説明

熱電発電装置

【課題】簡単な構造で、リード線の結線回りの樹脂部材を輻射熱から確実に保護できる熱電発電装置を提供すること。
【解決手段】熱を受ける受熱板10と、受熱板10よりも低温に維持される冷却板20と、受熱板10および冷却板20の間に介装される熱電モジュール30とを備えた熱電発電装置において、冷却板20には、熱電モジュール30からのリード線34,35と外部からの電力線54との接続箇所であるターミナルブロック36〜39,41が設けられ、ターミナルブロック36〜39,41は、冷却板20に固定された金属カバー46で覆われている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電発電装置に係り、特に熱源からの受熱によって発電するように構成された熱電発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多数の熱電発電素子からなる熱電モジュールを受熱板と冷却板との間に介装し、エンジンからの排気ガス等を受熱板にあてることで、熱電モジュールのゼーベック効果により発電させる熱電発電装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような熱電発電装置では、排気管の周囲を取り囲むように複数の熱電発電装置が取り付けられ、排気管からの排気ガスが受熱板に導かれるようになっている。また、そのような受熱板と冷却板との間に介装された熱電モジュールからは、電圧を取り出すためのリード線が引き出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−125341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、熱電モジュールから引き出されたリード線は、排気ガスで熱せられた排気管からの輻射熱の影響を受け、被覆等が溶解してしまうおそれがある。また、特許文献1では、熱電発電装置が環状部材で覆われており、リード線はこの環状部材の外部に引き出されてコネクタに接続されているが、装置の構造によっては、コネクタやターミナルブロック等を構成する樹脂部材が、環状部材の内部に配置されることも考えられ、そのような場合には、樹脂部材が排気管からの輻射熱によりダメージを受ける可能性がある。
【0006】
なお、ターミナルブロックを輻射熱から保護するためとして、特開昭61−132245号公報に記載の技術が提案されている。この公報記載の技術によれば、ターミナルブロックを水冷ジャケットで覆って冷却しており、熱源からの輻射熱がターミナルブロックに影響しないようにしている。しかし、このような水冷ジャケットを採用するには、冷却水の循環システムを設ける必要があり、大掛かりになるという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、簡単な構造で、リード線の結線回りの樹脂部材を輻射熱から確実に保護できる熱電発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明に係る熱電発電装置は、熱を受ける受熱板と、前記受熱板よりも低温に維持される冷却板と、前記受熱板および前記冷却板の間に介装される熱電モジュールとを備え、前記冷却板には、前記熱電モジュールからのリード線と外部からの電力線との接続箇所であるターミナルブロックが設けられ、前記ターミナルブロックは、前記冷却板に固定された金属カバーで覆われていることを特徴とする。
【0009】
第2発明に係る熱電発電装置では、前記冷却板には、前記リード線を通す貫通孔が設けられ、前記貫通孔は、前記ターミナルブロックで覆われており、前記冷却板と前記ターミナルブロックとの間には、前記貫通孔を囲うOリングが介装されていることを特徴とする。
【0010】
第3発明に係る熱電発電装置では、複数の前記ターミナルブロックが前記冷却板の中央寄りに集約して配置されていることを特徴とする。
【0011】
第4発明に係る熱電発電装置では、前記受熱板、前記冷却板、および前記熱電モジュールを有した熱電発電ユニットと、前記熱電発電ユニットを覆う金属製の遮蔽カバーと、当該熱電発電装置を所定の位置に固定する固定ブラケットとを備え、前記ターミナルブロックは、前記冷却板上に設けられた樹脂製のスペーサと、前記スペーサ上に設けられて前記リード線および前記電力線が結線される金属製のターミナルと、前記スペーサおよび前記ターミナルとを覆う樹脂カバーとを備え、前記冷却板と前記スペーサとの間には第1のOリングが介装され、前記スペーサと前記ターミナルとの間には第2のOリングが介装され、前記スペーサと前記樹脂カバーとの間には第3のOリングが介装されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1発明によれば、ターミナルブロックが金属カバーで覆われるので、受熱板が受ける熱に基づく輻射を金属カバーで遮ることができる。しかも、金属カバーは、冷却板に固定されることで、冷却板と同程度の低温に維持されるから、金属カバーで覆われたターミナルブロックへの輻射熱を効果的に遮断でき、ターミナルブロックを構成する特に樹脂製の部材の輻射熱によるダメージを抑制できる。
