説明

熱電変換素子、電極材料およびその製造方法

熱電変換素子、熱電変換素子を製造する方法、および熱電変換素子に適用される電極材料が、本発明にしたがって提供される。本発明は、熱電変換材料粉末、中間層材料および電極材料を熱電変換素子の構造にしたがって前もって配置し;嵩張る熱電変換材料を形成するプロセスおよび素子に電極を組み合わせるプロセスを同時に完了させる一工程焼結法を採用し;π型熱電変換素子を最終的に得る;各工程により特徴付けられる。本発明に関連する電極材料は、Cu、Ag、AlまたはAuから選択される第1の金属、およびMo、W、Zr、Ta、Cr、Nb、VまたはTiから選択される第2の金属を少なくとも含む、二成分または三成分合金または複合材料を含む。本発明は、製造手順を簡素化し、コストを減少させ、関連要素を熱と圧力に2回曝露することによる悪影響を避ける。

【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
本出願は、「熱電変換素子、電極材料およびその製造方法」と題する、2009年3月26日に出願された中国特許出願第200910048222.X号に優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、熱電変換の技術分野に該当する、熱電変換素子、熱電変換素子を製造する方法、および熱電変換素子に適用される電極材料を提供する。
【背景技術】
【0003】
熱電気による発電は、熱から電気への直接変換を実現するために半導体材料におけるゼーベック効果を利用した技法であり、この技法は、長寿命、高い信頼性、安全な環境などを特徴とする。この技法には、幅広い用途があり、光電気と熱電気の太陽エネルギーによる発電および工業廃熱による発電の分野において潜在的な社会効果と経済効果がある。熱電変換材料の性能指数(figure of merit)の改善は、熱電式発電のエネルギー変換効率を改善するためのキーポイントである。したがって、熱電変換の分野における研究は、主に、高性能の新規の熱電変換材料を開発することに重点を置いている。別の態様において、新規の熱電変換材料素子を研究し開発するプロセスが、熱電式発電のエネルギー変換効率を改善するために同等に重要である。
【0004】
熱電変換素子は、主に、2つのタイプ、すなわち、p型とn型の熱電変換半導体要素からなる。単一の熱電変換構成要素の電圧は非常に低いので、熱電式発電モジュールを構築するために、電気伝導の理由で直列に接続されたか、または熱伝導の理由で並列に接続された様々なp型とn型の熱電変換構成要素を有する電極が通常使用され、それによって、利用できる高い電圧を得ている。
【0005】
充填スクッテルド鉱が、中間温度で高性能を有する新規の熱電変換材料としてみなされており、これには将来有望な用途がある。Bi2Te3素子を溶接するための技法が、充填スクッテルド鉱の低温での電極の溶接のために借用され、ここで、電極材料として銅が選択され、溶接にはんだ付け技法が採用される。既存の報告による、充填スクッテルド鉱素子の高温における電極の溶接に関して、Cu、Mo、Ni−Cr、W、Ta、およびそれらの合金、ステレンス鋼(特許文献1)、Ag、Ag−Au、Ag−Cu、Fe(特許文献2)およびNb(特許文献3)が電極材料として選択されるのに対し、銅ろう付け(特許文献1、4、5など)、銀ろう付け(特許文献2、6など)、焼結(特許文献7、3、8など)などが、電極とスクッテルド鉱材料の接合方法として採用されている。
【0006】
表1には、スクッテルド鉱材料と金属材料の熱膨張係数(CTE)、導電率および熱伝導率が列記されている。充填スクッテルド鉱のものに近いCTEを有するTi、FeおよびNiを除いて、単一金属は、充填スクッテルド鉱とは大きく異なるCTEを示すのに対し、Ti、FeおよびNiは、Cu、Moなどよりも、ずっと低い導電率と熱伝導率を示すのが分かる。主にFe、Cr、Niなどからなるステンレス鋼は、充填スクッテルド鉱材料のものに最も近いCTEを有する。その上、Moは、充填スクッテルド鉱材料よりも低いCTEを有するのに対し、Cuは、充填スクッテルド鉱材料よりも高いCTEを有するのが分かる。MoおよびCuを合金で組み合わせた場合、その合金は、これら2つの相対比率を調整することによって、充填スクッテルド鉱材料のものに近いCTEを有するかもしれず、またCuおよびMoの良好な導電率および熱伝導率も維持するかもしれない。WとCuは極めて同じである。
