説明

熱電装置

【課題】2つの部材によって挟み込まれている熱電モジュールの寸法のうち、これらの部材により挟み込まれている方向の寸法が異なる場合に、シーリング部材で塞いでいる湿気の進入経路の幅の変動を抑制すること。
【解決手段】熱電装置1は、吸熱器10の面101に接触している物体から吸熱し、熱電モジュール20を通して吸熱した熱を放熱器30へ移動させ、その熱を放熱器30が放熱する。カバー部材40は、放熱器30の面301に接着されている面402と、吸熱器10の側面103に対向するように配置されている側面403とを有する。カバー部材40は、側面103との間に領域2を形成し、その領域2にシーリング部材50が充填されている。熱電モジュール20は、吸熱器10、放熱器30、カバー部材40及びシーリング部材50によって形成される、外部空間4から隔離されている内部空間3に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電装置において湿気による熱電モジュールの劣化を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
吸熱器と放熱器の間に熱電モジュールを配置し、ペルチェ効果によって吸熱器から放熱器へ熱を移動させて吸熱器の温度を調節する技術がある。この熱電モジュールは、結露すると、短絡が発生したり、錆びて劣化したりすることがある。特許文献1には、ペルチェモジュール(熱電モジュール)をケースとチップホルダで挟み、これらのケースとチップホルダとの間の隙間に気密封止用の樹脂を充填した温度制御ユニットが記載されている。また、特許文献2には、熱電モジュールの上下の支持基板の間に、これらの支持基板の両方と接触するようにシール材を設けて、熱電素子を封止する密閉空間を形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3252902号公報
【特許文献2】特開2007−294864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に係る温度制御ユニットのように、2つの部材(ケースとチップホルダ)に挟まれた領域(隙間)をシーリング部材(樹脂)で塞いで湿気の進入を防ぐ場合、この領域における両部材同士の距離が大きいほど、湿気が進入する経路の幅が大きくなり、シーリング部材を通して進入する湿気が増加することになる。一方、熱電モジュールを挟み込んで配置されている部材同士は、その挟み込みの方向における熱電モジュールの寸法が製造時のばらつき等により異なると、その方向における距離が変化することになる。その結果、上記経路の幅が大きくなり、湿気が進入しやすくなる場合がある。
【0005】
特許文献2に係る熱電モジュールでは、上下の支持基板の一部が密閉空間の外側に露出している。この熱電モジュールでは、熱の移動により一方の支持基板の温度が低くなった場合に、その支持基板のうち密閉空間の外側に露出した部分が結露するおそれがある。この結露によって付着した水滴の量が多ければ、上下の支持基板が水滴を介して繋がってしまい、熱が移動してしまうことになる。そうなると、支持基板同士の温度勾配が小さくなり、熱電モジュールとしての性能が低下する。また、熱電素子の寸法が大きくなって上下の支持基板の間の距離が変動すると、シール材と支持基板との間に隙間が生じて熱電素子を封止する効果が損なわれたり、シール材が熱電素子の動きを阻害して熱電素子や熱電素子及び支持基板の接合部を破壊したりする原因になる可能性がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的の1つは、2つの部材によって挟み込まれている熱電モジュールの寸法のうち、これらの部材により挟み込まれている方向の寸法が異なる場合に、シーリング部材で塞いでいる湿気の進入経路の幅の変動を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、熱電モジュールと、第1表面を有し、前記熱電モジュールの一方の面の外周が前記第1表面の外周の内側に位置するようにして当該一方の面に当該第1表面が密着され、当該第1表面を通して前記熱電モジュールと熱を交換する第1熱伝導体と、前記第1表面よりも大きい第2表面を有し、前記熱電モジュールの他方の面の外周が前記第2表面の外周の内側に位置するようにして当該他方の面に当該第2表面が密着され、当該第2表面を通して前記熱電モジュールと熱を交換する第2熱伝導体と、前記第2表面に固定され、前記第1熱伝導体の側面及び前記熱電モジュールの側面の周囲を囲んで当該第1熱伝導体の側面及び当該熱電モジュールの側面と間隔を空けて配置されているカバー部材と、前記第1熱伝導体の側面と前記カバー部材との間に充填されているシーリング部材とを備え、前記熱電モジュールは、前記第1熱伝導体、前記第2熱伝導体、前記カバー部材及び前記シーリング部材によって形成される内部空間であって、外部の空間から隔離されている内部空間に配置されていることを特徴とする熱電装置を提供する。
【0008】
好ましい態様において、前記シーリング部材は、前記第1熱伝導体及び前記第2熱伝導体が自部材を介して接続されることがない領域に充填されている。
他の好ましい態様において、前記第2表面に固定されている前記カバー部材の面には、前記外部の空間側から前記熱電モジュール側にかけて屈曲した溝部が設けられており、前記熱電モジュールと接続し、前記溝部に前記熱電モジュール側から前記外部の空間側にかけて配置されるリード線を備える。
他の好ましい態様において、前記溝部の断面方向の幅のうち少なくとも一部の幅が、前記リード線の太さよりも狭い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、2つの部材によって挟み込まれている熱電モジュールの寸法のうち、これらの部材により挟み込まれている方向の寸法が異なる場合に、2つの部材のいずれかの側面とカバー部材との間にシーリング部材を充填する構成を有しないものに比べて、シーリング部材で塞いでいる湿気の進入経路の幅の変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係る熱電装置の外観図である。
【図2】熱電装置の断面を示す図である。
