説明

燃料を作るための方法及び装置

燃料を作る方法(20)が開示される。本方法は、生物学的に誘導された粒子を中に有する液体を超音波に曝露する第1ステップ(22)を有し、超音波は、液体内におけるキャビテーションと、燃料の前駆体が粒子の少なくともいくつかから液体内に放出されることとをもたらす。本方法は液体を別の超音波に曝露するステップ(24)も具備し、別の超音波は、液体内において実質的なキャビテーションをもたらすのに不十分であり、且つ、燃料を形成すべく液体と前駆体との間の反応を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して燃料を作るための方法及び装置に関し、排他的ではないが特に、超音波技術を使用して藻のような生物学的に誘導された粒子から燃料を作るための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
藻のような生物材料から作られるバイオディーゼルは、車両と、暖房と、概して、鉱油又は石炭のような化石源から得られるディーゼルが使用される任意の用途とにおいて使用されることができる。典型的には、バイオディーゼルは、エステル交換工程を使用して生物材料からの油又は脂肪から生成される。典型的には、バイオディーゼルは化石ディーゼルと同様の組成を有する。
【0003】
藻は、例えば、塩水、半塩水、又は汚水において成長することができ、生産物が耕地を占有する必要がないので、藻から得られるバイオディーゼルは近年大きな関心を受けてきた。藻は他の大抵の作物よりも土地の単位面積当たりのエネルギーを多く生成することができる。
【0004】
バイオ燃料の生成における超音波の使用は、公知であるが、エステル交換のステップの間の油と脂肪との混合及び粉砕に制限されていた。
【0005】
本明細書における従来技術に対する参照は、その従来技術がオーストラリア又は世界の他のどこかにおいて当該技術分野において周知の一般的な知識の一部を形成することの承認ではない。
【発明の概要】
【0006】
本発明のいくつかの実施形態は、二つのステップを有する燃料を作る方法を提供することができ、各ステップは、異なる超音波処理を有する。本方法の一つの実施形態が、従来技術と比較して相対的に効率的であり且つ早いことは有利である。本方法は、一つの実施形態において、燃料の生成のための対応する装置の使用を含むことができる。
【0007】
本発明の第1態様によれば、燃料を作る方法において、生物学的に誘導された粒子を中に有する液体を超音波に曝露するステップであって、超音波が、液体内におけるキャビテーションと、燃料の前駆体が粒子の少なくともいくつかから液体内に放出されることとをもたらす、ステップと、液体を別の超音波に曝露するステップであって、別の超音波が、燃料を形成すべく液体と前駆体との間の反応を促進する、ステップとを含む、方法が提供される。
【0008】
一つの実施形態では、別の超音波は、液体内においてキャビテーションをもたらすのに不十分である。
【0009】
いくつかの実施形態は、前駆体を放出する超音波処理ステップと、反応を促進する他の超音波処理ステップとを分離することによって各ステップの超音波パラメータの調整が可能となるという利点を有する。例えば、いくつかの実施形態において、生物学的に誘導された粒子を粉砕するキャビテーションは、超音波が、比較的高い出力を有することを必要とする。しかしながら、キャビテーションは、燃料を形成する反応を妨げることがあり、このため、他の超音波は、好ましくは、比較的低い出力を有する。各超音波処理ステップについての時間間隔はかなり異なっていてもよい。ステップの分離は例えば各ステップが別々の容器又は構成要素において行われることを可能とし、各容器又は各構成要素は、そのそれぞれのステップのパフォーマンスを改良し且つ一定の体積流量を維持するように構成される。
【0010】
一つの実施形態では、粒子のうちの少なくともいくつかは藻粒子である。本明細書の文脈では、藻粒子は、藻細胞から誘導される粒子又は藻細胞から誘導されてきた粒子である。藻の少なくともいくつかはクロレラ属に属しうる。藻は珪藻であってもよい。藻はシアノバクテリアであってもよい。実質的に全ての粒子が藻粒子であってもよい。
【0011】
一つの実施形態では、キャビテーションは、粒子の破裂と、粒子内に含有された脂質の放出とを引き起こす。脂質は燃料の前駆体を構成しうる。キャビテーションは粒子の分解を引き起こしうる。
