説明

燃料低透過性ブロック共重合体

【課題】耐寒性フッ素ゴムの耐寒性を維持したまま、できる限り低硬度で、優れた燃料低透過性を示すブロック共重合体、パーオキサイド加硫用組成物および該組成物を用いて成形した燃料系の自動車部品を提供する。
【解決手段】(1)フッ化ビニリデン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体の組成割合が50〜85/15〜50モル%、または(2)フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体の組成割合が45〜85/1〜30/14〜30モル%のいずれかの組成を有する含フッ素エラストマーセグメント(A)と、含フッ素エラストマーセグメント(A)と溶融成型可能な含フッ素樹脂セグメント(B)のみからなるブロック共重合体であって、ヨウ素原子を有するパーオキサイド加硫可能なブロック共重合体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素エラストマーセグメントと含フッ素樹脂セグメントを有するブロック共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ化ビニリデン(VdF)をベースにパーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)を共重合させた耐寒性フッ素ゴムは、−25℃〜−30℃において優れた耐寒性を示すが、自動車用途で要求される燃料低透過性については、VdF/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)共重合体やVdF/HFP/テトラフルオロエチレン(TFE)共重合体に比べて劣っており、耐寒性と燃料低透過性の両立が望まれている。一方、少なくとも1種のエラストマー性ポリマー鎖セグメントおよび少なくとも1種の非エラストマー性ポリマー鎖セグメントからなる含フッ素ブロックポリマーが各種提案されているが(たとえば、特許文献1および2参照)、耐寒性と燃料低透過性の両立という観点からは検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭53−003495号公報
【特許文献2】国際公開第98/54259号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、耐寒性フッ素ゴムの耐寒性を維持したまま、できる限り低硬度で、優れた燃料低透過性を示すブロック共重合体、パーオキサイド加硫用組成物および該組成物を用いて成形した燃料系の自動車部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(1)フッ化ビニリデン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体の組成割合が50〜85/15〜50モル%、または(2)フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体の組成割合が45〜85/1〜30/14〜30モル%のいずれかの組成を有する含フッ素エラストマーセグメント(A)と、溶融成型可能な含フッ素樹脂セグメント(B)のみからなるブロック共重合体であって、
ヨウ素原子を有するパーオキサイド加硫可能なブロック共重合体に関する。
【0006】
フッ化ビニリデン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(1)がフッ化ビニリデン/パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体であり、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(2)がフッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体であることが好ましい。
【0007】
含フッ素樹脂セグメント(B)が、示差走査熱量測定装置によって測定される融点を有する(b1)ポリフッ化ビニリデン、(b2)テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、(b3)ポリクロロトリフルオロエチレン、(b4)エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、(b5)フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体および(b6)テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(アルキル基は炭素数1〜5個までのパーフルオロアルキル基)よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0008】
含フッ素エラストマーセグメント(A)の含有割合が、ブロック共重合体中60〜95質量%であり、含フッ素樹脂セグメント(B)の含有割合が、ブロック共重合体中5〜40質量%であることが好ましい。
【0009】
本発明のブロック共重合体は、含フッ素エラストマーセグメント(A)の両末端に、含フッ素樹脂セグメント(B)を有することが好ましい。
【0010】
また、本発明は、(i)前記のブロック共重合体、(ii)多官能性不飽和化合物および(iii)パーオキサイドを含むパーオキサイド加硫用組成物にも関する。
【0011】
また、本発明は、前記のパーオキサイド加硫用組成物を用いて成形された燃料に接触する自動車部品にも関する。
【0012】
さらに、本発明は、RIn(式中、nは1〜2の整数であり、Rは炭素数1〜8の飽和もしくは不飽和のフルオロ炭化水素基またはクロロフルオロ炭化水素基、または炭素数1〜3の炭化水素基であり、酸素原子を含んでいてもよい)で表される含ヨウ素化合物の存在下で、ラジカル重合を行うことを特徴とする前記のブロック共重合体の製造方法にも関する。
【0013】
本発明の製造方法においては、含フッ素エラストマーセグメント(A)を重合した後に、含フッ素樹脂セグメント(B)を重合することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、耐寒性フッ素ゴムの耐寒性を維持したまま、できる限り低硬度で、燃料低透過性に優れるブロック共重合体、パーオキサイド加硫用組成物および該組成物を用いて成形した燃料系の自動車部品を提供することができる。特に耐寒性として要求されるTR10が−20℃以下である部品に用いることが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、(1)フッ化ビニリデン(VdF)/パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)共重合体の組成割合が50〜85/15〜50モル%、または(2)VdF/テトラフルオロエチレン(TFE)/PAVE共重合体の組成割合が45〜85/1〜30/14〜30モル%のいずれかの組成を有する含フッ素エラストマーセグメント(A)と、含フッ素エラストマーセグメント(A)と溶融成型可能な含フッ素樹脂セグメント(B)のみからなるブロック共重合体であって、ヨウ素原子を有するパーオキサイド加硫可能なブロック共重合体に関する。
