熱電発電ユニット
【課題】廃熱を利用して発電ができ、放熱もでき、取り付け施工が容易な熱電発電ユニットを提供する。
【解決手段】材料に遠心力をかけながら溶融及び凝固させることによって成膜した熱電素子を有する熱電発電モジュール14と、該モジュールの取り付けベース15の要素部材からなる熱電発電ユニットであって、受熱側に、カプラの役割をする熱伝導部材17を有する熱電発電モジュールと、複数のカプラが形成された取り付けベースから構成され、該カプラによって熱電発電モジュールと取り付けベースが結合された状態のユニット構造を有する熱電発電ユニット。
【解決手段】材料に遠心力をかけながら溶融及び凝固させることによって成膜した熱電素子を有する熱電発電モジュール14と、該モジュールの取り付けベース15の要素部材からなる熱電発電ユニットであって、受熱側に、カプラの役割をする熱伝導部材17を有する熱電発電モジュールと、複数のカプラが形成された取り付けベースから構成され、該カプラによって熱電発電モジュールと取り付けベースが結合された状態のユニット構造を有する熱電発電ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電発電モジュールと、取り付けベースの要素部材からなる熱電発電ユニットに関するものであり、更に詳しくは、熱電発電モジュールと、該モジュールの取り付けベースの要素部材からなる熱電発電ユニットであって、受熱側に、カプラの役割をする熱伝導部材を有する熱電発電モジュールと、複数のカプラが形成された取り付けベースから構成され、該カプラによって熱電発電モジュールと取り付けベースが結合された状態のユニット構造を有する熱電発電ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、バルク形状の熱電素子材料を用いた、いわゆるパイ型モジュールといわれるタイプの熱電発電モジュールが、公知技術として知られている。このパイ型モジュールは、形態として、平面板形状で、その両平面間において、温度差をとり発電をするため、廃熱発電に利用するには、廃熱源の形状が平面である必要があるなどの制約があった。
【0003】
実際の廃熱源としては、廃熱ダクトなどが想定されるが、前記パイ型モジュールを、廃熱ダクトのような曲面箇所に直接取り付けることは困難であった。
【0004】
これは、これまで、取り付け施工時の負担軽減などの実用面を考慮せずに、熱電発電モジュールの高性能化競争ばかりが先行してきたためである。これらの問題点を解決するために、放熱フィン表面に形成した絶縁皮膜の上に、膜状熱電素子を形成して、廃熱の放熱と発電を同時に行う熱電発電モジュールが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
しかしながら、この種のモジュールは、真空中におけるプラズマ溶射により熱電素子膜を形成しており、この手法では、プラズマ溶射時に、材料の蒸発が激しく生じるため、組成ずれが発生する欠点がある。熱電素子は、組成ずれを生じると、著しく発電能力が低下するため、実用的でない。
【0006】
また、仮に、大気圧力下でプラズマ溶射を行うと、膜中に残留気孔が発生するため、これも、発電能力の低下につながる欠点があった。また、プラズマ溶射により形成された膜は、一般に、多結晶体であり、単結晶熱電材料や、結晶配向熱電材料と比較して、発電能力が劣る欠点があった。更に、特許文献1の熱電発電モジュールは、複雑表面形状の廃熱源に直接取り付けるために、熱電発電モジュールの取り付け部分を、廃熱源表面形状に合わせて作製する必要がある。
【0007】
しかしながら、熱電発電モジュールを、一つ一つ異なる形状に作製すると、モジュール作製のコストが跳ね上がり、高コストになるという問題がある。現在、熱電発電モジュールを廃熱ダクトのような曲面に取り付けることは容易ではない。これは、一般的に、パイ型モジュールの受熱面が、平面板形状をしているためである。
【0008】
これらの問題点を解決するため、放熱フィン表面に形成した絶縁皮膜の上に、膜状熱電素子を形成して、廃熱の放熱と発電を同時に行う熱電発電モジュールが提案されている。しかし、これも、複雑表面形状をした廃熱源に取り付けるには、廃熱源の表面形状に合わせてモジュールの形状を一つ一つ変更する必要がある。1品1品違う形状の熱電発電モジュールを作製すれば、その製造コストは、大きく跳ね上がることとなり、現実的でない。
【0009】
【特許文献1】特許3390829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、複雑表面形状の廃熱源に直接取り付けることができる熱電発電モジュールを開発することを目標として鋭意研究を重ねた結果、廃熱ダクトのような曲面にも容易に熱電発電モジュールの取り付けを可能にする熱電発電ユニットを開発することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、熱電発電モジュールと取り付けベースとの2つの要素部材からなる熱電発電ユニットとすることで、廃熱ダクトのような曲面にも容易に熱電発電モジュールを取り付け可能にし、取り付け施工時の負担軽減を実現し、実用に耐える熱電発電ユニットを提供することを目的とするものである。
【0012】
また、本発明は、加工が容易な取り付けベースを、廃熱源の表面形状に合わせて加工して作製することで、熱電発電モジュールは、安価に大量生産が可能な同一形状品でよく、トータルの製造コストを従来よりも大幅に低減し、上記課題を解決することを可能とする熱電発電ユニットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)熱電発電モジュールと、該モジュールの取り付けベースの要素部材からなる熱電発電ユニットであって、受熱側に、カプラの役割をする熱伝導部材を有する熱電発電モジュールと、複数のカプラが形成された取り付けベースから構成され、該カプラによって熱電発電モジュールと取り付けベースが結合された状態のユニット構造を有することを特徴とする熱電発電ユニット。