【図3】矢視III−IIIから見た熱電装置を示す図である。
【図4】溝部を拡大して示す図である。
【図5】リード線が熱電モジュールと接続している部分を拡大して示す図である。
【図6】領域の大きさについて説明するための図である。
【図7】変形例に係るリード線を示す図である。
【図8】変形例に係る熱電装置の断面を示す図である。
【図9】変形例に係る熱電装置の断面を示す図である。
【図10】変形例に係る熱電装置の断面を示す図である。
【図11】領域の大きさを説明するための図である。
【図12】変形例に係る溝部を示す図である。
【図13】変形例に係る蓄積部を示す図である。
【図14】変形例に係る熱電装置を示す図である。
【図15】変形例に係る熱電装置を示す図である。
【図16】変形例に係る熱電装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施形態]
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、実施形態に係る熱電装置1の外観図である。図1を含む以降の図では、互いに直交するX、Y、Zの3軸が方向を表す。図1では、Z軸の正方向側から見た熱電装置1を示している。熱電装置1は、吸熱器10と、熱電モジュール20と、放熱器30と、カバー部材40と、シーリング部材50と、2本のリード線60とを備えている。図1では、吸熱器10に隠れている熱電モジュール20を破線で示している。
吸熱器10は、銅又はアルミニウム等を材料として直方体状に形成されている熱伝導体である。図1では、吸熱器10の6つの面のうちの1つである面101が見えるようになっている。面101は、正方形の面である。吸熱器10は、面101が有する4つの辺のうち直交する2つの辺が、X軸方向及びY軸方向に沿うように配置されている。吸熱器10において面101が面している側を表側とすると、吸熱器10の裏側には、熱電モジュール20が配置されている。
【0012】
熱電モジュール20は、複数の熱電素子と、これらの熱電素子を電気的に接続する電極と、これらの熱電素子及び電極を挟み込む2つの板状の絶縁体とを有し、これらが概ね直方体状となるように形成されている。熱電モジュール20は、6つの面のうちの1つである面201を吸熱器10側に向けて配置されている。面201は、面101よりも面積が小さい正方形の面である。熱電モジュール20は、面201が有する4つの辺のうち直交する2つの辺が、X軸方向及びY軸方向に沿うように配置されている。また、熱電モジュール20は、面201の中心が面101の中心と一致するように配置されている。
放熱器30は、銅又はアルミニウム等を材料として直方体状に形成されている熱伝導体である。放熱器30は、6つの面のうちの1つである面301を吸熱器10側に向けて配置されている。面301は、面101よりも面積が大きい正方形の面である。放熱器30は、面301が有する4つの辺のうち直交する2つの辺が、X軸方向及びY軸方向に沿うように配置されている。また、放熱器30は、面301の中心が面101の中心と一致するように配置されている。
【0013】
カバー部材40は、プラスチックあるいはセラミックスを材料として、図1のZ方向から見たときに吸熱器10及び熱電モジュール20の周囲を囲む形状に形成されている。つまり、ここでいう周囲とは、面101側を含んでおらず、図1では、面101がカバー部材40に隠されることなく現れている。カバー部材40と吸熱器10との間には、領域2が形成されている。領域2は、吸熱器10の角の部分では、各角を中心とした半径A1の円状となっており、それら以外の部分では、半径A1よりも長さが短い幅A2の領域となっている。ここにおいて、領域2の幅とは、領域2を形成している部分における吸熱器10及びカバー部材40の距離をいい、この距離が長いほど、領域2の幅が広いことを表す。カバー部材40は、角の部分が円状となっていることで、他の部分に比べて吸熱器10との間に形成される領域2の幅が広くなっており、吸熱器10又はカバー部材40が形成されたときに設計された寸法と誤差が生じても、その誤差によって吸熱器10の角の部分がカバー部材40と接触しにくくなっている。
シーリング部材50は、エポキシ樹脂、アクリル系樹脂又はシリコン樹脂等の合成樹脂であり、カバー部材40に比べて、透湿性が高い部材となっている。シーリング部材50は、領域2に充填されている。
2本のリード線60は、熱電モジュール20と接続してこれに電力を供給する導線である。
【0014】
図2は、熱電装置1の断面を示す図であり、図1の矢視II−IIから見た熱電装置1を示す図である。吸熱器10は、面101と、面101の反対側の面である面102(第1表面)と、面101及び102と直交する4つの側面103とを有する。吸熱器10は、面101の垂線がZ軸方向に沿うように配置されている。面102は、熱電モジュール20の面201の全体と接着剤(図示せず)によって接着されている。言い換えれば、面102は、面201の外周が面102の外周の内側に位置するようにして面201に接着されている。吸熱器10は、面101を通して面101に接触する物体と熱を交換し、面102を通して熱電モジュール20と熱を交換する。側面103は、上述した領域2に面しており、シーリング部材50と接触している。熱電モジュール20は、面201(一方の面)と、面201の反対側の面である面202(他方の面)と、面201及び202と直交する4つの側面203とを有する。熱電モジュール20は、面201及び202の法線がZ軸方向に沿うように配置されている。また、熱電モジュール20では、Z軸方向の寸法が、X軸方向及びY軸方向の寸法よりも小さい。言い換えれば、熱電モジュール20は、直方体の形状の中でも、面201及び202の面積を側面203の面積に比べて大きくした板状となるように形成されている。面202は、その全体が放熱器30の面301と接着剤(図示せず)によって接着されている。言い換えれば、面301は、面202の外周が面301の外周の内側に位置するようにして面202に接着されている。熱電モジュール20は、上述した電極に対して定められた方向に電流を流すことにより、面201側から面202側に熱を移動させる。また、熱電モジュール20は、Z軸方向の寸法がA4である。
【0015】
