説明

熱電材料被覆及び熱電材料を含む装置

熱電材料から成る熱電層と、1つ以上の層から成り、熱電層に接触する面及び対向面を形成する金属被覆と、金属酸化物の1つ以上の層から成り、対向面に接触する面を形成する金属酸化物被覆とから成る熱電材料被覆。この材料から成る装置及び装置を形成する方法。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、中国特許出願第200910055439.3号(出願日:2009年7月27日、名称:熱電材料被覆及び熱電材料を含む装置)の優先権を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本明細書は、熱電材料及び装置の分野における、熱電材料被覆、その構造、及びその材料から成る素子(又は装置)の製造方法を開示するものである。
【背景技術】
【0003】
熱電発電は、半導体熱電材料のゼーベック効果を利用して熱エネルギー(温度差)を電気エネルギーに直接変換する発電技術である。熱電発電システムは、小型、高信頼性能、且つ移動性に優れている。また、作用において、作動素子がないため、雑音、摩耗、あるいは漏洩に悩まされることがない。環境に優しいエネルギー技術として、熱電発電は低濃度のエネルギーを再利用するのに適しているため、その幅広い用途において、産業の残留熱及び車の排気ガスの廃熱の再利用が想定されている。熱電変換効率は主に材料の無次元性能指数:ZT=SσT/kによって決まる。ここで、Sはゼーベック係数、σは導電率、kは熱伝導率、Tは絶対温度である。ZTの値が大きい材料ほど熱電変換効率が高いことを意味している。
【0004】
Sb12面体の大型結晶セル、大原子質量、高キャリア移動度、及び充填原子の擾乱により、CoSbを主成分とするスクッテルド鉱から成る熱電材料は500〜850Kにおいて優れた高温熱電特性を示し、n‐型のYbCoSb12(800K)及びp‐型のCaCeCo2.5Fe1.5Sb12(750K)の最大のZT値はそれぞれ1.4及び1.2である。複数の新しい熱電材料系において、総合特性、価格、安全性、及び製造工程の点で、CoSbを主成分とするスクッテルド鉱が商用の高温熱電材料として最も有望な媒体であり、現在一般的に使用されているPbTe熱電材料に代わるものとして期待されている。
【0005】
CoSbを主成分とするスクッテルド鉱熱電材料の最適熱電特性が500〜850Kにおいて発揮されるため、CoSbを主成分とするスクッテルド鉱熱電装置の高温端近傍の熱電元素の動作温度を850Kまでとすることができる。高温において、Sb元素の蒸気圧が非常に高く(図1)、例えば、850Kにおいて略10Paであり、Fe、Co、Ce元素等と比較して12桁高く(非特許文献1)、高温においてSb元素が失われるため熱電装置の特性が著しく低下する。
【0006】
高温動作における材料の蒸発による装置特性の低下を避けるためには、熱電材料の表面を被覆する必要がある。高温動作環境におけるこのような熱電材料を被覆保護する手段は以前のSiGe熱電材料に遡ることができる。SiGe熱電装置の高温端の温度は1273Kに達することがある。厚さ数ミリメートルのSi被覆を施すことによって、SiGe熱電材料を適切に保護することができる(非特許文献2)。CoSbを主成分とするスクッテルド鉱熱電材料におけるSbの高温蒸発の課題を解決するため、スクッテルド鉱材料の表面に金属被覆を施す方法がモハメドによって提案されている(非特許文献3)。セグメント装置(p‐型素子:CeFe3.5Co0.5Sb12+Bi0.4Sb1.6Te、n‐型素子:CoSb+BiTe2.95Se0.05)の被覆として提案されている金属元素にはTa、Ti、Mo、及びVが含まれている。金属被覆の厚さは1〜10μmと推測される。理論的推論によれば、金属被覆の導電率が高ければ高いほど、又は被覆が厚ければ厚いほど、ピーク出力電力は高いがピーク変換効率は低下する。非特許文献3には被覆を施す方法及び4つの被覆の実験データの比較が述べられていない。
