説明

燃料噴射弁

【課題】燃料圧によるノズルニードル外周側の隙間増大を抑制するとともに、それを加工容易な構造で実現する。
【解決手段】ノズルボデー21とノズルニードル22との間に、ノズルニードル22を摺動自在に保持する円筒状のガイド23を配置する。また、ノズルボデー21とガイド23との間に、高圧燃料通路212と連通する円筒状の圧力導入空間26を設ける。これによると、ガイド23の内周側の圧力とガイド23の外周側の圧力とが略等しくなってガイド23の歪みが防止されるため、燃料圧によるガイド23とノズルニードル22との摺動部の隙間増大を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルボデー内を往復移動するノズルニードルにより噴孔を開閉する燃料噴射弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料噴射弁は、高圧燃料が流通する高圧燃料通路および高圧燃料が噴射される噴孔を有するノズルボデーと、ノズルボデーに摺動自在に保持されて往復移動することにより噴孔を開閉するノズルニードルとを備えている。そして、ノズルボデーとノズルニードルとの摺動部を微小隙間とすることでリーク量を抑制させるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、ノズルボデーとノズルニードルとの摺動部の隙間がテーパ状になるように、ノズルボデーまたはノズルニードルをテーパ状に形成し、燃料圧によりノズルボデーが歪んだ際にノズルボデーとノズルニードルとの摺動部の隙間が軸方向全域で略等しくなるようにしている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−337106号公報
【特許文献2】特開2005−214023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前者の燃料噴射弁は、燃料圧によりノズルボデーとノズルニードルとの摺動部の隙間が増大し、リーク量が増えるという問題が生じている。
【0006】
また、後者の燃料噴射弁は、ノズルボデーまたはノズルニードルをテーパ状に精度よく加工することが極めて難しいという問題がある。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、燃料圧によるノズルニードル外周側の隙間増大を抑制するとともに、それを加工容易な構造で実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、高圧燃料が流通する高圧燃料通路(212)および高圧燃料が噴射される噴孔(211)を有するノズルボデー(21)と、ノズルボデー(21)内を往復移動することにより噴孔(211)を開閉するノズルニードル(22)とを備えた燃料噴射弁において、ノズルボデー(21)とノズルニードル(22)との間に配置され、ノズルニードル(22)を摺動自在に保持する円筒状のガイド(23)と、ノズルボデー(21)とガイド(23)との間に形成され、高圧燃料通路(212)と連通する円筒状の圧力導入空間(26)とを備えることを特徴とする。
【0009】
これによると、ガイド(23)の内周側の圧力とガイド(23)の外周側の圧力とが略等しくなってガイド(23)の歪みが防止されるため、燃料圧によるガイド(23)とノズルニードル(22)との摺動部の隙間増大を抑制することができる。また、ガイド(23)またはノズルニードル(22)をテーパ状に形成する必要がないため、それらの加工が容易である。
【0010】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の燃料噴射弁において、ノズルボデー(21)とガイド(23)はノックピン(25)にて連結されていることを特徴とする。
【0011】
これによると、ノックピン(24)によりノズルボデー(21)とガイド(23)との径方向位置決めをして、ノズルボデー(21)の軸とガイド(23)の軸とのズレを小さくすることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の燃料噴射弁において、ガイド(23)における高圧燃料通路(212)に臨む軸方向一端側の外周面は、ノズルボデー(21)とはめあい構造になっていることを特徴とする。
【0013】
これによると、高圧燃料通路(212)内の燃料圧力が急低下して、ガイド(23)の軸方向一端側が径方向外側に広がろうとした場合に、ガイド(23)の変形がノズルボデー(21)によって防止されるため、ガイド(23)とノズルニードル(22)との摺動部の隙間増大を抑制することができる。
【0014】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る燃料噴射弁の全体構成を示す断面図である。
【図2】図1のノズル2の構成を示す断面図である。
