説明

燃料、燃料添加剤、燃料添加剤添加方法、液体燃料の燃焼効率向上方法、燃料供給構造、燃料フィルタ、燃焼装置、バーナー、内燃機関および流体燃料の燃焼方法

格別な装置を用いることなく、自動車などの液体燃料燃焼装置の燃焼ガスにおける粒子状物質、一酸化炭素などの有害ガスを低減する液体燃料および液体燃料添加剤である。本発明の液体燃料添加剤は、粉末状若しくは粒子状のトルマリン、トルマリンをコロイド状に分散させた液体等の流体、または一部がコロイド状に分散し残部が微粒子状態にあるトルマリンを有する液体等の流体のうちの少なくともいずれかを含む。この液体燃料添加剤を軽油1リットル当たり0.002グラム添加した燃料をディーゼルエンジン自動車で試験をしたところ、粒子状物質の排出量が16%減少し、一酸化炭素の排出量が10%減少し、最大軸トルクが2.0−3.7%増大した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ガソリン、軽油などの炭化水素系液体燃料、およびその液体燃料に添加され、内燃機関を含む燃焼装置でその液体燃料を燃焼させたとき、該燃焼装置の燃焼効率を向上させ、又は該燃焼装置から生じる燃焼ガスに含有される有害物質を低減する液体燃料添加剤に関する。
【背景技術】
ガソリンエンジンその他の内燃機関の燃料に添加し、或いは燃料に磁気などの何らかの外的な作用を及ぼし、燃焼効率を向上したり、排気ガスの浄化に寄与する燃料改善方式として、各種のものが実用化されている。それらのうちで最も広く普及している製品は、MTBE(日本語名:メチル−t−ブチルエーテル、英語名:METHYL−T−BUTYLETHER)である。MTBEは、エーテルの一種で、酸素分子を含むのでエンジン内で燃焼を良好な状態に保つ能力を有し、ひいては排気ガスによる大気の汚染の低減に寄与する燃料添加剤とされ、米国で広く普及しており、日本でもハイオクガソリンの添加剤として使用されている。
また、燃費を改善するために実用化された各種の燃料改善方式が、2003年(平成15年)3月10日にインターネットで検索されたホームページhttp://web.kyoto−inet.or.jp/people/macchann/index.htmlに、「燃料添加剤の種類(その1)」として紹介されている。この「燃料添加剤の種類(その1)」によれば、現用の燃料改善方式としては、燃焼室の清浄によるもの(ポリエーテルアミン等)、燃焼速度を速めるもの(ナプロGX(商標)等)、電磁波などにより燃料を活性化させるもの(クリスタルc−3000(商標)等)、燃料の分子構造を細分化するもの(各種のバイオ系触媒)、遠赤外線効果により燃料を活性化するもの(パワーアップペイント(商標)等)がある。
これらの燃料改善方式のうちでパワーアップペイントは、ジーアールピー株式会社で製造され、株式会社タステックから販売されおり、また2002年(平成14年)3月1日の日刊産業新聞に「タステック 燃費向上の特殊塗料を発売」なる見出しで紹介されている。同新聞記事によれば、パワーアップペイントは、車両や船舶の燃料タンクの外側に塗布するある種の塗料であり、燃料タンク内の燃料に遠赤外線で作用を及ぼし、燃料を活性化し、燃焼効率を改善し、乗用車や普通トラックの燃料費を10−20%改善し、さらに排気ガスも改善し、環境に寄与する。そして、例えば乗用車では、7000−9000キロメートルの走行で、この塗料の費用が燃費改善の効果で回収できるとされている。
その他のガソリンの添加剤として、ガソリン中の不安定な物質を取り込みガソリンの酸化劣化を防ぐ酸化防止剤が知られている。酸化防止剤としては、例えば住友化学株式会社から販売されているBPA,BPA−M1等がある。
また、ガソリン等の炭化水素混合燃料をオレフィン系や芳香族の炭化水素に添加する方法が特表2001−524153に開示されている。
地球温暖化を防止するために内燃機関や外燃機関から排出される二酸化炭素(CO)の低減は、全ての国において喫緊の課題である。また、大気の環境を保全する為には、ガソリンエンジン自動車およびディーゼルエンジン自動車から排出される窒素酸化物(NO)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、粒子状物質(PM)等の有害物質の低減も、同様に、喫緊の課題である。
ディーゼルエンジン自動車から排出される粒子状物質を減少する装置として、各種のディーゼル排出ガス粒子状物質減少装置が販売されている。また、ガソリンエンジン自動車やディーゼルエンジン自動車から排出される有害物質を低減するために各種の内燃機関(ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等)が開発され、実用化されている。
米国特許4,483,756には、ロッシェル塩(Rochelle salt)、トルマリン(tourmaline)等のピエゾ電気物質(piezoelectric material)であって1ミクロン(10−4cm)のペレット18でなるベッド17を反応室10に詰め、ピストン14でベッド17に圧力を加えながら、入り口12から窒素(N)及び水素(H)を反応室17に導入し、窒素と水素とが反応し、アンモニア(NH)を生成する速度を増大する方法が提案されている。米国特許4,483,756には、ピエゾ電気物質にピストン14で圧力を加えることにより、ピエゾ電気物質を励起し、ピエゾ電気物質に電気エネルギーを発生させ、この電気エネルギーにより反応室10における反応を促進するという反応速度増大の原理が記述されている。
【発明の開示】
上述のMTBEは地下水を汚染することが報道され、大きな社会問題となっている。MTBEは、ガソリンスタンドの地下燃料タンクからガソリンとともに地中に漏れ、地下水を飲料にはできない程度に汚染していることが最近米国で判明したのである。
また、上述のパワーアップペイントについては、燃料タンクの外側に特殊な塗料を塗布するだけで、塗料から輻射される遠赤外線の効果により燃料費が10−20%改善するとされているが、塗料の組成は明らかでないし、単なる塗料から燃料の活性化に有効な程度の遠赤外線が輻射されるのか疑問があるし、しかも金属製のタンクを通して内部の燃料に遠赤外線が果たして有効な程度に到達するのかも疑問である。
