説明

燃料効率の改善効果を有する焼成体およびその製造方法

【課題】エンジン内での燃焼の効率を増大し、パワーを増強し、かつ、装置システムを複雑化させず、経済的にも有利な燃料効率改善用焼成体を提供する。
【解決手段】シリコンまたはゲルマニウムと、酸化亜鉛、ニッケルおよびマグネシウムとを、銀ゼオライトおよび珪酸ナトリウムに混練および成形して、600℃から1400℃の温度で焼成してなる燃料効率改善用焼成体。好ましくは、前記燃料効率改善用焼成体は、シリコンまたはゲルマニウム100重量部に対し、酸化亜鉛、ニッケルおよびマグネシウムをそれぞれ10〜600重量部、銀ゼオライトを5〜300重量部の割合で含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料の燃焼効率を向上させる効果を有する焼成体に関する。より詳細には、本発明は、例えばディーゼルエンジンの燃料タンクに添加することにより、エンジン内での燃焼の効率を増大し、パワーを増強し、燃料の経済性を改良することができる、燃料効率改善用焼成体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンのような内燃機関の燃焼効率は、燃焼反応系に存在する酸素の量に依存する。エンジン内の燃焼室への酸素供給の量を増大しようとする多くの試みが、長年にわたってなされている。ターボチャージや過給機等の装置は、エンジンへの空気供給を増大するために開発が重ねられている。また、純酸素を空気流に加える検討、あるいは、亜酸化窒素、酸素代替品を燃料−空気混合物に加えるための装置についての検討がなされている。
【0003】
これらのアプローチは、過給機、酸素タンク、酸素代替品タンクおよび/または付随調量装置などをエンジンに設置することを必要とする。また、それらの稼動制御装置およびシステムを必要とする。これらの付加的な装置は、エンジン装置システムの装置費を増大させ、経済性を損なうものである。
【0004】
一方、補助酸素を燃焼室中で遊離することができる燃料添加剤を燃料に直接配合することが検討されてきている。例えば、過酸化水素の誘導体は、燃焼室での燃料用の可能な補充酸素源として研究されている。例えば、特許文献1では、過酸化
ジ−tert−ブチルと安定剤としてのtert−ブチルアルコールとの混合物を含むガソリン添加剤が開示されている。特許文献1は、燃料経済性の改善の可能性を示唆しているが、それを実現するためには配合比率を厳密に調整しなければならない。実際問題として、その配合条件によっては、むしろ燃料経済性が低下するという問題がある。通常、燃料タンク内の燃料中の添加剤量を測定することはきわめて困難であり、添加量を厳密に制御するシステムをエンジンに付加することは、経済的に受け入れがたい。
【0005】
特許文献2では、炭素系の乳化剤を用いて油中水滴型エマルジョンを得,このエマルジョンに硫黄酸化物,窒素酸化物の発生抑制や助燃等に作用する物質を添加して,排気中の硫黄酸化物,窒素酸化物を低減させる方法が開示されている。さらに、燃焼促進により熱効率の向上と燃料の節約等を図ることが示唆されているが、その効果については開示されていない。特許文献2に記載の技術は、エマルジョン形態となった燃料に適合した新たなエンジンシステムが必要であり、加えて、エマルジョン化するための炭素系の乳化剤およびその乳化処理により、コストが大幅に増加する。したがって、特許文献2に記載の技術は、特許文献1に記載の技術と同様に、経済的に受け入れがたいものである。
【0006】
特許文献3では、半導体特性を付与するためドープし結晶化したシリコンと、結晶化していない状態の金属シリコンとの混合物による焼成体が、環境水の浄化効果があることが開示されている。この技術によれば、半導体廃棄物であるシリコンウエハも利用できる。この焼成体は、シリコンを成分として焼成体としているため、その機能を長期間維持できるという特徴を有している。しかし、このような焼成体を燃料のエネルギー効率向上に適用することは、なんら検討されていない。
【0007】
特許文献4では、金属、珪酸、グラファイトおよび有機物(微生物)の混合物の焼成物により、エネルギー消費効率が10〜20%向上し得ることが開示されている。この焼成物は、珪酸およびグラファイトを主成分として含有し、金属類としてアルミニウム、カルシウム、鉄、カリウム、マグネシウム
