説明

燃料タンクの支持体

【課題】本発明は耐久性に優れ、かつ簡単な構成の燃料タンクの支持体を提供する。
【解決手段】支持体10は、燃料タンクFTの内壁であって対向する固定部位にそれぞれ固定されることで燃料タンクFTの膨張収縮を抑制する。支持体10は、タンクの壁面に固定されるダンパ部20と、ダンパ部20と一体の支持部材14とを備えている。ダンパ部20は、第1固定板22と、支持部材14側に接続される第2固定板24と、第1固定板22と第2固定板24とを連結するとともに菱形に対向配置したく字形の脚部26,26とを備えている。脚部26,26は、第1固定板22から突出した第1連結部26aと、第2固定板24から突出した第2連結部26bと、第1連結部26aと第2連結部26bとを回動可能に軸支する軸受機構27とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの燃料タンクに使用される燃料タンクの支持体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車に搭載される燃料タンクとして、ブロー成形方法などにより樹脂で成形されているものが知られている。こうした樹脂製の燃料タンクは、外気温の変動にしたがって膨張・収縮をするが、こうした膨張収縮に伴う不具合を解消するために、燃料タンク内に撓み防止装置を収納した構成が知られている(特許文献1)。従来の撓み防止装置は、燃料タンクの上下壁にそれぞれ当接する柱状部材と、柱状部材に装着されかつ該柱状部材を軸方向に付勢するスプリングとを備え、燃料タンクの膨張収縮による動きを柱状部材で受けるとともに、その動きをスプリングにより緩和することで燃料タンクの損傷を防止している。
【0003】
しかし、従来の撓み防止装置では、柱状部材やスプリングなどの複数の部材を必要とし、構成が複雑になるという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特表2002−536586号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の技術の問題点を解決することを踏まえ、耐久性に優れ、かつ簡単な構成の燃料タンクの支持体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
適用例1は、燃料タンクに収納され、燃料タンクの内壁であって対向する固定部位にそれぞれ固定されることで燃料タンクの膨張収縮を抑制するための燃料タンクの支持体において、
上記固定部位の一方に固定される支持部材と、該支持部材に接続され上記固定部位の他方に固定されるダンパ部とを備え、
上記ダンパ部は、上記固定部位の他方に固定される第1固定板と、上記支持部材側に接続される第2固定板と、上記第1固定板と第2固定板とを連結するとともに菱形に対向配置したく字形の脚部とを備え、
上記脚部は、上記第1固定板から突出した第1連結部と、上記第2固定板から突出した第2連結部と、上記第1連結部と第2連結部の開放端側に設けられ該第1連結部と第2連結部とを回動可能に軸支する軸受機構とを備えたこと、を特徴とする。
【0008】
適用例1において、外気温の変動にしたがって、燃料タンクの外壁と一体に支持体のダンパ部の脚部が軸受機構で回動しつつ伸縮することで、ダンパ部は、燃料タンクの膨張収縮による変形量を抑制するように抵抗力を加える。
【0009】
また、支持体のダンパ部は、脚部に伸縮方向の力が加わったときに軸受機構の箇所で回動することにより、第1連結部と第2連結部との接合部分である屈曲した箇所に、曲げ弾性力が加わらない。すなわち、ダンパ部の脚部をく字形に一体成形した場合には、屈曲した部分に大きな繰り返し荷重が加わり、耐久性を損なうが、適用例1にかかるダンパ部によれば、このような不具合がなく、繰り返し荷重に対する耐久性を向上させることができる。
【0010】
さらに、支持体のダンパ部は、軸受機構で脚部を一体化すれば簡単に組み付けることができるので、従来の技術で説明したように、柱状部材やスプリングなどの部材を組み付けた構成より簡単である。
【0011】
[適用例2]