【0007】
最近、熱電変換素子を製造するための一般に採用される方法(例えば、特許文献9に記載された熱電変換素子を製造する方法)は、主に、ダイの中で熱電変換素子のバルク要素を最初に製造(焼結)し、このバルク要素上に高温で電極を溶接し、低温で側部をセラミック板とはんだで溶接し、次いで、最終的に切断などによりπ型熱電変換素子を形成する、各工程において特徴付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6005182号明細書
【特許文献2】米国特許第6759586号明細書
【特許文献3】米国特許第6563039号明細書
【特許文献4】米国特許出願第2002/0024154号明細書
【特許文献5】中国特許第101114692号明細書
【特許文献6】米国特許出願第2008/0023057号明細書
【特許文献7】米国特許出願第2006/0017170号明細書
【特許文献8】特開平11−195817号公報
【特許文献9】中国特許第200710044771.0号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、既存の方法は、複雑なだけでなく、必然的に熱電変換材料(充填スクッテルド鉱などの)を熱と圧力に再び曝露し、熱電変換材料の性能を劣化させる虞がある。したがって、プロセス工程を単純にし、熱電変換材料への悪影響を避けるために、素子を製造する新規の方法を開発することが差し迫って必要とされている。
【表1】

【0010】
本発明の1つの目的は、熱電変換素子を製造するための比較的単純な方法を提供すること、すなわち、一工程焼結により熱電変換材料を電極に接続することにあり、これにより、製造手法が単純になり、コストが減少し、高圧下での第2の焼結により生じる熱電変換材料の劣化が避けられる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様によれば、熱電変換素子を製造する方法であって、上面を有する第1の電極を形成する工程;第1の電極の上面に第1の中間層材料を堆積させる工程;第1の電極の上面に対して実質的に垂直に分割板を形成して、第1の中間層材料上の空間を複数の部分に分割する工程;積層を形成するように、第1の中間層材料の第1の上面のある部分に第1の熱電変換材料の粉末を堆積させ、この第1の中間層材料の第2の上面の他の部分に第2の熱電変換材料の粉末を堆積させる工程;その粉末を焼結して、第1の熱電変換材料および第2の熱電変換材料から少なくとも1つの第1の熱電変換構成要素および少なくとも1つの第2の熱電変換構成要素を形成し、第1の電極を第1の熱電変換構成要素および第2の熱電変換構成要素と電気的に接続して、一体モジュールを形成する工程;および一体モジュールから分割板を取り除いて、熱電変換素子を形成する工程の各工程を有してなる方法が提供される。
【0012】
上述した実施の形態において、熱電変換素子はダイ内で形成される。
【0013】
本発明の別の態様によれば、上述した方法は、第1の電極、第1の中間層材料および分割板の内の少なくとも1つを前処理する工程をさらに含み、この前処理工程は、表面粗さを増加させ、露出表面から金属酸化物を除去する各工程を含む。
【0014】
上述した実施の形態において、第1の電極はプレートまたはホイルからなり、この第1の電極は、二成分または三成分合金もしくは複合材料からなり、これらは、少なくとも、Cu、Ag、AlまたはAuから選択される第1の金属、およびMo、W、Zr、Ta、Cr、Nb、VまたはTiから選択される第2の金属を含む。
【0015】
第1の電極が、x(質量%)が20≦x≦90であり、Aが、Mo、W、Zr、Ta、Cr、Nb、VまたはTiから選択される少なくとも1種類の材料であり、Bが、Cu、Ag、AlまたはAuから選択される少なくとも1種類の材料である、一般式Ax1-xを有する合金から選択される合金または複合材料からなることが好ましい。
