燃料噴射インジェクタの製造方法
【課題】金属製のノズルの先端部に微細な燃料噴射口を、高額な設備を必要とすることなく、短時間で確実に形成できる燃料噴射インジェクタの製造方法を提供すること。
【解決手段】形成しようとするノズルの形状に対応したノズル成形金型のキャビティに、ノズルの先端部に形成しようとする微細な燃料噴射口に応じた径及び数量のカーボンファイバーを、燃料噴射口に応じた位置及び角度にて配置する配置工程と、キャビティに粉末金属を充填する充填工程と、充填された粉末金属をノズル成形金型によって圧縮してノズル成形品を成形する成形工程と、ノズル成形品を焼結させると共に、ノズル成形品の中に残されたカーボンファイバーを燃焼させカーボンファイバーに対応した細長い管状空隙を備えたノズル焼結品を生成する焼成工程と、ノズル焼結品を機械加工しノズル焼結品の形状を調整する形状調整工程と、を有する。
【解決手段】形成しようとするノズルの形状に対応したノズル成形金型のキャビティに、ノズルの先端部に形成しようとする微細な燃料噴射口に応じた径及び数量のカーボンファイバーを、燃料噴射口に応じた位置及び角度にて配置する配置工程と、キャビティに粉末金属を充填する充填工程と、充填された粉末金属をノズル成形金型によって圧縮してノズル成形品を成形する成形工程と、ノズル成形品を焼結させると共に、ノズル成形品の中に残されたカーボンファイバーを燃焼させカーボンファイバーに対応した細長い管状空隙を備えたノズル焼結品を生成する焼成工程と、ノズル焼結品を機械加工しノズル焼結品の形状を調整する形状調整工程と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料噴射インジェクタの製造方法に関する。詳しくは、金型によって成形した粉末金属を成形及び焼成することによって形成したノズルを備える燃料噴射インジェクタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、内燃機関の燃料噴射インジェクタは、インジェクタ本体部の先端側及び後端側にそれぞれ、燃料噴射口を通じてインジェクタ外へ燃料を噴射する部分であるノズル部(噴射部)と、インジェクタを駆動するための駆動部とを有して構成されている。
なお、ノズル部は、例えばインジェクタ本体部の先端に、別体の金属製のノズルが装着されて形成される。
【0003】
また、インジェクタの燃料噴射口(噴孔)は、ノズル部に設けられている。詳しくは、ノズル部は、円筒状の外形を形成するノズルボディを主体に構成され、そのノズルボディが先端側に向かうにつれて縮径されることにより、その最先端に先端部が形成されている。そして、この先端部には、インジェクタの内外を連通する燃料噴射口として噴孔(微小孔)が必要な数だけ(例えば6〜8個)穿設されている。
【0004】
これらの噴孔(微小孔)は、金属製のノズルの先端部に対する、マイクロドリルを用いた超微小深穴加工、微細放電加工機を用いた微細穴加工、レーザー光(ファイバーレーザー、YAGレーザー、CO2レーザー、又はUV個体レーザー)を用いたレーザー加工、または電子ビーム(真空中で高温に加熱されたフィラメントより発した電子を高電圧で光速近くまで加速させ、更に電磁レンズを用いて極めて細く集束させ、加工対象物の微小面に衝突させ超高熱を発生させる)を用いた電子ビーム加工などの方法によって穿設されている(特許文献1、2及び3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−87665号公報(特願昭60−226817号)
【特許文献2】特開昭62−89590号公報(特願昭60−226816号)
【特許文献3】特開平1−116280号公報(特願昭63−242668号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の燃料噴射インジェクタの製造方法では、それぞれ次の課題を有する。
金属製のノズルの先端部に対する、マイクロドリルを用いた超微小深穴加工においては、要求される微小孔がしばしばドリル加工の最少径限界を超え、また最少径限界近くでは刃先の摩耗による孔径の変化を抑えるため加工に非常な時間を掛ける必要がある。
放電加工においても、要求される微小孔がしばしば加工の最少径限界を超え、同様に最少径限界近くでは加工に非常な時間を掛ける必要がある。
レーザー加工、または電子ビーム加工では、要求される微小孔の加工は可能であるが、加工を行うためには非常に高額な設備を必要とする。
【0007】
本発明は、金属製のノズルの先端部に微細な燃料噴射口を、高額な設備を必要とすることなく、短時間で確実に形成できる燃料噴射インジェクタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の燃料噴射インジェクタの製造方法は、燃料噴射インジェクタの製造方法において、形成しようとするノズルの形状に対応したノズル成形金型のキャビティに、ノズルの先端部に形成しようとする微細な燃料噴射口に応じた径及び数量のカーボンファイバーを、燃料噴射口に応じた位置及び角度にて配置する配置工程と、キャビティに粉末金属を充填する充填工程と、充填された粉末金属をノズル成形金型によって圧縮してノズル成形品を成形する成形工程と、ノズル成形品を焼結させると共に、ノズル成形品の中に残されたカーボンファイバーを燃焼させカーボンファイバーに対応した細長い管状空隙を備えたノズル焼結品を生成する焼成工程と、ノズル焼結品を機械加工しノズル焼結品の形状を調整する形状調整工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、先ず、形成しようとするノズルの形状に対応したノズル成形金型のキャビティに、ノズルの先端部に形成しようとする燃料噴射口に応じた径及び数量のカーボンファイバーを、燃料噴射口に応じた位置及び角度にて配置する。これにより、ノズルの先端部に形成しようとする燃料噴射口の径、数量、位置及び角度が決定される。
【0010】
次に、ノズル成形金型のキャビティに粉末金属を充填する。これにより、キャビティ内の空間が、カーボンファイバーが配置されている細長い管状空間を除き、粉末金属で満たされる。
【0011】
次に、充填された粉末金属をノズル成形金型によって圧縮してノズル成形品を成形する。これにより、充填された粉末金属が、ノズル成形金型の型形状に対応したノズル形成品に成形される。また、このときノズル成形金型のキャビティに配置されていたカーボンファイバーが、そのままノズル形成品の中に残される。
【0012】
次に、ノズル成形品の中に残されたカーボンファイバーを燃焼させカーボンファイバーに対応した細長い管状空隙を備えたノズル焼成品を生成する。これにより、ノズル成形品を形成している粉末金属が焼成によって焼結されると共に、ノズル成形品の中に残されたカーボンファイバーが燃焼され、ノズル焼成品の中に細長い管状空隙が形成される。この細長い管状空隙は、配置工程で配置されたカーボンファイバーの径、数量、位置及び角度に対応している。
【0013】
次に、ノズル焼成品を機械加工しノズル焼成品の形状を調整する。これによって、不要部分の除去と形状の調整が行われ、ノズルが形成できる。
【0014】
以上より、金属製のノズルの先端部に微細な燃料噴射口を、高額な設備を必要とすることなく、短時間で確実に形成できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、金属製のノズルの先端部に微細な燃料噴射口を、高額な設備を必要とすることなく、短時間で確実に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る燃料噴射インジェクタの製造方法に係るノズル成形金型にカーボンファイバー組み立て体を配置した状態を示す断面図である。