上述の特表2001−524153の方法では、ボロン(ホウ素)による還元作用を利用しているが、安価に大量の燃料を還元する方法ではない。
そして、上述の内燃機関だけではなく、ガスタービン、ジェットエンジン、家庭で用いるプロパンガス用バーナー、発電所などの火炉その他の燃焼装置においても、価格において実用可能な手段により燃焼効率を向上することが、炭酸ガス排出量の低減による地球温暖化防止の観点からエネルギー関連業界の社会的な指名となっている。
粒子状物質の主成分は微細な炭素(C)粒子である。そこで、ディーゼル排出ガス粒子状物質減少装置の多くは、ディーゼルエンジン自動車の排気管の途中に設けられ、ディーゼルエンジンから排出される粒子状物質を燃焼させることにより、粒子状物質を二酸化炭素(CO)に変化させ、無害化する方式を採用している。このような方式で粒子状物質を燃焼させるには、粒子状物質を極めて高い温度の環境に置く必要がある。そこで、ディーゼル排出ガス粒子状物質減少装置は、大型にならざるを得ず、また寿命が短く、高価であり、性能を維持するための頻繁な保守作業を必要とする。
一酸化炭素を生成しにくい各種の方式の内燃機関が開発されている。しかし、内燃機関の開発だけでは、軽油やガソリン等などの炭化水素燃料における炭素を完全に燃焼させることは難しく、炭化水素燃料における炭素の不完全燃焼により生じる一酸化炭素を減少させることには、限界があった。
前記米国特許4,483,756に記載の反応速度増大方法では、反応室10にピエゾ電気物質を充填しているから、反応室10を内燃機関における燃焼室とすることはできない。
そこで、本発明は、環境を汚染する虞が無く、燃焼効率に優れ、しかも安価な液体燃料などの流体燃料、微粉炭などの粉状燃料その他の燃料、燃料添加剤、燃焼装置および燃焼方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、格別な装置を用いることなく、自動車などの液体燃料燃焼装置の燃焼ガスにおける粒子状物質、一酸化炭素などの有害ガスを低減する液体燃料および液体燃料添加剤の提供を目的とする。
前述の課題を解決するために本発明は次の手段を提供する。
(1)コロイド状又は微粒子状の内の少なくとも一方の状態でトルマリンを分散してなる液体燃料その他の燃料。
(2)粉末状若しくは粒子状のトルマリン、トルマリンをコロイド状に分散させた液体等の流体、または一部がコロイド状に分散し残部が微粒子状態にあるトルマリンを有する液体等の流体のうちの少なくともいずれかを含む燃料添加剤。
(3)粉末状または粒状のトルマリンでなる燃料添加剤の層に液体燃料の基材を通すことにより、該燃料添加剤をコロイド状に該基材に含有させることを特徴とする液体燃料に対する燃料添加剤の添加方法。
(4)粉末状または粒状のトルマリンの層に液体燃料の基材を通すことを特徴とする液体燃料の燃焼効率向上方法。
(5)液体燃料等の流体燃料の燃料タンクから燃焼室に至る流体燃料の流路にトルマリンを配置し、該流路において該流体燃料を該トルマリンに触れさせるようにしたことを特徴とする内燃機関の燃料供給構造。
(6)液体燃料等の流体燃料を濾過する燃料フィルタにおいて、該流体燃料の流路に粉末状または粒状のトルマリンを配置してなる燃料フィルタ。
(7)燃料の燃焼により発生した熱が伝わる領域であって、しかも該燃焼における酸化などの化学反応に関与する空気、燃料その他の気体が触れる領域にトルマリンを配置したことを特徴とするバーナー、火炉、内燃機関、ジェットエンジン、ガスタービンその他の燃焼装置。
(8)プロパンガスその他の流体燃料または微粉炭その他の粉状燃料を燃焼空域で燃焼させるバーナー、火炉、内燃機関、ジェットエンジン、ガスタービンその他の燃焼装置において、燃焼に起因する熱が伝わる部材にトルマリンを配置し、該トルマリンを包む雰囲気の流体燃料、空気又は流体燃料と空気との混合気が該燃焼空域に供給されるようにしたことを特徴とする燃焼装置。
(9)燃焼室または予燃焼室の気体が触れる空域にトルマリンを配置したことを特徴とする内燃機関。
(10)トルマリンをコロイド状に分散させた流体燃料、若しくはトルマリンをコロイド状に分散させた流体でなる燃料添加剤と流体燃料とを混合した燃料添加剤混合流体燃料を燃焼室に供給し、又はトルマリンをコロイド状に分散させた流体でなる燃料添加剤と流体燃料とを互いに独立の供給路で燃焼室へ供給する流体燃料の燃焼方法。
(11)コロイド状又は微粒子状の内の少なくとも一方の状態でトルマリンを分散してなる液体燃料。
(12)粉末状若しくは粒子状のトルマリン、トルマリンをコロイド状に分散させた液体等の流体、または一部がコロイド状に分散し残部が微粒子状態にあるトルマリンを有する液体等の流体のうちの少なくともいずれかを含む液体燃料添加剤。
(13)トルマリン、アルコール及び水を含む添加剤が基材燃料に添加してあり、
前記トルマリンは、コロイド状又は微粒子状の内の少なくとも一方の状態で前記基材燃料に分散していることを特徴とする液体燃料。
(14)前記基材燃料がガソリンであるとき、前記トルマリンが0.002グラム以上0.03グラム以下、前記アルコールが5ミリリットル以上100ミリリットル以下、前記水が0.1ミリリットル以上5ミリリットル以下の割合で、該基材燃料1リットルに添加してあることを特徴とする前記(13)に記載の液体燃料。
(15)粉末状若しくは粒子状のトルマリンを、アルコール及び水を含む液体にコロイド状に分散させ、または一部を該液体にコロイド状に分散させるとともに、残部を微粒子状態で該液体に含有させてなる液体燃料添加剤。
(16)前記アルコール100ミリリットル当たり、前記水は0.1ミリリットル以上100ミリリットル以下、前記トルマリンは0.002グラム以上1.5グラム以下であることを特徴とする前記(15)に記載の液体燃料添加剤。
(17)前記トルマリンに替えて、他の圧電物質を用いることを特徴とする(1)乃至(16)に記載の燃料、燃料添加剤、燃料添加剤添加方法、液体燃料の燃焼効率向上方法、燃料供給構造、燃料フィルタ、燃焼装置、内燃機関または流体燃料の燃焼方法。
【図面の簡単な説明】
FIG.1は、本発明の一実施の形態の燃料フィルタによる燃焼効率向上構造を示す模式図である。
FIG.2は、本発明の他の実施の形態である家庭用プロパンガスバーナーを示す模式図である。
