説明

燃料タンク構造

【課題】燃料からのベーパ発生を抑えつつ、タンク内圧の上昇を抑制することができる燃料タンク構造を得る。
【解決手段】燃料を収容する樹脂製の燃料タンク14の上壁14Tの少なくとも一部には、内部にヒータ24が埋め込まれた変位部20が設けられている。ヒータ24の熱を燃料タンク14の変位部20に伝達することで、少なくとも変位部20の剛性が低下し、タンク内圧に応じて変位部20付近が燃料タンク14の外方に膨張する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料を収容する燃料タンクを備えた燃料タンク構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に搭載される燃料タンクとして、特許文献1には、樹脂製の燃料タンクの下面に形成された凹部を通過するようにエンジンの排気管を配置し、燃料タンク内に配置したキャニスタに排気熱を伝えることで温度を上昇させ、パージ効率を高める構造のものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−132066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、燃料タンクの底部にエンジンの排気管が配置されているため、燃料タンク内に溜まる燃料にも熱が伝わり、燃料からのベーパ発生に伴うタンク内圧の上昇を助長する可能性がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、燃料からのベーパ発生を抑えつつ、タンク内圧の上昇を抑制することができる燃料タンク構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明に係る燃料タンク構造は、燃料を収容する樹脂製の燃料タンクと、前記燃料タンクの上壁の少なくとも一部に熱を伝達可能に設けられ、前記燃料タンクの上壁の少なくとも一部に熱を伝達することで前記燃料タンクのタンク内圧による膨張を促進する加熱源と、を有するものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記燃料タンクのタンク内圧を検出するタンク内圧センサと、前記タンク内圧センサで検出されたタンク内圧に基づいて、前記加熱源のON・OFF状態を制御する制御手段と、を有するものである。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記加熱源が、電熱ヒータであるものである。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記加熱源が、前記上壁の内部に埋め込まれているものである。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記加熱源が設けられた前記上壁の一部の温度を検出する温度センサと、前記温度センサで検出された温度が所定の温度になるまで前記加熱源をON状態とする温度制御手段と、を有するものである。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、燃料を収容する樹脂製の燃料タンクの上壁の少なくとも一部に熱を伝達可能に加熱源が設けられており、この加熱源により燃料タンクの上壁の少なくとも一部に熱が伝達されることで、燃料タンクの上壁の一部又は壁全体の剛性が低下し、燃料タンクのタンク内圧による膨張を促進する。これによって、燃料タンクのタンク内圧が上昇しても、燃料タンクが膨張してタンク容量が増加することにより、タンク内圧の上昇を抑えることができる。
【0012】
また、燃料タンクの上壁の少なくとも一部に熱を伝達可能に加熱源が設けられているので、加熱源による熱が燃料に伝わりにくく、燃料からのベーパ発生を極力抑えることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、タンク内圧センサにより燃料タンクのタンク内圧が検出され、この検出されたタンク内圧に基づいて加熱源のON・OFF状態が制御される。これにより、タンク内圧の変化に応じて加熱源をON・OFF状態とすることができ、余分な電力を消費することなく、必要時のみ燃料タンクを膨張させることが可能となる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、加熱源が電熱ヒータであり、電熱ヒータを発熱させることで、燃料タンクの上壁の少なくとも一部に熱が伝達される。加熱源を電熱ヒータとすることで、燃料タンクの変形を邪魔しにくく、燃料タンクをより確実に膨張させることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、加熱源が、燃料タンクの上壁の内部に埋め込まれており、省スペース化が可能となると共に、燃料タンクを膨張させるための膨張スペースを容易に確保することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、加熱源が設けられた上壁の一部の温度が温度センサによって検出され、この検出された温度が所定の温度になるまで加熱源をON状態に制御する。