放熱器30は、面102よりも大きい面301(第2表面)を有し、面202に接着されているこの面301を通して熱電モジュール20と熱を交換する。また、放熱器30は、面301の裏側に図示せぬ複数の突起(フィン)が設けられた面302を有する。放熱器30は、これらのフィンを通して熱電モジュール20と交換した熱を放熱する。カバー部材40は、放熱器30の面301と接着によって固定されている面402と、吸熱器10の側面103に対向するように配置されている側面403と、側面403の面402と角をなしている側とは反対側の端部と角をなす面401とを有する。つまり、カバー部材40は、側面103及び203の周囲を囲み、かつ、これらの側面103及び203と間隔を空けて配置されている。また、上述した領域2は、側面103とカバー部材40との間に形成されている。また、カバー部材40は、Z軸方向の寸法がA3である。つまり、領域2は、上述のとおり幅がA2であり、長さがA3−A4である。ここにおいて、領域2の長さとは、領域2の幅方向と直交する方向の長さをいい、熱電装置1においては、カバー部材40と熱電モジュール20とのZ軸方向の寸法の差(A3−A4)となっている。シーリング部材50は、領域2(すなわち、側面103とカバー部材40との間)の長さ方向(Z軸方向)の端から端まで充填されている。上述した面101、102、201、202、301、302及び402は、いずれも、X、Yの2軸を含む平面と平行な面となっている。また、側面103及び403は、Z軸に平行な面である。
【0016】
以上の構成により、熱電装置1は、吸熱器10の面101に接触している物体から吸熱し、熱電モジュール20を通して吸熱した熱を放熱器30へ移動させ、その熱を放熱器30が放熱する。また、熱電モジュール20は、吸熱器10、放熱器30、カバー部材40及びシーリング部材50によって形成される空間(以下「内部空間3」という。)に配置されている。この内部空間3は、外部の空間(以下「外部空間4」という。)から隔離されている。このため、内部空間3には、外部空間4から湿気が進入しにくくなっており、熱電モジュール20が湿気によって結露して短絡が発生したり、熱電モジュール20自身が錆びて劣化したりすることを防いでいる。
【0017】
図3は、図2の矢視III−IIIから見た熱電装置1を示す図である。カバー部材40の面402には、熱電モジュール20側(内部空間3側)から外部空間4側にかけて2つの屈曲した溝部70が設けられている。溝部70には、熱電モジュール20と接続しているリード線60がそれぞれ1本ずつ嵌め込まれている。つまり、リード線60は、溝部70によって形成された図2に示す放熱器30の面301と面402との領域を通って、熱電モジュール20側から外部空間4にかけて配置されている。溝部70には、リード線60が嵌め込まれた後にシーリング部材50と同じシーリング部材が充填されており、内部空間3と外部空間4とを隔離するようになっている。
【0018】
図4は、溝部70(図3のV部)を拡大して示す図である。溝部70は、蓄積部71と、内側部72と、外側部73とを有する。蓄積部71は、カバー部材40が半径B1の半球状に窪んでいる部分である。蓄積部71には、カバー部材40が面301に接着により固定される前にシーリング部材が注入され、注入されたシーリング部材を蓄積する。内側部72は、蓄積部71から内部空間3にかけてカバー部材40がX軸方向に沿って窪んでいる部分である。つまり、内側部72は、溝部70における蓄積部71よりも熱電モジュール20側の部分である。内側部72は、幅がB2で、長さ(内側部72及び蓄積部71の境目から内部空間3までの長さ)がB3である。また、内側部72は、断面が半円状(直径がB2の半円)となっている。外側部73は、蓄積部71から外部空間4にかけて、カバー部材40が窪んでいる部分である。つまり、外側部73は、溝部70における蓄積部71よりも外部空間4側の部分である。外側部73は、幅がB4で、長さ(外側部73及び蓄積部71の境目から外部空間4までの長さ)がB5である。また、外側部73は、断面が半円状(直径がB4の半円)となっている。また、外側部73は、Y軸方向に沿って窪んでいる第1外側部73aとX軸方向に沿って窪んでいる第2外側部73bとを有する。溝部70においては、幅B2及びB4は、蓄積部71の直径(B1×2)よりも狭く、幅B4は、幅B2よりも狭い。また、長さB3は、長さB5よりも短い。
【0019】
カバー部材40を放熱器30の面301に接着により固定させる際には、予め溝部70にリード線60を嵌め込んでおく。そして、蓄積部71にシーリング部材を蓄積部71の体積よりも多く注入し、カバー部材40の面402に接着剤(図示せず)を塗布してから、面402を面301に押し付けてこれらの面同士を接着させる。このとき、蓄積部71に注入されたシーリング部材は、蓄積部71に収まりきらないため、内側部72及び外側部73に向けてはみ出す。このシーリング部材は、外側部73に比べて、より幅が広い内側部72の方に多くはみ出す。さらに、外側部73に比べて、内側部72は長さも短いため、蓄積部71からはみ出したシーリング部材が溝部70の外側まで達する場合、まず、内部空間3に達するようになっている。
【0020】
また、第2外側部73bと蓄積部71とは、内部空間3と外部空間4とを最短距離で結ぶ経路を屈曲させた部分となっている。以下では、これらの経路を屈曲させた部分(曲がり角となっている部分)を屈曲部74という。溝部70に嵌め込まれたリード線60は、X軸方向に引っ張ったり押したりする力が加わった場合でも、この屈曲部74において摩擦による抵抗を受けるため、屈曲部74が設けられていない構成(比較構成1という。)に比べて、その力が加わっている方向に移動しにくくなっている。そのため、熱電装置1においては、比較構成1に比べて、内部空間3側に出ているリード線60の長さが、熱電モジュール20と接続するために必要な長さの分だけ確保されやすくなり、カバー部材40を放熱器30に接着により固定する際に位置合わせがしやすくなる。また、熱電装置1では、各部材を取り付けた後においても、比較構成1に比べて、リード線60に力が加わったときに、移動したリード線60が熱電モジュール20を引っ張ってその位置をずらすといったことが起こりにくい。以上のとおり、熱電装置1においては、比較構成1に比べて、吸熱器10の周囲のいずれの位置においても領域2の幅を一定に保ちやすくなり、一部の位置で領域2の幅が大きくなって湿気が進入しやすくなるということを生じにくくすることができる。
