燃料油の脱硫法及び脱硫装置
【課題】 燃料油中の硫黄含有量を低減させる(脱硫する)こと。
【解決手段】 硫黄を含む連続相としての燃料油と分散相としての水を微細にかつ均一に混合して、燃料油中の硫黄原子と水分子中の水素原子を結合させて微細な水滴の表面に硫黄原子を集めた混合液となす混合処理工程と、微細な水滴を合一させると共に硫黄を含んだ水相と燃料油相に分離する分離処理工程と、を有している。水滴/燃料油エマルション(W/Oエマルション)を生成して燃料油相を回収することで、同燃料油相中の硫黄含有量を低減させる(脱硫する)ことができる。
【解決手段】 硫黄を含む連続相としての燃料油と分散相としての水を微細にかつ均一に混合して、燃料油中の硫黄原子と水分子中の水素原子を結合させて微細な水滴の表面に硫黄原子を集めた混合液となす混合処理工程と、微細な水滴を合一させると共に硫黄を含んだ水相と燃料油相に分離する分離処理工程と、を有している。水滴/燃料油エマルション(W/Oエマルション)を生成して燃料油相を回収することで、同燃料油相中の硫黄含有量を低減させる(脱硫する)ことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料油の硫黄含有量を低減させる燃料油の直接脱硫法とその直接脱硫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料油の脱硫方法としては、水素化脱硫、酸化脱硫(過酸化水素脱硫、バイオ脱硫)などが知られている。また、原油精製装置プロセス流及び/又は原油に含まれる硫黄の濃度低減方法としては、特許文献1に開示されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表平10−503792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記した脱硫方法では多大なコストや時間を要するという課題がある。そこで、コストや時間を削減して脱硫効率を向上させることができる脱硫法の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)請求項1記載の本発明に係る燃料油の脱硫法は、硫黄を含む連続相としての燃料油と分散相としての水を微細にかつ均一に混合して、燃料油中の硫黄原子と水分子中の水素原子を結合させて微細な水滴の表面に硫黄原子を集めた混合液となす混合処理工程と、微細な水滴を合一させると共に硫黄を含んだ水相と燃料油相に分離する分離処理工程と、を有して燃料油の硫黄含有量を低減させることを特徴とする。
(2)請求項2記載の本発明に係る燃料油の脱硫法は、請求項1記載の燃料油の脱硫法であって、分散相としての水のクラスターを細分化して改質する改質処理工程を、混合処理工程の前に有することを特徴とする。
(3)請求項3記載の本発明に係る燃料油の脱硫装置は、硫黄を含む連続相としての燃料油と分散相としての水を混合処理部で微細にかつ均一に混合して、燃料油中の硫黄原子と水分子中の水素原子を結合させて微細な水滴の表面に硫黄原子を集めた混合液となし、分離処理部で微細な水滴を合一させると共に硫黄を含んだ水相と燃料油相に分離して、燃料油の硫黄含有量を低減させることを特徴とする。
(4)請求項4記載の本発明に係る燃料油の脱硫装置は、請求項3記載の燃料油の脱硫装置であって、分散相としての水のクラスターを細分化して改質する改質処理部を、混合処理部の上流側に接続していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、水滴/燃料油エマルション(W/Oエマルション)を生成して燃料油相を回収することで、同燃料油相中の硫黄含有量を低減させる(脱硫する)ことができる。すなわち、燃料油、例えば、重油(炭化水素,CHで表す)中のイオウ原子(S)は酸素原子(O)と同じように、水分子(H2O)中の水素原子(H)と結合する(水素結合)。