説明

燃料タンク構造

【課題】燃料収容部内の燃料に加速度が生じた場合に、燃料送出室に燃料を確実に確保することが可能な燃料タンク構造を得る。
【解決手段】リザーブカップ42内には、ジェットポンプ66とメインサクション46の間に位置する仕切板72が設置され、リザーブカップ42内を、メインサクション46が配置された燃料送出室42Aと、ジェットポンプ66が配置された燃料導入室42Bとに隔てている。仕切板72は、車両前後方向に対して傾斜して配置されており、リザーブカップ42内の燃料に対し車両の前方向、車両後方向、左方向及び右方向のいずれの方向の加速度が作用した場合でも、燃料導入室42B内の燃料の一部が燃料送出室42Aに流れ込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に備えられる燃料タンク構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に備えられる燃料タンク構造として、特許文献1には、サブカップ内を主室を副室とに区画する分離壁をそなえたものが記載されている。この構造では、エンジンの駆動によってジェットポンプ内に生じた負圧により燃料が副室内流入し、副室内の燃料が分離壁の高さを超えると、主室に流入する。そして、主室内の燃料がサクションフィルタから吸引されるようになっている。
【0003】
ところで、車両の走行に伴い、燃料タンク構造(燃料タンク)には特定の方向の加速度が作用することが想定されるが、特許文献1の構造において、主室(燃料送出室)の内部の燃料が少ないと、生じた加速度により燃料が遍在してしまうため、サクションフィルタからの吸引が困難になることがある。たとえば、特許文献1の構造で分離壁を車両前後方向に配置し、車幅方向左側に主室、右側に副室を設定すると、車幅方向右側へ加速度が生じた場合に、副室内の燃料が分離壁から離れる方向へ移動するため、副室から主室への燃料の流入が困難になる。
【0004】
したがって、サブカップ(燃料収容部)内の燃料に加速度が作用した場合に、燃料導入室から燃料送出室へ燃料を確実に供給可能とすることが望まれる。
【特許文献1】特開2007−69747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、燃料収容部内の燃料に加速度が生じた場合に、燃料送出室に燃料を確実に確保することが可能な燃料タンク構造を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、燃料を収容する燃料収容部と、前記燃料収容部内を、燃料を外部へ送出するための燃料送出室と燃料が外部から導入される燃料導入室とに隔てる仕切板と、を備え、前記仕切板が車両前後方向に対して斜めに配置されていることを特徴とする。
【0007】
この燃料タンク構造では、燃料収容部が仕切板によって燃料送出室と燃料導入室との隔てられており、外部からの燃料は、まず、燃料導入室に導入される。そして、燃料導入室の燃料液面が仕切壁を超えると、超えた分の燃料が燃料送出室に流れ込む。
【0008】
ここで、仕切壁は、車両前後方向に対して斜めに配置されている。したがって、車両の前方向、後方向、左方向及び右方向のいずれの方向の加速度が燃料収容部の燃料に作用した場合でも、燃料挿入室内の燃料の一部が仕切壁を乗り越えて燃料送出室に流れ込む。すなわち本発明では、上記したいすれも方向の加速度が生じた場合でも、燃料導入室から燃料送出室へ燃料を確実に供給することが可能となる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、前記燃料収容部の周壁の上端が、前記仕切板の上端よりも高くなっていることを特徴とする。
【0010】
したがって、燃料導入室内の燃料が周壁を越えて不用意に外部に流出することを防止できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上記構成としたので、燃料収容部内の燃料に加速度が生じた場合に、燃料送出室に燃料を確実に確保することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1には、本発明の一実施形態の燃料タンク構造12が示されている。以下、図面において、車両前方を矢印FRで、車幅方向左側を矢印LHで、車幅方向右側を矢印RHで、上方を矢印UPでそれぞれ示す。
【0013】
燃料タンク構造12は、燃料が収容される燃料タンク本体32を有している。燃料タンク本体32側の上部には図示しないフィラーパイプが備えられており、燃料タンク本体32へ給油できるようになっている。なお、本発明の燃料収容部は燃料タンク本体32によって構成されている。すなわち、本実施形態の燃料タンク構造では、燃料収容部を1つのみ備えた構成となっている。
【0014】
燃料タンク本体32内には、上面が開放された箱状のリザーブカップ42が配置されており、このリザーブカップ42の底部の近傍に、燃料送出配管44の下部が位置している。燃料送出配管44の一端(下端)はフィルター48を備えたメインサクション46とされ、フューエルフィルター50を介して、他端(上端)にはサクションポンプ52が接続されている。さらに、サクションポンプ52には図示しない燃料供給配管が接続されており、サクションポンプ52の駆動によって、リザーブカップ42内の燃料を図示しないエンジン等に供給することができる。