【図2】前記実施形態に係るカーボンファイバー組み立て体の斜視図である。
【図3】前記実施形態に係るノズル成形金型に粉末金属を充填した状態を示す断面図である。
【図4】前記実施形態に係るノズル成形金型によって粉末金属を圧縮しノズル成形品を成形した状態を示す断面図である。
【図5】前記実施形態に係るノズル焼成品の断面図である。
【図6】前記実施形態に係るノズル焼成品を機械加工し形状調整した状態を示す断面図である。
【図7】前記実施形態に係るノズルを示す斜視図である。
【図8】本発明の第二の実施形態に係る燃料噴射インジェクタの製造方法に係るノズル成形金型に配置するカーボンファイバー組み立て体の断面図である。
【図9】前記実施形態に係るカーボンファイバー組み立て体の斜視図である。
【図10】前記実施形態に係るノズル成形金型に前記カーボンファイバー組み立て体を配置し粉末金属を充填した状態を示す断面図である。
【図11】前記実施形態に係るノズル成形金型によって粉末金属を圧縮した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態について、その先端部100bに微細な燃料噴射口100cを備えたノズル100を製造するまでの工程につき図1乃至図7を参照しつつ説明する。
【0018】
先ず、配置工程について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る燃料噴射インジェクタの製造方法に係るノズル成形金型10にカーボンファイバー組み立て体20を配置した状態を示す断面図である。
【0019】
ノズル成形金型10は、図7に示すノズル100を成形するための金型である。このノズル成形金型10の主な構成は、上下に可動とされた図示しないダイプレートにより支持され、内部が円形の中空に形成されたダイスDと、ダイスDの上部に位置し、ダイスDの内部へ上から挿入可能とされた上パンチPTと、ダイスDの内部に下から挿入可能とされた下パンチPBとを備えている。
【0020】
上パンチPTは、ダイスDの内面に摺接する略円筒状に形成された上アウターパンチP1と、上アウターパンチP1の内部に配置され、上アウターパンチP1の内面に摺接する略円柱状に形成された上インナーパンチP2とから構成される。上アウターパンチP1は、油圧シリンダなどによって構成される高さ調整機構K1とリンク機構L1を介して連結され上下に可動となっている。上インナーパンチP2は、油圧シリンダなどによって構成される高さ調整機構K2とリンク機構L2を介して連結され上下に可動となっている。上インナーパンチP2の上アウターパンチP1に対する相対的な上下動に伴って、上インナーパンチP2は、上アウターパンチP1の内面に対して摺動することが可能とされている。
【0021】
他方、下パンチPBは、ダイスDの内面に摺接する略円筒状に形成された下アウターパンチP3と、下アウターパンチP3の内部に配置され、下アウターパンチP3の内面に摺接する略円柱状に形成された下インナーパンチP4とから構成される。下アウターパンチP3は、油圧シリンダなどによって構成される高さ調整機構K3とリンク機構L3を介して連結され上下に可動となっている。下インナーパンチP4は、油圧シリンダなどによって構成される高さ調整機構K4とリンク機構L4を介して連結され上下に可動となっている。下インナーパンチP4の下アウターパンチP3に対する相対的な上下動に伴って、下インナーパンチP4は、下アウターパンチP3の内面に対して摺動することが可能とされている。
【0022】
この状態で、下アウターパンチP3はダイスDの内部に所定の位置まで挿入された状態で固定され、下インナーパンチP4は下アウターパンチP3の環状の上面12より所定の位置まで突出した状態で固定されている。
ここで、ダイスDの内面11と、下アウターパンチP3の上面12と、下インナーパンチP4の上面16及び側面13とから構成され、圧縮すべき粉末金属Mが投入されるキャビティCが形成される。尚、下インナーパンチP4の上面16は、その中心が最も凹んだ逆円すい形状に形成されている。
キャビティCは、形成しようとするノズル100の形状に対応している。また、キャビティCの容積を所定のものとするように、下アウターパンチP3及び下インナーパンチP4の固定位置は、圧縮成形するノズル成形品の設計圧縮率に応じて調整されている。
【0023】
他方、上パンチPTは、ダイスDから上方に離れた位置に保持されている。
ここで、アウターパンチP1は、環状の下面14を備え、上インナーパンチP2は、その中心が最も突出した逆円すい形状に形成された下面15を備える。この上インナーパンチP2の下面15と下インナーパンチP4の上面16は、同一形状に形成されている。
【0024】
キャビティCの上方には、カーボンファイバー組み立て体20が配置される。カーボンファイバー組み立て体20は、図2に示す通り、ピン21の一端から略逆円すい形状に沿って放射状に伸びる複数のカーボンファイバーCF、カーボンファイバーCFの他端が連結したリング22、及びリング22から半径方向外側に伸びる複数のスペーサ23によって構成される。
カーボンファイバー組み立て体20は、ピン21の他端が下インナーパンチP4の逆円すい形状上面16の中心に、スペーサ23がダイスDの内面11に当接することにより、キャビティCの中の所定の位置に正確に配置されるように構成されている。
ここで、カーボンファイバー組み立て体20は、ノズル100の先端部100bに形成しようとする微細な燃料噴射口100cに応じた径及び数量のカーボンファイバーCFが、その燃料噴射口100cに応じた位置及び角度にてキャビティCの中に配置されるように構成されている。
別途作製したカーボンファイバー組み立て体20を、上述のようにノズル成形金型10に配置することによって配置工程を行うことができる。
【0025】
次に、充填工程について説明する。
図3は、ノズル成形金型10に粉末金属Mを充填した状態を示す断面図である。充填される粉末金属Mは、アトマイズ法(溶融金属を空気、不活性ガスなどのジェット流で破砕)、遠心力アトマイズ法(溶融金属を高速回転ディスクで破砕)、プラズマ・アトマイズ法回転電極法、機械的プロセス、化学的プロセスなどの方法から適宜選択して製造されたものが使用される。また、粉末金属Mは、必要に応じて複数の種類の粉末金属、又は異なる製法で製造した粉末金属を混合して調製してもよい。
【0026】
ノズル成形金型10のキャビティCへの粉末金属Mの充填は、図示しないフィーダーによって所定量の粉末金属MをキャビティCに投入することによって行われる。
キャビティCへの粉末金属Mの充填が進むと、キャビティCの中に配置されているカーボンファイバー組み立て体20は粉末金属Mによって埋められるが、カーボンファイバー組み立て体20のキャビティCに対する位置関係、特にカーボンファイバーCFのキャビティCに対する位置関係が変わらないように充填される。
【0027】
粉末金属MのキャビティCへの充填が終了すると、次に、ダイスDから上方に離れた位置に保持されていた上パンチPTを、高さ調整機構K1及び高さ調整機構K2を駆動することにより、ダイスDに向かって降下させる。
【0028】
次に、成形工程につき説明する。
図4は、ノズル成形金型10によって粉末金属Mを圧縮しノズル成形品97を成形した状態を示す断面図である。
先ず、ダイスDに向かって降下した上アウターパンチP1と上インナーパンチP2から構成された上パンチPTは、ダイスDの内部に挿入され、上アウターパンチP1の下面14及び上インナーパンチP2の下面15によって、キャビティCに充填されている粉末金属Mを圧縮する。