そして、水素結合によりS−CHを取り込んだ水は、W/Oエマルション中の水滴表面上にS−CHを連続相の油側にして並ぶ。つまり硫黄(S)は水滴の表面上に集まる。このような水滴を合一させることで油相(連続相)の下部に硫黄(S)を含んだ水相(硫黄(S)を含んだ油と水のミセルが上部に存在する水)がたまるので、硫黄(S)を含んだ下部水相を上部の油相から分離すれば、重油中の硫黄(S)濃度を低減することができる(脱硫)。ここで、本発明では、混合処理部により平均径1μm以下の液滴からなる水/燃料油エマルション(W/Oエマルション)を生成することができる。そして、混合処理部で混合処理された燃料油は均質化され、流動性が向上する。また、改質処理部で水を改質処理することで、水のクラスターの細分化→水の表面張力の低下→水の燃料油への浸透性向上→水滴−燃料油(連続相)の接触効率の増大化が図られる。その結果、水素結合の促進を図ることができる。本発明は、燃料油としての重油(A,C)、軽油、石油、灯油に限らず、原油又は原油及び/又は他の炭化水素の混合体を含むプロセス流の硫黄含有量の低減(脱硫)にも使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る脱硫装置の説明図。
【図2】他実施形態に係る脱硫装置の説明図
【図3】試料1の粒径分布測定結果図。
【図4】試料2の粒径分布測定結果図。
【図5】試料3の粒径分布測定結果図。
【図6】試料4の粒径分布測定結果図。
【図7】試料5の粒径分布測定結果図。
【図8】試料6の粒径分布測定結果図。
【図9】試料7の粒径分布測定結果図。
【図10】回転式撹拌混合器の流体撹拌部の正面断面説明図。
【図11】同流体撹拌部の平面説明図。
【図12】同流体撹拌部の底面説明図。
【図13】同流体撹拌部の分解斜視説明図。
【図14】上方の撹拌体の正面断面説明図。
【図15】上方の撹拌体の底面説明図。
【図16】下方の撹拌体の正面断面説明図。
【図17】下方の撹拌体の平面説明図。
【図18】静止型流体混合器の側面断面説明図。
【図19】同静止型流体混合器のエレメントの分解斜視説明図。
【図20】同静止型流体混合器のエレメントの側面断面説明図。
【図21】第1分流流路形成体の背面図。
【図22】第2分流流路形成体の正面図。
【図23】第1集合流路形成体の背面図。
【図24】第2集合流路形成体の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る脱硫装置Dの説明図である。また、図2は、他実施形態に係る脱硫装置D1の説明図である。以下に、脱硫装置D,D1について順次説明する。
【0009】
[脱硫装置Dの説明]
脱硫装置Dは、図1に示すように、第1処理工程部S1〜第6処理工程部S6を直列的に接続して、燃料油の硫黄含有量を低減(脱硫)するようにしている。
【0010】
第1処理工程部S1は、改質処理部K1と一次混合処理部K2と二次混合処理部K3と分離処理部K4とを直列的に接続して形成している。改質処理部K1ないしは二次混合処理部K3としては後述する静止型流体混合器Mを採用している。一次混合処理部K2としては後述する回転式撹拌混合器を採用している。分離処理部K4としては既存の遠心分離器を採用している。
【0011】
改質処理部K1の流入部には連通部としての連通パイプ1を介して給水部K5を連通連結して、同給水部K5から改質処理部K1に所定量の水を給水ポンプ等により供給するようにしている。改質処理部K1の流出部には連通パイプ1を介して一次混合処理部K2の流入部を連通連結している。V1は改質処理部K1の下流側に配置した第1三方弁、V2は改質処理部K1の上流側に配置した第2三方弁、2は両第1・第2三方弁V1,V2間に介設した戻り管、V3は一次混合処理部K2の上流側に配置した第3三方弁である。
【0012】