(2)前記熱電発電モジュールの熱電素子が、粉末状の熱電材料に遠心力を付加しながら、該熱電材料を溶融及び凝固させる遠心加圧溶融法により作製された熱電素子であって、該熱電素子が、予め溝が刻まれた絶縁材からなる基材上に、p型熱電素子とn型熱電素子からなる少なくとも1対又はそれ以上の膜状熱電素子によって形成された構造を有している、前記(1)に記載の熱電発電ユニット。
(3)前記絶縁材からなる基材が、無機絶縁材料である、前記(2)に記載の熱電発電ユニット。
(4)前記熱伝導部材が、金属である、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の熱電発電ユニット。
(5)前記熱伝導部材が、無機絶縁材料である、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の熱電発電ユニット。
(6)前記熱電素子が、ビスマスもしくはテルルを含む材料からなる熱電素子である、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の熱電発電ユニット。
(7)前記熱電素子が、ケイ素を含む材料からなる熱電素子である、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の熱電発電ユニット。
(8)前記熱電素子が、酸化物を含む材料からなる熱電素子である、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の熱電発電ユニット。
(9)前記取り付けベースが、金属製である、前記(1)〜(8)のいずれかに記載の熱電発電ユニット。
(10)前記取り付けベースが、無機絶縁材料製である、前記(1)〜(8)のいずれかに記載の熱電発電ユニット。
【0014】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、熱電発電モジュールを種々の形状の廃熱源に取り付け可能な熱電発電ユニットの構造に特徴を有するものであり、熱電発電モジュールを構成する熱電素子、熱電発電モジュール、及び、取り付けベースなどの熱電発電ユニットを構成する要素部材の材料、材質については、特に制限されるものではなく、公知及び新規の材料及び材質を含めて適宜の材料、材質を使用することができる。
【0015】
本発明の熱電発電ユニットを構成する要素部材のうち、絶縁材からなる基材には、アルミナ、ジルコニア、石英に加え、アルミナ系、マグネシア系、チタニア系などの無機系絶縁材料や、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンオキサイド、ポリエーテルサルホン、ポリサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトンなどの有機系絶縁材料が適宜用いられる。
【0016】
熱伝導部材には、金、銀、銅、錫、アルミ、ステンレス、窒化ホウ素、窒化アルミ、炭化ケイ素などの金属材料や、無機系絶縁材料が適宜用いられる。熱電素子には、ビスマスを含む材料、テルルを含む材料、ケイ素を含む材料、酸化物を含む材料に加え、スクッテルダイト系、ハーフホイスラー系、亜鉛アンチモン系、ホウ素化合物などが適宜用いられる。取り付けベースには、金、銀、銅、錫、アルミ、ステンレス、窒化ホウ素、窒化アルミ、炭化ケイ素などの金属材料や、無機系絶縁材料が適宜用いられる。電極には、銅、銀、白金、金、ニッケル、アルミなどが適宜用いられる。
【0017】
前述のように、本発明では、熱電発電モジュールについては、公知もしくは新規の任意の形態及び/又は材質の熱電発電モジュールを構成することができ、また、該モジュールの取り付けベースについても、公知もしくは新規の任意の形態及び/又は材質の取り付けベースを構成することができる。本発明の熱電発電ユニットは、適宜の熱電発電モジュールを、適宜の廃熱源に取り付ける際の取り付けユニットとして任意に使用することが可能なユニット部の構造に特徴を有している。
【0018】
次に、本発明を実施するための最良の形態を説明する。本発明は、廃熱発電において、放熱を行いながら、同時に効率よく発電するための熱電発電ユニットを提供するものである。まず、本発明の熱電発電ユニットに用いる熱電発電モジュールについて説明する。本発明では、絶縁材からなる基材に、複数対からなる膜状熱電素子が、遠心加圧溶融法によって形成された熱電発電モジュールが用いられる。
【0019】
上記熱電発電モジュールにおいては、受熱側に熱伝導部材を有し、かつ、熱電素子を周辺環境から保護する絶縁材からなる保護カバーを有する構造が好適な形態である。このような形状及び構造の熱電発電モジュールを使用した熱電発電ユニットを構成することで、廃熱発電において、放熱を行いながら、同時に効率よく発電することが可能となる。
【0020】
次に、複数のカプラが形成された金属材料製の取り付けベースに、前記熱電発電モジュールに付帯する前記熱伝導部材が、対を成すカプラとして結合した状態のユニットを構成する。このように、熱電発電モジュールと、取り付けベースを分けて製造することで、加工が容易な取り付けベースを、廃熱源の形状に合わせて作製すればよく、また、熱電発電モジュールは、同一形状品を大量生産すればよいため、熱電発電ユニットとしての製造コストは、低く抑えられる。これにより、安価な熱電発電ユニットを提供することが可能となる。
【0021】
本発明において、熱電発電モジュールの絶縁材からなる基材としては、無機絶縁材料、あるいは、有機絶縁材料が用いられる。ただし、無機絶縁材料を使用すると、一般的に、無機絶縁材料は、有機絶縁材料よりも耐熱温度が高いため、遠心加圧溶融プロセスを実施する時に、温度コントロールの選択幅が広がるので、熱電材料の選択肢が広がる利点がある。