【0016】
上述した実施の形態において、第1の中間層材料を堆積させる工程は、粉末を堆積させる工程を含み、その堆積方法は、プラズマ溶射、フレーム溶射、アーク溶射または電気メッキのプロセスを適用することを含む。
【0017】
第1の中間層材料が、第1の電極と接触した接合強化層、およびこの接合強化層上に積層されたバリア層を含むことが好ましい。分割板は、Ni、Ag、Cu、Ti、Alから選択される金属を含むか、またはそれらの2種類以上の金属の合金を含み、バリア層は、TiまたはAlもしくはそれらの合金を含む。
【0018】
第1の熱電変換材料が、n−CoSb3系、充填および/またはドープトn−CoSb3系、n−PbTe系、充填および/またはドープトn−PbTe系、n−Zn4Sb3系、および充填および/またはドープトn−Zn4Sb3系から選択される少なくとも1種類のn型熱電変換材料またはn型複合熱電変換材料の少なくとも1つの成分を含むこと、および
第2の熱電変換材料が、p−CoSb3系、充填および/またはドープトp−CoSb3系、p−PbTe系、充填および/またはドープトp−PbTe系、p−Zn4Sb3系、および充填および/またはドープトp−Zn4Sb3系から選択される少なくとも1種類のp型熱電変換材料またはp型複合熱電変換材料の少なくとも1つの成分を含むこと、
が好ましい。
【0019】
分割板が、ZrO2、Al23、AlN、SiO2、ガラス、グラファイト、Ni、Cu、Feおよびステンレス鋼の内の1種類以上を含むことが好ましい。
【0020】
上述した実施の形態において、焼結工程は、放電プラズマを含み、20〜100MPaの圧力下および500〜750℃の焼結温度での焼結を含んでよい。
【0021】
ある実施の形態によれば、上述した方法は、焼結前に、第1の熱電変換材料および第2の熱電変換材料のそれぞれの上面に第2の中間層材料を堆積させ、それら第2の中間層材料の各々の上に第2の電極を形成して、積層を形成する各工程を含む。それに加え、ある実施の形態によれば、上述した方法は、第2の電極および第2の中間層材料の内の少なくとも一方を前処理する工程を含み、この前処理工程は、表面粗さの増加および露出表面からの金属酸化物の除去の内の少なくとも一方を含む。
【0022】
第2の電極が、プレートまたはホイルからなることが好ましい。第2の電極が、二成分または三成分合金もしくは複合材料からなり、これらは、少なくとも、Cu、Ag、AlまたはAuから選択される第1の金属、およびMo、W、Zr、Ta、Cr、Nb、VまたはTiから選択される第2の金属を含むことが好ましい。第2の電極が、x(質量%)が20≦x≦90であり、Aが、Mo、W、Zr、Ta、Cr、Nb、VまたはTiから選択される少なくとも1種類の材料であり、Bが、Cu、Ag、AlまたはAuから選択される少なくとも1種類の材料である、一般式Ax1-xを有する合金から選択される合金または複合材料からなることがより好ましい。
【0023】
上述した実施の形態において、第2の中間層材料を堆積させる工程は、粉末を堆積させる工程を含み、その堆積方法は、プラズマ溶射、フレーム溶射、アーク溶射または電気メッキのプロセスを適用することを含む。
【0024】
第2の中間層材料が、第1の熱電変換構成要素および第2の熱電変換構成要素上に形成されたバリア層、およびバリア層と接触した接合強化層を含むことが好ましい。
【0025】
熱電変換構成要素および電極の熱膨張係数の偏差は10%未満であることが好ましい。
【0026】
ある実施の形態によれば、第1の電極は複数の第1の電極要素を含み、第2の電極は複数の第2の電極要素を含み、第1の電極の各電極要素は、あるドープ型の熱電変換構成要素が、第1の電極の電極要素の端部、および第2の電極の電極要素の端部に電気的に接続され、一方で、異なるドープ型の別の熱電変換構成要素が、第1の電極の電極要素の別の端部、および第2の電極の別の電極要素の端部に電気的に接続されるように、熱電変換構成要素により第2の電極の電極要素の対に交互に接続される。
【0027】