このようにして、改質処理工程として、必要に応じて、両第1・第2三方弁V1,V2を切換操作することで、戻り管2を通して水を循環的に改質処理部K1に送り込んで改質処理(分散相としての水のクラスターを細分化して処理する)を所定回数(例えば10回)ないしは所定時間(例えば15分間)だけ繰り返すことで、改質度合いを高めることができるようにしている。ここで、改質度合いとは、水分子間の水素結合によって多くの水分子が互いに結合して形成しているクラスター(会合体で(H2O)nの状態)を小さくする。つまり任意の水分子の周辺にある隣接水分子の数をできるだけ小さくするように改質処理する度合いをいう。本実施形態では、改質処理部K1として後述する静止型流体混合器により改質処理することで、任意の水分子の周辺にある隣接水分子の数が小さくかつ微細化された水分子の粒子が均一化された改質水となすことができる(以下に「改質処理された水」を「改質水」ともいう)。Pは圧送ポンプである。
【0013】
一次混合処理部K2のもう一つの流入部には別途に連通パイプ1を介して給油部K6を連通連結して、同給油部K6から一次混合処理部K2に所定量の燃料油(例えばA重油)を給油ポンプ等により供給するようにしている。一次混合処理部K2の流出部には連通パイプ1を介して二次混合処理部K3の流入部を連通連結している。
【0014】
このようにして、混合処理工程の第一段階である一次混合処理工程として、一次混合処理部K2で硫黄を含む連続相としての燃料油と分散相としての改質水を微細にかつ均一に混合処理して混合液としてのエマルション燃料を生成することができる。しかも、燃料油中の硫黄原子と水分子中の水素原子を結合させて微細な水滴の表面に硫黄原子を集めたエマルション燃料となすことができる。
【0015】
二次混合処理部K3の流出部には連通パイプ1を介して分離処理部K4の流入部を連通連結している。V4は二次混合処理部K3の下流側に配置した第4三方弁、V5は二次混合処理部K3の上流側に配置した第5三方弁、3は両第4・第5三方弁V4,V5間に介設した戻り管であり、必要に応じて、両第4・第5三方弁V4,V5を切換操作することで、戻り管3を通してエマルション燃料を循環的に二次混合処理部K3に送り込んで混合処理を所定回数(例えば10回)ないしは所定時間(例えば15分間)だけ繰り返すことができるようにしている。
【0016】
このようにして、混合処理工程の第二段階である二次混合処理工程として、二次混合処理部K3で一次混合処理部K2で生成されたエマルション燃料をさらに超微細にかつ均一に混合処理することができる。しかも、二次混合処理部K3での混合処理は、所定回数ないしは所定回数だけ循環的に繰り返すことで、微細化と均一化の精度を高めることができる。その結果、燃料油中の硫黄原子と水分子中の水素原子を結合させて超微細な水滴(水滴のメディアン径を1μm未満のナノレベルないしはサブミクロンレベル)の表面に硫黄原子を集めたエマルション燃料となすことができる。すなわち、硫黄原子(S)は超微細化した水滴の表面上に集まる。分離処理工程として、例えば、A重油では、このような水滴を分離処理部K4で合一させることで、上澄み相としての軽液であるA重油相(連続相)の下部に、硫黄原子(S)を含んだ沈殿相としての重液である水相(硫黄原子(S)を含んだ燃料油と水のミセルが上部に存在する水)がたまるので、分離処理部K4により硫黄原子(S)を含んだ下部水相と上部のA重油相を分離処理すれば、A重油相中の硫黄原子(S)の含有量が低減される。従って、硫黄原子(S)の含有量が低減されたA重油相を回収すれば、結果的にA重油中の硫黄原子(S)濃度を低減することができる(脱硫)。
【0017】
第2処理工程部S2は、第1処理工程部S1と同様に、改質処理部K1と一次混合処理部K2と二次混合処理部K3と分離処理部K4とを直列的に接続して形成している。そして、第1処理工程部S1の分離処理部K4で分離処理された燃料油相(硫黄原子(S)濃度が低減されている)と改質水(改質処理部K1で改質処理された水)を一次混合処理部K2と二次混合処理部K3で順次混合処理した後に、分離処理部K4で燃料油相(上澄み相としての軽液)と水相(沈殿相としての重液)に分離処理する。その結果、第2処理工程部S2では第1処理工程部S1よりも脱硫率が高くなる。