【0022】
また、本発明において、遠心加圧溶融法とは、材料に遠心力をかけながら材料を溶融及び凝固させる方法のことである。本発明では、遠心力の付加方法としては、ヒーター加熱、高周波加熱、マイクロ波加熱などが用いられるが、加熱方法は、ヒーター加熱が安価であり、好適である。
【0023】
熱電発電モジュールの保護カバーは、絶縁材であればよく、無機絶縁材料、あるいは有機絶縁材料が用いられる。ただし、保護カバーは、熱電素子材料を周辺環境から保護するための役割を担うので、保護カバーの材質と、絶縁材からなる基材の材質の熱膨張係数がなるべく近く、ヒートサイクルによる両部材間の剥離などが生じないものであることが望ましい。
【0024】
熱電発電モジュールの受熱側の熱伝導部材は、金属材料、あるいは無機絶縁材料が用いられる。ただし、一般に、金属材料は、無機絶縁材料よりも熱伝導率がよい利点があり、熱電発電モジュールの絶縁材からなる基材との熱膨張係数の違いにより、耐久性が低下するため、ヒートサイクルが激しい箇所での使用には、無機絶縁材料を使用することが好ましい。
【0025】
熱電発電モジュールの受熱側の熱伝導部材は、熱電発電モジュールの基材とは別材料からなるカプラ、あるいはカプラ形状を有する基材が用いられる。基材そのものがカプラ形状を有する場合、受熱側に熱伝導率のよい材料をコーティングすることが好ましい。
【0026】
カプラは、電気配線の接続機能を持たせることで、熱電発電モジュールと取り付けベースとの間で、電気的接続が可能となり、放熱側での電気配線を省略することが可能である。また、カプラには、オスカプラとメスカプラがあり、通常、熱電発電モジュール側がオスカプラ、取り付けベース側がメスカプラとして用いられるが、オスカプラとメスカプラが反転した構造とすることも可能である。更に、本発明におけるカプラの構造は、従来のパイ型モジュールにも用いることが可能であることから、本発明の熱電発電ユニットは、多様な熱電発電モジュールの形態に対応可能である。
【0027】
取り付けベースは、多様な熱源の形態に対応可能にするために、熱源部とは別に取り付けベースを設置することが好ましいが、熱源部そのものがカプラの構造を有するものとすることも適宜可能である。本発明において、取り付けベースに使用する材質は、銅材や黄銅材など、熱伝導性の良好な材料であれば、どのようなものでもよいが、特に、重量が軽く、加工が容易で、耐腐食性が良好なアルミ材が適している。また、本発明では、オスカプラの形状は、平板形状、円筒型、アーチ型、波型、T字型など、様々な形状とすることができる。ただし、オスカプラの形状とメスカプラの形状を相互に考慮し、容易に結合が可能な形状であることが望ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、以下のような効果が奏される。
(1)熱電発電モジュールと、該モジュールの取り付けベースの要素部材からなる熱電発電ユニットを提供することができる。
(2)本発明の熱電発電ユニットは、廃熱源の表面形状に合わせて加工して作製することで、複雑形状を有する適宜の廃熱源に適用することができる。
(3)本発明は、安価で、取り付け施工時の負担軽減を実現した熱電発電ユニットを提供できる利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0030】
本実施例では、本発明の熱電発電モジュールを作製した。図1に、本発明の熱電発電モジュールの構造図の一例を示す。図1において、絶縁基板1の表面に、予め溝パターンを刻んで形成し、その溝の中に、p型厚膜熱電素子2及びn型厚膜熱電素子3を成膜した。p型厚膜熱電素子とn型厚膜熱電素子が交互に配置するように成膜された厚膜熱電素子間に、スパッタ法で電極4を取り付け、その両端に、リード線6を取り付け、リード線6を取り出す辺の対辺側に、アルミ材質の熱伝導板5を取り付けた。
【0031】
図1及び2において、絶縁カバー7で、p型厚膜熱電素子2、n型厚膜熱電素子3、電極4、及び熱伝導板5を覆い被せた。これにより、p型厚膜熱電素子2、n型厚膜熱電素子3及び電極4を周辺環境から保護した。絶縁基板1と、絶縁カバー7は、それらの4辺において、封止剤で封止した。封止剤としては、高温にも耐えられるように、耐熱性無機接着剤を使用した。
【0032】
図3に、密閉後の熱電発電モジュールを示す。封止剤8により、絶縁基板1と、絶縁カバー7の4辺を完全に封止し、厚膜熱電素子や電極を周辺環境から保護した。
【0033】
図1の、厚膜熱電素子を作製する工程は、以下のとおりとした。まず、初めに、図4に示すように、絶縁基板1の表面に、予め溝パターンを刻んで形成し、図5に示すように、溝パターンの中に、厚膜熱電素子の原材料となる材料粉末を投入して充てんした。
【0034】
材料粉末を充てんした後、図6に示すように、絶縁基板1と同じ材質の絶縁材料からなる密閉板9で覆い、その4辺を封止剤で封止して、材料粉末の充てんされている空間を、密閉状態にした。封止剤には、高温にも耐えられるように、耐熱性無機接着剤アロンセラミック(東亞合成株式会社製)を使用した。
【0035】
図7に示すように、加熱手段のヒーター10を有する断熱容器11の内部において、高速回転するローター12に設けられたポケット13に、図6に示す封止された絶縁基板1を設置し、遠心力を付加しながら、加熱及び冷却をすることで、粉末材料を溶融及び凝固させる遠心加圧溶融プロセスにより、絶縁基板1の溝パターン内に、厚膜熱電素子を作製した。
【0036】
溶融状態にある熱電素子材料は、密閉されているため、蒸発せず、組成ずれの心配はなく、また、溶融状態にある熱電素子材料には、遠心力が付加されているため、凝固した後の熱電素子内部に、残留気孔が発生しなかった。