【0016】
含フッ素エラストマーセグメント(A)における(1)VdF/PAVE共重合体、または(2)VdF/TFE/PAVE共重合体におけるPAVEとしては、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)やCF2=CFORfで表されるパーフルオロアルコキシビニルエーテル(ここでRfは1〜2個のエーテル結合を含む炭素数3〜10個のパーフルオロエーテル基を意味する。具体的にはCF2=CFO(CF2O)l1、CF2=CFO(CF2CF2O)m1、CF2=CFO(CF2CF2CF2O)n1、CF2=CFOCF2CF(CF3)OR1(R1は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基、l、m、nはそれぞれ1または2)などが例示される。)が、耐寒性、柔軟性が良好という点でより好ましい。
【0017】
含フッ素エラストマーセグメント(A)がVdF/PAVE共重合体(1)である場合、VdF/PAVE共重合体(1)の組成割合は、耐寒性、柔軟性が良好であるという点から、50〜85/15〜50モル%であり、好ましくは55〜80/20〜45モル%である。
【0018】
また、含フッ素エラストマーセグメント(A)が、(2)VdF/TFE/PAVE共重合体である場合、VdF/TFE/PAVE共重合体(2)の組成割合は、耐寒性、柔軟性が良好であるという点から、45〜85/1〜30/14〜30モル%であり、好ましくは50〜80/5〜25/16〜28モル%、より好ましくは55〜75/7〜22/16〜25モル%である。
【0019】
含フッ素エラストマーセグメント(A)の数平均分子量(Mn)は、後にブロック共重合される含フッ素樹脂セグメント(B)の量にもよるが、得られるブロック共重合体の成型加工性が良好であるという点、および含フッ素エラストマーセグメント(B)の分散性を向上させる意味合いから、20,000以上が好ましく、30,000以上がより好ましい。また、300,000以下が好ましく、さらに200,000以下がより好ましい。
【0020】
含フッ素エラストマーセグメント(A)の100℃におけるムーニー粘度は、上記分子量と同様に得られるブロック共重合体の成型加工性が良好であるという点から、2以上が好ましく、5以上がさらに好ましい。また、200以下が好ましく、150以下がさらに好ましい。
【0021】
含フッ素エラストマーセグメント(A)のフッ素含有量は、燃料低透過性が良好であるという点から、63.5質量%以上が好ましく、64.0質量%以上がより好ましく、64.5質量%以上がさらに好ましい。また、含フッ素エラストマーセグメント(A)のフッ素含有量は、耐寒性が良好であるという点から、68.0質量%以下が好ましく、67.5質量%以下がより好ましく、67.0質量%以下がさらに好ましい。
【0022】
含フッ素エラストマーセグメント(A)の含有割合は、耐寒性が向上するという点から、含フッ素エラストマー中60質量%以上が好ましく、65質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。また、含フッ素エラストマーセグメント(A)の含有割合は、燃料低透過性が向上するという点から、含フッ素エラストマー中95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。
【0023】
本発明のブロック共重合体における含フッ素樹脂セグメント(B)は、その結晶性のために燃料低透過性に優れるセグメントであり、かつ含フッ素エラストマーセグメント(A)と実質的に相溶性のないセグメントであるため、マトリックスを形成する含フッ素エラストマーセグメント(A)中に含フッ素樹脂セグメント(B)が微分散し、ミクロドメインを形成している。そのため、燃料が透過する時に迂回効果が発揮され、低透過性が実現できるものと考えられる。
【0024】
ここで、含フッ素樹脂セグメント(B)における樹脂とは、示差走査熱量測定(DSC)装置によって測定できる融点を有するものをいう。
【0025】
含フッ素樹脂セグメント(B)としては、(b1)ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、(b2)TFE/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)共重合体、(b3)ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、(b4)エチレン(Et)/TFE共重合体、(b5)VdF/TFE共重合体、(b6)TFE/パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)共重合体があげられる。これらの中で、燃料低透過性に優れる、得られるブロックポリマーの成型加工性に優れるという点で、PVdF、VdF/TFE共重合体が好ましい。
【0026】
含フッ素樹脂セグメント(B)における(b1)PVdFについては3モル%以下のVdFと共重合可能な単量体単位を含むことが可能である。好ましい単量体としてはTFE、HFP、Et、プロピレン、CTFE、PAVEなどがあげられる。このセグメントは130〜190℃の範囲に融点を持つ。
【0027】
含フッ素樹脂セグメント(B)における(b2)TFE/HFP共重合体の組成割合は、得られるブロックポリマーの成型加工性や低温特性が良好であるという点から、好ましくは80〜96/4〜20モル%であり、より好ましくは88〜93/7〜12モル%である。また必要に応じてPAVEを0〜3モル%の範囲で用いてもよい。PAVEとしてはCF2=CFO(CF2nCF3[n=1〜5の整数]が例示される。このセグメントは200〜340℃の範囲に融点を持つ。
【0028】
含フッ素樹脂セグメント(B)における(b4)TFE/Et共重合体の組成割合は、燃料低透過性および得られるブロックポリマーの成型加工性が良好であるという点から、好ましくは15〜85/15〜85であり、より好ましくは30〜70/30〜70モル%であり、さらに好ましくは35〜60/40〜65モル%である。また必要に応じて通常公知の変性モノマーを用いてもよい。変性モノマーの例としてはPAVE、2,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロ−1−ペンテン(H2ペンテン)、ヘキサフルオロイソブテン(HFiB)、CH2=CHCF2CF2CF2CF3などがあげられる。このセグメントは150〜345℃の範囲に融点を持つ。
【0029】