【0015】
また、サクションポンプ52にはリターン配管56の上端が接続されており、このリターン配管56の下端はリザーブカップ42(本実施形態では特に、後述する燃料導入室42A)の内部に位置している。サクションポンプ52により吸引された燃料の一部は、リターン配管56を通じてリザーブカップ42内に戻される。
【0016】
リターン配管56の下端にはジェットポンプ66が取り付けられている。ジェットポンプ66には、燃料移送配管60の一端が接続されており、この燃料移送配管60の他端は、燃料タンク本体32内(但しリザーブカップ42の外側)に配置されると共に、フィルター70が取り付けられている。リターン配管56を通じて戻されたリターン燃料により、ジェットポンプ66に負圧を作用させ、この負圧により、燃料移送配管60を通じて燃料をリザーブカップ42の外部から内部へと移送する。
【0017】
図2及び図3(A)〜(E)にも示すように、リザーブカップ42内には、ジェットポンプ66とメインサクション46の間に位置するように、燃料非透過性の仕切板72が設置されている。図1から分かるように、仕切板72高さは、リザーブカップ42の周壁42Wよりも低くされており、リザーブカップ42の周壁44Wの上端は、仕切板72の上端よりも高い位置にある。
【0018】
また、仕切板72の底辺及び側辺はリザーブカップ42の内面に接触しており、リザーブカップ42内を、メインサクション46が配置された燃料送出室42Aと、ジェットポンプ66が配置された燃料導入室42Bとに隔てている。したがって、燃料導入室42Bに流入した燃料は、液位が仕切板72の上端に達するまでは、燃料導入室42B内に貯留される。そして、燃料導入室42B内の燃料の液位が仕切板72の上端に達する(超える)と、燃料の一部が仕切板72を乗り越えて燃料送出室42Aに流れ込む。
【0019】
図2に詳細に示すように、本発明の仕切板72は、車両前後方向に対して傾斜して配置されている。特に本実施形態では、リザーブカップ42を平面視して(上方から見て)仕切板72が車両前後方向に対し略45度の角度となるように配置している。そして、燃料導入室42Bが仕切板72の斜め前方右側に、燃料送出室42Aが仕切板72の斜め後方左側に位置している。
【0020】
なお、リザーブカップ42の下部には連通孔58が形成されている。この連通孔58を通じて燃料が移動することで、燃料送出室42Aの内部と外部との燃料の液位が同じなる。
【0021】
このような構成とされた本実施形態の燃料タンク構造12では、サクションポンプ52の駆動により、リザーブカップ42(燃料送出室42A)内の燃料を図示しないエンジン等へ送出することができる。また、このときの燃料の一部は、リターン配管56を通じて燃料送出室42A内に戻すことができる。
【0022】
ジェットポンプ66では、リターン燃料により負圧が発生する。そして、この負圧により、燃料移送配管60を通じて燃料がリザーブカップ42の外部から内部(燃料導入室42B内)へと移送される。
【0023】
本実施形態では、リザーブカップ42内に仕切板72が設けられており、リザーブカップ42内が燃料送出室42Aと燃料導入室42Bとに隔てられているため、リザーブカップ42内に流入した燃料の一定量が燃料導入室42Bに確保される。そして、燃料導入室42B内の燃料の液位が仕切板72を超えると、燃料が仕切板72を乗り越え、燃料送出室42Aに流れ込む。ここで、リザーブカップ42の周壁44Wの上端は、仕切板72の上端よりも高い位置にあるため、燃料導入室42B内の燃料が不用意にリザーブカップ42から周壁44Wを越えて外部に流れ出ることはない。
【0024】
ここで、本実施形態では、仕切板72を車両前後方向に対して傾斜して配置している。したがって、リザーブカップ42に車両の前方向、車両後方向、左方向及び右方向のいずれの方向の加速度が作用した場合でも、燃料導入室42B内の燃料の一部が、仕切板72を乗り越え、燃料送出室42Aに流れ込む。
【0025】
図3(B)〜(E)には、本実施形態の燃料タンク構造12において、車両の前方向、車両後方向、左方向及び右方向のいずれかの方向の加速度が作用したそれぞれの場合の燃料の挙動が示されている(加速後の方向を矢印Gで示している)。すなわち、図3(B)に示すように、たとえば車両の加速時や登坂時等で車両後方側への加速度が作用した場合には、燃料導入室42B内の燃料が後方へと移動して仕切板72を乗り越え、燃料送出室42Aに流れ出る。また、図3(C)に示すように、車両の減速時や降坂時等で車両前方側への加速度が作用した場合には、燃料導入室42B内の燃料が前方へと移動して仕切板72を乗り越え、燃料送出室42Aに流れ出る。
【0026】
図3(D)に示すように、たとえば車両の左旋回時等で車両右側への加速度が作用した場合には、燃料導入室42B内の燃料が右側へと移動するため、仕切板72の後端部分の近傍で液位が仕切板72よりも高くなる。これにより、燃料導入室42B内の燃料の一部が仕切板72を乗り越え、燃料送出室42Aに流れ出る。また、図3(E)に示すように、車両の右旋回時等で車両左側への加速度が作用した場合には、燃料導入室42B内の燃料が左側へと移動するため、仕切板72の前端部分の近傍で液位が仕切板72よりも高くなる。これにより、燃料導入室42B内の燃料の一部が仕切板72を乗り越え、燃料送出室42Aに流れ出る。なお、いずれの場合でも、燃料導入室42B内の燃料が不用意にリザーブカップ42から周壁44Wを越えて外部に流れ出ることはない。