【0037】
その後、図6に示す密閉板9を除去することで、図8に示す厚膜熱電素子の状態とした。絶縁基板1の孔内には、p型厚膜熱電素子2及びn型厚膜熱電素子3を、交互に配置するように形成し、更に、図8に示す厚膜熱電素子に、電極4、熱伝導板5及びリード線6を取り付けた。
【0038】
図9に、熱電発電モジュール14と、取り付けベース15の概念図を示す。図2に示す熱伝導板5を、オスカプラ17として機能させるために、アルミ材の取り付けベース15に、メスカプラ16を、複数箇所に設置した。オスカプラ17とメスカプラ16は、図10に示すように、差し込んで、接合した。熱電発電モジュール14と、取り付けベース15は、図10に示すように、一体のユニットとして構成した。
【0039】
次に、取り付けベース15を、廃熱源に取り付け、熱電発電モジュール14に、熱を供給した。一方で、熱電発電モジュール14は、放熱フィンとして働くため、オスカプラ17とリード線6が取り付けられている両対辺の間で、温度差による熱電発電を行った。図11に、取り付けベースをアーチ状取り付けベース18に加工することで、円筒形の廃熱ダクトに容易に取り付けができるように構成した熱電発電ユニットを示す。
【0040】
上記実施例の記載から明らかなように、本発明により、廃熱を利用した熱電発電において、容易に廃熱源への取り付け施工が可能な熱電発電ユニットを構築することができる。また、本発明は、熱電発電モジュールの形状は変更しなくても、取り付けベースの形状を変更するだけで、様々な形状の廃熱源に適用できる熱電発電ユニットを提供するものであり、熱電発電モジュールの生産において、コストメリットが得られる利点を有する。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上詳述したように、本発明は、熱電発電ユニットに係るものであり、本発明により、熱電発電モジュールと、該モジュールの取り付けベースの要素部材からなる熱電発電ユニットを提供することができる。本発明の熱電発電ユニットは、廃熱源の表面形状に合わせて加工して作製することで、複雑形状を有する適宜の廃熱源に適用することができる。本発明は、安価で、取り付け施工時の負担軽減を実現した熱電発電ユニットを提供できる利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】遠心加圧溶融法を適用して成膜した厚膜熱電素子を有する、熱電発電モジュールの概略図である。
【図2】熱電発電モジュールとそれに覆い被せる絶縁カバーの概略図である。
【図3】絶縁カバーを覆い被せて密閉した熱電発電モジュールの概略図である。
【図4】厚膜熱電素子を成膜するための、溝パターンを設けた絶縁基板の概略図である。
【図5】絶縁基板の溝パターンに、熱電素子の原材料となる材料粉末を充てんした状態の概略図である。
【図6】絶縁基板に、熱電素子の原材料となる材料粉末を充てんし、密閉板によって密閉した様子を示した概略図である。
【図7】遠心加圧溶融法により、絶縁基板のパターン溝内に厚膜熱電素子を作製する工程の様子を示した概略図である。
【図8】遠心加圧溶融法により、絶縁基板のパターン溝内に作製された厚膜熱電素子の様子を示した概略図である。
【図9】熱電発電モジュールと取り付けベースの概略図である。
【図10】熱電発電モジュールと取り付けベースを結合させた熱電発電ユニットの概略図である。
【図11】円筒形廃熱ダクトに取り付けやすいように、アーチ状に加工された取り付けベース使用した熱電発電ユニットの概略図である。
【符号の説明】
【0043】
1 絶縁基板
2 p型厚膜熱電素子
3 n型厚膜熱電素子
4 電極
5 熱伝導板
6 リード線
7 絶縁カバー
8 封止剤
9 密閉板
10 加熱ヒーター
11 断熱容器
12 ローター
13 ポケット
14 熱電発電モジュール
15 取り付けベース
16 メスカプラ
17 オスカプラ
18 アーチ状取り付けベース
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電発電モジュールと、取り付けベースの要素部材からなる熱電発電ユニットに関するものであり、更に詳しくは、熱電発電モジュールと、該モジュールの取り付けベースの要素部材からなる熱電発電ユニットであって、受熱側に、カプラの役割をする熱伝導部材を有する熱電発電モジュールと、複数のカプラが形成された取り付けベースから構成され、該カプラによって熱電発電モジュールと取り付けベースが結合された状態のユニット構造を有する熱電発電ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、バルク形状の熱電素子材料を用いた、いわゆるパイ型モジュールといわれるタイプの熱電発電モジュールが、公知技術として知られている。このパイ型モジュールは、形態として、平面板形状で、その両平面間において、温度差をとり発電をするため、廃熱発電に利用するには、廃熱源の形状が平面である必要があるなどの制約があった。
【0003】
実際の廃熱源としては、廃熱ダクトなどが想定されるが、前記パイ型モジュールを、廃熱ダクトのような曲面箇所に直接取り付けることは困難であった。
【0004】
これは、これまで、取り付け施工時の負担軽減などの実用面を考慮せずに、熱電発電モジュールの高性能化競争ばかりが先行してきたためである。これらの問題点を解決するために、放熱フィン表面に形成した絶縁皮膜の上に、膜状熱電素子を形成して、廃熱の放熱と発電を同時に行う熱電発電モジュールが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
しかしながら、この種のモジュールは、真空中におけるプラズマ溶射により熱電素子膜を形成しており、この手法では、プラズマ溶射時に、材料の蒸発が激しく生じるため、組成ずれが発生する欠点がある。熱電素子は、組成ずれを生じると、著しく発電能力が低下するため、実用的でない。
