説明

燃料タンク構造

【課題】燃料タンクの変位部の傾斜を抑制して燃料タンクの容積を十分に増大させることが可能な燃料タンク構造を得る。
【解決手段】燃料タンク14には、蛇腹部22が設けられてその内側が変位部24とされ、燃料タンク14の内圧が上昇すると変位部24が上方へ変位する。変位部24には変位部24とフロアパネル18の双方に接触する複数の弾性部材26が固定されており、変位部24の上昇時には弾性部材26が圧縮される。蛇腹部22の柔軟性に不均一があっても、変位部24の上昇時の傾斜が抑制されるので、燃料タンク14の容量を十分に増大させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンク構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に備えられる燃料タンク構造では、たとえば特許文献1に記載されているように、燃料タンクの内圧上昇に応じて弾性変形することでタンク容積を可変とする上壁部を設けたものがある。
【0003】
ところで、燃料タンクの一部を変位させて燃料タンクの容積を可変にする燃料タンク構造では、たとえば変位部分の柔軟性(変位のしやすさ)にわずかな不均一があると、特定部位が大きく伸縮して変位するため、変位部が傾斜して変位し、燃料タンクの容積を十分に増大できない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−30539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、燃料タンクの変位部の傾斜を抑制して燃料タンクの容積を十分に増大させることが可能な燃料タンク構造を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、内部に燃料を収容可能な燃料タンクと、前記燃料タンクの外壁に環状に形成されて外壁を区画すると共に、変形により、区画された一方を他方に対し変位可能な変位部とし、この変位部の変位により燃料タンクの容積を増大させる変形部と、前記変位部と、該変位部と対向する車体の対向部との間で、変位部の変位時に変位部と対向部との間に挟まれて弾性変形することで変位部の変位量を均一化するように配置された弾性部材と、を有する。
【0007】
この燃料タンク構造では、燃料タンクの外壁に環状に形成された変形部により、燃料タンクの外壁に変位部が構成される。燃料タンクの内圧が外圧に対して相対的に大きくなると、変形部が変形することで変位部が変位し、燃料タンクの容積が増大する。
【0008】
変位部と、車体の対向部との間には、弾性部材が配置されている。弾性部材は、変位部が変位して対向部に接近したときに変位部と対向部との間に挟まれて弾性変形することで、変位部の変位量を均一化する。したがって、弾性部材の弾性を適切に設定しておくことで、変位部は傾斜を抑制されて変位する。これにより、変位部が傾斜してしまった場合と比較して、燃料タンクの容積を十分に増大させることが可能となる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記弾性部材よりも高剛性とされ前記変位部と前記対向部との間に配置され、変位部の変位により変位部と対向部の双方に接触して変位部の変位を所定範囲に制限する制限部材、を有する。
【0010】
すなわち、変位部が過度に変位しようとしたときは、変位部と対向部の間に配置された制限部材が、変位部と対向部の双方に接触し、変位部の変位を所定範囲に制限する。変形部の過度の変位が抑制され、燃料タンクの耐久性が向上する。
【0011】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記弾性部材が、前記変位部を変位方向に見たときの変位部の中心を取り囲むように少なくとも2つ配置されている。
【0012】
このように、弾性部材が、変位部の中心を取り囲むように少なくとも2つ配置されていると、変位部の変位時における傾斜をさらに抑制でき、燃料タンクの容積をより十分に増大させることが可能となる。
【0013】
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の発明において、前記制限部材が、前記変位部の中心に配置されている。
【0014】
