説明

燃料キャップ

【課題】燃料キャップ10は、ケーシング本体20と蓋体50との間にトルクプレート90を保持する構成にて小型化を実現すること。
【解決手段】燃料キャップ10は、ケーシング本体20と、ケーシング本体20を回転操作するための蓋体50と、円形状のトルクプレート90を有するトルク機構80と、トルクプレート90を閉止体に装着するプレート装着機構とを備える。プレート装着機構は、トルクプレート90の下面であって弁室20Sに複数配置されるとともに弁室20Sに向けて突設されたプレート係合部98と、弁室20Sの壁面に形成されプレート係合部98に係合することでトルクプレート90をケーシング本体20に装着する係合突部24とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクの注入口に着脱可能に装着される燃料キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の燃料キャップとして、自動車の燃料タンクに接続されたインレットパイプの注入口を開閉する技術が知られている(特許文献1)。燃料キャップは、注入口を封止するケーシング本体(閉止体)と、回転操作するための操作部を有する蓋体(操作機構)と、トルク機構とを備えている。トルク機構は、ケーシング本体の上部と蓋体との間に介在する機構であり、蓋体の突起に係合するプレート側係合部を有するトルクプレートを備え、操作者が蓋体を閉じる方向に回転して所定回転トルクに達したときに、プレート側の係合部が蓋体側の突起を乗り越えることでクリック音を生じ、燃料キャップの締付が完了したことを操作者に知らせている。こうしたトルクプレートは、ケーシング本体の上部のフランジ部を覆うように固定されるとともに、該プレートの外周部で蓋体を回転可能に支持する構成を備えることで、ケーシング本体と蓋体との間で保持されている。
【0003】
しかし、従来のトルクプレートは、大きな円板形状であり、燃料キャップ自体の外径の大型化を招くという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−178734
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の技術の問題を解決するものであり、閉止体と操作機構との間にトルクプレートを保持した燃料キャップの小型化を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
適用例1は、燃料タンクに接続される注入口を開閉する燃料キャップにおいて、
キャップ室を有し、上記注入口を閉じる閉止体と、
上記キャップ室を塞ぐように上記閉止体に装着され該閉止体を回転操作するための操作機構と、
上記閉止体と上記操作機構との間に介在し、上記操作機構に加えられる閉じ方向または開き方向への回転トルクを上記閉止体に伝達するための円形状のトルクプレートを有するトルク機構と、
上記トルクプレートを上記閉止体に装着するプレート装着機構と、
を備え、
上記プレート装着機構は、上記トルクプレートの一方の面であって上記キャップ室側に複数配置されるとともに上記キャップ室内に向けて突設されたプレート係合部と、上記キャップ室を形成する壁面に形成され上記プレート係合部に係合することで上記トルクプレートを閉止体に装着する係合突部とを備えたこと、
を特徴とする。
【0008】
適用例1に記載の燃料キャップにおいて、操作機構を掴んで、閉止体を注入口に挿入し、閉じ方向に回転トルクを加えると、回転トルクがトルクプレートを介して所定範囲内で閉止体に伝達され、閉止体が注入口を閉じる。
【0009】
トルクプレートは、円形状の部材であり、閉止体と蓋体との間に設けられたプレート装着機構によって保持されている。プレート装着機構は、トルクプレートの一方の面からキャップ室内に向けて突設されたプレート係合部と、キャップ室を形成する壁面に形成された係合突部とを備え、プレート係合部と係合突部とが係合することでトルクプレートを閉止体に装着している。つまり、トルクプレートは、プレート係合部と係合突部との係合により、閉止体に簡単に装着することができる。
【0010】
プレート係合部は、トルクプレートの内周部に配置されかつキャップ室内に向けて突設され、つまり、トルクプレートの外周部に配置されていない構成をとることにより、適用例1は、以下の作用効果を奏する。