FIG.3は、粉状のトルマリンを芯の上端に載置したアルコールランプによる水の加温速度、蒸発量試験の構成を示す模式図である。
FIG.4は、粉状のトルマリンを芯の上端に載置し、コロイド状にトルマリンを添加したアルコールを燃料とするアルコールランプによる水の加温速度、蒸発量試験の構成を示す模式図である。
FIG.5は、コロイド状にトルマリンを添加したアルコールを燃料とするアルコールランプによる水の加温速度、蒸発量試験の構成を示す模式図である。
FIG.6は、市販のアルコールを燃料とするアルコールランプによる水の加温速度、蒸発量試験の構成を示す模式図である。
FIG.7は、13モード排ガス試験により得た平均排出ガス量およ最大トルクのデータを示す表である。
【発明を実施するための最良の形態】
次に本発明の実施の形態を挙げ、本発明を一層詳しく説明する。
FIG.1は、本発明の一実施の形態の燃料フィルタによる燃焼効率向上構造を示す模式図である。本図において、1はトルマリン、2は燃料フィルタ、4は灯油容器、5は灯油受け口、6は灯油パイプである。灯油パイプ6の右端は家庭用石油ファンヒータの灯油タンクに繋がっている。灯油容器4、灯油受け口5及び灯油パイプ6は石油ファンヒータの構成部材である。灯油容器4は金属製の5リットル容器である。トルマリン1は325メッシュの粒状であり、トルマリン1の平均粒径は78μm(ミクロン)である。トルマリン1の粒径は78μmを中心に上下に分散している。燃料フィルタ2は、325メッシュよりやや網目が小さい金属製の網である。灯油が燃料フィルタ2に注がれるに連れ、トルマリン1が徐々に灯油に分散し、トルマリン1は灯油の消費に比例して消費される。灯油が燃料フィルタ2を通過する際にトルマリン1は徐々に灯油に分散するが、灯油が燃料フィルタ2を通過するときに短時間に大量に灯油に混入してしまわない程度の大きさに燃料フィルタ2の網目は選んである。燃料フィルタ2上のトルマリン1の量は約0.4グラムであり、燃料フィルタ2の網上に極く薄く層状に堆積されている。燃料フィルタ2及び灯油受け口5の平面形は円形であり、両者は同軸に配置されている。
FIG.1において、灯油容器4は、その開口部4aに螺合されている蓋を手で回して外し、開口4bを燃料フィルタ2に対向させ、内部の灯油が開口4bから流下する姿勢において描いてある。灯油容器4をFIG.1の状態に設定すると、灯油容器4内部の灯油は、トルマリン1及び燃料フィルタ2を通過し、灯油受け口5に流下し、灯油受け口5から灯油パイプ6を経て石油ファンヒータの灯油霧化燃焼部に供給される。灯油パイプ6と石油ファンヒータの灯油霧化燃焼部との間には、燃料ポンプが介在してあり、燃料ポンプの作用により灯油受け口5に注がれた灯油は石油ファンヒータの灯油霧化燃焼部へ安全に移送される。
このようにして石油ファンヒータの灯油タンクに供給した灯油をその石油ファンヒータで燃焼させたところ、灯油の燃焼効率が格段に向上した。試験をした石油ファンヒータは、株式会社日立製作所製であり、予め希望の温度を設定することができる。そして、その石油ファンヒータで希望温度(設定温度と称される)を設定すると、設定温度と設定温度プラス1℃の範囲に室内の温度が安定化される。設定温度は、石油ファンヒータの操作ボタンの手動操作により入力され、マイクロプロセッサ及び温度制御プログラムを備える石油ファンヒータの温度制御システムに記憶され、その温度制御プログラムによる温度制御の目標温度となる。その温度制御プログラムは、単位時間に燃焼させる燃料の量を制御し、室内温度をその設定温度近傍に安定化する。
いま、FIG.1のようにトルマリン1を配置した状態(トルマリン有り状態)と、FIG.1のトルマリン1を除去し、その他の構造を同じとした状態(トルマリン無し状態)とを比べると、次のようなデータが得られた。この比較試験では、石油ファンヒータの暖房運転を開始する前の室内温度は13℃であり、設定温度は17℃とした。
このとき、トルマリン無し状態では、室内温度が13℃から設定温度の17℃まで上昇するのに要した時間は8分であった。他方、トルマリン有り状態では、室内温度が13℃から設定温度の17℃まで上昇するのに要した時間は6分であった。
また、トルマリン無し状態では、温風温度が72.4℃であった。これに対し、トルマリン有り状態では、温風温度が75.5℃であった。
更に、トルマリン無し状態では、室内温度は、設定温度の17℃を超えて18℃まで一旦上昇し、5分間で17℃に戻った。他方、トルマリン有り状態では、室内温度は、設定温度の17℃を超えて19℃まで上昇し、19℃を9分間維持し、17℃に戻った。
また、トルマリン無し状態では、湿度は、20%になった。他方、トルマリン有り状態では、湿度は24%になった。
以上に述べた石油ファンヒータの実験から、トルマリン有り状態における灯油の燃焼効率は、トルマリン無し状態における灯油の燃焼効率に比べ、著しく高いことが分かる。トルマリン有り状態では、灯油がトルマリン1の層を通過する際に、トルマリン1がコロイドとして僅かに灯油に分散し、燃焼の工程においてコロイド状のトルマリンが触媒的に作用し、燃焼効率を著しく向上したと考えられる。
燃焼の工程におけるトルマリンの触媒的作用がどのようなものであるか、すなわちトルマリンが灯油の燃焼効率を向上する原理は、明確ではない。トルマリンに空気流が触れたときにマイナスイオンを発生すると言われており、トルマリンを利用することによりマイナスイオン発生機能を付与した空気清浄機、ヘアードライヤー等が多数市販されている。空中のマイナスイオンは、健康の向上に有用であるとされている。また、トルマリンには焦電効果(pyroelectric effect)があり、トルマリンは温度変化を受けると自発分極と呼ばれる電気分極を生じ、トルマリンの表面に電荷が現れる。コロイド状に灯油に分散したトルマリンは、微粒子であり、石油ファンヒータの燃焼室で急速に熱せられ、しかも燃焼室内で対流により位置を変える際に急激な温度変化を受けるので、焦電効果により大きな電気分極を生じると考えられる。この電気分極における正電極と負電極との間隔は、コロイド状の微粒子では非常に小さいので、大きな電界が生じ、この電界により燃焼室内の分子が活性化され、或いは多数のマイナスイオンが生成され、その活性化された分子或いはマイナスイオンにより、燃焼効率が向上するとも推測される。