【0018】
第3処理工程部S3は、第2処理工程部S2と同様に、改質処理部K1と一次混合処理部K2と二次混合処理部K3と分離処理部K4とを直列的に接続して形成している。そして、第2処理工程部S2の分離処理部K4で分離処理された燃料油相(硫黄原子(S)濃度がさらに低減されている)と改質水を一次混合処理部K2と二次混合処理部K3で順次混合処理した後に、分離処理部K4で燃料油相(上澄み相としての軽液)と水相(沈殿相としての重液)に分離処理する。その結果、第3処理工程部S3では第2処理工程部S2よりも脱硫率が高くなる。K7は処理油貯留部であり、同処理油貯留部K7に第3処理工程部S3の分離処理部K4で分離された燃料油相を最終的に処理した燃料油として貯留する。なお、第3処理工程部S3の分離処理部K4と処理油貯留部K7との間には、適宜第3処理工程部S3と同様に形成した処理工程部を所望の数だけ介在させて、段階的に燃料油相の硫黄原子(S)濃度を低減させることで硫黄原子(S)濃度を0%に接近させることができる。すなわち、脱硫率を向上させることができる。
【0019】
より具体的には、例えば、燃料油としてのA重油と改質水を、体積比で85:15の割合で第1処理工程部S1に供給して混合処理する。この際、二次混合処理部K3で15分間循環させて混合処理する。次に、第1処理工程部S1の分離処理部K4で分離処理された燃料油相と改質水を、体積比で85:15の割合で第2処理工程部S2に供給して混合処理する。この際、二次混合処理部K3で15分間循環させて混合処理する。続いて、第2処理工程部S1の分離処理部K4で分離処理された燃料油相と改質水を、体積比で85:15の割合で第3処理工程部S3に供給して混合処理する。この際、二次混合処理部K3で15分間循環させて混合処理する。その後、第3処理工程部S3の分離処理部K4で分離処理された燃料油相を最終的に処理された燃料油として処理油貯留部K7に貯留する。
【0020】
また、図1に示すように、第1処理工程部S1〜第3処理工程部S3における各分離処理部K4で分離された沈殿相としての重液は、第4処理工程部S4〜第6処理工程部S6で再処理するようにしている。
【0021】
すなわち、第4処理工程部S4〜第6処理工程部S6の各工程部は、第1処理工程部S1〜第3処理工程部S3の各工程部と同様に、改質処理部K1と一次混合処理部K2と二次混合処理部K3と分離処理部K4とを直列的に接続して形成している。そして、第3処理工程部S3の分離処理部K4で分離処理された沈殿相としての重液と改質水を第4処理工程部S4で混合処理する。次に、第4処理工程部S4の分離処理部K4で分離処理された軽液と改質水を第5処理工程部S5で混合処理する。続いて、第5処理工程部S5の分離処理部K4で分離処理された軽液と改質水を第6処理工程部S6で混合処理し、第6処理工程部S6の分離処理部K4で分離処理された軽液を、脱硫率の高い燃料油として回収して前記処理油貯留部K7に貯留する。K8は廃棄処理部であり、同廃棄処理部K8には回収できなかった重液等を廃油として廃棄処理する。
【0022】
より具体的には、例えば、第3処理工程部S3で分離処理された沈殿相としての重液と改質処理された水を、体積比で85:15の割合で第4処理工程部S4に供給して混合処理する。この際、二次混合処理部K3で15分間循環させて混合処理する。次に、第4処理工程部S4の分離処理部K4で分離処理された燃料油相と改質水を、体積比で85:15の割合で第5処理工程部S5に供給して混合処理する。この際、二次混合処理部K3で15分間循環させて混合処理する。続いて、第5処理工程部S5の分離処理部K4で分離処理された燃料油相と改質水を、体積比で85:15の割合で第6処理工程部S6に供給して混合処理する。この際、二次混合処理部K3で15分間循環させて混合処理する。その後、第6処理工程部S6の分離処理部K4で分離処理された燃料油相を最終的に処理された燃料油として処理油貯留部K7に貯留する。