【0012】
一つの実施形態では、キャビテーションをもたらす超音波は約50W/cm2以上の強度を有する。強度は100W/cm2以上であってもよい。強度は200W/cm2以上であってもよい。キャビテーションは1〜100秒の時間を超えて起こりうる。時間は1〜5秒の間であってもよい。時間は約15秒であってもよい。キャビテーションは、1バールよりも小さい圧力において行われうる。キャビテーションは、20℃よりも低い温度において行われうる。
【0013】
藻のいくつかの種は、太陽光を前駆体の形態の化学的な貯蔵エネルギーに変換するのに非常に有効である。藻のいくつかの種は、工程のための原料の供給が用意されている場合、非常に早く成長する。藻は、例えば池又はタンク内に収容された水の中において成長しうる。藻は例えば濾過によって水から分離されうる。藻は乾燥せしめられてもよい。液体は、スラリーを形成すべく藻と混合されうる。
【0014】
藻のいくつかの種は、石炭火力発電所又はセメント製造プラントのような工業施設によって発生せしめられた二酸化炭素を使用して成長することができ、大気に放出される温室ガスである二酸化炭素の量を効果的に減少させることができる。
【0015】
一つの実施形態では、粒子は死細胞を含みうる。死細胞は少なくとも部分的に加工処理されうる。死細胞は藻粒子を含みうる。
【0016】
代替的に、粒子の少なくともいくつかは燃料の生産に適切な任意の植物から得られうる。例えば、植物は、油ヤシ、大豆、ジャトロファ属、又はクロヨナのうちのいずれか一つであってもよい。
【0017】
代替的に、粒子の少なくともいくつかは家畜のような動物から得られてもよい。
【0018】
一つの実施形態では、液体はアルコールを含む。アルコールはメタノールを含みうる。アルコールはエタノールを含んでもよい。アルコールはその他適切なアルコールを含んでもよい。アルコールは1リットル当たり10g以上の粒子を有しうる。アルコールは1リットル当たり100〜400gの粒子を有してもよい。アルコールは1リットル当たり150〜250gの粒子を有してもよい。
【0019】
一つの実施形態では、反応は、前駆体におけるトリグリセリドをメチルエステル又はエチルエステルに置換することを含む。反応はグリセロールも生成しうる。本方法は、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムのような金属水酸化物を液体に加えることを含んでもよく、金属水酸化物は反応に触媒作用を及ぼす。アルコールは20〜40g/リットルの金属水酸化物を含有してもよい。反応は、1〜6バールの圧力、好ましくは約3バールの圧力において行われうる。エステルは燃料を構成しうる。代替的に、グリセロールが燃料を構成してもよい。
【0020】
一つの代替的な実施形態では、本方法は、酸、メトキシド、又はエトキシドのうちの一つ以上を液体に加えることを含んでもよく、これらは反応に触媒作用を及ぼす。
【0021】
一つの実施形態では、本方法は、エステルを分離するステップを含む。エステルを分離することはグリセロールを分離することも含みうる。エステルを分離するステップは、溶媒内にエステルを溶解させることを含んでもよい。溶媒はヘキサンであってもよい。本方法は、エステルを溶媒から分別分離するステップを含んでもよい。
【0022】
本発明の第2態様によれば、燃料を作るための装置であって、生物学的に誘導された粒子を中に有する液体を超音波に曝露し且つ液体を別の超音波に曝露するように構成され、超音波が、液体内におけるキャビテーションと、燃料の前駆体が粒子の少なくともいくつかから液体内に放出されることとをもたらし、別の超音波が、燃料を形成すべく液体と前駆体との間の反応を促進する、装置が提供される。
【0023】
一つの実施形態では、別の超音波は、液体内において実質的なキャビテーションをもたらすのに不十分である。
【0024】
本発明の第3態様によれば、燃料を作るための装置であって、生物学的に誘導された粒子を中に有する液体を超音波に曝露するように構成される第1構成要素であって、超音波が、液体内におけるキャビテーションと、粒子の少なくともいくつかから液体内への燃料の前駆体の放出とをもたらす、第1構成要素と、液体を別の超音波に曝露するように構成される第2構成要素であって、別の超音波が、燃料を形成すべく液体と前駆体との間の反応を促進する、第2構成要素とを具備する、装置が提供される。