次に、粒径0.8ミクロンの微粉状のトルマリン0.03グラムを5リットルの灯油に混入し、石油ファンヒータで燃焼する実験をした。このとき、暖房前の室内は温度13℃、湿度22%であり、設定温度は17℃とした。室内温度が13℃から17℃まで上昇するのに要した時間は6分20秒であり、その後も室内温度は上昇を続け、19℃まで上昇して安定化し、そのまま継続した。温風の温度は81.0℃であった。石油ファンヒータが室内温度を設定温度の17℃に安定化できなかった理由は、燃焼の火力が温度制御プログラムの設計値を超えており、石油ファンヒータの温度制御システムが燃料の供給を最低値に絞っても、室内温度が設定値を超えてしまったと考えられる。
その後、石油ファンヒータを消し、同一の温度及び湿度の条件に室内を戻し、設定温度を17℃とし、トルマリンを添加しない灯油を同一の石油ファンヒータで燃焼し、部屋の暖房をしたところ、室内温度が17℃まで上昇するのに要した時間は8分0秒であり、温風の温度は72.4℃であり、室内温度は17℃にまで上昇し安定化した。
この実験化から、微細な粉状のトルマリンを灯油に添加することにより、灯油の燃焼効率が格段に向上することが分かる。
次に、0.8ミクロンの微粒状のトルマリン0.02グラムを10リットルのガソリンに添加し、トルマリン微粒子をコロイド状に分散させたトルマリン添加ガソリンを生成した。そして、そのトルマリン添加ガソリンを、250ccの自動2輪車に燃料として供給し、自動2輪車の走行実験を行った。この自動2輪車のエンジンは、4サイクルであり、燃料とは別のタンクから潤滑油を供給する方式である。コロイド状のトルマリンを添加したガソリン(トルマリン添加ガソリン)を燃料としたときと、トルマリン1を添加しないガソリン(トルマリン無添加ガソリン)を燃料としたときとを比べると、トルマリンを添加することによるガソリンの燃焼効率の向上を証する次のようなデータが得られた。
トルマリン無添加ガソリンでは排気ガスの温度(マフラーの温度)が178℃であったが、トルマリン添加ガソリンでは排気ガスの温度が200℃以上となり、輻射温度計の計測範囲を超えた。
トルマリン無添加ガソリンに比べ、トルマリン添加ガソリンではラジエータの水温が10℃上昇した。このとき温度は、分解能が0.1℃のデジタル表示温度計で測定した。
自動2輪車の走行速度が100km/hのとき、トルマリン無添加ガソリンでは。エンジン回転数は6,000〜6,050RPMであったのに対し、同一の条件下において、トルマリン添加ガソリンではエンジン回転数は5,900〜5,950RPMであった。つまり、自動2輪車の排気量が増大したのと同様な現象が生じた。なお、ここで用いた回転数測定計器は、分解能50回転のデジタルエンジン回転計である。
アイドリング時のエンジン回転数は、トルマリン無添加ガソリンでは1,350〜1,450RPMであったのに対し、トルマリン添加ガソリンでは1,550〜1,650RPMであった。
燃費は、トルマリン無添加ガソリンでは22.5キロメートル/リットルであったが、トルマリン添加ガソリンでは24.5キロメートル/リットルであり、約9%改善した。ただし、点火タイミング等のエンジンの設定が最適化されていない状態における実験であるから、燃費は更に改善できる可能性が高い。
トルマリン添加ガソリンにおけるこのような燃焼効率の向上の理由は、前述の石油ファンヒータの実験における燃焼効率の向上の理由と同様であると考えられる。ガソリンエンジン等の内燃機関では、燃焼室において爆発的燃焼が繰り返されており、その爆発的燃焼では温度および圧力が極端に急激に変動しており、焦電効果によるトルマリンの電気分極は極めて大きく、トルマリン微粒子近傍では局所的に大きな電界が生じ、ひいては燃焼室内の分子が活性化され、或いはマイナスイオンが多数生成され、その活性化された分子或いはマイナスイオンにより、燃焼効率が向上すると推測される。
急激に変動する圧力は、衝撃であり、振動をともなうのが通常である。トルマリンには、圧電効果(piezoelectric effect)もあるので、圧力の急激な変動がある内燃機関の燃焼室では、トルマリンの電気分極が石油ファンヒータにおけるよりも一層大きい。また、内燃機関の燃焼室における温度の変動範囲は石油ファンヒータにおけるよりも大きいので、この面でもトルマリン添加ガソリンの燃焼効率の向上、ひいてはトルマリン添加ガソリンを燃料とする内燃機関の燃費改善効果は一層顕著である。
トルマリンには還元作用があり、還元作用は食品や飲料水におけるトルマリンの健康増進作用の1つとして各種の文献に既に記述されている。例えば、トルマリンは、水中ではヒドロキシルイオンを発生させ、ヒドロキシルイオンが還元作用を呈することや、クラスタ(分子の塊)を小さくする作用をすることが、例えばインターネットでは東海大学教養学部人間環境学科自然環境課程上原研究サイトに公開されている。更に、トルマリンは、水中および空中で微弱電流を流し、水中では水の電気分解やマイナスイオンの発生をし、空気中においてはマイナスイオンを発生し、電気分解する水量やマイナスイオン量はトルマリンが外界から受ける振動、衝撃、熱、光等の刺激の大きさに比例するとも報告がされている。
上述の実施の形態では、トルマリンは急激な温度変動や急激な圧力変動(振動や衝撃を含む)などによりエネルギーを受けるので、燃焼効率向上の効果を呈するものと考えられるが、さらに燃焼室内の光の量の変動によるエネルギー供給効果が加味されていることも推定される。また、上述の如くトルマリンにはクラスタを小さくする作用、すなわち分子の塊を微小化する作用は報告されている。そこで、燃焼室内で高いエネルギーを得たトルマリンによるクラスタ微小化作用により、燃焼室内の燃料の粒子が微小化され、燃焼の均一化および燃焼速度の増大が図られ、燃焼の均一化および燃焼速度の増大が燃焼効率の向上に寄与していることも考えられる。内燃機関において燃焼の均一化および燃焼速度の増大があれば、燃焼効率が向上するとともに、熱エネルギーを機械エネルギーへ変換する効率(熱機械変換効率)も向上するので、燃費の改善をもたらす。