これにより、燃料タンクの上壁の一部又は壁全体の剛性変化に基づき、燃料タンクの膨張量を適切に管理することが可能となり、タンク内圧の上昇をより効果的に抑えることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は上記構成としたので、燃料からのベーパ発生を抑えつつ、タンク内圧の上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態の燃料タンク構造を示す概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態の燃料タンク構造における燃料タンクの上壁を部分的に拡大して示す断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態の燃料タンク構造のブロック図である。
【図4】本発明の第1実施形態の燃料タンク構造においてタンク内圧に基づきヒータを制御するフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態の燃料タンク構造を示す概略構成図である。
【図6】本発明の第2実施形態の燃料タンク構造における燃料タンクの上壁を部分的に拡大して示す断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態の燃料タンク構造のブロック図である。
【図8】本発明の第2実施形態の燃料タンク構造においてタンク内圧と上壁の温度に基づきヒータを制御するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1〜図4を用いて、本発明に係る燃料タンク構造の第1実施形態について説明する。
【0020】
図1には、第1実施形態の燃料タンク構造12が示されている。この燃料タンク構造12は、車体のフロアパネル(図示省略)の下方に配置される燃料タンク14を有している。燃料タンク14は、一例として、上下に扁平な容器からなり、内部に燃料を収容することができる。燃料タンク14内には燃料ポンプ16が収容されており、この燃料ポンプ16の駆動により、燃料をエンジンに送出することができる。
【0021】
図2には、図1中の燃料タンク構造12における燃料タンク14の上部の二点鎖線の部分Aが拡大して示されている。燃料タンク14は樹脂製であり、図1及び図2に示すように、燃料タンク14の上壁14Tには、燃料タンク14の外方に膨張可能な変位部20が設けられている。樹脂からなる変位部20の内部には、加熱源としてのヒータ24が埋め込まれている。ヒータ24には電源26が接続されている。本実施形態では、ヒータ24は電熱ヒータであり、例えば、抵抗加熱方式により発熱される。電源26をON状態とし、ヒータ24を発熱させることで、ヒータ24の熱が変位部20に伝達され、変位部20又は燃料タンク14の壁全体(特に上壁14T)の剛性を低下させるようになっている。本実施形態では、変位部20は、燃料タンク14の上壁14Tの一部に設けられている。なお、ヒータ24としては、誘導加熱方式、誘電加熱方式により発熱されるものを用いてもよい。
【0022】
燃料タンク14は、変位部20以外の部分(本実施形態では、たとえば燃料タンク14の底壁14Bや側壁14S)において、図示しない取付具を用いてフロアパネル等の車体構成部材(図示省略)に取り付けられている。
【0023】
燃料タンク14の上壁14Tの上方には、車体のフロアパネル(図示省略)が設けられているが、燃料タンク14の変位部20とフロアパネルとの間には、変位部20が燃料タンク14の外方へ膨張することを許容する隙間が確保されている。
【0024】
図1に示すように、燃料タンク14の内部の気体層は、ベーパ配管30によってキャニスタ32に接続されている。気体層には、蒸発燃料を含む気体が存在するが、この気体がキャニスタに送られると、キャニスタ32内の吸着剤(活性炭等)によって蒸発燃料成分が吸着される。そして、大気成分が、大気開放管34を通じて大気中に排出される。大気開放管34には、図示しないバルブが設けられている。
【0025】
図1に示すように、燃料タンク14の上壁14Tには、タンク内圧を検知するタンク内圧センサ50が備えられている。タンク内圧センサ50で検知されたタンク内圧のデータは、図3に示すように、制御装置(制御手段)40に送られる。ヒータ24を発熱させる電源26のON・OFF状態は、制御装置40によって制御される。本実施形態では、タンク内圧センサ50で検知されたタンク内圧に基づいて、ヒータ24の電源26のON・OFF状態が制御されるようになっている。より具体的には、タンク内圧センサ50で検知されたタンク内圧が予め設定されたしきい値以上である(タンク内圧がしきい値以上に上昇した)ときに、ヒータ24の電源26がON状態となるように制御される。ヒータ24の制御については、後に詳述する。
【0026】