【0021】
図5は、リード線60が熱電モジュール20と接続している部分(図3のW部)を拡大して示す図である。図5(a)では、Y軸方向に見たW部を示しており、図5(b)では、Z軸方向に見たW部を示している。リード線60は、熱電モジュール20側の端部で露出している金属線61を有する。熱電モジュール20は、熱電素子部21と、電極22、23と、板状の絶縁体24、25とを有する。熱電素子部21は、p型熱電素子及びn型熱電素子の組を複数有する。電極22、23は、p型熱電素子及びn型熱電素子が電気的に直列となるように接続している。詳細には、電極22は、同じ組のp型熱電素子及びn型熱電素子をZ軸の正方向側で接続し、電極23は、隣の組同士のp型熱電素子及びn型熱電素子をZ軸の負方向側で接続している。絶縁体24は、電極22とZ軸の負方向側で接触するように配置され、絶縁体25は、電極23とZ軸の正方向側で接触するように配置されている。
【0022】
本実施形態では、熱電素子部21が、金属線61に比べてZ軸方向の寸法が小さいものであるため、直接電極22に接合すると、金属線61が絶縁体25に接触してこれらの間で熱が伝達するおそれが生じる。このため、熱電装置1においては、電極22と金属線61とを中継する中継線80を介して、これらを電気的に接続する。中継線80は、一方の端部に平板状の平板部81を有している。中継線80は、平板部81側の端部が金属線61と接合され、他方の端部が電極22と接合されている。このように、本実施形態においては、中継線80を介すことで、電極22、23が短絡するおそれをなくすことができる。また、金属線61を接合する部分が平板部81の平らな部分であるため、これらを半田付けする際に金属線61が安定した状態となり、中継線80が平板部81を有していない場合に比べて、作業がしやすくなる。また、中継線80と金属線61とを直接接合するため、中継線80と金属線61との間に基板やコネクタを設ける必要がない。
【0023】
熱電装置1においては、シーリング部材50と、カバー部材40とを介して吸熱器10及び放熱器30が繋がっているため、吸熱器10及び放熱器30の隙間をシーリング部材50のみで充填する構成に比べて、放熱器30から吸熱器10までの距離が長くなり、熱が伝達しにくく(戻りにくく)なっている。
また、熱電装置1においては、金属で形成されている吸熱器10及び放熱器30とプラスチックあるいはセラミックスで形成されているカバー部材とに比べて、シーリング部材50が、透湿性が高くなっている。そのため、シーリング部材50を通る経路、すなわち領域2を通る経路からが、湿気を内部空間3に最も進入させやすくなっている。逆に言えば、熱電装置1においては、領域2の幅を狭くするほど、湿気を内部空間3内に進入させにくくすることができる。
【0024】
図6は、領域2の幅の広さについて説明するための図である。図6(a)では、図2で示した領域2の一方を拡大して示している。領域2は、その幅の広さ、すなわち、X軸方向の長さが、図1、2で示したとおりA2である。また、カバー部材40は、Z軸方向の寸法がA3であり、熱電モジュール20は、Z軸方向の寸法がA4である。領域2は、Z軸方向の長さがA3−A4である。これに対し図6(b)では、図6(a)の熱電モジュール20に代えてZ軸方向の寸法がA5である熱電モジュール20xを備えている熱電装置1xを示している。この寸法A5は、図6(a)の寸法A4よりも長さD1だけ大きい。この場合、放熱器30の面301からの吸熱器10の高さがD1高くなり、領域2のZ軸方向の長さがD1だけ短くなる。一方、熱電モジュール20のZ軸方向の寸法が異なっていても、吸熱器10及びカバー部材40のX軸方向における配置は変わらないため、領域2のX軸方向の長さはA2のまま変わらない。
【0025】
また、図6(c)では、図6(a)のカバー部材40に代えてZ軸方向の寸法がA6であるカバー部材40yを備えている熱電装置1yを示している。この寸法A6は、図6(a)の寸法A3よりも長さD2だけ小さい。この場合も、図6(b)に示したのと同様に、領域2のX軸方向の長さはA2のまま変わらない。このように、熱電装置1では、熱電モジュール20の寸法が異なっていても、領域2の幅の広さ(X軸方向の長さ)が変わらない。また、熱電装置1では、カバー部材40の寸法が異なっていても、その違いがZ軸方向に対するものであれば、領域2の幅の広さが変わらない。この領域2の幅の広さとは、外部空間4から内部空間3に湿気が進入する際の経路(進入経路)の太さである。つまり、本実施形態によれば、熱電モジュール20の寸法のうち、吸熱器10及び放熱器30により挟み込まれている方向(すなわちZ軸方向)の寸法が異なる場合に、シーリング部材50で塞いでいる湿気の進入経路の太さを変動させないようにすることができる。
【0026】
[変形例]
上述した実施形態は、本発明の実施の一例に過ぎず、次のように種々の応用・変形が可能であり、また、必要に応じて組み合わせることも可能である。
【0027】
(変形例1)
平板部81は、上述した実施形態では、中継線80に設けられていたが、これには限らない。例えば、リード線60の金属線61に設けられていてもよい。
図7は、本変形例に係るリード線60aを示す図である。リード線60aが有する金属線61aは、平板状の平板部62を有している。一方、中継線80aは、実施形態に係る中継線80と異なり、平板部81を有していない。この場合も、中継線80と金属線61とを接合する部分が平板部62の平らな部分であるため、これらを半田付けする際に中継線80aが安定した状態となり、金属線61aが平板部62を有しない場合に比べて、作業がしやすくなる。また、中継線80aと金属線61aとを直接接合するため、ここに基板やコネクタを設ける必要がない。
【0028】
(変形例2)
吸熱器10及び放熱器30においては、上述した実施形態では、熱電モジュール20の面201(一方の面)の全体と接着する面102(第1表面)よりも、面202(他方の面)の全体と接着する面301(第2表面)の方が面積が大きかったが、この関係は反対であってもよい。