含フッ素樹脂セグメント(B)における(b5)VdF/TFE共重合体の組成割合は、得られるブロックポリマーの成型加工性や低温特性が良好であるという点から、好ましくは30〜90/10〜70モル%であり、より好ましくは35〜85/15〜65モル%である。また必要に応じてHFP、PAVE、CTFEなどを0〜15モル%の範囲で共重合させることも可能である。このセグメントは90〜250℃の範囲に融点を持つ。
【0030】
含フッ素樹脂セグメント(B)における(b6)TFE/PAVE共重合体の組成割合は、燃料低透過性および得られるブロックポリマーの成型加工性が良好であるという点から、好ましくは90〜99/1〜10モル%である。PAVEとしてはCF2=CFO(CF2nCF3[n=1〜5の整数]が例示される。このセグメントは200〜345℃の範囲に融点を持つ。
【0031】
含フッ素樹脂セグメント(B)の数平均分子量(Mn)は、測定できないために明らかではないが大きくなりすぎると含フッ素エラストマーの成型加工性が低下するので本性質を維持するように制御する必要がある。
【0032】
含フッ素樹脂セグメント(B)のフッ素含有量は、特に制約がなく、一般的なフッ素樹脂同様に、48質量%以上が好ましく、76質量%以下が好ましい。
【0033】
含フッ素樹脂セグメント(B)の含有割合は、燃料低透過性が良好であるという点から、含フッ素エラストマー中5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。また、含フッ素樹脂セグメント(B)の含有割合は、得られるブロックポリマーの成形性が良好であるという点から、含フッ素エラストマー中40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましい。
【0034】
本発明のブロック共重合体は、含フッ素エラストマーセグメント(A)に起因するガラス転移温度と、含フッ素樹脂セグメント(B)に起因する融点を有する。PMVEのみを用いた場合には−33〜−20℃の範囲にガラス転移温度を有し、融点は含フッ素樹脂セグメントの組成や分子量によって決まる。もし含フッ素エラストマーセグメント(A)と含フッ素樹脂セグメント(B)が相溶すると、ガラス転移温度が大幅に上昇し、目標とする耐寒性を得ることができない。通常、含フッ素エラストマーセグメント(A)と含フッ素樹脂セグメント(B)は互いに相溶しないため、マトリックスとなる含フッ素エラストマーセグメント(A)の耐寒性フッ素ゴムの特徴である耐寒性が発揮される。また燃料低透過性の含フッ素樹脂セグメント(B)がミクロに分散されることにより燃料低透過性が実現される。
【0035】
含フッ素エラストマーセグメント(A)と含フッ素樹脂セグメント(B)のブロック共重合体のガラス転移温度は、たとえば、示差走査熱量測定(DSC)装置によって測定される。ブロック共重合体において−50〜150℃の温度範囲で昇温スピード10℃/分でセカンドスキャンの熱収支を測定し、変極点として検知されたものを中点法により求めることができる。
【0036】
含フッ素エラストマーセグメント(A)由来のガラス転移温度は、耐寒性が良好であるという点から、含フッ素エラストマーセグメント(B)由来のガラス転移温度よりも低い温度であることが好ましく、具体的には、−33〜−20℃が好ましく、−32〜−24℃がより好ましい。
【0037】
含フッ素エラストマーセグメント(A)と含フッ素樹脂セグメント(B)のブロック共重合体の融点は、たとえば、DSCによって測定される。ブロック共重合体において60〜400℃の温度範囲で昇温スピード10℃/分でセカンドスキャンの熱収支を測定し、ピークトップを測定することにより求めることができる。
【0038】
ブロック共重合体の融点は、その共重合体に含まれる含フッ素樹脂セグメント(B)の共重合組成や分子量によって決まる。
【0039】
含フッ素エラストマーセグメント(A)および含フッ素樹脂セグメント(B)からなるブロック共重合体のフッ素含有量は、含フッ素樹脂セグメント(B)の組成の影響を受ける。しかし、含フッ素樹脂セグメント(B)の燃料透過性はポリマーの結晶性のために含フッ素エラストマーセグメント(A)に比べて非常に小さい。したがって、ブロック共重合体全体の燃料透過性に与えるフッ素含有量の影響は大きくはない。好ましい含フッ素樹脂セグメント(B)を選択した場合にはフッ素含有量は48質量%以上が好ましく、76質量%以下が好ましい。
【0040】
ブロック共重合体における含フッ素エラストマーセグメント(A)および含フッ素樹脂セグメント(B)の構成は、A−Bタイプ、B−A−Bタイプ、A−B−Aタイプ、−(B−A)n−タイプのものがあげられる。特に制約されるものではないが、燃料低透過性に優れる含フッ素樹脂セグメント(B)を微分散し易いという点、およびヨウ素移動重合のやり易さから、含フッ素エラストマーセグメント(A)の両末端に、含フッ素樹脂セグメント(B)を有するB−A−Bタイプが好ましい。
【0041】
本発明のブロック共重合体は、ヨウ素原子を有する。ヨウ素原子を有する含フッ素エラストマーセグメント(A)の製造方法としては、得られる重合体の分子量分布が狭く、分子量の制御が容易である点、末端にヨウ素原子を導入することができる点から、公知のヨウ素移動重合法が好ましい。
【0042】
たとえば、実質的に無酸素下で、ヨウ素化合物、好ましくはジヨウ素化合物の存在下に、前記のエラストマーセグメント(A)を構成する単量体を加圧下で撹拌しながらラジカル開始剤の存在下、水媒体中での乳化重合あるいは溶液重合を行う方法があげられる。
【0043】
使用するヨウ素化合物の代表例としては、たとえば、RIn(式中、nは1〜2の整数であり、Rは炭素数1〜8の飽和もしくは不飽和のフルオロ炭化水素基またはクロロフルオロ炭化水素基、または炭素数1〜3の炭化水素基であり、酸素原子を含んでいてもよい)で示される化合物などをあげることができる。
【0044】
具体的には、モノヨードメタン、1−ヨードメタン、1−ヨード−n−プロパン、ヨウ化イソプロピル、ジヨードメタン、1,2−ジヨードエタン、1,3−ジヨード−n−プロパン、I(CF2CF2nI(式中、nは1以上の整数である)で示される化合物などを用いることが好ましい。
【0045】
このようなヨウ素化合物を用いて得られる含フッ素エラストマーセグメント(A)用の重合体には、ヨウ素原子が導入される(たとえば、特開昭53−125491号公報および特開昭63−304009号公報参照)。
【0046】
本発明の含フッ素エラストマーセグメント用の重合体は、常法により製造することができ、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法などの重合法により製造することができる。重合時の温度、時間などの重合条件としては、モノマーの種類や目的とするエラストマーにより適宜決定すればよい。乳化剤、分子量調整剤、pH調整剤などを添加してもよい。分子量調整剤は、初期に一括して添加してもよいし、連続的にまたは分割して添加してもよい。
【0047】