【0025】
一つの実施形態では、別の超音波は液体内においてキャビテーションをもたらすのに不十分である。
【0026】
一つの実施形態では、第2構成要素は第1構成要素と流体連通している。
【0027】
一つの実施形態では、第1構成要素及び第2構成要素各々は、液体を収容するためのそれぞれの容器を具備する。容器はそれぞれの容器間における液体の連通のための通路によって接続されうる。
【0028】
一つの実施形態では、各構成要素はそれぞれの超音波の源を具備する。第1構成要素は、比較的高い出力の超音波の源を具備しうる。第2構成要素は、比較的低い出力の超音波の源を具備しうる。
【0029】
一つの実施形態では、装置は、液体を第1構成要素及びその後の第2構成要素を通して方向付けるフローコントローラを具備する。フローコントローラはポンプを具備しうる。フローコントローラはバルブを具備しうる。バルブはチェックバルブを具備しうる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、燃料を作るための方法の一つの実施形態のフローチャートを示す。
【図2】図2は、燃料を作るための方法の別の実施形態のフローチャートを示す。
【図3】図3は、燃料を作るための装置の一つの実施形態の概略図を示す。
【図4】図4は、燃料を作るための装置の別の実施形態の概略図を示す。
【図5】図5は、図4の実施形態において使用可能なフローセル(flow cell)の代替的な実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の本質の更なる理解を得るために、添付の図面を参照して、以下、実施形態が単なる例として記述される。
本発明の一つの実施形態は、藻、すなわち生物学的に誘導された粒子の一種を、原油及び石炭のような化石源から得られる通常のディーゼル燃料と同等の質を有する燃料に変える。藻は、持続可能な源から概して得られる生物材料である。これら理由のために、この燃料は、バイオ燃料、より具体的にはバイオディーゼルと呼ばれうる。バイオディーゼルは、化石ディーゼルの完全な代替又は部分的な代替として使用されることができ、且つ、B20、すなわち20%のバイオディーゼルと80%の化石ディーゼルとの混合のような混合物を作り出すべく化石ディーゼルと混合されうる。いくつかの他の実施形態では、原料は、任意の適切な種類の生物材料、例えば、動物性脂肪若しくは動物性油、又は、キャノーラ又はヒマワリの作物、加工大豆、グンバイナズナ、ジャトロファ属、カラシ、亜麻、ヤシ油、ヘンプ、植物油、及びサリコルニア・ビゲロヴィ(salicornia bigelovii)からの、切り刻まれ又は破砕された油種子(oil seed)を含みうる。これら全ての生物材料は粒子として存在しうる。
【0032】
図1は、概して数字20によって示される、燃料を作る方法の一つの実施形態のフローチャートを示す。一方のステップ22では、超音波キャビテーションが、液体アルコール(この実施形態ではエタノール)内に懸濁された藻の膜を破裂させるのに使用される。このステップは超音波温浸(ultrasonic digestion)と呼ばれうる。メタノールのような任意の適切なアルコールがエタノールの代わりに代替的に使用されてもよい。燃料前駆体が、破裂せしめられた膜から離れてアルコールに入る。この例では、燃料前駆体は、各々の藻細胞によって、生きている間に生成される一つ以上の脂質を含む。別のステップ24では、燃料前駆体は、バイオディーゼルを含む混合物を生成すべくエタノールと反応せしめられる。このステップ24は、少なくともこの実施形態では、超音波エステル化と呼ばれうる。その後、バイオディーゼルは、結果として生じる混合物から分離されうる。反応速度は、懸濁液(suspension)を超音波に曝露することによって加速せしめられ、この超音波は、懸濁液において実質的なキャビテーションを引き起こすのに不十分である。代替的な実施形態では、超音波は、あらゆるキャビテーションを引き起こすのに不十分である。超音波出力が0から増加せしめられるにつれて、反応速度は、概して、液体内においてキャビテーションが起こるほぼ閾値の出力まで増加し、その後、超音波出力が更に増加すると、減少し始めるであろう。これは、超音波の伝播が、液体内への超音波の侵入を制限する液体内の空洞の存在によって妨げられるからである。また、キャビテーションは直接反応に不利な影響を与えうる。代わりに、エステル化ステップの間に適用される超音波出力が、液体内における微小な攪拌と、藻の周りの液体境界層の粉砕と、場合により、反応速度を高める他の化学物理的なメカニズムとを引き起こすべく選択されてもよい。しかしながら、非常に低いレベルのキャビテーションは、反応を加速しうる有用な局所攪拌を起こしうる。
