燃料噴射弁
【課題】燃料噴射弁において、過度に製造コストを高くすることなく、噴射された燃料噴霧の微粒化の促進を図れる構造を実現することである。
【解決手段】燃料噴射弁20は、ノズルボディ24内部の燃料室28に供給された燃料を噴射させる噴孔34を備える。噴孔34は、上流側噴孔32と、上流側噴孔32の下流側に連結され、かつ、上流側噴孔32から移行する際の流路を急拡大させることにより、噴孔34の内部を流れる燃料にキャビテーション気泡を発生させる空隙部36とを含む。空隙部36は、内部を流れる燃料噴流の方向の逆方向に対し傾斜する方向に設けられた窪み部50を有する。
【解決手段】燃料噴射弁20は、ノズルボディ24内部の燃料室28に供給された燃料を噴射させる噴孔34を備える。噴孔34は、上流側噴孔32と、上流側噴孔32の下流側に連結され、かつ、上流側噴孔32から移行する際の流路を急拡大させることにより、噴孔34の内部を流れる燃料にキャビテーション気泡を発生させる空隙部36とを含む。空隙部36は、内部を流れる燃料噴流の方向の逆方向に対し傾斜する方向に設けられた窪み部50を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルボディ内部の燃料室に供給された燃料が噴孔を通って噴孔出口から噴射される燃料噴射弁に関し、特に、噴射弁内部を流れる燃料にキャビテーション気泡を発生させる燃料噴射弁に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料噴霧の微粒化を促進させるために、噴射弁内部を流れる燃料にキャビテーション気泡を発生させる燃料噴射弁が提案されており、その従来例が下記特許文献1及び非特許文献1に開示されている。特許文献1の図19等に記載された燃料噴射弁は、ノズルボディの先端部に円筒形状の中空部が形成されたプレートが取り付けられており、ニードル先端の突起部をプレートの中空部に通すことで形成される環状隙間により、キャビテーション気泡を保持するための気泡保持流路を形成している。また、突起部とノズルボディとの間に形成される環状隙間により、燃料にキャビテーション気泡を発生させるためのキャビテーション発生流路を形成している。燃料噴射弁は、キャビテーション発生流路からその下流側流路である、気泡保持流路に移行する際の流路断面積を急拡大させている。また、気泡保持流路を有するプレートに、複数の噴孔を形成したプレートを取り付け、複数のスリット状または円状の噴孔の上流側を気泡保持流路と連通させている。気泡保持流路の燃料液体とキャビテーション気泡とは混合されて噴孔へ導入され、気液混合状態の燃料が噴孔から噴射される。特許文献1の燃料噴射弁においては、噴射後の燃料噴流の全域においてキャビテーション崩壊による燃料噴霧の微粒化促進作用を効果的に得られ、噴射された燃料噴霧の微粒化をより促進させることができるとされている。
【0003】
図15は、非特許文献1に記載された従来の燃料噴射弁の1例の断面図である。燃料噴射弁10は、上流側噴孔12と下流側噴孔14との間に空隙部16を設けた噴孔18を備える。上流側噴孔12にて発生したキャビテーション気泡は、空隙部16にて燃料流れの減衰及び圧力回復が起こることで崩壊する。さらに、噴孔18内部に図示しない凸型のピンを設けることで、下流側噴孔14においてもキャビテーション気泡が崩壊する。このキャビテーション気泡の崩壊によって噴孔18内の燃料流れに乱れを与えることで、燃料噴霧の微粒化の促進を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−177174号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】N.Tamaki他,"Atomization Enhancement of the Spray and Improvement of the Spray Characteristics by Cavitation and Pin Inserted in the Nozzle Hole",ICLASS 2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ただし、上記の図15に示した従来の燃料噴射弁10の場合、単一の部材に空隙部16を含む噴孔18を一体に形成することが困難である。すなわち、空隙部16の直径は、両側の上流側噴孔12及び下流側噴孔14の直径よりも大きいので、例えば、空隙部16を設けるために、上流側噴孔12及び空隙部16と、下流側噴孔14とを、それぞれ別の2個等の複数の部材に加工して、形成する必要がある。しかも、複数の部材に噴孔12,14や空隙部16を加工した後に、電子ビーム溶接等により複数の部材同士を接合する必要が生じる。このため、加工コストが高くなる要因となる。また、複数の部材を接合する際に位置決め精度を高精度に確保する必要や、複数の部材の接合部でのピンホールの発生を防止する必要があり、製品の信頼性を高く確保するために、後工程で長時間を要する検査が必要になる。このため、燃料噴射弁10の製造コストが過度に高くなる要因となる。
【0007】
また、特許文献1に記載された燃料噴射弁の場合、流路断面積の大きい気泡保持流路の流れ方向の上流側と下流側との両側に流路断面積の小さいキャビテーション発生流路と噴孔とを連結するため、ノズルボディに2個のプレートを取り付けている。このため、空隙部に対応する気泡保持流路を形成するためのプレートの少なくとも片側にノズルボディ、別のプレート等の別部材を接合する必要がある。したがって、上記の非特許文献1に記載された構成の場合と同様に、燃料噴射弁の製造コストが高くなる可能性がある。
【0008】
本発明は、燃料噴射弁において、過度に製造コストを高くすることなく、噴射された燃料噴霧の微粒化の促進を図れる構造を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る燃料噴射弁は、ノズルボディ内部の燃料室に供給された燃料が噴孔を通って噴孔出口から噴射される燃料噴射弁であって、噴孔は、燃料室に供給された燃料が流入する上流側噴孔と、上流側噴孔の下流側に連結され、かつ、上流側噴孔から移行する際の流路を急拡大させることにより、噴孔の内部を流れる燃料にキャビテーション気泡を発生させる空隙部と、を備え、空隙部は、内部を流れる燃料噴流の方向の逆方向に対し傾斜する方向に設けられた窪み部を含むことを特徴とする燃料噴射弁である。
なお、空隙部内部を流れる燃料噴流とは、空隙部内部を流れる、液相または気液混合相の燃料流体をいう(本明細書全体及び特許請求の範囲で同じ)。
【0010】
本発明によれば、空隙部が、上流側噴孔から移行する際の流路を急拡大させることにより、上流側噴孔の出口から流出し、噴孔の内部を流れる燃料にキャビテーション気泡を発生させることができ、液相燃料とキャビテーション気泡とが混合された燃料流体が噴孔出口から噴射される。噴孔出口から噴射された燃料流体は、キャビテーション崩壊によって微粒化される。このため、燃料噴霧の微粒化を促進させることができる。しかも、空隙部は、内部を流れる燃料噴流の方向の逆方向に対し傾斜する方向に設けられた窪み部を含むため、噴孔出口の外側から空隙部を、放電加工や、レーザー加工等によって形成しやすくなる。このため、噴孔を構成する要素を複数の部材に形成して、その後に複数の部材を接合するという作業を行う必要がなくなり、加工コストを大幅に削減できるとともに、後工程での長時間を要する検査を必要とすることなく、信頼性の高い製品を得ることができる。
【0011】
また、本発明に係る燃料噴射弁において、好ましくは、窪み部は、噴孔出口側から上流側噴孔に向かうにしたがって、上流側噴孔を構成する窪み部側壁面を含む仮想平面から離れる方向に傾斜した傾斜壁面を有する。
【0012】
また、本発明に係る燃料噴射弁において、好ましくは、空隙部は、噴孔出口の外側から空隙部の奥端側を見た場合に、空隙部の奥端面の全部を直線的に見通すことが可能な形状である。
【0013】
この構成によれば、より効果的に、噴孔出口の外側から空隙部を形成しやすくなる。
【0014】
また、本発明に係る燃料噴射弁において、上流側噴孔の窪み部側壁面を含む仮想平面上、または、上流側噴孔出口の窪み部側端縁を軸として仮想平面を7.5度窪み部側に傾斜させた場合に得られる第2仮想平面上、または、仮想平面と第2仮想平面との間に形成される空間内に、噴孔出口の窪み部側端縁を位置させている。
【0015】
この構成によれば、噴孔出口から噴出される燃料流体と、空隙部の窪み部側の下流側端縁との間に隙間が形成されることを、より有効に防止できる。このため、この隙間を通じて噴孔出口から空気が逆流して窪み部内の圧力が過度に上昇することを防止して、空隙部により噴孔内を流れる燃料流体にキャビテーション気泡を発生させることをより効果的に実現できる。
【0016】
また、本発明に係る燃料噴射弁において、好ましくは、窪み部は、噴孔出口側から上流側噴孔に向かうにしたがって、上流側噴孔を構成する窪み部側壁面を含む仮想平面から離れる方向に傾斜した傾斜壁面を有し、傾斜壁面の下流側端縁は、噴孔出口から噴孔奥側に外れた部分に設けられている。
【0017】
この構成によれば、噴孔出口から噴出される燃料流体と、空隙部の窪み部側の下流側端縁との間に隙間が形成されることを、より有効に防止できる。このため、この隙間を通じて噴孔出口から空気が逆流して窪み部内の圧力が過度に上昇することをより有効に防止できる。
【0018】