【0006】
また、仮に、大気圧力下でプラズマ溶射を行うと、膜中に残留気孔が発生するため、これも、発電能力の低下につながる欠点があった。また、プラズマ溶射により形成された膜は、一般に、多結晶体であり、単結晶熱電材料や、結晶配向熱電材料と比較して、発電能力が劣る欠点があった。更に、特許文献1の熱電発電モジュールは、複雑表面形状の廃熱源に直接取り付けるために、熱電発電モジュールの取り付け部分を、廃熱源表面形状に合わせて作製する必要がある。
【0007】
しかしながら、熱電発電モジュールを、一つ一つ異なる形状に作製すると、モジュール作製のコストが跳ね上がり、高コストになるという問題がある。現在、熱電発電モジュールを廃熱ダクトのような曲面に取り付けることは容易ではない。これは、一般的に、パイ型モジュールの受熱面が、平面板形状をしているためである。
【0008】
これらの問題点を解決するため、放熱フィン表面に形成した絶縁皮膜の上に、膜状熱電素子を形成して、廃熱の放熱と発電を同時に行う熱電発電モジュールが提案されている。しかし、これも、複雑表面形状をした廃熱源に取り付けるには、廃熱源の表面形状に合わせてモジュールの形状を一つ一つ変更する必要がある。1品1品違う形状の熱電発電モジュールを作製すれば、その製造コストは、大きく跳ね上がることとなり、現実的でない。
【0009】
【特許文献1】特許3390829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、複雑表面形状の廃熱源に直接取り付けることができる熱電発電モジュールを開発することを目標として鋭意研究を重ねた結果、廃熱ダクトのような曲面にも容易に熱電発電モジュールの取り付けを可能にする熱電発電ユニットを開発することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、熱電発電モジュールと取り付けベースとの2つの要素部材からなる熱電発電ユニットとすることで、廃熱ダクトのような曲面にも容易に熱電発電モジュールを取り付け可能にし、取り付け施工時の負担軽減を実現し、実用に耐える熱電発電ユニットを提供することを目的とするものである。
【0012】
また、本発明は、加工が容易な取り付けベースを、廃熱源の表面形状に合わせて加工して作製することで、熱電発電モジュールは、安価に大量生産が可能な同一形状品でよく、トータルの製造コストを従来よりも大幅に低減し、上記課題を解決することを可能とする熱電発電ユニットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)熱電発電モジュールと、該モジュールの取り付けベースの要素部材からなる熱電発電ユニットであって、受熱側に、カプラの役割をする熱伝導部材を有する熱電発電モジュールと、複数のカプラが形成された取り付けベースから構成され、該カプラによって熱電発電モジュールと取り付けベースが結合された状態のユニット構造を有することを特徴とする熱電発電ユニット。
(2)前記熱電発電モジュールの熱電素子が、粉末状の熱電材料に遠心力を付加しながら、該熱電材料を溶融及び凝固させる遠心加圧溶融法により作製された熱電素子であって、該熱電素子が、予め溝が刻まれた絶縁材からなる基材上に、p型熱電素子とn型熱電素子からなる少なくとも1対又はそれ以上の膜状熱電素子によって形成された構造を有している、前記(1)に記載の熱電発電ユニット。
(3)前記絶縁材からなる基材が、無機絶縁材料である、前記(2)に記載の熱電発電ユニット。
(4)前記熱伝導部材が、金属である、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の熱電発電ユニット。
(5)前記熱伝導部材が、無機絶縁材料である、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の熱電発電ユニット。
(6)前記熱電素子が、ビスマスもしくはテルルを含む材料からなる熱電素子である、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の熱電発電ユニット。
(7)前記熱電素子が、ケイ素を含む材料からなる熱電素子である、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の熱電発電ユニット。
(8)前記熱電素子が、酸化物を含む材料からなる熱電素子である、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の熱電発電ユニット。
(9)前記取り付けベースが、金属製である、前記(1)〜(8)のいずれかに記載の熱電発電ユニット。
(10)前記取り付けベースが、無機絶縁材料製である、前記(1)〜(8)のいずれかに記載の熱電発電ユニット。
【0014】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、熱電発電モジュールを種々の形状の廃熱源に取り付け可能な熱電発電ユニットの構造に特徴を有するものであり、熱電発電モジュールを構成する熱電素子、熱電発電モジュール、及び、取り付けベースなどの熱電発電ユニットを構成する要素部材の材料、材質については、特に制限されるものではなく、公知及び新規の材料及び材質を含めて適宜の材料、材質を使用することができる。
【0015】
本発明の熱電発電ユニットを構成する要素部材のうち、絶縁材からなる基材には、アルミナ、ジルコニア、石英に加え、アルミナ系、マグネシア系、チタニア系などの無機系絶縁材料や、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンオキサイド、ポリエーテルサルホン、ポリサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトンなどの有機系絶縁材料が適宜用いられる。