【0011】
適用例1にかかる燃料キャップは、トルクプレートの外周部にプレート係合部を設けない分だけ、従来の技術で説明したようなトルクプレートの外周部から突出しかつ閉止体のフランジ部の上部を囲む係合爪を用いた構成と比べて、トルクプレートの外径を小さくでき、よって、燃料キャップ自体の外形も小型化できる。
【0012】
プレート係合部は、トルクプレートの外周部から、閉止体の外周部を越えて張り出していないから、閉止体で注入口を閉じた状態にて、トルクプレートの外周部が注入口を構成する管体の壁面に当たることなく、閉止体の全体を管内に収納することができる。よって、閉止体は、管体により外力に対して保護されることになるから損傷しにくい。
【0013】
[適用例2,3]
適用例2において、上記プレート係合部は、上記トルクプレートから上記キャップ室内に向けて突設された片持ち梁であって弾性変形可能である爪本体と、該爪本体の先端から上記キャップ室の壁面に向けて突設された係合爪とを備え、上記係合突部は、上記キャップ室の壁面から該キャップ室の中心に向けて突設され上記係合爪に係合する係合爪を備えている構成をとることができる。さらに、適用例3として、上記爪本体は、上記トルクプレートの一方の面から該トルクプレートの軸方向に突設されさらに径方向外方に向けて屈曲形成されている構成をとることができる。
【0014】
適用例2,3において、車両の衝突などにより大きな外力が操作機構に加わると、プレート装着機構のプレート係合部と係合突部との係合箇所のうち外力の反対側の係合箇所にて、爪本体が弾性変形し、そして、外力に近い方のプレート係合部および係合突部との係合力を上回ると、トルクプレートおよび操作機構が閉止体に対して傾きつつ外れる。この場合において、プレート係合部は、爪本体をキャップ室に向けて折曲形成され、しかも長く形成することができるから、トルクプレートの外力で爪本体が弾性変形することで、閉止体へ及ぶ衝撃を緩和して、閉止体への損傷に至りにくい。また、爪本体の弾性変形が所定以上になった場合に、係合突部との係合が外れることで、ガスケットを保持している閉止体のシール保持部の周辺や、キャップ室に調圧弁を収納した場合において調圧弁の損傷を招かず、燃料タンクに対するシール性を維持することができる。
【0015】
[他の適用例]
他の適用例として、以下の構成をとることができる。上記トルクプレートは、該トルクプレートの上記キャップ室側の面にガイド突起を備え、上記閉止体は、該閉止体に上記ガイド突起に係合することで上記トルクプレートの回転を規制する本体側係合部を備えている構成をとることができる。
【0016】
他の適用例として、上記トルクプレートの外周部に形成された装着部と、上記操作機構に形成され上記装着部に係合する係合突部とを備え、上記装着部と上記係合突部との係合により、上記操作機構を上記トルクプレートに対して回転可能に支持する操作部装着機構を備えた構成をとることができる。
【0017】
他の適用例として、上記操作機構は、上記トルクプレートに対向して配置される上壁と、該上壁の外周から突設されかつ上記トルクプレートの外周部を囲む側壁とを備えた蓋体から構成され、上記係合突部は、上記側壁の内壁に形成され、上記装着部は、上記トルクプレートの外周部に形成され上記係合突部に係合するとともに上記蓋体が上記トルクプレートに対して所定角度範囲内で回転を許容する凹所である構成をとることができる。
【0018】
他の適用例として、上記操作部装着機構と係合突部と装着部との係合箇所は、上記プレート装着機構の係合突部とプレート係合部との係合箇所より、上記蓋体側に配置されている構成をとることができる。
【0019】
他の適用例として、上記キャップ室に、タンク内と外気との圧力を所定範囲内に調圧する調圧弁を備え、上記調圧弁は、弁体と、該弁体に閉じ方向に付勢するスプリングと、該スプリングの一端を当接支持するスプリング支持部材と備え、上記スプリング支持部材は、上記トルクプレートより上記キャップ室側に配置されている構成をとることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施例にかかる燃料キャップを示す平面図である。
【図2】図1の2−2線に沿った断面図である。
【図3】燃料キャップを分解した断面図である。