、ナトリウムおよびチタンから選択される少なくとも1種を含み、有機物として微生物培養液を用いている。特許文献4の技術においては、微生物試料は、培養調製によるロット品質が一定ではなく、また、その製造コストも多大である。さらに、微生物培養では、通常、その培養試料中に発酵代謝物として有機酸が含有されており、その有機酸による内燃機関の腐食などの可能性が大きい。
【0008】
特許文献5では、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化トリウムおよび酸化マグネシウムと粘土とを含む非酸化性焼成物により、エネルギー消費効率がボイラーで14%向上するとしている。しかし、特許文献5は、トラックなどの軽油の燃費改善データは開示も示唆もされていない。さらに、特許文献5の技術は、白金、レニウム、パラジウムおよびトリウムなどの高価な材料を用いており、材料コスト負担が大きい。
【特許文献1】米国特許第4,045,188号明細書
【特許文献2】特願平4−270924号公報
【特許文献3】特許第3517392号公報
【特許文献4】特開2004−35793号公報
【特許文献5】特開2005−131461号公報
【0009】
以上のように、エンジン内での燃焼の効率を増大し、パワーを増強し、かつ、装置システムを複雑化させず、経済的にも有利な技術が強く望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、エンジン内での燃焼の効率を増大し、パワーを増強し、かつ、装置システムを複雑化させず、経済的にも有利な燃料効率改善用焼成体およびその簡便安価な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定の半導体成分と金属成分とゼオライト成分とを含む焼成体を用いることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明の燃料効率改善用焼成体は、シリコンまたはゲルマニウムと、酸化亜鉛、ニッケルおよびマグネシウムとを、銀ゼオライトおよび珪酸ナトリウムに混練および成形して、600℃から1400℃の温度で焼成してなる。
【0013】
好ましい実施形態においては、上記燃料効率改善用焼成体は、上記シリコンまたは上記ゲルマニウム100重量部に対し、上記酸化亜鉛、上記ニッケルおよび上記マグネシウムをそれぞれ10〜600重量部、上記銀ゼオライトを5〜300重量部の割合で含有する。
【0014】
好ましい実施形態においては、上記燃料効率改善用焼成体は、上記シリコンまたは上記ゲルマニウム100重量部に対し、トルマリンを2〜100重量部、タングステンを2〜200重量部、酸化チタンを2〜100重量部、銅を2〜100重量部、および導電性カーボンを0.4〜50重量部の割合でさらに含有する。
【0015】
別の実施形態においては、上記燃料効率改善用焼成体は、上記シリコンまたは上記ゲルマニウム100重量部に対し、モリブデンを20〜700重量部、ニオブまたはタンタルを2〜150重量部、および導電性カーボンを0.4〜50重量部の割合でさらに含有する。
【0016】
好ましい実施形態においては、上記導電性カーボンは、竹炭から得られるグラファイトまたは松ススである。
【0017】
好ましい実施形態においては、上記燃料効率改善用焼成体は、軽油の燃料効率改善に用いられる。
【0018】
本発明の別の局面によれば、燃料効率改善用焼成体の製造方法が提供される。この製造方法は、シリコンまたはゲルマニウムと、酸化亜鉛、ニッケルおよびマグネシウムと、銀ゼオライトおよび珪酸ナトリウムとを混練して組成物を得る工程と、該組成物を成形して成形体を形成する工程と、該成形体を非酸化性雰囲気中で600℃〜1400℃の温度で焼成させる工程とを含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、シリコンまたはゲルマニウムと、酸化亜鉛、ニッケルおよびマグネシウムとを、銀ゼオライトおよび珪酸ナトリウムに混練および成形し、非酸化性雰囲気中で600℃〜1400℃の温度で焼成させることにより、普通のディーゼルエンジンなどの内燃機関の燃料タンクに添加でき、その添加により燃料の消費効率を増大し、パワーを増強し、燃料の経済性を改良することができる焼成体を得ることができる。その結果、二酸化炭素の排出抑制が実現され、現代の最重要課題である地球環境問題の解決にも貢献し得る。しかも、この焼成体の原料はいずれも安価かつ入手容易であり、かつ、この焼成体を用いれば、内燃機関の構造や制御システムを変更する必要はない。加えて、シリコンとして、廃棄される半導体ウェハー等を利用できる。したがって、本発明は、経済的にも非常に有利であり、かつ、資源の再利用の観点からも非常に好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0021】