乳化重合に使用される乳化剤としては、広範囲なものが使用可能であるが、重合中におこる乳化剤分子への連鎖移動反応を抑制する観点から、フルオロカーボン鎖または、フルオロポリエーテル鎖を有するカルボン酸の塩類が望ましい。また、反応性乳化剤の使用が望ましい。
【0048】
重合開始剤としてはラジカル重合開始剤が好ましく、特に制限はなく公知の有機及び無機の過酸化物を用いることが可能である。たとえば油溶性の有機過酸化物としてはジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジsec−ブチルパーオキシジカーボネートなどのジアルキルパーオキシカーボネート類、t−ブチルパーオキシブチレート、t−ブチルパーオキシピバレートなどのパーオキシエステル類、ジt−ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類などがあげられる。
【0049】
無機の過酸化物としては、カルボキシル基またはカルボキシル基を生成し得る基(たとえば、酸フルオライド、酸クロライド、CF2OHなどがあげられる。これらはいずれも水の存在下にカルボキシル基を生ずる)をエラストマー末端に存在させ得るものが好ましく、具体例としては、たとえば過硫酸アンモニウム(APS)、過硫酸カリウム(KPS)などがあげられる。
【0050】
重合系内のpH調整剤としては、リン酸塩、炭酸塩、ホウ酸塩の緩衝能を有する電解質物質、あるいは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなどがあげられる。
【0051】
分子量調整剤としては、前記であげられたヨウ素化合物があげられる。
【0052】
重合反応混合物から重合生成物を単離する方法として、たとえば塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウムなどの金属塩を添加して凝析させる方法があげられる。
【0053】
また、前記重合方法により、含フッ素エラストマーセグメント(A)を重合した後、含フッ素樹脂セグメント(B)を重合することによりブロック共重合体を製造することが、含フッ素樹脂セグメント(B)の分散性を向上させる点で好ましい。
【0054】
なお、含フッ素エラストマーにフッ素樹脂成分を乳化液の状態で混合することで燃料低透過性を向上させることは可能であるが、硬度が高くなりやすく、さらに低透過性も不充分である。
【0055】
また、本発明は、(i)前記ブロック共重合体、(ii)多官能性不飽和化合物および(iii)パーオキサイドからなるパーオキサイド加硫用組成物にも関する。
【0056】
多官能性不飽和化合物(ii)としては、パーオキシラジカルおよびポリマーラジカルに対して反応活性を有する化合物であればよく、たとえば、CH2=CH−、CH2=CHCH2−、CF2=CF−などの官能基を有する多官能性化合物があげられる。具体的には、たとえば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリメタアリルイソシアヌレート、TAICプレポリマー、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、N,N’−n−フェニレンビスマレイミド、ジプロパルギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタレートアミド、トリアリルホスフェート、ビスマレイミド、フッ素化トリアリルイソシアヌレート(1,3,5−トリス(2,3,3−トリフルオロ−2−プロペニル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン)、トリス(ジアリルアミン)−S−トリアジン、亜リン酸トリアリル、N,N−ジアリルアクリルアミド、1,6−ジビニルドデカフルオロヘキサン、ヘキサアリルホスホルアミド、N,N,N’,N’−テトラアリルテトラフタラミド、N,N,N’,N’−テトラアリルマロンアミド、トリビニルイソシアヌレート、2,4,6−トリビニルメチルトリシロキサン、トリ(5−ノルボルネン−2−メチレン)シアヌレート、トリアリルホスファイトなどがあげられる。これらの中でも、加硫性、加硫物の物性が良好であるという点から、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が好ましい。
【0057】
多官能性不飽和化合物(ii)の含有量は、圧縮永久ひずみ性や強度特性が良好であるという点から、含フッ素エラストマー(i)100質量部に対して0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましい。また、多官能性不飽和化合物(ii)の含有量は、金型汚れを防ぐという点から、含フッ素エラストマー(i)100質量部に対して6.0質量部以下が好ましく、5.0質量部以下がより好ましい。
【0058】
パーオキサイド(iii)は、一般には熱や酸化還元系の存在下で容易にパーオキシラジカルを発生するものがよく、たとえば1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロキシパーオキド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、α,α'−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートなどがあげられる。それらの中で、好ましいものとしてはジアルキル化合物である。一般に活性−O−O−の量、分解温度などから種類ならびに使用量が選ばれる。
【0059】
パーオキサイド(iii)の含有量は、充分な加硫速度が得られるという点から、含フッ素エラストマー(i)100質量部に対して0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましい。また、パーオキサイド(iii)の含有量は、充分な特性が得られるという点から、含フッ素エラストマー(i)100質量部に対して10.0質量部以下が好ましく、5.0質量部以下がより好ましい。
【0060】
本発明のパーオキサイド加硫用組成物において、必要に応じて加硫性エラストマー組成物に配合される通常の添加物、たとえば充填剤、加工助剤、可塑剤、着色剤などを配合することができる。また、前記のものとは異なる常用の加硫剤や加硫促進剤を1種またはそれ以上配合してもよい。また、本発明の効果を損なわない範囲において、別種のエラストマーを混合して使用してもよい。
【0061】
本発明のパーオキサイド加硫用組成物は、一般的な充填剤を含有してもよい。
【0062】
一般的な充填剤としては、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリオキシベンゾエート、ポリテトラフルオロエチレン粉末などのエンジニアリングプラスチック製の有機物フィラー;酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化イットリウム、酸化チタンなどの金属酸化物フィラー;炭化ケイ素、炭化アルミニウムなどの金属炭化物、窒化ケイ素、窒化アルミニウムなどの金属窒化物フィラー;フッ化アルミニウム、フッ化カーボン、硫酸バリウム、カーボンブラック、シリカ、クレー、タルクなどの無機物フィラーがあげられる。