【0033】
この実施形態では、アルコール1リットル当たり約150〜250gの藻が存在し、これら藻は、厚さの問題と、より大きな濃度に関連付けられうる不承の(reluctant)懸濁液の問題とを有することなく、十分な工程処理量を提供することができる。しかしながら、他の実施形態では、アルコールは1リットル当たり10g以上の藻から最大1リットル当たり400gの粒子までのものを有してもよい。
【0034】
この実施形態では、反応24は、メタノール又はエタノールがそれぞれ使用されるかに応じて、脂質燃料前駆体内のトリグリセリドをメチルエステル又はエチルエステルに置換する。他のアルコールが使用される場合、他の群が代用されてもよい。反応は、超音波キャビテーションのステップの前後のいずれかにおいて、金属水酸化物(例えば水酸化カリウム、又は代替的に酸、メトキシド、若しくはエトキシド)のような触媒をエタノールに加えることによって触媒作用が及ぼされうる。反応はグリセロールも生成し、グリセロールは、結果として生じる混合物から分離されると、有用な生成物であり、それ自体燃料として使用されることができる。殻を構成する固形残留物及び藻の他の残余物も生成される。固形残留物は分離されて例えば肥料又はフィラー材料として使用されうる。しかしながら、一般的にそれは、バイオディーゼルを構成する分離されたエステルである。
【0035】
藻ではない原料が使用される実施形態では、超音波温浸は、例えば、種の殻のような他の構造を機械的に粉砕し、又は脂肪粒子又は油粒子を分散させるように作用しうる。
【0036】
図2は、図1において示されるものと同様な、方法26の別の実施形態のフローチャートを示し、図1(それぞれステップ22、24)の超音波温浸ステップ34及び超音波エステル化ステップ36の両方を包含する。この実施形態26は、例えば、池に収容された水の中で藻を成長させ、その後、例えば必要に応じて微細な網又は膜を通した水の濾過を使用して藻を水から分離する前ステップ(prestep)を含む。いくつかの実施形態では、藻は、スラリーを形成すべく藻をアルコールに加える前に乾燥せしめられてもよい。この実施形態は、ヘキサン38又はその他適切な溶媒を混合物に加える後ステップ38と、混合物をその成分相に分離する後ステップ39とも含む。エステルはヘキサン内に溶解し、結果として生じる溶液は層相(layer phase)を形成し、層相は例えば注入(pouring)又はその他適切な物理的な分離工程39を通して分離されうる。その後、バイオディーゼル39cは、少なくともこの実施形態では、分留39bによってヘキサン39dから分離される。その後、分離されたヘキサンステップ39dはステップ38の工程に再導入されうる。
【0037】
図3は、燃料を作るための装置50の一つの実施形態を示す。装置50は燃料のバッチ生産に適しうる。図1において描写された超音波温浸ステップ22及びエステル化ステップ24は、例えば、この装置50又は装置50と同様の装置を使用して行われることができる。装置50は、装置50内に収容された液体52であって、生物学的に誘導された粒子54を中に有する液体52を超音波56に曝露するように構成され、超音波56は、液体52におけるキャビテーションと、燃料の前駆体が少なくともいくつかの粒子54から液体52内に放出されることとをもたらす。装置は液体52を別の超音波58に曝露するようにも構成され、別の超音波58は、液体内においてキャビテーションをもたらすのに不十分な出力(又は代替的に超音波強度)の同一の又は異なる超音波発生手段から生じうる。別の超音波58は、燃料を形成すべく液体52と前駆体との間の反応を促進する。超音波56、58は、液体内に浸された60、62のような異なる超音波源から生じうる。適切な源の例は、独国のHielscher Ultrasonicsによって製造されたUIP1000hd超音波プローブであり、この超音波プローブは20kHzの超音波振動数で動き且つ1kWの最大公称出力を有し、これら数値は最大20〜1001/hの藻のスラリーを加工処理するのに十分なはずである。