また、本発明に係る燃料噴射弁において、好ましくは、窪み部は、空隙部内を流れる燃料噴流に関して両側に一対設けられている。
【0019】
この構成によれば、噴孔内を流れる燃料流体にキャビテーション気泡を発生させることをより効果的に実現できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る燃料噴射弁によれば、過度に製造コストを高くすることなく、噴射された燃料噴霧の微粒化の促進を図れる構造を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施の形態の燃料噴射弁のノズルボディおよびニードルの先端部の概略構成を示す断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1を下側から上側に見た図である。
【図4】図1の下端部の拡大断面図である。
【図5】本発明に係る第2の実施の形態の燃料噴射弁を示す、図2と同様の図である。
【図6】本発明に係る第3の実施の形態の燃料噴射弁を示す、図2と同様の図である。
【図7】本発明に係る第4の実施の形態の燃料噴射弁を示す、図4と同様の図である。
【図8】第4の実施の形態に対する比較例の燃料噴射弁を示す、図4と同様の図である。
【図9】第4の実施の形態の別例の構成を示す、図4と同様の図である。
【図10】本発明の第8の実施の形態の燃料噴射弁を示す、図4と同様の図である。
【図11】本発明の第9の実施の形態の燃料噴射弁を示す、図4と同様の図である。
【図12】本発明の第10の実施の形態の燃料噴射弁を示す、図4と同様の図である。
【図13】本発明の第11の実施の形態の燃料噴射弁を示す、図4と同様の図である。
【図14】本発明の第12の実施の形態の燃料噴射弁を示す、図4と同様の図である。
【図15】従来の燃料噴射弁の1例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1の発明の実施の形態]
以下、本発明を実施するための形態を図面に従って説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態の燃料噴射弁のノズルボディおよびニードルの先端部の概略構成を示す断面図である。図2は、図1のA−A断面図である。図3は、図1を下側から上側に見た図である。図4は、図1の下端部の拡大断面図である。本実施の形態に係る燃料噴射弁は、内開弁形式の燃料噴射弁であり、例えば内燃機関にて用いられるものである。
【0023】
図1、図2に示すように、燃料噴射弁20は、噴孔出口22をスリット状に形成したスリット弁として使用されるもので、ノズルボディ24と、ノズルボディ24に形成された中空部に内挿した弁体であるニードル26とを有する。ニードル26は、ノズルボディ24の内側に軸心方向(図1、図2の上下方向)に沿って移動可能に支持されている。ノズルボディ24の内部である、ノズルボディ24の内周面とニードル26の外周面との間には燃料室28を形成しており、図示しないニードル駆動機構によりニードル26を駆動可能としている。
【0024】
燃料室28には、燃料ポンプ(図示せず)により圧送された燃料を供給可能としている。ニードル駆動機構は、例えば、ソレノイドやピエゾ素子等を用いた電磁アクチュエータにより構成する。ニードル26は、図示しないばねによりノズルボディ24の弁座であるシート部30に付勢されている。例えばニードル駆動機構が駆動されていない場合には、ニードル26は、ばねによりシート部30に押し付けられる。このため、後述する上流側噴孔32の上流側と燃料室28との間が塞がれて閉弁状態となる。一方、ニードル駆動機構が駆動されると、ニードル26がシート部30から離れるため、後述する上流側噴孔32の上流側が燃料室28に通じて、開弁状態となり、燃料室28に供給された燃料が、上流側噴孔32を含む噴孔34を通って、例えば、内燃機関の筒内に噴射される。
【0025】
ノズルボディ24の先端面である下端面は、略部分球面状となっている。また、ノズルボディ24の先端部には、横断面形状が略長方形のスリット状である上流側噴孔32を形成している。上流側噴孔32の入口は、燃料室28側に開口させることにより、燃料室28に供給された燃料が流入するようにしている。また、図2に示すように、上流側噴孔32の長手方向(図2の左右方向)の寸法は、入口側から出口側にかけて(燃料流れの上流側から下流側にかけて)徐々に増大させており、その縦断面形状を、末広がりの略扇形状としている。また、ノズルボディ24の先端部に、上流側噴孔32の下流側に連結した空隙部36を形成している。上流側噴孔32及び空隙部36とにより、噴孔34を構成している。
【0026】
図1に示すように、空隙部36は、上流側噴孔32の下流側(図1の下側)に連結され、かつ、上流側噴孔32から移行する際の流路を急拡大させることにより、噴孔34の内部を流れる燃料にキャビテーション気泡を発生させる。図2、図4に詳しく示すように、空隙部36は、平面状の傾斜壁面38と、奥端面40と、一対の平面状の側壁面42(図2)と、軸心方向壁面44とにより構成している。傾斜壁面38は、噴孔出口22側から上流側噴孔32上流側に向かうにしたがって、上流側噴孔32を構成する横方向片側(図4の右側)の壁面であり、窪み部側壁面である片側壁面46を含む仮想平面P(図4)から離れる方向に傾斜している。奥端面40は、傾斜壁面38の奥端部に連続するように設けられ、断面円弧状に内側に向かって湾曲している。一対の側壁面42は、傾斜壁面38と奥端面40との両側に連結されている。軸心方向壁面44は、一対の側壁面42に連結され、上流側噴孔32を構成する他側壁面48を含む平面上に位置する。図2に示すように、空隙部36の長手方向(図2の左右方向)の寸法は、入口側から出口側にかけて徐々に増大させており、その縦断面形状を、上流側噴孔32と同様に、末広がりの略扇形状としている。
【0027】
また、図3に示すように、噴孔出口22を外側から見た場合の形状は、略長方形の矩形状となっている。噴孔出口22は、上流側噴孔32から供給された燃料を噴射させる。このような燃料噴射弁20は、入口及び噴孔出口22の形状が矩形を湾曲させたような形状のスリット噴孔である噴孔34を有する。
【0028】
また、図1に示すように、空隙部36は、噴孔出口22の外側から空隙部36の奥端側を見た場合に、空隙部36の奥端面40の全部を、図1の矢印α方向に直線的に見通すことが可能な形状としている。なお、図1、図4に示す例では、傾斜壁面38と奥端面40とのなす角度をほぼ直角としているが、この角度は、鈍角としてもよい。また、上流側噴孔32の図1、図4の上下方向の軸心は、ノズルボディ24の軸心と一致させているが、ノズルボディ24の軸心に対して傾斜させてもよい。また、図示の例では、ノズルボディ24の外側面(図1、図2の下側面)を部分球面状としているが、この外側面は平面状とすることもできる。また、空隙部36のうち、傾斜壁面38と奥端面40と、一対の側壁面42のうち、傾斜壁面38及び奥端面40の両端に連結された略三角形の部分とにより、空隙部36の上流側噴孔32から移行する際の流路を急拡大させた側の部分であり、噴孔34の片側(図1、図4の右側)に窪んだ窪み部50を構成している。窪み部50は、空隙部36の内部を流れる燃料噴流の方向(図1のβ方向)の逆方向、すなわち図1の下側から上側に向かう方向に対し傾斜する方向に設けられる。
【0029】
上流側噴孔32の軸心方向に対し、空隙部36の奥端面40と傾斜壁面38とを傾斜させているので、空隙部36の流路断面積は、上流側噴孔32を流れる燃料流体の方向(図1、図4の矢印β方向)に関して上流側から下流側に向かうにしたがって徐々に大きくなった後、徐々に減少する。
【0030】
さらに、図4に示すように、噴孔出口22の幅(図4の左右方向寸法)と、上流側噴孔32の幅(図4の左右方向寸法)とをほぼ同じとしている。すなわち、上流側噴孔32の窪み部50側(図4の右側)である片側壁面46を含む仮想平面P上に噴孔出口22の窪み部50側端縁である、片側(図4の右側)端縁を位置させるとともに、上流側噴孔32の窪み部50と反対側(図4の左側)の他側壁面48と、空隙部36の軸心方向壁面44とを同一の仮想平面上に位置させている。そして、上流側噴孔32から空隙部36内に流入し、空隙部36内を、図4の矢印β方向に下流側に流れる、図4に斜格子で示す燃料噴流が、噴孔出口22の窪み部50側端縁を塞ぎながら(すなわち燃料と噴孔出口22の窪み部50側端縁との間に隙間が生じることを防止しつつ)噴射されるようにしている。また、空隙部36の傾斜壁面38の下流側端縁は、噴孔出口22の端縁に一致させている。また、奥端面40の上流側端縁を通り傾斜壁面38と平行な仮想平面Q上に、噴孔出口22の窪み部50とは反対側の端縁を位置させている。
【0031】
また、図2に示すように、空隙部36の片側(図2の左側)の側壁面42と、この側壁面42と同じ側の上流側噴孔32の長手方向片側(図2の左側)側面とは、ほぼ同一の仮想平面上に位置させている。また、空隙部36の他側(図2の右側)の側壁面42と、この側壁面42と同じ側の上流側噴孔32の長手方向他側(図2の右側)側面とはほぼ同一の仮想平面上に位置させている。
【0032】