【0063】
これらの中でも、モンモリロナイトに代表されるような層状鉱物は燃料低透過性を向上させるため有用である。
【0064】
また、前記無機フィラー、有機フィラーを単独で、または2種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0065】
本発明のパーオキサイド加硫用組成物は、上記の各成分を、通常のゴム用加工機械、たとえば、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどを用いて混合することにより調製することができる。この他、密閉式混合機を用いる方法やエマルジョン混合から共凝析する方法によっても調製することができる。
【0066】
本発明における加硫条件としては、特に限定されるものではなく、通常の含フッ素エラストマーの加硫条件下で行うことができる。たとえば、前記パーオキサイド加硫用組成物を金型に入れ、加圧下において120〜250℃(好ましくは180〜220℃)で1〜120分間保持することによって、プレス加硫を行い、続いて160〜300℃(好ましくは180〜250℃、より好ましくは180〜200℃)の炉中で0〜48時間(好ましくは4〜24時間)保持することによってオーブン加硫を行うと、加硫物を得ることができる。
【0067】
本発明のパーオキサイド加硫用組成物は、ブロック共重合体が含フッ素エラストマーセグメントと溶融可能な含フッ素樹脂セグメントからなるため、燃料低透過性は低く抑えられ、耐寒性の低下も防ぐことが可能である。
【0068】
また、本発明は、前記のパーオキサイド加硫用組成物を用いて成形された燃料に接触する自動車部品にも関する。燃料に接触する自動車部品の具体例としては、たとえば、タンクガスケット、エアーインテークマニホールドガスケットなどのガスケット類、燃料配管のコネクターO−リング、インジェクターO−リングなどのOリング類、燃料ポンプ用ダイアフラム、その他の燃料系部品に用いられるパッキン、シール材などがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0069】
つぎに本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0070】
本明細書で採用している測定法について、以下にまとめた。
【0071】
<フッ素含有量>
19F−NMRにて測定されたポリマー組成から計算によって求める。
【0072】
<ムーニー粘度>
ASTM−D1646およびJIS K6300に準拠して測定する。
測定機器:ALPHA TECHNOLOGIES社製 MV2000E型
ローター回転数:2rpm
測定温度:100℃
【0073】
<100%モジュラス(M100)>
各組成物をつぎの標準加硫条件で1次プレス加硫および2次オーブン加硫して厚さ2mmのシートとし、JIS−K6251に準じて測定する。
(標準加硫条件)
混練方法 :ロール練り
プレス加硫 :160℃で10分
オーブン加硫:180℃で4時間
【0074】
<引張破断強度(Tb)および引張破断伸び(Eb)>
各組成物を標準加硫条件で1次プレス加硫および2次オーブン加硫して、厚さ2mmのシートとし、JIS−K6251に準じて測定する。
【0075】
<硬度(Hs)>
各組成物を標準加硫条件で1次プレス加硫および2次オーブン加硫して、厚さ2mmのシートとし、JIS−K6253に準じて測定する。
【0076】
<耐寒性(TR10)>
ASTM D1329に準拠してUeshima社製のTR試験機にて測定する。
【0077】
<燃料透過性(P)>
各組成物を標準加硫条件で1次プレス加硫および2次オーブン加硫して、厚さ0.5mmのシートとし、ASTM E96に準拠したカップ法にてCE20を用いて40℃で燃料透過係数を測定する。燃料透過係数が小さいほど燃料低透過性において優れる。
【0078】
<ガラス転移温度(Tg)>
METTLER TOLEDO社製のDSCにて測定し、10mgのポリマーを−50〜150℃の温度範囲で昇温スピード10℃/分、セカンドスキャンの条件で熱収支を測定し、得られる2つの変極点として検知されたものを、中点法により求める。
【0079】
<融点(Tm)>
METTLER TOLEDO社製のDSCにて測定し、ピークの値をTmとした。3〜10mgのポリマーを60〜400℃の温度範囲で昇温スピード10℃/分、セカンドスキャンの条件で熱収支を測定し、ピークトップを融点とする。
【0080】
<メルトフローレート(MFR)>
MFRは、ASTM D 1238に準拠して、温度230℃、荷重5.0kgの条件下で測定し得られる値である。
【0081】
参考例1
内容積30リットルのステンレススチール製オートクレーブに、純水15kg、乳化剤としてC715COONH4を30.0g、リン酸水素ニナトリウムを1.3g仕込み、系内を窒素ガスで充分に置換し脱気したのち、150rpmで撹搾しながら、80℃に昇温し、VdF、TFEおよびPMVEをVdF/TFE/PMVE=64/8/28モル%で、内圧が0.80MPa・Gになるように仕込んだ。ついで、過硫酸アンモニウム(APS)の42.5mg/ml濃度の水溶液20m1を窒素圧で圧入して反応を開始した。
【0082】
重合の進行により内圧が、0.75MPa・Gまで降下した時点で、I(CF2CF22Iを24.9g窒素圧にて圧入した。ついで圧力が0.85MPa・Gになるように、VdF、TFEおよびPMVEの混合ガス(VdF/TFE/PMVE=68/12/20モル%)をそれぞれ圧入した。
【0083】
以後、VdF、TFEおよびPMVEの混合ガス(VdF/TFE/PMVE=68/12/20モル%)を圧入し、0.75〜0.85MPa・Gの間で、昇圧、降圧を繰り返した。また3時間毎にAPSを追加し、重合終了までに、840mg追加した。
【0084】
重合反応の開始から14時間後、VdF、TFEおよびHFPの合計仕込み量が5.0kgになった時点で、オートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出して固形分濃度27.7質量%の水性分散体20.9kgを得た。その後、30rpmで撹搾しながら、80℃に昇温し、5時間熱処理を行った。
【0085】
得られた分散液の一部2.0kgを硫酸アルミニウムを用いて凝析し、純水で充分に洗浄した後、80℃で8時間、120℃で12時間熱風乾燥させ、433gのポリマーを得た。
【0086】
分析の結果、この重合体のモノマー単位組成は、VdF/TFE/PMVE=67/14/19モル%で、100℃でのムーニー粘度は25であり、フッ素含有量は、65.3質量%であり、DSCにて測定したガラス転移温度は−31℃であった。
【0087】
参考例2