電源26がON状態とされることで、ヒータ24が発熱し、ヒータ24の熱を変位部20に伝達させる(変位部20を加熱する)ことにより、変位部20又は燃料タンク14の壁全体(特に上壁14T)の剛性を低下させる。これにより、燃料タンク14のタンク内圧が上昇しても、燃料タンク14の変位部20付近又は燃料タンク14の剛性が低下した壁部分がタンク外方へ膨張し、燃料タンク14の容積(タンク容量)が増加することで、タンク内圧の上昇を抑えるようになっている。
【0027】
次に、本実施形態の燃料タンク構造12の作用並びに効果について説明する。
【0028】
本実施形態の燃料タンク構造12において、例えば車両の駐車中等に、燃料タンク14を密閉した状態で周囲の外気温が上昇する等の影響で、燃料タンク14内の燃料及び気体の温度(タンク内温度)が上昇した場合を考える。このタンク内温度の上昇により、燃料タンク14の内圧も上昇する。燃料タンク14の内圧の上昇には、既存のベーパの膨張と、燃料からの新規のベーパ発生とがある。
【0029】
本実施形態の燃料タンク14では、上壁14Tに内部にヒータ24が埋め込まれた変位部20が設けられている。ヒータ24の電源26がON状態とされ、ヒータ24の熱を変位部20に伝達することにより、変位部20又は燃料タンク14の壁全体(特に上壁14T)の剛性を低下させる。これにより、燃料タンク14のタンク内圧が上昇しても、燃料タンク14の変位部20付近又は燃料タンク14の剛性が低下した壁部分がタンク外方へ膨張し、燃料タンク14の容積(タンク容量)が増加することで、タンク内圧の上昇を抑えることができる。
【0030】
本実施形態の燃料タンク構造12では、図4に示す制御フローに則ったヒータ24の加熱制御方法が実行される。なお、このヒータ24の加熱制御方法は、車両停車中、又は車両走行中に自動で行われる。
【0031】
まず、ステップS102において、タンク内圧センサ50により燃料タンク14のタンク内圧を測定する。次いで、ステップS104において、タンク内圧センサ50によって検出されたタンク内圧が所定値(予め設定されたしきい値)以上であるか否かを判断する。
【0032】
タンク内圧が予め設定されたしきい値以上であると判断した場合は、ステップS106において、加熱源としてのヒータ24の電源26をON状態とする。これによって、ヒータ24が発熱し、ヒータ24の熱を変位部20に伝達することにより、変位部20又は燃料タンク14の壁全体(特に上壁14T)の剛性を低下させる。このため、燃料タンク14のタンク内圧が上昇しても、燃料タンク14の変位部20付近又は燃料タンク14の剛性が低下した壁部分がタンク外方へ膨張し、燃料タンク14の容積が増加することで、タンク内圧の上昇を抑えることができる。
【0033】
その後、上述のステップS102に戻り、タンク内圧センサ50により燃料タンク14のタンク内圧を測定する。そして、ステップS104に移行し、タンク内圧が所定値(予め設定されたしきい値)以上であるか否かを判断するフローを繰り返す。
【0034】
一方、ステップS104でタンク内圧センサ50によって検出されたタンク内圧が所定値(予め設定されたしきい値)以上でないと判断した場合は、ステップS108において、加熱源としてのヒータ24の電源26をOFF状態とする。これによって、ヒータ24の発熱がOFFにされる(ヒータ24の電源26がONでなければ、OFFが維持される)。すなわち、タンク内圧が所定値(予め設定されたしきい値)以上でない場合は、変位部20の剛性を低下させる必要がない。その後、この制御フローが繰り返される。
【0035】
このように、本実施形態の燃料タンク構造12では、タンク内圧センサ50によって検出されたタンク内圧が所定値(予め設定されたしきい値)以上であるときに、ヒータ24を発熱させることにより、変位部20又は燃料タンク14の壁全体(特に上壁14T)の剛性を低下させる。これにより、タンク内圧が所定値以上に上昇しても、燃料タンク14の変位部20付近又は燃料タンク14の剛性が低下した壁部分がタンク外方へ膨張し、タンク内圧の上昇を抑えることができる。
【0036】
また、本実施形態の燃料タンク構造12では、タンク内圧センサ50によって検出されたタンク内圧が所定値より小さいときは、ヒータ24の電源26をOFF状態とする。すなわち、タンク内圧の変化に応じてヒータ24の電源26のON・OFF状態を制御することで、余分に電力を消費することなく、必要時のみ燃料タンク14の変位部20を膨張させることができる。
【0037】
また、本実施形態の燃料タンク構造12では、燃料タンク14の上壁14Tの変位部20にヒータ24が設けられているので、ヒータ24の熱が燃料タンク14内の燃料に伝わりにくく、ヒータ24の熱による燃料からのベーパ発生を極力抑えることができる。さらに、燃料タンク14の上壁14Tの変位部20にヒータ24が埋め込まれているので、省スペース化が可能となると共に、燃料タンク14の上壁14Tと車体のフロアパネル(図示省略)との間に、変位部20付近を燃料タンク14の外方に膨張させるための膨張スペースを容易に確保することができる。
【0038】
