活性エネルギー線の照射又は熱の付与等のエネルギー付与によって酸を発生する化合物(酸発生剤、酸前駆体)であることが好ましい。このようなオニウム塩化合物としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩、カルボニウム塩、ホスホニウム塩等が挙げられる。なかでも、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩、カルボニウム塩が好ましく、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、カルボニウム塩がより好ましい。当該塩を構成するアニオン部分としては、強酸の対アニオンが挙げられる。
【0052】
具体的には、スルホニウム塩として下記一般式(I)及び(II)で表される化合物が、ヨードニウム塩として下記一般式(III)で表される化合物が、アンモニウム塩として下記一般式(IV)で表される化合物が、カルボニウム塩として下記一般式(V)で表される化合物が、それぞれ挙げられ、本発明において好ましく用いられる。
【0053】
【化13】

【0054】
上記一般式(I)〜(V)中、R21〜R23、R25〜R26及びR31〜R33は、それぞれ独立に直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アラルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基を表す。R27〜R30は、それぞれ独立に水素原子、直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アラルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基を表す。R24は、直鎖、分岐又は環状のアルキレン基、アリーレン基を示す。R21〜R33は、さらに置換されていてもよい。Xは、強酸のアニオンを表す。
一般式(I)においてR21〜R23のいずれか2つの基が、一般式(II)においてR21及びR23が、一般式(III)においてR25及びR26が、一般式(IV)においてR27〜R30のいずれか2つの基が、一般式(V)においてR31〜R33のいずれか2つの基が、それぞれ結合して脂肪族環、芳香族環、ヘテロ環を形成してもよい。
【0055】
21〜R23、R25〜R33において、直鎖又は分岐のアルキル基としては、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基などが挙げられる。
環状アルキル基としては、炭素数3〜20のアルキル基が好ましく、具体的には、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビシクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などが挙げられる。
アラルキル基としては、炭素数7〜15のアラルキル基が好ましく、具体的には、ベンジル基、フェネチル基などが挙げられる。
アリール基としては、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナンシル基、ピレニル基などが挙げられる。
芳香族へテロ環基としては、ピリジル基、ピラゾール基、イミダゾール基、ベンゾイミダゾール基、インドール基、キノリン基、イソキノリン基、プリン基、ピリミジン基、オキサゾール基、チアゾール基、チアジン基等が挙げられる。
【0056】
27〜R30において、アルコキシ基としては、炭素数1〜20の直鎖又は分岐のアルコキシ基が好ましく、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、iso−プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基などが挙げられる。
アリールオキシ基としては、炭素数6〜20のアリールオキシ基が好ましく、具体的には、フェノキシ基、ナフチルオキシ基などが挙げられる。
【0057】
24において、アルキレン基としては、炭素数2〜20のアルキレン基が好ましく、具体的には、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、へキシレン基などが挙げられる。環状アルキレン基としては、炭素数3〜20の環状アルキレン基が好ましく、具体的には、シクロペンチレン基、シクロへキシレン、ビシクロオクチレン基、ノルボニレン基、アダマンチレン基などが挙げられる。
アリーレン基としては、炭素数6〜20のアリーレン基が好ましく、具体的には、フェニレン基、ナフチレン基、アントラニレン基などが挙げられる。
【0058】
21〜R33が更に置換基を有する場合、置換基として好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、沃素原子)、炭素数6〜10のアリール基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、炭素数2〜6のアルケニル基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルアルキル基、アリールカルボニルアルキル基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、トリフルオロメチル基、−S−R41などが挙げられる。なお、R41は、前記R21と同義である。
【0059】
としては、アリールスルホン酸のアニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸のアニオン、過ハロゲン化ルイス酸のアニオン、パーフルオロアルキルスルホンイミドのアニオン、過ハロゲン酸アニオン、又は、アルキル若しくはアリールボレートアニオンが好ましい。これらは、さらに置換基を有してもよく、置換基としてはフルオロ基が挙げられる。
アリールスルホン酸のアニオンとして具体的には、p−CHSO、PhSO、ナフタレンスルホン酸のアニオン、ナフトキノンスルホン酸のアニオン、ナフタレンジスルホン酸のアニオン、アントラキノンスルホン酸のアニオンが挙げられる。
パーフルオロアルキルスルホン酸のアニオンとして具体的には、CFSO、CSO、C17SOが挙げられる。
過ハロゲン化ルイス酸のアニオンとして具体的には、PF、SbF、BF、AsF、FeClが挙げられる。
パーフルオロアルキルスルホンイミドのアニオンとして具体的には、CFSO−N−SOCF、CSO−N−SOが挙げられる。
過ハロゲン酸アニオンとして具体的には、ClO、BrO、IOが挙げられる。
アルキル若しくはアリールボレートアニオンとして具体的には、(C、(C、(p−CH、(CF)が挙げられる。
としてより好ましくは、過ハロゲン化ルイス酸のアニオン(好ましくは、PF)、パーフルオロアルキルスルホン酸のアニオン、アルキル若しくはアリールボレートアニオン(好ましくは、(C、(C)であり、さらに好ましくは過ハロゲン化ルイス酸のアニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸のアニオン、フルオロ置換アリールボレートアニオンである。
【0060】
オニウム塩の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0061】
【化14】

【0062】
【化15】

【0063】
【化16】

【0064】
【化17】

【0065】
【化18】

【0066】
【化19】

【0067】
なお、上記具体例中のXは、PF、SbF、CFSO、CHPhSO、BF、(C、RfSO、(C、又は下記式で表されるアニオン
【0068】
【化20】

【0069】
【化21】

【0070】
を表し、Rfは任意の置換基を有するパーフルオロアルキル基を表す。
【0071】
本発明においては、特に下記一般式(VI)又は(VII)で表されるオニウム塩化合物が好ましい。
【0072】
【化22】