請求項5に記載の発明では、請求項3に記載の発明において、前記制限部材が前記弾性部材と一体化されている。
【0015】
すなわち、制限部材の数や配置は特に限定されるものではないが、請求項4に記載のように変位部の中心に配置すると、1つの制限部材で、変位部の過度の変位を制限可能となる。また、請求項5に記載のように、制限部材が弾性部材と一体化されていると、狭い範囲に弾性部材と制限部材とを配置可能となる。
【0016】
請求項6に記載の発明では、請求項1〜請求項5に記載の発明において、前記変形部が、前記燃料タンクの天面に枠状に形成された蛇腹部とされ、前記蛇腹部の内側に前記変位部が構成されている。
【0017】
このように、燃料タンクの天面に蛇腹部を枠状に形成することで、この蛇腹部の内側に変位部が構成される。蛇腹部としては、燃料タンクを全体にわたって取り囲むように形成する必要がなく、簡単な構造となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は上記構成としたので、燃料タンクの変位部の傾斜を抑制して燃料タンクの容積を十分に増大させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態の燃料タンク構造を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態の燃料タンク構造を示す図1の2−2線断面図であり、(A)は変位部が上昇していない状態、(B)は変位部が上昇している状態である。
【図3】比較例の燃料タンク構造を図2と同様の断面で示す断面図であり、(A)は変位部が上昇していない状態、(B)は変位部が上昇している状態である。
【図4】(A)〜(C)はいずれも、本発明の第1実施形態の燃料タンク構造における弾性部材の配置を示す平面図である。
【図5】本発明の第2実施形態の燃料タンク構造を弾性部材及びその近傍で部分的に拡大して示す断面図であり、(A)は変位部が上昇していない状態、(B)は変位部が上昇している状態である。
【図6】本発明の第3実施形態の燃料タンク構造を弾性部材及びその近傍で部分的に拡大して示す断面図であり、(A)は変位部が上昇していない状態、(B)は変位部が上昇している状態である。
【図7】本発明の第4実施形態の燃料タンク構造を変位部が上昇していない状態で示す断面図である。
【図8】本発明の第5実施形態の燃料タンク構造を変位部が上昇していない状態で示す断面図である。
【図9】本発明の第6実施形態の燃料タンク構造を変位部が上昇していない状態で示す断面図である。
【図10】本発明の第7実施形態の燃料タンク構造を変位部が上昇していない状態で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1及び図2には、本発明の第1実施形態の燃料タンク構造12が示されている。この燃料タンク構造12は、内部に燃料GSを収容することが可能な燃料タンク14を有している。燃料タンク14の形状は特に限定されないが、本実施形態では、直方体の略箱状に形成されている。
【0021】
燃料タンク14には、図示しないインレットパイプが接続されており、このインレットパイプを通じて、給油することができる。また、燃料タンク14には、燃料をエンジンに送出するための燃料ポンプ及び送出配管が設けられている。
【0022】
燃料タンク14の底面14Bには、上方に向かって部分的に凹ませることで、複数本(図1及び図2では2本)のタンクバンド用凹部16が形成されている。このタンクバンド用凹部16に、後述するタンクバンド25の中間部分がはめ込まれる。そして、タンクバンド25の両端部分が車体に固定されることで、燃料タンク14が車体に取り付けられる。
【0023】
図2(A)から分かるように、車体への取り付け状態で、燃料タンク14の上方には、所定間隔をあけて、車体のフロアパネル18が対向している。燃料タンク14の天面14Tには、角部14Cの近傍にスペーサ20が取り付けられており、燃料タンク14の天面14Tとフロアパネル18との間には、所定の間隙30が維持されている。
【0024】
燃料タンク14の天面14Tには、上方から見て(平面視にて)天面14Tよりも小さいサイズの枠状(長方形状)の蛇腹部22が形成されている。蛇腹部22は、図2(A)及び(B)に示すように、天面14Tを上下に波形状とすることで形成されており、本発明の変形部を構成している。