【図3】図2のA−A線に沿う断面図である。
【図4】図2のB−B線に沿う断面図である。
【図5】図2のC−C線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態について説明する。図1は本発明の一実施形態に係る燃料噴射弁の全体構成を示す断面図である。
【0017】
燃料噴射弁は、内燃機関(より詳細にはディーゼルエンジン、図示せず)のシリンダヘッドに装着され、コモンレール(図示せず)内に蓄えられた高圧燃料を内燃機関の気筒内に噴射するものである。
【0018】
図1に示すように、燃料噴射弁は、ホルダボデー1の噴射弁軸方向一端側にノズル2が配置され、ホルダボデー1の噴射弁軸方向他端側に電磁弁3が配置されている。ホルダボデー1とノズル2はリテーニングナット5で締結されている。
【0019】
ホルダボデー1には、電磁弁3によって内部の燃料圧力が高圧と低圧に切り替えられる制御室6が形成されている。ホルダボデー1には、制御室6の圧力を受けてノズルニードル2を閉弁向きに付勢する円柱状のコマンドピストン7が摺動自在に挿入されている。ホルダボデー1には、コモンレールから供給される高圧燃料が流通するホルダ部高圧燃料通路11が形成されており、コモンレールから供給される高圧燃料がこのホルダ部高圧燃料通路11を介してノズル2および制御室6に導かれる。また、ホルダボデー1には、リーク燃料等を図示しない燃料タンクに戻すための低圧燃料通路12が形成されている。
【0020】
ホルダボデー1の反ノズル側に配設されたオリフィスプレート8には、ホルダ部高圧燃料通路11からの高圧燃料を制御室6に導く高圧導入通路81と、制御室6の燃料を低圧燃料通路12に逃がすための逃がし通路82が形成されている。
【0021】
電磁弁3は、特開2008−151048号公報に示されている公知の電磁弁と同じ構成であるため、ここでは簡単に説明する。
【0022】
電磁弁3は、駆動電流が供給されるコイル32、コイル32により励磁されて電磁力を発生するステータ33、その電磁力により吸引されるアーマチャ34、このアーマチャ34を摺動自在に保持するバルブプレート35、アーマチャ34に接合されて逃がし通路82を開閉する弁体36、アーマチャ34を付勢するバルブスプリング37を備えている。そして、アーマチャ34および弁体36は、電磁力により逃がし通路82を開く向きに吸引され、バルブスプリング37により逃がし通路82を閉じる向きに付勢されている。
【0023】
ノズル2は、内燃機関に燃料を噴射するための噴孔211が形成されたノズルボデー21と、ノズルボデー21内を往復移動することにより噴孔211を開閉する円柱状のノズルニードル22と、ノズルボデー21とノズルニードル22との間に配置され、ノズルニードル22を摺動自在に保持する鍔付き円筒状のガイド23と、ノズルニードル22を閉弁向きに付勢するノズルスプリング24を備えている。このノズルスプリング24はホルダボデー1内に配置されており、ノズルスプリング24が配置された空間は低圧燃料通路12に接続されている。
【0024】
コモンレールから供給される高圧燃料は、ホルダボデー1のホルダ部高圧燃料通路11、ガイド23に形成されたガイド部高圧燃料通路231、およびノズルボデー21に形成されたノズル部高圧燃料通路212を介して、噴孔211側まで導かれる。この高圧燃料の圧力がノズルニードル22に作用し、これにより、ノズルニードル22が開弁向きに付勢される。
【0025】
次に、ノズル2について詳細に説明する。図2は図1のノズル2の構成を示す断面図、図3は図2のA−A線に沿う断面図、図4は図2のB−B線に沿う断面図、図5は図2のC−C線に沿う断面図である。
【0026】
図2〜図5に示すように、ノズルボデー21には、径方向中心部で且つ反噴孔側に、ガイド23が挿入される円柱状空間のノズル部収容孔213が形成されている。このノズル部収容孔213の噴孔側端部内周面には、反噴孔側から噴孔側に向かって縮径するテーパ状のボデー側受け面214が形成されている。
【0027】
ガイド23は、ノズル部収容孔213に挿入されてノズルニードル22を摺動自在に保持する円筒状のガイド筒部232と、このガイド筒部232の反噴孔側端部から径方向外側に向かって広がる円盤状のガイド鍔部233とを備えている。このガイド鍔部233がホルダボデー1とノズルボデー21とに挟持されるとともに、ガイド鍔部233にガイド部高圧燃料通路231が形成されている。
【0028】
そして、ホルダボデー1とノズルボデー21とガイド23は、ノックピン25にて連結されている。具体的には、ホルダ部高圧燃料通路11、ノズル部高圧燃料通路212、およびガイド部高圧燃料通路231が連通するように、ホルダボデー1とノズルボデー21とガイド23の周方向相対位置がノックピン25にて決められる。また、ノズルボデー21の軸とガイド23の軸とが一致するように、ノズルボデー21とガイド23との径方向相対位置がノックピン25にて決められる。