【0023】
ここで、第1処理工程部S1〜第6処理工程部S6において、脱硫率を大きくするためには水の混合割合を大きく設定するのが望ましいが、W/Oエマルション状態を確保するためには、その最大混合割合は、燃料油ないしは軽液ないしは重液:水=約27:約73(質量比)と考えられる。従って、燃料油等との混合率を勘案して、この最大混合割合以下の混合割合で水を混合することができる。
【0024】
[脱硫装置D1の説明]
脱硫装置D1は、図2に示すように、前記脱硫装置Dと基本的構造を同じくしている。すなわち、第1処理工程部S1〜第6処理工程部S6を直列的に接続して、燃料油の硫黄含有量を低減(脱硫)するようにしている。しかしながら、第1処理工程部S1と第2処理工程部S2と第4処理工程部S4と第5処理工程部S5には分離処理部K4を設けておらず、第1処理工程部S1→第2処理工程部S2→第3処理工程部S3に至る段階と、第4処理工程部S4→第5処理工程部S5→第6処理工程部S6に至る段階では分離処理することなく、混合液であるエマルション燃料に改質水を加水する点で異なる。かかる脱硫装置D1は、上澄み相としての軽液と沈殿相としての重液に分離しにくい燃料油等、例えば、C重油の脱硫に好適な装置である。
【0025】
より具体的には、例えば、燃料油としてのC重油と改質水を、体積比で85:15の割合で第1処理工程部S1に供給して混合処理する。この際、二次混合処理部K3で15分間循環させて混合処理する。次に、第1処理工程部S1で混合処理されて生成されたエマルション燃料と改質水を、体積比で85:15の割合で第2処理工程部S2に供給して混合処理する。この際、二次混合処理部K3で15分間循環させて混合処理する。続いて、第2処理工程部S1で混合処理されて生成されたエマルション燃料と改質水を、体積比で85:15の割合で第3処理工程部S3に供給して混合処理する。この際、二次混合処理部K3で15分間循環させて混合処理する。その後、第3処理工程部S3の分離処理部K4で分離処理された燃料油相を最終的に処理された燃料油として処理油貯留部K7に貯留する。
【0026】
そして、第3処理工程部S3で分離処理された沈殿相としての重液と改質水を、体積比で90:10の割合で第4処理工程部S4に供給して混合処理する。この際、二次混合処理部K3で15分間循環させて混合処理する。次に、第4処理工程部S4で混合処理されて生成されたエマルション燃料と改質水を、体積比で90:10の割合で第5処理工程部S5に供給して混合処理する。この際、二次混合処理部K3で15分間循環させて混合処理する。続いて、第5処理工程部S5で混合処理されて生成されたエマルション燃料と改質水を、体積比で90:10の割合で第6処理工程部S6に供給して混合処理する。この際、二次混合処理部K3で15分間循環させて混合処理する。その後、第6処理工程部S6の分離処理部K4で分離処理された燃料油相を最終的に処理された燃料油として処理油貯留部K7に貯留する。そして、回収できなかった重液等は廃油として廃棄処理部K8に廃棄処理する。
【0027】
また、本実施形態では二次混合処理部K3内に混合液であるエマルション燃料を繰り返し循環させることで混合処理度合い(微細化と均一化の度合い)を高めているが、一次混合処理部K2と二次混合処理部K3内に混合液であるエマルション燃料を順次繰り返し循環させることで混合処理度合いを高めることもできる。
【0028】
[第1実験結果]