米国特許(U.S.Patent)No.4,483,756には、圧電物質であるロッシェル塩(Rochelle salt)の微粉末をシリンダー状の反応室に充填し、反応室には気体の取り入れ口と取り出し口とを設け、取り入れ口から気体の水素と窒素を供給し、ピストンによりロッシェル塩を10,000psiで加圧することにより、反応室における水素と窒素の化学反応を促進し、取り出し口からアンモニアを取り出す方法が記載されている。圧電物質(トルマリン)を分散された炭化水素燃料を気体又は霧状で内燃機関の燃焼室に供給するとき、その米国特許No.4,483,756に開示された化学反応促進方法と同様な電気化学的な作用で、炭化水素燃料と酸素との反応が促進され、燃費率の向上がもたらされるとも考えられる。
次に、気体燃料にトルマリンを作用させ、気体燃料の燃焼効率を向上させる実施の形態を説明する。FIG.2は、本発明の他の実施の形態を適用した家庭用プロパンガスバーナーを示す模式図である。10は家庭用プロパンガスバーナー、11は燃料噴出ノズル、12は空気取り入れ孔、13は混合部、14はバーナー孔である。この家庭用プロパンガスバーナー10は、燃料噴出ノズル11から燃料ガスGを混合部13内に高速で噴出させ、そのときに生じる負圧で空気孔12から混合部13内に空気Aを吸い込み、混合部13内で燃料ガスGと空気Aとを混合させ、混合気を生成し、混合気を多数のバーナー孔14から噴出する構造である。
この実施の形態では、325メッシュのトルマリン1が混合部13の底に堆積してある。トルマリン1の量は0.8グラムである。トルマリン1を堆積した家庭用プロパンガスバーナー10は、本発明の一実施の形態である。気体燃料であるプロパンガスをバーナー10で燃焼しときの効果を知るために、家庭用プロパンガスバーナー10に点火し、点火8分後のガスの炎の温度を輻射温度計で計測した。計測点は、バーナー孔14から外方に13cm離れた位置である。使用した輻射温度計は、カシオ・シーパス・ファインダーSPF−10である。
このようなFIG.1の構造(トルマリン1を堆積した家庭用プロパンガスバーナー10)で行った実験によれば、輻射温度計で測定されるプロパンガスの炎の温度は、158℃であった。同様な実験を、トルマリンの無い状態で行ったところ、輻射温度計で測定されるプロパンガスの炎の温度は、142℃であった。以上の実験から、トルマリンをただ混合部13の底に堆積しただけの単純な構造により、プロパンガスの燃焼効率は、相当に向上したことが分かる。バーナー10による燃焼効率効果は前述の石油ファンヒータにおけると同様であり、混合部13の底に堆積してあるトルマリン1が温度変動を受け、その温度変動による焦電効果がプロパンガスの燃焼効率効果をもたらしていると考えられる。
FIG.1の構造でトルマリン1の層に灯油を通し、トルマリンを灯油に添加したとき、トルマリンの重量を燃料に触れさせる前後で計測したところ、殆ど変化がなかった。このように、FIG.1の実施の形態において、トルマリンの消耗は非常に微量であり、トルマリンは流体燃料に対し触媒的に作用し、流体燃料の燃焼効率を格段に向上していることが分かる。そこで、FIG.1の実施の形態の燃焼効率向上構造は、僅かな量のトルマリンを燃料フィルタに載せるだけで実現でき、極めて安価に製造できる。また、この実施の形態により処理した流体燃料には、健康に悪影響のある物質は添加されないから、その流体燃料の燃焼により大気を汚染する虞は全くない。さらに、FIG.1の実施の形態により流体燃料にトルマリンを添加するとき、原料の消耗は僅かであるから、本実施の形態は廃棄物を生じず、環境に対し負荷ともならない。
次に、FIG.3乃至FIG.6を参照して、本発明による燃焼方法の他の実施の形態を説明する。FIG.3は、粉状のトルマリンを芯の上端に載置したアルコールランプによる水の加温速度、蒸発量試験の構成を示す模式図である。FIG.4は、粉状のトルマリンを芯の上端に載置し、コロイド状にトルマリンを添加したアルコールを燃料とするアルコールランプによる水の加温速度、蒸発量試験の構成を示す模式図である。FIG.5は、コロイド状にトルマリンを添加したアルコールを燃料とするアルコールランプによる水の加温速度、蒸発量試験の構成を示す模式図である。FIG.6は、トルマリンを用いない従来の燃焼方法により、市販のアルコールを燃焼するアルコールランプによる水の加温速度、蒸発量試験の構成を示す模式図であり、燃焼場にトルマリン微粒子を存在させる本発明の燃焼方法(FIG.3乃至FIG.5)と比較するために、アルコールランプによる従来の燃焼方法を示している。これら図において、7は粉状トルマリン、8はアルコール、9は水、20はガラス製のアルコールランプ本体、21は綿製の芯、21aは芯21の上端部、22はガラス製の炎口、25は鉄製の三脚、26はセラミック付き金網、27は丸底フラスコである。FIG.3乃至FIG.6における水9、アルコールランプ本体20、芯21、炎口22、三脚25、金網26およびフラスコ27は同一仕様のものである。
水9は日本薬局方の精製水である。アルコール8は、トーヤク株式会社製の燃料アルコール(商標:ネンアル)であり、エチルアルコール63%、メチルアルコール37%である。FIG.3及びFIG.4において芯21の上端に載置した粉状トルマリン7の粒径は0.8ミクロンであり、芯21の上端に配置した粉状のトルマリン7の量は0.05グラムである。FIG.3乃至FIG.6の実験における燃焼開始前には、フラスコ27には水9が100cc、アルコールランプ本体20にはアルコール8が85ccそれぞれ注いである。
FIG.4及びFIG.5に示す実験では、アルコール8には、トルマリン7がコロイド状態で分散してある。アルコール8にトルマリン7をコロイド状に分散させるために、85ccのアルコール8をアルコールランプ本体20に注ぎ、0.8ミクロンの粉状トルマリン0.05グラムをその85ccのアルコール8に投入し、アルコールランプ本体20をよく振り、粉状トルマリンをアルコール8によく混ぜた。粉状トルマリンがアルコール8によく混ざるようにアルコールランプ本体20をよく振っても、アルコールランプ本体20の底には若干の粉状トルマリンが残る。
FIG.3及びFIG.6に示す実験では、アルコールランプの炎の温度は、芯21の上端部21aから水平方向に10cm離れて位置させた輻射温度計SPF−10(カシオ・シーパス・ファインダー)により測定した。下記時間は、点火からの経過時間である。