上パンチPTは、上パンチPTがキャビティCに充填されている粉末金属Mへ所定の圧縮力を与えるまで、粉末金属Mの圧縮を継続する。
【0029】
粉末金属Mの中に埋められたカーボンファイバーCFは、粉末金属Mの圧縮によって粉末金属Mが移動するため、カーボンファイバーCFの近傍の粉末金属Mの移動に伴い移動する。
キャビティCの周辺部分の粉末金属Mは、下アウターパンチP3の上面12と上アウターパンチP1の下面14との比較的長い距離の間で圧縮されるため、キャビティCの周辺部分ではカーボンファイバーCFの近傍の粉末金属Mは無視できない距離移動する。従って、キャビティCの周辺部分に位置するカーボンファイバーCFは、粉末金属Mの圧縮により、最初に配置した位置から無視できない距離だけ移動する。
他方、キャビティCの中心部分の粉末金属Mは、下インナーパンチP4の上面16と上インナーパンチP2の下面15との短い距離の間で圧縮されるため、キャビティCの中心部分ではカーボンファイバーCFの近傍の粉末金属Mの移動は、非常に小さく無視できる。従って、キャビティCの中心部分に位置するカーボンファイバーCFは、粉末金属Mの圧縮・成形によっても、最初に配置した位置から移動しない。
【0030】
上パンチPTによる粉末金属Mの圧縮が終了すると、ノズル成形金型10の中にノズル成形品97が生成される。ノズル成形品97を、キャビティCから取り出すために、上パンチPTをダイスDから抜き、ダイスDの上方に移動させる。そして、下パンチPBのうち下インナーパンチP4を、高さ調整機構K4を駆動させることにより、下インナーパンチP4の上面16が下アウターパンチP3の上面12とほぼ同じ高さ位置になるまで降下させる。続いて、ダイスDの上面が下アウターパンチP3の上面12とほぼ同じ高さ位置になるまで、ダイスDを降下させる。この降下が完了した後に、ノズル成形品97は、ノズル成形金型10から取り出すことが可能となる。
ノズル成形品97の中には、カーボンファイバーCFが残されているが、ノズル成形品97の中心部分97hの内部に残されているカーボンファイバーCFは、以下の特徴を有する。すなわち、この部分を構成している粉末金属Mは、前述の通り、下インナーパンチP4の上面16と上インナーパンチP2の下面15との短い距離の間で圧縮されるのでこの部分の粉末金属Mは粉末金属Mの圧縮・成形によっても、最初に配置した位置から移動しないため、配置工程で配置された通り、ノズル100の先端部100bに形成しようとする微細な燃料噴射口100cに応じた径、数量、位置及び角度のカーボンファイバーCFがノズル成形品97の中に残される。
【0031】
次に、焼成工程につき説明する。
ノズル成形金型10から取り出したノズル成形品97は、図示しない焼成装置(SiC発熱体を用いたメッシュベルト焼成炉など)を用いて焼成する。ノズル成形品97を焼成することによって、ノズル成形品97を形成する粉末金属Mを焼結させると共に、ノズル成形品97の中に残されたカーボンファイバーCFを燃焼させることができる。
この結果、図5にその断面図を示す通り、ノズル成形品97に残されたカーボンファイバーCFの位置、及び形状に対応した細長い管状空隙98cをその内部に備えたノズル焼成品98が得られる。
従って、ノズル焼成品98の中心部分98hの内部に形成される管状空隙98cは、配置工程においてノズルの先端部に形成しようとする微細な燃料噴射口に応じた径、数量、位置及び角度にてノズル成形金型10のキャビティCに配置されたカーボンファイバーCFに対応した径、数量、位置及び角度に形成される。
ノズル焼成品98の周辺部分に形成された管状空隙98cは、成形工程において、キャビティCの周辺部分に位置する粉末金属Mは下アウターパンチP3の上面12と上アウターパンチP1の下面14との比較的長い距離の間で圧縮されるため、キャビティCの周辺部分に位置するカーボンファイバーCFは、粉末金属Mの圧縮に伴い最初に配置した位置から無視できない距離移動するため、予め設定した位置に設けることは困難である。しかしながら、後述するように、ノズル焼成品98の先端部分98bは形状調整工程において除去され、ノズル100に残らないため問題にならない。
【0032】
最後に、形状調整工程につき説明する。
図6(a)は、図5に示すノズル焼成品98に対して、先端部分98bを加工基準面95まで、中心部分98hの下面を加工基準面96までそれぞれ機械加工し切削中間品99に形状調整した状態を示す。また、図6(b)は、更に機械加工により、切削中間品99の先端部分99bの周辺部分の形状調整、内面99eの形状調整などを行い、先端部100bに微細な燃料噴射口100cを備えたノズル100を形成した状態を示す。
図7は、形状調整工程によって形成したノズル100を示す斜視図である。
【0033】
以上より、金属製のノズル100の先端部100bに微細な燃料噴射口100cを、高額な設備を必要とすることなく、短時間で確実に形成できる。
【0034】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態において、第1の実施形態との重複部分については説明を簡略化し、相違点を中心に図8乃至図11を参照しつつ説明する。
【0035】
先ず、配置工程について説明する。
図10に示すように、本実施形態に係るノズル成形金型50の下パンチPBは、第1の実施形態のノズル成形金型10の下パンチPBがダイスDの内面11に摺接する略円筒状に形成された下アウターパンチP3と、下アウターパンチP3の内部に配置され、下アウターパンチP3の内面に摺接する略円柱状に形成された下インナーパンチP4とから構成されるのに対して、ダイスDの内面51に摺接する略円筒状に形成された下一体パンチP7のみによって構成される。下一体パンチP7は、油圧シリンダなどによって構成される高さ調整機構K7とリンク機構L7を介して連結され上下に可動となっている。
また、本実施形態に係るノズル成形金型50の上パンチPTは、第1の実施形態のノズル成形金型10の上パンチPTと同様に、略円筒状に形成された上アウターパンチP5と、上アウターパンチP5の内部に配置され、上アウターパンチP5の内面に摺接する略円柱状に形成された上インナーパンチP6とから構成されるが、第1の実施形態の上アウターパンチP1がダイスDの内面11に摺接する略円筒状に形成されているのに対して、本本実施形態の上アウターパンチP5は、その外面55がダイスDの内面51より所定の距離(距離t)だけ離れるように小径に形成されている。
【0036】
図8、9は、本実施形態に係るカーボンファイバー組み立て体30の断面図、及び斜視図を示す。
本実施形態のカーボンファイバー組み立て体30は、第1の実施形態のカーボンファイバー組み立て体20がピン21から略円すい形状に沿って放射状に伸びる複数のカーボンファイバーCF、カーボンファイバーCFの他端が連結したリング22、及びリング22から半径方向に伸びる複数のスペーサ23によって構成されるのに対して、中空円筒壁33と底部32を備えるカセット31、底部32の中央に設けられた中子37、中子37に配置されたピン41から略円すい形状に沿って放射状に中空円筒壁33まで伸びる複数のカーボンファイバーCFによって構成される。
【0037】
カセット31は、所定の厚み(厚みt)の中空円筒壁33と所定の厚みの底部32を備え、図10に示すように、中空円筒壁33の外面がダイスDの内面51に摺接し、底部32が下一体パンチP7の上面52に当接するように、ノズル成形金型50に配置できる。
カセット31は、ノズル成形金型50に配置されたとき、カセット31の中空円筒壁33の厚みtと、上アウターパンチP5の外面55とダイスDの内面51との距離tとが等しく形成されているため、上アウターパンチP5の外面55はカセット31の内面34に摺接可能である。