【図4】スプリングストッパ機構の組付前の状態を説明する説明図である。
【図5】スプリング支持部材の組付作業を説明する説明図である。
【図6】蓋体とケーシング本体の上部とにわたって設けられたトルク機構を示す分解斜視図である。
【図7】トルク機構を上方から示す説明図である。
【図8】トルク伝達部の第1伝達機構の動作を説明する説明図である。
【図9】クリック音発生部の動作を説明する説明図である。
【図10】ケーシング本体にトルクプレートを取り付ける前の状態を説明する説明図である。
【図11】燃料キャップをフィラーネックに締込んで注入口を閉じている状態を示す説明図である。
【図12】燃料キャップに外力が加わった場合の作用を説明する説明図である。
【図13】燃料キャップに外力が加わった場合の他の作用を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以上説明した本発明の構成・作用を一層明らかにするために、以下本発明の好適な実施例について説明する。
【0022】
(1) 燃料キャップ10の概略構成
図1は本発明の一実施例にかかる燃料キャップ10を示す平面図、図2は図1の2−2線に沿った断面図である。図2において、燃料キャップ10は、図示しない燃料タンクに燃料を供給するための注入口FNaを有するフィラーネックFNに装着されており、ポリアセタール等の合成樹脂材料から形成されたケーシング本体20と、このケーシング本体20の上方に配置されナイロン等の合成樹脂材料から形成される操作部を有する蓋体50と、ケーシング本体20内の弁室20S(キャップ室)に収納された調圧弁30と、トルク機構80と、ケーシング本体20の上部外周に装着されてケーシング本体20とフィラーネックFNとの間をシールするガスケットGSとを備えている。なお、上記課題を解決するための手段にいう閉止体は、注入口FNaをシールした状態で開閉する部材であり、ケーシング本体20とガスケットGSとを含む部材をいうが、ケーシング本体20だけでシール作用を有するものを含む。
燃料キャップ10の構成において、操作者は、蓋体50を掴んで、ケーシング本体20を注入口FNaに挿入して閉じ方向への回転操作をすると、トルク機構80により所定の回転トルクを越えたときにクリック音を発生する節度感を得て、所定回転トルク以上で締められていることを確認することができる。
【0023】
(2) 燃料キャップ10の各部の構成
(2)−1 ケーシング本体20の構成
図3は燃料キャップ10を分解した断面図である。ケーシング本体20は、ほぼ円筒状の外管体21と、外管体21の内側に一体に設けられた弁室形成体22とを備えている。外管体21の外周部には、雄ネジ部21aが形成されており、ケーシング本体20を回転することにより、フィラーネックFNの内壁の雌ネジ部FNbに係合する。ケーシング本体20の上部のフランジ21bの下面には、シール保持部21cが形成されており、このシール保持部21cにガスケットGSが外装されている。ガスケットGSは、シール保持部21cとフィラーネックFNの注入口FNaの壁面との間に介在することで、燃料キャップ10を注入口FNaに締め込むと、シール保持部21cに対して押しつけられてシール作用を果たす。
【0024】
(2)−2 調圧弁30の構成
弁室形成体22の弁室20Sには、調圧弁30が収納されている。調圧弁30は、正圧弁31及び負圧弁35から構成され、燃料タンク内の圧力を所定範囲内に調節する。正圧弁31は、正圧弁体32と、正圧弁体32を保持する弁保持部材33と、正圧弁体32に閉じ方向へ付勢している第1スプリング34とを備えている。また、負圧弁35は、負圧弁体36と、負圧弁体36を閉じ方向へ付勢している第2スプリング37とを備えている。正圧弁31および負圧弁35は、正圧弁体32および負圧弁体36に加わる圧力および第1および第2スプリング34,37のスプリング力のつり合いにより開閉することにより、燃料タンクのタンク内圧を所定範囲内に調整する。
【0025】