反応開始前にオートクレーブに仕込むVdF、TFE、およびPMVEの混合ガスの組成をVdF/TFE/PMVE=40/15/45モル%に、反応開始後に圧入するVdF、TFE、およびPMVEの混合ガスの組成をVdF/TFE/PMVE=57/20/23モル%に変更する以外は参考例1と同様の手順で重合を行った。重合反応の開始から13.6時間後、VdF、TFEおよびPMVEの合計仕込み量が5.0kgになった時点で、オートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出して固形分濃度24.2質量%の水性分散体20.5kgを得た。その後、30rpmで撹搾しながら、80℃に昇温し、5時間熱処理を行った。参考例1と同様に処理して436gのポリマーを得た。
【0088】
分析の結果、この重合体のモノマー単位組成は、VdF/TFE/PMVE=59/18/23モル%で、100℃でのムーニー粘度は28であり、フッ素含有量は、66.3質量%であり、DSCにて測定したガラス転移温度は−25℃であった。
【0089】
参考例3
内容積3リットルのステンレススチール製オートクレーブに、純水を1500g、乳化剤としてC715COONH4を15.0g仕込み、系内を窒素ガスで充分に置換し脱気したのち、600rpmで撹拌しながら、50℃に昇温し、VdFを、内圧が0.83MPa・Gになるように仕込んだ。ついで、過硫酸アンモニウム(APS)の0.186mg/ml濃度の水溶液2mlを窒素圧で圧入して反応を開始した。
【0090】
重合の進行により内圧が、0.75MPa・Gまで降下した時点で、VdFを仕込み、0.80〜0.75MPa・Gの間で、昇圧、降圧を繰り返した。
【0091】
重合反応の開始から11.5時間後、VdFの合計仕込み量が204.7gになった時点で、オートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出して固形分濃度11.4質量%の水性分散体1655gを得た。一部の水性分散体を硫酸アルミニウムを用いて凝析し、純水で充分に洗浄した後、80℃で8時間、120℃で12時間熱風乾燥させた。
【0092】
分析の結果、この重合体はVdFのホモポリマーであり、フッ素含有量は78.1質量%、100℃におけるムーニー粘度は25であった。また、融点は180.6℃であった。
【0093】
実施例1
内容積3リットルのステンレススチール製オートクレーブに、参考例1で得られたVdF/TFE/PMVE共重合体のディスパージョンを1390gおよび純水を210g、乳化剤としてC715COONH4を1.8g仕込み、系内を窒素ガスで充分に置換し脱気したのち、600rpmで撹拌しながら、65℃に昇温し、VdFを、内圧が1.37MPa・Gになるように仕込んだ。ついで、過硫酸アンモニウム(APS)の6mg/ml濃度の水溶液2mlを窒素圧で圧入して反応を開始した。
【0094】
重合の進行にともないVdFを圧入し、1.32〜1.37MPa・Gの間で、昇圧、降圧を繰り返した。また重合開始から3時間後にAPSを12mg追加した。
【0095】
重合反応の開始から5.5時間後、VdFの合計仕込み量が68gになった時点で、オートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出して固形分濃度26.0質量%の水性分散体1730gを得た。
【0096】
得られた分散液を硫酸アルミニウムを用いて凝析し、純水で充分に洗浄した後、80℃で8時間、120℃で12時間熱風乾燥させ、446gのポリマーを得た。
【0097】
VdF/TFE/PMVEセグメントの100℃におけるムーニー粘度、およびVdFセグメントのフッ素含有量を表1に示す。
【0098】
分析の結果、この重合体のモノマー単位組成は、VdF/TFE/PMVE=72/12/16モル%であった。得られたブロック共重合体におけるVdF/TFE/PMVEセグメントとVdFセグメントの含有割合、MFR、フッ素含有量、ガラス転移温度および融点を表1に示す。
【0099】
上記ゴム状の含フッ素共重合体100質量部に対し、ミキシングロールにてカーボンブラック(N990(カンカーブ社製))を20質量部、TAICを3質量部、パーヘキサ25Bを1.5質量部の比率で混練し、加硫用組成物を得た。得られた加硫用組成物をプレス加硫して、さらにオーブン加硫を行った。物性を表1に示す。表1に示すように、耐寒性、燃料低透過性、柔軟性に優れる成形品が得られた。
【0100】
実施例2
715COONH4を3.6g、VdFの仕込み量を136gまで仕込むことのみを変更した以外は、実施例1と同様の方法で重合を行った。
【0101】
重合反応の開始から7.5時間後、VdFの合計仕込み量が136gになった時点で、オートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出して固形分濃度23.7質量%の水性分散体2081gを得た。
【0102】
得られた分散液を硫酸アルミニウムを用いて凝析し、純水で充分に洗浄した後、80℃で8時間、120℃で12時間熱風乾燥させ、489gのポリマーを得た。
【0103】
VdF/TFE/PMVEセグメントの100℃におけるムーニー粘度およびVdFセグメントのフッ素含有量を表1に示す。
【0104】
分析の結果、この重合体のモノマー単位組成は、VdF/TFE/PMVE=77/10/13モル%であった。得られたブロック共重合体におけるVdF/TFE/PMVEセグメントとVdFセグメントの含有割合、MFR、フッ素含有量、ガラス転移温度および融点を表1に示す。
【0105】
上記ゴム状の含フッ素共重合体を用いて実施例1と同様の方法で成形品を作製し、その特性を調べた。結果を表1に示す。
【0106】
実施例3
用いるディスパージョンを参考例2に記載のVdF/TFE/PMVE共重合体に代えること以外は実施例2と同様に重合を行った。
【0107】
重合反応の開始から7.5時間後、VdFの合計仕込み量が136gになった時点で、オートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出して固形分濃度24.1質量%の水性分散体2094gを得た。
【0108】
得られた分散液を硫酸アルミニウムを用いて凝析し、純水で充分に洗浄した後、80℃で8時間、120℃で12時間熱風乾燥させ、501gのポリマーを得た。
【0109】
VdF/TFE/PMVEセグメントの100℃におけるムーニー粘度およびVdFセグメントのフッ素含有量を表1に示す。
【0110】
分析の結果、この重合体のモノマー単位組成は、VdF/TFE/PMVE=75/11/14モル%であった。得られたブロック共重合体におけるVdF/TFE/PMVEセグメントとVdFセグメントの含有割合、MFR、フッ素含有量、ガラス転移温度および融点を表1に示す。
【0111】
上記ゴム状の含フッ素共重合体を用いて実施例1と同様の方法で成形品を作製し、その特性を調べた。結果を表1に示す。
【0112】
実施例4