【0038】
カセット31の底部32の中央に設けられた中子37は硬質材料で形成され、中子37の上面39は、その中心が最も凹んだ逆円すい形状に形成されている。
ここで、本実施形態の圧縮すべき粉末金属Mが投入されるキャビティCは、第1の実施形態では、ダイスDの内面11と、下アウターパンチP3の上面12と、下インナーパンチP4の上面16及び側面13とから構成されるのに対して、カセット31の中空円筒壁33の内面34と、カセット31の底部32の上面35と、中子37の上面39及び側面38とから構成される。
キャビティCは、第1の実施形態と同様に、形成しようとするノズル100の形状に対応している。また、キャビティCの容積を所定のものとするように、中子37の形状及び下インナーパンチP7の固定位置は、圧縮成形するノズル成形品の設計圧縮率に応じて調整されている。
【0039】
上パンチPTは、本実施形態においても第1の実施形態と同様に、ダイスDから上方に離れた位置に保持されている。アウターパンチP5は、環状の下面13を備え、上インナーパンチP6は、その中心が最も突出した逆円すい形状に形成された下面54を備える。この上インナーパンチP2の下面54と中子37の上面39は、同一形状に形成されている。
【0040】
中子37の上面39の中心にはピン41が設けられ、ピン41の先端から複数のカーボンファイバーCFが略逆円すい形状に沿って放射状に中空円筒壁33の接続点40まで伸びている。
カーボンファイバー組み立て体30は、ノズル100の先端部100bに形成しようとする微細な燃料噴射口100cに応じた径及び数量のカーボンファイバーCFが、その燃料噴射口100cに応じた位置及び角度にてキャビティCの中に正確に配置されるように構成されている。
従って、本実施形態によれば、図10に示すように、別途作製されたカーボンファイバー組み立て体30を上述のように(図10参照)ノズル成形金型50に配置することによって配置工程を行うことができる。
【0041】
次に、充填工程について説明する。
図10は、ノズル成形金型50に配置されたカセット30のキャビティCの中に粉末金属Mを充填した状態を示す断面図である。
充填される粉末金属Mは、第1の実施形態と同様のものであってよい。また、粉末金属Mの充填は、図示しないフィーダーによって所定量の粉末金属MをキャビティCに投入することによって行われる。
キャビティCへの粉末金属Mの充填が進むと、キャビティCの中に配置されているカーボンファイバーCFは粉末金属Mによって埋められるが、カーボンファイバーCFのキャビティCに対する位置関係は変わらないように充填される。
【0042】
粉末金属MのキャビティCへの充填が終了すると、次に、ダイスDから上方に離れた位置に保持されていた上パンチPTを、高さ調整機構K5及び高さ調整機構K6を駆動することにより、ダイスDに向かって降下させる。
【0043】
次に、成形工程につき説明する。
図11は、ノズル成形金型50によって粉末金属Mを圧縮しノズル成形品97を成形した状態を示す断面図である。
本実施形態のノズル成形金型50においては、第1の実施形態のノズル成形金型10において、上アウターパンチP1と上インナーパンチP2から構成された上パンチPTが、ダイスDの内部に挿入され上アウターパンチP1の下面14及び上インナーパンチP2の下面15によってキャビティCに充填されている粉末金属Mを圧縮するのに対して、上アウターパンチP5と上インナーパンチP6から構成された上パンチPTが、カセット30の中空円筒壁33の内面34に挿入され上アウターパンチP5の下面53及び上インナーパンチP6の下面54によってキャビティCに充填されている粉末金属Mを圧縮する。
上パンチPTは、第1の実施形態と同様に、上パンチPTがキャビティCに充填されている粉末金属Mへ所定の圧縮力を与えるまで、粉末金属Mの圧縮を継続する。
【0044】
キャビティCの中心部分の粉末金属Mは、第1の実施形態と同様に、中子37の上面39と上インナーパンチP6の下面54との短い距離の間で圧縮されるため、キャビティCの中心部分ではカーボンファイバーCFの近傍の粉末金属Mの移動は、非常に小さく無視できる。従って、キャビティCの中心部分に位置するカーボンファイバーCFは、粉末金属Mの圧縮・成形によっても、最初に配置した位置から移動しない。
【0045】
上パンチPTによる粉末金属Mの圧縮が終了すると、第1の実施形態と同様に、ノズル成形金型50の中にノズル成形品97が生成される。ノズル成形品97を、キャビティCから取り出すために、上パンチPTをダイスDから抜き、ダイスDの上方に移動させる。そして、ダイスDの上面が下パンチPBである下一体パンチP7の上面52とほぼ同じ高さ位置になるまで、ダイスDを降下させる。この降下が完了した後に、ノズル成形品97は、カセット30と共にノズル成形金型50から取り出すことが可能となる。ノズル成形品97は、図示しない加工機により、カセット30から取り外すと共にノズル成形品97から中子37を取り外す。
【0046】
ノズル成形品97の中には、第1の実施形態と同様に、カーボンファイバーCFが残されているが、ノズル成形品97の中心部分97hの内部に残されているカーボンファイバーCFは、以下の特徴を有する。すなわち、この部分を構成している粉末金属Mは、前述の通り、中子37の上面39と上インナーパンチP6の下面54との短い距離の間で圧縮されるのでこの部分の粉末金属Mは粉末金属Mの圧縮・成形によっても、最初に配置した位置から移動しないため、配置工程で配置された通り、ノズル100の先端部100bに形成しようとする微細な燃料噴射口100cに応じた径、数量、位置及び角度のカーボンファイバーCFがノズル成形品97の中に残される。
【0047】
次に、焼成工程につき説明する。
ノズル成形金型50から取り出したノズル成形品97は、第1の実施形態においてノズル成形金型10から取り出すノズル成形品97と同等であるため、焼成工程に関しては第1の実施形態における工程と同じ工程を行えばよく、詳細説明を省略する。
本実施形態においても、ノズル焼成品98の中心部分98hの内部に形成される管状空隙98cは、配置工程においてノズルの先端部に形成しようとする微細な燃料噴射口に応じた径、数量、位置及び角度にてノズル成形金型10のキャビティCに配置されたカーボンファイバーCFに対応した径、数量、位置及び角度に形成される。
【0048】
最後に、形状調整工程であるが、この工程に関しても、第1の実施形態の形状調整工程と同じ工程を行えばよい。
【0049】
本実施形態においても、以上より、金属製のノズル100の先端部100bに微細な燃料噴射口100cを、高額な設備を必要とすることなく、短時間で確実に形成できる。
【0050】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれるものである。上記実施形態では、粉末金属を圧縮することで成形するいわゆる圧縮成型方式によりインジェクタを製造したが、これに限らない。例えば、上述のダイスDやパンチPT等を使用して、いわゆる金属粉末射出成形によりインジェクタを製造してもよい。
【符号の説明】
【0051】
10、50 ノズル形成金型
97 ノズル形成品
98 ノズル焼成品
98c 細長い管状空隙
100 ノズル
100b 先端部
100c 微細な噴射口
C キャビティ
CF カーボンファイバー
M 粉末金属