このような燃料噴射弁20は、次のように動作する。すなわち、上流側噴孔32の上流側が閉じている閉弁状態では、燃料室28が液相状態の燃料で満たされている。その状態からニードル駆動機構を駆動させて上流側噴孔32の上流側を燃料室28に通じさせると、図4に示すように、燃料室28に供給された、図4に斜格子で示す燃料が上流側噴孔32から下流側に流れる。この際、空隙部36が、上流側噴孔32から移行する際の流路を急拡大させているため、すなわち、上流側噴孔32からその下流側である、空隙部36に移行する際の流路断面積が増大(急拡大)しているので、空隙部36に燃料の飽和蒸気圧以下となる領域ができ、空隙部36の窪み部50内で燃料蒸気が発生する。発生した燃料蒸気は、空隙部36内で液相燃料と混合されて、キャビテーション気泡が混合された燃料流体となって、噴孔出口22から噴出する。すなわち、噴孔34の内部を流れる燃料にキャビテーション気泡を発生させることができ、液相燃料とキャビテーション気泡とが混合された燃料流体が噴孔出口22から噴射される。噴孔出口22から噴射された燃料流体は、キャビテーション崩壊によって微粒化される。このため、本実施の形態によれば、燃料噴霧の微粒化を促進させることができる。
【0033】
しかも、空隙部36は、噴孔出口22側から上流側噴孔32上流側に向かうにしたがって、上流側噴孔32を構成する片側壁面46を含む仮想平面P(図4)から離れる方向に傾斜した傾斜壁面38を有し、内部を流れる燃料噴流の方向の逆方向に対し傾斜する方向に設けられた窪み部50を含む。このため、噴孔出口22の外側から空隙部36を、放電加工や、レーザー加工等によって形成しやすくなる。例えば、放電加工に使用する放電電極の先端部を、形成すべき空隙部36の形状に対応した扁平扇形状とし、噴孔出口22の外側面から上流側噴孔32の軸心方向に対し放電電極の先端部を傾斜させノズルボディ24に加工することにより空隙部36を形成できる。このため、噴孔34を構成する要素を複数の部材に形成して、その後に複数の部材を接合するという作業を行う必要がなくなり、加工コストを大幅に削減できる。これとともに、後工程での長時間を要する検査を必要とすることなく、信頼性の高い製品を得ることができる。この結果、燃料噴射弁20によれば、過度に製造コストを高くすることなく、噴射された燃料噴霧の微粒化の促進を図れる構造を実現できる。
【0034】
また、空隙部36は、噴孔出口22の外側から空隙部36の奥端側を見た場合に、空隙部36の奥端面40の全部を直線的に見通すことが可能な形状としているので、より効果的に、噴孔出口22の外側から空隙部36を形成しやすくなる。
【0035】
また、上流側噴孔32において、空隙部36の上流側噴孔32から移行する際の流路が拡大する側である、窪み部50側の片側壁面46を含む仮想平面P上に、噴孔出口22の窪み部50側端縁である片側端縁を位置させている。このため、噴孔出口22から噴出される燃料流体と、空隙部36の窪み部50側の下流側端縁である、噴孔出口22の窪み部50側端縁との間に隙間が形成されることを、より有効に防止できる。したがって、この隙間を通じて噴孔出口22から空気が逆流して窪み部50内の圧力が過度に上昇することを防止して、空隙部36により噴孔34内を流れる燃料流体にキャビテーション気泡を発生させることをより効果的に実現できる。
【0036】
[第2の発明の実施の形態]
図5は、本発明に係る第2の実施の形態の燃料噴射弁を示す、図2と同様の図である。上記の図2に示した第1の実施の形態の場合には、空隙部36の両側の側壁面42と、それぞれの側壁面42と同じ側の上流側噴孔32の長手方向側壁面とをほぼ同一の仮想平面上に位置させていた。これに対して、本実施の形態の場合には、図5に示すように、空隙部36の両側の側壁面42を、それぞれの側壁面42と同じ側の上流側噴孔32の長手方向側壁面よりも外側(図5の左右方向両側)にずらせて、図5に示す空隙部36の横断面形状を、上記の第1の実施の形態の場合よりも大きくしている。このような本実施の形態の場合も、上記の第1の実施の形態と同様に、過度に製造コストを高くすることなく、噴射された燃料噴霧の微粒化の促進を図れる構造を実現できる。その他の構成及び作用は、上記の第1の実施の形態と同様である。
【0037】
[第3の発明の実施の形態]
図6は、本発明に係る第3の実施の形態の燃料噴射弁を示す、図2と同様の図である。上記の図2に示した第1の実施の形態の場合には、空隙部36の入口端縁と、空隙部36の奥端面40の下流側端縁とを、それぞれ断面円弧形の仮想曲面上に位置させていた。これに対して、本実施の形態の場合には、空隙部36の入口端縁と、空隙部36の奥端面40の下流側端縁(傾斜壁面38の上流側端縁)とを、それぞれ噴孔34の軸心方向に対し直交する仮想平面上に位置させている。このような本実施の形態の場合も、上記の第1の実施の形態と同様に、過度に製造コストを高くすることなく、噴射された燃料噴霧の微粒化の促進を図れる構造を実現できる。その他の構成及び作用は、上記の第1の実施の形態と同様である。
【0038】
[第4の発明の実施の形態]
図7は、本発明に係る第4の実施の形態の燃料噴射弁を示す、図4と同様の図である。本実施の形態では、上記の各実施の形態の場合と異なり、ノズルボディ24の先端面(図7の下端面を平坦面としている。ただし、本実施の形態は、先端面を平坦面とする場合に限定せず、上記の各実施の形態と同様に略部分球面状とすることもできる(図9から図14で説明する後述する実施の形態で同じ)。また、上記の図4に示した第1の実施の形態では、上流側噴孔32の幅(図4の左右方向寸法)と、噴孔出口22の幅(図4の左右方向寸法)とをほぼ同じとしていたのに対して、本実施の形態では、噴孔出口22の幅(図7の左右方向寸法)を、上流側噴孔32の幅(図7の左右方向寸法)よりも大きくしている。すなわち、ノズルボディ24において、空隙部36aの下流側部分の窪み部50と反対側(図7の左側)部分に、上流側噴孔32の軸心方向に対し傾斜させた第2傾斜壁面52を設けている。第2傾斜壁面52は、傾斜壁面38と平行で、奥端面40の上流側端縁を通る仮想平面Q上に位置させている。このため、噴孔34内を上流側から下流側に流れる燃料噴流と、噴孔34下流側の窪み部50と反対側部分との間には隙間54が形成される。
【0039】
本実施の形態の燃料噴射弁20はこのように構成するため、噴孔出口22からの燃料噴射時に隙間54部分に外側から空気が逆流する可能性がある。ただし、隙間54は、噴孔内を流れる流体に関して窪み部50と反対側に形成しているので、燃料噴射時に隙間54に入り込んだ空気が窪み部50に入り込むことがない。このため、上記の各実施の形態と同様に、空隙部36の存在により燃料流体にキャビテーション気泡を発生させることができ、噴射された燃料噴霧の微粒化の促進を図れる。
【0040】
図8は、本実施の形態に対する比較のための比較例の燃料噴射弁を示す、図4と同様の図である。図8に示す比較例では、本実施の形態の場合と異なり、上流側噴孔32の窪み部50側(図8の右側)の片側壁面46を含む仮想平面P´が、空隙部36の傾斜壁面38と、噴孔出口22の窪み部50側端縁とのいずれにも接触せず、噴孔出口22の窪み部50側端縁と、仮想平面Pとの間に大きな隙間c1が形成される。このような比較例の場合には、隙間c1が過大になると、図8に示すように、噴孔34内を流れる燃料噴流と、噴孔出口22の窪み部50側端縁との間に隙間c1が形成され、燃料噴射時にこの隙間c1を通じて噴孔出口22から空気が窪み部50に逆流する可能性がある。このように空気が逆流した場合には、窪み部50内の圧力が過度に上昇して、空隙部36により噴孔34内を流れる燃料にキャビテーション気泡を発生させることが難しくなり、噴射された燃料噴霧の微粒化の促進を有効に図ることが難しくなる。
【0041】
本実施の形態を含め、上記の各実施の形態の場合には、上流側噴孔32の窪み部50側(例えば図4、図7の右側)の片側壁面46を含む仮想平面P上に、噴孔出口22の窪み部50側(図4、図7の右側)端縁を位置させている。このため、上記の窪み部50側の隙間c1(図8参照)が形成されず、このような不都合が生じることがない。このように、本発明においては、上流側噴孔32の窪み部50側の壁面を含む仮想平面上に、噴孔出口22の窪み部50側端縁をほぼ位置させることが好ましい。図7に示す本実施の形態において、その他の構成及び作用は、上記の図1から図4に示した第1の実施の形態と同様であるため、重複する説明を省略する。
【0042】
図9は、本実施の形態の別例の構成を示す、図4と同様の図である。上記の図4、図7、図8では、略示的に上流側噴孔32から流出され、空隙部36を通って噴孔出口22から噴射される燃料流体の噴射広がり角を0度として示している。ただし、図9に示すように、燃料噴射弁20の実際の燃料噴射時には、噴孔出口22から噴射される燃料流体はある噴射広がり角θを持っている。また、上流側噴孔32から噴孔34下流側部分に噴射される燃料流体も、噴孔出口22側の壁面で制限されない限り、実際には、ある噴射広がり角θを持っている。例えば、直噴ガソリンエンジンに使用される燃料噴射弁が、扁平な扇状のスリット状の噴孔を有する場合に、噴孔出口から流出される噴霧角は、15度程度である。このため、本発明者は、本実施の形態の別例の構成において、噴孔出口22における噴霧外周部が、噴孔出口22の窪み部50側端縁(図9の右端縁)と一致するようにすれば、窪み部50側への空気の逆流を防止でき、燃料流体にキャビテーション気泡を発生させることができ、噴射された燃料噴霧の微粒化の促進を図れると考えた。
【0043】