正圧弁31を構成する第1スプリング34の上端は、スプリングストッパ機構40によりケーシング本体20に止められている。図4はスプリングストッパ機構40の組付前の状態を説明する説明図である。スプリングストッパ機構40は、外管体21の内壁に形成されたストッパ保持部41と、ストッパ保持部41に係合保持されるスプリング支持部材45とを備えている。ストッパ保持部41は、周方向に90゜の間隔で4箇所形成されており、軸方向に突設されたリブ形状の係止本体41aと、係止本体41aの上部内側を切り欠いた係止部41bとを備えている。スプリング支持部材45は、貫通穴46aを有する円板形状の支持本体46と、この支持本体46の外周部に形成された4箇所の被係合部47とを備え、その間が外周に沿った挿入部48になっている。支持本体46の下面は、第1スプリング34(図3)の上端を支持するためのスプリング支持面46bになっている。被係合部47は、周方向に90゜の間隔で4箇所設けられており、山形の係合突部47aと、係合突部47aから周方向へ所定角度隔てて突設された係止突部47bとを備え、その間が保持スペース47cになっている。また、スプリング支持部材45の上部には、ストッパ保持部41に支持させるときに回転力を加えるための治具(図示省略)を支持するための治具支持部49が貫通穴46aを囲むように凹所で形成されている。
【0026】
図5はスプリング支持部材45の組付作業を説明する説明図である。弁室20S内に調圧弁30を組み付けるには、図3に示すように、第2スプリング37、負圧弁体36を弁室20Sに収納し、弁保持部材33を組み付けた正圧弁体32を負圧弁体36の上面に載置し、さらに第1スプリング34の下端を弁保持部材33上に乗せる。そして、図4に示すように、スプリング支持部材45の被係合部47を、ストッパ保持部41の間に位置合わせする。さらに図5(A)に示すように、スプリング支持部材45を第1スプリング34の上端に乗せて第1スプリング34を圧縮することで、所定量押し下げ、治具を治具支持部49(図4)に嵌める。次いで、図5(B)に示すように、スプリング支持部材45を矢印方向(時計方向)へ回転すると、係合突部47aが係止部41bを乗り越えて、保持スペース47cに係止部41bが保持される。これにより、スプリング支持部材45がストッパ保持部41で回転を規制された状態で保持されるとともに第1スプリング34の上端を支持して、第1スプリング34が正圧弁体32に付勢するようにスプリング支持部材45と弁保持部材33との間に掛け渡される。
【0027】
(2)−3 蓋体50
図2および図3において、蓋体50は、ケーシング本体20のフランジ21bに回転可能かつ着脱自在に装着されており、上壁51と、上壁51の上面に突設された操作部52と、上壁51の外周部に形成された側壁53とを備え、導電性樹脂を用いて射出により一体成形されている。なお、蓋体50は、トルク機構80に組み付けられているが、その組付構造については後述する。
【0028】
(2)−4 トルク機構80の構成
図6は蓋体50とケーシング本体20の上部とにわたって設けられたトルク機構80を示す分解斜視図、図7はトルク機構80を上方から示す説明図である。図7に示すように、トルク機構80は、トルク伝達部82と、クリック音発生部84とを備え、図2に示す燃料キャップ10で注入口FNaを閉じる動作の際に、トルク伝達部82により伝達される回転トルクが所定の値を越えたときに、クリック音発生部84によりクリック音を発して、燃料キャップ10が所定の回転トルクでフィラーネックFNに装着されていることを確認できる機構である。
【0029】
図6において、トルク機構80は、蓋体50とケーシング本体20との間に回転可能に介在するトルクプレート90を備えている。トルクプレート90は、樹脂から形成された円板状のトルク本体91を備えている。トルク本体91は、アーム支持部91aと、切欠きを隔てて配置された外周部91bと、アーム支持部91aと外周部91bとを連結する連結部91cとを備えている。トルク伝達部82は、蓋体50からトルクプレート90へ回転トルクを伝達する第1伝達機構と、トルクプレート90からケーシング本体20に回転トルクを伝達する第2伝達機構とを備えている。第1伝達機構は、蓋体50に形成されたトルク伝達リブ54と、トルクプレート90から弾性変形可能に突設された撓みバネ93とを備えている。トルク伝達リブ54は、操作部52の下壁52aに、半径方向に伸びるリブであり、蓋体50の中心軸から所定距離を隔てて、2カ所突設されている。撓みバネ93は、トルク本体91上に柱状にトルク本体91に対して垂直方向に一体に突設されており、操作部52の凹所52b内に突入して、その先端がトルク伝達リブ54に係合する係合端93aとなっている。