【0007】
非特許文献3が提案している、具体的成分を有するCoSbを主成分とするスクッテルド鉱材料の表面に金属被覆を施す方法は、高温におけるSbの蒸発問題を解決する方向性を示しているが、そのカバー範囲は狭く、CoSbを主成分とするスクッテルド鉱材料及びその材料から成る素子が直面する実用環境における高温酸化問題は解決されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】David R. Lide,CRC Handbook of Chemistry and Physics,CRC Press, 2005
【非特許文献2】Kelly C. E. Proceedings of the 10th intersociety energy conversion engineering conference, American Institute of Chemical Engineers, New York 1975, P. 880-6
【非特許文献3】Mohamed S. El-Genk et. al. Energy Conversion and Management, 47 (2006) 174; Hamed H. Saber, Energy Conversion and Management, 48 (2007) 1383
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、当技術分野において、熱電材料及び熱電材料を備えた装置に使用可能であって、高温酸化問題を解決できる被覆の必要性に迫られている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の実施の形態によれば、熱電材料に被覆を施して高温酸化問題を解決することができる。第2の実施の形態によれば、前記材料から成り、高温酸化問題を解決できる装置が開示される。更に別の実施の形態によれば、熱電材料を形成することができ、高温酸化問題を解決できる製造方法が開示される。
【0011】
熱電材料から成る熱電層と、1つ以上の層から成り、熱電層に接触する面及び対向面を形成する金属被覆と、金属酸化物の1つ以上の層から成り、対向面に接触する面を形成する金属酸化物被覆とを有して成ることを特徴とする被覆が開示される。
【0012】
特定の実施の形態において、熱電材料が充填及び/又はドープ・スクッテルド鉱から選択される。
【0013】
特定の実施の形態において、充填及び/又はドープ・スクッテルド鉱がCoSbを主成分とするスクッテルド鉱から選択される。
【0014】
特定の実施の形態において、金属被覆がTa、Nb、Ti、Mo、V、Al、Zr、Ni、NiAl、TiAl、NiCr、又はこれらの組合せから成っている。
【0015】
特定の実施の形態において、金属酸化物被覆がTiO、Ta、NbO、Al、ZrO、NiO、SiO、又はこれらの組合せから成っている。
【0016】
特定の実施の形態において、被覆の厚さが10〜500μm、例えば、50〜200μmである。
【0017】
特定の実施の形態において、金属被覆の厚さが0.01〜20μm、例えば、0.2〜2μmである。
【0018】
特定の実施の形態において、熱電層の高さがL、金属被覆及び金属酸化物被覆の高さがそれぞれLM&MOxであり、LM&MOx≦L、(L−LM&MOx)/L≦0.4である。
【0019】
更に別の実施の形態において、被覆を備えた装置が開示される。
【0020】
別の実施の形態において、被覆を施す方法が開示される。この方法は熱電材料から成る熱電層を用意するステップと、熱電層の上に、1つ以上の層から成り、熱電層に接触する面及び対向面を形成する金属被覆を施すステップと、金属層の上に、金属酸化物の1つ以上の層から成り、金属被膜の対向面に接触する面を形成する金属酸化物被覆を施すステップとを有して成ることを特徴とする方法である。
【0021】