このような事情から考えた、図9に示す本実施の形態の別例では、上流側噴孔32において、空隙部36の窪み部50側の片側壁面46を含む仮想平面Pに対して、上流側噴孔32出口の片側壁面46側である、窪み部50側端縁Xを軸として仮想平面Pを7.5度窪み部50側に傾斜させた場合に得られる第2仮想平面R上に、噴孔出口22の窪み部50側端縁を位置させている。このため、図9に示すように、噴孔34内を流れる燃料噴流と噴孔出口22の窪み部50側端縁との間に隙間が生じることをより有効に防止できる。
【0044】
なお、本実施の形態の別例において、上流側噴孔32出口の片側壁面46側である、窪み部50側端縁Xを軸として仮想平面Pを7.5度、窪み部50側に傾斜させた場合に得られる第2仮想平面Rと、仮想平面Pとの間に形成されるくさび状の空間内に、噴孔出口22の窪み部50側端縁を位置させることもできる。この場合も、噴孔34内を流れる燃料流体と噴孔出口22の窪み部50側端縁との間に隙間が生じることをより有効に防止できる。
【0045】
[第8の発明の実施の形態]
図10は、本発明の第8の実施の形態の燃料噴射弁を示す、図4と同様の図である。本実施の形態の場合には、上記の図7に示した第4の実施の形態において、空隙部36を構成する傾斜壁面38の下流側端縁を、噴孔出口22から噴孔34奥側(図10の上側)にδだけ外れた部分に設けている。すなわち、空隙部36の片側(図10の右側)の壁面を、奥端面40と、傾斜壁面38と、傾斜壁面38の下流側に連続する軸心方向壁面56とにより構成している。軸心方向壁面56は、上流側噴孔32の片側壁面46を含む仮想平面P上に位置している。
【0046】
このような本実施の形態によれば、噴孔出口22から噴出される燃料流体と、空隙部36の上流側噴孔32から移行する際の流路を急拡大させた側である、窪み部50側の下流側端縁との間に隙間が形成されることを、より有効に防止できる。このため、この隙間を通じて噴孔出口22から空気が逆流して窪み部50内の圧力が過度に上昇することをより有効に防止できる。その他の構成及び作用は、上記の図7に示した第4の実施の形態と同様である。
【0047】
[第9の発明の実施の形態]
図11は、本発明の第9の実施の形態の燃料噴射弁を示す、図4と同様の図である。本実施の形態では、上記の図7に示した第4の実施の形態において、空隙部36を構成する奥端面40aを、ノズルボディ24の軸心方向(図11の上下方向)に対し直交する仮想平面上に位置させるとともに、奥端面40aと傾斜壁面38とのなす角度を鋭角としている。また、傾斜壁面38と第2傾斜壁面52とを平行に設けている。このような本実施の形態の場合には、空隙部36の断面形状が略平行四辺形となる。このような燃料噴射弁20において、ノズルボディ24に空隙部36を形成する場合には、上記の各実施の形態の場合に対して、例えば、放電加工を行うための放電電極(図示せず)の先端部の形状を異ならせる。例えば、放電電極として、先端面を、形成すべき奥端面40aの形状に対応して放電電極の軸方向に対し傾斜させたものを使用する。その他の構成及び作用は、上記の図7に示した第4の実施の形態の場合と同様である。
【0048】
[第10の発明の実施の形態]
図12は、本発明の第10の実施の形態の燃料噴射弁を示す、図4と同様の図である。本実施の形態では、上記の図7に示した第4の実施の形態において、空隙部36を構成する奥端面40bを、断面円弧状に湾曲させた曲面としている。このような燃料噴射弁20において、ノズルボディ24に空隙部36を形成する場合には、上記の第4の実施の形態の場合に対して、例えば、放電加工を行うための放電電極(図示せず)の先端部の形状を異ならせる。例えば、放電電極として、先端面に、形成すべき奥端面40bの形状に対応して曲面部を形成したものを使用する。その他の構成及び作用は、上記の図7に示した第4の実施の形態の場合と同様である。
【0049】
[第11の発明の実施の形態]
図13は、本発明の第11の実施の形態の燃料噴射弁を示す、図4と同様の図である。本実施の形態では、上記の図1から図4に示した第1の実施の形態において、空隙部36において、窪み部50,50aを、空隙部36内を流れる燃料噴流に関して両側に一対設けている。このために、上記の第1の実施の形態の構成において、片側(図13の右側)の窪み部50と、上流側噴孔32から噴孔出口22に向かう燃料噴流に関して他側(図13の左側)にも、他側の窪み部50aを、片側の窪み部50と対称形状に設けている。他側の窪み部50aも、噴孔出口22側から上流側噴孔32上流側に向かうにしたがって、上流側噴孔32を構成する他側壁面48を含む仮想平面Sから離れる方向に傾斜した平面状の傾斜壁面38aと、傾斜壁面38の奥端部に連続するように設けられ、断面円弧状に内側に向かって湾曲した奥端面40cとを含み、両側の窪み部50,50aの両端に設けた一対の側壁面を、両側の窪み部50同士でそれぞれ同一の仮想平面上に位置させている。また、他側の窪み部50aの傾斜壁面38aの下流側端縁は、噴孔出口22端縁に一致させるとともに、他側の窪み部50aの奥端面40cの、上流側端縁を通り傾斜壁面38と平行な仮想平面上に、噴孔出口22の他側の窪み部50aとは反対側の端縁、すなわち窪み部50側の端縁を位置させている。
【0050】
このような本実施の形態によれば、噴孔34を流れる燃料流体に窪み部50,50aによる空間が両側に形成されるので、噴孔34内を流れる燃料流体にキャビテーション気泡を発生させることをより効果的に実現できる。この場合、キャビテーション気泡は、噴孔34を流れる液相燃料に対して図13の左右から混合される。このため、液相燃料とキャビテーション気泡との混合がより促進される。その他の構成及び作用は、上記の図1から図4に示した第1の実施の形態と同様である。
【0051】
[第12の発明の実施の形態]
図14は、本発明の第12の実施の形態の燃料噴射弁を示す、図4と同様の図である。本実施の形態の場合には、上記の図13に示した第11の実施の形態に設けていた、両側の窪み部50,50aの形状を異ならせている。すなわち、奥端面40b,40dを曲面部とする窪み部50,50aを、噴孔34内を流れる燃料流体の流れに関して両側に対称形状に一対設けている。このような本実施の形態の場合も、噴孔34内を流れる燃料流体にキャビテーション気泡を発生させることをより効果的に実現できる。その他の構成及び作用は、上記の図13に示した第11の実施の形態と同様であるため、重複する説明を省略する。
【0052】
なお、上記の各実施の形態では、噴孔34入口及び噴孔出口22の形状が矩形を湾曲させたような形状のスリット噴孔を有する燃料噴射弁20に本発明を適用した場合について説明した。ただし、本発明は、このような構成に限定するものではなく、噴孔形状として種々の形状を採用でき、噴孔の縦断面形状も扇形ではなく矩形状等とすることもできる。また、噴孔入口及び噴孔出口の少なくとも一方の形状が円形である円噴孔を有する燃料噴射弁においても本発明を適用できる。
【0053】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0054】
10 燃料噴射弁、12 上流側噴孔、14 下流側噴孔、16 空隙部、18 噴孔、20 燃料噴射弁、22 噴孔出口、24 ノズルボディ、26 ニードル、28 燃料室、30 シート部、32 上流側噴孔、34 噴孔、36,36a 空隙部、38,38a 傾斜壁面、40,40a,40b,40c 奥端面、42 側壁面、44 軸心方向壁面、46 片側壁面、48 他側壁面、50,50a 窪み部、52 第2傾斜壁面、54 隙間、56 軸心方向壁面。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルボディ内部の燃料室に供給された燃料が噴孔を通って噴孔出口から噴射される燃料噴射弁に関し、特に、噴射弁内部を流れる燃料にキャビテーション気泡を発生させる燃料噴射弁に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料噴霧の微粒化を促進させるために、噴射弁内部を流れる燃料にキャビテーション気泡を発生させる燃料噴射弁が提案されており、その従来例が下記特許文献1及び非特許文献1に開示されている。特許文献1の図19等に記載された燃料噴射弁は、ノズルボディの先端部に円筒形状の中空部が形成されたプレートが取り付けられており、ニードル先端の突起部をプレートの中空部に通すことで形成される環状隙間により、キャビテーション気泡を保持するための気泡保持流路を形成している。また、突起部とノズルボディとの間に形成される環状隙間により、燃料にキャビテーション気泡を発生させるためのキャビテーション発生流路を形成している。燃料噴射弁は、キャビテーション発生流路からその下流側流路である、気泡保持流路に移行する際の流路断面積を急拡大させている。また、気泡保持流路を有するプレートに、複数の噴孔を形成したプレートを取り付け、複数のスリット状または円状の噴孔の上流側を気泡保持流路と連通させている。気泡保持流路の燃料液体とキャビテーション気泡とは混合されて噴孔へ導入され、気液混合状態の燃料が噴孔から噴射される。特許文献1の燃料噴射弁においては、噴射後の燃料噴流の全域においてキャビテーション崩壊による燃料噴霧の微粒化促進作用を効果的に得られ、噴射された燃料噴霧の微粒化をより促進させることができるとされている。
【0003】