【0027】
ここで、図4(A)には比較例として、仕切板72を車両前後方向に配置した以外は、本実施形態と同一の構成とされた燃料タンク構造が、リザーブカップ42の近傍として拡大して示されている。なお、比較例では、このように仕切板72の配設方向のみが上記実施形態と異なっているため、実施形態と同一の構成要素には同一符号を付している。
【0028】
比較例では、図4(B)に示すように、車両後方側への加速度が作用した場合には、燃料導入室42B内の燃料が後方へと移動して、仕切板72の後端近傍において液位が仕切板72よりも高くなる。このため、燃料導入室42B内の燃料の一部が仕切板72を乗り越え、燃料送出室42Aに流れ出る。また、図4(C)に示すように、車両前方側への加速度が作用した場合には、燃料導入室42B内の燃料が前方へと移動して、仕切板72の前端近傍において液位が仕切板72よりも高くなる。このため、燃料導入室42B内の燃料の一部が仕切板72を乗り越え、燃料送出室42Aに流れ出る。さらに、図4(E)に示すように、車両左側への加速度が作用した場合には、燃料導入室42B内の燃料が左側へと移動して仕切板72を乗り越え、燃料送出室42Aに流れ出る。しかし、車両右側への加速度が作用した場合には、図4(D)に示すように、燃料導入室42B内の燃料は、単に右側へと移動して仕切板72から離れるので仕切板72を乗り越えず、燃料送出室42Aに流れ出ることもない。
【0029】
以上の説明から分かるように、本実施形態の燃料タンク構造12では、リザーブカップ42内の燃料に対し車両の前方向、車両後方向、左方向及び右方向のいずれの方向の加速度が作用した場合でも、燃料導入室42B内の燃料の一部を燃料送出室42Aに流れ込ませることで、燃料導入室42B内の燃料を燃料送出室42Aに確実に供給することができる。
【0030】
なお、上記実施形態では、仕切板72の配設方向として、平面視で車両前後方向に対し略45度の角度となるようにしているが、配設方向はこれに限定されない。要するに、リザーブカップ42内の燃料に対し車両の前方向、車両後方向、左方向及び右方向のいずれの方向の加速度が作用した場合でも、燃料が仕切壁72を超えるような配設方向であればよい。
【0031】
また、上記では本発明の燃料タンク構造として、燃料収容部が1つのみ(燃料タンク本体32)で構成された例を挙げたが、たとえば、いわゆる鞍型タンク等のように、燃料を収容する部位を複数備えた構造に本発明を適用してもよい。鞍型タンクの場合には、燃料を収容する部位の1つにリザーブカップ42が配置されるため、このリザーブカップ42を、本発明に係る燃料収容部として、本発明を適用すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態の燃料タンク構造を示す概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態の燃料タンク構造を構成するリザーブカップを拡大して示す平面図である。
【図3】(A)は、本発明の一実施形態の燃料タンク構造を構成するリザーブカップを拡大して示す斜視図である、(B)〜(F)はそれぞれ、リザーブカップ内の燃料の挙動を加速度の方向に応じて示す説明図である。
【図4】(A)は、比較例の燃料タンク構造を構成するリザーブカップを拡大して示す斜視図である、(B)〜(F)はそれぞれ、リザーブカップ内の燃料の挙動を加速度の方向に応じて示す説明図である。
【符号の説明】
【0033】
12 燃料タンク構造
32 燃料タンク本体
42 リザーブカップ(燃料収容部)
42A 燃料送出室
42B 燃料導入室
44 燃料送出配管
46 メインサクション
48 フィルター
50 フューエルフィルター
52 サクションポンプ
56 リターン配管
58 連通孔
60 燃料移送配管
66 ジェットポンプ
72 仕切板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を収容する燃料収容部と、
前記燃料収容部内を、燃料を外部へ送出するための燃料送出室と燃料が外部から導入される燃料導入室とに隔てる仕切板と、
を備え、
前記仕切板が車両前後方向に対して斜めに配置されていることを特徴とする燃料タンク構造。
【請求項2】
前記燃料収容部の周壁の上端が、前記仕切板の上端よりも高くなっていることを特徴とする請求項1に記載の燃料タンク構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−179226(P2009−179226A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−21267(P2008−21267)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【出願人】(502148037)株式会社エフティエス (34)
【Fターム(参考)】