(実験A)
気温21℃、湿度20%、水9の温度18.4℃の環境で、FIG.3及びFIG.6の構成で、アルコール8を燃焼させた。このとき、両者による実験データが次の如くであった。
a.点火当初の炎の温度は、FIG.3の構成では71℃、FIG.6の構成では64℃であった。
b.水9が沸騰するまでの温度は、FIG.3の構成では15分40秒、FIG.6の構成では17分0秒あった。
c.沸騰により水9の量が80ccにまで減少するまでの時間は、FIG.3の構成では35分20秒、FIG.6の構成では39分50秒あった。
(実験B)
FIG.3の上記実験と同じ環境下で、FIG.5の構成により同様な実験をした。このとき、上記a,b及びcの項目については、ほぼFIG.3のときと同じデータが得られた。ただし、FIG.5の構成において、水9の量が80ccにまで減少した後には、芯21の上端部21aの炭化が進み、炎が次第に小さくなり、遂には炎が消えた。FIG.5の構成において上端部21aの炭化が急速に進んだのは、炎の温度が、綿製の芯21に耐えられる値を超えたことが原因と考えられる。
(実験C)
気温18℃、湿度40%、水9の温度15.2℃の環境下で、FIG.4及びFIG.6の構成により、アルコール8を燃焼させた。このとき、両者による実験データが次の如くであった。
a.点火当初の炎の温度は、FIG.4の構成では75℃、FIG.6の構成では66℃であった。
b.水9が沸騰するまでの温度は、FIG.4の構成では15分45秒、FIG.6の構成では20分30秒あった。
c.沸騰により水9の量が80ccにまで減少するまでの時間は、FIG.4の構成では33分20秒、FIG.6の構成では41分50秒あった。
d.沸騰により水9の量が60ccにまで減少するまでの時間は、FIG.4の構成では51分50秒、FIG.6の構成では61分20秒あった。
e.沸騰により水9の量が40ccにまで減少するまでの時間は、FIG.4の構成では67分30秒、FIG.6の構成では100分0秒あった。
f.FIG.4の構成では、91分0秒後に燃焼によりアルコール8が無くなった。このとき、水9は、26cc残っていた。他方、FIG.6の構成では、108分0秒後に燃焼によりアルコール8が無くなり、水9は35cc残っていた(芯21は殆ど炭化していた)。
(実験D)
気温18℃、湿度30%、水9の温度16.7℃の環境下で、FIG.4及びFIG.6の構成により、アルコール8を燃焼させた。このとき、両者による実験データが次の如くであった。
a.点火当初の炎の温度は、FIG.4の構成では58℃、FIG.6の構成では52℃であった。
b.水9が沸騰するまでの温度は、FIG.4の構成では18分30秒、FIG.6の構成では28分40秒あった。
c.沸騰により水9の量が80ccにまで減少するまでの時間は、FIG.4の構成では39分20秒、FIG.6の構成では57分30秒あった。
d.沸騰により水9の量が60ccにまで減少するまでの時間は、FIG.4の構成では60分20秒、FIG.6の構成では94分10秒あった。
e.沸騰により水9の量が40ccにまで減少するまでの時間は、FIG.4の構成では81分40秒であった。他方、FIG.6の構成では、芯21の炭化が進み、炎が小さくなり、水9の低減率が小さくなり、水9が40ccまで減少することはなかった。
f.FIG.4の構成では、105分40秒後に燃焼によりアルコール8が無くなった。このとき、水9は、26cc残っていた。他方、FIG.6の構成では、127分30秒後に燃焼によりアルコール8が1ccに減り、水9は44cc残っていた。
以上に説明した、FIG.3乃至FIG.6の構成による実験では、燃料の消費が同じであっても、炎の温度、沸騰するまでの時間、蒸発させる水9の量、水9を全部蒸発させるのに要する時間などのデータから、FIG.3乃至FIG.5の構成はFIG.6の構成に比べ火力が格段に強いことが実証できた。また、FIG.5の構成では、芯21が途中で炭化したが、FIG.3及びFIG.4の構成では芯21の炭化が進まなかった。FIG.3及びFIG.4の構成では芯21の上端に粉状のトルマリン7が0.05グラムだけごく薄く配置してあるので、このトルマリン7の作用により芯21の上端部21aがマイナスイオンで覆われ、マイナスイオンの還元作用により、上端部21aの炭化が防止されたと推定される。
上述の実施の形態では、流体燃料を接触させるトルマリンは、粒状体であった。しかしながら、本発明で有効なトルマリンの形は、粒状体に限られず、粉状体でもよく、各種のサイズの砕石であったり、或いはこれらのものの混合物でも差し支えない。
本発明による燃焼の方式を内燃機関の燃料供給系に適用すれば、内燃機関の燃費を著しく向上できるが、その燃焼効率向上構造では、燃料タンクから燃焼室に至る流体燃料の流路にトルマリンを配置し、そのトルマリンが該流体燃料にコロイド状に分散するようにすればよい。
以上に挙げた実施の形態では、具体的に構造や方法を示したが、本発明はこれらの形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した各構成により、次の効果を挙げることができる。従って、(1)本発明の燃料は、コロイド状又は微粒子状の内の少なくとも一方の状態でトルマリンを分散してあれば足りる。また、(2)本発明の燃料添加剤は、粉末状若しくは粒子状のトルマリン、トルマリンをコロイド状に分散させた液体等の流体、または一部がコロイド状に分散し残部が微粒子状態にあるトルマリンを有する液体等の流体のうちの少なくともいずれかを含むものであれば足りる。また、(3)また本発明の燃料添加剤の添加方法は、粉末状または粒状のトルマリンでなる燃料添加剤の層に液体燃料の基材を通すことにより、該燃料添加剤をコロイド状に該基材に含有させるものでもよい。また、(4)本発明の液体燃料の燃焼効率向上方法は、粉末状または粒状のトルマリンの層に液体燃料の基材を通すものでもよい。また、(5)本発明の内燃機関の燃料供給構造は、液体燃料等の流体燃料の燃料タンクから燃焼室に至る流体燃料の流路にトルマリンを配置し、該流路において該流体燃料を該トルマリンに触れさせるようにしたものでもよい。