説明

燃料タンク用固定バンドの固定構造及び燃料タンク用固定バンド

【課題】ボルトの締め付け時の固定具の回動を防止することができる燃料タンク用固定バンドの固定構造及びこの固定構造を備えた燃料タンク用固定バンドを提供する。
【解決手段】本発明の燃料タンク100用の固定バンド1の固定構造は、固定バンド1の一端に取り付けられる第1の固定具6と、固定バンド1の他端に取り付けられる第2の固定具8と、を備え、第1の固定具6及び第2の固定具8は、第1の固定具6及び第2の固定具8を貫通して両者を互いに固定することにより固定バンド1を固定するボルト10を通すためのボルト孔20,22,24,26をそれぞれ有し、第1の固定具6は、第1の固定具6及び第2の固定具8の幅方向軸線周りの回動を防止する上面部18を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンク用固定バンドの固定構造及びこの固定構造を有する燃料タンク用固定バンドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジン作業機等に使用される燃料タンクを固定するための固定バンドとしては、例えば特許文献1や特許文献2に記載される構造が知られている。特許文献1に記載のエンジン駆動型作業機においては、燃料タンクがタンクバンドによって受水容器に固定されている。タンクバンドは、細い板状の板金からなる部材であり、向かい合う端部に上方に起立するように2つのL字形の係止部が形成されている。これらの2つの係止部にボルトを通してナットで締め付けることにより、燃料タンクを受水容器に固定する。
【0003】
また、特許文献2に記載の燃料タンク取付構造においては、円筒形の燃料タンクが、バンドによって車体に取り付けられている。このバンドは、金属製で、周方向に2分割された第1バンドと第2バンドとで構成され、各端部に連結用ステイが設けられている。これらの連結用ステイは、バンドから上方に起立するように形成されており、相対向する連結用ステイにボルトを挿通してナットと螺合させることにより、バンドを介して燃料タンクを車体に取り付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−14014号公報
【特許文献2】特開2006−123590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような燃料タンクのバンドの構造では、図9に示すように、ボルト300を締め付けると、バンド部302から上方に起立したL字形の連結部分304の角部が開いて起立部分が互いに近づくように変形または回動してしまい、これによりボルト300も曲がってしまい、ボルト300によるバンドの十分な締め付けができないという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、ボルトの締め付け時の固定具の回動を防止して、固定バンドで燃料タンクを確実に固定することができる燃料タンク用固定バンドの固定構造及びこの固定構造を有する燃料タンク用固定バンドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の燃料タンク用固定バンドの固定構造は、燃料タンクを固定するための燃料タンク用固定バンドの固定構造であって、燃料タンク用固定バンドの一端に取り付けられる第1の固定具と、燃料タンク用固定バンドの他端に取り付けられる第2の固定具と、を備え、第1の固定具及び第2の固定具は、第1の固定具及び第2の固定具を貫通して両者を互いに固定することにより燃料タンク用固定バンドを固定するボルトを通すためのボルト孔をそれぞれ有し、第1の固定具は、第1の固定具及び第2の固定具の幅方向軸線周りの回動を防止する回動防止手段を有する、ことを特徴としている。
【0008】
このように構成された本発明においては、第1の固定具及び第2の固定具を固定バンドの端部に取り付けた状態で、固定バンドを燃料タンクの外周に沿って巻き付けて第1の固定具及び第2の固定具を対向させ、第1の固定具及び第2の固定具のボルト孔にボルトを通してナット等によって締めると、第1の固定具及び第2の固定具が互いに固定される。このようにして、固定バンドを燃料タンクに取り付け、燃料タンクを固定バンドで所定箇所に固定する。