【0029】
ガイド筒部232の噴孔側端部外周面(すなわち、ガイド23におけるノズル部高圧燃料通路212に臨む軸方向一端側の外周面)には、反噴孔側から噴孔側に向かって縮径するテーパ状のガイド側受け面234が形成されている。そして、ガイド側受け面234とボデー側受け面214は、はめあい構造になっており、ガイド23の軸方向一端側が径方向外側に広がろうとした場合には、ガイド側受け面234とボデー側受け面214とが当接して、ガイド23の歪みがノズルボデー21によって防止されるようになっている。
【0030】
ノズルボデー21のノズル部収容孔213とガイド筒部232との間には、円筒状の圧力導入空間26が形成されている。この圧力導入空間26は、ノズルボデー21に形成された連通孔215を介して、ノズル部高圧燃料通路212と常時連通している。
【0031】
次に、上記燃料噴射弁の作動を説明する。コイル32に駆動電流が供給されると、アーマチャ34および弁体36がステータ33に吸引されて逃がし通路82が開かれ、制御室6の燃料は、逃がし通路82および低圧燃料通路12を介して燃料タンクへ戻される。
【0032】
これにより、制御室6の圧力が低下し、コマンドピストン7を介してノズルニードル22を閉弁向きに付勢する力が小さくなるため、ノズルニードル22に直接作用する高圧燃料の圧力によってノズルニードル22が開弁向きに駆動されて噴孔211が開かれ、噴孔211から内燃機関の気筒内に燃料が噴射される。
【0033】
その後、コイル32への駆動電流の供給が停止されると、ステータ33の吸引力が消滅するため、アーマチャ34および弁体36がバルブスプリング37の付勢力により駆動されて逃がし通路82が閉じられる。
【0034】
これにより、高圧導入通路81を介して供給される高圧燃料により制御室6の圧力が上昇し、コマンドピストン7を介してノズルニードル22を閉弁向きに付勢する力が大きくなるため、ノズルニードル22が閉弁向きに駆動されて噴孔211が閉じられ、燃料噴射が終了する。
【0035】
ここで、圧力導入空間26には連通孔215を介して高圧燃料が導入されるため、燃料噴射停止中は、ガイド筒部232の内周側の圧力(すなわちノズルニードル22とガイド筒部232間の圧力)とガイド筒部232の外周側の圧力(すなわち圧力導入空間26の圧力)とが略等しくなって、ガイド筒部232の歪み(すなわち径拡大)が防止される。したがって、ガイド筒部232とノズルニードル22との摺動部の隙間増大が抑制され、リーク量を抑制することができる。
【0036】
また、燃料噴射中は、ノズル部高圧燃料通路212の圧力低下により圧力導入空間26の圧力も急低下し、ガイド筒部232の内周側の圧力とガイド筒部232の外周側の圧力との圧力バランスが崩れてガイド筒部232の噴孔側端部が径方向外側に広がろうとするが、その場合には、ガイド側受け面234とボデー側受け面214とが当接して、ガイド筒部232の歪み(すなわち径拡大)がノズルボデー21によって防止される。したがって、ガイド筒部232とノズルニードル22との摺動部の隙間増大が抑制され、リーク量を抑制することができる。
【符号の説明】
【0037】
21 ノズルボデー
22 ノズルニードル
23 ガイド
26 圧力導入空間
211 噴孔
212 高圧燃料通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧燃料が流通する高圧燃料通路(212)および高圧燃料が噴射される噴孔(211)を有するノズルボデー(21)と、前記ノズルボデー(21)内を往復移動することにより前記噴孔(211)を開閉するノズルニードル(22)とを備えた燃料噴射弁において、
前記ノズルボデー(21)と前記ノズルニードル(22)との間に配置され、前記ノズルニードル(22)を摺動自在に保持する円筒状のガイド(23)と、
前記ノズルボデー(21)と前記ガイド(23)との間に形成され、前記高圧燃料通路(212)と連通する円筒状の圧力導入空間(26)とを備えることを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項2】
前記ノズルボデー(21)と前記ガイド(23)はノックピン(25)にて連結されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射弁。
【請求項3】
前記ガイド(23)における前記高圧燃料通路(212)に臨む軸方向一端側の外周面は、前記ノズルボデー(21)とはめあい構造になっていることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料噴射弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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