適用例2は、一方の上記脚部は、上記固定部から突出した第1連結部と、上記第2固定板から突出した第2連結部と、上記第1連結部と第2連結部とを回動可能に軸支する軸受機構とを備え、他方の上記脚部は、他方の脚部は、円弧状のヒンジ部を介して第1連結部および第2連結部とを一体に連結するヒンジ部とを備えている構成である。この構成によれば、ダンパ部が一部品になり、構成および製造が簡単になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以上説明した本発明の構成・作用を一層明らかにするために、以下本発明の好適な実施例について説明する。
【0013】
(1) 燃料タンクおよび支持体の概略構成
図1は本発明の一実施例にかかる燃料タンクの支持体を用いた自動車の燃料タンクFTを示す断面図である。燃料タンクFTは、ポリエチレンを含む樹脂材料を積層して形成されており、周知の方法、つまり円筒状のパリソンを金型に押し出すことにより製造されている。燃料タンクFT内には、支持体10が配置されている。支持体10は、燃料タンクの膨張収縮を抑制したり、燃料の波を低減したりする部材である。
【0014】
(2) 支持体10の構成
支持体10は、ほぼ同じ構成である2本の支持構造11,11Aと、支持構造11,11Aを連結する連結部材12とで構成されている。図2は支持体10を示す斜視図である。支持構造11は、燃料タンクの下壁FT1(固定部位)に溶着されたダンパ部20と、ダンパ部20の上部に形成された支持部材14と、支持部材14の上部に形成され燃料タンクFTの上壁FT2(固定部位)と溶着する上溶着部15とを備えている。
【0015】
図3はダンパ部20を示す側面図である。ダンパ部20は、燃料タンクFTの膨張収縮を吸収するための部材であり、燃料タンクFTに溶着可能な樹脂材料、例えば、ポリエチレンなどの樹脂により一体形成されており、燃料タンクFTの下壁FT1に溶着される第1固定板22と、支持部材14と一体の第2固定板24と、第1固定板22と第2固定板24とを連結する脚部26,26と、第2固定板24から下方に突出した規制部28とを備えている。第1固定板22は、その下面が燃料タンクFTの下壁FT1に溶着されるように平板状である。第2固定板24は支持部材14の下部と一体に形成され、第1固定板22と平行に配置されている。
【0016】
図4はダンパ部20を分解して示す斜視図である。脚部26,26は、第1固定板22と第2固定板24とを連結するとともに菱形に配向配置した、く字形で収縮可能である、いわゆるパンタグラフの形状であり、第1固定板22から斜めに突出した第1連結部26aと、第2固定板24から斜めに突出した第2連結部26bと、第1連結部26aと第2連結部26bとを回動可能に支持する軸受機構27とを備えている。軸受機構27は、第1連結部26aの開放端に形成された軸受部27aと、第2連結部26bの開放端に形成され軸体27bとを備え、軸体27bが軸受部27aに軸支されることにより、第1連結部26aと第2連結部26bとが回動可能になっている。
上記規制部28は、第2固定板24の中央下部から突設された棒状であり、ダンパ部20が撓んだときに規制部28の下端が第1固定板22に当たって、撓み量を規制するための部材である。
【0017】
(3) 燃料タンクシステムの製造
支持体10に支持された燃料タンクユニットを製造するには、汎用のブロー成形により行なうことができる。すなわち、ブロー成形機の押出機から、円筒状のパリソンを型開きしている金型のキャビティに押し出すとともに、パリソン内に支持体10を挿入し、さらにパリソン内にエアーを吹き込み、金型の成形面に倣わせてタンク外壁となるように賦形する。このとき、タンク外壁は、軟化状態のパリソンと支持体10の上溶着部15およびダンパ部20の第1固定板22で溶着することで支持体10と一体化する。
【0018】
(4) 実施例の作用・効果
上記実施例の構成により、以下の作用・効果を奏する。
(4)−1 図1および図3に示すように、外気温の変動にしたがって、燃料タンクFTの外壁と一体の支持体10のダンパ部20の脚部26,26が軸受機構27で回動しつつ伸縮することで、ダンパ部20は、燃料タンクFTの膨張収縮による変形量を抑制するように抵抗力を加える。このとき、変形量が所定以上となったときに、規制部28が第1固定板22に当たってダンパ部20の変形量を規制する。
【0019】
(4)−2 支持体10のダンパ部20は、脚部26,26に伸縮方向の力が加わったときに軸受機構27の箇所で回動することにより、第1連結部26aと第2連結部26bとの接合部分である屈曲した箇所に、曲げ弾性力が加わらない。すなわち、比較例にかかる図6に示すように、ダンパ部100の脚部102をく字形に一体成形した場合には、屈曲した部分102aに大きな繰り返し荷重が加わり、耐久性を損なうが、本実施例にかかるダンパ部20によれば、このような不具合がなく、繰り返し荷重に対する耐久性を向上させることができる。
【0020】
(4)−3 支持体10のダンパ部20は、軸受機構27で脚部26,26を一体化すれば簡単に組み付けることができるので、従来の技術で説明したように、柱状部材やスプリングなどの部材を組み付けるより簡単な構成である。
【0021】
なお、この発明は上記実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0022】
図6は他の実施例にかかるダンパ部20Bを示す側面図である。本実施例は、ダンパ部20Bの脚部26B,26Cの構成に特徴を有する。一方の脚部26Bは、軸受機構27Bを介して第1連結部26Baと第2連結部26Bbを回動可能に支持されており、他方の脚部26Cは、円弧状のヒンジ部28Cを介して第1連結部26Caおよび第2連結部26Cbを一体に連結している。本実施例によれば、ダンパ部20Bが一部品になり、構成および製造が簡単になる。また、ヒンジ部28Cが円弧状であるから、応力が分散し、耐久性を損なうこともない。また、仮にヒンジ部28Cが破損しても、軸受機構27Bからなる脚部26Bが連結されており、ダンパ部20Bの全体が支持機能を損なうように破損することもない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施例にかかる燃料タンクの支持体を用いた自動車の燃料タンクを示す断面図である。
【図2】燃料タンクの支持体を示す斜視図である。
【図3】ダンパ部を示す側面図である。
【図4】ダンパ部を分解して示す斜視図である。
【図5】比較例にかかるダンパ部を示す側面図である。
【図6】他の実施例にかかるダンパ部を示す側面図である。
【符号の説明】
【0024】
10…支持体
11,11A…支持構造
12…連結部材
14…支持部材
15…上溶着部
20…ダンパ部
20B…ダンパ部
22…第1固定板
24…第2固定板
26B,26C…脚部
26…脚部
26a…第1連結部
26b…第2連結部
26Ba…第1連結部
26Ca…第1連結部
26Bb…第2連結部
26Cb…第2連結部
27…軸受機構
27B…軸受機構
27a…軸受部
27b…軸体
28…規制部
28C…ヒンジ部
100…ダンパ部
102…脚部
102a…部分
FT…燃料タンク
FT1…下壁
FT2…上壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクに収納され、燃料タンクの内壁であって対向する固定部位にそれぞれ固定されることで燃料タンクの膨張収縮を抑制するための燃料タンクの支持体において、
上記固定部位の一方に固定される支持部材(14)と、該支持部材(14)に接続され上記固定部位の他方に固定されるダンパ部(20)とを備え、
上記ダンパ部(20)は、上記固定部位の他方に固定される第1固定板(22)と、上記支持部材(14)側に接続される第2固定板(24)と、上記第1固定板(22)と第2固定板(24)とを連結するとともに菱形に対向配置したく字形の脚部(26,26)とを備え、
上記脚部(26,26)は、上記第1固定板(22)から突出した第1連結部(26a)と、上記第2固定板(24)から突出した第2連結部(26b)と、上記第1連結部(26a)と第2連結部(26b)の開放端側に設けられ該第1連結部(26a)と第2連結部(26b)とを回動可能に軸支する軸受機構(27)とを備えたこと、を特徴とする燃料タンクの支持体。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料タンクの支持体において、
一方の上記脚部(26B)は、上記第1固定板から突出した第1連結部(26Ba)と、上記第2固定板から突出した第2連結部(26Bb)と、上記第1連結部(26Ba)と第2連結部(26Cb)とを回動可能に軸支する軸受機構(27B)とを備え、
他方の上記脚部(26C)は、円弧状のヒンジ部(28C)を介して第1連結部(26Ca)と第2連結部(26Cb)とを一体に連結するヒンジ部(28C)とを備えていること、を特徴とする燃料タンクの支持体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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