【0030】
図8はトルク伝達部82の第1伝達機構の動作を説明する説明図である。図8(A)に示すように、操作部52の閉じ方向への操作により、図8(B)に示すように、トルク伝達リブ54が撓みバネ93の係合端93aに係合し、トルクプレート90に回転トルクを伝達するとともに、撓みバネ93を倒して弾性変形が大きくなるにつれて開き方向へのスプリング力を蓄積する。
【0031】
図6および図7において、第1伝達機構は、さらに、蓋体50の上壁51の下面に突設されたガイド突部56と、トルクプレート90に形成されたリブ用ガイド部95とを備えている。ガイド突部56は、主として開き方向への回転トルクを伝達するための円柱状の突部である。リブ用ガイド部95は、トルクプレート90に形成された円弧状の切欠きであり、その両端側が押圧端95aと押圧端95bとになっており、ガイド突部56を突入させてガイド突部56を移動可能に支持する。
【0032】
第2伝達機構は、トルクプレート90からケーシング本体20へ回転トルクを伝達するために、トルクプレート90の下面に形成されたガイド突起92と、ケーシング本体20の上部に凹所で形成された本体側係合部23とを備えている。ガイド突起92は、本体側係合部23に挿入されており、トルクプレート90が開き方向および閉じ方向へ回転することにより、ケーシング本体20へ回転トルクを伝達する。
【0033】
クリック音発生部84は、蓋体50の上壁51の下壁に突設されたクリック用係合部55と、トルクプレート90に形成されたクリック用アーム94とを備えている。クリック用係合部55は、外周側に形成された押圧面55aと、円周上の下面に形成された傾斜面55bとを備えている。クリック用アーム94は、アーム支持部91aから片持ち梁で突設されたアーム本体94aと、アーム本体94aの自由端から上方に突設されたクリック用係合突部94cを備えている。クリック用係合突部94cは、トルク本体91のアーム支持部91aに対して所定の間隙を隔てている。クリック用係合突部94cの一端には、押圧面55aに押圧される垂直壁94c1が内周側に形成され、また、傾斜面55bに押圧される傾斜面94c2が円周上に形成されている。
【0034】
図9はクリック音発生部84の動作を説明する説明図である。クリック用係合部55の押圧面55aがクリック用係合突部94cの垂直壁94c1に対向した状態から、蓋体50が閉じ方向に回転すると、図9(A)に示すように、クリック用係合部55の押圧面55aによりクリック用係合突部94cの垂直壁94c1が押され、クリック用アーム94が支持根元94bを支点として外周方向に撓み、クリック用係合部55を乗り越える。このとき、押圧面55aが垂直壁94c1を乗り越えたときに、クリック用係合突部94cが弾性力で戻ることでアーム支持部91aの外周に衝突してクリック音を生じる。一方、蓋体50が開き方向に回転すると、図9(B)に示すように、クリック用係合部55の傾斜面55bがクリック用アーム94の傾斜面94c2を下方へ押して、クリック用アーム94を支持根元94bを支点にして押し下げる。クリック用アーム94の剛性は、クリック用アーム94が外方へ撓むより下方へ撓む方が小さく、しかも、クリック用係合部55およびクリック用係合突部94cが傾斜面でスムーズに滑るから、閉じ方向への回転時よりも、クリック音が小さい。
【0035】
(2)−5 トルクプレート90および蓋体50の取付機構など
次に、ケーシング本体20とトルクプレート90との装着構造(プレート装着機構)およびトルクプレート90と蓋体50との装着構造(操作部装着機構)について説明する。図10はケーシング本体20にトルクプレート90を取り付ける前の状態を説明する説明図、図11は燃料キャップ10をフィラーネックFNに締込んで注入口FNaを閉じている状態を示す説明図である。図10および図11において、上述したようにトルクプレート90の下面には、ガイド突起92が形成されており、ガイド突起92がケーシング本体20の本体側係合部23に係合することで、トルクプレート90がケーシング本体20に対して回転方向に固定されている。プレート装着機構は、トルクプレート90の下面であって、ガイド突起92の内側に周方向に90゜の間隔で突設された4箇所のプレート係合部98と、ケーシング本体20の内周部に形成された係合突部24とを備えている。図11に示すように、プレート係合部98は、トルクプレート90の下面から片持ち梁で形成された爪本体98aと、爪本体98aの端部に径外方に向けて突設された係合爪98bとを備えている。一方、係合突部24は、ケーシング本体20の内周部であって、弁室20S(キャップ室)を形成する壁面に円弧状の係合爪24aが弁室20Sの中心に向けて突設されることで構成されている。係合爪98bを係合爪24aに係合することにより、トルクプレート90がケーシング本体20の上部に装着される。
【0036】
図11において、操作部装着機構は、トルク本体91の外周部に形成された装着部99と、蓋体50の内壁に突設された係合突部53aとを備えている。装着部99は、トルク本体91の外周部に突設された係合段部99aから構成されている。係合突部53aは、側壁53の内壁から4箇所突設されており、係合段部99aに係合することにより、トルクプレート90が蓋体50を回転可能(約20゜)に支持している。操作部装着機構の係合突部53aが装着部99の係合段部99aに係合している箇所は、プレート装着機構のプレート係合部98の係合爪98bがケーシング本体20の係合突部24に係合している箇所より上方に配置されている。
【0037】
燃料キャップ10にトルクプレート90および蓋体50を組み付けるには、以下の作業をとる。まず、トルクプレート90のプレート係合部98の係合爪98bをケーシング本体20の係合突部24に係合する。その後、トルクプレート90をケーシング本体20に組み付け、さらに、蓋体50の係合突部53aをトルクプレート90の係合段部99aに係合させる。
【0038】
(3) 燃料キャップ10の開閉動作
次に、フィラーネックFNの注入口FNaを燃料キャップ10で開閉する操作を行なったときの動作について説明する。
(3)−1 燃料キャップ10の閉じ動作
図2において、蓋体50の操作部52を手で持って、ケーシング本体20を注入口FNaに軸方向に挿入して、操作部52に時計方向の回動力を加えて閉じる操作を行なう。これにより、図8に示すように、操作部52に加えられた時計方向の回動力は、トルク伝達リブ54が撓みバネ93の係合端93aに係合し、撓みバネ93を倒す。このとき、図9(A)に示すように、クリック用係合部55がクリック用アーム94のクリック用係合突部94cに係合することにより、トルクプレート90に伝えられ、トルクプレート90を同方向へ回転させる。トルクプレート90の回転に伴って、図8に示すようにガイド突起92が本体側係合部23を押す。これにより、蓋体50、トルクプレート90、ケーシング本体20が一体に回転して、注入口FNaを閉じる方向へ進む。このとき、図8に示すようにトルク伝達リブ54が撓みバネ93を倒す角度が大きくなるにつれて、操作部52からケーシング本体20に伝達される回転トルクが増大する。
【0039】
そして、この係合する力によって生じる反力が所定回転トルク以上になると、クリック用係合部55がクリック用アーム94を乗り越えて(図9(A))、係脱状態になる。このときクリック用係合部55がクリック用係合突部94cを乗り越えてクリック用係合突部94cが94アーム支持部91aの外周に衝突することでクリック音がでるから、使用者は節度感を確認することができる。これと同時に、図6および図7に示すガイド突部56は、リブ用ガイド部95内をガイドされて、押圧端95aに当たる状態まで移動する。この状態にて、使用者がさらに操作部52を閉じ方向に回転しても、図7に示すように、雄ネジ部21aの端部がフィラーネックFNの始端部FNc1に当たるから、ケーシング本体20が締められすぎになることがない。
【0040】
操作者が指を操作部52から離すと、撓みバネ93がトルク伝達リブ54を介して蓋体50を反時計方向に回動する力を加える。そして、蓋体50が反時計方向に回転することにより、図9(B)に示すように、クリック用係合部55の傾斜面55bは、クリック用アーム94を押し下げてクリック用係合突部94cに倣って乗り越える。そして、図6および図7に示すガイド突部56がリブ用ガイド部95を移動して押圧端95bに当接すると、蓋体50の回転が止まる。この状態にて、燃料キャップ10が注入口FNaを閉じている。
【0041】
(3)−2 燃料キャップ10の開き動作