一部の実施の形態において、金属被覆の全部又は一部が熱蒸発、アーク溶射、プラズマ溶射、フレーム溶射、真空スパッタリング、電気化学蒸着、電気メッキ、又は無電解析出によって形成される。
【0022】
一部の実施の形態において、金属酸化物被覆の全部又は一部が熱蒸発、真空スパッタリング、プラズマ溶射、ゾルゲル、化学溶液蒸着、又は化学気相蒸着によって形成される。
【0023】
一部の実施の形態において、金属酸化物被覆を金属被覆の対向面に接触させるために、 金属被覆の少なくとも一部が酸化される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】一部の元素の高温蒸気圧を示す図。
【図2】多重被覆を備えたCoSbを主成分とするスクッテルド鉱のπ型装置
【図3】図2の多重被覆を備えた熱電素子の頂断面図(左:円形、右:方形
【図4】Yb0.3CoSb12コアと被包との界面のSEM像
【発明を実施するための形態】
【0025】
広範かつ徹底した研究により、本発明者等は前記高温におけるSbの蒸発問題及び材料の酸化問題を解決し、製造方法を改良し、物理的及び化学的手段によって2種類の多重被覆、即ち、金属被覆及び金属酸化物被覆を熱電材料(一般的にCoSbを主成分とするスクッテルド鉱材料)の表面に形成することにより、CoSbを主成分とするスクッテルド鉱材料及びその材料から成る装置の耐久性及び信頼性を改善した。
【0026】
熱電材料及びその材料から成る素子の用途要件を満足するため、物理的及び化学的被覆形成方法により、CoSbを主成分とするスクッテルド鉱材料又は素子の表面に2種類の多重被覆、即ち、金属被覆及び金属酸化物被覆を形成することにより、高温動作温度におけるSbの蒸発及び材料の酸化が防止される。
【0027】
本開示は、熱電材料及び装置の分野における、多重被覆構造を有する熱電材料及びその素子の作製方法に関するものである。熱電材料の組成はSKT/M/MOで表すことができる。ここで、SKTはCoSbを主成分とするスクッテルド鉱化合物、ドープCoSbを主成分とするスクッテルド鉱化合物、CoSbを主成分とする充填スクッテルド鉱化合物、及びドープCoSbを主成分とする充填スクッテルド鉱化合物を含み、これに限定されないスクッテルド鉱化合物を意味し、MはTa、Nb、Ti、Mo、V、Al、Zr、Ni、NiAl、TiAl、NiCr、又はこれらの2つ以上から成る合金を含みこれに限定されない金属被覆を意味し、MOはTiO、Ta、Nb、Al、ZrO、NiO、SiO、これらの2つ以上から成る混合物、又はこれ等の2つ以上から成る多層構造体を含みこれに限定されない金属酸化物被覆を意味する。SKT/M/MOで表わされる材料又は素子は同心多重被包構造を有している。
【0028】
換言すれば、SKT材料の表面が金属Mの層によって被包され、M層の表面が1つ以上のMO層によって更に被包されている。この被包体が、SKTのSbの蒸発及びSKT材料の酸化防止機能を果たす。金属M層の主な役割は、MO被包の緻密性、整合性、及び結合力を向上させることである。被包体の形成方法には、熱蒸発、物理スパッタリング、アーク溶射、プラズマ熱溶射、電気化学蒸着、化学気相蒸着、溶液化学蒸着、パルス電着等がある。一般的に、被覆全体の厚さは10〜500μmであり、その内、M層の厚さが0.01〜20μm、MO層の厚さが9.99〜499.9μmである。
【0029】
本発明の方法を用いて、高温におけるSbの蒸発及びSKT材料の酸化防止に有効な同心多層構造を有するCoSbを主成分とするスクッテルド鉱材料を形成することができる。高温エージング試験結果が示すように、被包π型素子は1000時間の高温エージング試験の後実質的に変化しなかったのに対し、被包されていない同様のπ型素子は1000時間の高温エージング試験の後70%低下した。本開示の方法によれば、CoSbを主成分とするスクッテルド鉱材料及びその材料から成る装置の耐久性が著しく向上し、室温〜600℃において、それぞれ実用的な熱電材料及び装置として長時間稼働することができる。