また、(6)本発明の燃料フィルタは、液体燃料等の流体燃料を濾過する燃料フィルタにおいて、該流体燃料の流路に粉末状または粒状のトルマリンを配置してなるもので足りる。また、(7)本発明の燃焼装置は、バーナー、火炉、内燃機関、ジェットエンジン、ガスタービンその他のものであって、燃料の燃焼により発生した熱が伝わる領域であって、しかも該燃焼における酸化などの化学反応に関与する空気、燃料その他の気体が触れる領域にトルマリンを配置したものでもよい。また、(8)本発明の燃焼装置は、プロパンガスその他の流体燃料または微粉炭その他の粉状燃料を燃焼空域で燃焼させるバーナー、火炉、内燃機関、ジェットエンジン、ガスタービンその他の燃焼装置において、燃焼に起因する熱が伝わる部材にトルマリンを配置し、該トルマリンを包む雰囲気の流体燃料、空気又は流体燃料と空気との混合気が該燃焼空域に供給されるようにしたものでもよい。また、(9)本発明の内燃機関は、燃焼室または予燃焼室における気体が触れる空域にトルマリンを配置したものでもよい。また、(10)本発明の流体燃料の燃焼方法は、トルマリンをコロイド状に分散させた流体燃料、若しくはトルマリンをコロイド状に分散させた流体でなる燃料添加剤と流体燃料とを混合した燃料添加剤混合流体燃料を燃焼室に供給し、又はトルマリンをコロイド状に分散させた流体でなる燃料添加剤と流体燃料とを互いに独立の供給路で燃焼室へ供給するものでもよい。
次に本発明の別の実施の形態を説明する。この実施の形態では、平均粒径が0.8ミクロンである微粒子状のナトリウム・トルマリンを軽油1リットル当たり0.002グラム(2ppm)加え、大部分のナトリウム・トルマリンをコロイド状で軽油に分散させ、ナトリウム・トルマリン添加軽油を生成した。
ナトリウム・トルマリンを添加していない軽油を軽油1とし、ナトリウム・トルマリンを添加した軽油を軽油2とし、軽油1を燃料とする場合と軽油2を燃料とした場合について、排気量2,800cc、車両総重量2.5トンのディーゼルエンジン自動車において、排ガス試験、燃料消費試験、排気煙濃度試験および熱害試験をそれぞれ実施した。排ガス試験は13モードで行った。13モードの排ガス試験は、粒子状物質(PM)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)および酸化窒素(NOx)について測定した。試験実施機関は財団法人日本自動車輸送技術協会である。FIG.7は、その13モード排ガス試験により得た平均排出ガス量およ最大トルクのデータを示す表である。
この排ガス試験において、粒子状物質は、軽油1では0.31g/kWh、軽油2では0.26g/kWhであった。また、一酸化炭素は、軽油1では2.0g/kWh、軽油2では1.8g/kWhであった。また、排ガス試験における炭化水素(HC)および酸化窒素(NOx)は、軽油1および軽油2で差がさしてなく、燃料消費試験、排気煙濃度試験および熱害試験においても軽油1および軽油2で差がさしてなかった。いずれの項目においても軽油2が軽油1に劣ることはなかった。
この試験から、粒子状物質は軽油2では軽油1より16%減少し、一酸化炭素は軽油2では軽油1より10%減少しており、軽油2は軽油1より明らかに排出ガスにおいて優れていることが実証された。また、軽油2では軽油1より、最大軸トルクが2.0−3.7%増大した。
次に、本発明の更に別の実施の形態を説明する。この実施の形態で使用する液体燃料は、ガソリンである。本実施の形態の液体燃料は、基材燃料であるガソリンに添加剤を加えてなる。添加剤は、平均粒径が0.8ミクロンである微粒子状のナトリウム・トルマリンと、無水アルコールと、水でなる。添加剤の各成分は、基材燃料のガソリン1リットル当たり、ナトリウム・トルマリンが0.02グラム、無水アルコールが12ミリリットル、水が0.6ミリリットルである。大部分のナトリウム・トルマリンは、基材燃料のガソリンにコロイド状に分散させてある。無水アルコールは、基材燃料のガソリンに水を均一に分散させるために添加する。
排気量250ccのガソリンエンジンを原動機とする自動二輪車に本実施の形態の液体燃料を供給し、その自動二輪車を走行させた。基材燃料のガソリン1リットル当たり、ナトリウム・トルマリンを0.02グラム加え、無水アルコール及び水を加えないガソリンを燃料としたとき、その自動二輪車最大速度が80Km/hであった登坂路がある。その登坂路を、本実施の形態の液体燃料で走行するとき、その自動二輪車の最大速度が100Km/hに上昇した。このことから、本実施の形態の液体燃料が、ガソリンエンジンの出力を増大することができる分かる。
その自動二輪車が、本実施の形態の液体燃料により平坦な道路を走行するとき、エンジンのオイルパンの温度は63.5℃となった。基材燃料のガソリン1リットル当たり、ナトリウム・トルマリンを0.02グラム加え、無水アルコール及び水を加えないガソリンを燃料とし、同じ条件でその平坦な道路を走行するとき、オイルパンの温度は51℃であった。そこで、本実施の形態の液体燃料は、ガソリンエンジンにおいてより高出力で燃焼していることが分かる。
その自動二輪車が、本実施の形態の液体燃料により平坦な道路を80Km/hで走行するとき、エンジンの回転数は5,410RPMであった。その自動二輪車が、基材燃料のガソリン1リットル当たり、ナトリウム・トルマリンを0.02グラム加え、無水アルコール及び水を加えないガソリンを燃料とし、同じ条件でその平坦な道路を走行するとき、エンジンの回転数は5,710RPMであった。そこで、本実施の形態の液体燃料を燃料するとき、ガソリンエンジンはより高いトルクを出力していることが分かる。
また、その自動二輪車が、本実施の形態の液体燃料により平坦な道路を80Km/hで走行するとき、エンジンの回転数は5,410RPMであったが、そのとき排気パイプの温度は187℃であった。その自動二輪車が、基材燃料のガソリン1リットル当たり、ナトリウム・トルマリンを0.02グラム加え、無水アルコール及び水を加えないガソリンを燃料とし、同じ条件でその平坦な道路を走行するとき、エンジンの回転数は5,710RPMであったが、そのとき排気パイプの温度は200℃であった。そこで、本実施の形態の液体燃料を燃料するとき、ガソリンエンジンはより高いパワー・トルクを出力しているが、そのガソリンエンジンは低い温度のガスを排気していることが分かる。