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料噴射インジェクタの製造方法に関する。詳しくは、金型によって成形した粉末金属を成形及び焼成することによって形成したノズルを備える燃料噴射インジェクタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、内燃機関の燃料噴射インジェクタは、インジェクタ本体部の先端側及び後端側にそれぞれ、燃料噴射口を通じてインジェクタ外へ燃料を噴射する部分であるノズル部(噴射部)と、インジェクタを駆動するための駆動部とを有して構成されている。
なお、ノズル部は、例えばインジェクタ本体部の先端に、別体の金属製のノズルが装着されて形成される。
【0003】
また、インジェクタの燃料噴射口(噴孔)は、ノズル部に設けられている。詳しくは、ノズル部は、円筒状の外形を形成するノズルボディを主体に構成され、そのノズルボディが先端側に向かうにつれて縮径されることにより、その最先端に先端部が形成されている。そして、この先端部には、インジェクタの内外を連通する燃料噴射口として噴孔(微小孔)が必要な数だけ(例えば6〜8個)穿設されている。
【0004】
これらの噴孔(微小孔)は、金属製のノズルの先端部に対する、マイクロドリルを用いた超微小深穴加工、微細放電加工機を用いた微細穴加工、レーザー光(ファイバーレーザー、YAGレーザー、CO2レーザー、又はUV個体レーザー)を用いたレーザー加工、または電子ビーム(真空中で高温に加熱されたフィラメントより発した電子を高電圧で光速近くまで加速させ、更に電磁レンズを用いて極めて細く集束させ、加工対象物の微小面に衝突させ超高熱を発生させる)を用いた電子ビーム加工などの方法によって穿設されている(特許文献1、2及び3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−87665号公報(特願昭60−226817号)
【特許文献2】特開昭62−89590号公報(特願昭60−226816号)
【特許文献3】特開平1−116280号公報(特願昭63−242668号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の燃料噴射インジェクタの製造方法では、それぞれ次の課題を有する。
金属製のノズルの先端部に対する、マイクロドリルを用いた超微小深穴加工においては、要求される微小孔がしばしばドリル加工の最少径限界を超え、また最少径限界近くでは刃先の摩耗による孔径の変化を抑えるため加工に非常な時間を掛ける必要がある。
放電加工においても、要求される微小孔がしばしば加工の最少径限界を超え、同様に最少径限界近くでは加工に非常な時間を掛ける必要がある。
レーザー加工、または電子ビーム加工では、要求される微小孔の加工は可能であるが、加工を行うためには非常に高額な設備を必要とする。
【0007】
本発明は、金属製のノズルの先端部に微細な燃料噴射口を、高額な設備を必要とすることなく、短時間で確実に形成できる燃料噴射インジェクタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の燃料噴射インジェクタの製造方法は、燃料噴射インジェクタの製造方法において、形成しようとするノズルの形状に対応したノズル成形金型のキャビティに、ノズルの先端部に形成しようとする微細な燃料噴射口に応じた径及び数量のカーボンファイバーを、燃料噴射口に応じた位置及び角度にて配置する配置工程と、キャビティに粉末金属を充填する充填工程と、充填された粉末金属をノズル成形金型によって圧縮してノズル成形品を成形する成形工程と、ノズル成形品を焼結させると共に、ノズル成形品の中に残されたカーボンファイバーを燃焼させカーボンファイバーに対応した細長い管状空隙を備えたノズル焼結品を生成する焼成工程と、ノズル焼結品を機械加工しノズル焼結品の形状を調整する形状調整工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、先ず、形成しようとするノズルの形状に対応したノズル成形金型のキャビティに、ノズルの先端部に形成しようとする燃料噴射口に応じた径及び数量のカーボンファイバーを、燃料噴射口に応じた位置及び角度にて配置する。これにより、ノズルの先端部に形成しようとする燃料噴射口の径、数量、位置及び角度が決定される。
【0010】
次に、ノズル成形金型のキャビティに粉末金属を充填する。これにより、キャビティ内の空間が、カーボンファイバーが配置されている細長い管状空間を除き、粉末金属で満たされる。
【0011】
次に、充填された粉末金属をノズル成形金型によって圧縮してノズル成形品を成形する。これにより、充填された粉末金属が、ノズル成形金型の型形状に対応したノズル形成品に成形される。また、このときノズル成形金型のキャビティに配置されていたカーボンファイバーが、そのままノズル形成品の中に残される。
【0012】
次に、ノズル成形品の中に残されたカーボンファイバーを燃焼させカーボンファイバーに対応した細長い管状空隙を備えたノズル焼成品を生成する。これにより、ノズル成形品を形成している粉末金属が焼成によって焼結されると共に、ノズル成形品の中に残されたカーボンファイバーが燃焼され、ノズル焼成品の中に細長い管状空隙が形成される。この細長い管状空隙は、配置工程で配置されたカーボンファイバーの径、数量、位置及び角度に対応している。
【0013】
次に、ノズル焼成品を機械加工しノズル焼成品の形状を調整する。これによって、不要部分の除去と形状の調整が行われ、ノズルが形成できる。
【0014】
以上より、金属製のノズルの先端部に微細な燃料噴射口を、高額な設備を必要とすることなく、短時間で確実に形成できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、金属製のノズルの先端部に微細な燃料噴射口を、高額な設備を必要とすることなく、短時間で確実に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る燃料噴射インジェクタの製造方法に係るノズル成形金型にカーボンファイバー組み立て体を配置した状態を示す断面図である。
【図2】前記実施形態に係るカーボンファイバー組み立て体の斜視図である。
【図3】前記実施形態に係るノズル成形金型に粉末金属を充填した状態を示す断面図である。
【図4】前記実施形態に係るノズル成形金型によって粉末金属を圧縮しノズル成形品を成形した状態を示す断面図である。
【図5】前記実施形態に係るノズル焼成品の断面図である。
【図6】前記実施形態に係るノズル焼成品を機械加工し形状調整した状態を示す断面図である。
【図7】前記実施形態に係るノズルを示す斜視図である。
【図8】本発明の第二の実施形態に係る燃料噴射インジェクタの製造方法に係るノズル成形金型に配置するカーボンファイバー組み立て体の断面図である。
【図9】前記実施形態に係るカーボンファイバー組み立て体の斜視図である。
【図10】前記実施形態に係るノズル成形金型に前記カーボンファイバー組み立て体を配置し粉末金属を充填した状態を示す断面図である。
【図11】前記実施形態に係るノズル成形金型によって粉末金属を圧縮した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態について、その先端部100bに微細な燃料噴射口100cを備えたノズル100を製造するまでの工程につき図1乃至図7を参照しつつ説明する。
【0018】
先ず、配置工程について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る燃料噴射インジェクタの製造方法に係るノズル成形金型10にカーボンファイバー組み立て体20を配置した状態を示す断面図である。
【0019】