【0073】
一般式(VI)中、Yは炭素原子又は硫黄原子を表し、Arはアリール基を表し、Ar〜Arは、それぞれ独立にアリール基、芳香族へテロ環基を表す。Ar〜Arは、さらに置換されていてもよい。
Ar1としては、好ましくはフルオロ置換アリール基であり、より好ましくはペンタフルオロフェニル基、又は少なくとも1つのパーフルオロアルキル基で置換されたフェニル基であり、特に好ましくはペンタフルオロフェニル基である。
Ar〜Arのアリール基、芳香族へテロ環基は、上述のR21〜R23、R25〜R33のアリール基、芳香族へテロ環基と同義であり、好ましくはアリール基であり、より好ましくはフェニル基である。これらの基は、さらに置換されていてもよく、置換基としては上述のR21〜R33の置換基が挙げられる。
【0074】
【化23】

【0075】
一般式(VII)中、Arはアリール基を表し、Ar及びArは、それぞれ独立にアリール基、芳香族へテロ環基を表す。Ar、Ar及びArは、さらに置換されていてもよい。
Arは、上記一般式(VI)のArと同義であり、好ましい範囲も同様である。
Ar及びArは、上記一般式(VI)のAr〜Arと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0076】
上記オニウム塩化合物は、通常の化学合成により製造することができる。また、市販の試薬等を用いることもできる。
オニウム塩化合物の合成方法の一実施態様を下記に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。他のオニウム塩に関しても、同様の手法により合成する事ができる。
トリフェニルスルホニウムブロミド(東京化成製)2.68g、リチウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート−エチルエ−テルコンプレックス(東京化成製)5.00g、およびエタノール146mlを500ml容三口フラスコに入れ、室温にて2時間撹拌した後、純水200mlを添加し、析出した白色固形物を濾過により分取する。この白色固体を純水およびエタノールにて洗浄および真空乾燥することにより、オニウム塩としてトリフェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート6.18gを得ることができる。
【0077】
2.酸化剤
本発明でドーパントとして用いる酸化剤としては、ハロゲン(Cl,Br,I,ICl,ICl,IBr,IF)、ルイス酸(PF,AsF,SbF,BF,BCl,BBr,SO)、プロトン酸(HF,HCl,HNO,HSO,HClO,FSOH,CISOH,CFSOH,各種有機酸,アミノ酸など)、遷移金属化合物(FeCl,FeOCl,TiCl,ZrCl,HfCl,NbF,NbCl,TaCl,MoF,MoCl,WF,WCl,UF,LnCl(Ln=La,Ce,Pr,Nd,Smなどのランタノイド)、電解質アニオン(Cl,Br,I,ClO,PF,AsF,SbF,BF,各種スルホン酸アニオン)、その他O,XeOF,(NO)(SbF),(NO)(SbCl),(NO)(BF),FSOOOSOF,AgClO,HIrCl,La(NO・6HO等が挙げられる。
【0078】
3.酸性化合物
酸性化合物としては、ポリリン酸、ヒドロキシ化合物、カルボキシ化合物、又はスルホン酸化合物が挙げられる。
【0079】
−ポリリン酸−
ポリリン酸には、二リン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸、メタリン酸及ポリリン酸、及びこれらの塩が含まれる。これらの混合物であってもよい。本発明ではポリリン酸は、二リン酸、ピロリン酸、三リン酸、ポリリン酸であることが好ましく、ポリリン酸であることがより好ましい。ポリリン酸は、HPOを充分なP10(無水リン酸)とともに加熱することにより、或いはHPOを加熱して水を除去することにより合成できる。
【0080】
−ヒドロキシ化合物−
ヒドロキシ化合物は水酸基を少なくとも1つ有する化合物であればよく、フェノール性水酸基を有することが好ましい。ヒドロキシ化合物としては、下記一般式(VIII)で表される化合物が好ましい。
【0081】
【化24】

【0082】
一般式(VIII)中、Rはスルホ基、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基を表し、nは1〜6を示し、mは0〜5を示す。
Rとしては、スルホ基、アルキル基、アリール基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基が好ましく、スルホ基がより好ましい。
nは、1〜5が好ましく、1〜4がより好ましく、1〜3が更に好ましい。
mは、0〜5であり、0〜4が好ましく、0〜3が更に好ましい。
【0083】
−カルボキシ化合物−
カルボキシ化合物としてはカルボキシ基を少なくとも1つ有する化合物であればよく、下記一般式(IX)又は(X)で表される化合物が好ましい。
【0084】
【化25】

【0085】
一般式(IX)中、Aは二価の連結基を表す。該二価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基又はアルケニレン基と、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子との組み合わせが好ましく、アルキレン基又はアリーレン基と、酸素原子又は硫黄原子との組み合わせがより好ましい。なお、二価の連結基がアルキレン基と硫黄原子との組み合わせの場合、当該化合物はチオエーテル化合物にも該当する。このようなチオエーテル化合物の使用も好適である。
Aで表される二価の連結基がアルキレン基を含むとき、該アルキレン基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、アルキル基が好ましく、カルボキシ基を置換基として有することがより好ましい。
【0086】
【化26】