内容積3リットルのステンレススチール製オートクレーブに、参考例1で得られたディスパージョンを1390gおよび純水を210g、乳化剤としてC715COONH4を1.8g仕込み、系内を窒素ガスで充分に置換し脱気したのち、600rpmで撹拌しながら、65℃に昇温し、VdF/TFE/HFP(52/37/11モル%)の混合ガスを、内圧が0.1MPa・Gになるように仕込んだ。ついで、過硫酸アンモニウム(APS)の6mg/ml濃度の水溶液2mlを窒素圧で圧入して反応を開始した。
【0113】
重合の進行にともないVdF/TFE/HFP(61/37/2モル%)の混合ガスを圧入し、0.05〜0.1MPa・Gの間で、昇圧、降圧を繰り返した。また3時間毎にAPSを追加し、重合終了までに、48mg追加した。
【0114】
重合反応の開始から6.3時間後、VdF/TFE/HFPの混合ガスの合計仕込み量が68gになった時点で、オートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出して固形分濃度27.8質量%の水性分散体1601gを得た。
【0115】
得られた分散液を硫酸アルミニウムを用いて凝析し、純水で充分に洗浄した後、80℃で8時間、120℃で12時間熱風乾燥させ、439gのポリマーを得た。
【0116】
VdF/TFE/PMVEセグメントの100℃におけるムーニー粘度およびVdF/TFE/HFPセグメント(THVセグメント)のフッ素含有量を表1に示す。
【0117】
分析の結果、この重合体のモノマー単位組成は、VdF/TFE/PMVE/HFP=65/16/19/0.3モル%で、VdF/TFE/PMVEセグメントの組成割合がVdF/TFE/PMVE=67/14/19モル%、THVセグメントの組成割合がVdF/TFE/HFP=61/37/2モル%であった。得られたブロック共重合体におけるVdF/TFE/PMVEセグメントとTHVセグメントの含有割合、MFR、フッ素含有量、ガラス転移温度および融点を表1に示す。
【0118】
上記ゴム状の含フッ素共重合体を用いて実施例1と同様の方法で成形品を作製し、その特性を調べた。結果を表1に示す。
【0119】
実施例5
内容積3リットルのステンレススチール製オートクレーブに、参考例1で得られたディスパージョンを1390gおよび純水を210g、乳化剤としてC715COONH4を1.8g仕込み、系内を窒素ガスで充分に置換し脱気したのち、600rpmで撹拌しながら、65℃に昇温し、TFE/HFP(85/15モル%)の混合ガスを、内圧が1.30MPa・Gになるように仕込んだ。ついで、過硫酸アンモニウム(APS)の6mg/ml濃度の水溶液2mlを窒素圧で圧入して反応を開始した。
【0120】
重合の進行にともないTFE/HFP(45/55モル%)の混合ガスを圧入し、1.30〜1.25MPa・Gの間で、昇圧、降圧を繰り返した。
【0121】
重合反応の開始から1時間後、TFE/HFPの混合ガスの合計仕込み量が68gになった時点で、オートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出して固形分濃度27.0質量%の水性分散体1655gを得た。
【0122】
得られた分散液を硫酸アルミニウムを用いて凝析し、純水で充分に洗浄した後、80℃で8時間、120℃で12時間熱風乾燥させ、456gのポリマーを得た。
【0123】
VdF/TFE/PMVEセグメントの100℃におけるムーニー粘度およびTFE/HFPセグメント(FEPセグメント)のフッ素含有量を表1に示す。
【0124】
分析の結果、この重合体のモノマー単位組成は、VdF/TFE/PMVE/HFP=58/22/19/0.5モル%で、VdF/TFE/PMVEセグメントの組成割合がVdF/TFE/PMVE=67/14/19モル%、FEPセグメントの組成割合がTFE/HFP=85/15モル%であった。得られたブロック共重合体におけるVdF/TFE/PMVEセグメントとFEPセグメントの含有割合、MFR、フッ素含有量、ガラス転移温度および融点を表1に示す。
【0125】
上記ゴム状の含フッ素共重合体を用いて実施例1と同様の方法で成形品を作製し、その特性を調べた。結果を表1に示す。
【0126】
実施例6
内容積3リットルのステンレススチール製オートクレーブに、参考例1で得られたディスパージョンを1390gおよび純水を210g、乳化剤としてC715COONH4を1.8g仕込み、系内を窒素ガスで充分に置換し脱気したのち、600rpmで撹拌しながら、60℃に昇温し、CTFEを、内圧が1.05MPa・Gになるように仕込んだ。ついで、過硫酸アンモニウム(APS)の6mg/ml濃度の水溶液2mlを窒素圧で圧入して反応を開始した。
【0127】
重合の進行にともないCTFEを圧入し、1.00〜1.05MPa・Gの間で、昇圧、降圧を繰り返した。また3時間毎にAPSを追加し、重合終了までに、1.4g追加した。
【0128】
重合反応の開始から6.8時間後、CTFEの合計仕込み量が68gになった時点で、オートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出して固形分濃度23.0質量%の水性分散体1730gを得た。
【0129】
得られた分散液を硫酸アルミニウムを用いて凝析し、純水で充分に洗浄した後、80℃で8時間、120℃で12時間熱風乾燥させ、377gのポリマーを得た。
【0130】
VdF/TFE/PMVEセグメントの100℃におけるムーニー粘度およびPCTFEセグメントのフッ素含有量を表1に示す。
【0131】
得られたブロック共重合体のMFR、フッ素含有量、ガラス転移温度および融点を表1に示す。
【0132】
上記ゴム状の含フッ素共重合体を用いて実施例1と同様の方法で成形品を作製し、その特性を調べた。結果を表1に示す。
【0133】
実施例7
内容積3リットルのステンレススチール製オートクレーブに、参考例1で得られたディスパージョンを1390gおよび純水を210g、乳化剤としてC715COONH4を1.8g仕込み、系内を窒素ガスで充分に置換し脱気したのち、600rpmで撹拌しながら、80℃に昇温し、TFE/Et/HFP混合ガス(66/19/15モル%)を、内圧が1.05MPa・Gになるように仕込んだ。ついで、過硫酸アンモニウム(APS)の6mg/ml濃度の水溶液2mlを窒素圧で圧入して反応を開始した。
【0134】
重合の進行にともないTFE/Et/HFP混合ガス(42/43/15モル%)を圧入し、1.00〜1.05MPa・Gの間で、昇圧、降圧を繰り返した。また3時間毎にAPSを追加し、重合終了までに、24mg追加した。
【0135】
重合反応の開始から9.5時間後、VdFの合計仕込み量が68gになった時点で、オートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出して固形分濃度25.4質量%の水性分散体1730gを得た。
【0136】
得られた分散液を硫酸アルミニウムを用いて凝析し、純水で充分に洗浄した後、80℃で8時間、120℃で12時間熱風乾燥させ、433gのポリマーを得た。
【0137】