この発明においては、第1の固定具に、第1の固定具及び第2の固定具の幅方向軸線周りの回動を防止する回動防止手段が設けられているので、第1の固定具及び第2の固定具をボルトで締め付ける際に、第1の固定具及び第2の固定具が幅方向軸線周りに回動するのが防止される。これにより、ボルトのたわみも防止されるので、ボルトの締め付けが十分行われる。これにより、固定バンドによる燃料タンクの固定が確実になる。
【0009】
本発明において、好ましくは、回動防止手段は、第2の固定具の上面に当接するように構成されている。
このように構成された本発明においては、回動防止手段は、第2の固定具の上面に当接するように構成されているので、第2の固定具が幅方向軸線周りに回動しようとすると、第2の固定具の上面の回動防止手段への当接により、その回動が防止される。また、第1の固定具に設けられた回動防止手段が、第2の固定具の上面に当接することにより、第1の固定具の回動も防止される。したがって、簡単な構造で第1の固定具及び第2の固定具の回動防止が実現可能となる。
【0010】
本発明において、好ましくは、ボルト孔は、第1の固定具及び第2の固定具に、それぞれ2つずつ設けられている。
このように構成された本発明においては、第1の固定具及び第2の固定具がそれぞれ2つのボルト孔を有するので、第1の固定具及び第2の固定具を互いにボルトで締め付けた場合、第1の固定具及び第2の固定具が回動しようとすると、これらがそれぞれ2点ずつ計4点においてボルトに当接する。したがって、第1の固定具及び第2の固定具とボルトとの当接によっても、ボルトの締め付けによる第1の固定具及び第2の固定具の変形や回動が効果的に防止され、固定バンドによる燃料タンクの固定が確実となる。
【0011】
本発明において、好ましくは、第1の固定具及び第2の固定具がボルトによって互いに固定された状態において、第2の固定具の底面の少なくとも一部は、第1の固定具の底面上に配置される。
このように構成された本発明においては、ボルトの締め付けにより第1の固定具及び第2の固定具を互いに固定すると、第2の固定具の底面の少なくとも一部が、第1の固定具の底面上に配置される。したがって、ボルトの締め付け時、第2の固定具が幅方向軸線周りに回動しようとする動きが、回動防止手段による作用の他、第2の固定具の底面が第1の固定具の底面に当接することによっても防止される。したがって、第2の固定具の底面との接触によって第1の固定具の回動が抑制されるので、第1の固定具及び第2の固定具の回動をより一層効果的に抑制することが可能となるとともに、回動により固定構造の角部が燃料タンクに当たることによる燃料タンクの損傷が防止される。
【0012】
本発明において、好ましくは、第1の固定具及び第2の固定具は、略直方体に形成され、第1の固定具及び第2の固定具がボルトによって互いに固定された状態において、第2の固定具の少なくとも一部は第1の固定具に収納されるように配置される。
このように構成された本発明においては、第1の固定具及び第2の固定具がともに略直方体に形成され、第2の固定具の少なくとも一部が第1の固定具に収納されるので、第1の固定具及び第2の固定具の長手方向軸線周りの相対的回動が防止される。したがって、ボルトの締め付け時、第1の固定具及び第2の固定具が相対的にねじれてしまうのを防止することができ、固定バンドがねじれるのが防止される。これにより、固定構造の取り付け作業が容易且つ短時間で行われる。
【0013】
本発明において、好ましくは、第1の固定具に対する第2の固定具の位置を仮止めする仮止め手段が設けられている。
このように構成された本発明においては、仮止め手段が設けられているので、第2の固定具に対する第1の固定具の位置を或る程度設定することができる。したがって、第1の固定具及び第2の固定具を仮止め手段で仮止めしてからボルトを挿通することができるので、固定構造へのボルトの挿通作業が容易になる。
【0014】
また、上記目的を達成するために、本発明の燃料タンク用固定バンドは、前述の燃料タンク用固定バンドの固定構造と、一端に第1の固定具が設けられ、他端に第2の固定具が設けられたバンド部と、を備えた、ことを特徴としている。