プローブは摩耗耐性のチタン製チップを有することができ、チタン製チップは有用な超音波ガイド材料であり且つ化学的に比較的不活性である。しかしながら、いくつかの実施形態では、チップは例えばステンレス鋼又はその他適切な材料から製造されてもよい。より高い又はより低い出力の他の源が、必要に応じて生産量を増減させるのに使用されてもよい。一つよりも多いプローブが、適用される超音波出力を増やし又は装置50内における超音波の分布を構成するのに使用されてもよい。単一の源が使用される実施形態では、超音波温浸のステップは、キャビテーションを実現すべく高出力でプローブを駆動することによって達成され、その後、超音波出力は、エステル化ステップの間、キャビテーションの閾値未満に減少せしめられうる。
【0038】
図4は、燃料を作るための装置70の別の実施形態を示す。装置70は燃料の連続生産又は半連続生産に適しうる。原料72の流れ、この実施形態では藻/アルコールのスラリーの流れは、容器、セル、又は反応炉74の形態(この実施形態ではフローセルの形態)の第1構成要素に入る。ポンプ73が装置を通した流れを制御する。第1構成要素内における超音波温浸区域76が、フローセル74内に侵入する超音波プローブ78のチップ77からの比較的強力な超音波によって作り出される。超音波キャビテーションが、区域76において起こり、少なくともいくつかの粒子からアルコール内に燃料の脂質前駆体を放出すべく藻の粒子を破裂させる。図5はフローセル74の別の実施形態を示し、図5では同様の構成要素が同様に示される。プローブチップ77の幅が入口の直径よりも広く、このことは、全てのスラリーが処理されることを確実なものとする。
【0039】
図4を再び参照すると、温浸されたスラリーは、その後、入口81を介して、容器、セル、又は反応炉82の形態の第2構成要素に第1構成要素74を接続する通路80を通って流れる。容器82には、結果として生じる混合物が容器82から出て例えば保持タンク内に流れるための出口86も提供される。通路80は第1構成要素74と第2構成要素82との間の流体連通を提供する。チェックバルブ81が通路80内に設置されうる。第2構成要素82は外壁94を有し、圧電振動子88の形態の超音波源が例えばエポキシ樹脂又は機械的なクランプ構成によって外壁94に取り付けられる。この場合、容器82自体が超音波90の源になる。超音波振動子88は別の超音波を放射し、別の超音波は第2構成要素の壁94を通って容器82の中身92内に進み、中身92は、温浸されたスラリー92である。別の超音波90は、液体内においてキャビテーションをもたらすのに不十分であり、むしろ、燃料を形成すべく、容器82内における液体と前駆体との間の反応を促進するパラメータを有する。第2容器82は、概して円筒形であり、円、正方形、五角形、六角形、又はその他の形状のうちのいずれか一つである断面を有してもよい。第1容器74と第2容器82との各々の体積の比率は、異なる流体滞留時間又は流体輸送時間を各々に与えるように選択されうる。例えば、流体は、第1容器74では数秒を費やすが、第1容器の体積の何倍もの体積を有する第2容器82では数分を費やしうる。第1構成要素及び第2構成要素は、それぞれ、概して、例えば、パイプ、ドラム、若しくは円筒、又はこれらの組合せのような任意の適切な容器であってもよいことが理解されるであろう。容器はステンレス鋼又は高密度ポリエチレンのような任意の適切な材料から製造されうる。
【実施例1】
【0040】
一つの例では、分離された乾燥藻(1リットル当たり200gの藻)がメタノール内に提供されて懸濁される。乾燥藻は、エステル交換反応の速度を落としうる水をほとんど有しない。
【0041】
懸濁液は、強力なキャビテーションを引き起こすための約100W/cm2以上の強度の第1高出力超音波領域に曝され、強力なキャビテーションは少なくともいくつかの藻の膜を破裂させて、膜内に収容された脂質が放出される。超音波反応炉は、全ての藻が最も強力なキャビテーションの区域をこの区域において15秒の滞留時間で通過することを確実なものとするように設計される。滞留時間は、少なくとも別の例について、数秒に減らされてもよい。
【0042】
エステル交換反応は、放出された脂質のトリグリセリドを、副産物としてグリセロールを有するメチルエステルに置き換えることを含む。この反応は、20〜40g/Lの水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを懸濁液に加えることによって触媒作用が及ぼされる。この反応は、反応の速度を落としうるキャビテーションを引き起こさないように選択された第2超音波領域の適用によって早められうる。エステル交換反応の速度は、適切な超音波領域によって1〜2倍の大きさだけ増加せしめられうる。
【0043】
グリセリンとメチルエステルとの混合物は、その後、例えば国際公開第08/401527号においてJewett−Norman等によって開示された方法を使用して分離される。グリセリンは副産物として取り除かれる。
【0044】
メチルエステルは、含水アルコール溶液の付加及びその後のヘキサンの付加によって浄化される。ヘキサン相はほとんどのオイルを含有し、水相は残余不純物を含有する。全てのオイルが抽出されることを確実なものとすべく、これら相はうまく混合されなければならないが、乳濁液が、二つの相の分離速度を落とすことを形成しうる。この分離は、浄化された抽出物と、含水アルコール相とを得るべく、同様にJewett−Normanの技術を使用して早められうる。
【0045】
実施形態が記述されてきたので、いくつかの実施形態が以下のいくつかの利点を有しうることが理解されるであろう。
・超音波温浸ステップと超音波補助のエステル化ステップとを分離することによって、各ステップにおいて使用される超音波の最適化が可能となり、燃料生産量が増加せしめられうる。
・方法及び装置の実施形態が燃料の商業生産のための工業規模を有することができる。
【0046】
具体的な実施形態に対するいくつかの変更が以下のことを含む。
・装置の第1構成要素及び第2構成要素のいずれか又は両方がフローセルを具備してもよい。
・装置の第1構成要素及び第2構成要素のいずれか又は両方が、16kHz及び20kHzのような異なる振動数で駆動される超音波切断された対向する二つの金属プレートを具備してもよい。
・超音波のいずれか又は両方が、エネルギーを節約することができるより顕著な効果のためにパルス化されてもよい。
・装置の第1構成要素及び第2構成要素のいずれか又は両方がテルソニック社のチューブ状共鳴装置(tubular resonator)若しくはマーティンウォルター社のプッシュプルシステム又は類似の共鳴装置を具備してもよい。
・高出力のプローブが低出力の超音波源の配列に置き換えられてもよい。
・超音波の焦点が合わされて超音波強度が増加せしめられてもよい。
【0047】
広く記述されたときの本発明の思想又は範囲から逸脱することなく、非常に多くの変更及び/又は修正が、具体的な実施形態において示されたような発明に対してなされうることが理解されるであろう。このため、本実施形態はあらゆる点において例示的であり且つ限定されるものではないと見なされるべきである。
【0048】
以下の特許請求の範囲及び以上の本発明の説明では、文脈が明確な言語又は必然的な暗示によってそうでないことを要求する場合を除いて、「具備する」との用語又は「具備している」のような変形は、包括的な意味において使用され、すなわち、記された特徴の存在を明記するが本発明の様々な実施形態における更なる特徴の存在又は追加を排除しないように使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を作る方法において、
生物学的に誘導された粒子を中に有する液体を超音波に曝露するステップであって、該超音波が、前記液体内におけるキャビテーションと、前記燃料の前駆体が前記粒子の少なくともいくつかから前記液体内に放出されることとをもたらす、ステップと、
前記液体を別の超音波に曝露するステップであって、該別の超音波が、前記燃料を形成すべく前記液体と前記前駆体との間の反応を促進する、ステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記別の超音波が、前記液体内においてキャビテーションをもたらすのに不十分である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粒子の少なくともいくつかが藻粒子である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記キャビテーションが、前記粒子の破裂と、該粒子内に含まれる脂質の放出とを引き起こし、該脂質が前記燃料の前駆体を構成する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