【0030】
本明細書において、「対向する」とは2つの関連要素が、位置関係において互いに向き合っていることを意味する。
【0031】
図2及び3は、一般式がSKT/M/MOで表される同心多層被覆構造体、即ち熱電材料(SKT)/被覆(M/MO)を備えた素子及びその被覆を示す図である。図2において、熱源20がp‐型素子40及びn‐型素子50によって、ヒートシンク30から分離されている。素子の高さはLである。各々の素子の表面に形成されているのは金属被覆60及び金属酸化物被覆62である。金属被覆及び金属酸化物被覆の高さはHである。図3はM金属被覆60及びZrO酸化物被覆62を備えた素子40、50の例を示す図である。
SKTはCoSbを主成分とするスクッテルド鉱化合物、ドープCoSbを主成分とするスクッテルド鉱化合物、CoSbを主成分とする充填スクッテルド鉱化合物、及びドープCoSbを主成分とする充填スクッテルド鉱化合物、及びこれ等の化合物を優位相とする複合材料の他に、かご型化合物から成る熱電材料、セミホイスラー熱電材料、BiTeを主成分とする化合物、BiTeを主成分とする材料、ドープBiTeを主成分とする化合物、BiTeを主成分とする充填化合物、ドープBiTeを主成分とする充填化合物及びこれ等の化合物を優位相とする複合材料から選択することができる。
【0032】
金属被覆MはTa、Nb、Ti、Mo、V、Al、Zr、Ni、NiAl、TiAl、NiCr、又はこれらの2つ以上から成る合金を含みこれに限定されない金属又は合金の薄膜被覆である。
【0033】
MOはTiO、Ta、Nb、Al、ZrO、NiO、SiO、これらの2つ以上から成る混合物、又はこれ等の2つ以上から成る多層構造体を含みこれに限定されない金属酸化物の被覆である。
【0034】
本開示により、多重被覆を備えたCoSbを主成分とするスクッテルド鉱化合物材料及びその材料から成る装置の製造方法が提供される。製造方法の中心部分は、物理的又は化学的手段による、強固な粘着性、高緻密性、及び良好な整合性を有する1つ以上の外側酸化物層の形成、及び1つ以上の内側金属層の形成である。金属の転移層によって、高温における元素Sbの蒸発が防止され、酸化物層とスクッテルド鉱材料との結合力が向上する。
【0035】
熱蒸発、アーク溶射、プラズマ溶射、フレーム溶射、真空スパッタリング、電気化学蒸着、電気メッキ、又は無電解析出によって、金属被覆の全部又は一部を形成することができる。
【0036】
熱蒸発、真空スパッタリング、プラズマ溶射、ゾルゲル、化学溶液蒸着、又は化学気相蒸着によって、金属酸化物被覆の全部又は一部が形成される。
【0037】
一部の実施の形態において、充填及び/又はドープCoSbを主成分とするスクッテルド鉱化合物材料又は素子をコアとして用い、特に、熱蒸発、物理スパッタリング、アーク溶射、パルス電着、電気化学蒸着、又は電気メッキ法により、Mの転移層がスクッテルド鉱化合物材料の表面に形成される。次に、特に熱蒸発、物理スパッタリング、プラズマ熱蒸着、ゾルゲル、化学溶液蒸着、又は化学気相蒸着によって、1つ以上のMO酸化物層がM層の表面に形成される。酸化しやすいこれ等の金属元素に鑑み、適切な酸素分圧において、M層を直接酸化することによりMO層も得ることができ、酸素分圧及び温度が厚さ制御の主要処理パラメータである。
2種類の被覆のうち、内側の薄い0.01〜20μmのM転移被覆が、主としてMO被覆の結合力を向上させる機能を果たす。M層全体の厚さは、スクッテルド鉱材料から成るコアとその成分、M層自身の熱伝導率及び導電率、M層を形成する方法、MO層の成分等によって決定される。M層の厚さを制御する手法は、高速熱流及び電流のバイパス形成を防止することである。外側のMO防止被覆は、材料成分、MO層の形成方法、MO層の緻密性及び熱伝導率等によって決まる、より大きな厚さを有している。2種類の被覆の全厚さは10〜500μmである。
【0038】