本発明の燃料効率改善用焼成体は、半導体成分と、金属成分とを、ゼオライト成分および珪酸成分に混練および成形して、600℃から1400℃の温度で焼成してなる。
【0022】
上記半導体成分としては、代表的には、シリコン、ゲルマニウムが挙げられる。これらは、単独で、または組み合わせて用いられる。シリコンとしては、本発明の効果を奏する限りにおいて、任意の適切なシリコンが採用され得る。具体例としては、高純度シリコン、単結晶シリコン、金属シリコン、一般的に製造し使用されている半導体製品としてのシリコンが挙げられる。ゲルマニウムもまた、目的に応じて任意の適切なゲルマニウムが採用され得る。シリコンおよびゲルマニウムは、結晶体であってもよく、非結晶体であってもよい。シリコンおよびゲルマニウムは、半導体として使用され得る任意の適切な電気抵抗値を有する。例えば、シリコンおよびゲルマニウムの電気抵抗値は、約0.1Ω〜500Ωである。シリコンとして高純度シリコンを用いる場合には、N型およびP型それぞれの不純物がドーピングされて電気的特性が調節されたものを用いてもよい。このようなドープされた高純度シリコンは、電子・ホールを必要とする化学プロセスに対して良好な特性を付与することができるので好ましい。シリコンとして、廃棄されるシリコンウェハーを用いてもよい。シリコンウェハーは、粉砕して粒状、フレーク状、粉末状にして用いることができる。NP半導体ウェハーが特に好ましい。
【0023】
上記金属成分としては、代表的には、酸化亜鉛、ニッケル、マグネシウムが挙げられる。好ましい実施形態においては、これらは組み合わせて用いられる。そのような実施形態においては、酸化亜鉛、ニッケルおよびマグネシウムは、それぞれ、上記半導体成分100重量部に対して、好ましくは10〜600重量部、さらに好ましくは30〜400重量部の割合で用いられる。特に好ましくは、酸化亜鉛は、上記半導体成分100重量部に対して30〜400重量部の割合で用いられ、ニッケルは30〜400重量部の割合で用いられ、マグネシウムは15〜200重量部の割合で用いられる。金属成分と上記半導体成分との特に好ましい組み合わせは以下の通りである:NPウェハー100/酸化亜鉛50/ニッケル200/マグネシウム100、ゲルマニウム100/酸化亜鉛400/ニッケル400/マグネシウム200、金属シリコン100/酸化亜鉛33/ニッケル42/マグネシウム16。このような金属成分を所定の割合で含有させることにより、このような金属成分の触媒機能に起因して、燃料効率をさらに向上させることができる。
【0024】
上記ゼオライト成分としては、銀ゼオライト、天然ゼオライト、人工ゼオライト等が挙げられる。好ましくは、銀ゼオライトである。銀ゼオライトは、上記半導体成分100重量部に対して、好ましくは5〜300重量部、さらに好ましくは15〜200重量部の割合で用いられる。ゼオライトを用いることにより、金属成分の触媒機能がさらに促進され得る。
【0025】
1つの実施形態においては、本発明の燃料効率改善用焼成体は、金属成分としてトルマリン、タングステン、酸化チタン、および/または銅をさらに含有し得る。トルマリンとしては、電気石特性を有する鉱物を用いることができる。酸化チタンとしては、ルチル型の酸化チタンを用いてもよく、特に結晶系を定めることなく、ルチル、アナターゼといった種々の結晶状態を含む酸化チタンを用いてもよい。また、これらの酸化チタンのそれぞれを適宜混合して用いてもよい。上記半導体成分100重量部に対して、トルマリンは、好ましくは2〜100重量部、さらに好ましくは10〜50重量部の割合で含有され;タングステンは、好ましくは2〜100重量部、さらに好ましくは20〜70重量部の割合で含有され;酸化チタンは、好ましくは2〜100重量部、さらに好ましくは5〜40重量部の割合で含有され;銅は、好ましくは2〜50重量部、さらに好ましくは2〜10重量部の割合で含有される。このような金属成分を所定の割合でさらに含有させることにより、触媒機能がさらに改善され、結果として、燃料効率をさらに向上させることができる。