【0025】
蛇腹部22により、燃料タンク14の外壁が実質的に2つの領域に区画されており、蛇腹部22の内側は、略平板状の変位部24とされている。変位部24は、燃料タンク14の天面14T(蛇腹部22の外側の部分)よりも低い位置となっているが、燃料タンク14の内圧が上昇すると蛇腹部22が変形し、変位部24が上方へ変位する。これにより、燃料タンク14の容積が増大され、燃料タンク14の過度の内圧上昇が抑制される。
【0026】
変位部24の上面には、図2(A)にも示すように、複数の弾性部材26が固定されている。本実施形態では、弾性部材26はそれぞれ円柱状に形成されており、その高さH1は、変位部24とフロアパネル18との間隔D1と等しいか、僅かに低い程度とされている。したがって、弾性部材26は、変位部24とフロアパネル18の双方に接触している。
【0027】
また、図1から分かるように、本実施形態では、変位部24を平面視したときの中心24Cを取り囲むように、変位部24の角部の近傍に、4つの弾性部材26が固定されている。なお、弾性部材26を変位部24に固定する方法は特に限定されず、接着剤を用いた接着であってもよいし、係合や嵌合によって固定してもよい。
【0028】
さらに、変位部24の上面には、制限部材28が固定されている。本実施形態では、制限部材28は、円柱状(あるいは略直方体のブロック状)に形成されている。制限部材28の高さH2は、変位部24とフロアパネル18との間隔D1よりも低くされており、制限部材28の上面とフロアパネル18との間に所定の隙間32が構成されている。変位部24が上昇するとこの隙間32が解消される。そして、制限部材28の上面がフロアパネル18に接触することで、変位部24の上昇量が所定範囲(隙間32の高さ分)に制限される。
【0029】
次に、本実施形態の燃料タンク構造12の作用を説明する。
【0030】
本実施形態の燃料タンク14では、天面14Tに蛇腹部22が構成されている。通常状態では、図2(A)に示すように、変位部24は、フロアパネル18との間に所定の間隔D1を構成する位置にある。ここで、燃料タンク14の内圧が上昇すると、図2(B)に示すように、蛇腹部22が変形し、変位部24が上昇する。これにより、燃料タンク14の容積が増大され、燃料タンク14の過度の内圧上昇が抑制される。
【0031】
ここで、図3(A)には、比較例の燃料タンク構造152が示されている。比較例の燃料タンク構造152では、燃料タンク14に蛇腹部22及び変位部24が構成されている点は第1実施形態の燃料タンク構造12と同様であるが、弾性部材26及び制限部材28が設けられていない点が異なっている。なお、比較例の燃料タンク構造152において、第1実施形態の燃料タンク構造12と同一の部材には同一符号を付している。
【0032】
比較例の燃料タンク構造152では、たとえば蛇腹部22の柔軟性にわずかな不均一があっても、図3(B)に示すように、変位部24が傾斜して上昇することがある。そして、このように変位部24が傾斜すると、燃料タンク14の容量を十分に大きくすることができない。
【0033】
これに対し、第1実施形態の燃料タンク構造12では、変位部24とフロアパネル18の間に弾性部材26が配置されている。このため、変位部24が上昇しようとすると、図2(B)にも示したように、変位部24とフロアパネル18の間に弾性部材26が挟まれて弾性変形する。換言すれば、変位部24の上昇は、弾性部材26の弾性(変形のしやすさ)に依存することになる。したがって、蛇腹部22の柔軟性に不均一があっても、変位部24が上昇するときにこの不均一の影響を受けない。たとえば、蛇腹部22に局所的に脆弱な部分があっても、この脆弱な部分の近傍の弾性部材26により、脆弱部分の局所的な変形が抑制される。すなわち、第1実施形態の燃料タンク構造12では、変位部24の上昇量が均一化される(均一に近づく)ことになるので、傾斜が抑制されて(好ましくは傾斜しないようにして)、フロアパネル18と平行な状態を維持したまま上昇する。これにより、比較例の燃料タンク構造152と比較して、燃料タンク14の容量を十分に増大させることができる。
【0034】