図8は、本変形例に係る熱電装置1bの断面を示す図である。熱電装置1bにおいては、放熱器30bの面301b(第1表面)よりも吸熱器10bの面102b(第2表面)の方が面積が大きい。この場合、熱電モジュール20の面202(一方の面)の全体が面301bと接着されており、面201(他方の面)の全体が面102bと接着されている。また、カバー部材40は、溝部70が設けられている面402が面102bと接着されている。また、カバー部材40の側面403と放熱器30bの側面303との間には領域2bが形成されている。領域2bには、シーリング部材50が充填されている。熱電装置1bにおいても、上述した実施形態同様、熱電モジュール20の寸法が異なっていても、領域2bの幅の広さが変わらないし、また、カバー部材40の寸法が異なっていても、その違いがZ軸方向に対するものであれば、領域2bの幅の広さが変わらない。つまり、本変形例によれば、領域2の幅の広さが、熱電モジュール20及びカバー部材40の寸法の相違によって影響を受けにくくすることができる。
【0029】
(変形例3)
吸熱器10の側面103は、上述した実施形態では、熱電モジュール20と接着されている面102に対していずれも直交していたが、これに限らす、直交しない面を含んでいてもよいし、直交する面を含んでいなくてもよい。
図9は、本変形例に係る熱電装置1cの断面を示す図である。熱電装置1cは、吸熱器10c、カバー部材40c及びシーリング部材50cの形状が、実施形態に係る熱電装置1と異なっている。吸熱器10cは、熱電モジュール20に接着されている面102cと側面103cとが直交しておらず、これらの面が90度以外の角度をなしている。図9の例では、2つの側面103c同士は互いに平行であり、断面が平行四辺形となっている。図9に示す断面は、X軸方向及びZ軸方向の両方に平行となる平面(XZ平面という。)と吸熱器10cとが交わってできる断面のひとつである。吸熱器10cにおいては、XZ平面と交わる位置をY軸方向にずらした場合、いずれの位置にずらしてもその断面が平行四辺形となる。図9では、側面103cに沿った方向を指している矢印E1を示している。また、カバー部材40cは、側面403cが側面103cと平行になるように形成されている。つまり、側面403cも、矢印E1が示す方向に沿っている。側面103cと側面403cとに挟まれた領域2cの幅の広さ、すなわち、側面103cと側面403cとの距離は、A7である。また、シーリング部材50cは、この領域2cに充填されている。以上のとおり構成されている熱電装置1cにおいては、熱電モジュール20のZ軸方向の寸法が異なっていても、吸熱器10cを矢印E1の方向にずらすことで、領域2cの幅の広さをA7のまま変えることなく吸熱器10c及びカバー部材40cを配置することができる。要するに、吸熱器は、例えば、吸熱器10cのように、XZ平面(YZ平面でもよい。)と交わってできる断面が同一の形状となるものであればよい。なお、吸熱器10cは、XZ平面と平行になる側面(図9におけるY軸方向に手前側と奥側の側面)を有することになり、これらの面は、面102と直交することになる。
【0030】
また、本変形例に係る吸熱器は、面102に直交する側面を含んでいなくてもよく、要するに、ある方向にずらしたときに、カバー部材との間の領域の幅の広さを変えることなく吸熱器及びカバー部材を配置することができるようになっていればよい。そのためには、吸熱器の側面が、互いに平行な直線の集合で表される面となっていればよい。以下では、これらの直線が沿っている方向を「側面方向」という。例えば、上述した吸熱器10cも、各側面が互いに平行な直線の集合で表される面となっており、矢印E1の方向が側面方向となっている。このような形状の吸熱器においては、XY平面と交わってできる断面のうち端部が全て側面と重なる断面の形状は、Z軸方向の位置に関わらずいずれも同一となる。この場合、カバー部材は、内側の側面、すなわち吸熱器の側面に対向する面が吸熱器の側面と平行になるように形成して、吸熱器及び熱電モジュール20を囲うように配置すればよい。これにより、熱電モジュール20のZ軸方向の寸法が異なっていても、吸熱器を側面方向にずらして配置することで、吸熱器及びカバー部材の間の領域の幅の広さが変わらないようにすることができる。つまり、本変形例においても、上述した本実施形態と同様に、熱電モジュールのZ軸方向の寸法が異なる場合に、シーリング部材で塞いでいる湿気の進入経路の太さを変動させないようにすることができる。
【0031】
(変形例4)
上述した変形例3では、吸熱器10cは、側面103cが、互いに平行な直線の集合となるような形状であったが、これには限らない。
図10は、本変形例に係る熱電装置1dの断面を示す図である。熱電装置1dは、吸熱器10dの側面103dが、吸熱器10dの熱電モジュール20に接着されている面102dと直交していないという点で図9の例と共通するが、吸熱器10dの断面が台形となっているという点で図9の例と異なる。この場合も、カバー部材40dの内側の側面403dが吸熱器10dの側面103dと平行になるように、カバー部材40dは形成されている。側面103dとカバー部材40dとの間に形成されている領域2dには、シーリング部材50dが充填されている。本変形例においては、例えば、熱電モジュール20のZ軸方向の寸法が大きくなると、吸熱器10dとカバー部材40dとの間の領域2dの幅が狭くなる。
【0032】
図11は、領域2dの幅の広さを説明するための図である。図11では、熱電モジュール20のZ軸方向の寸法が長さD3だけ小さくなった場合に、領域2dの幅の広さ、すなわち側面103dと側面403dとの距離がA8からA9に変化した状態を、模式的に示している。この例では、側面103dと面102dとがなす角度をθとする。熱電装置1dでは、側面103dが同じ方向に沿っているわけではないので、吸熱器10dをZ軸方向にずらす場合に、X軸方向又はY軸方向のいずれかの方向にも同時にずらしてしまうと、そのずらした方向の領域の幅が狭くなる。そのため、熱電装置1dでは、吸熱器10dの位置をZ軸方向に沿った矢印E2が指す方向にのみずらすことになる。図11では、ずらす前の吸熱器10dを二点鎖線で示している。この場合、上記距離A8及びA9の関係は、角度θ及び長さD3を用いて、次式(1)、(2)のように表される。