【0087】
一般式(X)中、Rはスルホ基、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基を表し、nは1〜6を示し、mは0〜5を示す。
Rとしては、スルホ基、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基が好ましく、スルホ基、アルコキシカルボニル基がより好ましい。
nは、1〜5が好ましく、1〜4がより好ましく、1〜3が更に好ましい。
mは、0〜5であり、0〜4が好ましく、0〜3が更に好ましい。
【0088】
−スルホン酸化合物−
スルホン酸化合物は、スルホ基を少なくとも1つ有する化合物であり、スルホ基を2つ以上有する化合物が好ましい。スルホン酸化合物として好ましくは、アリール基、アルキル基に置換されたものであり、より好ましくは、アリール基に置換されたものである。
なお、上記で説明したヒドロキシ化合物及びカルボキシ化合物において、置換基としてスルホ基を有する化合物も好適である。
【0089】
これらのドーパントの中でも、本発明では導電率の向上の観点からオニウム塩化合物を用いることが好ましく、光等の活性エネルギー線の照射又は熱の付与によって酸を発生するオニウム塩化合物を用いることが好ましい。このようなオニウム塩化合物は酸放出前の状態では中性で、光や熱等のエネルギー付与により分解して酸を発生し、この酸によりドーピング効果が発現する。そのため、熱電変換材料を所望の使用態様に成形・加工した後に光照射等によりドーピングを行うことができる。また、酸放出前は中性のため導電性高分子を凝集・析出等させることなく、各成分が材料中に均一に溶解又は分散するので、材料の塗布性や成膜性が良好となり、ドーピング後の導電性も向上する。
【0090】
ドーパントは、1種類単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。ドーパントの使用量は、ドーピング効果の観点から、導電性高分子100質量部に対して5質量部以上使用することが好ましく、10〜60質量部使用することがより好ましく、20〜50質量部使用することがさらに好ましい。
【0091】
[カーボンナノチューブ]
本発明の熱電変換材料は、カーボンナノチューブ(以下、CNTと略記する)を含有することが好ましい。CNTにより、材料の導電率を向上させることができる。
CNTには、1枚の炭素膜(グラフェン・シート)が円筒状に巻かれた単層CNT、2枚のグラフェン・シートが同心円状に巻かれた2層CNT、及び複数のグラフェン・シートが同心円状に巻かれた多層CNTがある。本発明においては、単層CNT、2層CNT、多層CNTを各々単独で用いてもよく、2種以上を併せて用いてもよい。特に、導電性及び半導体特性において優れた性質を持つ単層CNT及び2層CNTを用いることが好ましく、単層CNTを用いることがより好ましい。
単層CNTは、半導体性のものであっても、金属性のものであってもよく、両者を併せて用いてもよい。半導体性CNTと金属性CNTとを両方を用いる場合、熱電変換材料中の両者の含有比率は、材料の用途に応じて適宜調整することができる。また、CNTには金属などが内包されていてもよく、フラーレン等の分子が内包されたものを用いてもよい。なお、本発明の熱電変換材料には、CNTの他に、カーボンナノホーン、カーボンナノコイル、カーボンナノビーズなどのナノカーボンが含まれてもよい。
【0092】
CNTはアーク放電法、化学気相成長法(以下、CVD法という)、レーザー・アブレーション法等によって製造することができる。本発明に用いられるCNTは、いずれの方法によって得られたものであってもよいが、好ましくはアーク放電法及びCVD法により得られたものである。
CNTを製造する際には、同時にフラーレンやグラファイト、非晶性炭素が副生成物として生じ、また、ニッケル、鉄、コバルト、イットリウムなどの触媒金属も残存する。これらの不純物を除去するために、精製を行うことが好ましい。CNTの精製方法は特に限定されないが、硝酸、硫酸等による酸処理、超音波処理が不純物の除去には有効である。併せて、フィルターによる分離除去を行うことも、純度を向上させる観点からより好ましい。
【0093】
精製の後、得られたCNTをそのまま用いることもできる。また、CNTは一般に紐状で生成されるため、用途に応じて所望の長さにカットして用いてもよい。CNTは、硝酸、硫酸等による酸処理、超音波処理、凍結粉砕法などにより短繊維状にカットすることができる。また、併せてフィルターによる分離を行うことも、純度を向上させる観点から好ましい。
本発明においては、カットしたCNTだけではなく、あらかじめ短繊維状に作製したCNTも同様に使用できる。このような短繊維状CNTは、例えば、基板上に鉄、コバルトなどの触媒金属を形成し、その表面にCVD法により700〜900℃で炭素化合物を熱分解してCNTを気相成長させることによって、基板表面に垂直方向に配向した形状で得られる。このようにして作製された短繊維状CNTは基板から剥ぎ取るなどの方法で取り出すことができる。また、短繊維状CNTはポーラスシリコンのようなポーラスな支持体や、アルミナの陽極酸化膜上に触媒金属を担持させ、その表面にCNTをCVD法にて成長させることもできる。触媒金属を分子内に含む鉄フタロシアニンのような分子を原料とし、アルゴン/水素のガス流中でCVDを行うことによって基板上にCNTを作製する方法でも配向した短繊維状のCNTを作製することもできる。さらには、SiC単結晶表面にエピタキシャル成長法によって配向した短繊維状CNTを得ることもできる。
【0094】
本発明で用いるCNTの平均長さは特に限定されず適宜選択することができる。製造容易性、成膜性、導電性等の観点から、CNTの平均長さが0.01μm以上1000μm以下であることが好ましく、0.1μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0095】
本発明で用いるCNTの直径は特に限定されないが、耐久性、透明性、成膜性、導電性等の観点から、0.4nm以上100nm以下であることが好ましく、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは15nm以下である。
熱電変換材料中のCNTの含有量は、全固形分中、2〜40質量%であることが好ましく、5〜35質量%であることがより好ましく、8〜30質量%であることが特に好ましい。
【0096】
[溶媒]
本発明の熱電変換材料は、溶媒を含有することが好ましい。
溶媒は、材料の各成分を良好に分散又は溶解できればよく、水、有機溶媒、及びこれらの混合溶媒を用いることができる。好ましくは有機溶媒であり、アルコール、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒、DMF、NMP、DMSOなどの極性の有機溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ピリジンなどの芳香族系溶媒、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、ジエチルエーテル、THF、t−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジグリムなどのエーテル系溶媒等が好ましく使用される。
溶媒は材料の用途に応じて適量を使用すればよいが、材料の全固形分量に対し、97〜99.99質量%であることが好ましく、98〜99.95質量%であることがより好ましく、98.5〜99.9質量%であることがさらに好ましい。
【0097】
[他の成分]
本発明の熱電変換材料は上記成分の他に、酸化防止剤、対光安定剤、耐熱安定剤、可塑剤等を適宜含有してもよい。これらの成分の含有量は、材料全質量に対し5質量%以下であることが好ましい。
酸化防止剤としては、イルガノックス1010(日本チガバイギー製)、スミライザーGA−80(住友化学工業(株)製)、スミライザーGS(住友化学工業(株)製)、スミライザーGM(住友化学工業(株)製)等が挙げられる。
耐光安定剤としては、TINUVIN 234(BASF製)、CHIMASSORB 81(BASF製)、サイアソーブUV−3853(サンケミカル製)等が挙げられる。
耐熱安定剤としては、IRGANOX 1726(BASF製)が挙げられる。
可塑剤としては、アデカサイザーRS(アデカ製)等が挙げられる。
【0098】
[熱電変換材料]
本発明の熱電変換材料は、上記の各成分を混合して調製することができる。調製方法に特に制限はなく、通常の混合装置等を用いて常温常圧下で行うことができる。例えば、各成分を溶媒中で撹拌、振とう、混練して溶解又は分散させて調製すればよい。溶解や分散を促進するため超音波処理を行ってもよい。
【0099】
本発明の熱電変換素子は、本発明の熱電変換材料を熱電変換層に用いてなるものであればよい。熱電変換層の形状や調製方法は特に限定されないが、基板上に本発明の熱電変換材料を膜(フイルム)状に成形して形成することが好ましく、熱電変換材料を基材上に塗布、成膜して形成することがより好ましい。
熱電変換層の塗布、成膜方法としては、例えば、スピンコート、エクストルージョンダイコート、ブレードコート、バーコート、スクリーン印刷、ステンシル印刷、ロールコート、カーテンコート、スプレーコート、ディップコート、インクジェット法、溶融押出成型法、溶液流延法、カレンダー法等、通常の高分子フイルムの製膜に使用される塗布方法を用いることができる。塗布後、必要に応じて加熱工程や乾燥工程を設けて溶媒等を留去してもよい。
基材には、ガラス、透明セラミックス、金属、プラスチックフィルム等の基板を用いることができる。本発明に用い得るプラスチックフィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン−2,6−フタレンジカルボキシレート、ビスフェノールAとイソ及びテレフタル酸のポリエステルフィルム等のポリエステルフィルム、商品名、ゼオノアフィルム(日本ゼオン社製)、アートンフィルム(JSR社製)、スミライトFS1700(住友ベークライト社製)等のポリシクロオレフィンフィルム、商品名、カプトン(東レ・デュポン社製)、アピカル(カネカ社製)、ユービレックス(宇部興産社製)、ポミラン(荒川化学社製)等のポリイミドフィルム、商品名、ピュアエース(帝人化成社製)、エルメック(カネカ社製)等のポリカーボネートフィルム、商品名、スミライトFS1100(住友ベークライト社製)等のポリエーテルエーテルケトンフィルム、商品名、トレリナ(東レ社製)等のポリフェニルスルフィドフィルム等が挙げられる。使用条件や環境により適宜選択させるが入手の容易性、好ましくは100℃以上の耐熱性、経済性及び効果の観点から、市販のポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、各種ポリイミドやポリカーボネートフィルム等が好ましい。
特に、熱電変換層との圧着面に各種電極材料を設けた基材を用いることが好ましい。この電極材料としてはITO、ZnO等の透明電極、銀、銅、金、アルミニウムなどの金属電極、CNT、グラフェンなどの炭素材料、PEDOT/PSS等の有機材料、銀、カーボンなどの導電性微粒子を分散した導電性ペースト、銀、銅、アルミニウムなどの金属ナノワイヤーを含有する導電性ペースト等が使用できる。
【0100】
熱電変換材料がドーパントとしてオニウム塩化合物を含む場合、調製後の材料にドーピングのために加熱又は活性エネルギー線照射を行うことが好ましい。この処理によってオニウム塩化合物から酸が発生し、この酸が導電性高分子をプロトン化することにより導電性高分子が正の電荷でドーピング(p型ドーピング)される。
活性エネルギー線には、放射線や電磁波が包含され、放射線には粒子線(高速粒子線)と電磁放射線が包含される。粒子線としては、アルファ線(α線)、ベータ線(β線)、陽子線、電子線(原子核崩壊によらず加速器で電子を加速するものを指す)、重陽子線等の荷電粒子線、非荷電粒子線である中性子線、宇宙線等が挙げられ、電磁放射線としては、ガンマ線(γ線)、エックス線(X線、軟X線)が挙げられる。電磁波としては、電波、赤外線、可視光線、紫外線(近紫外線、遠紫外線、極紫外線)、X線、ガンマ線などがあげられる。本発明において用いる線種は特に限定されず、例えば、使用するオニウム塩化合物の極大吸収波長付近の波長を有する電磁波を適宜選べばよい。
これらの活性エネルギー線のうち、ドーピング効果および安全性の観点から好ましいのは紫外線、可視光線、赤外線であり、より好ましいのは紫外線である。具体的には240〜1100nm、好ましくは300〜850nm、より好ましくは350〜670nmに極大吸収を有する光線である。
【0101】
活性エネルギー線の照射には、放射線または電磁波照射装置が用いられる。照射する放射線または電磁波の波長は特に限定されず、使用するオニウム塩化合物の感応波長に対応する波長領域の放射線または電磁波を照射できるものを選べばよい。
放射線または電磁波を照射できる装置としては、LEDランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、DeepUVランプ、低圧UVランプなどの水銀ランプ、ハライドランプ、キセノンフラッシュランプ、メタルハライドランプ、ArFエキシマランプ、KrFエキシマランプなどのエキシマランプ、極端紫外光ランプ、電子ビーム、X線ランプを光源とする露光装置がある。紫外線照射は、通常の紫外線照射装置、例えば、市販の硬化/接着/露光用の紫外線照射装置(ウシオ電機株式会社SP9-250UB等)を用いて行うことができる
露光時間及び光量は、用いるオニウム塩化合物の種類及びドーピング効果を考慮して適宜選択すればよい。具体的には、光量10mJ/cm〜10J/cm、好ましくは50mJ/cm〜5J/cmで行うことが挙げられる。
【0102】
熱によるドーピングは、熱電変換材料をオニウム塩化合物が酸を発生する温度以上で加熱すればよい。加熱温度として、好ましくは50℃〜200℃、より好ましくは70℃〜120℃である。加熱時間は、好ましくは5分〜3時間、より好ましくは15分〜1時間である。
【0103】
[熱電変換素子]
本発明の熱電変換材料は、高い熱起電力を備えており、熱電発電素子等の熱電変換素子用の材料として好適に用いることができる。
本発明の熱電変換素子は、本発明の熱電変換材料を用いてなるものであればよく、その構成については特に限定されない。好ましくは基材(基板)と、当該基材上に設けられた本発明の熱電変換材料を含む熱電変換層とを備えた素子であり、より好ましくは、これらを電気的に接続する電極をさらに有する素子であり、さらに好ましくは基材上に設けられた1対の電極と、該電極間に熱電変換層とを有する素子である。
本発明の熱電変換素子において、熱電変換層は1層であっても2層以上であってもよい。好ましくは2層以上である。
【0104】
本発明の熱電変換素子の構造の一例として、図1〜図4に示す素子の構造が挙げられる。図1の素子(1)及び図2の素子(2)は、単層の熱電変換層を備えた熱電変換素子を、図3の素子(3)及び図4の素子(4)は、多層の熱電変換層を備えた熱電変換素子を、それぞれ示す。図1〜図4中、矢印は、熱電変換素子の使用時における温度差の向きを示す。
図1に示す素子(1)及び図3に示す素子(3)は、第1の基材(12、32)上に、第1の電極(13、33)及び第2の電極(15、35)を含む一対の電極と、該電極間に本発明の熱電変換材料の層(14、34−a、34−b)を備える素子である。図3に示す素子(3)では、熱電変換層は第一の熱電変換層(34−a)及び第二の熱電変換層(34−b)からなり、これらの層が温度差方向(矢印方向)に積層される。第2の電極(15、35)は第2の基材(16、36)表面に配設されており、第1の基材(12、32)及び第2の基材(16、36)の外側には互いに対向して金属板(11、17、31、37)が配設される。
図2に示す素子(2)及び図4に示す素子(4)は、第1の基材(22、42)上に、第1の電極(23、43)及び第2の電極(25、45)が配設され、その上に熱電変換材料の層(24、44−a、44−b)が設けられている。図4に示す素子(4)では、熱電変換層は第一の熱電変換層(44−a)及び第二の熱電変換層(44−b)からなり、これらの層が温度差方向(矢印方向)に積層される。
本発明の熱電変換素子は、基材上に本発明の熱電変換材料が膜(フィルム)状に設けられ、この基材を上記第1の基材(12、22、32、42)として機能させることが好ましい。すなわち、基材表面(熱電変換材料との圧着面)に、上述した各種電極材料が設けられ、その上に本発明の熱電変換材料が設けられた構造であることが好ましい。
【0105】
形成された熱電変換層は、一方の表面が基材で覆われているが、これを用いて熱電変換素子を調製するに際しては、他方の表面にも基材(第2の基材(16、26、36、46))を圧着させることが、膜の保護の観点から好ましい。また、この第2の基材(16、36)表面(熱電変換材料との圧着面)には上記各種電極材料を予め設けておいてもよい。また、第2の基材と熱電変換材料との圧着は、密着性向上の観点から100℃〜200℃程度に加熱して行うことが好ましい。
【0106】
本発明の素子が2層以上の熱電変換層を有する場合、複数の熱電変換層の内の少なくとも1層が本発明の熱電変換材料を用いて形成された熱電変換層であればよい。すなわち、本発明の熱電変換素子が複数の熱電変換層を有する場合、本発明の熱電変換材料を用いて形成された熱電変換層のみを複数層有する素子であってもよいし、本発明の熱電変換材料を用いて形成された熱電変換層と、本発明の熱電変換材料以外の熱電変換材料(以下、「第2の熱電変換材料」とも称する)を用いて形成された熱電変換層とを有する素子であってもよい。好ましくは、全ての熱電変換層が本発明の熱電変換材料を用いて形成された素子である。
【0107】
第2の熱電変換材料には公知の熱電変換材料を用いることができ、少なくとも導電性高分子を含有する材料であることが好ましい。第2の熱電変換材料に用いる導電性高分子としては、本発明の熱電変換材料に用いる導電性高分子として前述したものが好ましい。
第2の熱電変換材料は、導電性高分子の他に、溶媒や他の成分を含有してもよい。第2の熱電変換材料に用いる溶媒としては、上述した本発明の熱電変換材料に用いる溶媒が、他の成分としては、上述した本発明熱電変換材料に用いるカーボンナノチューブ、ドーパント、熱励起アシスト剤等が、それぞれ挙げられる。
また、第2の熱電変換材料の調整、各成分の含有量や溶媒の使用量等についても、上述した本発明熱電変換材料と同様に行うことができる。
【0108】
本発明の熱電変換素子が2層以上の熱電変換層を有する場合、隣接する熱電変換層は互いに異なる種類の導電性高分子を含有していることが好ましい。
例えば、隣接する熱電変換層1及び2が、ともに本発明の熱電変換材料により形成される層である場合、両熱電変換層はともに前述した導電性高分子を含有するが、熱電変換層1に含有される該導電性高分子と熱電変換層2に含有される該導電性高分子とは、互いに異なる構造であることが好ましい。
【0109】
本発明の熱電変換素子において、熱電変換層の膜厚(2層以上の熱電変換層を有する場合は、総膜厚)は、0.1μm〜1000μmであることが好ましく、1μm〜100μmであることがより好ましい。膜厚が薄いと温度差を付与しにくくなることと、膜内の抵抗が増大してしまうため好ましくない。
また、第1及び第2の基材の厚さは取り扱い性、耐久性等の点から、好ましくは30〜3000μm、より好ましくは50〜1000μm、さらに好ましくは100〜1000μm、特に好ましくは200〜800μmである。基材が厚すぎると熱伝導率が低下することがあり、薄すぎると外部衝撃により膜が損傷しやすくなることがある。
一般に熱電変換素子では、有機薄膜太陽電池用素子等の光電変換素子と比べて、変換層の塗布・製膜が有機層1層分でよく、簡便に素子を製造できる。特に、本発明の熱電変換材料を用いると有機薄膜太陽電池用素子と比較して100倍〜1000倍程度の厚膜化が可能であり、空気中の酸素や水分に対する化学的な安定性が向上する。
【0110】
本発明の熱電変換素子は、熱電発電用物品の発電素子として好適に用いることができ、具体的には、温泉熱発電、太陽熱発電、廃熱発電等の発電機や、腕時計用電源、半導体駆動電源、小型センサー用電源等の用途に好適に用いることができる。
【実施例】
【0111】
以下、実施例によって本発明をより詳しく説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0112】
実施例及び比較例には、以下の導電性高分子及びドーパントを用いた。また、熱励起アシスト剤には、前記で例示した熱励起アシスト剤401〜508を用いた。
【0113】
【化27】