また、特に燃料タンク14は、変位部24が上昇したときの容積増大量が所定量となるようにその大きさがあらかじめ設定されているが、このように変位部24が傾斜することなく上昇すると、実際の燃料タンク14の容積の増大量を、この規定の容積増大量に一致させることが可能となる。
【0035】
変位部24の上昇量が所定量に達すると、制限部材28の上面がフロアパネル18の接触し、変位部24の上昇が制限される。これにより、燃料タンク14の過度の変形を抑制でき、信頼性が向上する。
【0036】
なお、制限部材28の位置及び数は上記したものに限定されないが、変位部24の中心24Cでは、複数の弾性部材26の変形量にわずかな差が生じていても、これら複数の弾性部材26の平均的な変形量と同じ変位量となる。このため、1つの制限部材28で、バランスよく変位量を制限することが可能となる。
【0037】
上記では、図4(A)にも示したように、変位部24の角部の近傍に4つの弾性部材26を配置することで、弾性部材26が変位部24の中心24Cを取り囲んでいる例を挙げているが、このように、弾性部材26が変位部24の中心24Cを取り囲む配置は、図4(A)に示したものに限定されない。たとえば図4(B)に示すように、3つの弾性部材26を用いて、これらの弾性部材26が中心24Cを取り囲む三角形の頂点に位置する構成でもよい。さらに、図4(C)に示すように、複数(図4(C)では3つとなっているが2つあるいは4つ以上でもよい)の弾性部材26が、中心24Cを間に含んで直線状に配置されている構成でもよい。
【0038】
いずれにおいても、弾性部材26が変位部24の中心24Cを取り囲むように、少なくとも2つ配置されていると、変位部24の上昇量をより均一に近づけて、変位部24の傾きを効果的に抑制することができるので、燃料タンク14の容積をより十分に増大させることが可能となる。さらに、弾性部材26は1つのみとし、たとえば、中心24Cを内部に取り囲むような筒形状(円筒であっても多角形の筒状でもよい)の弾性部材26としてもよい。実質的に中心24Cを取り囲んでいれば、この筒形状の一部分が開放された形状(平面視にて略C字上あるいは略U字状等)でもよい。
【0039】
図5(A)及び(B)には、本発明の第2実施形態の燃料タンク構造42が部分的に拡大して示されている。なお、図2において、燃料タンク構造42の全体的構成は第1実施形態と同一であるので図示を省略する。
【0040】
第2実施形態の燃料タンク構造42では、弾性部材46のそれぞれに対し制限部材48が取り付けられて一体化されており、弾性部材46と制限部材48とは同数となっている。制限部材48は、板状に形成されて燃料タンク14の変位部24に固定される台座部48Bと、この台座部48Bから上方に立設された支柱部48Pを有している。支柱部48Pとフロアパネル18との間には隙間32が構成されている。
【0041】
弾性部材46は、支柱部48Pを内部に収容可能な円筒状に形成されており、台座部48Bとフロアパネル18の双方に接触している。
【0042】
このような構成とされた第2実施形態の燃料タンク構造42においても、第1実施形態の燃料タンク構造42と同様の作用効果を奏するが、特に、図5(B)に示すように、変位部24の変位量が所定量に達すると、制限部材48の支柱部48Pの上端がフロアパネル18に接触し、変位部24の上昇を制限する。
【0043】
図6(A)及び(B)には、本発明の第3実施形態の燃料タンク構造52が部分的に拡大して示されている。第3実施形態においても、第2実施形態と同様に、弾性部材56のそれぞれに対し制限部材58が取り付けられて一体化されており、弾性部材56と制限部材58とは同数となっている。また、燃料タンク構造52の全体的構成は第1実施形態と同一であるので図示を省略する。
【0044】
第3実施形態の燃料タンク構造52では、制限部材58は、板状に形成されて燃料タンク14の変位部24に固定される台座部58Bと、この台座部58Bから上方に立設された筒状の筒部58Cを有している。筒部58Cとフロアパネル18との間には隙間32が構成されている。
【0045】
弾性部材56は円柱状に形成されて筒部58Cの内側に配置されている。弾性部材56の底部に形成された係合凹部56Kに、台座部58Bから立設された係合凸部58Kが係合しており、不用意に台座部58Bから抜けたり位置ズレしたりしないようになっている。弾性部材56は、台座部58Bとフロアパネル18の双方に接触している。また、弾性部材56の外径は、筒部58Cの内径よりも小さくされており、図6(B)から分かるように、弾性部材56が上下に圧縮されたときに側方へと押し広げられるためのスペースが構成されている。