【0016】
熱伝導部材には、金、銀、銅、錫、アルミ、ステンレス、窒化ホウ素、窒化アルミ、炭化ケイ素などの金属材料や、無機系絶縁材料が適宜用いられる。熱電素子には、ビスマスを含む材料、テルルを含む材料、ケイ素を含む材料、酸化物を含む材料に加え、スクッテルダイト系、ハーフホイスラー系、亜鉛アンチモン系、ホウ素化合物などが適宜用いられる。取り付けベースには、金、銀、銅、錫、アルミ、ステンレス、窒化ホウ素、窒化アルミ、炭化ケイ素などの金属材料や、無機系絶縁材料が適宜用いられる。電極には、銅、銀、白金、金、ニッケル、アルミなどが適宜用いられる。
【0017】
前述のように、本発明では、熱電発電モジュールについては、公知もしくは新規の任意の形態及び/又は材質の熱電発電モジュールを構成することができ、また、該モジュールの取り付けベースについても、公知もしくは新規の任意の形態及び/又は材質の取り付けベースを構成することができる。本発明の熱電発電ユニットは、適宜の熱電発電モジュールを、適宜の廃熱源に取り付ける際の取り付けユニットとして任意に使用することが可能なユニット部の構造に特徴を有している。
【0018】
次に、本発明を実施するための最良の形態を説明する。本発明は、廃熱発電において、放熱を行いながら、同時に効率よく発電するための熱電発電ユニットを提供するものである。まず、本発明の熱電発電ユニットに用いる熱電発電モジュールについて説明する。本発明では、絶縁材からなる基材に、複数対からなる膜状熱電素子が、遠心加圧溶融法によって形成された熱電発電モジュールが用いられる。
【0019】
上記熱電発電モジュールにおいては、受熱側に熱伝導部材を有し、かつ、熱電素子を周辺環境から保護する絶縁材からなる保護カバーを有する構造が好適な形態である。このような形状及び構造の熱電発電モジュールを使用した熱電発電ユニットを構成することで、廃熱発電において、放熱を行いながら、同時に効率よく発電することが可能となる。
【0020】
次に、複数のカプラが形成された金属材料製の取り付けベースに、前記熱電発電モジュールに付帯する前記熱伝導部材が、対を成すカプラとして結合した状態のユニットを構成する。このように、熱電発電モジュールと、取り付けベースを分けて製造することで、加工が容易な取り付けベースを、廃熱源の形状に合わせて作製すればよく、また、熱電発電モジュールは、同一形状品を大量生産すればよいため、熱電発電ユニットとしての製造コストは、低く抑えられる。これにより、安価な熱電発電ユニットを提供することが可能となる。
【0021】
本発明において、熱電発電モジュールの絶縁材からなる基材としては、無機絶縁材料、あるいは、有機絶縁材料が用いられる。ただし、無機絶縁材料を使用すると、一般的に、無機絶縁材料は、有機絶縁材料よりも耐熱温度が高いため、遠心加圧溶融プロセスを実施する時に、温度コントロールの選択幅が広がるので、熱電材料の選択肢が広がる利点がある。
【0022】
また、本発明において、遠心加圧溶融法とは、材料に遠心力をかけながら材料を溶融及び凝固させる方法のことである。本発明では、遠心力の付加方法としては、ヒーター加熱、高周波加熱、マイクロ波加熱などが用いられるが、加熱方法は、ヒーター加熱が安価であり、好適である。
【0023】
熱電発電モジュールの保護カバーは、絶縁材であればよく、無機絶縁材料、あるいは有機絶縁材料が用いられる。ただし、保護カバーは、熱電素子材料を周辺環境から保護するための役割を担うので、保護カバーの材質と、絶縁材からなる基材の材質の熱膨張係数がなるべく近く、ヒートサイクルによる両部材間の剥離などが生じないものであることが望ましい。
【0024】
熱電発電モジュールの受熱側の熱伝導部材は、金属材料、あるいは無機絶縁材料が用いられる。ただし、一般に、金属材料は、無機絶縁材料よりも熱伝導率がよい利点があり、熱電発電モジュールの絶縁材からなる基材との熱膨張係数の違いにより、耐久性が低下するため、ヒートサイクルが激しい箇所での使用には、無機絶縁材料を使用することが好ましい。
【0025】
熱電発電モジュールの受熱側の熱伝導部材は、熱電発電モジュールの基材とは別材料からなるカプラ、あるいはカプラ形状を有する基材が用いられる。基材そのものがカプラ形状を有する場合、受熱側に熱伝導率のよい材料をコーティングすることが好ましい。
【0026】
カプラは、電気配線の接続機能を持たせることで、熱電発電モジュールと取り付けベースとの間で、電気的接続が可能となり、放熱側での電気配線を省略することが可能である。また、カプラには、オスカプラとメスカプラがあり、通常、熱電発電モジュール側がオスカプラ、取り付けベース側がメスカプラとして用いられるが、オスカプラとメスカプラが反転した構造とすることも可能である。更に、本発明におけるカプラの構造は、従来のパイ型モジュールにも用いることが可能であることから、本発明の熱電発電ユニットは、多様な熱電発電モジュールの形態に対応可能である。
【0027】
取り付けベースは、多様な熱源の形態に対応可能にするために、熱源部とは別に取り付けベースを設置することが好ましいが、熱源部そのものがカプラの構造を有するものとすることも適宜可能である。本発明において、取り付けベースに使用する材質は、銅材や黄銅材など、熱伝導性の良好な材料であれば、どのようなものでもよいが、特に、重量が軽く、加工が容易で、耐腐食性が良好なアルミ材が適している。また、本発明では、オスカプラの形状は、平板形状、円筒型、アーチ型、波型、T字型など、様々な形状とすることができる。ただし、オスカプラの形状とメスカプラの形状を相互に考慮し、容易に結合が可能な形状であることが望ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、以下のような効果が奏される。