【0114】
用いた導電性高分子1〜10の分子量は下記のとおりである。
導電性高分子1:重量平均分子量=87000
導電性高分子2:重量平均分子量=77000
導電性高分子3:重量平均分子量=103000
導電性高分子4:重量平均分子量=118000
導電性高分子5:重量平均分子量=95000
導電性高分子6:重量平均分子量=83000
導電性高分子7:重量平均分子量=109000
導電性高分子8:重量平均分子量=69000
導電性高分子9:重量平均分子量=24000
導電性高分子10:重量平均分子量=47000
【0115】
【化28】

【0116】
実施例1
下記に示す導電性高分子1(アルドリッチ製、重量平均分子量=87000)10mg、前記熱励起アシスト剤401を2mg、及びCNT(ASP−100F、Hanwha Nanotech社製)4mgを、オルトジクロロベンゼン5ml中に添加し、超音波水浴にて70分間分散させた。その後、下記に示すドーパント107を4mg添加し十分に溶解させて混合液を調製した。この混合液をガラス基板上に塗布し、120℃にて15分間加熱して溶媒を留去した後、室温真空条件下にて10時間乾燥させ、膜厚2.5μmの熱電変換用膜を作製した。その後、この膜を紫外線照射機(アイグラフィックス株式会社製、ECS−401GX)により紫外線照射(光量:1.06J/cm)し、導電性高分子のドーピングを行った。ドーピングの有無は下記の方法によって確認した。
得られた熱電変換用膜について、熱電特性、導電性高分子のHOMOと熱励起アシスト剤のLUMOとのエネルギー差を評価した。結果を表1に示す。
【0117】
[熱励起アシスト剤がドープ準位を形成しないことの確認]
実施例で使用した熱励起アシスト剤は、予め下記の測定によってドープ準位を形成しないものであることを確認した。
導電性高分子10mgと熱励起アシスト剤10mgとをクロロホルム(スペクトロゾール(商品名、株式会社同仁化学研究所製))2mlに溶解させた。この溶液をガラス基板(大きさ:25mm×25mm)上にスピンコートした後、真空下で1時間乾燥させた薄膜サンプルの吸収スペクトルを観測した。
その結果、導電性高分子単独又は熱励起アシスト剤単独の吸収ピークとは異なる新たな吸収ピークが発生し、且つこの新たな吸収ピーク波長が導電性高分子の吸収極大波長よりも長波長側である場合にドープ準位が発生したと判断し、それ以外をドープ準位が発生しないものと判断した。
【0118】
[ドーピングの確認]
下記の測定により、熱電変換用膜がドーピングされているか否かを決定した。
膜の吸収スペクトルを波長300〜2000nmの領域で測定した。ドーピングされていない膜の主吸収よりも長波長側に出現する新たな吸収ピークはドーピングによるものである。この吸収ピークが観測された場合、所望通りドーピングされているものと判断した。
【0119】
[熱電特性(ZT値)の測定]
得られた熱電変換用膜を、熱電特性測定装置(オザワ科学(株)製:RZ2001i)を用いて、100℃におけるゼーベック係数(単位:μV/K)及び導電率(単位:S/cm)を評価した。続いて、熱伝導率測定装置(英弘精機(株)製:HC-074)を用いて熱伝導率(単位:W/mK)を算出した。これらの値を用いて、前記数式(II)に従って、100℃におけるZT値を算出し、この値を熱電特性値とした。
【0120】
[HOMO及びLUMOエネルギーレベルの測定]
下記の方法により、導電性高分子と熱励起アシスト剤それぞれのHOMOエネルギー準位及びLUMOエネルギー準位を求めた。
HOMOエネルギー準位は、単一の各成分の塗布膜をガラス基板上にそれぞれ作製し、光電子分光法(理研計器社製:AC−2)によりHOMOエネルギー準位を測定した。LUMOエネルギー準位は、紫外可視分光光度計((株)島津製作所製:UV−3600)を用いて、バンドギャップを測定した後、先に測定したHOMOエネルギー準位に加えることにより、LUMOエネルギー準位を算出した。
次いで、導電性高分子のHOMOのエネルギー準位の絶対値と熱励起アシスト剤のLUMOのエネルギー準位の絶対値との差|導電性高分子のHOMO|−|熱励起アシスト剤のLUMO|を求めた。
【0121】
実施例2〜29、比較例1〜9
導電性高分子、熱励起アシスト剤、ドーパントの種類及び添加の有無を表1又は表2に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2〜29及び比較例1〜9の熱電変換用膜を製造し評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0122】
【表1】

【0123】
【表2】

【0124】
表1及び2から明らかなように、熱励起アシスト剤のLUMOのエネルギー準位と導電性高分子のHOMOのエネルギー準位とが前記数式(I)を満たす実施例1〜29は、いずれも優れた熱電特性を有した。一方、前記数式(I)を満たさない比較例2〜4、及び熱励起アシスト剤を使用しない比較例1、6〜9では実施例と比べて熱電特性が大幅に低下していた。
【0125】
実施例30
第一の電極としてITO電極(厚み:10nm)を有するガラス基板上に、実施例1で作製した混合液を塗布し、95℃にて20分間加熱して溶媒を留去した後、室温真空下にて4時間乾燥させることにより膜厚2.9μmの第一の熱電変換層を形成した。その後、紫外線照射機(アイグラフィックス株式会社製、ECS−401GX)により紫外線照射(光量:1.06J/cm)し、導電性高分子のドーピングを行った。
次いで、第一の熱電変換層の上に、実施例7で作製した混合液を同様にして塗布し、95℃にて20分間加熱して溶媒を留去した後、室温真空下にて4時間乾燥させることにより第二の熱電変換層を形成した。その後、紫外線照射機(アイグラフィックス株式会社製、ECS−401GX)により紫外線照射(光量:1.06J/cm)し、導電性高分子のドーピングを行った。以上のように、第一の熱電変換層と第二の熱電変換層が積層した膜厚5.5μmの積層型の熱電変換層を作製した。
第二の熱電変換層の上に、第二の電極としてアルミニウムを真空蒸着法により設置(電極の厚み:20nm)し、熱電変換素子を作製した。
【0126】
実施例31〜33
導電性高分子、熱励起アシスト剤、及び添加剤の種類を表3に示すように変更した以外は、実施例30と同様にして、熱電変換素子を作製した。
【0127】
実施例34〜35
導電性高分子、熱励起アシスト剤、及び添加剤の種類を表4に示すように変更した以外は実施例30と同様にして、第一、第二、及び第三の熱電変換層用の混合液を調製した。
これらの混合液を用いて、実施例30と同様にして、第一の電極上に、第一の熱電変換層、第二の熱電変換層、及び第三の熱電変換層を順に塗布、成膜し、さらに第二の電極を設置して、熱電変換素子を作製した。
【0128】
実施例36
導電性高分子、熱励起アシスト剤、及び添加剤の種類を表4に示すように変更した以外は実施例30と同様にして、第一、第二、第三、及び第四の熱電変換層用の混合液を調製した。
これらの混合液を用いて、実施例30と同様にして、第一の電極上に、第一の熱電変換層、第二の熱電変換層、第三の熱電変換層、及び第四の熱電変換層を順に塗布、成膜し、さらに第二の電極を設置して、熱電変換素子を作製した。
【0129】
実施例37
実施例30と同様にして、導電性高分子5、CNT、ドーパント107、及び熱励起アシスト剤406からなる熱電変換層用の混合液A、導電性高分子2、CNT、ドーパント107、及び熱励起アシスト剤504からなる混合液Bをそれぞれ調製した。
実施例30と同様に、第一の電極上に、混合液Aを用いて第一の熱電変換層を、混合液Bを用いて第二の熱電変換層を、混合液Aを用いて第三の熱電変換層、混合液Bを用いて第四の熱電変換層を順に成膜し、さらに第二の電極を設置して、熱電変換素子を作製した。得られた素子は、第一の電極−A層−B層−A層−B層−第二の電極、という繰り返し構造をとる熱電変換層を有しており、4層からなる熱電変換層の総膜厚は9.0μmであった。
【0130】
実施例38
実施例30と同様にして、熱電変換層用の混合液を調製した後、これを用いて第一の電極上に第一の熱電変換層を成膜し、さらに第二の電極を設置して、熱電変換素子を作製した。
【0131】
実施例39
実施例31と同様にして、導電性高分子2、CNT、ドーパント107及び熱励起アシスト剤504からなる混合液と、導電性高分子5、CNT、ドーパント107及び熱励起アシスト剤406からなる混合液をそれぞれ別々に調製した。それぞれの混合液を同重量を分取して、超音波にて10分間混合させた。
第一の電極としてITO電極(厚み:10nm)を有するガラス基板上に、この混合液を塗布し、95℃にて20分間加熱して溶媒を留去した後、室温真空下にて4時間乾燥させることにより膜厚6.5μmの積層構造ではない単一の熱電変換層を形成した。その後、実施例30と同様にして第二の電極としてアルミニウムを設置(電極の厚み:20nm)し、熱電変換素子を作製した。
【0132】
[熱電特性(出力)の測定]
得られた熱電変換素子の熱電特性を、下記により測定した。
熱電変換素子の第二の電極側を設定温度55℃のホットプレート(アズワン株式会社製、型番:HP−2LA)上に接着させ、第一の電極側に設定温度25℃のコールドプレート(日本ディジタル株式会社製、型番:980−127DL)を接着させた。第一の電極と第二の電極間に発生した熱起電力(単位:V)、及び電流(単位:A)を乗することにより熱電変換素子の出力(単位:W)を算出し、この値を熱電特性値とした。
各素子の出力を、実施例38の素子の出力値を100とした相対値で表し、評価した。結果を表3〜5に示す。
【0133】
【表3】