【0046】
このような構成とされた第3実施形態の燃料タンク構造52においても、第1実施形態の燃料タンク構造12や第2実施形態の燃料タンク構造42と同様の作用効果を奏するが、特に、図6(B)に示すように、変位部24の変位量が所定量に達すると、制限部材58の筒部58Cの上端がフロアパネル18に接触し、変位部24の上昇を制限する。
【0047】
第2実施形態及び第3実施形態の双方において、弾性部材と制限部材とは実質的に一体化されているので、狭いスペースであっても弾性部材及び制限部材を配置することが可能となる。
【0048】
図7には、本発明の第4実施形態の燃料タンク構造62が示されている。第4実施形態において、第1実施形態と同様の構成要素、部材等については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0049】
第4実施形態の燃料タンク構造62では、制限部材28が、弾性部材26の外側に設けられている。制限部材28の数は、複数(好ましくは、弾性部材26と同数)とされている。このように、第4実施形態では、制限部材28の数及び配置が異なるが、これ以外は、第1実施形態と同様の構成とされている。
【0050】
このような構成とされた第4実施形態の燃料タンク構造62においても、第1実施形態の燃料タンク構造12と同様の作用効果を奏する。また、変位部24の変位量が所定量に達すると、制限部材28がフロアパネル18に接触し、変位部24の上昇が制限される。
【0051】
図8には、本発明の第5実施形態の燃料タンク構造72が示されている。第5実施形態においても、第1実施形態と同一の構成要素、部材等については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0052】
第5実施形態の燃料タンク74では、4つの側面74Sに沿って燃料タンク74を取り囲む形状で蛇腹部82が形成されており、この蛇腹部82よりも上部のタンク上層部76と、下部のタンク下層部78とを有している。タンク下層部78はタンクバンド25によって下方から支持されている。このタンクバンド25の両端が車体に固定されることで、燃料タンク74が車体に取り付けられる。フロアパネル18には、燃料タンク74の上部を部分的に収容可能な凹部18Hが形成されている。
【0053】
燃料タンク74の天面74Tには、第1実施形態の燃料タンク構造12と同様に、複数の弾性部材26が固定されている。弾性部材26の高さH1は、間隙30の間隔D1と等しくされており、弾性部材26は燃料タンク94の天面94Tとフロアパネル18の双方に接触している。
【0054】
燃料タンク74の天面74Tの中央には、制限部材28が固定されている。制限部材28の高さH2は間隙30の間隔D1よりも低くされており、制限部材28とカバー部材104との間に所定の隙間32が構成されている。
【0055】
このような構成とされた第5実施形態の燃料タンク構造72では、燃料タンク74の内圧が上昇すると蛇腹部22が伸び、タンク上層部76が上昇する(タンク上層部76が本発明に係る変位部となっている)。これにより、燃料タンク74の容積が増大され、燃料タンク74の過度の内圧上昇が抑制される。
【0056】
タンク上層部76が上昇するときは、燃料タンク74の天面74Tとフロアパネル18との間に弾性部材26が挟まれて圧縮変形する。このため、タンク上層部76の傾斜が抑制され、燃料タンク74の容量を十分に増大させることができる。また、タンク上層部76の過度の上昇は、制限部材28がフロアパネル18に接触することにより所定量に制限される。
【0057】
図9には、本発明の第6実施形態の燃料タンク構造92が示されている。第6実施形態において、第1実施形態あるいは第5実施形態と同一の構成要素、部材等については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0058】