本発明の別の態様によれば、本発明により、熱電変換素子であって、第1の電極;それぞれ第1の電極と接触した第1の熱電変換構成要素および第2の熱電変換構成要素;および第1の電極と第1の熱電変換構成要素または第2の熱電変換構成要素との間に形成され、それらに接続された中間層を備え、第1の電極は、二成分または三成分合金もしくは複合材料からなり、これは、少なくとも、Cu、Ag、AlまたはAuから選択される第1の金属、およびMo、W、Zr、Ta、Cr、Nb、VまたはTiから選択される第2の金属を含む熱電変換素子が提供される。
【0028】
第1の電極が、x(質量%)が20≦x≦90であり、Aが、Mo、W、Zr、Ta、Cr、Nb、VまたはTiから選択される少なくとも1種類の材料であり、Bが、Cu、Ag、AlまたはAuから選択される少なくとも1種類の材料である、一般式Ax1-xを有する合金から選択される合金または複合材料からなることが好ましい。
【0029】
第1の熱電変換材料が、n−CoSb3系、充填および/またはドープトn−CoSb3系、n−PbTe系、充填および/またはドープトn−PbTe系、n−Zn4Sb3系、および充填および/またはドープトn−Zn4Sb3系から選択される少なくとも1種類のn型熱電変換材料またはn型複合熱電変換材料の少なくとも1つの成分を含むこと、および
第2の熱電変換材料が、p−CoSb3系、充填および/またはドープトp−CoSb3系、p−PbTe系、充填および/またはドープトp−PbTe系、p−Zn4Sb3系、および充填および/またはドープトp−Zn4Sb3系から選択される少なくとも1種類のp型熱電変換材料またはp型複合熱電変換材料の少なくとも1つの成分を含むこと、
が好ましい。
【0030】
ある態様によれば、熱電変換素子は、第1の熱電変換構成要素および第2の熱電変換構成要素のそれぞれの上面に形成された第2の中間層、および各中間層上に形成された第2の電極をさらに含んでもよい。
【0031】
第2の電極が、二成分または三成分合金もしくは複合材料からなり、これは、少なくとも、Cu、Ag、AlまたはAuから選択される第1の金属、およびMo、W、Zr、Ta、Cr、Nb、VまたはTiから選択される第2の金属を含むことが好ましい。
【0032】
第2の電極が、x(質量%)が20≦x≦90であり、Aが、Mo、W、Zr、Ta、Cr、Nb、VまたはTiから選択される少なくとも1種類の材料であり、Bが、Cu、Ag、AlまたはAuから選択される少なくとも1種類の材料である、一般式Ax1-xを有する合金から選択される合金または複合材料からなることが好ましい。
【0033】
本発明は、一工程焼結によりπ型要素を得て、従来技術におけるπ型要素を得るための複雑な手法を単純にし、従来技術における二度目の熱と圧力への、充填された熱電変換材料の曝露により生じる充填された熱電変換材料の性能への悪影響を防ぐという利点を包含する。
【0034】
本発明の先の一般的な説明および以下の詳細な説明は、例示と説明であり、特許請求の範囲による本発明のさらなる解釈を提供することを意図していることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本発明をさらに理解するために提供された図面が、本発明の一部として含まれ、体現される。それらの図面は、本発明の実施の形態を示し、明細書と共に本発明の原理を説明するものである。
【図1a】前処理におけるバリア層を示す説明図
【図1b】前処理における接合強化層を示す説明図
【図1c】前処理における分割板を示す説明図
【図1d】前処理における電極を示す説明図
【図2】本発明のある実施の形態による放電プラズマ焼結により形成されたπ型素子を示す説明図
【図3a】分割板を取り除く前のπ型素子を示す斜視図
【図3b】分割板を取り除いた後の1つのπ型素子を示す斜視図
【図4】電極材料およびCoSb3熱電変換材料の熱膨張係数の温度依存性を示すチャート
【図5a】熱エージング前のCoSb3/Ti/Moの接合部の走査型電子顕微鏡(SEM)写真
【図5b】熱エージング前のCoSb3/Ti/Mo70Cu30の接合部の走査型電子顕微鏡(SEM)写真