ノズル成形金型10は、図7に示すノズル100を成形するための金型である。このノズル成形金型10の主な構成は、上下に可動とされた図示しないダイプレートにより支持され、内部が円形の中空に形成されたダイスDと、ダイスDの上部に位置し、ダイスDの内部へ上から挿入可能とされた上パンチPTと、ダイスDの内部に下から挿入可能とされた下パンチPBとを備えている。
【0020】
上パンチPTは、ダイスDの内面に摺接する略円筒状に形成された上アウターパンチP1と、上アウターパンチP1の内部に配置され、上アウターパンチP1の内面に摺接する略円柱状に形成された上インナーパンチP2とから構成される。上アウターパンチP1は、油圧シリンダなどによって構成される高さ調整機構K1とリンク機構L1を介して連結され上下に可動となっている。上インナーパンチP2は、油圧シリンダなどによって構成される高さ調整機構K2とリンク機構L2を介して連結され上下に可動となっている。上インナーパンチP2の上アウターパンチP1に対する相対的な上下動に伴って、上インナーパンチP2は、上アウターパンチP1の内面に対して摺動することが可能とされている。
【0021】
他方、下パンチPBは、ダイスDの内面に摺接する略円筒状に形成された下アウターパンチP3と、下アウターパンチP3の内部に配置され、下アウターパンチP3の内面に摺接する略円柱状に形成された下インナーパンチP4とから構成される。下アウターパンチP3は、油圧シリンダなどによって構成される高さ調整機構K3とリンク機構L3を介して連結され上下に可動となっている。下インナーパンチP4は、油圧シリンダなどによって構成される高さ調整機構K4とリンク機構L4を介して連結され上下に可動となっている。下インナーパンチP4の下アウターパンチP3に対する相対的な上下動に伴って、下インナーパンチP4は、下アウターパンチP3の内面に対して摺動することが可能とされている。
【0022】
この状態で、下アウターパンチP3はダイスDの内部に所定の位置まで挿入された状態で固定され、下インナーパンチP4は下アウターパンチP3の環状の上面12より所定の位置まで突出した状態で固定されている。
ここで、ダイスDの内面11と、下アウターパンチP3の上面12と、下インナーパンチP4の上面16及び側面13とから構成され、圧縮すべき粉末金属Mが投入されるキャビティCが形成される。尚、下インナーパンチP4の上面16は、その中心が最も凹んだ逆円すい形状に形成されている。
キャビティCは、形成しようとするノズル100の形状に対応している。また、キャビティCの容積を所定のものとするように、下アウターパンチP3及び下インナーパンチP4の固定位置は、圧縮成形するノズル成形品の設計圧縮率に応じて調整されている。
【0023】
他方、上パンチPTは、ダイスDから上方に離れた位置に保持されている。
ここで、アウターパンチP1は、環状の下面14を備え、上インナーパンチP2は、その中心が最も突出した逆円すい形状に形成された下面15を備える。この上インナーパンチP2の下面15と下インナーパンチP4の上面16は、同一形状に形成されている。
【0024】
キャビティCの上方には、カーボンファイバー組み立て体20が配置される。カーボンファイバー組み立て体20は、図2に示す通り、ピン21の一端から略逆円すい形状に沿って放射状に伸びる複数のカーボンファイバーCF、カーボンファイバーCFの他端が連結したリング22、及びリング22から半径方向外側に伸びる複数のスペーサ23によって構成される。
カーボンファイバー組み立て体20は、ピン21の他端が下インナーパンチP4の逆円すい形状上面16の中心に、スペーサ23がダイスDの内面11に当接することにより、キャビティCの中の所定の位置に正確に配置されるように構成されている。
ここで、カーボンファイバー組み立て体20は、ノズル100の先端部100bに形成しようとする微細な燃料噴射口100cに応じた径及び数量のカーボンファイバーCFが、その燃料噴射口100cに応じた位置及び角度にてキャビティCの中に配置されるように構成されている。
別途作製したカーボンファイバー組み立て体20を、上述のようにノズル成形金型10に配置することによって配置工程を行うことができる。
【0025】
次に、充填工程について説明する。
図3は、ノズル成形金型10に粉末金属Mを充填した状態を示す断面図である。充填される粉末金属Mは、アトマイズ法(溶融金属を空気、不活性ガスなどのジェット流で破砕)、遠心力アトマイズ法(溶融金属を高速回転ディスクで破砕)、プラズマ・アトマイズ法回転電極法、機械的プロセス、化学的プロセスなどの方法から適宜選択して製造されたものが使用される。また、粉末金属Mは、必要に応じて複数の種類の粉末金属、又は異なる製法で製造した粉末金属を混合して調製してもよい。
【0026】
ノズル成形金型10のキャビティCへの粉末金属Mの充填は、図示しないフィーダーによって所定量の粉末金属MをキャビティCに投入することによって行われる。
キャビティCへの粉末金属Mの充填が進むと、キャビティCの中に配置されているカーボンファイバー組み立て体20は粉末金属Mによって埋められるが、カーボンファイバー組み立て体20のキャビティCに対する位置関係、特にカーボンファイバーCFのキャビティCに対する位置関係が変わらないように充填される。
【0027】
粉末金属MのキャビティCへの充填が終了すると、次に、ダイスDから上方に離れた位置に保持されていた上パンチPTを、高さ調整機構K1及び高さ調整機構K2を駆動することにより、ダイスDに向かって降下させる。
【0028】
次に、成形工程につき説明する。
図4は、ノズル成形金型10によって粉末金属Mを圧縮しノズル成形品97を成形した状態を示す断面図である。
先ず、ダイスDに向かって降下した上アウターパンチP1と上インナーパンチP2から構成された上パンチPTは、ダイスDの内部に挿入され、上アウターパンチP1の下面14及び上インナーパンチP2の下面15によって、キャビティCに充填されている粉末金属Mを圧縮する。
上パンチPTは、上パンチPTがキャビティCに充填されている粉末金属Mへ所定の圧縮力を与えるまで、粉末金属Mの圧縮を継続する。
【0029】
粉末金属Mの中に埋められたカーボンファイバーCFは、粉末金属Mの圧縮によって粉末金属Mが移動するため、カーボンファイバーCFの近傍の粉末金属Mの移動に伴い移動する。
キャビティCの周辺部分の粉末金属Mは、下アウターパンチP3の上面12と上アウターパンチP1の下面14との比較的長い距離の間で圧縮されるため、キャビティCの周辺部分ではカーボンファイバーCFの近傍の粉末金属Mは無視できない距離移動する。従って、キャビティCの周辺部分に位置するカーボンファイバーCFは、粉末金属Mの圧縮により、最初に配置した位置から無視できない距離だけ移動する。
他方、キャビティCの中心部分の粉末金属Mは、下インナーパンチP4の上面16と上インナーパンチP2の下面15との短い距離の間で圧縮されるため、キャビティCの中心部分ではカーボンファイバーCFの近傍の粉末金属Mの移動は、非常に小さく無視できる。従って、キャビティCの中心部分に位置するカーボンファイバーCFは、粉末金属Mの圧縮・成形によっても、最初に配置した位置から移動しない。
【0030】
上パンチPTによる粉末金属Mの圧縮が終了すると、ノズル成形金型10の中にノズル成形品97が生成される。ノズル成形品97を、キャビティCから取り出すために、上パンチPTをダイスDから抜き、ダイスDの上方に移動させる。そして、下パンチPBのうち下インナーパンチP4を、高さ調整機構K4を駆動させることにより、下インナーパンチP4の上面16が下アウターパンチP3の上面12とほぼ同じ高さ位置になるまで降下させる。続いて、ダイスDの上面が下アウターパンチP3の上面12とほぼ同じ高さ位置になるまで、ダイスDを降下させる。この降下が完了した後に、ノズル成形品97は、ノズル成形金型10から取り出すことが可能となる。