燃料キャップ10を開くには、蓋体50の操作部52を指で摘んで、反時計方向へ回転する力を加える。これにより、図6および図7に示すように、蓋体50のガイド突部56がトルクプレート90のリブ用ガイド部95の押圧端95bを押圧してトルクプレート90を回転させる。トルクプレート90の回転によりガイド突起92が本体側係合部23を押す。これにより、蓋体50に加わる回転力は、ガイド突部56、トルクプレート90、本体側係合部23を介して、ケーシング本体20に伝達され、蓋体50、トルクプレート90、ケーシング本体20が一体に反時計方向へ回転する。そして、蓋体50と一体にケーシング本体20が約180゜回転すると、雄ネジ部21aがフィラーネックFNの雌ネジ部FNbの始端部から外れて、ケーシング本体20は、フィラーネックFNに対する拘束力から解放される。そして、燃料キャップ10をフィラーネックFNから抜くことができ、注入口FNaが開かれる。
【0042】
(4) 実施例の作用・効果
上記実施例の構成により、以下の作用効果を奏する。
(4)−1 図6および図10において、トルクプレート90は、円形状の部材であり、ケーシング本体20と蓋体50との間に設けられたプレート装着機構によって保持されている。プレート装着機構は、トルクプレート90の一方の面(下面)から弁室20S内に向けて突設されたプレート係合部98と、弁室20Sを形成する壁面に形成された係合突部24とを備え、プレート係合部98と係合突部24とが弾性変形して係合することでトルクプレート90をケーシング本体20に装着している。つまり、トルクプレート90は、プレート係合部98と係合突部24との弾性変形により、ケーシング本体20に簡単に装着することができる。
【0043】
(4)−2 プレート係合部98は、トルクプレート90の内周部に配置されかつ弁室20S内に向けて突設され、つまり、トルクプレート90の外周部に配置されていない構成をとることにより、本実施例は、以下の(a)〜(c)の作用効果を奏する。
【0044】
(a) 図10および図11において、燃料キャップ10は、トルクプレート90の外周部にプレート係合部98を設けない分だけ、従来の技術で説明したようなトルクプレートの外周部から突出しかつケーシング本体のフランジ部の上部を囲む係合爪を用いた構成と比べて、トルクプレート90の外径を小さくでき、よって、燃料キャップ10自体の外形も小型化できる。
【0045】
(b) 図11に示すように、プレート係合部98は、トルクプレート90の外周部から、ケーシング本体20の外周部を越えて張り出していないから、ケーシング本体20で注入口FNaを閉じた状態にて、トルクプレート90の外周部がフィラーネックFNの内壁に当たることなく、ケーシング本体20の全体をフィラーネックFN内に収納することができる。よって、ケーシング本体20は、フィラーネックFNにより外力に対して保護されることになるから損傷しにくい。
【0046】
(c) 図12に示すように、車両の衝突などにより大きな外力F1が蓋体50に加わると、プレート装着機構のプレート係合部98と係合突部24との係合箇所のうち外力の反対側の係合箇所にて、爪本体98aが弾性変形し、そして、外力に近い方のプレート係合部98および係合突部24との係合力を上回ると、トルクプレート90および蓋体50がケーシング本体20に対して傾きつつ外れる。この場合において、プレート係合部98は、爪本体98aを弁室20Sに向けて長くしかも折曲形成されているから、トルクプレート90の外力で爪本体98aが弾性変形することで、ケーシング本体20へ及ぶ衝撃を緩和して、ケーシング本体20への損傷に至りにくい。また、爪本体98aの弾性変形が所定以上になった場合に、係合突部24との係合が外れることで、ガスケットGSを保持しているケーシング本体20のシール保持部21cの周辺や調圧弁30への損傷を招かず、燃料タンクに対するシール性を維持することができる。
【0047】
(4)−3 プレート装着機構は、プレート係合部98の弾性変形する箇所の形状、数または機械的強度を変更することにより、トルクプレート90がケーシング本体20から外れる荷重を設定することも容易である。
【0048】
(4)−4 図13に示すように、蓋体50は、プレート装着機構と別の箇所に配置された装着部99および係合突部53aから構成される操作部装着機構によりトルクプレート90に装着されているから、蓋体50がプレート装着機構の離脱する方向と異なった方向の外力F2を受けても、トルクプレート90から外れることで、高いシール性を維持することができる。