【図5c】熱エージング前のCoSb3/Ti/Mo50Cu50の接合部の走査型電子顕微鏡(SEM)写真
【図6a】熱試験後のCoSb3/Ti/Mo70Cu30の接合部の走査型電子顕微鏡(SEM)写真
【図6b】熱試験後のCoSb3/Ti/Mo50Cu50の接合部の走査型電子顕微鏡(SEM)写真
【発明を実施するための形態】
【0036】
効率および信頼性が高い発電に関する、充填スクッテルド鉱熱電変換素子を製造する新規の方法が、従来技術における様々な欠点を克服するために、本出願の発明者により提起される。この方法の主な特徴は:高温端電極、接合強化層およびバリア層を、前処理後に連続してダイの中に配置し;p/n充填スクッテルド鉱粉末を充填し;次いで、バリア層、接合強化層および低温端電極を連続して配置し;放電プラズマ焼結を行って、π型要素を直接得て;セラミック板上に複数のπ型要素をはんだ付けして、充填スクッテルド鉱素子を形成する各工程にある。
【0037】
添付の図面と共に、本発明の詳細な説明を行う。全ての実施の形態の以下の説明において、スクッテルド鉱は例示の熱電変換材料と解釈されることに留意されたい。しかしながら、以下の実施の形態におけるスクッテルド鉱は、本発明を実現するために他の公知の熱電変換材料により置き換えてもよいことが当業者に理解されよう。したがって、本発明は、以下の実施の形態における任意の特定の材料に制限されるものではない。
【0038】
実施の形態1
最初に、前処理5のプロセスを実施する。
【0039】
図1a〜1dに示されるように、バリア層1、接合強化層2、分割板3および電極4上に砂吹付けまたは超音波洗浄(例えば、エタノール中で)を行って、表面の酸化物または他の不純物を除去し、その表面上を粗くする。この処理は、30秒から3分に亘り0.1〜0.5MPaの吹付け圧で高純度のケイ砂により行うことが好ましく、超音波洗浄の時間は5〜15分であってよい。
【0040】
次に、図2を参照して、充填および焼結のプロセスを行う。
【0041】
高温端電極41、接合強化層2およびバリア層1をダイの中に連続的に構成する。接合強化層2およびバリア層1は、単純な様式で配置しても、またはプラズマ溶射、フレーム溶射、アーク溶射または電気メッキなどの技法を採用してもよい。もちろん、本発明における配置に特別な制限はなく、当業者に公知の任意の配置を採用して、本発明を実現してよい。次に、いずれかの部分に別々にp型熱電変換材料およびn型熱電変換材料を配置して、例えば、好ましい実施の形態によるp/n充填スクッテルド鉱粉末を充填するために、高温端電極41の上面に、ダイを2つの部分に分割する分割板3を垂直に挿入する。次いで、バリア層1、接合強化層2および低温端電極42を熱電変換材料上に連続して配置する。もちろん、当業者は、適当な解決策により内部空間をより多くの部分に分割してもよい。積層構造は、上側プレスヘッド21と下側プレスヘッド22により予め加圧される。次に、ダイを焼結する。図2に示された実施の形態において、例えば、ダイは、焼結のために放電プラズマ焼結装置内に配置され、よって、p/n充填スクッテルド鉱粉末のバルクの形成および電極との組合せは、同時に完了する。
【0042】
本発明のある態様によれば、電極材料の選択および熱電変換要素との組合せは、熱電変換素子の製造において重大である。最近、一般に電極として銅を有し、溶接のために従来のはんだ付け技法を採用した、低温でのBi2Te3系素子が既に商業化されている。電極材料の選択のために、少なくとも以下の要因を考慮する必要がある。電極材料は、(1)素子の製造プロセスと使用中に熱応力をできるだけ低減させるために、かつ電極の溶接の失敗または過剰な熱応力による素子の使用中の不具合を避けるために、熱電変換材料とのCTEの一致;(2)電極により生じる電気抵抗および熱抵抗による、エネルギー変換効率などの素子の性能への悪影響を減少させるために、良好な導電率および熱伝導率;(3)良好な熱的耐久性;および(4)熱電変換材料上での接合のための比較的容易な製造および加工技術;を有するべきである。
【0043】