図15は、非特許文献1に記載された従来の燃料噴射弁の1例の断面図である。燃料噴射弁10は、上流側噴孔12と下流側噴孔14との間に空隙部16を設けた噴孔18を備える。上流側噴孔12にて発生したキャビテーション気泡は、空隙部16にて燃料流れの減衰及び圧力回復が起こることで崩壊する。さらに、噴孔18内部に図示しない凸型のピンを設けることで、下流側噴孔14においてもキャビテーション気泡が崩壊する。このキャビテーション気泡の崩壊によって噴孔18内の燃料流れに乱れを与えることで、燃料噴霧の微粒化の促進を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−177174号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】N.Tamaki他,"Atomization Enhancement of the Spray and Improvement of the Spray Characteristics by Cavitation and Pin Inserted in the Nozzle Hole",ICLASS 2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ただし、上記の図15に示した従来の燃料噴射弁10の場合、単一の部材に空隙部16を含む噴孔18を一体に形成することが困難である。すなわち、空隙部16の直径は、両側の上流側噴孔12及び下流側噴孔14の直径よりも大きいので、例えば、空隙部16を設けるために、上流側噴孔12及び空隙部16と、下流側噴孔14とを、それぞれ別の2個等の複数の部材に加工して、形成する必要がある。しかも、複数の部材に噴孔12,14や空隙部16を加工した後に、電子ビーム溶接等により複数の部材同士を接合する必要が生じる。このため、加工コストが高くなる要因となる。また、複数の部材を接合する際に位置決め精度を高精度に確保する必要や、複数の部材の接合部でのピンホールの発生を防止する必要があり、製品の信頼性を高く確保するために、後工程で長時間を要する検査が必要になる。このため、燃料噴射弁10の製造コストが過度に高くなる要因となる。
【0007】
また、特許文献1に記載された燃料噴射弁の場合、流路断面積の大きい気泡保持流路の流れ方向の上流側と下流側との両側に流路断面積の小さいキャビテーション発生流路と噴孔とを連結するため、ノズルボディに2個のプレートを取り付けている。このため、空隙部に対応する気泡保持流路を形成するためのプレートの少なくとも片側にノズルボディ、別のプレート等の別部材を接合する必要がある。したがって、上記の非特許文献1に記載された構成の場合と同様に、燃料噴射弁の製造コストが高くなる可能性がある。
【0008】
本発明は、燃料噴射弁において、過度に製造コストを高くすることなく、噴射された燃料噴霧の微粒化の促進を図れる構造を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る燃料噴射弁は、ノズルボディ内部の燃料室に供給された燃料が噴孔を通って噴孔出口から噴射される燃料噴射弁であって、噴孔は、燃料室に供給された燃料が流入する上流側噴孔と、上流側噴孔の下流側に連結され、かつ、上流側噴孔から移行する際の流路を急拡大させることにより、噴孔の内部を流れる燃料にキャビテーション気泡を発生させる空隙部と、を備え、空隙部は、内部を流れる燃料噴流の方向の逆方向に対し傾斜する方向に設けられた窪み部を含むことを特徴とする燃料噴射弁である。
なお、空隙部内部を流れる燃料噴流とは、空隙部内部を流れる、液相または気液混合相の燃料流体をいう(本明細書全体及び特許請求の範囲で同じ)。
【0010】
本発明によれば、空隙部が、上流側噴孔から移行する際の流路を急拡大させることにより、上流側噴孔の出口から流出し、噴孔の内部を流れる燃料にキャビテーション気泡を発生させることができ、液相燃料とキャビテーション気泡とが混合された燃料流体が噴孔出口から噴射される。噴孔出口から噴射された燃料流体は、キャビテーション崩壊によって微粒化される。このため、燃料噴霧の微粒化を促進させることができる。しかも、空隙部は、内部を流れる燃料噴流の方向の逆方向に対し傾斜する方向に設けられた窪み部を含むため、噴孔出口の外側から空隙部を、放電加工や、レーザー加工等によって形成しやすくなる。このため、噴孔を構成する要素を複数の部材に形成して、その後に複数の部材を接合するという作業を行う必要がなくなり、加工コストを大幅に削減できるとともに、後工程での長時間を要する検査を必要とすることなく、信頼性の高い製品を得ることができる。
【0011】
また、本発明に係る燃料噴射弁において、好ましくは、窪み部は、噴孔出口側から上流側噴孔に向かうにしたがって、上流側噴孔を構成する窪み部側壁面を含む仮想平面から離れる方向に傾斜した傾斜壁面を有する。
【0012】
また、本発明に係る燃料噴射弁において、好ましくは、空隙部は、噴孔出口の外側から空隙部の奥端側を見た場合に、空隙部の奥端面の全部を直線的に見通すことが可能な形状である。
【0013】
この構成によれば、より効果的に、噴孔出口の外側から空隙部を形成しやすくなる。
【0014】
また、本発明に係る燃料噴射弁において、上流側噴孔の窪み部側壁面を含む仮想平面上、または、上流側噴孔出口の窪み部側端縁を軸として仮想平面を7.5度窪み部側に傾斜させた場合に得られる第2仮想平面上、または、仮想平面と第2仮想平面との間に形成される空間内に、噴孔出口の窪み部側端縁を位置させている。
【0015】
この構成によれば、噴孔出口から噴出される燃料流体と、空隙部の窪み部側の下流側端縁との間に隙間が形成されることを、より有効に防止できる。このため、この隙間を通じて噴孔出口から空気が逆流して窪み部内の圧力が過度に上昇することを防止して、空隙部により噴孔内を流れる燃料流体にキャビテーション気泡を発生させることをより効果的に実現できる。
【0016】
また、本発明に係る燃料噴射弁において、好ましくは、窪み部は、噴孔出口側から上流側噴孔に向かうにしたがって、上流側噴孔を構成する窪み部側壁面を含む仮想平面から離れる方向に傾斜した傾斜壁面を有し、傾斜壁面の下流側端縁は、噴孔出口から噴孔奥側に外れた部分に設けられている。
【0017】
この構成によれば、噴孔出口から噴出される燃料流体と、空隙部の窪み部側の下流側端縁との間に隙間が形成されることを、より有効に防止できる。このため、この隙間を通じて噴孔出口から空気が逆流して窪み部内の圧力が過度に上昇することをより有効に防止できる。
【0018】
また、本発明に係る燃料噴射弁において、好ましくは、窪み部は、空隙部内を流れる燃料噴流に関して両側に一対設けられている。
【0019】
この構成によれば、噴孔内を流れる燃料流体にキャビテーション気泡を発生させることをより効果的に実現できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る燃料噴射弁によれば、過度に製造コストを高くすることなく、噴射された燃料噴霧の微粒化の促進を図れる構造を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施の形態の燃料噴射弁のノズルボディおよびニードルの先端部の概略構成を示す断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1を下側から上側に見た図である。
【図4】図1の下端部の拡大断面図である。
【図5】本発明に係る第2の実施の形態の燃料噴射弁を示す、図2と同様の図である。
【図6】本発明に係る第3の実施の形態の燃料噴射弁を示す、図2と同様の図である。
【図7】本発明に係る第4の実施の形態の燃料噴射弁を示す、図4と同様の図である。
【図8】第4の実施の形態に対する比較例の燃料噴射弁を示す、図4と同様の図である。
【図9】第4の実施の形態の別例の構成を示す、図4と同様の図である。
【図10】本発明の第8の実施の形態の燃料噴射弁を示す、図4と同様の図である。
【図11】本発明の第9の実施の形態の燃料噴射弁を示す、図4と同様の図である。
【図12】本発明の第10の実施の形態の燃料噴射弁を示す、図4と同様の図である。
【図13】本発明の第11の実施の形態の燃料噴射弁を示す、図4と同様の図である。
【図14】本発明の第12の実施の形態の燃料噴射弁を示す、図4と同様の図である。
【図15】従来の燃料噴射弁の1例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1の発明の実施の形態]
以下、本発明を実施するための形態を図面に従って説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態の燃料噴射弁のノズルボディおよびニードルの先端部の概略構成を示す断面図である。図2は、図1のA−A断面図である。図3は、図1を下側から上側に見た図である。図4は、図1の下端部の拡大断面図である。本実施の形態に係る燃料噴射弁は、内開弁形式の燃料噴射弁であり、例えば内燃機関にて用いられるものである。
【0023】
図1、図2に示すように、燃料噴射弁20は、噴孔出口22をスリット状に形成したスリット弁として使用されるもので、ノズルボディ24と、ノズルボディ24に形成された中空部に内挿した弁体であるニードル26とを有する。ニードル26は、ノズルボディ24の内側に軸心方向(図1、図2の上下方向)に沿って移動可能に支持されている。ノズルボディ24の内部である、ノズルボディ24の内周面とニードル26の外周面との間には燃料室28を形成しており、図示しないニードル駆動機構によりニードル26を駆動可能としている。
【0024】