(1)熱電発電モジュールと、該モジュールの取り付けベースの要素部材からなる熱電発電ユニットを提供することができる。
(2)本発明の熱電発電ユニットは、廃熱源の表面形状に合わせて加工して作製することで、複雑形状を有する適宜の廃熱源に適用することができる。
(3)本発明は、安価で、取り付け施工時の負担軽減を実現した熱電発電ユニットを提供できる利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0030】
本実施例では、本発明の熱電発電モジュールを作製した。図1に、本発明の熱電発電モジュールの構造図の一例を示す。図1において、絶縁基板1の表面に、予め溝パターンを刻んで形成し、その溝の中に、p型厚膜熱電素子2及びn型厚膜熱電素子3を成膜した。p型厚膜熱電素子とn型厚膜熱電素子が交互に配置するように成膜された厚膜熱電素子間に、スパッタ法で電極4を取り付け、その両端に、リード線6を取り付け、リード線6を取り出す辺の対辺側に、アルミ材質の熱伝導板5を取り付けた。
【0031】
図1及び2において、絶縁カバー7で、p型厚膜熱電素子2、n型厚膜熱電素子3、電極4、及び熱伝導板5を覆い被せた。これにより、p型厚膜熱電素子2、n型厚膜熱電素子3及び電極4を周辺環境から保護した。絶縁基板1と、絶縁カバー7は、それらの4辺において、封止剤で封止した。封止剤としては、高温にも耐えられるように、耐熱性無機接着剤を使用した。
【0032】
図3に、密閉後の熱電発電モジュールを示す。封止剤8により、絶縁基板1と、絶縁カバー7の4辺を完全に封止し、厚膜熱電素子や電極を周辺環境から保護した。
【0033】
図1の、厚膜熱電素子を作製する工程は、以下のとおりとした。まず、初めに、図4に示すように、絶縁基板1の表面に、予め溝パターンを刻んで形成し、図5に示すように、溝パターンの中に、厚膜熱電素子の原材料となる材料粉末を投入して充てんした。
【0034】
材料粉末を充てんした後、図6に示すように、絶縁基板1と同じ材質の絶縁材料からなる密閉板9で覆い、その4辺を封止剤で封止して、材料粉末の充てんされている空間を、密閉状態にした。封止剤には、高温にも耐えられるように、耐熱性無機接着剤アロンセラミック(東亞合成株式会社製)を使用した。
【0035】
図7に示すように、加熱手段のヒーター10を有する断熱容器11の内部において、高速回転するローター12に設けられたポケット13に、図6に示す封止された絶縁基板1を設置し、遠心力を付加しながら、加熱及び冷却をすることで、粉末材料を溶融及び凝固させる遠心加圧溶融プロセスにより、絶縁基板1の溝パターン内に、厚膜熱電素子を作製した。
【0036】
溶融状態にある熱電素子材料は、密閉されているため、蒸発せず、組成ずれの心配はなく、また、溶融状態にある熱電素子材料には、遠心力が付加されているため、凝固した後の熱電素子内部に、残留気孔が発生しなかった。
【0037】
その後、図6に示す密閉板9を除去することで、図8に示す厚膜熱電素子の状態とした。絶縁基板1の孔内には、p型厚膜熱電素子2及びn型厚膜熱電素子3を、交互に配置するように形成し、更に、図8に示す厚膜熱電素子に、電極4、熱伝導板5及びリード線6を取り付けた。
【0038】
図9に、熱電発電モジュール14と、取り付けベース15の概念図を示す。図2に示す熱伝導板5を、オスカプラ17として機能させるために、アルミ材の取り付けベース15に、メスカプラ16を、複数箇所に設置した。オスカプラ17とメスカプラ16は、図10に示すように、差し込んで、接合した。熱電発電モジュール14と、取り付けベース15は、図10に示すように、一体のユニットとして構成した。
【0039】
次に、取り付けベース15を、廃熱源に取り付け、熱電発電モジュール14に、熱を供給した。一方で、熱電発電モジュール14は、放熱フィンとして働くため、オスカプラ17とリード線6が取り付けられている両対辺の間で、温度差による熱電発電を行った。図11に、取り付けベースをアーチ状取り付けベース18に加工することで、円筒形の廃熱ダクトに容易に取り付けができるように構成した熱電発電ユニットを示す。
【0040】
上記実施例の記載から明らかなように、本発明により、廃熱を利用した熱電発電において、容易に廃熱源への取り付け施工が可能な熱電発電ユニットを構築することができる。また、本発明は、熱電発電モジュールの形状は変更しなくても、取り付けベースの形状を変更するだけで、様々な形状の廃熱源に適用できる熱電発電ユニットを提供するものであり、熱電発電モジュールの生産において、コストメリットが得られる利点を有する。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上詳述したように、本発明は、熱電発電ユニットに係るものであり、本発明により、熱電発電モジュールと、該モジュールの取り付けベースの要素部材からなる熱電発電ユニットを提供することができる。本発明の熱電発電ユニットは、廃熱源の表面形状に合わせて加工して作製することで、複雑形状を有する適宜の廃熱源に適用することができる。本発明は、安価で、取り付け施工時の負担軽減を実現した熱電発電ユニットを提供できる利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】遠心加圧溶融法を適用して成膜した厚膜熱電素子を有する、熱電発電モジュールの概略図である。
【図2】熱電発電モジュールとそれに覆い被せる絶縁カバーの概略図である。
【図3】絶縁カバーを覆い被せて密閉した熱電発電モジュールの概略図である。
【図4】厚膜熱電素子を成膜するための、溝パターンを設けた絶縁基板の概略図である。
【図5】絶縁基板の溝パターンに、熱電素子の原材料となる材料粉末を充てんした状態の概略図である。
【図6】絶縁基板に、熱電素子の原材料となる材料粉末を充てんし、密閉板によって密閉した様子を示した概略図である。