上述した実施の形態において、高温端電極および低温端電極の両方について、選択された熱電変換材料とCTEが一致し、良好な導電性および熱伝導性を有する金属材料を選択することが好ましい。例えば、二成分または三成分材料を形成するために、充填スクッテルド鉱のCTEより低いCTEを有する金属材料(Mo、W、Zr、Ta、Cr、Nb、V、Tiなどの)が、充填スクッテルド鉱のCTEより高いCTEを有し、かつ良好な導電性および熱伝導性を有する金属材料(Cu、Ag、Al、Auなどの)と組み合わされる。その組合せ方法は、焼結後の溶融または圧延であって差し支えない。電極の好ましい厚さは0.5〜1.5mmであってよい。高温端電極および低温端電極は、x(質量%)が20≦x≦90であり、Aが、Mo、W、Zr、Ta、Cr、Nb、VまたはTiから選択される少なくとも1種類の材料であり、Bが、Cu、Ag、AlまたはAuから選択される少なくとも1種類の材料である、一般式Ax1-xを有する合金から選択されることががより好ましい。
【0044】
MoxCuy合金は、CoSb3系熱電変換材料に関して好ましい電極材料である。図4に示されるように、Mo50Cu50は、CoSb3系熱電変換材料との最低のCTE不一致を有する。さらに、図5a〜5cに示されるように、Mo50Cu50およびMo70Cu30は、焼結前に亀裂なしの状態のままであり得る。図6a〜6bに示されるように、500時間に亘る500℃での熱エージング後に、Mo50Cu50は亀裂のないままであるのに対し、Mo70Cu30は、亀裂を生じる。したがって、Mo50Cu50が、CoSb3系熱電変換材料に関して最も好ましい電極材料である。
【0045】
それに加え、上述した分割板4は、ZrO2、Al23、AlN、SiO2、ガラス、グラファイト、Ni、Cu、Feおよびステンレス鋼の1種類または数種類の材料から選択されることが好ましい。分割板4の好ましい厚さは0.2〜1.0mmであってよい。
【0046】
少なくとも1種類のn型熱電変換材料またはn型複合熱電変換材料の少なくとも1つの成分は、上述したn型熱電変換材料の例として、n−CoSb3系、充填および/またはドープトn−CoSb3系、n−PbTe系、充填および/またはドープトn−PbTe系、n−Zn4Sb3系、および充填および/またはドープトn−Zn4Sb3系から選択されるであろう。
【0047】
少なくとも1種類のp型熱電変換材料またはp型複合熱電変換材料の少なくとも1つの成分は、上述したp型熱電変換材料の例として、p−CoSb3系、充填および/またはドープトp−CoSb3系、p−PbTe系、充填および/またはドープトp−PbTe系、p−Zn4Sb3系、および充填および/またはドープトp−Zn4Sb3系から選択されるであろう。
【0048】
高温端での熱電変換材料と電極材料との間のCTEの不一致の最小化および熱電変換素子の熱的耐久性の改善が、これらの好ましい熱電変換材料に関する重大な検討事項である。したがって、単独の金属と比べて、合金が高温端電極材料にとってより適している。
【0049】
通常、バリア層1は、主に、材料上の性能劣化を生じ得る拡散を防ぐために構成される。接合強化層2は、主に、材料間の接合を強化するために構成される。その結果、上述した実施の形態において二層が同時に堆積されるが、バリア層または接合強化層のいずれが、電極と熱電変換材料との間の中間層として働くことが必要とされて、堆積されてもよい。それに加え、接合強化層2およびバリア層1は、Ti箔に加えたAg合金はんだ、銅合金はんだ、またはAg−Cu合金はんだであることが好ましい。はんだの厚さは80〜150μmの範囲にあり、Ti箔の厚さは30〜100μmである。接合強化層2およびバリア層1は、98%以上の純度および100〜500μmの粒径を有するTi粉末であっても差し支えない。Ti粉末を前処理する必要はない。Ti粉末は、20から100μmに及ぶ厚さを有する電極の上面に直接配置しても差し支えない。特に、接合強化層/バリア層として機能するように、単一の中間層を提供してもよい。この状況において、単一の中間層は、Ti粉末、Al粉末、もしくはそれら2つの混合粉末または合金粉末であってもよい。
【0050】
上述した予圧は2〜30MPaであり、焼結パラメータは、真空=0.5〜20Pa、焼結圧=20〜100MPa、加熱速度20〜300℃/分、焼結温度=500〜750℃、保持時間=2〜20分である。