第5実施形態の燃料タンク94においても、第4実施形態の燃料タンク74と同様に、側面94Sを取り囲む形状の蛇腹部102が形成され、タンク上層部96とタンク下層部98とを有しているが、第4実施形態と異なり、タンク上層部96が、図示しない取付部材によってフロアパネル18に対し、上下方向に変位不能とされている。フロアパネル18には、燃料タンク94の上部を部分的に収容する凹部18Hが形成されている。燃料タンク74の車体への取り付け状態で、燃料タンク94の天面94Tは、凹部18Hにおいてフロアパネル18に直接的に、あるいは図示しないスペーサを介して接触していている。
【0059】
タンク下層部98のさらに下方には、燃料タンク94の底面94Bと平行に、カバー部材104が配置されている。カバー部材104は、燃料タンク94の底面94Bとの間に所定の間隙30を構成している。そして、図示しない取付部材によって、フロアパネル18に取り付けられている。
【0060】
燃料タンク94の底面94Bには、複数の弾性部材26が固定されている。弾性部材26の高さH1は、間隙30の間隔D1と等しくされており、弾性部材26は燃料タンク94の底面94Bとカバー部材104の双方に接触している。
【0061】
燃料タンク94の底面94Bの中央には、制限部材28が固定されている。制限部材28の高さH2は間隙30の間隔D1よりも低くされており、制限部材28とカバー部材104との間に所定の隙間32が構成されている。
【0062】
このような構成とされた第6実施形態の燃料タンク構造92では、燃料タンク94の内圧が上昇すると蛇腹部22が伸び、タンク下層部98が降下する(タンク下層部98が本発明に係る変位部となっている)。これにより、燃料タンク94の容積が増大され、燃料タンク94の過度の内圧上昇が抑制される。
【0063】
タンク下層部98が降下するときは、燃料タンク94の底面94Bとカバー部材104との間に弾性部材26が挟まれて圧縮変形する。このため、タンク下層部98の傾斜が抑制され、燃料タンク94の容量を十分に増大させることができる。また、タンク下層部98の過度の降下は、制限部材28がカバー部材104に接触することにより所定量に制限される。
【0064】
図10には、本発明の第7実施形態の燃料タンク構造112が示されている。第7実施形態において、第1実施形態あるいは第5実施形態と同一の構成要素、部材等については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0065】
第7実施形態の燃料タンク114では、2本の蛇腹部122が横方向に並べて平行に設けられている。そして、蛇腹部122の間の部分が、所定の剛性を有するタンク中間層部116とされている。蛇腹部122のそれぞれの外側は、タンク外枠層部118とされている。燃料タンク114は、タンク中間層部116において、複数本(図10では2本)のタンクバンド25で支持されている。タンクバンド25がフロアパネル18に固定されることで、燃料タンク114がフロアパネル18に取り付けられている。
【0066】
フロアパネル18には、燃料タンク114を収容する凹部18Hが形成されており、凹部18Hの側面は、燃料タンク114の側面114Sとの間に所定の間隙30を構成して対向する対向面18Fとなっている。また、タンク中間層部116と凹部18Hの間には、必要に応じて図示しないスペーサが配置されており、タンク中間層部116がフロアパネル18に対し所定位置で保持されている。
【0067】
燃料タンク114の側面114Sには、複数の弾性部材26が固定されている。弾性部材26の高さH1(本実施形態では燃料タンク114の側面114Sから横方向に突出した突出長)は、間隙30の間隔D1と等しくされており、弾性部材26は燃料タンク114の側面114Sとフロアパネル18対向面18Fの双方に接触している。
【0068】
燃料タンク114の側面114Sの中央には、制限部材28が固定されている。制限部材28の高さH2は、間隙30の間隔D1より短くされており、制限部材28と対向面18Fとの間に所定の隙間32が構成されている。
【0069】
このような構成とされた第7実施形態の燃料タンク構造112では、燃料タンク114の内圧が上昇すると蛇腹部122が伸び、タンク外枠層部118が外方向に変位する。これにより、燃料タンク114の容積が増大され、燃料タンク114の過度の内圧上昇が抑制される。
【0070】