多重被包を備えたCoSbを主成分とするスクッテルド鉱材料を熱電素子として用いて装置を形成する場合には、素子の外側被覆の長さ(高さ)を素子の長さ(高さ)以下とする必要がある。素子の外側被覆の長さ(高さ)が素子の長さ(高さ)以下であれば、素子の低温度端近傍に素子全長の40%以下の無被覆領域を設けることができる。被覆の長さ(高さ)は素子の長さ(高さ)、高温度端の温度、被覆の厚さ、特にM転移層の厚さ、及びスクッテルド鉱元素コアの温度特性によって決定される。π型装置において、素子表面の被覆の長さが素子の長さより短い場合、2つの素子の無被覆部分の動作温度が互いに近いことを条件に、p‐型及びn‐型素子の被覆の長さが異なっていてもよい。
【0039】
本開示により提供されるπ型装置は、高温環境下において連続的に使用した場合、耐久性及び信頼性が著しく改善される。無被覆材料から成る装置と比較して、熱電変換効率及び電気出力が僅かに低下するものの、高温度(850K)において長期間(1000時間)稼働させても、被覆材料から成る装置の特性は殆ど低下しないのに対し、被覆保護が施されていない装置を高温度において長期間稼働させると、熱電変換効率が約70%低下する。
【0040】
被覆材料によって、スクッテルド鉱材料における元素Sbの高温蒸発及びスクッテルド鉱材料の酸化が効果的に防止される。M層の主な機能は(i)高温における元素Sbの蒸発防止、及び(ii)MO層の粘着性、緻密性、整合性、及び結合力の向上である。
【0041】
別に明記しない限り、本開示における各種出発原料は市販されているか、当技術分野で周知の従来の方法によって調製できるものである。別に規定又は明記しない限り、本明細書における特別な用語及び科学用語は当業者周知の意味を有するものである。更に、本明細書で説明した方法及び材料と同様又は同等のものを本発明に用いることができる。
【0042】
以下の具体的実施例によって本発明を更に詳しく説明する。以下の実施例は本発明の説明のみを意図したものであって、本発明の範囲を限定すると解釈されるものではない。一般的に、以下の実施例において、実験のための具体的条件が示されていないものについては、従来の条件又は製造業者からの提案に従った。別に明記しない限り、比率及び百分率は重量に基づくものであり、高分子分子量は数平均分子量である。
【0043】
別に規定又は明記しない限り、本明細書における特別な用語及び科学用語は当業者周知の意味を有するものである。更に、本明細書で説明した方法及び材料と同様又は同等のものを本発明に用いることができる。
【実施例1】
【0044】
組成式がBa0.24CoSb12である、CoSbを主成分とする充填n‐型スクッテルド鉱材料を焼結してブロック材料とし、それを処理して3×3×15mmの立方形サンプルを用意した。アーク溶射によって、厚さ約5μmのNiCrMo被覆(Ni:Cr:Mo=68:24:8)をサンプルの表面に形成した。アーク溶射の処理パラメータは次の通りである。アーク電圧28〜30V、動作電流180〜200A、ガス圧力0.5〜0.6MPa、及び溶射距離150〜200mm。その後、プラズマ溶射によって、厚さ約60μmのSiO被覆をNiCrMo被覆の上に形成した。プラズマ溶射の処理パラメータは次の通りである。溶射距離70〜100mm、粉末供給速度0.5〜1g/分、溶射電流70〜100A、イオンガスArの流量1〜1.5L/分、及び粉末供給ガスArの流量1〜3L/分である。
【実施例2】
【0045】
組成式がBa0.18Ce0.06CoSb12である、CoSbを主成分とする充填n‐型スクッテルド鉱材料を焼結してブロック材料とし、それを処理して3×3×15mmの立方形サンプルを用意した。マグネトロンスパッタリングによって、厚さ約2μmのAl被覆をサンプルの表面に形成した。Alターゲットの直径75mm、厚さ5mmであり、スパッタリングガスは流量15mL/分の純アルゴン(純度99.999%)であった。膜をスパッタリングする間のバックグラウンド真空度10Pa、動作圧力0.2Paであった。更に、サンプルの温度が周囲温度(20℃)、スパッタリング電力40W、及び薄膜蒸着速度が約12nm/分であった。最後に、アルミニウム被覆を施したサンプルを150℃の空気中において1時間酸化させ、表面にAl被覆を形成した。