このように構成された本発明においては、燃料用固定バンドが、前述の燃料タンク用固定バンドの固定構造を備えているので、前述と同様の効果を奏し、固定具の変形や回動が防止され、燃料タンクが確実に固定される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態における燃料タンクを示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態における燃料タンク用固定バンドの固定構造を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態における燃料タンク用固定バンドの固定構造を示す断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態における燃料タンク用固定バンドの固定構造の固定方法を示す図である。
【図5】従来の固定バンドの固定構造を用いた固定方法を示す図である。
【図6】従来の固定バンドの固定構造を用いた他の固定方法を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態における燃料タンク用固定バンドの固定構造を示す斜視図である。
【図8】本発明の第2実施形態における燃料タンク用固定バンドの固定構造を示す断面図である。
【図9】従来の固定バンドの固定構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面を参照して説明する。なお、第2実施形態以降では、第1実施形態と同様の構成には、図面に第1実施形態と同一符号を付し、その説明を簡略化または省略する。
【0017】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態における燃料タンクを示す斜視図である。第1実施形態において、燃料タンク100は、例えばエンジン作業機等に使用される燃料タンクであり、エンジン下部に配置されている。燃料タンク100は、燃料タンク100の下面及び側面を覆うオイルガード102内に収納され、燃料タンク用固定バンド1でオイルガード102に固定されている。
オイルガード102の内部底面には、長手方向に複数箇所(本実施形態では2箇所)に燃料タンク支持部材104が設けられている。各燃料タンク支持部材104は、断面略コ字形に形成され、オイルガード102の内面底面に幅方向に配置されると共に、オイルガード102の両側面の内面に約半分の高さまで配置されている。燃料タンク100は、燃料タンク支持部材104の上に載置される。
【0018】
固定バンド1は、金属製の板状部材であり、2分割された、一対のバンド部2,4で構成される。バンド部2,4の各々の一端は、オイルガード102の底面に固定されている。バンド部2,4は、オイルガード102の側面に配置された燃料タンク支持部材104とオイルガード102の側面と間を通って燃料タンク支持部材104に沿ってそれぞれ上方に延びる。
【0019】
図2は、本発明の第1実施形態における固定バンド1の固定構造を示す斜視図であり、図3は、固定バンド1の固定構造を示す断面図である。図2及び図3に示すように、固定バンド1の固定構造は、一方のバンド部2の端部に取り付けられた第1の固定具6と、他方のバンド部4の端部に取り付けられた第2の固定具8とを有する。第1の固定具6と第2の固定具8とは、ボルト10及びナット12によって互いに連結される。なお、本実施形態では、第1の固定具6及び第2の固定具8において、固定バンド1に取り付けられる側を基端側6A,8A、第1の固定具6及び第2の固定具8が互いに対向する側を先端側6B,8Bと称する。
【0020】
第1の固定具6は、上面及び先端面が開放された略直方体即ち断面四角形の筒状基部14と、筒状基部14の内部空間を2つに分割するように幅方向に延びる仕切り部16と、仕切り部16より先端側6Bの筒状基部14の上面を覆う上面部18と、を有する。筒状基部14において仕切り部16より先端側6Bの下面は取り除かれており、したがって、第1の固定具6は、仕切り部16より基端側6Aに上面開放の断面四角形の筒状部が、また仕切り部16より先端側6Bに下面及び先端面が開放された断面四角形の筒状部が形成されている。筒状基部14の基端側6Aの面19と、仕切り部16には、ボルト10を挿通するためのボルト孔20,22がそれぞれ形成されている。バンド部2の先端部は、筒状基部14の下面に溶接、接着等により固定されている。