【0013】
第2発明によれば、ターミナルブロックではゴム等による樹脂製のOリングが用いられるが、このようなOリングに対する輻射熱の影響を少なくすることで、Oリングの変形等を防止でき、気密性能を良好に維持できて貫通孔を通して水分が浸入する心配がない。
【0014】
第3発明によれば、複数のターミナルブロックが冷却板の中央に集約されることで、冷却板周囲とターミナルブロックとの距離を稼ぐことができ、冷却板周囲から発する輻射熱の影響をより少なくできる。
【0015】
第4発明によれば、遮蔽カバーが設けられることで、熱電ユニットの冷却板側に熱媒体等が回り込むのを防止できる。この際、遮蔽カバーが加熱されて輻射熱を生じるが、輻射熱は前記の金属カバーにて遮断され、ターミナルブロックに影響を与えることがないため、樹脂製のスペーサや樹脂カバーを確実に保護できる他、第1〜第3のOリングの変形を防止でき、気密性を確実に確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る熱電発電装置を熱処理炉のバーナ燃焼部分に適用した例を示す模式図。
【図2】熱電発電装置を一部分解して示す全体斜視図。
【図3】熱電発電装置の熱電発電ユニットを一部断面視して示す全体斜視図。
【図4】熱電発電ユニットの平面図。
【図5】熱電発電ユニットの側面図。
【図6】図4のVI−VI線断面図。
【図7】冷却板の裏面図。
【図8】熱電モジュールの支持構造を示す平面図(A)、および熱電モジュールの要部の断面図(B)。
【図9】熱電発電ユニットのターミナルブロック周りを示す断面図。
【図10】ターミナルブロック周りを示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る熱電発電装置1を熱処理炉100のバーナ燃焼部分に適用した例を示すものである。熱処理炉100で使用済みのガスを排気するにあたり、このガスを燃料としてガスバーナ3にて燃焼させ、燃焼後の排気ガスを排気ダクト2を通して排気している。排気ダクト2の下方には燃焼用ガスバーナ3が設けられ、ガスバーナ3の火炎が届く位置に熱電発電装置1が配置されている。ガスバーナ3からの火炎で炙られることで、ガス燃焼時の熱エネルギを熱電発電装置1によって電気に変換している。
ただし、本発明の熱電発電装置は、高温に曝される個所に設けられればよく、熱処理炉100に適用される場合に限らない。
【0018】
〔熱電発電装置の全体説明〕
図2は、熱電発電装置1を示す斜視図である。
熱電発電装置1は、熱電変換を行う熱電発電ユニット4と、この熱電発電ユニット4を覆う遮蔽カバー5と、熱電発電ユニット4を排気ダクト2に固定するための固定ブラケット6とを備え、この固定ブラケット6が排気ダクト2に固定される。
【0019】
〔熱電発電ユニットの概略〕
熱電発電ユニット4は、詳細には図3以降に基づいて後述するが、図中下側の受熱板10と、上側の冷却板20と、これら受熱板10および冷却板20との間に介装された熱電モジュールとを備えている。受熱板10の下面がバーナ3の火炎で下方から加熱される一方、冷却板20が冷却水にて冷却され、これらの間に介装された発電ジュールにて受熱板10と冷却板20との温度差によるゼーベック効果が生じ、発電する。
【0020】
〔遮蔽カバーの詳細〕
遮蔽カバー5は、下方から回り込んで来るバーナ3の火炎から熱電発電ユニット4を保護するために用いられる。具体的に遮蔽カバー5は、平面視で矩形板状とされた受熱板10の長辺側の側面にボルト止めされる一対の長辺側下部遮蔽板7,7と、これら長辺側下部遮蔽板7,7の上縁にボルト止めされる長辺側上部遮蔽板8,8と、受熱板10の短辺側の側面にボルト止めされる一対の短辺側遮蔽板9,9とで構成されている。各遮蔽板7〜9は、例えばステンレス製である。冷却板20の外径寸法は受熱板10の外径寸法よりも僅かに小さく、遮蔽カバー5が受熱板10に取り付けられた時、遮蔽カバー5と冷却板20との間には空間が形成される。
【0021】