【実施例3】
【0046】
本実施例はCoSbを主成分とする充填スクッテルド鉱素子から成り、同心多重被包体を備えたπ型装置である。p‐型素子及びn‐型素子の組成式は、それぞれCe0.9Co2.5Fe1.5Sb12及びYb0.3CoSb12である。焼結ブロック材料を処理して3×3×15mmの立方形サンプルを用意した。まずp‐型素子及びn‐型素子の一端(端面を含む)をそれぞれ略3.5mm及び5.5mmカーボン紙で覆う一方、他端面を同じ材料で覆った。アーク溶射により、2つの素子の各々の露出面に対し、Mo被覆を厚さ略6μm溶射し、次に、プラズマ溶射により、Mo被覆の上にZrO被覆を厚さ略20μm溶射した。最後に、カーボン紙を除去し、それぞれ長さ16.5mm及び14.5mmの被覆を有するp‐型素子及びn‐型素子を得た(図4)。
【0047】
本開示において引用した文献は、引用により、それぞれ独立して本明細書に組み込まれたものとする。また、本明細書の教示内容を読んだ当業者にとって、本発明に対し各種変更及び改良が可能であることは明らかである。そのような均等物は添付クレームによって規定される範囲に包含されるものである。
【符号の説明】
【0048】
20 熱源
30 ヒートシンク
40 p‐型素子
50 n‐型素子
60 金属被覆
62 金属酸化物被覆

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱電材料に適した被覆であって、
熱電材料から成る熱電層と、
1つ以上の層から成り、前記熱電層に接触する面及び対向面を形成する金属被覆と、
金属酸化物の1つ以上の層から成り、前記対向面に接触する面を形成する金属酸化物被覆と、
を有して成ることを特徴とする被覆。
【請求項2】
前記熱電材料が充填及び/又はドープ・スクッテルド鉱から選択されることを特徴とする請求項1記載の被覆。
【請求項3】
前記充填及び/又はドープ・スクッテルド鉱が、CoSbを主成分とするスクッテルド鉱から選択されることを特徴とする請求項2記載の被覆。
【請求項4】
前記熱電層の高さがL、前記金属被覆及び前記金属酸化物被覆の高さがそれぞれLM&MOxであり、LM&MOx≦L、(L−LM&MOx)/L≦0.4であることを特徴とする請求項1記載の被覆。
【請求項5】
請求項1記載の被覆を施す方法であって、
熱電材料から成る熱電層を用意するステップと、
前記熱電層の上に、1つ以上の層から成り、前記熱電層に接触する面及び対向面を形成する金属被覆を施すステップと、
前記金属被覆の上に、金属酸化物の1つ以上の層から成り、前記金属被覆の対向面に接触する面を形成する金属酸化物被覆を施すステップと、
を有して成ることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−500608(P2013−500608A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522946(P2012−522946)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【国際出願番号】PCT/US2010/043317
【国際公開番号】WO2011/014479
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【出願人】(511112319)シャンハイ インスティテュート オブ セラミクス チャイニーズ アカデミー オブ サイエンシーズ (6)
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI INSTITUTE OF CERAMICS, CHINESE ACADEMY OF SCIENCES