ノズル成形品97の中には、カーボンファイバーCFが残されているが、ノズル成形品97の中心部分97hの内部に残されているカーボンファイバーCFは、以下の特徴を有する。すなわち、この部分を構成している粉末金属Mは、前述の通り、下インナーパンチP4の上面16と上インナーパンチP2の下面15との短い距離の間で圧縮されるのでこの部分の粉末金属Mは粉末金属Mの圧縮・成形によっても、最初に配置した位置から移動しないため、配置工程で配置された通り、ノズル100の先端部100bに形成しようとする微細な燃料噴射口100cに応じた径、数量、位置及び角度のカーボンファイバーCFがノズル成形品97の中に残される。
【0031】
次に、焼成工程につき説明する。
ノズル成形金型10から取り出したノズル成形品97は、図示しない焼成装置(SiC発熱体を用いたメッシュベルト焼成炉など)を用いて焼成する。ノズル成形品97を焼成することによって、ノズル成形品97を形成する粉末金属Mを焼結させると共に、ノズル成形品97の中に残されたカーボンファイバーCFを燃焼させることができる。
この結果、図5にその断面図を示す通り、ノズル成形品97に残されたカーボンファイバーCFの位置、及び形状に対応した細長い管状空隙98cをその内部に備えたノズル焼成品98が得られる。
従って、ノズル焼成品98の中心部分98hの内部に形成される管状空隙98cは、配置工程においてノズルの先端部に形成しようとする微細な燃料噴射口に応じた径、数量、位置及び角度にてノズル成形金型10のキャビティCに配置されたカーボンファイバーCFに対応した径、数量、位置及び角度に形成される。
ノズル焼成品98の周辺部分に形成された管状空隙98cは、成形工程において、キャビティCの周辺部分に位置する粉末金属Mは下アウターパンチP3の上面12と上アウターパンチP1の下面14との比較的長い距離の間で圧縮されるため、キャビティCの周辺部分に位置するカーボンファイバーCFは、粉末金属Mの圧縮に伴い最初に配置した位置から無視できない距離移動するため、予め設定した位置に設けることは困難である。しかしながら、後述するように、ノズル焼成品98の先端部分98bは形状調整工程において除去され、ノズル100に残らないため問題にならない。
【0032】
最後に、形状調整工程につき説明する。
図6(a)は、図5に示すノズル焼成品98に対して、先端部分98bを加工基準面95まで、中心部分98hの下面を加工基準面96までそれぞれ機械加工し切削中間品99に形状調整した状態を示す。また、図6(b)は、更に機械加工により、切削中間品99の先端部分99bの周辺部分の形状調整、内面99eの形状調整などを行い、先端部100bに微細な燃料噴射口100cを備えたノズル100を形成した状態を示す。
図7は、形状調整工程によって形成したノズル100を示す斜視図である。
【0033】
以上より、金属製のノズル100の先端部100bに微細な燃料噴射口100cを、高額な設備を必要とすることなく、短時間で確実に形成できる。
【0034】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態において、第1の実施形態との重複部分については説明を簡略化し、相違点を中心に図8乃至図11を参照しつつ説明する。
【0035】
先ず、配置工程について説明する。
図10に示すように、本実施形態に係るノズル成形金型50の下パンチPBは、第1の実施形態のノズル成形金型10の下パンチPBがダイスDの内面11に摺接する略円筒状に形成された下アウターパンチP3と、下アウターパンチP3の内部に配置され、下アウターパンチP3の内面に摺接する略円柱状に形成された下インナーパンチP4とから構成されるのに対して、ダイスDの内面51に摺接する略円筒状に形成された下一体パンチP7のみによって構成される。下一体パンチP7は、油圧シリンダなどによって構成される高さ調整機構K7とリンク機構L7を介して連結され上下に可動となっている。
また、本実施形態に係るノズル成形金型50の上パンチPTは、第1の実施形態のノズル成形金型10の上パンチPTと同様に、略円筒状に形成された上アウターパンチP5と、上アウターパンチP5の内部に配置され、上アウターパンチP5の内面に摺接する略円柱状に形成された上インナーパンチP6とから構成されるが、第1の実施形態の上アウターパンチP1がダイスDの内面11に摺接する略円筒状に形成されているのに対して、本本実施形態の上アウターパンチP5は、その外面55がダイスDの内面51より所定の距離(距離t)だけ離れるように小径に形成されている。
【0036】
図8、9は、本実施形態に係るカーボンファイバー組み立て体30の断面図、及び斜視図を示す。
本実施形態のカーボンファイバー組み立て体30は、第1の実施形態のカーボンファイバー組み立て体20がピン21から略円すい形状に沿って放射状に伸びる複数のカーボンファイバーCF、カーボンファイバーCFの他端が連結したリング22、及びリング22から半径方向に伸びる複数のスペーサ23によって構成されるのに対して、中空円筒壁33と底部32を備えるカセット31、底部32の中央に設けられた中子37、中子37に配置されたピン41から略円すい形状に沿って放射状に中空円筒壁33まで伸びる複数のカーボンファイバーCFによって構成される。
【0037】
カセット31は、所定の厚み(厚みt)の中空円筒壁33と所定の厚みの底部32を備え、図10に示すように、中空円筒壁33の外面がダイスDの内面51に摺接し、底部32が下一体パンチP7の上面52に当接するように、ノズル成形金型50に配置できる。
カセット31は、ノズル成形金型50に配置されたとき、カセット31の中空円筒壁33の厚みtと、上アウターパンチP5の外面55とダイスDの内面51との距離tとが等しく形成されているため、上アウターパンチP5の外面55はカセット31の内面34に摺接可能である。
【0038】
カセット31の底部32の中央に設けられた中子37は硬質材料で形成され、中子37の上面39は、その中心が最も凹んだ逆円すい形状に形成されている。
ここで、本実施形態の圧縮すべき粉末金属Mが投入されるキャビティCは、第1の実施形態では、ダイスDの内面11と、下アウターパンチP3の上面12と、下インナーパンチP4の上面16及び側面13とから構成されるのに対して、カセット31の中空円筒壁33の内面34と、カセット31の底部32の上面35と、中子37の上面39及び側面38とから構成される。
キャビティCは、第1の実施形態と同様に、形成しようとするノズル100の形状に対応している。また、キャビティCの容積を所定のものとするように、中子37の形状及び下インナーパンチP7の固定位置は、圧縮成形するノズル成形品の設計圧縮率に応じて調整されている。
【0039】
上パンチPTは、本実施形態においても第1の実施形態と同様に、ダイスDから上方に離れた位置に保持されている。アウターパンチP5は、環状の下面13を備え、上インナーパンチP6は、その中心が最も突出した逆円すい形状に形成された下面54を備える。この上インナーパンチP2の下面54と中子37の上面39は、同一形状に形成されている。
【0040】
中子37の上面39の中心にはピン41が設けられ、ピン41の先端から複数のカーボンファイバーCFが略逆円すい形状に沿って放射状に中空円筒壁33の接続点40まで伸びている。
カーボンファイバー組み立て体30は、ノズル100の先端部100bに形成しようとする微細な燃料噴射口100cに応じた径及び数量のカーボンファイバーCFが、その燃料噴射口100cに応じた位置及び角度にてキャビティCの中に正確に配置されるように構成されている。