長辺側下部遮蔽板7は、略固定ブラケット6までの高さ寸法を有している。つまり、熱電発電ユニット4の長辺側は、固定ブラケット6の高さ位置で上下に2分割される遮蔽板7,8にて覆われている。そのため、長辺側下部遮蔽板7の上部側および長辺側上部遮蔽板8の下部側には、固定ブラケット6に対応した位置にスリット7A,8Aが設けられ、熱膨張が生じても固定ブラケット6と干渉しないようになっている。また、一方の長辺側上部遮蔽板8には、スリット8A,8A間に開口部8Bが設けられている。開口部8Bは、熱電発電ユニット4からの電気配線や冷却水用ホースを通すために設けられる。
【0022】
各遮蔽板7〜9は、鉛直な側面部71,81,91を有しており、長辺側の上下の遮蔽板7,8の側面部71,81、およびこれに近接する短辺側遮蔽板9の側面部91では、鉛直な端縁同士が突き合わされることで、熱電発電ユニット4の側方全周が覆われる。また、長辺側上部遮蔽板8および短辺側遮蔽板9の上部には、平面方向に折曲した台形形状の上面部82および三角形状の上面部92が形成され、これらの上面部82,92の端縁同士が突き合わされることで、熱電発電ユニット4の上方全域が覆われる。
【0023】
そして、各遮蔽板7〜9において、側面部71,81,91同士や、上面部82,92同士は、互いに接合されておらず、各遮蔽板7〜9で生じる熱伸縮量の違いは、各端縁の境界部分がずれることで吸収される。従って、遮蔽カバー5全体では、熱応力が生じ難く、遮蔽板7,9が固定される熱電発電ユニット4の特に受熱板10に影響を及ぼす心配がない。また逆に、受熱板10に熱伸縮が生じても、この熱伸縮に追従して各遮蔽板7〜9の境界部分がずれるため、やはり遮蔽カバー5での応力を生じ難くでき、受熱板10へのガスバーナ3から発生する火炎による影響を抑制する。
【0024】
〔固定ブラケットの詳細〕
固定ブラケット6は、断面L字形状の金属形鋼を略井型形状に接合した支持枠61を有している。すなわち支持枠61は、両端が遮蔽カバー5から突出する一対の平行な支持枠材62と、遮蔽カバー5内において、支持枠材62間に跨って架け渡される一対の平行な架設枠材63とで構成される。
【0025】
支持枠材62の両端にはボルト孔62Aが設けられ、このボルト孔62Aに挿通されるボルトにより、固定ブラケット6が送風ダクト2に固定される。
架設枠材63の下面には、長手方向に間隔を空けて一対の金属製の固定ブロック64が溶着されている。固定ブロック64は、冷却板20に対して支持枠61を所定の高さ位置に配置するための部材であり、支持枠61としては、架設枠材63を固定ブロック64ごと貫通するボルトにより、冷却板20の上面に固定されている。
【0026】
また、架設枠材63間には、金属製の冷却水ブロック65が架設されている。冷却水ブロック65には、冷却水を外部から供給する供給ホースおよび外部へ戻す戻しホースが、長辺側上部遮蔽板8の開口部8Bを通して接続され、また、冷却板20に設けられた流入口に冷却水を供給する供給ホースおよび排出口から冷却水を戻す戻しホースが接続される。つまり、温度調整された外部からの冷却水は、冷却水ブロック65を介しいて冷却板20の冷却水回路に供給され、冷却水回路を流れた後に、冷却板20から冷却水ブロック65を介して外部へ戻される。
【0027】
〔熱電発電ユニットの詳細〕
図3は、熱電発電ユニット4の全体斜視図、図4はその平面図、図5はその側面図、図6は図4のVI−VI線断面図である。図7は、熱電発電ユニット4の冷却板20の裏面図である。
【0028】
図3ないし図5において、熱電発電ユニット4は、銅製で全面に黒色無電解ニッケルメッキにより表面処理された矩形板状の受熱板10と、銅製で受熱板10よりも外形寸法が僅かに小さい矩形板状の冷却板20と、受熱板10および冷却板20の間に介装された複数の熱電モジュール30とを備えている。
【0029】
受熱板10および冷却板20は、四隅の4本のボルト11と、長辺側に平行に4列および短辺側に平行に3列に位置した12本のボルト12とにより互いに締結されている。従って、受熱板10には、それらのボルト11,12が螺入されるボルト穴13,14が設けられ、冷却板20にはボルト11,12が挿通される挿通孔(後述)が設けられる。
【0030】
〔コイルばねの機能〕
ボルト11には円板状の座金11Aが貫挿されており、座金11Aと冷却板20の上面との間には、ボルト11に挿通された状態でコイルばね15が介装されている。また、ボルト12には座金12Aが貫挿されており、座金12Aと冷却板20の上面との間には、ボルト12に挿通された状態でコイルばね16が介装されている。コイルばね16の線径および外径はそれぞれ、コイルばね15よりも大きく、コイルばね16のばね力はコイルばね15のばね力よりも大きい。これらのコイルばね15,16のばね力により、受熱板10および冷却板20は互いに近づく方向へ付勢されている。
【0031】