【0033】
【数1】

式(2)は、式(1)の両辺にcos(θ)を乗じたものである。θは、吸熱器10dの角をなす角度であるため、0度より大きく、180度より小さい値を取り得る(ここでは、角における角度が180度を超える吸熱器は考慮しない。)。この場合、cos(θ)は、−1より大きく1より小さい値となり、A9は、A8−D3より大きくA8+D3より小さい値となる。A9=A8、すなわち、領域の幅の広さが変わらないことになるのは、θ=90度の場合(つまり、側面103が面102(第2表面)に対して直交する場合)であり、上述した実施形態の場合がこれに相当する。上記範囲においては、角度θがどのような値であっても、吸熱器がZ軸方向に移動する距離D3に比べて、領域の幅の広さが変動する長さ、すなわち、D3×cos(θ)が小さくなる。これは、言い換えれば、側面103が面102に対して角度をなしていれば、このような関係が成り立つということである。側面103が、面102と角度をなさない部分、つまり、面102と平行な部分を有していると、その部分は距離D3と同じだけ領域の幅の広さが変わることになる。このように、本変形例によれば、Z軸方向の寸法が異なる熱電モジュール20が用いられる場合であっても、吸熱器とカバー部材との間の領域の幅の広さが変化する量を、これらのZ軸方向の寸法の差よりも小さくすることができる。言い換えれば、熱電モジュールの寸法のうち、吸熱器及び放熱器により挟み込まれている方向(すなわちZ軸方向)の寸法が異なる場合に、シーリング部材で塞いでいる湿気の進入経路の太さの変動を抑制することができる。
【0034】
(変形例5)
溝部70は、その断面方向の幅のうち少なくとも一部の幅がリード線60の太さよりも狭くなっていてもよい。ここでいう断面方向とは、溝部70の断面に沿った方向のことである。
図12は、本変形例に係る溝部70eを示す図である。溝部70eは、カバー部材40eの面402eに設けられている。溝部70eは、リード線60の太さ(直径)C1に比べて狭い幅B6となっている締め付け部75を有している。幅B6を示す矢印の方向は、前述した溝部70eの断面方向を表している。太さC1と幅B6との差は、リード線60の被膜が圧縮されたときに変形可能な変形量程度である。このため、締め付け部75にリード線60を嵌め込むと、被膜が圧縮されて、その圧縮により被膜に加わっている力で被膜が締め付け部75を押し返すため、リード線60と締め付け部75との間に周囲に比べて強い摩擦力が働く。本変形例によれば、この摩擦力により、リード線60が固定され、リード線60がX軸方向に引っ張られてもリード線60が溝部70eに対してずれにくくなる。また、リード線60と溝部70eとの隙間が小さくなるため、締め付け部75を設けない場合に比べて、内部空間3に湿気が進入しにくくなる。なお、締め付け部75においては、リード線60の被膜が変形しなくとも、締め付け部75が変形してもよい。また、締め付け部75を溝部に複数設けてもよい。
【0035】
(変形例6)
溝部70は、図4で示した蓄積部71の半径B1、内側部72の幅B2及び長さB3、外側部73の幅B4及び長さB5を、それぞれ様々な長さとしてもよいものである。蓄積部71の半径B1は、直径B1×2が幅B2、B4のいずれよりも長くなっていれば、どのような長さであってもよい。また、幅B2、B4及び長さB3、B5は、例えば、内側部72及び外側部73が半円状の断面を有し、リード線60の直径がC1である場合に、次の式(3)で表される関係を満たすようになっていればよい。
【0036】
【数2】

式(3)は、内側部72の断面積からリード線60の断面積を減じたもの、すなわち、内側部72においてシーリング部材を満たすことが可能な隙間の断面積を長さで除した値が、外側部73における同様の値よりも大きいことを表している。この断面積が大きいほど、蓄積部71に注入されているシーリング部材が流れ込みやすくなり、かつ、溝部70を移動しやすくなる。つまり、この式(3)が満たされるということは、シーリング部材が流れ込みやすいこと、又は出口(内側部72の熱電モジュール20側の端部)までの長さが短いことのいずれか(もしくは両方)の理由により、内側部72は外側部73に比べてシーリング部材が出口まで到達しやすいということを表している。このため、カバー部材40を放熱器30に接着により固定したときに、蓄積部71に注入されたシーリング部材は、外側部73の方よりも、内側部72の方から外部にあふれ出しやすい。本変形例によれば、シーリング部材は、内部空間3に比べて外部空間4の方にはあふれ出しにくいため、熱電装置の外観を損ねないようにすることができる。
【0037】
(変形例7)
溝部70には、上述した実施形態では、屈曲部74が1箇所設けられていたが、2箇所以上設けられていてもよいし、反対に1箇所も設けられていなくともよい。そして、望ましくは、溝部には、屈曲部74が多く設けられているほどよい。溝部に設けられている屈曲部が多いほど、リード線60に加わる摩擦力が大きくなり、屈曲部が設けられていない場合に比べてリード線60が移動しにくくなる。なお、蓄積部71は、上述した実施形態では、屈曲部74の角にあたる箇所に形成されていたが、溝部70が直線状となっている箇所に形成されてもよい。この場合、外側部73が2箇所角を有する(つまり屈曲部が外側部のみにより形成される。)ようにしてもよいし、内側部72と外側部73とが1箇所ずつ角を有する(つまり、内側部、蓄積部及び外側部により屈曲部が形成される。)ようにしてもよい。
【0038】
(変形例8)
吸熱器10、熱電モジュール20及び放熱器30においては、上述した実施形態では、各面101、102、201、202、301、302及び402の形状が、いずれも正方形であったが、これには限らず、長方形、平行四辺形等であってもよいし、三角形、五角形等の四角形以外の多角形、又は円形、楕円形等の曲線を含む形状であってもよい。要するに、熱電モジュール20の面(実施形態では201、202)の全体が吸熱器10の面(実施形態では102)及び放熱器30の面(実施形態では301)と接着されていればよい。これにより、熱電モジュール20は、吸熱器10及び放熱器30と接着されている面の全体でこれらと熱を交換することができる。