【0049】
なお、この発明は上記実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【符号の説明】
【0050】
10…燃料キャップ
20…ケーシング本体
20S…弁室
21…外管体
21a…雄ネジ部
21b…フランジ
21c…シール保持部
22…弁室形成体
23…本体側係合部
24…係合突部
24a…係合爪
30…調圧弁
31…正圧弁
32…正圧弁体
33…弁保持部材
34…第1スプリング
35…負圧弁
37…第2スプリング
40…スプリングストッパ機構
41…ストッパ保持部
41a…係止本体
41b…係止部
45…スプリング支持部材
46…支持本体
46a…貫通穴
46b…スプリング支持面
47…被係合部
47a…係合突部
47b…係止突部
47c…保持スペース
48…挿入部
49…治具支持部
50…蓋体
51…上壁
52…操作部
52a…下壁
52b…凹所
53…側壁
53a…係合突部
54…トルク伝達リブ
55…クリック用係合部
55a…押圧面
55b…傾斜面
56…ガイド突部
80…トルク機構
82…トルク伝達部
84…クリック音発生部
90…トルクプレート
91…トルク本体
91a…アーム支持部
91b…外周部
91c…連結部
92…ガイド突起
93…撓みバネ
93a…係合端
94…クリック用アーム
94a…アーム本体
94b…支持根元
94c…クリック用係合突部
94c1…垂直壁
94c2…傾斜面
95…リブ用ガイド部
95a…押圧端
95b…押圧端
98…プレート係合部
98a…爪本体
98b…係合爪
99…装着部
99a…係合段部
FN…フィラーネック
FNa…注入口
FNb…雌ネジ部
GS…ガスケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクに接続される注入口(FNa)を開閉する燃料キャップにおいて、
キャップ室を有し、上記注入口(FNa)を閉じる閉止体と、
上記キャップ室を塞ぐように上記閉止体に装着され該閉止体を回転操作するための操作機構と、
上記閉止体と上記操作機構との間に介在し、上記操作機構に加えられる閉じ方向または開き方向への回転トルクを上記閉止体に伝達するための円形状のトルクプレート(90)を有するトルク機構(80)と、
上記トルクプレート(90)を上記閉止体に装着するプレート装着機構と、
を備え、
上記プレート装着機構は、上記トルクプレート(90)の一方の面であって上記キャップ室側に複数配置されるとともに上記キャップ室内に向けて突設されたプレート係合部(98)と、上記キャップ室を形成する壁面に形成され上記プレート係合部(98)に係合することで上記トルクプレート(90)を閉止体に装着する係合突部(24)とを備えたこと、
を特徴とする燃料キャップ。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料キャップにおいて、
上記プレート係合部(98)は、上記トルクプレート(90)から上記キャップ室内に向けて突設された片持ち梁であって弾性変形可能である爪本体(98a)と、該爪本体(98a)の先端から上記キャップ室の壁面に向けて突設された係合爪(98b)とを備え、
上記係合突部(24)は、上記キャップ室の壁面から該キャップ室の中心に向けて突設され上記係合爪(98b)に係合する係合爪(24a)を備えている燃料キャップ。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料キャップにおいて、
上記爪本体(98a)は、上記トルクプレート(90)の一方の面から該トルクプレート(90)の軸方向に突設されさらに径方向外方に向けて屈曲形成されている燃料キャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−176651(P2012−176651A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39877(P2011−39877)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】