【0051】
上述した低温端電極は、充填スクッテルド鉱とCTEが良好に一致し、良好な導電性および熱伝導性を有し、はんだ付け層を製造するためのはんだと良好な湿潤性を有する、金属材料または金属複合材料であることが好ましい。
【0052】
再度、分割板を取り除く。分割板3は、焼結後に取り除いてもよい。
【0053】
それゆえ、好ましくはライン切断により、分割板を取り除いた後に、π型素子が得られる。図3aおよび3bは、それぞれ、分割板を取り除く前と後のπ型熱電変換素子を示している。もちろん、本発明の原理から逸脱せずに、任意の適切な切断方法を採用してもよいことが理解されよう。
【0054】
本発明の1つの好ましい実施の形態によれば、焼結ダイは、図3aに示されるように、特に効率を改善するために、いくつかのπ型熱電変換素子を同時に焼結するように設計されてもよい。すなわち、分割板3を挿入する工程で、ダイの全空間を数個の部分に、例えば、図3aに示された実施の形態において、8つの部分に分割する。その数個の部分の内、それぞれ、p型熱電変換材料をいくつかの部分に堆積させ、p型熱電変換材料を他の部分に堆積させる。そのような状況において、複数のπ型熱電変換素子を、同様の手法による一工程焼結によって、同時に製造しても差し支えないことが当業者には理解されよう。
【0055】
最後に、銅が被覆されたセラミック板上に複数のπ型熱電変換素子を溶接する。
【0056】
詳しくは、溶接前に、π型熱電変換素子上の低温端電極上にはんだ層を製造し、次いで、スズが被覆された銅被覆セラミック板上にπ型熱電変換素子を溶接する。
【0057】
実施の形態2
実施の形態1と比べると、実施の形態2の主な違いは、実施の形態2では、熱電変換材料の低温側にバリア層と接合強化層を提供し、低温端電極を提供する各工程を省いていることにある。その結果、実施の形態における工程と同じ工程の記載は、以下において省かれている。
【0058】
実施の形態2によれば、実施の形態1における充填プロセス中に、p/n充填スクッテルド鉱粉末の充填後に、バリア層1、接合強化層2および低温端電極42を再度挿入しなくてよく、むしろ、上側プレスヘッド21をその中に直接配置する。焼結後に、低温端電極を有さないπ型要素が得られる。
【0059】
低温端電極を焼結しないπ型要素に関して、銅が被覆されたセラミック板上にπ型要素を溶接する前に、バリア層、接合強化層およびはんだ層を低温側に製造してもよい。次いで、π型要素を、銅が被覆されたセラミック板に溶接したときに、熱電変換素子が得られる。バリア層は、10〜80μmの範囲の厚さを有するMo金属層であることが好ましく、これはプラズマ溶射被覆により製造される。接合強化層は、10〜100μmの範囲の厚さを有するNi金属層であり、これは、プラズマ溶射、フレーム溶射または電気メッキにより製造される。はんだ層は、100〜500μmの範囲の厚さを有し、これは浸漬または電気メッキにより製造されてよい。
【0060】
要約すると、本発明の実施の形態の明白な特徴の1つは、嵩張る熱電変換材料を形成するプロセスおよび素子上で高温端電極と組み合わせるプロセスが同時に完了し、それによって、従来技術における熱電変換素子の高温端電極の溶接により生じる二度目の熱と圧力による熱電変換材料への悪影響を防ぐことである。
【0061】
本発明の精神および範囲から逸脱せずに、本発明の先の例示の実施の形態にどのような変更および改変を行っても差し支えないことが当業者には容易に認識されるであろう。したがって、これらの変更および改変は、添付の特許請求の範囲およびその同等の技術解決策の範囲に入ると考えるべきである。
【符号の説明】
【0062】
1 バリア層
2 接合強化層
3 分割板
21 上側プレスヘッド
22 下側プレスヘッド
41 高温端電極
42 低温端電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱電変換素子を製造する方法であって、
上面を有する第1の電極を形成する工程;
前記第1の電極の上面に第1の中間層材料を堆積させる工程;