【0039】
(変形例9)
カバー部材40は、上述した実施形態では、Z軸方向の寸法が、吸熱器10のZ軸方向の寸法と熱電モジュール20のZ軸方向の寸法とを足した長さ(以下、合計長という。)よりも小さかったが、これに限らず、この合計長と同じであってもよいし、この合計長よりも大きくしてもよい。カバー部材40のZ軸方向の寸法は、少なくとも熱電モジュール20のZ軸方向の寸法よりも大きければよく、望ましくは、上記合計長未満であり、かつ、合計長に近いほどよい。この合計長に近いほど、領域2に充填されるシーリング部材50の長さ(図2におけるシーリング部材50のZ軸方向の寸法)を大きくすることができるようになり、外部空間4から内部空間3に湿気が進入しにくくなるようにすることができる。また、Z軸方向の寸法が異なる熱電モジュールを熱電装置が備えたときに、シーリング部材50の長さが大きいほど、この長さに対してこれらの寸法の差が相対的に小さくなる。このため、これらの寸法が異なっていても、シーリング部材50の長さはそれほど変わらない、ということになる。つまり、シーリング部材が湿気の進入を防いでいる度合いが、熱電モジュール20のZ軸方向の寸法の変動によって受ける影響を少なくすることができる。
【0040】
(変形例10)
吸熱器10及び放熱器30は、上述した実施形態では、それぞれ吸熱及び放熱を行ったが、これらの役割は反対であってもよい。言い換えれば、熱電モジュール20に実施形態とは反対向きの電流を流して、Z軸の正方向に熱が移動させられるようにしてもよい。この場合、放熱器30が接触する物体から熱が吸収され、熱電モジュール20から移動されてきた熱を吸熱器10が放熱することになる。
【0041】
(変形例11)
熱電モジュール20は、上述した実施形態では、面201の全体及び面202の全体を、面102及び面301とそれぞれ接着剤によって接着させたが、これには限らない。例えば、熱電モジュール20は、各面(面201、202)をグリスによって面102及び面301とそれぞれ接着させてもよいし、全体ではなく各面の一部を接着させるようにしてもよい。要するに、面201は、面201の外周が面102の外周の内側になるようにして接着されていればよいし、面202は、面202の外周が面301の外周の内側になるようにして接着されていればよい。接着剤やグリスの代わりに、接着テープやハンダを用いてもよい。接着することによって固定してもよいが、弱い接着力のものによって動かない程度に配置されていてもよい。吸熱器10の自重やシーリング材50の接着力によって動かなければ接着剤を用いなくてもよい。すなわち上記各面が密着していればよい。
【0042】
(変形例12)
リード線60は、上述した実施形態では、溝部70を通って熱電モジュール20側から外部空間4にかけて配置されていたが、これに限らない。例えば、カバー部材40の側面403に外部空間4まで貫通する穴を開け、その穴を通してリード線60を配置させてもよい。また、熱電装置1では、吸熱器10又は放熱器30に穴を開けてリード線60を通してもよい。いずれの場合も、穴とリード線60との間に例えばシーリング部材を充填して、外部空間4から内部空間3に湿気が入り込みにくいようにすればよい。
【0043】
(変形例13)
カバー部材40は、上述した実施形態では、吸熱器10の側面103の周囲を囲んでこの側面103と間隔を空けて配置されていたが、側面103との間に間隔が空いていない部分(つまり接触している部分)がある場合を除外するものではない。例えば、吸熱器10が熱により膨張し、又は製造時の誤差で通常よりも大きく形成された結果、側面103の一部がカバー部材40と接触することがあっても、熱電装置1においては、熱電モジュール20のZ軸方向の寸法が異なっていても、吸熱器10及びカバー部材40のX軸方向における配置は変わらない。このため、本変形例においても、熱電モジュール20の寸法のうち、吸熱器10及び放熱器30により挟み込まれている方向(すなわちZ軸方向)の寸法が異なる場合に、シーリング部材50で塞いでいる湿気の進入経路の太さを変動させないようにすることができる。
【0044】
(変形例14)
蓄積部71は、Z軸の正方向に伸ばした形状とすることによって、より多くのシーリング材を蓄積できる空間とすることもできる。また、蓄積部71の形状は、上述した実施形態では半球状であったが、円筒状、立方体状又は直方体状であってもよい。
【0045】
(変形例15)
内側部72及び外側部73の断面の形状は、上述した実施形態では半円形であったが、これに限らず、正方形、長方形であってもよい。これらの断面の形状は、要するに、カバー部材40を放熱器30の面301に対して接着により固定させたときに、リード線60を、内部空間3から外部空間4にかけて内側部72及び外側部73を通して配置させることができるようになっていればよい。
【0046】
(変形例16)
リード線60が熱電モジュール20と接続している部分は、上述した実施形態及び変形例1では、図5及び図7にそれぞれ示したように内側空間3に配置されていたが、図13に示すように、この部分が蓄積部71に配置されていてもよい。図13では、蓄積部71fにおいて、リード線60fの端部で露出する金属線61fに設けられた平板部62fと、中継線80fとが接続している状態が示されている。
【0047】
(変形例17)
熱電装置においては、例えば上述した実施形態では、カバー部材と吸熱器との間に形成される領域(図1に示す領域2)の幅がA2と一定であったが、この幅がZ軸方向の途中で変化するようになっていてもよい。
図14は、本変形例に係る熱電装置の一例である熱電装置1gを示す図である。熱電装置1gは、カバー部材40gとシーリング部材50gとを備える。カバー部材40gは、図1に示すカバー部材40のZ軸正方向且つX軸正方向側の角を斜めに切り取った形をしている。以下では、このように切り取られた角の部分が存在していた空間のことを「切り取り空間」という。カバー部材40gの吸熱器10側の側面403gは、放熱器30のZ軸正方向の面301からの高さがA8の位置で切り取られた形になっており、この高さA8は、熱電モジュール20のZ軸方向の寸法A4よりも大きくなっている。これにより、放熱器30及びカバー部材40gにより形成される領域2gのZ軸負方向側の幅は、図1に示す領域2と同様にA2となっている。領域2gの幅は、側面403gよりもZ軸正方向側で次第に大きくなっている。シーリング部材50gは、この領域2gに充填された合成樹脂であり、領域2gと同様の形をしている。