例えば、比較例の燃料タンク構造として、バルブを備えた密閉式の燃料タンクに薄肉等の変形可能部位を設け、燃料タンクの内圧が上昇したときに変形可能部位が変形し、燃料タンクの容積を増加させるものが考えられる。この構造では、燃料タンクの容積変化量は、燃料タンクの変形可能部位の壁温によってばらつき、タンク内圧が適切に低減されない可能性がある。このため、燃料タンクの容積変化量に大きな余裕代を持たせる必要があり、燃料タンクの構成部品のレイアウトに制約を与えるばかりでなく、燃料タンクの容量も減少してしまう可能性がある。
【0039】
これに対して、本実施形態の燃料タンク構造12では、加熱源としてのヒータ24によって変位部20の温度を制御するため、タンク内圧による燃料タンク14の容積変化量にばらつきが生じにくく、変位部20付近を燃料タンク14の外方により確実に膨張させてタンク内圧の上昇を抑えることができる。
【0040】
次に、図5〜図8を用いて、本発明に係る燃料タンク構造の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0041】
図5には、第2実施形態の燃料タンク構造72が示されており、図6には、図5中の燃料タンク構造72における燃料タンク14の上部の二点鎖線の部分Aが拡大して示されている。図5及び図6に示すように、この燃料タンク構造72には、燃料タンク14の上壁14Tに設けられた変位部20の下面に、変位部20の温度を検出する温度センサ74が備えられている。この温度センサ74によって、例えば、ヒータ24により加熱する前の変位部20の温度や、ヒータ24により加熱されたときの変位部20の温度を検出することが可能となる。
【0042】
図7に示すように、温度センサ74で検知された温度のデータは、制御装置(温度制御手段)76に送られる。また、タンク内圧センサ50で検知されたタンク内圧のデータは、制御装置(制御手段)76に送られる。
【0043】
本実施形態では、タンク内圧が所定値以上であるときに、変位部20を燃料タンク14の外方に膨張させるのに適した変位部20の所定の温度(目標温度)が予め実験により測定されており、この所定の温度(目標温度)が制御装置76に記憶されている。言い換えると、タンク内圧が所定値以上であるときに、温度変化に応じた変位部20の膨張状態(変形状態)が、予め実験により測定されており、これに基づき、変位部20の目標温度が設定されている。制御装置76では、予め設定された目標温度と温度センサ74で得られた温度測定値との差(目標温度−温度測定値=ΔT)を算出することができる。
【0044】
本実施形態では、温度センサ74で検知された温度と、タンク内圧センサ50で検知されたタンク内圧に基づき、制御装置76によって、ヒータ24を発熱させる電源26のON・OFF状態が制御されるようになっている。例えば、タンク内圧が所定値以上である場合に、温度センサ74で検知される温度が予め設定された目標温度になるまで、ヒータ24により変位部20が加熱されるようになっている。
【0045】
次に、本実施形態の燃料タンク構造72の作用並びに効果について説明する。
本実施形態の燃料タンク構造72では、図8に示す制御フローに則ったヒータ24の加熱制御方法が実行される。
【0046】
まず、ステップS152において、タンク内圧センサ50により燃料タンク14のタンク内圧を測定する。次いで、ステップS154において、タンク内圧センサ50によって検出されたタンク内圧が所定値(予め設定されたしきい値)以上であるか否かを判断する。
【0047】
タンク内圧が所定値(予め設定されたしきい値)以上であると判断した場合は、ステップS156において、温度センサ74により燃料タンク14の上壁14Tに設けられた変位部20の温度を測定する。次いで、ステップS158において、予め設定された目標温度と温度センサ74で得られた温度測定値との差(目標温度−温度測定値=ΔT)を算出する。
【0048】
そして、ステップS160において、ΔTが0より大きいか否かを判断する。ΔTが0より大きい(ΔT>0)場合は、温度センサ74で検知された変位部20の温度が低く、目標温度に達していないことを意味している。
【0049】
ΔTが0より大きい(ΔT>0)と判断した場合は、ステップS162において、加熱源としてのヒータ24の電源26をON状態とする。これによって、ヒータ24を発熱させ、ヒータ24の熱を変位部20に伝達することにより、変位部20又は燃料タンク14の壁全体(特に上壁14T)の剛性を低下させる。このため、燃料タンク14のタンク内圧が上昇しても、燃料タンク14の変位部20付近又は燃料タンク14の剛性が低下した壁部分がタンク外方へ膨張し、燃料タンク14の容積が増加することで、タンク内圧の上昇を抑えることができる。
【0050】
その後、上述のステップS152に戻り、タンク内圧センサ50により燃料タンク14のタンク内圧を測定する。そして、ステップS154に移行し、タンク内圧が所定値(予め設定されたしきい値)以上であるか否かを判断するフローを繰り返す。
【0051】