また、その自動二輪車が、本実施の形態の液体燃料により走行するとき、エンジン音は低く、排気ガスの臭気は低減した。特に、エンジンを停止した直後の臭いは、蒸気の臭いであった。また、エンジンのノッキング傾向は解消した。
以上に述べたところから、本実施の形態の液体燃料は、格別な装置を用いることなく、ガソリンエンジン自動車の燃焼ガスにおける有害成分を低減できることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
以上に詳しく述べたように、本発明によれば、環境を汚染する虞が無く、燃焼効率に優れ、しかも安価な液体燃料などの流体燃料、微粉炭などの粉状燃料その他の燃料、燃料添加剤、燃焼装置および燃焼方法を提供することができる。
また、本発明の液体燃料および添加剤によれば、格別な装置を用いることなく、自動車などの液体燃料燃焼装置の燃焼ガスにおける有害成分を低減できる。
本発明において用いる燃料添加剤は、マイナスイオン発生源として健康水に添加されるトルマリンでなるから、環境にやさしい。本発明の方法および構造により処理された流体燃料が燃焼し、排気ガスとして排出されても、大気を汚染せず、人体に安全である。もちろん、トルマリンは、人体に触れても安全である。更に、トルマリンは、自然界に大量に存在する物質であり、亜鉛などに比べ安価であり、粉体化或いは粒体化加工のための製造装置費用および人件費も安価であるから、燃料装置などの本発明の構造は安価に製造できる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロイド状又は微粒子状の内の少なくとも一方の状態でトルマリンを分散してなる液体燃料その他の燃料。
【請求項2】
粉末状若しくは粒子状のトルマリン、トルマリンをコロイド状に分散させた液体等の流体、または一部がコロイド状に分散し残部が微粒子状態にあるトルマリンを有する液体等の流体のうちの少なくともいずれかを含む燃料添加剤。
【請求項3】
粉末状または粒状のトルマリンでなる燃料添加剤の層に液体燃料の基材を通すことにより、該燃料添加剤をコロイド状に該基材に含有させることを特徴とする液体燃料に対する燃料添加剤の添加方法。
【請求項4】
粉末状または粒状のトルマリンの層に液体燃料の基材を通すことを特徴とする液体燃料の燃焼効率向上方法。
【請求項5】
液体燃料等の流体燃料の燃料タンクから燃焼室に至る流体燃料の流路にトルマリンを配置し、該流路において該流体燃料を該トルマリンに触れさせるようにしたことを特徴とする内燃機関の燃料供給構造。
【請求項6】
液体燃料等の流体燃料を濾過する燃料フィルタにおいて、該流体燃料の流路に粉末状または粒状のトルマリンを配置してなる燃料フィルタ。
【請求項7】
燃料の燃焼により発生した熱が伝わる領域であって、しかも該燃焼における酸化などの化学反応に関与する空気、燃料その他の気体が触れる領域にトルマリンを配置したことを特徴とするバーナー、火炉、内燃機関、ジェットエンジン、ガスタービンその他の燃焼装置。
【請求項8】
プロパンガスその他の流体燃料または微粉炭その他の粉状燃料を燃焼空域で燃焼させるバーナー、火炉、内燃機関、ジェットエンジン、ガスタービンその他の燃焼装置において、燃焼に起因する熱が伝わる部材にトルマリンを配置し、該トルマリンを包む雰囲気の流体燃料、空気又は流体燃料と空気との混合気が該燃焼空域に供給されるようにしたことを特徴とする燃焼装置。
【請求項9】
燃焼室または予燃焼室の気体が触れる空域にトルマリンを配置したことを特徴とする内燃機関。
【請求項10】
トルマリンをコロイド状に分散させた流体燃料、若しくはトルマリンをコロイド状に分散させた流体でなる燃料添加剤と流体燃料とを混合した燃料添加剤混合流体燃料を燃焼室に供給し、又はトルマリンをコロイド状に分散させた流体でなる燃料添加剤と流体燃料とを互いに独立の供給路で燃焼室へ供給する流体燃料の燃焼方法。
【請求項11】
コロイド状又は微粒子状の内の少なくとも一方の状態でトルマリンを分散してなる液体燃料。
【請求項12】
粉末状若しくは粒子状のトルマリン、トルマリンをコロイド状に分散させた液体等の流体、または一部がコロイド状に分散し残部が微粒子状態にあるトルマリンを有する液体等の流体のうちの少なくともいずれかを含む液体燃料添加剤。
【請求項13】
トルマリン、アルコール及び水を含む添加剤が基材燃料に添加してあり、
前記トルマリンは、コロイド状又は微粒子状の内の少なくとも一方の状態で前記基材燃料に分散していることを特徴とする液体燃料。
【請求項14】
前記基材燃料がガソリンであるとき、前記トルマリンが0.002グラム以上0.03グラム以下、前記アルコールが5ミリリットル以上100ミリリットル以下、前記水が0.1ミリリットル以上5ミリリットル以下の割合で、該基材燃料1リットルに添加してあることを特徴とする請求の範囲第13項に記載の液体燃料。
【請求項15】
粉末状若しくは粒子状のトルマリンを、アルコール及び水を含む液体にコロイド状に分散させ、または一部を該液体にコロイド状に分散させるとともに、残部を微粒子状態で該液体に含有させてなる液体燃料添加剤。
【請求項16】
前記アルコール100ミリリットル当たり、前記水は0.1ミリリットル以上100ミリリットル以下、前記トルマリンは0.002グラム以上1.5グラム以下であることを特徴とする請求の範囲第15項に記載の液体燃料添加剤。
【請求項17】
前記トルマリンに替えて、他の圧電物質を用いることを特徴とする請求の範囲第1項乃至第16項に記載の燃料、燃料添加剤、燃料添加剤添加方法、液体燃料の燃焼効率向上方法、燃料供給構造、燃料フィルタ、燃焼装置、内燃機関または流体燃料の燃焼方法。

【国際公開番号】WO2004/076843
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【発行日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−502837(P2005−502837)
【国際出願番号】PCT/JP2004/001723
【国際出願日】平成16年2月17日(2004.2.17)
【出願人】(503294795)株式会社ノアズ (1)
【Fターム(参考)】