【0048】
図15は、本変形例に係る熱電装置の一例である熱電装置1hを示す図である。熱電装置1hは、カバー部材40hとシーリング部材50hとを備える。カバー部材40hは、カバー部材40gと同様に、カバー部材40のZ軸正方向且つX軸正方向側の角を切り取った形をしている。カバー部材40hでは、切り取られた角の部分の断面が矩形になっているところがカバー部材40gと異なっている。熱電装置1hにおいても、カバー部材40hと吸熱器10の間に形成される領域2hのZ軸負方向側の幅がA2となっており、側面403hよりもZ軸正方向側でこの幅がA2よりも大きくなっている。本変形例に係る熱電装置では、以上のとおり切り取り空間が存在することにより、切り取り空間が存在しない場合に比べて、作業者が指または工具で吸熱器10の側面をつかんで吸熱器10を配置する作業が行いやすくなっている。
【0049】
シーリング部材は、例えば、流動性を持たせた合成樹脂が領域に対して領域のZ軸正方向側から注ぎ込まれ、充填された合成樹脂が固形化することで形成される。本変形例に係る熱電装置の領域は、切り取り空間が存在しない場合に比べて、Z軸正方向側の幅が大きく、合成樹脂を注ぎ込む隙間が大きくなっている。このように、本変形例に係る熱電装置においては、切り取り空間が存在しない場合に比べて、合成樹脂を充填する作業が行いやすくなっている。一方で、領域のZ軸負方向側の幅は実施形態に係る熱電装置1と同じ寸法(A2)となっているため、湿気が内部空間内に進入しにくくなっている。
【0050】
(変形例18)
熱電装置においては、上述した実施形態及び変形例では、シーリング部材が充填されている領域(本発明に係る「領域」に相当するものであり、以下「充填領域」という。)と、カバー部材及び吸熱器の間に形成される領域(実施形態であれば領域2)とが一致していたが、これらは必ずしも一致していなくてもよい。例えば、充填領域(またはシーリング部材)は、内部空間3側や外部空間4側にはみ出していてもよいし、領域2側に引っ込んでいてもよい。いずれの場合も、外部空間4から領域2を介して内部空間3まで至る経路上に必ずシーリング部材が存在するようになっていればよい。これにより、シーリング部材が内部空間3への湿気の侵入を妨げることになる。
【0051】
図16は、本変形例に係る熱電装置の一例である熱電装置1kを示す図である。熱電装置1kは、充填領域6に充填されたシーリング部材50kを備えている。充填領域6は、吸熱器10及びカバー部材40の間の領域2と、内部空間3側にはみ出したシーリング部材50kが充填されている領域(以下「はみ出し領域5」という。)とからなる領域である。熱電装置1kにおいては、はみ出し領域5(または充填領域6)によって吸熱器10と放熱器30とが接続されることがないようになっている。これはつまり、シーリング部材50kは、吸熱器10及び放熱器30が自部材を介して接続されることがない領域(充填領域6のこと)に充填されているということである。シーリング部材によって吸熱器及び放熱器が接続されていると、シーリング部材を介して吸熱器と放熱器との間で熱が移動することになる。このため、このような接続がされていない場合に比べて、吸熱器及び放熱器の間の温度勾配が小さくなり、熱電装置の性能の低下が生じてしまう。上述した実施形態及び変形例はもちろん、本変形例においても、吸熱器及び放熱器がシーリング部材を介して接続されることがないため、このような性能の低下が生じないようになっている。
【符号の説明】
【0052】
1…熱電装置、2…領域、3…内部空間、4…外部空間、10…吸熱器、20…熱電モジュール、30…放熱器、40…カバー部材、50…シーリング部材、51…角部、60…リード線、61…金属線、62、81…平板部、70…溝部、71…蓄積部、72…内側部、73…外側部、74…屈曲部、75…締め付け部、80…中継線、101、102、201、202、301、302、401、402…面、103、203、303、403…側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱電モジュールと、
第1表面を有し、前記熱電モジュールの一方の面の外周が前記第1表面の外周の内側に位置するようにして当該一方の面に当該第1表面が密着され、当該第1表面を通して前記熱電モジュールと熱を交換する第1熱伝導体と、
前記第1表面よりも大きい第2表面を有し、前記熱電モジュールの他方の面の外周が前記第2表面の外周の内側に位置するようにして当該他方の面に当該第2表面が密着され、当該第2表面を通して前記熱電モジュールと熱を交換する第2熱伝導体と、
前記第2表面に固定され、前記第1熱伝導体の側面及び前記熱電モジュールの側面の周囲を囲んで当該第1熱伝導体の側面及び当該熱電モジュールの側面と間隔を空けて配置されているカバー部材と、
前記第1熱伝導体の側面と前記カバー部材との間に充填されているシーリング部材と
を備え、
前記熱電モジュールは、前記第1熱伝導体、前記第2熱伝導体、前記カバー部材及び前記シーリング部材によって形成される内部空間であって、外部の空間から隔離されている内部空間に配置されている
ことを特徴とする熱電装置。
【請求項2】
前記シーリング部材は、前記第1熱伝導体及び前記第2熱伝導体が自部材を介して接続されることがない領域に充填されている
ことを特徴とする請求項1に記載の熱電装置。
【請求項3】
前記第2表面に固定されている前記カバー部材の面には、前記外部の空間側から前記熱電モジュール側にかけて屈曲した溝部が設けられており、
前記熱電モジュールと接続し、前記溝部に前記熱電モジュール側から前記外部の空間側にかけて配置されるリード線を備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の熱電装置。
【請求項4】
前記溝部の断面方向の幅のうち少なくとも一部の幅が、前記リード線の太さよりも狭い
ことを特徴とする請求項3に記載の熱電装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate