説明

燃料ポンプ取付構造

【課題】2つの樹脂材料を用いて燃料タンクを構成した場合であっても、その接合面での熱影響を受けにくくすることができる燃料ポンプ取付構造を提供する。
【解決手段】燃料ポンプ取付構造であって、燃料タンク13は、ポンプ支持部材80を覆うように第1樹脂材料で成形された被覆部材87と、被覆部材87で覆われたポンプ支持部材80に被覆部材87のポンプ支持面88cが表出するように第2樹脂材料でブロー成形された燃料タンク本体部13fとで構成され、燃料タンク本体部13fと被覆部材87との境界102aよりも燃料タンク13のタンク本体側に、燃料ポンプ40と燃料タンク13との隙間を封止するシール部材72を配置し、ポンプ支持部材80とシール部材72との間に、燃料タンク本体部13fと被覆部材87の接合面100を配した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製の燃料タンクに燃料ポンプを取り付けるための燃料ポンプ取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動二輪車において、エンジンの上方に燃料タンクを備え、この燃料タンクの底部に燃料ポンプを取り付けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、車体の軽量化を目的として、燃料タンクを樹脂で成形したものも知られている。
【0003】
このような樹脂製の燃料タンクでは、エンジンの熱影響を受けにくくするように、燃料タンクの壁厚を厚くする等の配慮がなされていた。しかしながら、壁厚を厚くすると車体重量が重くなってしまい、樹脂製にする効果が少なくなってしまう。また、コストも高くなってしまう。そこで、燃料タンクを耐クリープ性の高い樹脂材料で成形し、壁厚を厚くするこなく、エンジンの熱影響をより少なくすることも考えられるが、このような材料はコストが高くなってしまう。
【0004】
そのため、燃料タンクの燃料ポンプ取付部を耐クリープ性の高い樹脂材料を用いて成形した後に、燃料タンク本体部を従来の樹脂材料でブロー成形することで、燃料ポンプ取付部における熱影響を少なくし、燃料タンク全体のコストを低く抑えることも考えられている。
【特許文献1】特開2007−224831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クリープ性の高い樹脂を別途設けて2つの樹脂を接合した場合に、その接合面の密着性は、製造条件、形状、熱の影響によらず良好なシール性能を確保しなければならないという課題がある。
【0006】
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、2つの樹脂材料を用いて燃料タンクを構成した場合であっても、その接合面での良好な密着性を確保することができる燃料ポンプ取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述課題を解決するため、本発明は、樹脂で成形される燃料タンクに燃料ポンプを取り付けるためのポンプ支持部材を設け、前記ポンプ支持部材をインサートプレートおよびインサートナットによって一体または別体で形成し、前記燃料ポンプが前記燃料タンクの内方に位置するように取り付けられる燃料ポンプ取付構造であって、前記燃料タンクは、前記ポンプ支持部材を覆うように第1樹脂材料で成形された被覆部材と、前記被覆部材で覆われたポンプ支持部材に前記被覆部材のポンプ支持面が表出するように第2樹脂材料でブロー成形された燃料タンク本体部とで構成され、前記燃料タンク本体部と前記被覆部材との境界よりも燃料タンクのタンク本体側に、前記燃料ポンプと前記燃料タンクとの隙間を封止するシール部材を配置し、前記ポンプ支持部材と前記シール部材との間に、前記燃料タンク本体部と前記被覆部材の接合面を配したことを特徴とする。
この構成によれば、シール部材によって燃料が封止され、被覆部材と燃料タンク本体部との接合面まで燃料が達することがなくなる。また、接合面をポンプ支持部材とシール部材とで挟み込むようになり、接合面の密着性を向上させることができる。
【0008】
また、前記被覆部材を燃料タンク本体部でブロー成形し覆った後、開口端部を切削してシール面を形成してもよい。
この構成によれば、燃料タンク本体部のブロー成形のみでは困難なシール面の精度を上げることができ、シール性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る燃料ポンプ取付構造では、樹脂で成形される燃料タンクに燃料ポンプを取り付けるためのポンプ支持部材を設け、前記ポンプ支持部材をインサートプレートおよびインサートナットによって一体または別体で形成し、前記燃料ポンプが前記燃料タンクの内方に位置するように取り付けられる燃料ポンプ取付構造であって、前記燃料タンクは、前記ポンプ支持部材を覆うように第1樹脂材料で成形された被覆部材と、前記被覆部材で覆われたポンプ支持部材に前記被覆部材のポンプ支持面が表出するように第2樹脂材料でブロー成形された燃料タンク本体部とで構成され、前記燃料タンク本体部と前記被覆部材との境界よりも燃料タンクのタンク本体側に、前記燃料ポンプと前記燃料タンクとの隙間を封止するシール部材を配置し、前記ポンプ支持部材と前記シール部材との間に、前記燃料タンク本体部と前記被覆部材の接合面を配しているので、シール部材によって燃料が封止され、被覆部材と燃料タンク本体部との接合面まで燃料が達することがなくなる。また、接合面をポンプ支持部材とシール部材とで挟み込むようになり、接合面の密着性を向上させることができる。
【0010】
また、前記被覆部材を燃料タンク本体部でブロー成形し覆った後、開口端部を切削してシール面を形成しているので、燃料タンク本体部のブロー成形のみでは困難なシール面の精度を上げることができ、シール性を向上させることができる。そのため、シール部材によって燃料がより確実に封止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に基づいて一実施例を説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る燃料ポンプ取付構造を備えたオフロード系自動二輪車の側面図である。
この自動二輪車の車体フレーム1は、ヘッドパイプ2,メインフレーム3,センターフレーム4、ダウンフレーム5及びロアフレーム6を備え、これらをループ状に連結し、その内側にエンジン7を支持している。エンジン7はシリンダ8とクランクケース9を備える。メインフレーム3,センターフレーム4及びロアフレーム6 はそれぞれ左右一対で設けられ、ヘッドパイプ2及びダウンフレーム5は車体中心に沿って1本で設けられる。
【0012】
メインフレーム3は、エンジン7の上方を直線状に斜め下がり後方へ延び、エンジン7の後方を上下方向へ延びるセンターフレーム4の上端部へ連結している。ダウンフレーム5は、エンジン7の前方を斜め下がりに下方へ延び、その下端部でロアフレーム6の前端部へ連結している。ロアフレーム6はエンジン7の前側下部からエンジン7の下方へ屈曲して略直線状に後方へ延び、後端部でセンターフレーム4の下端部と連結している。
【0013】
エンジン7の上方には、燃料タンク13が配置されメインフレーム3上に支持される。燃料タンク13の後方にはシート14が配置され、センターフレーム4の上端から後方へ延びるシートレール15上に支持される。シートレール15の下方には、リアフレーム16が配置されている。シートレール15とリアフレーム16には、エアクリーナ17が支持され、スロットルボディ18を介してシリンダヘッド11へ車体後方側から吸気される。
【0014】
シリンダ8の前部には、排気管20が設けられている。この排気管20は、シリンダ8の前部からクランクケース9の前方へ延出し、右側へ曲げられた後に車体右側を後方に向かって引き回されている。この排気管20からは、マフラー22が後方へ延出している。マフラー22後端部は、リアフレーム16によって支持されている。
【0015】
ヘッドパイプ2にはフロントフォーク23が支持され、下端部に支持された前輪24がハンドル25で操向される。センターフレーム4にはピボット軸26によりリヤアーム27の前端部を揺動自在に支持されている。リヤアーム27の後端部には後輪28が支持され、エンジン7によりチェーン駆動される。リヤアーム27とセンターフレーム4の後端部との間には、リヤサスペンションのクッションユニット29が設けられている。
【0016】
なお、図1において、符号30はラジエタ、31はそのラバーマウント部、32,33はエンジンマウント部、34はエンジンハンガ、35は電装品ケースである。なお、エンジン7は、ピボット軸26にてもセンターフレーム4へ支持されている。
【0017】
図2は、エンジン及び燃料供給系部分の拡大側面図である。
エンジン7は水冷4サイクル式であり、シリンダ8は、そのシリンダ軸線C1が略垂直になる直立状態でクランクケース9の前部に設けられ、下から上へ順に、シリンダブロック10,シリンダヘッド11,ヘッドカバー12を備える。シリンダ8を直立させることにより、エンジン7の前後方向を短くして、エンジン7をオフロード車に適した構成にしている。
【0018】
シリンダ8の直上位置には、燃料タンク13が配置されている。燃料タンク13は、その底部とヘッドカバー12上部との間に、スティフナ部36程度の間隔を有する。スティフナ部36は、ダウンフレーム5の上下方向中間部とメインフレーム3の後部とを連結する腕状のフレーム補強部材である。燃料タンク13の内部には内蔵式の燃料ポンプ40が収容されている。
【0019】
燃料ポンプ40もシリンダ8の直上に配置され、本構成においては、シリンダ8の中心(ピストンの軸心)であるシリンダ軸線C1の軸線方向延長上に重なるように配置されている。燃料ポンプ40の配置は、シリンダ軸線C1と一部でも重なっている構成が好ましいが、エンジン7の上方に位置していればよい。この配置は重量の大きな燃料ポンプ40を車体の前後方向でエンジン7の重心W近傍にすることができる。エンジン7の重心Wは、クランク軸9aの軸心Oの直近で斜め後上方に位置する。
【0020】
燃料ポンプ40は、燃料タンク13の底部13aから内側へ挿入され、燃料ポンプ40の底部であるベース部61(詳細は後述する。図3参照)から燃料供給管41が前方へ延出し、後方へ曲がり返してスロットルボディ18の燃料噴射ノズル42へ接続している。燃料噴射ノズル42は、公知の電子燃料噴射装置を構成する。燃料供給管41は、燃料ポンプ40からの高圧燃料を燃料噴射ノズル42へ供給する管路であり、底部13aとヘッドカバー12の間を通ってシリンダヘッド11の後部までの間を湾曲して比較的短く配管され、燃料の圧力損失を少なくするとともに重量軽減に貢献している。
【0021】
スロットルボディ18は、シリンダヘッド11に設けられた斜め上がりに上方へ延びる吸気通路43へ接続している。燃料噴射ノズル42は、スロットルボディ18の側面に設けられたソケットへ斜めに挿入され、先端の噴射口を吸気通路43内に臨ませ、燃料を吸気通路43内へ噴射するようになっている。また、燃料噴射ノズル42には、電線コネクタ44を介して制御用電線48の一端が接続されている。
【0022】
ヘッドカバー12の略記した点火プラグ46には、点火用高圧電線であるハイテンションコード47の一端が接続されて点火用高電圧が印加される。また、燃料ポンプ40には、駆動電力を供給するための駆動用電線45が接続されている。これらの電線45・47・48の各他端は電装品ケース35に設けられているコンデンサ50へ接続されている。電装品ケース35には、電装品としてコンデンサ50と別に、レギュレータ51が収容されている。
【0023】
電装品ケース35は、シリンダ8の後方かつクランクケース9の上方となる位置で、かつシリンダ8へ近い位置にて左側面をセンターフレーム4に支持されている。電装品ケース35の右側は前方へ延出するステー53がエンジンハンガ34の先端へ連結して支持されている。また、排気管20は電装品ケース35の側方を通って後方へ長く延出し、後端部は電装品ケース35よりも後方位置にて開口する(図1参照)。このため、電装品ケース35はシリンダ8からの熱や排気熱が電装品に対して効果的に遮断されるようになっている。
【0024】
図3は、燃料タンク13の側面を一部切り欠いて示す側面図、図4は、燃料タンク13の底面図、図5は、燃料ポンプ40の取付を示す分解斜視図である。
燃料タンク13は、図3に示すように、側面視において左下部に直角部分を有する略直角三角形状をなし、前側下部に略直角部が位置し、上面は後方斜め下がりの斜面をなす比較的小型のものである。この燃料タンク13の前側部の両側には、メインフレーム3の上面に乗る段部13cが形成されている。また、燃料タンク13の前部には、取付用ブラケット13dが設けられている。この取付用ブラケット13dは、下部が燃料タンク13の側壁前面上部へボルト止めされ、上部がヘッドパイプ2と一体に形成されて後方へ延びるガセット37(図2参照)へボルト止めされている。また燃料タンク13の上部には、燃料給油口を塞ぐためのタンクキャップ13eが取り付けられている。
【0025】
燃料ポンプ40は、図3に示すように、燃料ポンプ40の上部を構成する燃料ポンプ本体部60と、下部を構成するベース部61とを備えている。
燃料ポンプ本体部60は、燃料タンク13の内部へ挿入され、タンク内の燃料を吸い上げるようになっている。また、ベース部61は、燃料タンク13に取り付けられた状態で、その底部13aから下方へ露出するようになっている。このベース部61には、燃料ポンプ40の側方へ突出する態様でフランジ部61aを有している。このフランジ部61aは、図4に示すように、下側から見て略6角形状をなしており、この6角形状の6つの頂点部分に取付孔61b(図5参照)がそれぞれ設けられている。燃料ポンプ40は、フランジ部61aを底部13aに下側から接触させた状態で、リング状のプレート62a、カラー62b、ワッシャー62c、62dを介して下側から6本のボルト63を螺合させることによって、燃料タンク13の底部13aに取り付けられる(図4および5参照)。
【0026】
また、ベース部61には、図3に示すように、燃料ポンプ本体部60の吐出口(図示省略)に接続するジョイント管64が前方へ向かって延出し、ここに燃料供給管41(図2参照)の一端が接続される。また、コネクタ65が設けられ、ここに燃料ポンプ駆動電源用の電線45が配線される。このジョイント管64は、車体中心C0近傍にて斜め前方へ延出し、コネクタ65は、側方へ若干後方向きに突出している。
【0027】
メインフレーム3は、図4に示すように、ヘッドパイプ2から左右へ分かれて拡開しながら後方へ延びる。したがってヘッドパイプ2と左右のメインフレーム3の前部で囲まれる空間は略鋭角三角形状をなし、ここに収容される燃料タンク13の底部13aの形状も、前方のヘッドパイプ2に向かって幅が狭くなる。燃料ポンプ40のベース部61が取り付けられる位置は、底部13aの最大幅部分を利用して配置される位置であり、この位置からさらに前方へ移動させようとしても、ベース部61の最大幅部分が底部13aの狭くなる部分と干渉することになり実質的に前方へ移動できない。このため、燃料ポンプ40の設けられた図示位置は、底部13aの形状による制約下において実質的に最前方配置可能な位置となる。
【0028】
図6は、燃料タンク13と燃料ポンプ40の取付部であって、ボルト63で燃料ポンプ40を固定した部分の拡大断面図である。なお、ボルト63を用いた取付部は6つあるが、いずれも図6に示す構造を有している。図6中、燃料タンク13の内部を符号Sで示す。また、図7は、ポンプ支持部材(インサートリング及びインサートナット)の斜視図を示す。
【0029】
燃料タンク13は、図6に示すように、燃料タンク13の開口13bの周辺部にポンプ支持部材80(インサートリング82(インサートプレート)及びナット81)が埋め込まれている。このポンプ支持部材80は、図7に示すように、開口13bの周方向に連続するリング状のインサートリング82にナット81を取付(圧入、もしくはかしめ)て構成されている。
【0030】
ナット81は、インサートリング82から上方に突出する態様で設けられている。また、6つのナット81は、6角形状の各頂点をなすように配置されている。このナット81には、図6に示すように、下側からねじ孔83が形成されている。このねじ孔83の位置は、燃料ポンプ40のベース部61に形成された取付孔61bの位置と対応しており、このねじ孔83にボルト63が螺合することになる。
また、ナット81の外側面には、図6および図7に示すように、ナット81の中心に向かって窪む2つの凹部84が設けられている。この凹部84は、ナット81の周方向に連続して形成されている。また、2つの凹部84は、上下方向に間隔をあけて形成されている。
【0031】
インサートリング82の外側部82aは、図6に示すように、燃料ポンプ40が取り付けられた状態で、フランジ部61aの外周縁部よりも外側に位置している。また、外側部82aは、図6に示すように、上側から下側に向かって斜め外側(インサートリング82の径方向の外側)に広がる態様で傾斜している。この傾斜は、成形時の樹脂材料の回りを良好にし、かつ、外側部82aの近傍での樹脂材料の厚みが均質になるように形成してある。
このインサートリング82には、図6および図7に示すように、6つのナット81のそれぞれに対応して、下側に突出する円筒突部85が形成されている。この円筒突部85の底面82dは、図6に示すように、燃料ポンプ40のフランジ部61aの上面と面で接するようになっている。
【0032】
また、インサートリング82の内側部82b(インサートリング82の開口)は、図6に示すように、上側から下側に向かって斜め内側(インサートリング82の径方向の内側)に広がる態様で傾斜している。この傾斜は、成形時の樹脂材料の回りを良好にし、かつ、内側部82bの近傍での樹脂材料の厚みが均質になるように形成してある。
また、この内側部82bは、プレート62aが取り付けられた状態で、プレート62aの内周縁部とほぼ同じ位置になるように形成されており、ボルト63の締結力をこのインサートリング82の全体で受けることができるようになっている。
【0033】
上述したポンプ支持部材80は、図6に示すように、円筒突部85の底面82dを除いて、被覆部材87で覆われている。この被覆部材87は、インサートリング82の形状に沿って、開口13bの周方向に連続するリング状に形成されており、射出成形等によって、金型に予め装着されたポンプ支持部材80と一体に同時にインサート成形される。このとき、被覆部材87は、ポンプ支持部材80の外面(ナット81やインサートリング82の外面)と隙間なく密着して一体に成形される。特に、成形時に樹脂材料がナット81の凹部84に隙間無く入り込むことによって、被覆部材87とポンプ支持部材80とが強固に取り付けられることになる。
【0034】
また、被覆部材87の外側であって燃料タンク本体部13fが溶着する接合面100の形状は、図6に示すように、成形後の燃料タンク本体部13fの厚みがほぼ均一になるように緩やかな起伏を有している。また、燃料タンク本体部13fから被覆部材87が表出する部分であって、燃料タンク13の開口13b側には、接合面100の境界102aが位置する。他方、燃料タンク13の底部13a側には、接合面100の境界102bが位置している。
【0035】
他方、燃料タンク13の開口13bの付近には、図6に示すように、燃料ポンプ40を取り付けた状態で、燃料タンク内Sの燃料を燃料タンク外部とシールする2つのO−リング71、72が取り付けられている。
【0036】
O−リング71は、図6に示すように、フランジ部61aと被覆部材87の底面88cとの間に、燃料ポンプ40の外周に沿って連続して設けられている。この被覆部材87の底面88cには、O−リング71が挿入可能なシール溝89が形成されている。
このO−リング71は、ボルト63の締結力によって上下方向91(押し付け方向、面方向)への力が作用し、燃料ポンプ40が取り付けられた状態でシールとして機能する。また、この力は、被覆部材87を間に挟んでインサートリング82が受けることになる。すなわち、この上下方向91におけるO−リング71とインサートリング82との間には、図6に示すように、耐クリープ性の高い被覆部材87のみが介在しているので、このシール部分ではエンジン7からの熱影響を受けにくいようになっている。
【0037】
一方、O−リング72は、図6に示すように、燃料ポンプ本体部60と被覆部材87の内側部88aとの間に、燃料ポンプ40の外周に沿って連続して設けられている。燃料タンク13の開口13bには、このO−リング72を取り付けるためのシール面104が形成されている。このシール面104は、図6に示すように、境界102aを挟んで上下に亘って形成され、開口13bの周方向に沿って円形に形成されている。
このシール面104と燃料ポンプ本体部60との間には、O−リング72が挿嵌されるための隙間90が形成されることになる。O―リング72は、この隙間90に挿嵌された状態で、表面の凹凸が少ないシール面104と接触することによって、燃料ポンプと燃料タンク13との隙間を確実に封止することになる。
【0038】
このO−リング72は、燃料ポンプ本体部60が燃料タンク13の開口13b内に押し込まれると、径方向92(押し付け方向)への力が作用し、燃料ポンプ40が取り付けられた状態でシールとして機能する。また、この力は、被覆部材87を間に挟んでインサートリング82の内側部82bが受けることになる。この左右方向92におけるO−リング72と内側部82bとの間には、図6に示すように、耐クリープ性の高い被覆部材87のみが介在しているので、このシール部分でもエンジン7からの熱影響を受けにくいようになっている。
【0039】
また、O―リング72は、図6に示すように、境界102aよりも上側(燃料タンク13の内方側)に取り付けられている。これにより、燃料タンク13内の燃料がO−リング72で封止されて境界102aまで入り込まないようになっている。
さらに、インサートリング82の内側部82bは、図6において下側から左斜め上側に昇り傾斜に形成されている。また、境界102aの付近において、燃料タンク本体部13bと被覆部材87の境界面108は、この内側部82bの傾斜に沿って境界102aから左斜め上側に延びている。これにより、インサートリング82の内側部82bとO−リング72との間に接合面100が位置するようになり、上述した径方向92への力によって接合面100がより密着するようになっている。
【0040】
さらに、境界102aをO―リング72の下側に配置するため、及び、開口13bにシール面104を形成するために、被覆部材87には、開口13b側に向かって突出し、開口13bの周方向に沿って延在する突条部106が形成されている。この突条部106は、開口13bの上端をできるだけ燃料タンク13の内方側に位置させ、かつ、内方に位置させることによって開口13bのこの部分の厚みが不均一にならないようにするために設けられている。
【0041】
図8は、シール面104の形成過程であって(a)は切削前の状態、(b)は切削後の状態を示す断面図である。
被覆部材87は、図8(a)に示すように、燃料タンク本体部13bのブロー成形時に、燃料タンク本体部13bによってその上側の全体が覆われるように成形される。そして図8(b)に示すように、ブロー成形後に、燃料タンク13の開口13bを周方向に連続して切削加工を施すことによってシール面104が形成される。このシール面104の平面度は、ブロー成形では精度よく形成するのは困難であることから、成形後に切削加工することにしている。
【0042】
本発明の実施の形態に係る燃料ポンプ取付構造によれば、燃料タンク本体部13fとこの燃料タンク本体部13fの開口13bから表出する被覆部材87との境界102aよりも燃料タンク13の内方側に、燃料ポンプ40と燃料タンク13との隙間を封止するシール部材を配置しているので、燃料タンク13内の燃料が境界102aまで行かないようにすることができる。これにより、燃料が境界102aから接合面100へと入り込みにくくすることができる。
また、ポンプ支持部材80のインサートリング82とO−リング72との間に、燃料タンク本体部13fと被覆部材87の接合面100を配しているので、径方向92への力によって接合面100がより密着するようになる。これにより、接合面100の密着性を向上させることができ、仮に接合面100がエンジン7の熱影響を受けたとしても、接合面の密着性を損なわずに維持することができる。
【0043】
また、開口13bに配された境界102aを前記開口部の内面に配し、前記燃料タンク本体部のブロー成形後に切削によってシール面104を形成しているので、燃料タンク本体部13fのブロー成形のみでは困難なシール面の精度を上げることができ、シール性を向上させることができる。そのため、O−リング72によって燃料がより確実に封止される。また、ブロー成形では得ることのできない形状に切削加工することができ、種々の形状に対応することができる。
【0044】
さらに、被覆部材87に突条部106を形成しているので、開口13bの上端をできるだけ燃料タンク13の内方側に位置させることができる。また、開口13bの上端を燃料タンク13の内方側に位置させることによって開口13bのこの部分の厚みが不均一にならないようにすることができる。これにより、成形時の材料の回りを良好にし、生産性を向上させることができる。
【0045】
以上、本発明の実施の形態について述べたが、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
例えば、本実施の形態では、ポンプ支持部材80は、ナット81とインサートリング82とで別体に構成しているが、ナット81とインサートリング82とをそれぞれ一体にして構成することもできる。例えば、鋳造、鍛造によって、ポンプ支持部材80を一体で製作してもかまわない。
【0046】
また、本実施の形態では、境界102aの付近において、被覆部材87と燃料タンク本体部13bとの境界面108を、境界102aから斜めに傾斜する態様で形成されているが(図6参照)、図9に示すように、境界102aから水平に(シール面104と略垂直に)延ばした後に、上方に向けて延ばす態様で境界面208を形成してもよい。この場合、インサートリング82の内側部282bの形状は、境界面208の上方に延びる部分の形状に合わせて、上下方向に延在(境界面208と略平行)に形成することになる。
これにより、境界102aの付近において接合面100がより大きな面積で接合されることになり、接合強度を向上させることができる。また、インサートリング82の内側部282bとO−リング72との間に接合面100が位置するようになり、O−リング72の径方向92への力によって接合面100がより密着するようになる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態に係る自動二輪車の側面図である。
【図2】エンジンおよび燃料供給系部分の拡大側面図である。
【図3】燃料ポンプが取り付けられた燃料タンクの一部を切り欠いて示す側面図である。
【図4】燃料ポンプが取り付けられた燃料タンクの底面図である。
【図5】燃料ポンプの取付を示す分解斜視図である。
【図6】燃料タンクと燃料ポンプの取付部分を示す拡大断面図である。
【図7】インサートナットの斜視図である。
【図8】シール面の形成過程であって(a)は切削前の状態、(b)は切削後の状態を示す断面図である。
【図9】実施の形態の変形例であって、燃料タンクと燃料ポンプの取付部分を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 車体フレーム
7 エンジン
13 燃料タンク
13a 底部
13b 開口
13e タンクキャップ
13f 燃料タンク本体部
14 シート
24 前輪
28 後輪
40 燃料ポンプ
60 燃料ポンプ本体部
61 ベース部
61a フランジ部
61b 取付孔
62a プレート
62b カラー
62c、62d ワッシャー
63 ボルト
64 ジョイント管
65 コネクタ
71 O−リング(第2シール部材)
72 O−リング(第1シール部材)
80 ポンプ支持部材
81 ナット(インサートナット)
82 インサートリング(インサートプレート)
82a 外側部
82b 内側部
82c 上部
82d 下部
83 ねじ孔
84 凹部
85 円筒突部
87 被覆部材
87a 外側部
88a 内側部
88b 上側部
88c 底面部
89 シール溝
90 隙間
91 上下方向(押し付け方向、面方向)
92 径方向(押し付け方向)
100 接合面
102a、102b 境界
104 シール面
106 突条部
108 境界面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂で成形される燃料タンクに燃料ポンプを取り付けるためのポンプ支持部材を設け、前記ポンプ支持部材をインサートプレートおよびインサートナットによって一体または別体で形成し、前記燃料ポンプが前記燃料タンクの内方に位置するように取り付けられる燃料ポンプ取付構造であって、
前記燃料タンクは、前記ポンプ支持部材を覆うように第1樹脂材料で成形された被覆部材と、前記被覆部材で覆われたポンプ支持部材に前記被覆部材のポンプ支持面が表出するように第2樹脂材料でブロー成形された燃料タンク本体部とで構成され、
前記燃料タンク本体部と前記被覆部材との境界よりも燃料タンクのタンク本体側に、前記燃料ポンプと前記燃料タンクとの隙間を封止するシール部材を配置し、前記ポンプ支持部材と前記シール部材との間に、前記燃料タンク本体部と前記被覆部材の接合面を配したことを特徴とする燃料ポンプ取付構造。
【請求項2】
前記被覆部材を燃料タンク本体部でブロー成形し覆った後、開口端部を切削してシール面を形成したことを特徴とする請求項1に記載の燃料ポンプ取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−37963(P2010−37963A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198787(P2008−198787)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】