キャビテーションをもたらす前記超音波が約50W/cm2以上の強度を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記液体がアルコールを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記反応が、前記前駆体内のトリグリセリドをメチルエステル又はエチルエステルに置換することを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
燃料を作るための装置であって、
生物学的に誘導された粒子を中に有する液体を超音波に曝露し且つ該液体を別の超音波に曝露するように構成され、前記超音波が、前記液体内におけるキャビテーションと、前記燃料の前駆体が前記粒子の少なくともいくつかから前記液体内に放出されることとをもたらし、前記別の超音波が、前記燃料を形成すべく前記液体と前記前駆体との間の反応を促進する、装置。
【請求項9】
前記別の超音波が、前記液体内において実質的なキャビテーションをもたらすのに不十分である、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
燃料を作るための装置であって、
生物学的に誘導された粒子を中に有する液体を超音波に曝露するように構成される第1構成要素であって、前記超音波が、前記液体内におけるキャビテーションと、前記燃料の前駆体が前記粒子の少なくともいくつかから前記液体内に放出されることとをもたらす、第1構成要素と、
前記液体を別の超音波に曝露するように構成される第2構成要素であって、前記別の超音波が、前記液体内において実質的なキャビテーションをもたらすのに不十分であり、且つ、前記燃料を形成すべく前記液体と前記前駆体との間の反応を促進する、第2構成要素と
を具備する、装置。
【請求項11】
前記別の超音波が、キャビテーションをもたらすのに不十分である、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記第2構成要素が前記第1構成要素と流体連通している、請求項10又は11に記載の装置。
【請求項13】
前記第1構成要素及び第2構成要素各々が、前記液体を収容するためのそれぞれの容器を具備する、請求項10〜12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記容器が該それぞれの容器間における前記液体の連通のための通路によって接続されうる、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
各構成要素が前記それぞれの超音波の源を具備する、請求項10〜14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
前記第1構成要素が、比較的高い出力の超音波の源を具備することができる、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記第2構成要素が、比較的低い出力の超音波の源を具備することができる、請求項15又は16に記載の装置。
【請求項18】
前記装置が、前記液体を前記第1構成要素及びその後の前記第2構成要素を通して方向付けるフローコントローラを具備する、請求項10〜17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
本明細書において添付図面を参照して実質的に記述されるような方法。
【請求項20】
本明細書において添付図面を参照して実質的に記述されるような装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2012−526861(P2012−526861A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510072(P2012−510072)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【国際出願番号】PCT/AU2010/000567
【国際公開番号】WO2010/130006
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(511277401)オースバイオディーゼル プロプライアタリー リミティド (1)
【Fターム(参考)】