前記第1の電極の上面に対して実質的に垂直に分割板を形成して、前記第1の中間層材料上の空間を複数の部分に分割する工程;
積層を形成するように、前記第1の中間層材料の第1の上面のある部分に第1の熱電変換材料の粉末を堆積させ、該第1の中間層材料の第2の上面の他の部分に第2の熱電変換材料の粉末を堆積させる工程;
前記粉末を焼結して、前記第1の熱電変換材料および前記第2の熱電変換材料から少なくとも1つの第1の熱電変換構成要素および少なくとも1つの第2の熱電変換構成要素を形成し、前記第1の電極を該第1の熱電変換構成要素および該第2の熱電変換構成要素と電気的に接続して、一体モジュールを形成する工程;および
前記一体モジュールから前記分割板を取り除いて、熱電変換素子を形成する工程、
を有してなる方法。
【請求項2】
前記第1の電極が、二成分または三成分合金もしくは複合材料からなり、該合金または複合材料が、少なくとも、Cu、Ag、AlまたはAuから選択される第1の金属、およびMo、W、Zr、Ta、Cr、Nb、VまたはTiから選択される第2の金属を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1の中間層材料が、
前記第1の電極と接触した接合強化層、および
前記接合強化層上に積層されたバリア層、
を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記第1の熱電変換材料が、n−CoSb3系、充填および/またはドープトn−CoSb3系、n−PbTe系、充填および/またはドープトn−PbTe系、n−Zn4Sb3系、および充填および/またはドープトn−Zn4Sb3系から選択される少なくとも1種類のn型熱電変換材料またはn型複合熱電変換材料の少なくとも1つの成分を含み、
前記第2の熱電変換材料が、p−CoSb3系、充填および/またはドープトp−CoSb3系、p−PbTe系、充填および/またはドープトp−PbTe系、p−Zn4Sb3系、および充填および/またはドープトp−Zn4Sb3系から選択される少なくとも1種類のp型熱電変換材料またはp型複合熱電変換材料の少なくとも1つの成分を含むことを特徴とする請求項1記載の方法
【請求項5】
熱電変換素子であって、
第1の電極;
それぞれ前記第1の電極と接触した第1の熱電変換構成要素および第2の熱電変換構成要素;および
前記第1の電極と前記第1の熱電変換構成要素または前記第2の熱電変換構成要素との間に形成され、それらに接続された中間層;
を備え、
前記第1の電極は、二成分または三成分合金もしくは複合材料からなり、該合金または複合材料は、少なくとも、Cu、Ag、AlまたはAuから選択される第1の金属、およびMo、W、Zr、Ta、Cr、Nb、VまたはTiから選択される第2の金属を含むことを特徴とする熱電変換素子。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図6a】
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【図6b】
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【公表番号】特表2012−522380(P2012−522380A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502231(P2012−502231)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/028615
【国際公開番号】WO2010/111462
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【出願人】(511112319)シャンハイ インスティテュート オブ セラミクス チャイニーズ アカデミー オブ サイエンシーズ (6)
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI INSTITUTE OF CERAMICS, CHINESE ACADEMY OF SCIENCES