燃料室28には、燃料ポンプ(図示せず)により圧送された燃料を供給可能としている。ニードル駆動機構は、例えば、ソレノイドやピエゾ素子等を用いた電磁アクチュエータにより構成する。ニードル26は、図示しないばねによりノズルボディ24の弁座であるシート部30に付勢されている。例えばニードル駆動機構が駆動されていない場合には、ニードル26は、ばねによりシート部30に押し付けられる。このため、後述する上流側噴孔32の上流側と燃料室28との間が塞がれて閉弁状態となる。一方、ニードル駆動機構が駆動されると、ニードル26がシート部30から離れるため、後述する上流側噴孔32の上流側が燃料室28に通じて、開弁状態となり、燃料室28に供給された燃料が、上流側噴孔32を含む噴孔34を通って、例えば、内燃機関の筒内に噴射される。
【0025】
ノズルボディ24の先端面である下端面は、略部分球面状となっている。また、ノズルボディ24の先端部には、横断面形状が略長方形のスリット状である上流側噴孔32を形成している。上流側噴孔32の入口は、燃料室28側に開口させることにより、燃料室28に供給された燃料が流入するようにしている。また、図2に示すように、上流側噴孔32の長手方向(図2の左右方向)の寸法は、入口側から出口側にかけて(燃料流れの上流側から下流側にかけて)徐々に増大させており、その縦断面形状を、末広がりの略扇形状としている。また、ノズルボディ24の先端部に、上流側噴孔32の下流側に連結した空隙部36を形成している。上流側噴孔32及び空隙部36とにより、噴孔34を構成している。
【0026】
図1に示すように、空隙部36は、上流側噴孔32の下流側(図1の下側)に連結され、かつ、上流側噴孔32から移行する際の流路を急拡大させることにより、噴孔34の内部を流れる燃料にキャビテーション気泡を発生させる。図2、図4に詳しく示すように、空隙部36は、平面状の傾斜壁面38と、奥端面40と、一対の平面状の側壁面42(図2)と、軸心方向壁面44とにより構成している。傾斜壁面38は、噴孔出口22側から上流側噴孔32上流側に向かうにしたがって、上流側噴孔32を構成する横方向片側(図4の右側)の壁面であり、窪み部側壁面である片側壁面46を含む仮想平面P(図4)から離れる方向に傾斜している。奥端面40は、傾斜壁面38の奥端部に連続するように設けられ、断面円弧状に内側に向かって湾曲している。一対の側壁面42は、傾斜壁面38と奥端面40との両側に連結されている。軸心方向壁面44は、一対の側壁面42に連結され、上流側噴孔32を構成する他側壁面48を含む平面上に位置する。図2に示すように、空隙部36の長手方向(図2の左右方向)の寸法は、入口側から出口側にかけて徐々に増大させており、その縦断面形状を、上流側噴孔32と同様に、末広がりの略扇形状としている。
【0027】
また、図3に示すように、噴孔出口22を外側から見た場合の形状は、略長方形の矩形状となっている。噴孔出口22は、上流側噴孔32から供給された燃料を噴射させる。このような燃料噴射弁20は、入口及び噴孔出口22の形状が矩形を湾曲させたような形状のスリット噴孔である噴孔34を有する。
【0028】
また、図1に示すように、空隙部36は、噴孔出口22の外側から空隙部36の奥端側を見た場合に、空隙部36の奥端面40の全部を、図1の矢印α方向に直線的に見通すことが可能な形状としている。なお、図1、図4に示す例では、傾斜壁面38と奥端面40とのなす角度をほぼ直角としているが、この角度は、鈍角としてもよい。また、上流側噴孔32の図1、図4の上下方向の軸心は、ノズルボディ24の軸心と一致させているが、ノズルボディ24の軸心に対して傾斜させてもよい。また、図示の例では、ノズルボディ24の外側面(図1、図2の下側面)を部分球面状としているが、この外側面は平面状とすることもできる。また、空隙部36のうち、傾斜壁面38と奥端面40と、一対の側壁面42のうち、傾斜壁面38及び奥端面40の両端に連結された略三角形の部分とにより、空隙部36の上流側噴孔32から移行する際の流路を急拡大させた側の部分であり、噴孔34の片側(図1、図4の右側)に窪んだ窪み部50を構成している。窪み部50は、空隙部36の内部を流れる燃料噴流の方向(図1のβ方向)の逆方向、すなわち図1の下側から上側に向かう方向に対し傾斜する方向に設けられる。
【0029】
上流側噴孔32の軸心方向に対し、空隙部36の奥端面40と傾斜壁面38とを傾斜させているので、空隙部36の流路断面積は、上流側噴孔32を流れる燃料流体の方向(図1、図4の矢印β方向)に関して上流側から下流側に向かうにしたがって徐々に大きくなった後、徐々に減少する。
【0030】
さらに、図4に示すように、噴孔出口22の幅(図4の左右方向寸法)と、上流側噴孔32の幅(図4の左右方向寸法)とをほぼ同じとしている。すなわち、上流側噴孔32の窪み部50側(図4の右側)である片側壁面46を含む仮想平面P上に噴孔出口22の窪み部50側端縁である、片側(図4の右側)端縁を位置させるとともに、上流側噴孔32の窪み部50と反対側(図4の左側)の他側壁面48と、空隙部36の軸心方向壁面44とを同一の仮想平面上に位置させている。そして、上流側噴孔32から空隙部36内に流入し、空隙部36内を、図4の矢印β方向に下流側に流れる、図4に斜格子で示す燃料噴流が、噴孔出口22の窪み部50側端縁を塞ぎながら(すなわち燃料と噴孔出口22の窪み部50側端縁との間に隙間が生じることを防止しつつ)噴射されるようにしている。また、空隙部36の傾斜壁面38の下流側端縁は、噴孔出口22の端縁に一致させている。また、奥端面40の上流側端縁を通り傾斜壁面38と平行な仮想平面Q上に、噴孔出口22の窪み部50とは反対側の端縁を位置させている。
【0031】
また、図2に示すように、空隙部36の片側(図2の左側)の側壁面42と、この側壁面42と同じ側の上流側噴孔32の長手方向片側(図2の左側)側面とは、ほぼ同一の仮想平面上に位置させている。また、空隙部36の他側(図2の右側)の側壁面42と、この側壁面42と同じ側の上流側噴孔32の長手方向他側(図2の右側)側面とはほぼ同一の仮想平面上に位置させている。
【0032】
このような燃料噴射弁20は、次のように動作する。すなわち、上流側噴孔32の上流側が閉じている閉弁状態では、燃料室28が液相状態の燃料で満たされている。その状態からニードル駆動機構を駆動させて上流側噴孔32の上流側を燃料室28に通じさせると、図4に示すように、燃料室28に供給された、図4に斜格子で示す燃料が上流側噴孔32から下流側に流れる。この際、空隙部36が、上流側噴孔32から移行する際の流路を急拡大させているため、すなわち、上流側噴孔32からその下流側である、空隙部36に移行する際の流路断面積が増大(急拡大)しているので、空隙部36に燃料の飽和蒸気圧以下となる領域ができ、空隙部36の窪み部50内で燃料蒸気が発生する。発生した燃料蒸気は、空隙部36内で液相燃料と混合されて、キャビテーション気泡が混合された燃料流体となって、噴孔出口22から噴出する。すなわち、噴孔34の内部を流れる燃料にキャビテーション気泡を発生させることができ、液相燃料とキャビテーション気泡とが混合された燃料流体が噴孔出口22から噴射される。噴孔出口22から噴射された燃料流体は、キャビテーション崩壊によって微粒化される。このため、本実施の形態によれば、燃料噴霧の微粒化を促進させることができる。
【0033】
しかも、空隙部36は、噴孔出口22側から上流側噴孔32上流側に向かうにしたがって、上流側噴孔32を構成する片側壁面46を含む仮想平面P(図4)から離れる方向に傾斜した傾斜壁面38を有し、内部を流れる燃料噴流の方向の逆方向に対し傾斜する方向に設けられた窪み部50を含む。このため、噴孔出口22の外側から空隙部36を、放電加工や、レーザー加工等によって形成しやすくなる。例えば、放電加工に使用する放電電極の先端部を、形成すべき空隙部36の形状に対応した扁平扇形状とし、噴孔出口22の外側面から上流側噴孔32の軸心方向に対し放電電極の先端部を傾斜させノズルボディ24に加工することにより空隙部36を形成できる。このため、噴孔34を構成する要素を複数の部材に形成して、その後に複数の部材を接合するという作業を行う必要がなくなり、加工コストを大幅に削減できる。これとともに、後工程での長時間を要する検査を必要とすることなく、信頼性の高い製品を得ることができる。この結果、燃料噴射弁20によれば、過度に製造コストを高くすることなく、噴射された燃料噴霧の微粒化の促進を図れる構造を実現できる。
【0034】
また、空隙部36は、噴孔出口22の外側から空隙部36の奥端側を見た場合に、空隙部36の奥端面40の全部を直線的に見通すことが可能な形状としているので、より効果的に、噴孔出口22の外側から空隙部36を形成しやすくなる。
【0035】
また、上流側噴孔32において、空隙部36の上流側噴孔32から移行する際の流路が拡大する側である、窪み部50側の片側壁面46を含む仮想平面P上に、噴孔出口22の窪み部50側端縁である片側端縁を位置させている。このため、噴孔出口22から噴出される燃料流体と、空隙部36の窪み部50側の下流側端縁である、噴孔出口22の窪み部50側端縁との間に隙間が形成されることを、より有効に防止できる。したがって、この隙間を通じて噴孔出口22から空気が逆流して窪み部50内の圧力が過度に上昇することを防止して、空隙部36により噴孔34内を流れる燃料流体にキャビテーション気泡を発生させることをより効果的に実現できる。
【0036】
[第2の発明の実施の形態]