【0026】
別の実施形態においては、本発明の燃料効率改善用焼成体は、金属成分としてモリブデンとニオブまたはタンタルとをさらに含有し得る。上記半導体成分100重量部に対して、モリブデンは、好ましくは20〜700重量部、さらに好ましくは100〜600重量部の割合で含有され;ニオブまたはタンタルは、好ましくは2〜150重量部、さらに好ましくは50〜100重量部の割合で含有される。このような金属成分を所定の割合でさらに含有させることにより、触媒機能がさらに改善され、結果として、燃料効率をさらに向上させることができる。
【0027】
好ましくは、本発明の燃料効率改善用焼成体は、上記さらなる金属成分とともに導電性カーボンをさらに含有し得る。導電性カーボンは、上記半導体成分100重量部に対して、好ましくは0.4〜50重量部、さらに好ましくは2〜40重量部の割合で含有される。導電性カーボンをさらに含有させることにより、燃料の浄化機能が改善され、結果として、燃料効率をさらに向上させることができる。好ましくは、導電性カーボンは、竹炭から得られるグラファイトまたは松ススである。このような材料を用いることにより、より低コストで環境負荷が低い燃料効率改善用焼成体を得ることができる。
【0028】
このような本発明の燃料効率改善用焼成体は、半導体成分を好ましくは3〜50重量%、さらに好ましくは3〜30重量%、最も好ましくは4〜24重量部%含有し;金属成分を好ましくは1〜50重量%、さらに好ましくは5〜20重量%、最も好ましくは8〜32重量%含有し;ゼオライト成分を好ましくは1〜20重量%、さらに好ましくは2〜10重量%、最も好ましくは4〜8重量%含有し;珪酸成分を好ましくは5〜40重量%、さらに好ましくは5〜20重量%、最も好ましくは8〜10重量%含有する。
【0029】
次に、本発明の燃料効率改善用焼成体の一例を説明する。この製造方法は、各成分を混練して組成物を得る工程と、該組成物を成形して成形体を形成する工程と、該成形体を非酸化性雰囲気中で600℃〜1400℃の温度で焼成させる工程とを含む。
【0030】
まず、各成分(半導体成分と金属成分とゼオライト成分と、必要に応じて、さらなる金属成分と導電性カーボン)と珪酸成分および水とを混練する。混練は、任意の適切な手段により行われる。混練温度は、例えば50〜300℃であり、混練時間は、例えば30〜120分である。珪酸成分としては、珪酸ナトリウム、水ガラス等が挙げられる。珪酸成分は、次の成形工程における賦形剤として機能する。珪酸成分は、上記半導体成分100重量部に対して、好ましくは0.4〜300重量部、さらに好ましくは30〜50重量部の割合で用いられる。水は、上記半導体成分100重量部に対して、好ましくは0.4〜300重量部、さらに好ましくは30〜50重量部の割合で用いられる。必要に応じて、混練物(組成物)を乾燥する。乾燥温度は、例えば100〜300℃であり、乾燥時間は、例えば30分〜5時間である。乾燥手段としては、例えば赤外線ヒーターが用いられる。
【0031】
次に、得られた混練物(組成物)を成形する。成形は、任意の適切な手段(例えば、型枠に入れること)により行われる。得られる成形体は、所望の形状(例えば、粒子状、板状、棒状)であり得る。例えば成形体が粒子状である場合には、その粒子径は代表的には1〜2cmである。
【0032】
次に、得られた成形体を非酸化性雰囲気中で焼成させる。焼成温度は、600℃〜1400℃、好ましくは650℃〜1200℃、さらに好ましくは700℃〜900℃である。非酸化性雰囲気とは、酸化性の気体(例えば、酸素)を含まない雰囲気をいい、例えば、Ar、N、CO、一酸化炭素といった気体を主に含む環境をいう。焼成は、例えば、電気炉で行ってもよく、炭焼きがまで行ってもよい。炭焼きがまで行う場合には、導電性カーボン(例えば、竹炭)の生成ならびに炭素の浸透および固着と、焼成とを同時に行うことができる。
【0033】
このようにして、本発明の燃料効率改善用焼成体が得られる。
【0034】