ここで、受熱板10と冷却板20との間には、四隅の角部にR形状を有する四角形状のOリング17が受熱板10および冷却板20の周縁に沿って介装されている。Oリング17は、熱電モジュール30の周囲を囲っており、外部からの水分(湿気)の浸入を防止して、熱電モジュール30を水分から保護している。四隅のボルト11は、Oリング17の外側に位置してコーナー部分に近接し、他の12本のボルト12は、Oリング17の内側に位置している。
【0032】
ボルト12がOリング17の内側に位置して冷却板20を貫通していることから、図6にも示すように、この貫通部分に対応して小さな円形のOリング18が配置されている。全てのOリング18は、Oリング17の内側に配置され、ボルト12の周りがOリング18でシールされることで、貫通部分から浸入する水分から熱電モジュール30を保護している。Oリング17,18の材質としては、耐熱性に優れたフッ素系のゴムが採用されている。
【0033】
ボルト11に挿通されたコイルばね15は、熱変形により離間し易い受熱板10および冷却板20の四隅を付勢しており、Oリング17のコーナー部分を確実に押圧し、Oリング17と受熱板10および冷却板20との密着状態を良好に維持させている。これに対してボルト12に挿通されたコイルばね16は、受熱板10および冷却板20を付勢することで、熱電モジュール30を確実に挟持するとともに、受熱板10および冷却板20とOリング17の直線部分との密着状態、およびOリング18との密着状態を維持するように機能する。また、それらのコイルばね15,16により、受熱板10の熱による反り等が確実に抑制されるようになっている。
【0034】
〔冷却板の構造〕
図3、図7に示すように、冷却板20の内部には、冷却水を流す冷却水回路21が設けられている。詳細な図示を省略するが、冷却板20は2層構造であり、一方の層を形成する板材には、一連の溝が長辺に対して略平行で、かつ短辺側の辺縁近くで折り返されて蛇行するように設けられ、この溝を他方の層を形成する板材で覆うことで、両板材の間、すなわち冷却板20の内部に冷却水回路21が設けられる。両板材は、外周部分でろう付けされて一体に固着される。
【0035】
冷却板20の上面には、冷却水回路21の一端に対応した位置に流入口22が立設され、他端に対応した位置に排出口23(図4、図5に図示)が立設されている。流入口22および排出口23にはそれぞれ、冷却水ブロック65からの図示しない供給ホースおよび戻しホースが接続される。
【0036】
冷却板20の裏面を示す図7において、冷却板20の四隅には、前述したボルト11が挿通される挿通孔24が設けられ、冷却板20の内部側の12箇所には、ボルト12が挿通される挿通孔25が設けられている。また、冷却板20の裏面には、四隅の挿通孔24の内側に近接させて位置決めピン26が突設され、長辺側の辺縁には4本の位置決めピン27が、短辺側の辺縁の中央位置には位置決めピン27がそれぞれ突設されている。これらの位置決めピン26,27の外側を通るようにOリング17が配置される。
【0037】
加えて、冷却板20の裏面側には、熱電モジュール30用の多数の位置決めピン28が突設されている。図8に示すように、平面視で略正方形とされた板状の熱電モジュール30は、その3辺の中央部分がそれぞれ位置決めピン28に当接され、位置決めされる。
【0038】
以上に説明した位置決めピン26〜28が冷却板20側に設けられるのは、冷却板20が熱による伸縮が殆どなく、Oリング17,18や熱電モジュール30の位置決め状態を良好に維持できるからである。
また、冷却板20の外周端面には、図示しない帯状の金属板が設けられ、この金属板により受熱板10と冷却板20との間の隙間を覆い、Oリング17への熱影響を軽減させている。
【0039】
〔熱電モジュール〕
図8(A)、(B)において、熱電モジュール30は、複数の熱電素子36をそれぞれ板状の受熱面部37および冷却面部38で挟持した構造である。すなわち、熱電モジュール30では、受熱面部37の内側面に受熱側電極37Aが配置され、冷却面部38の内側面に冷却側電極38Aが配置されており、P型の熱電素子36AおよびN型の熱電素子36Bの受熱面部37側の端面が受熱側電極37Aに接続され、P型の熱電素子36AおよびN型の熱電素子36Bの冷却面部38側の端面が冷却側電極38Aに接続されている。P型の熱電素子36AとN型の熱電素子36Bとが交互に受熱側電極37Aおよび冷却側電極38Aを介して電気的に直列接続されることにより、熱電モジュール30が構成されている。
【0040】
このような熱電モジュール30は、受熱板10および冷却板20の長辺に対して平行に4列、短辺に対して平行に4列の合計16枚が同一平面内に配置されている。短辺に対して平行な4枚の熱電モジュール30のうち、隣接する2枚の熱電モジュール30同士が近接配置されている(図4も参照のこと)。熱電モジュール30が、表裏に塗布されたグリースを介して受熱板10および冷却板20と接触している。受熱板10が高熱になる時、熱電モジュール30の受熱側電極37Aが熱膨張する。受熱側電極37Aと冷却側電極38Aとの温度差で熱電モジュール30が反り返りを起こす。
【0041】
また、短辺に対して平行であり、図4中の左側の辺縁に沿って配置された4枚の熱電モジュール30(311,312,313,314)を代表して説明すると、隣接する一対の熱電モジュール311,312(および313,314)間では、一方の熱電モジュール311(313)の負極の接続端子と、他方の熱電モジュール312(314)の正極の接続端子とがリード線33で導通されている。熱電モジュール312,313間でも同じである。両端の熱電モジュール311,314では、一方の熱電モジュール314の正極にリード線34が接続され、他方の熱電モジュール311の負極にリード線35が接続されている。つまり、熱電モジュール311〜314は、電気的に直列に接続されている。短辺に対して平行に配置された他の4枚の熱電モジュール30でも同様である。
【0042】
この結果、図4に示す第1列第4行目の熱電モジュール314では、正極からのリード線34は、冷却板20の上面に設けられた図中左端の第1ターミナルブロック36に接続され、第2列第4行目の熱電モジュール324では、リード線34が第2ターミナルブロック37に接続され、第3列第1行目の熱電モジュール331では、リード線34が第3ターミナルブロック38に接続され、第4列第1行目の熱電モジュール341では、リード線34が右端の第4ターミナルブロック39に接続される。これに対して、第1、第2列第1行目の熱電モジュール311,321、および第3、第4列第4行目の熱伝モジュール334,344の負極からの各リード線35は、互いに導通されて1本にされ、中央の第5ターミナルブロック41に接続される。
【0043】
〔ターミナルブロックの構造〕
以下には、図9、図10に基づき第1〜第4ターミナルブロック36〜39,41について説明する。
図9、図10において、第1〜第5ターミナルブロック36〜39,41は、第5ターミナルブロック41を中心として、冷却板20の長辺に平行な中心軸線上で中央に集約されており、それぞれスペーサ43、ターミナル44、および樹脂カバー45を備えている。
【0044】
冷却板20には、第1〜第5ターミナルブロック36〜39,41に対応した位置に貫通孔42が設けられ、この貫通孔42を通して熱電モジュール30からのリード線34,35が上面に引き出される。
【0045】
冷却板20の上面には、貫通孔42を囲うようにフッ素樹脂製で円筒形状のスペーサ43が配置されている。スペーサ43の上部には、導電性を有するステンレス等の金属製で円柱状のターミナル44が設けられている。スペーサ43およびターミナル44は、耐熱性を有する例えばポリイミド樹脂製の樹脂カバー45で覆われている。
【0046】
そして、第1〜第5ターミナルブロック36〜39,41は、冷却板20に直に固定されたアルミ等の金属カバー46で覆われている。樹脂カバー45および金属カバー46はそれぞれ筒状とされ、外周の一部に上部から切り欠かれた切欠開口45A,46Aを有している。また、各カバー45,46の上部側の開口部分は円板状の蓋47,48で塞がれている。樹脂カバー45は、3本のボルト49により蓋47を共締めした状態で冷却板20に固定され、金属カバー46は、2本のボルト51により蓋48を共締めした状態で冷却板20に固定される。
【0047】
ターミナル44の下面には、リード線34,35の先端の端子52がスクリュー53にて固定され、ターミナル44の上面には、外部からの電力線54の端子55がスクリュー56にて結線されている。電力線54は、各カバー45,46の切欠開口部45A,46Aを通して配線される。
【0048】
ここで、冷却板20の上面とスペーサ43の下面との間にはOリング57が介装され、スペーサ43とターミナル44との間にはOリング58が介装され、スペーサ43と樹脂カバー45との間にはOリング59が介装されている。冷却板20と各カバー45,46との間から浸入する水分や、各カバー45,46の切欠開口45A,46Aから浸入する水分は、それらのOリング57〜59で封止され、スペーサ43内に位置する貫通孔42から熱電モジュール30側へ水分が浸入するのを防いでいる。
【0049】
また、樹脂カバー45やOリング57〜59は、金属カバー46で覆われることで、外部からの熱影響、特に遮蔽カバー5からの輻射熱の影響を受けることがない。このように、Oリング57〜59の変形等を防止することで、気密性能を良好に維持できるという効果がある。
【0050】
加えて、金属カバー46が冷却板20の上面に接触していることで冷却されため、金属カバー46自身が輻射熱によって過度に高温になる心配がない。さらに、以上に説明した第1〜第5ターミナルブロック36〜39,41が冷却板20の中央寄りの中心軸線上に集約されていることで、遮蔽カバー5からの距離を稼いで輻射熱の影響を少なくしている。
【0051】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、熱電発電装置1が熱処理炉100に適用されていたが、これに限定されるものではなく、熱源を有する任意の箇所に本発明の熱電発電装置を適用してよい。
【0052】
前記実施形態では、冷却板20には冷却水回路21が設けられ、冷却水にて積極的に冷却されていたが、冷却板は受熱板に対して低温に維持されればよく、冷却水回路等の積極的な冷却手段がない場合でも本発明に含まれる。
【0053】
前記実施形態では、第1〜第5ターミナルブロック36〜39,41に用いられる第1〜第3のOリング57〜59について説明したが、ターミナルブロックの構造によっては、第2のOリングや第3のOリングを省略してもよい。すなわち、ターミナルブロックは、冷却板に取り付けられることから、その構造に関係なく、少なくとも冷却板とターミナルとの間にOリングが介装されていればよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、熱源からの熱を受けて発電を行う熱電発電装置に関して、種々の工業用設備やエンジンにて駆動される自動車、建設機械、鉄道車両などに利用できる。
【符号の説明】
【0055】
1…熱電発電装置、4…熱電発電ユニット、5…遮蔽カバー、6…固定ブラケット、10…受熱板、20…冷却板、30…熱電モジュール、34,35…リード線、36〜39,41…第1〜第5ターミナルブロック、42…貫通孔、43…スペーサ、44…ターミナル、45…樹脂カバー、46…金属カバー、54…電力線、57〜59…第1〜第3のOリング。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱を受ける受熱板と、
前記受熱板よりも低温に維持される冷却板と、
前記受熱板および前記冷却板の間に介装される熱電モジュールとを備え、
前記冷却板には、前記熱電モジュールからのリード線と外部からの電力線との接続箇所であるターミナルブロックが設けられ、
前記ターミナルブロックは、前記冷却板に固定された金属カバーで覆われている
ことを特徴とする熱電発電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の熱電発電装置において、
前記冷却板には、前記リード線を通す貫通孔が設けられ、
前記貫通孔は、前記ターミナルブロックで覆われており、
前記冷却板と前記ターミナルブロックとの間には、前記貫通孔を囲うOリングが介装されている
ことを特徴とする熱電発電装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の熱電発電装置において、
複数の前記ターミナルブロックが前記冷却板の中央寄りに集約して配置されている
ことを特徴とする熱電発電装置。
【請求項4】
請求項3に記載の熱電発電装置において、
前記受熱板、前記冷却板、および前記熱電モジュールを有した熱電発電ユニットと、
前記熱電発電ユニットを覆う金属製の遮蔽カバーと、
当該熱電発電装置を所定の位置に固定する固定ブラケットとを備え、
前記ターミナルブロックは、前記冷却板上に設けられた樹脂製のスペーサと、前記スペーサ上に設けられて前記リード線および前記電力線が結線される金属製のターミナルと、前記スペーサおよび前記ターミナルとを覆う樹脂カバーとを備え、
前記冷却板と前記スペーサとの間には第1のOリングが介装され、
前記スペーサと前記ターミナルとの間には第2のOリングが介装され、
前記スペーサと前記樹脂カバーとの間には第3のOリングが介装されている
ことを特徴とする熱電発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−80884(P2013−80884A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221378(P2011−221378)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(590000835)株式会社KELK (40)