タンク外枠層部118が外方向に変位するときは、燃料タンク114の側面114Sとフロアパネル18の対向面18Fとの間に弾性部材26が挟まれて弾性変形する。このため、タンク外枠層部118の傾斜が抑制され、燃料タンク114の容量を十部に増大させることができる。タンク外枠層部118の過度の変位は、制限部材28が対向面18Fに接触することにより、所定量に制限される。
【0071】
なお、第5〜第7実施形態では、本発明の変形部が蛇腹部82、102、122として燃料タンクを全体的に取り囲むように形成されているので、蛇腹部が変形したときの燃料タンクの容積増大量が、第1実施形態と比較して多くなる。これに対し、第1〜第4実施形態では、変形部が、燃料タンク14の天面14Tにおいて環状に形成されており、燃料タンク14を全体的に取り囲むように形成する必要がないため、より簡単な構造で、変形部及び変位部を構成できる。
【0072】
本発明の変形部としては、上記した蛇腹部に限定されず、たとえば、燃料タンクの外壁の一部(変位部の周囲)が折り畳まれることで、外壁が部分的に2重あるいは3重程度に重なるように構成された変形部でもよい。このように折り畳まれた変形部では、燃料タンクの内圧が上昇したときに、折り畳まれた部分の重なりが解消されて、変位部が変位する。
【0073】
また、上記各実施形態では、燃料タンクの変位部に制限部材28が固定されている例を挙げているが、制限部材は、フロアパネル18(あるいはカバー部材104)に固定されていてもよく、要するに、燃料タンクの一部(変位部)が変位したときに、この変位部とフロアパネル18(又はカバー部材104)との間に挟まれて弾性接触すればよい。
【0074】
同様に、制限部材28も燃料タンクに固定されている必要はなく、フロアパネル18(あるいはカバー部材104)に固定されていてもよい。
【符号の説明】
【0075】
12 燃料タンク構造
14 燃料タンク
16 タンクバンド用凹部
18 フロアパネル
18H 凹部
18F 対向面(対向部)
22 蛇腹部(変形部)
24 変位部
24C 中心
26 弾性部材
28 制限部材
30 間隙
32 隙間
42 燃料タンク構造
46 弾性部材
48 制限部材
52 燃料タンク構造
56 弾性部材
58 制限部材
62 燃料タンク構造
72 燃料タンク構造
74 燃料タンク
76 タンク上層部(変位部)
82 蛇腹部(変形部)
92 燃料タンク構造
94 燃料タンク
96 タンク上層部
98 タンク下層部(変位部)
102 蛇腹部
104 カバー部材(対向部)
112 燃料タンク構造
114 燃料タンク
116 タンク中間層部
118 タンク外枠層部(変位部)
122 蛇腹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に燃料を収容可能な燃料タンクと、
前記燃料タンクの外壁に環状に形成されて外壁を区画すると共に、変形により、区画された一方を他方に対し変位可能な変位部とし、この変位部の変位により燃料タンクの容積を増大させる変形部と、
前記変位部と、該変位部と対向する車体の対向部との間で、変位部の変位時に変位部と対向部との間に挟まれて弾性変形することで変位部の変位量を均一化するように配置された弾性部材と、
を有する燃料タンク構造。
【請求項2】
前記弾性部材よりも高剛性とされ前記変位部と前記対向部との間に配置され、変位部の変位により変位部と対向部の双方に接触して変位部の変位を所定範囲に制限する制限部材、を有する請求項1に記載の燃料タンク構造。
【請求項3】
前記弾性部材が、前記変位部を変位方向に見たときの変位部の中心を取り囲むように少なくとも2つ配置されている請求項1又は請求項2に記載の燃料タンク構造。
【請求項4】
前記制限部材が、前記変位部の中心に配置されている請求項3に記載の燃料タンク構造。
【請求項5】
前記制限部材が前記弾性部材と一体化されている請求項2又は請求項3に記載の燃料タンク構造。
【請求項6】
前記変形部が、前記燃料タンクの天面に枠状に形成された蛇腹部とされ、
前記蛇腹部の内側に前記変位部が構成されている請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の燃料タンク構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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