本発明の燃料効率改善用焼成体は、好ましくは、軽油の燃料効率改善に用いられる。代表的には、本発明の燃料効率改善用焼成体は、ケーシングに入れられ、軽油の燃料タンクに配置されて用いられる。図1は、本発明の燃料効率改善用焼成体をケーシングに入れるための袋に入れた状態を説明する概略図であり;図2は、ケーシングの概略図であり;図3は、本発明の燃料効率改善用焼成体をケーシングに入れた状態を説明する概略図であり;図4は、ケーシングを燃料タンクに配置した状態を説明する概略図である。図1に示すように、本発明の燃料効率改善用焼成体1は、例えばポリエステル織布または不織布の袋2に入れられる。このような袋2に入れられた本発明の燃料効率改善用焼成体1を、図3に示すようにケーシング3に入れて、燃料タンクに配置して用いる。ケーシングは、図2に示すように、代表的には直方体状である。ケーシングのサイズは、用いられる燃料タンクの大きさ(例えば、トラックの大きさ)に応じて適宜設定され得る。1つの実施形態においては、ケーシングのサイズは、約3.8cm×3.8cm×45cmの直方体形状である。このような形状は、200リットルのタンクに配置するのに適したサイズである。より具体的には、本発明の燃料効率改善用焼成体は軽油100リットルに対して好ましくは1kgの割合で用いられる。上記のようなサイズのケーシングに粒径約1.5cmの焼成体を充填すると約700gとなり、このようなケーシングを3本200リットルタンク内に配置すればよい。ケーシングの材質は、軽油の品質に影響を与えず、かつ、軽油により溶解または腐蝕等しない限り、任意の適切な材料が用いられる。代表的には、ステンレス鋼である。ケーシング3には、適切にパンチ穴4が空けられる。焼成体と軽油とを接触させるためである。このようなケーシングを、図4に示すようにして燃料タンク5内に配置する。好ましくは、ケーシングは、トラック運転中に移動しないように固定される。固定手段としては、例えばタンク底部に磁石を磁力により固定し、当該磁石によってケーシングを固定するような手段が挙げられる。
【0035】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に明記しない限り、実施例中の部およびパーセントは重量基準である。
【実施例1】
【0036】
表1の配合比の材料を用い、80℃で100分混練し、型枠に入れて粒子状に成形し、赤外線ヒーターを用いて150℃で乾燥した。次いで、成形体を電気炉に入れ、窒素ガスを吹き込みながら900℃で焼成し冷却して、焼成体Aを得た。焼成体Aの粒子径は1.5cmであった。なお、NPウェハーは、半導体成分(シリコン)として、粉砕して用いた。
【0037】
【表1】

【実施例2】
【0038】
表2の配合比の材料を用い、80℃で100分混練し、型枠に入れて粒子状に成形し、赤外線ヒーターを用いて150℃で乾燥した。次いで、成形体を竹(孟宗竹)の炭を製造するための炭焼きがまに入れ、竹を炭にするための加熱および非酸化性雰囲気下で焼成した。焼成温度は、700℃であった。その後冷却して、焼成体Bを得た。焼成体Bの粒子径は1.5cmであった。
【0039】
【表2】

【実施例3】
【0040】
表3の配合比の材料を用いたこと以外は実施例2と同様にして、焼成体Cを得た。
【0041】
【表3】

【実施例4】
【0042】
〔焼成体Aをディーゼル車の軽油燃料タンクに添加したときの燃費改善効果〕
上記焼成体Aを400個用い、ポリエステル織物(帝人製、糸番9422、50デニール)で作製した袋(長さ40cm、内径3cm)に図1に示すとおり充填した。これを図2に示すようなケーシングに、図3に示すようにして装填した。
【0043】
10トントラック(日野自動車、プロフィアFN 2PWEA、燃料タンクの容積200リットル×2個)の1つの燃料タンクの底部に、上記焼成体を装填したケーシング3本(焼成体の総重量:2kg)を給油口から挿入した。ケーシングは、図4に示すようにしてタンク内に固定した。
【0044】
焼成体Aを燃料タンクに添加する前後で、トラックに荷物を積載して長距離の運行を行い、運行距離(km)と、運行に必要な燃料容積(L)を記録した。焼成体Aを燃料タンクに添加する前後の燃料消費効率(km/L)を比較して表4に示す。
【0045】
【表4】

【0046】
表4から明らかなように、本発明の焼成体Aを燃料タンクに添加する前は、燃料消費効率が3.28km/Lであったのに対し、添加後は、エネルギー消費効率が3.90km/Lとなり、約19%向上した。したがって、本発明の焼成体が、ディーゼルエンジンの燃焼効率を向上させることが示された。
【実施例5】
【0047】
焼成体Bを用いたこと以外は実施例4と同様にして、燃料消費効率を測定した。結果を表5に示す。
【0048】