一方、ステップS154において、タンク内圧センサ50によって検出されたタンク内圧が所定値(予め設定されたしきい値)以上でないと判断した場合は、ステップS164において、加熱源としてのヒータ24の電源26をOFF状態とする(ヒータ24の電源26がONでなければ、OFFが維持される)。すなわち、タンク内圧が所定値(予め設定されたしきい値)以上でない場合は、変位部20を加熱して剛性を低下させる必要がない。
【0052】
また、ステップS160において、ΔTが0より大きくない(ΔT≦0)と判断した場合は、ステップS164において、加熱源としてのヒータ24の電源26をOFF状態とする。すなわち、ΔTが0より大きくない(ΔT≦0)場合は、温度センサ74で検知された変位部20の温度が目標温度以上となったことを意味している。その後、この制御フローが繰り返される。
【0053】
本実施形態の燃料タンク構造72では、温度センサ74で検知された変位部20の温度が目標温度以上となった場合に、ヒータ24の発熱をOFFにする。これにより、余分に電力を消費することなく、必要時のみ燃料タンク14の変位部20を膨張させることができる。
【0054】
また、温度センサ74により燃料タンク14の変位部20の温度を検知することで、変位部20の剛性変化による変位部20の変形状態を適切に管理することができる。このため、燃料タンク14のタンク内圧の上昇をより効果的に抑えることができる。
【0055】
なお、図8に示す制御フローにおいて、ステップS158では、目標温度と温度センサ74で得られた温度測定値との差(目標温度−温度測定値=ΔT)を算出し、ステップS160では、ΔTが0より大きいか否かを判断しているが、これに限定されない。例えば、ステップS158、S160に代えて、「目標温度>温度測定値」であるか否かを判断し、「目標温度>温度測定値」である場合にステップS162に移行するような制御を行ってもよい。
【0056】
なお、第1及び第2実施形態において、ヒータ24をON・OFF状態にするしきい値が異なってもよい。
【0057】
また、燃料タンク14の構造、特に、変位部20の具体的構成は、上記第1及び第2実施形態の構造に限定されない。第1及び第2実施形態では、ヒータ24は、燃料タンク14の上壁14Tを構成する変位部20の内部に埋め込まれているが、変位部の内部に空間を設け、その空間内にヒータ24を配置する構成でもよい。また、ヒータ24を変位部の内部に埋め込まずに、燃料タンク14の上壁14Tを構成する変位部の壁面(特に外壁面)にヒータ24を接触又は近接させて配置し、ヒータ24の熱を変位部に伝達して剛性を低下させる構成でもよい。
【0058】
また、第1及び第2実施形態では、加熱源として、ヒータ(電熱ヒータ)24が用いられているが、これに限定されず、他の加熱方式による加熱源を用いてもよい。例えば、赤外線ランプ、又は熱媒体を流す配管などの加熱源を変位部20の壁面(特に外壁面)に接触又は近接させる構成でもよい。
【0059】
また、変位部20を燃料タンク14の他の部位よりも薄肉とし、又は、変位部20の一部を蛇腹状にすることで、変位部20が燃料タンク14の外方へより膨張しやすくなるようにしてもよい。
【0060】
また、第1及び第2実施形態では、ヒータ24の熱が伝達される変位部20は、燃料タンク14の上壁14Tの一部に設けられているが、これに限定されず、例えば、燃料ポンプ16が配置された位置の周囲における上壁14Tのほぼ全面に変位部20を設ける構成でもよい。また、燃料タンク14の上壁14Tの端部側の側壁14Sの上部(特に上壁14Tと側壁14Sとが交差する湾曲部を含む部位)などに変位部20を設けてもよい。
【符号の説明】
【0061】
12 燃料タンク構造
14 燃料タンク
14T 上壁
20 変位部(上壁の一部)
24 ヒータ(加熱源)
40 制御装置(制御手段)
50 タンク内圧センサ
72 燃料タンク構造
74 温度センサ
76 制御装置(制御手段、温度制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を収容する樹脂製の燃料タンクと、
前記燃料タンクの上壁の少なくとも一部に熱を伝達可能に設けられ、前記燃料タンクの上壁の少なくとも一部に熱を伝達することで前記燃料タンクのタンク内圧による膨張を促進する加熱源と、
を有する燃料タンク構造。
【請求項2】
前記燃料タンクのタンク内圧を検出するタンク内圧センサと、
前記タンク内圧センサで検出されたタンク内圧に基づいて、前記加熱源のON・OFF状態を制御する制御手段と、
を有する請求項1に記載の燃料タンク構造。
【請求項3】
前記加熱源が、電熱ヒータである請求項1又は請求項2に記載の燃料タンク構造。
【請求項4】
前記加熱源が、前記上壁の内部に埋め込まれている請求項3に記載の燃料タンク構造。
【請求項5】
前記加熱源が設けられた前記上壁の一部の温度を検出する温度センサと、
前記温度センサで検出された温度が所定の温度になるまで前記加熱源をON状態とする温度制御手段と、
を有する請求項2に記載の燃料タンク構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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