図5は、本発明に係る第2の実施の形態の燃料噴射弁を示す、図2と同様の図である。上記の図2に示した第1の実施の形態の場合には、空隙部36の両側の側壁面42と、それぞれの側壁面42と同じ側の上流側噴孔32の長手方向側壁面とをほぼ同一の仮想平面上に位置させていた。これに対して、本実施の形態の場合には、図5に示すように、空隙部36の両側の側壁面42を、それぞれの側壁面42と同じ側の上流側噴孔32の長手方向側壁面よりも外側(図5の左右方向両側)にずらせて、図5に示す空隙部36の横断面形状を、上記の第1の実施の形態の場合よりも大きくしている。このような本実施の形態の場合も、上記の第1の実施の形態と同様に、過度に製造コストを高くすることなく、噴射された燃料噴霧の微粒化の促進を図れる構造を実現できる。その他の構成及び作用は、上記の第1の実施の形態と同様である。
【0037】
[第3の発明の実施の形態]
図6は、本発明に係る第3の実施の形態の燃料噴射弁を示す、図2と同様の図である。上記の図2に示した第1の実施の形態の場合には、空隙部36の入口端縁と、空隙部36の奥端面40の下流側端縁とを、それぞれ断面円弧形の仮想曲面上に位置させていた。これに対して、本実施の形態の場合には、空隙部36の入口端縁と、空隙部36の奥端面40の下流側端縁(傾斜壁面38の上流側端縁)とを、それぞれ噴孔34の軸心方向に対し直交する仮想平面上に位置させている。このような本実施の形態の場合も、上記の第1の実施の形態と同様に、過度に製造コストを高くすることなく、噴射された燃料噴霧の微粒化の促進を図れる構造を実現できる。その他の構成及び作用は、上記の第1の実施の形態と同様である。
【0038】
[第4の発明の実施の形態]
図7は、本発明に係る第4の実施の形態の燃料噴射弁を示す、図4と同様の図である。本実施の形態では、上記の各実施の形態の場合と異なり、ノズルボディ24の先端面(図7の下端面を平坦面としている。ただし、本実施の形態は、先端面を平坦面とする場合に限定せず、上記の各実施の形態と同様に略部分球面状とすることもできる(図9から図14で説明する後述する実施の形態で同じ)。また、上記の図4に示した第1の実施の形態では、上流側噴孔32の幅(図4の左右方向寸法)と、噴孔出口22の幅(図4の左右方向寸法)とをほぼ同じとしていたのに対して、本実施の形態では、噴孔出口22の幅(図7の左右方向寸法)を、上流側噴孔32の幅(図7の左右方向寸法)よりも大きくしている。すなわち、ノズルボディ24において、空隙部36aの下流側部分の窪み部50と反対側(図7の左側)部分に、上流側噴孔32の軸心方向に対し傾斜させた第2傾斜壁面52を設けている。第2傾斜壁面52は、傾斜壁面38と平行で、奥端面40の上流側端縁を通る仮想平面Q上に位置させている。このため、噴孔34内を上流側から下流側に流れる燃料噴流と、噴孔34下流側の窪み部50と反対側部分との間には隙間54が形成される。
【0039】
本実施の形態の燃料噴射弁20はこのように構成するため、噴孔出口22からの燃料噴射時に隙間54部分に外側から空気が逆流する可能性がある。ただし、隙間54は、噴孔内を流れる流体に関して窪み部50と反対側に形成しているので、燃料噴射時に隙間54に入り込んだ空気が窪み部50に入り込むことがない。このため、上記の各実施の形態と同様に、空隙部36の存在により燃料流体にキャビテーション気泡を発生させることができ、噴射された燃料噴霧の微粒化の促進を図れる。
【0040】
図8は、本実施の形態に対する比較のための比較例の燃料噴射弁を示す、図4と同様の図である。図8に示す比較例では、本実施の形態の場合と異なり、上流側噴孔32の窪み部50側(図8の右側)の片側壁面46を含む仮想平面P´が、空隙部36の傾斜壁面38と、噴孔出口22の窪み部50側端縁とのいずれにも接触せず、噴孔出口22の窪み部50側端縁と、仮想平面Pとの間に大きな隙間c1が形成される。このような比較例の場合には、隙間c1が過大になると、図8に示すように、噴孔34内を流れる燃料噴流と、噴孔出口22の窪み部50側端縁との間に隙間c1が形成され、燃料噴射時にこの隙間c1を通じて噴孔出口22から空気が窪み部50に逆流する可能性がある。このように空気が逆流した場合には、窪み部50内の圧力が過度に上昇して、空隙部36により噴孔34内を流れる燃料にキャビテーション気泡を発生させることが難しくなり、噴射された燃料噴霧の微粒化の促進を有効に図ることが難しくなる。
【0041】
本実施の形態を含め、上記の各実施の形態の場合には、上流側噴孔32の窪み部50側(例えば図4、図7の右側)の片側壁面46を含む仮想平面P上に、噴孔出口22の窪み部50側(図4、図7の右側)端縁を位置させている。このため、上記の窪み部50側の隙間c1(図8参照)が形成されず、このような不都合が生じることがない。このように、本発明においては、上流側噴孔32の窪み部50側の壁面を含む仮想平面上に、噴孔出口22の窪み部50側端縁をほぼ位置させることが好ましい。図7に示す本実施の形態において、その他の構成及び作用は、上記の図1から図4に示した第1の実施の形態と同様であるため、重複する説明を省略する。
【0042】
図9は、本実施の形態の別例の構成を示す、図4と同様の図である。上記の図4、図7、図8では、略示的に上流側噴孔32から流出され、空隙部36を通って噴孔出口22から噴射される燃料流体の噴射広がり角を0度として示している。ただし、図9に示すように、燃料噴射弁20の実際の燃料噴射時には、噴孔出口22から噴射される燃料流体はある噴射広がり角θを持っている。また、上流側噴孔32から噴孔34下流側部分に噴射される燃料流体も、噴孔出口22側の壁面で制限されない限り、実際には、ある噴射広がり角θを持っている。例えば、直噴ガソリンエンジンに使用される燃料噴射弁が、扁平な扇状のスリット状の噴孔を有する場合に、噴孔出口から流出される噴霧角は、15度程度である。このため、本発明者は、本実施の形態の別例の構成において、噴孔出口22における噴霧外周部が、噴孔出口22の窪み部50側端縁(図9の右端縁)と一致するようにすれば、窪み部50側への空気の逆流を防止でき、燃料流体にキャビテーション気泡を発生させることができ、噴射された燃料噴霧の微粒化の促進を図れると考えた。
【0043】
このような事情から考えた、図9に示す本実施の形態の別例では、上流側噴孔32において、空隙部36の窪み部50側の片側壁面46を含む仮想平面Pに対して、上流側噴孔32出口の片側壁面46側である、窪み部50側端縁Xを軸として仮想平面Pを7.5度窪み部50側に傾斜させた場合に得られる第2仮想平面R上に、噴孔出口22の窪み部50側端縁を位置させている。このため、図9に示すように、噴孔34内を流れる燃料噴流と噴孔出口22の窪み部50側端縁との間に隙間が生じることをより有効に防止できる。
【0044】
なお、本実施の形態の別例において、上流側噴孔32出口の片側壁面46側である、窪み部50側端縁Xを軸として仮想平面Pを7.5度、窪み部50側に傾斜させた場合に得られる第2仮想平面Rと、仮想平面Pとの間に形成されるくさび状の空間内に、噴孔出口22の窪み部50側端縁を位置させることもできる。この場合も、噴孔34内を流れる燃料流体と噴孔出口22の窪み部50側端縁との間に隙間が生じることをより有効に防止できる。
【0045】
[第8の発明の実施の形態]
図10は、本発明の第8の実施の形態の燃料噴射弁を示す、図4と同様の図である。本実施の形態の場合には、上記の図7に示した第4の実施の形態において、空隙部36を構成する傾斜壁面38の下流側端縁を、噴孔出口22から噴孔34奥側(図10の上側)にδだけ外れた部分に設けている。すなわち、空隙部36の片側(図10の右側)の壁面を、奥端面40と、傾斜壁面38と、傾斜壁面38の下流側に連続する軸心方向壁面56とにより構成している。軸心方向壁面56は、上流側噴孔32の片側壁面46を含む仮想平面P上に位置している。
【0046】
このような本実施の形態によれば、噴孔出口22から噴出される燃料流体と、空隙部36の上流側噴孔32から移行する際の流路を急拡大させた側である、窪み部50側の下流側端縁との間に隙間が形成されることを、より有効に防止できる。このため、この隙間を通じて噴孔出口22から空気が逆流して窪み部50内の圧力が過度に上昇することをより有効に防止できる。その他の構成及び作用は、上記の図7に示した第4の実施の形態と同様である。
【0047】
[第9の発明の実施の形態]
図11は、本発明の第9の実施の形態の燃料噴射弁を示す、図4と同様の図である。本実施の形態では、上記の図7に示した第4の実施の形態において、空隙部36を構成する奥端面40aを、ノズルボディ24の軸心方向(図11の上下方向)に対し直交する仮想平面上に位置させるとともに、奥端面40aと傾斜壁面38とのなす角度を鋭角としている。また、傾斜壁面38と第2傾斜壁面52とを平行に設けている。このような本実施の形態の場合には、空隙部36の断面形状が略平行四辺形となる。このような燃料噴射弁20において、ノズルボディ24に空隙部36を形成する場合には、上記の各実施の形態の場合に対して、例えば、放電加工を行うための放電電極(図示せず)の先端部の形状を異ならせる。例えば、放電電極として、先端面を、形成すべき奥端面40aの形状に対応して放電電極の軸方向に対し傾斜させたものを使用する。その他の構成及び作用は、上記の図7に示した第4の実施の形態の場合と同様である。
【0048】
[第10の発明の実施の形態]