【図7】遠心加圧溶融法により、絶縁基板のパターン溝内に厚膜熱電素子を作製する工程の様子を示した概略図である。
【図8】遠心加圧溶融法により、絶縁基板のパターン溝内に作製された厚膜熱電素子の様子を示した概略図である。
【図9】熱電発電モジュールと取り付けベースの概略図である。
【図10】熱電発電モジュールと取り付けベースを結合させた熱電発電ユニットの概略図である。
【図11】円筒形廃熱ダクトに取り付けやすいように、アーチ状に加工された取り付けベース使用した熱電発電ユニットの概略図である。
【符号の説明】
【0043】
1 絶縁基板
2 p型厚膜熱電素子
3 n型厚膜熱電素子
4 電極
5 熱伝導板
6 リード線
7 絶縁カバー
8 封止剤
9 密閉板
10 加熱ヒーター
11 断熱容器
12 ローター
13 ポケット
14 熱電発電モジュール
15 取り付けベース
16 メスカプラ
17 オスカプラ
18 アーチ状取り付けベース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱電発電モジュールと、該モジュールの取り付けベースの要素部材からなる熱電発電ユニットであって、受熱側に、カプラの役割をする熱伝導部材を有する熱電発電モジュールと、複数のカプラが形成された取り付けベースから構成され、該カプラによって熱電発電モジュールと取り付けベースが結合された状態のユニット構造を有することを特徴とする熱電発電ユニット。
【請求項2】
前記熱電発電モジュールの熱電素子が、粉末状の熱電材料に遠心力を付加しながら、該熱電材料を溶融及び凝固させる遠心加圧溶融法により作製された熱電素子であって、該熱電素子が、予め溝が刻まれた絶縁材からなる基材上に、p型熱電素子とn型熱電素子からなる少なくとも1対又はそれ以上の膜状熱電素子によって形成された構造を有している、請求項1に記載の熱電発電ユニット。
【請求項3】
前記絶縁材からなる基材が、無機絶縁材料である、請求項2に記載の熱電発電ユニット。
【請求項4】
前記熱伝導部材が、金属である、請求項1〜3のいずれかに記載の熱電発電ユニット。
【請求項5】
前記熱伝導部材が、無機絶縁材料である、請求項1〜3のいずれかに記載の熱電発電ユニット。
【請求項6】
前記熱電素子が、ビスマスもしくはテルルを含む材料からなる熱電素子である、請求項1〜5のいずれかに記載の熱電発電ユニット。
【請求項7】
前記熱電素子が、ケイ素を含む材料からなる熱電素子である、請求項1〜5のいずれかに記載の熱電発電ユニット。
【請求項8】
前記熱電素子が、酸化物を含む材料からなる熱電素子である、請求項1〜5のいずれかに記載の熱電発電ユニット。
【請求項9】
前記取り付けベースが、金属製である、請求項1〜8のいずれかに記載の熱電発電ユニット。
【請求項10】
前記取り付けベースが、無機絶縁材料製である、請求項1〜8のいずれかに記載の熱電発電ユニット。
【請求項1】
熱電発電モジュールと、該モジュールの取り付けベースの要素部材からなる熱電発電ユニットであって、受熱側に、カプラの役割をする熱伝導部材を有する熱電発電モジュールと、複数のカプラが形成された取り付けベースから構成され、該カプラによって熱電発電モジュールと取り付けベースが結合された状態のユニット構造を有することを特徴とする熱電発電ユニット。
【請求項2】
前記熱電発電モジュールの熱電素子が、粉末状の熱電材料に遠心力を付加しながら、該熱電材料を溶融及び凝固させる遠心加圧溶融法により作製された熱電素子であって、該熱電素子が、予め溝が刻まれた絶縁材からなる基材上に、p型熱電素子とn型熱電素子からなる少なくとも1対又はそれ以上の膜状熱電素子によって形成された構造を有している、請求項1に記載の熱電発電ユニット。
【請求項3】
前記絶縁材からなる基材が、無機絶縁材料である、請求項2に記載の熱電発電ユニット。
【請求項4】
前記熱伝導部材が、金属である、請求項1〜3のいずれかに記載の熱電発電ユニット。
【請求項5】
前記熱伝導部材が、無機絶縁材料である、請求項1〜3のいずれかに記載の熱電発電ユニット。
【請求項6】
前記熱電素子が、ビスマスもしくはテルルを含む材料からなる熱電素子である、請求項1〜5のいずれかに記載の熱電発電ユニット。
【請求項7】
前記熱電素子が、ケイ素を含む材料からなる熱電素子である、請求項1〜5のいずれかに記載の熱電発電ユニット。
【請求項8】
前記熱電素子が、酸化物を含む材料からなる熱電素子である、請求項1〜5のいずれかに記載の熱電発電ユニット。
【請求項9】
前記取り付けベースが、金属製である、請求項1〜8のいずれかに記載の熱電発電ユニット。
【請求項10】
前記取り付けベースが、無機絶縁材料製である、請求項1〜8のいずれかに記載の熱電発電ユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−157645(P2010−157645A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335722(P2008−335722)
【出願日】平成20年12月29日(2008.12.29)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000191009)新東工業株式会社 (474)
【出願人】(300068834)新東ブイセラックス株式会社 (8)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月29日(2008.12.29)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000191009)新東工業株式会社 (474)
【出願人】(300068834)新東ブイセラックス株式会社 (8)
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