【表5】

【0049】
表5から明らかなように、本発明の焼成体Bを燃料タンクに添加する前は、燃料消費効率が3.38km/Lであったのに対し、添加後は、エネルギー消費効率が3.92km/Lとなり、約16%向上した。したがって、本発明の焼成体が、ディーゼルエンジンの燃焼効率を向上させることが示された。
【実施例6】
【0050】
焼成体Cを用いたこと以外は実施例5と同様にして、燃料消費効率を測定した。さらに、単位消費燃料あたりの輸送量を測定した。なお、単位消費燃料あたりの輸送量とは、1リットルの燃料により重量1トンの荷物を輸送する距離(km)をいう。結果を併せて表6に示す。
【0051】
【表6】

【0052】
表6から明らかなように、本発明の焼成体Cを燃料タンクに添加する前は、燃料消費効率が3.67km/Lであったのに対し、添加後は、エネルギー消費効率が4.12km/Lとなり、約12%向上した。さらに、単位消費燃料あたりの輸送量は、25.7km・t/Lから31.8km・t/Lへと約24%向上した。したがって、本発明の焼成体が、ディーゼルエンジンの燃焼効率を向上させ、かつ、エンジンのパワーを引き出す効果があることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の焼成体は、軽油の燃焼効率の向上に大きく寄与し得るので、貨物トラックなどの輸送機械産業に利用され得る。さらに、究極的には、本発明の焼成体は二酸化炭素の排出量を抑制し、地球環境問題の解決にも貢献し得る。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の燃料効率改善用焼成体をケーシングに入れるための袋に入れた状態を説明する概略図である。
【図2】本発明の燃料効率改善用焼成体を収容するケーシングの概略図である。
【図3】本発明の燃料効率改善用焼成体をケーシングに入れた状態を説明する概略図である。
【図4】ケーシングを燃料タンクに配置した状態を説明する概略図である。
【符号の説明】
【0055】
1 焼成体
2 袋
3 ケーシング
4 パンチ穴
5 燃料タンク


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンまたはゲルマニウムと、酸化亜鉛、ニッケルおよびマグネシウムとを、銀ゼオライトおよび珪酸ナトリウムに混練および成形して、600℃から1400℃の温度で焼成してなる、燃料効率改善用焼成体。
【請求項2】
前記シリコンまたは前記ゲルマニウム100重量部に対し、前記酸化亜鉛、前記ニッケルおよび前記マグネシウムをそれぞれ10〜600重量部、前記銀ゼオライトを5〜300重量部の割合で含有する、請求項1に記載の燃料効率改善用焼成体。
【請求項3】
前記シリコンまたは前記ゲルマニウム100重量部に対し、トルマリンを2〜100重量部、タングステンを2〜200重量部、酸化チタンを2〜100重量部、銅を2〜100重量部、および導電性カーボンを0.4〜50重量部の割合でさらに含有する、請求項1または2に記載の燃料効率改善用焼成体。
【請求項4】
前記シリコンまたは前記ゲルマニウム100重量部に対し、モリブデンを20〜700重量部、ニオブまたはタンタルを2〜150重量部、および導電性カーボンを0.4〜50重量部の割合でさらに含有する、請求項1または2に記載の燃料効率改善用焼成体。
【請求項5】
前記導電性カーボンが、竹炭から得られるグラファイトまたは松ススである、請求項3または4に記載の燃料効率改善用焼成体。
【請求項6】
軽油の燃料効率改善に用いられる、請求項1から5のいずれかに記載の燃料効率改善用焼成体。
【請求項7】
シリコンまたはゲルマニウムと、酸化亜鉛、ニッケルおよびマグネシウムと、銀ゼオライトおよび珪酸ナトリウムとを混練して組成物を得る工程と、該組成物を成形して成形体を形成する工程と、該成形体を非酸化性雰囲気中で600℃〜1400℃の温度で焼成させる工程とを含む、燃料効率改善用焼成体の製造方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−9876(P2007−9876A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−194951(P2005−194951)
【出願日】平成17年7月4日(2005.7.4)
【出願人】(597142022)
【Fターム(参考)】