図12は、本発明の第10の実施の形態の燃料噴射弁を示す、図4と同様の図である。本実施の形態では、上記の図7に示した第4の実施の形態において、空隙部36を構成する奥端面40bを、断面円弧状に湾曲させた曲面としている。このような燃料噴射弁20において、ノズルボディ24に空隙部36を形成する場合には、上記の第4の実施の形態の場合に対して、例えば、放電加工を行うための放電電極(図示せず)の先端部の形状を異ならせる。例えば、放電電極として、先端面に、形成すべき奥端面40bの形状に対応して曲面部を形成したものを使用する。その他の構成及び作用は、上記の図7に示した第4の実施の形態の場合と同様である。
【0049】
[第11の発明の実施の形態]
図13は、本発明の第11の実施の形態の燃料噴射弁を示す、図4と同様の図である。本実施の形態では、上記の図1から図4に示した第1の実施の形態において、空隙部36において、窪み部50,50aを、空隙部36内を流れる燃料噴流に関して両側に一対設けている。このために、上記の第1の実施の形態の構成において、片側(図13の右側)の窪み部50と、上流側噴孔32から噴孔出口22に向かう燃料噴流に関して他側(図13の左側)にも、他側の窪み部50aを、片側の窪み部50と対称形状に設けている。他側の窪み部50aも、噴孔出口22側から上流側噴孔32上流側に向かうにしたがって、上流側噴孔32を構成する他側壁面48を含む仮想平面Sから離れる方向に傾斜した平面状の傾斜壁面38aと、傾斜壁面38の奥端部に連続するように設けられ、断面円弧状に内側に向かって湾曲した奥端面40cとを含み、両側の窪み部50,50aの両端に設けた一対の側壁面を、両側の窪み部50同士でそれぞれ同一の仮想平面上に位置させている。また、他側の窪み部50aの傾斜壁面38aの下流側端縁は、噴孔出口22端縁に一致させるとともに、他側の窪み部50aの奥端面40cの、上流側端縁を通り傾斜壁面38と平行な仮想平面上に、噴孔出口22の他側の窪み部50aとは反対側の端縁、すなわち窪み部50側の端縁を位置させている。
【0050】
このような本実施の形態によれば、噴孔34を流れる燃料流体に窪み部50,50aによる空間が両側に形成されるので、噴孔34内を流れる燃料流体にキャビテーション気泡を発生させることをより効果的に実現できる。この場合、キャビテーション気泡は、噴孔34を流れる液相燃料に対して図13の左右から混合される。このため、液相燃料とキャビテーション気泡との混合がより促進される。その他の構成及び作用は、上記の図1から図4に示した第1の実施の形態と同様である。
【0051】
[第12の発明の実施の形態]
図14は、本発明の第12の実施の形態の燃料噴射弁を示す、図4と同様の図である。本実施の形態の場合には、上記の図13に示した第11の実施の形態に設けていた、両側の窪み部50,50aの形状を異ならせている。すなわち、奥端面40b,40dを曲面部とする窪み部50,50aを、噴孔34内を流れる燃料流体の流れに関して両側に対称形状に一対設けている。このような本実施の形態の場合も、噴孔34内を流れる燃料流体にキャビテーション気泡を発生させることをより効果的に実現できる。その他の構成及び作用は、上記の図13に示した第11の実施の形態と同様であるため、重複する説明を省略する。
【0052】
なお、上記の各実施の形態では、噴孔34入口及び噴孔出口22の形状が矩形を湾曲させたような形状のスリット噴孔を有する燃料噴射弁20に本発明を適用した場合について説明した。ただし、本発明は、このような構成に限定するものではなく、噴孔形状として種々の形状を採用でき、噴孔の縦断面形状も扇形ではなく矩形状等とすることもできる。また、噴孔入口及び噴孔出口の少なくとも一方の形状が円形である円噴孔を有する燃料噴射弁においても本発明を適用できる。
【0053】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0054】
10 燃料噴射弁、12 上流側噴孔、14 下流側噴孔、16 空隙部、18 噴孔、20 燃料噴射弁、22 噴孔出口、24 ノズルボディ、26 ニードル、28 燃料室、30 シート部、32 上流側噴孔、34 噴孔、36,36a 空隙部、38,38a 傾斜壁面、40,40a,40b,40c 奥端面、42 側壁面、44 軸心方向壁面、46 片側壁面、48 他側壁面、50,50a 窪み部、52 第2傾斜壁面、54 隙間、56 軸心方向壁面。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルボディ内部の燃料室に供給された燃料が噴孔を通って噴孔出口から噴射される燃料噴射弁であって、
噴孔は、
燃料室に供給された燃料が流入する上流側噴孔と、
上流側噴孔の下流側に連結され、かつ、上流側噴孔から移行する際の流路を急拡大させることにより、噴孔の内部を流れる燃料にキャビテーション気泡を発生させる空隙部と、を備え、
空隙部は、内部を流れる燃料噴流の方向の逆方向に対し傾斜する方向に設けられた窪み部を含むことを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料噴射弁において、
窪み部は、噴孔出口側から上流側噴孔に向かうにしたがって、上流側噴孔を構成する窪み部側壁面を含む仮想平面から離れる方向に傾斜した傾斜壁面を有することを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の燃料噴射弁であって、
空隙部は、噴孔出口の外側から空隙部の奥端側を見た場合に、空隙部の奥端面の全部を直線的に見通すことが可能な形状であることを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1に記載の燃料噴射弁であって、
上流側噴孔の窪み部側壁面を含む仮想平面上、または、上流側噴孔出口の窪み部側端縁を軸として仮想平面を7.5度窪み部側に傾斜させた場合に得られる第2仮想平面上、または、仮想平面と第2仮想平面との間に形成される空間内に、噴孔出口の窪み部側端縁を位置させていることを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1に記載の燃料噴射弁であって、
窪み部は、噴孔出口側から上流側噴孔に向かうにしたがって、上流側噴孔を構成する窪み部側壁面を含む仮想平面から離れる方向に傾斜した傾斜壁面を有し、
傾斜壁面の下流側端縁は、噴孔出口から噴孔奥側に外れた部分に設けられていることを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1に記載の燃料噴射弁であって、
窪み部は、空隙部内を流れる燃料噴流に関して両側に一対設けられていることを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項1】
ノズルボディ内部の燃料室に供給された燃料が噴孔を通って噴孔出口から噴射される燃料噴射弁であって、
噴孔は、
燃料室に供給された燃料が流入する上流側噴孔と、
上流側噴孔の下流側に連結され、かつ、上流側噴孔から移行する際の流路を急拡大させることにより、噴孔の内部を流れる燃料にキャビテーション気泡を発生させる空隙部と、を備え、
空隙部は、内部を流れる燃料噴流の方向の逆方向に対し傾斜する方向に設けられた窪み部を含むことを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料噴射弁において、
窪み部は、噴孔出口側から上流側噴孔に向かうにしたがって、上流側噴孔を構成する窪み部側壁面を含む仮想平面から離れる方向に傾斜した傾斜壁面を有することを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の燃料噴射弁であって、
空隙部は、噴孔出口の外側から空隙部の奥端側を見た場合に、空隙部の奥端面の全部を直線的に見通すことが可能な形状であることを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1に記載の燃料噴射弁であって、
上流側噴孔の窪み部側壁面を含む仮想平面上、または、上流側噴孔出口の窪み部側端縁を軸として仮想平面を7.5度窪み部側に傾斜させた場合に得られる第2仮想平面上、または、仮想平面と第2仮想平面との間に形成される空間内に、噴孔出口の窪み部側端縁を位置させていることを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1に記載の燃料噴射弁であって、
窪み部は、噴孔出口側から上流側噴孔に向かうにしたがって、上流側噴孔を構成する窪み部側壁面を含む仮想平面から離れる方向に傾斜した傾斜壁面を有し、
傾斜壁面の下流側端縁は、噴孔出口から噴孔奥側に外れた部分に設けられていることを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1に記載の燃料噴射弁であって、
窪み部は、空隙部内を流れる燃料噴流に関して両側に一対設けられていることを特徴とする燃料噴射弁。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−223037(P2010−223037A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69690(P2009−69690)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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