【0134】
【表4】

【0135】
【表5】

【0136】
表3〜5から明らかなように、複数の熱電変換層を有する実施例30〜37の積層型素子は、単層の熱電変換層を有する実施例38〜39の素子と比べ、高い出力(熱電特性)を示した。さらに、実施例31と39との比較から、異なる種類の導電性高分子を別々の層に配することにより、出力(熱電特性)が向上することがわかった。
【符号の説明】
【0137】
1、2、3、4 熱電変換素子
11、17、31、37 金属板
12、22、32、42 第1の基材
13、23、33、43 第1の電極
14、24 熱電変換層
34−a、44−a 第一の熱電変換層
34−b、44−b 第二の熱電変換層
15、25、35、45 第2の電極
16、26、36、46 第2の基材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性高分子と熱励起アシスト剤とを含有する熱電変換材料であって、熱励起アシスト剤が導電性高分子にドープ準位を形成しない化合物であり、熱励起アシスト剤のLUMO(最低空軌道)のエネルギー準位と導電性高分子のHOMO(最高被占軌道)のエネルギー準位とが下記数式(I)を満たす、熱電変換材料。
数式(I)
0.1eV≦|導電性高分子のHOMO|−|熱励起アシスト剤のLUMO|≦1.9eV
(数式(I)中、|導電性高分子のHOMO|は導電性高分子のHOMOのエネルギー準位の絶対値を、|熱励起アシスト剤のLUMO|は熱励起アシスト剤のLUMOのエネルギー準位の絶対値をそれぞれ表す。)
【請求項2】
ドーパント及び/又はカーボンナノチューブを含有する、請求項1記載の熱電変換材料。
【請求項3】
前記導電性高分子が、チオフェン系化合物、ピロール系化合物、アニリン系化合物、アセチレン系化合物、p−フェニレン系化合物、p−フェニレンビニレン系化合物、p−フェニレンエチニレン系化合物、及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種のモノマーから誘導される繰り返し単位を有する共役系高分子である、請求項1又は2記載の熱電変換材料。
【請求項4】
前記熱励起アシスト剤が、ベンゾチアジアゾール骨格、ベンゾチアゾール骨格、ジチエノシロール骨格、シクロペンタジチオフェン骨格、チエノチオフェン骨格、チオフェン骨格、フルオレン骨格、及びフェニレンビニレン骨格から選ばれる少なくとも1種の構造を含む高分子化合物、フラーレン系化合物、フタロシアニン系化合物、ペリレンジカルボキシイミド系化合物、又はテトラシアノキノジメタン系化合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱電変換材料。
【請求項5】
前記ドーパントがオニウム塩化合物である、請求項2〜4のいずれか1項に記載の熱電変換材料。
【請求項6】
さらに溶媒を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱電変換材料。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱電変換材料を用いた熱電変換素子。
【請求項8】
2層以上の熱電変換層を有し、該熱電変換層の少なくとも1層が請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱電変換材料を含有してなる、請求項7記載の熱電変換素子。
【請求項9】
2層以上の熱電変換層のうち、隣接する熱電変換層が互いに異なる導電性高分子を含有する、請求項8記載の熱電変換素子。
【請求項10】
基材と、該基材上に設けられた熱電変換層とを備えた、請求項7〜9のいずれか1項に記載の熱電変換素子。
【請求項11】
さらに電極を有する、請求項7〜10のいずれか1項に記載の熱電変換素子。
【請求項12】
請求項7〜11のいずれか1項に記載の熱電変換素子用いた熱電発電用物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−84947(P2013−84947A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−215441(P2012−215441)
【出願日】平成24年9月28日(2012.9.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】