VdF/TFE/PMVEセグメントの100℃におけるムーニー粘度およびTFE/Et/HFP(ETFEセグメント)のフッ素含有量を表1に示す。
【0138】
得られたブロック共重合体のMFR、フッ素含有量、ガラス転移温度および融点を表1に示す。
【0139】
上記ゴム状の含フッ素共重合体を用いて実施例1と同様の方法で成形品を作製し、その特性を調べた。結果を表1に示す。
【0140】
比較例1
内容積3リットルのステンレススチール製オートクレーブに、参考例1で得られたディスパージョンを1390gおよび純水を210g、乳化剤としてC715COONH4を1.8g仕込み、系内を窒素ガスで充分に置換し脱気したのち、600rpmで撹拌しながら、80℃に昇温し、TFEを0.1MPa・Gになるように仕込んだ。ついで、過硫酸アンモニウム(APS)の3mg/ml濃度の水溶液2mlを窒素圧で圧入して反応を開始した。
【0141】
重合の進行にともないTFEを圧入し、0.05〜0.10MPaの間で、昇圧、降圧を繰り返した。また重合開始から3時間後にAPSを3mg追加した。
【0142】
重合反応の開始から3.5時間後、TFEの合計仕込み量が68gになった時点で、オートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出して固形分濃度24.1質量%の水性分散体1730gを得た。
【0143】
得られた分散液を硫酸アルミニウムを用いて凝析し、純水で充分に洗浄した後、80℃で8時間、120℃で12時間熱風乾燥させ、430gのポリマーを得た。
【0144】
VdF/TFE/PMVEセグメントの100℃におけるムーニー粘度およびPTFEセグメントのフッ素含有量を表1に示す。
【0145】
分析の結果、この重合体のモノマー単位組成は、VdF/TFE/PMVE=57/25/18モル%であった。得られたブロック共重合体におけるVdF/TFE/PMVEセグメントとETFEセグメントの含有割合、MFR、フッ素含有量、ガラス転移温度および融点を表1に示す。
【0146】
上記ゴム状の含フッ素共重合体を用いて実施例1と同様の方法で成形品を作製し、その特性を調べた。結果を表1に示す。
【0147】
比較例2
参考例1で得られたポリマーを用いて実施例1と同様の方法で成形品を作製し、その特性を調べた。結果を表2に示す。表2に示すように燃料透過性が大きいことがわかる。
【0148】
比較例3
参考例1で得られた分散液708g(ポリマー含有量170g)と参考例2で得られた分散液263g(ポリマー含有量30g)を室温で混合した後、硫酸アルミニウムを用いて凝析し、純水で充分に洗浄した後、80℃で8時間、120℃で12時間熱風乾燥させ、200gのポリマーを得た。
【0149】
得られたポリマーにおけるVdF/TFE/PMVE共重合体とVdFの含有割合、フッ素含有量およびガラス転移温度を表2に示す。
【0150】
得られたポリマーを用いて実施例1と同様の方法で成形品を作製し、その特性を調べた。結果を表2に示す。表2に示すように、耐寒性には優れるものの燃料低透過性の向上は少ないことがわかる。
【0151】
【表1】

【0152】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)フッ化ビニリデン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体の組成割合が50〜85/15〜50モル%、または(2)フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体の組成割合が45〜85/1〜30/14〜30モル%のいずれかの組成を有する含フッ素エラストマーセグメント(A)と、
溶融成型可能な含フッ素樹脂セグメント(B)のみからなるブロック共重合体であって、
ヨウ素原子を有するパーオキサイド加硫可能なブロック共重合体。
【請求項2】
フッ化ビニリデン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(1)がフッ化ビニリデン/パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体であり、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(2)がフッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体である請求項1記載のブロック共重合体。
【請求項3】
含フッ素樹脂セグメント(B)が、示差走査熱量測定装置によって測定される融点を有する(b1)ポリフッ化ビニリデン、(b2)テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、(b3)ポリクロロトリフルオロエチレン、(b4)エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、(b5)フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体および(b6)テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体よりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1または2記載のブロック共重合体。
【請求項4】
含フッ素エラストマーセグメント(A)の含有割合が、ブロック共重合体中60〜95質量%であり、含フッ素樹脂セグメント(B)の含有割合が、ブロック共重合体中5〜40質量%である請求項1〜3のいずれかに記載のブロック共重合体。
【請求項5】
含フッ素エラストマーセグメント(A)の両末端に、含フッ素樹脂セグメント(B)を有する請求項1〜4のいずれかに記載のブロック共重合体。
【請求項6】
(i)請求項1〜5のいずれかに記載のブロック共重合体、(ii)多官能性不飽和化合物および(iii)パーオキサイドを含むパーオキサイド加硫用組成物。
【請求項7】
請求項6記載のパーオキサイド加硫用組成物を用いて成形された燃料に接触する自動車部品。
【請求項8】
RIn(式中、nは1〜2の整数であり、Rは炭素数1〜8の飽和もしくは不飽和のフルオロ炭化水素基またはクロロフルオロ炭化水素基、または炭素数1〜3の炭化水素基であり、酸素原子を含んでいてもよい)で表される含ヨウ素化合物の存在下で、ラジカル重合を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項9】
含フッ素エラストマーセグメント(A)を重合した後に、含フッ素樹脂セグメント(B)を重合することを特徴とする請求項8記載のブロック共重合体の製造方法。

【公開番号】特開2009−256658(P2009−256658A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74661(P2009−74661)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】