従って、本実施形態によれば、図10に示すように、別途作製されたカーボンファイバー組み立て体30を上述のように(図10参照)ノズル成形金型50に配置することによって配置工程を行うことができる。
【0041】
次に、充填工程について説明する。
図10は、ノズル成形金型50に配置されたカセット30のキャビティCの中に粉末金属Mを充填した状態を示す断面図である。
充填される粉末金属Mは、第1の実施形態と同様のものであってよい。また、粉末金属Mの充填は、図示しないフィーダーによって所定量の粉末金属MをキャビティCに投入することによって行われる。
キャビティCへの粉末金属Mの充填が進むと、キャビティCの中に配置されているカーボンファイバーCFは粉末金属Mによって埋められるが、カーボンファイバーCFのキャビティCに対する位置関係は変わらないように充填される。
【0042】
粉末金属MのキャビティCへの充填が終了すると、次に、ダイスDから上方に離れた位置に保持されていた上パンチPTを、高さ調整機構K5及び高さ調整機構K6を駆動することにより、ダイスDに向かって降下させる。
【0043】
次に、成形工程につき説明する。
図11は、ノズル成形金型50によって粉末金属Mを圧縮しノズル成形品97を成形した状態を示す断面図である。
本実施形態のノズル成形金型50においては、第1の実施形態のノズル成形金型10において、上アウターパンチP1と上インナーパンチP2から構成された上パンチPTが、ダイスDの内部に挿入され上アウターパンチP1の下面14及び上インナーパンチP2の下面15によってキャビティCに充填されている粉末金属Mを圧縮するのに対して、上アウターパンチP5と上インナーパンチP6から構成された上パンチPTが、カセット30の中空円筒壁33の内面34に挿入され上アウターパンチP5の下面53及び上インナーパンチP6の下面54によってキャビティCに充填されている粉末金属Mを圧縮する。
上パンチPTは、第1の実施形態と同様に、上パンチPTがキャビティCに充填されている粉末金属Mへ所定の圧縮力を与えるまで、粉末金属Mの圧縮を継続する。
【0044】
キャビティCの中心部分の粉末金属Mは、第1の実施形態と同様に、中子37の上面39と上インナーパンチP6の下面54との短い距離の間で圧縮されるため、キャビティCの中心部分ではカーボンファイバーCFの近傍の粉末金属Mの移動は、非常に小さく無視できる。従って、キャビティCの中心部分に位置するカーボンファイバーCFは、粉末金属Mの圧縮・成形によっても、最初に配置した位置から移動しない。
【0045】
上パンチPTによる粉末金属Mの圧縮が終了すると、第1の実施形態と同様に、ノズル成形金型50の中にノズル成形品97が生成される。ノズル成形品97を、キャビティCから取り出すために、上パンチPTをダイスDから抜き、ダイスDの上方に移動させる。そして、ダイスDの上面が下パンチPBである下一体パンチP7の上面52とほぼ同じ高さ位置になるまで、ダイスDを降下させる。この降下が完了した後に、ノズル成形品97は、カセット30と共にノズル成形金型50から取り出すことが可能となる。ノズル成形品97は、図示しない加工機により、カセット30から取り外すと共にノズル成形品97から中子37を取り外す。
【0046】
ノズル成形品97の中には、第1の実施形態と同様に、カーボンファイバーCFが残されているが、ノズル成形品97の中心部分97hの内部に残されているカーボンファイバーCFは、以下の特徴を有する。すなわち、この部分を構成している粉末金属Mは、前述の通り、中子37の上面39と上インナーパンチP6の下面54との短い距離の間で圧縮されるのでこの部分の粉末金属Mは粉末金属Mの圧縮・成形によっても、最初に配置した位置から移動しないため、配置工程で配置された通り、ノズル100の先端部100bに形成しようとする微細な燃料噴射口100cに応じた径、数量、位置及び角度のカーボンファイバーCFがノズル成形品97の中に残される。
【0047】
次に、焼成工程につき説明する。
ノズル成形金型50から取り出したノズル成形品97は、第1の実施形態においてノズル成形金型10から取り出すノズル成形品97と同等であるため、焼成工程に関しては第1の実施形態における工程と同じ工程を行えばよく、詳細説明を省略する。
本実施形態においても、ノズル焼成品98の中心部分98hの内部に形成される管状空隙98cは、配置工程においてノズルの先端部に形成しようとする微細な燃料噴射口に応じた径、数量、位置及び角度にてノズル成形金型10のキャビティCに配置されたカーボンファイバーCFに対応した径、数量、位置及び角度に形成される。
【0048】
最後に、形状調整工程であるが、この工程に関しても、第1の実施形態の形状調整工程と同じ工程を行えばよい。
【0049】
本実施形態においても、以上より、金属製のノズル100の先端部100bに微細な燃料噴射口100cを、高額な設備を必要とすることなく、短時間で確実に形成できる。
【0050】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれるものである。上記実施形態では、粉末金属を圧縮することで成形するいわゆる圧縮成型方式によりインジェクタを製造したが、これに限らない。例えば、上述のダイスDやパンチPT等を使用して、いわゆる金属粉末射出成形によりインジェクタを製造してもよい。
【符号の説明】
【0051】
10、50 ノズル形成金型
97 ノズル形成品
98 ノズル焼成品
98c 細長い管状空隙
100 ノズル
100b 先端部
100c 微細な噴射口
C キャビティ
CF カーボンファイバー
M 粉末金属
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料噴射インジェクタの製造方法において、
形成しようとするノズルの形状に対応したノズル成形金型のキャビティに、前記ノズルの先端部に形成しようとする微細な燃料噴射口に応じた径及び数量のカーボンファイバーを、前記燃料噴射口に応じた位置及び角度にて配置する配置工程と、
前記キャビティに粉末金属を充填する充填工程と、
充填された前記粉末金属を前記ノズル成形金型によって圧縮してノズル成形品を成形する成形工程と、
前記ノズル成形品を焼結させると共に、前記ノズル成形品の中に残された前記カーボンファイバーを燃焼させ前記カーボンファイバーに対応した細長い管状空隙を備えたノズル焼結品を生成する焼成工程と、
前記ノズル焼結品を機械加工し前記ノズル焼結品の形状を調整する形状調整工程と、を有する燃料噴射インジェクタの製造方法。
【請求項1】
燃料噴射インジェクタの製造方法において、
形成しようとするノズルの形状に対応したノズル成形金型のキャビティに、前記ノズルの先端部に形成しようとする微細な燃料噴射口に応じた径及び数量のカーボンファイバーを、前記燃料噴射口に応じた位置及び角度にて配置する配置工程と、
前記キャビティに粉末金属を充填する充填工程と、
充填された前記粉末金属を前記ノズル成形金型によって圧縮してノズル成形品を成形する成形工程と、
前記ノズル成形品を焼結させると共に、前記ノズル成形品の中に残された前記カーボンファイバーを燃焼させ前記カーボンファイバーに対応した細長い管状空隙を備えたノズル焼結品を生成する焼成工程と、
前記ノズル焼結品を機械加工し前記ノズル焼結品の形状を調整する形状調整工程と、を有する燃料噴射インジェクタの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−21520(P2011−21520A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166150(P2009−166150)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]