【0021】
第2の固定具8は、上面開放の断面四角形の略直方体に形成され、基端側8Aの面及び先端側8Bの面に、ボルト10が貫通するためのボルト孔24,26がそれぞれ形成されている。バンド部4の先端側は、第2の固定具8の下面に溶接、接着等により固定されている。また、第2の固定具8の基端側8Aの面には、ボルト孔24に一致する位置にナット12が溶接されている。
【0022】
第1の固定具6の上面部18及び第2の固定具8の長手方向寸法は、第1の固定具6及び第2の固定具8を互いにボルト10で固定したときに、第2の固定具8の少なくとも一部が第1の固定具6の上面部18に覆われるように、好ましくは、第2の固定具8のほぼ全体が第1の固定具6の上面部18に覆われるように設定されている。本実施形態では、第2の固定具8のほぼ全体が第1の固定具6内に収納され、第2の固定具8は、上面部18及び筒状部材14の両側面によって三方向からとり囲まれている。
また、固定バンド1の長さは、第1の固定具6及び第2の固定具8をボルト10で互いに固定したときに、第1の固定具6のボルト孔22と第2の固定具8のボルト孔26とが、所定の距離を有して配置され、ボルト10の締め付け時にボルト孔20,22,24,26がそれぞれ2点でボルト10に当接して第1の固定具6及び第2の固定具8の回動をそれぞれ防止することができるように、設定されている。
【0023】
更に、固定バンド1の長さ寸法や、第1の固定具6の上面部18及び第2の固定具8の長手方向寸法は、第1の固定具6及び第2の固定具8をボルト10で互いに固定したときに、第1の固定具6の上面部18の先端が、ボルト10の締め付けによる第2の固定具8の回動中心(本実施形態では第2の固定具8の先端且つ下端を通る幅方向軸線)よりも、第2の固定具8の基端側8Aに位置するように、設定されている。
そして、第1の固定具6の幅寸法は、固定構造の固定作業に使用するスパナ等の工具の寸法に対応させて設定されている。
【0024】
図4は、本発明の第1実施形態における固定バンド1の固定方法を示す図である。
上記のような構造の固定バンド1を用いて燃料タンク100をオイルガード102に固定する際には、まず、燃料タンク100をオイルガード102の燃料タンク支持部材104上に載置し、固定バンド1を燃料タンク100の幅方向両側から燃料タンク100の周囲に沿って上面まで配置する。そして、固定バンド1の第1の固定具6及び第2の固定具8を対向させ、第2の固定具8の少なくとも一部が第1の固定具6の上面部18及び筒状基部14の側面に覆われた状態で収納するようにして、ボルト10をボルト孔20,22,24,26に貫通させ、ボルト10で締め付ける。
【0025】
ボルト10を締め付ける際には、図4に示すように、第2の固定具8が、第1の固定具6の仕切り部16より先端側の空間に収納された状態で、スパナ28でボルト10を保持し、もう1つのスパナ30で第1の固定具6を保持するようにするとよい。このとき、第1の固定具6の側面及び上面部18が第2の固定具8の側面及び上面を覆っているので、第2の固定具8の第1の固定具6に対する長手軸線周りの動きが規制され、固定バンド1のねじれが生じない。
【0026】
ボルト10を締め付けていくと、第1の固定具6及び第2の固定具8は、上端が互いに近づく方向に、幅方向軸線、具体的には第1の固定具6及び第2の固定具8のそれぞれの先端且つ下端を通る幅方向軸線の周りに回動しようとする。ここで、この回動は、第1の固定具6のボルト孔20の下面及びボルト孔22の上面、並びに第2の固定具8のボルト孔26の上面及びボルト孔24の下面がボルト10を押すことにより、ボルト10に曲げモーメントを生じさせる。しかしながら、本実施形態では、第2の固定具8が回動しようとすると、第2の固定具8の上面が第1の固定具6の上面部18に当接しているため、第2の固定具8の回動が阻止される。また、第1の固定具6が回動しようとすると、第1の固定具6の上面部18が第2の固定具8の上面に当接しているため、第1の固定具6の回動も阻止される。したがって、本実施形態においては、第1の固定具6の上面部18は、第1の固定具6及び第2の固定具8の回動を防止する回動防止手段として機能する。
【0027】
このように構成された本実施形態によれば、次のような優れた効果を得ることができる。
第1の固定具6に上面部18が設けられ、この上面部18が第2の固定具8の上面に当接することで第1の固定具6及び第2の固定具8の上部が互いに近接する方向の回動を防止することができる。したがって、ボルト10の締め付け時に、第1の固定具6及び第2の固定具8の角部が燃料タンク100に当たってバンド部2,4が燃料タンク100の表面から離れて浮き上がってしまうのを抑制することができ、燃料タンク100をゆるみなく確実にオイルガード102に固定することができる。したがって、本実施形態の固定構造により、強固な構造を実現でき、例えばエンジン作業機の車載運搬時に急ブレーキをかけたこと等によって燃料タンク100が大きな慣性力を受けた場合でも、固定バンド1がゆるまず、燃料タンク100をしっかり保持できる。
また、この上面部18による回動防止により、ボルト孔20,22,24,26の内壁からボルト10に及ぼす荷重を低減することができ、それにより、ボルト10に発生する曲げモーメントを抑制することができるから、ボルト10のたわみを防止することができる。
【0028】
従来のL字形の固定具では、ボルトの締め付け時に固定具が回動すると、前述の図9にも示すように固定具の角が燃料タンクに当たって燃料タンク100を損傷するおそれがあるため、燃料タンクを保護するために固定具と燃料タンクの間にゴム製の板状部材を配置する等の対応が必要であった。
本実施形態では、第1の固定具6の上面部18が第1の固定具6及び第2の固定具8の回動を防止することができるので、固定バンド1の固定構造によって燃料タンクを損傷するリスクを低減することができ、固定構造と燃料タンクとの間にゴム製の板状部材を配置する必要性が低くなる。
【0029】
第1の固定具6及び第2の固定具8が略直方体に形成されているので、固定構造を強固にすることができる。即ち、従来のL字形の固定具では、ボルトの締め付けによってバンドから起立した部分が変形してしまい、十分な固定力を得ることができなかった。本実施形態では、固定構造が強固になったので、固定構造の変形を効果的に防止することができ、したがって、ボルト10の締め付けを十分に行うことができるから、燃料タンク100をオイルガード102に確実に固定することができる。
【0030】
第1の固定具6にボルト孔20,22が2つ設けられ、第2の固定具8にもボルト孔24,26が設けられている。したがって、第1の固定具6及び第2の固定具8は、ボルト10の締め付け時、第1の固定具6及び第2の固定具8が回動しようとすると、それぞれ2点においてボルト10に当接するから、この構造によっても、第1の固定具6及び第2の固定具8の回動を抑制することができ、固定バンド1による燃料タンク100の固定を確実に行うことができる。
【0031】
第1の固定具6及び第2の固定具8がそれぞれ略直方体に形成されているので、第1の固定具6及び第2の固定具8を互いにボルト10で固定する際に、スパナ30等で第1の固定具6を保持しやすく、固定バンドの固定作業を容易且つ確実に行うことができる。
ここで、図5及び図6は、従来の固定バンドの固定構造を用いた固定方法を示す図である。この図5に示すように、従来のL字形の固定具200においては、ボルト202の締め付け時に固定具204,206及びバンド208がねじれてしまうのを防ぐために、バンド208から起立した薄い板状の部分とボルト202をスパナ210,212で固定し、その上で更なるスパナ214でナット(図示せず)を締め付けたり、または図6(A)に示すように、ボルト202とナット(図示せず)をスパナ212,214で保持してナットを締め、固定具204,206がねじれたら、図6(B)に示すように、スパナ210で固定具を掴んで元の位置に戻したりするというような、煩雑な作業が必要であった。
【0032】
このように、従来のL字形の固定具200においては、対向する固定具204,206をボルト202で締め付ける際には、スパナ210で固定具200のバンド208から起立した薄い板状の部分を保持しなければならず、固定具200の保持が非常に困難であった。本実施形態では、第1の固定具6及び第2の固定具8がそれぞれ略直方体に形成されているので、スパナ30等で第1の固定具6を容易且つ確実に保持することができる。
【0033】
また、本実施形態では、第2の固定具8が第1の固定具6の上面部18及び筒状基部14の側面に覆われており、第1の固定具6及び第2の固定具8が略直方体に形成されているので、第2の固定具8が第1の固定具6に対して長手方向軸線周りに回動するのを防止することができる。したがって、固定構造の固定作業中の第1の固定具6及び第2の固定具8のねじりを防止することができ、固定バンド1がねじれるのを防止することができる。これにより、固定構造の固定作業を簡単且つ短時間で行うことができる。
【0034】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る燃料タンク用固定バンドの固定構造を説明する。図7は、第2実施形態における固定バンド50の固定構造の斜視図であり、図8は、第2実施形態における固定バンド50の固定構造の断面図である。
これらの図7及び図8に示すように、第2実施形態における固定バンド50の固定構造は、第1の固定具52と、第2の固定具54と、第1の固定具52に設けられ、第2の固定具54の回動を防止する回動防止部材56と、を有する。
【0035】
第1の固定具52は、上面及び先端面が開放された、略直方体即ち断面四角形の筒状部で構成される。第1の固定具52の基端側52Aの面には、ボルト53が挿通されるボルト孔58が形成されている。第1の固定具52の両側面において、先端側の上部には、回動防止部材56が挿通される孔60が形成されている。
第2の固定具54も、上面及び先端面が開放された、略直方体即ち断面四角形の筒状部で構成される。第2の固定具54の基端側54Aの面には、ボルト53が挿通されるボルト孔62が形成されている。第2の固定具54の両側面において、先端側の上部には、側面から上方に突出する突出部64が形成されている。第2の固定具54の基端側54Aの面には、ボルト孔62と一致する位置に、ナット65が溶接されている。
【0036】
回動防止部材56は、ボルトで構成されており、第1の固定具52の孔60に挿通され、ナット66との螺合によって第1の固定具52に取り付けられる。
ここで、本実施形態では、回動防止部材56の位置は、回動防止部材56の下端が、第2の固定具54の上面の、突出部64以外の部分に当接するか、所定以下の距離を有する位置に設定されている。
【0037】
上記のような構造の固定構造を有する固定バンド50を用いて燃料タンク100を固定する場合には、次のように行う。
まず、第2の固定具54の先端部を第1の固定具52内に挿入する。この状態では、第2の固定具54の側面及び底面の少なくとも先端側は、第1の固定具52の側面及び底面に覆われ、第2の固定具54の先端部は、第1の固定具52内に収納される。第2の固定具54の突出部64を第1の固定具52の孔60よりも第1の固定具52の基端側52Aに位置させた状態で、回動防止部材56を第1の固定具52の孔60に挿通して、ナット66によって固定する。この状態においては、第2の固定具54を第1の固定具52から離れる方向に移動させると、第2の固定具54の突出部64が回動防止部材56に当接し、第2の固定具54のそれ以上の移動が防止される。したがって、本実施形態では、回動防止部材56及び突出部64は、第1の固定具52に対する第2の固定具54の移動量を規制する移動規制手段であり、また、第1の固定具52が第2の固定具54から抜け落ちてしまうのを防止する抜け止め手段でもある。そして、この回動防止部材56及び突出部64は、第1の固定具52及び第2の固定具54にボルト53を挿通する際の両者の位置を仮止めする仮止め手段としても機能する。
【0038】
次に、第1の固定具52及び第2の固定具54を仮止めした状態で、第1の固定具52のボルト孔58と第2の固定具54のボルト孔62にボルト53を挿通し、ナット65に螺合させて締め付ける。この時、第1実施形態と同様に、スパナでボルト53を保持し、もう1つのスパナで第1の固定具52の外面を保持するとよい。
ボルト53を締め付けていくと、第2の固定具54は、第2の固定具54の先端且つ下端を通る幅方向軸線を中心に回動しようとするが、回動防止部材56が第2の固定具54の上面に当接し、第2の固定具54の回動を防止する。また、第2の固定具54の底面が第1の固定具52の底面に当接することによっても、第2の固定具54の回動を防止する。一方、第1の固定具52は、回動防止部材56が第2の固定具54の上面に当接することにより、回動が防止される。ここで、回動防止部材56の位置は、第2の固定具54の上面の突出部64以外の部分に当接するかその直上に位置するように設定されているので、回動防止部材56が、第1の固定具52と第2の固定具54のがたつきをほぼ解消する。
【0039】
以上のような構造の第2実施形態によれば、第1実施形態で得られた効果と同様の効果が得られる他、次のような効果が得られる。
回動防止手段が回動防止部材56、第1固定具52の孔60、及びナット66で構成されており、この回動防止手段によって第1の固定具52及び第2の固定具54の回動を防止することができる。したがって、第1の固定具52及び第2の固定具54を上面開放のコ字形の部材等の簡単な構造とすることができるので、固定構造を簡単に製造することができる。
【0040】
第2の固定具54の先端部分が第1の固定具52内に挿通されており、第1の固定具52及び第2の固定具54を互いに固定した状態で、第2の固定具54の底面が第1の固定具52の底面に当接される。これにより、ボルト53の締め付け時、第2の固定具54の底面が第1の固定具52の底面に当接することによっても、第2の固定具54の回動を防止することができる。また、第2の固定具54の先端部の下端が第1の固定具52の底面に当接するので、第2の固定具54の角部による燃料タンク100への局部的な大きな応力がかからず、燃料タンク100の損傷を防止することができる。これにより、燃料タンク100と固定バンド50の固定構造との間にゴム製の板状部材等を設置する必要がなくなる。
【0041】
回動防止部材56が第2の固定具54の突出部64に当接することにより、第2の固定具54が第1の固定具52から抜け落ちるのを防止することができる。したがって、ボルト53を挿通する際の第1の固定具52及び第2の固定具54の仮止めを行うことができ、固定作業を容易に行うことができる。これは、固定バンド50が金属製の場合、燃料タンク100の周囲に沿って固定バンド50を曲げても、第1の固定具52及び第2の固定具54にボルト53を挿通しようとする間に固定バンド50がはね返ってしまうのを防止することができるから、特に有利である。
【0042】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、例えば、回動防止手段は、第1実施形態のような上面部18の形態や、第2実施形態のような回動防止部材56の形態に限らず、例えば幅方向または高さ方向に両者を貫通するピンで互いに固定され、これにより両者の回動運動が規制される構造であってもよい。また、回動防止手段は、第2の固定具の上面に当接しなくても、例えば第1の固定具が、第2の固定具の長手方向に貫通する部材を有し、それにより他方の固定具の幅方向軸線周りの回動を抑制してもよい。この場合には、貫通する部材は、第2の固定具のボルトの支持位置よりも第2の固定具の基端側の位置において第2の固定具に当接される。
なお、本発明においては、第2の固定具の上面に当接する回動防止手段の構成としては、第2の固定具の上面に直接当接する構造の他、第2の固定具の上面に例えば突起を介して当接するような構造も含む。
【0043】
ボルトは第1の固定具及び第2の固定具にそれぞれ2点で支持されるものに限らず、それぞれ3点以上で支持されてもよいし、また第1の固定具と第2の固定具とでボルトを支持する支持位置の数が異なっていてもよい。ボルト孔は少なくともそれぞれ1つずつあればよく、例えば他のボルトの支持は、ボルト孔によるものでなくてもよく、例えばボルトの下面側だけを支持する凹部や、ボルトの上面側だけを支持する凹部であってもよい。
また、ナットとボルトの配置は、前述の実施形態では、ナットが第2の固定具に溶接され、ボルトが第1の固定具側から挿通されたが、これに限らず、例えばナットが第1の固定具に溶接されて、ボルトが第2の固定具側から挿通される構造であってもよい。
【0044】
固定バンドは、2本に分割されているものに限らず、1本で構成されていても良い。燃料タンクを取り付ける際に、対向する端部に第1の固定具及び第2の固定具を取り付ければよい。また、固定バンドは、金属製のものに限らず、任意の材料で構成することができる。さらに、固定構造は、固定バンドに任意の個数設けることができる。
また、固定バンドは、前述の実施形態のようにオイルガード内に配置された燃料タンクを固定するものに限らず、オイルガードに収納されない燃料タンクに対しても同様に適用することができる。
第1の固定具及び第2の固定具は、断面四角形の略直方体の形状に限らず、六角形、八角形等、多角形の断面形状を有していても良く、また、固定具が燃料タンクに対して確実に位置決めされるのであれば、多角形に限らず、円形であってもよい。
【0045】
前述の実施形態において、第1の固定具は、第1実施形態では、第2の固定具を上面及び両側面の三方から取り囲み、第2実施形態では、第2の固定具を下面及び両側面の三方から取り囲んでいたが、これに限らず、例えば、回動防止手段が、第1の固定具に形成された筒状部を有し、第1の固定具及び第2の固定具がボルトによって互いに固定された状態において、第2の固定具の少なくとも一部が第1の固定具の筒状部内に挿入されてもよい。このような構造では、第1の固定具は、四方から第2の固定具を取り囲む。
【符号の説明】
【0046】
1,50 固定バンド
6,52 第1の固定具
8,54 第2の固定具
10,53 ボルト
12,65 ナット
20,22,24,26,58,62 ボルト孔
56 回動防止部材
64 突出部
100 燃料タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクを固定するための燃料タンク用固定バンドの固定構造であって、
前記燃料タンク用固定バンドの一端に取り付けられる第1の固定具と、
前記燃料タンク用固定バンドの他端に取り付けられる第2の固定具と、を備え、
前記第1の固定具及び前記第2の固定具は、前記第1の固定具及び前記第2の固定具を貫通して両者を互いに固定することにより前記燃料タンク用固定バンドを固定するボルトを通すためのボルト孔をそれぞれ有し、
前記第1の固定具は、前記第1の固定具及び前記第2の固定具の幅方向軸線周りの回動を防止する回動防止手段を有する、
ことを特徴とする燃料タンク用固定バンドの固定構造。
【請求項2】
前記回動防止手段は、前記第2の固定具の上面に当接するように構成される、
請求項1に記載の燃料タンク用固定バンドの固定構造。
【請求項3】
前記ボルト孔は、前記第1の固定具及び前記第2の固定具に、それぞれ2つずつ設けられている、
請求項1または請求項2に記載の燃料タンク用固定バンドの固定構造。
【請求項4】
前記第1の固定具及び前記第2の固定具が前記ボルトによって互いに固定された状態において、前記第2の固定具の底面の少なくとも一部は、前記第1の固定具の底面上に配置される、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の燃料タンク用固定バンドの固定構造。
【請求項5】
前記第1の固定具及び前記第2の固定具は、略直方体に形成され、前記第1の固定具及び前記第2の固定具が前記ボルトによって互いに固定された状態において、前記第2の固定具の少なくとも一部は前記第1の固定具に収納されるように配置される、
請求項1から4のいずれか1項に記載に記載の燃料タンク用固定バンドの固定構造。
【請求項6】
前記第1の固定具に対する前記第2の固定具の位置を仮止めする仮止め手段が設けられている、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の燃料タンク用固定バンドの固定構造。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の燃料タンク用固定バンドの固定構造と、
一端に前記第1の固定具が設けられ、他端に前記第2の固定具が設けられたバンド部と、を備えた、
ことを特徴とする燃料タンク用固定バンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−214085(P2012−214085A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79614(P2011−79614)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(509264132)株式会社やまびこ (65)
【Fターム(参考)】