第1実験として、燃料油としてのA重油を脱硫装置Dの第1処理工程部S1で処理した。改質処理部K1としての静止型流体混合器は、後述する混合ユニット21の外径が10cmで、混合ユニット21の数が10個のタイプを2個直列的に接続して形成し、これら2個の静止型流体混合器内に精製水(精製された不純物のない水)を1回通して改質処理することで改質水とした。一次混合処理部K2としての回転式撹拌混合器は、後述する上方の撹拌体10の外径が10cmのタイプを使用した。二次混合処理部K3としての静止型流体混合器は、後述する混合ユニット21の外径が3cmのタイプを使用した。混合処理としては、A重油:改質水=90:10(体積比)の混合流体を一次混合処理部K2と二次混合処理部K3内に順次繰り返し循環させて混合処理した。そして、混合処理する時間は、表1に示すように5分ずつ異ならせて試料1〜試料4を生成した。また、試料1〜試料4の硫黄分をそれぞれJIS K2541の試験方法で試験した。
【0029】
【表1】
【0030】
その結果、試料1〜試料4では上澄み相と沈殿相からなる分離相が形成されて、表1に示すように、各試料の上澄み相の硫黄分が元の硫黄分(石油製品試験成績表に提示された値:0.71)と比較して21%以上減少していた。これより本発明に係る脱硫装置Dに脱硫効果があることが分かった。
【0031】
また、表2及び図3〜図6は、試料1〜試料4の各上澄み相の粒度分布をレーザー回折・散乱法で試験した結果である。ここで、測定条件は、粒子屈折率;1.330−0.01i、分散媒名;トルエン、分散媒屈折率;1.490であった。かかる試験結果から100%近い粒子が1μm以下に超微細化されていることが分かった。
【0032】
【表2】
【0033】
[第2実験結果]
第2実験として、燃料油としてのC重油を脱硫装置Dの第1処理工程部S1で処理した。改質処理部K1としての静止型流体混合器は、後述する混合ユニット21の外径が10cmで、混合ユニット21の数が10個のタイプを2個直列的に接続して形成し、これら2個の静止型流体混合器内に精製水(精製された不純物のない水)を1回通して改質処理することで改質水とした。一次混合処理部K2としての回転式撹拌混合器は、後述する上方の撹拌体10の外径が10cmのタイプを使用した。二次混合処理部K3としての静止型流体混合器は、後述する混合ユニット21の外径が3cmのタイプを使用した。混合処理としては、一次混合処理部K2と二次混合処理部K3内にC重油と改質水の混合流体を順次繰り返し循環させて混合処理して試料5〜試料7を生成した。ここで、混合割合は、試料5と試料6がそれぞれC重油:改質水=85:15、試料7がC重油:改質水=70:30とした。そして、混合処理時間は、試料5と試料7がそれぞれ15分、試料6が20分とした。また、試料5〜試料7の硫黄分をそれぞれJIS K2541−6の試験方法で試験した。
【0034】
【表3】
【0035】
その結果、試料5〜試料7では、表3に示すように、各試料の硫黄分が元の硫黄分(石油製品試験成績表に提示された値:2.51)と比較して39%以上減少していた。これより本発明に係る脱硫装置Dに脱硫効果があることが分かった。そして、試料7が最も脱硫効果が高いことが分かった。
【0036】
また、表4及び図7〜図9は、試料5〜試料7の粒度分布をレーザー回折・散乱法で試験した結果である。ここで、測定条件は、粒子屈折率;1.330−0.01i、分散媒名;トルエン、分散媒屈折率;1.490であった。かかる試験結果から100%近い粒子が2μm以下に超微細化されていることが分かった。
【0037】
【表4】
【0038】
[回転式撹拌混合器の説明]
図10は一次混合処理部K2としての回転式撹拌混合器の主要部である流体撹拌部Aの正面断面説明図、図11は同流体撹拌部Aの平面説明図、図12は同流体撹拌部Aの底面説明図、図13は同流体撹拌部Aの分解斜視説明図、図14は上方の撹拌体10の正面断面説明図、図15は上方の撹拌体10の底面説明図、図16は下方の撹拌体11の正面断面説明図、及び、図17は下方の撹拌体11の平面説明図である。ここで、回転式撹拌混合器は、基本的に、撹拌・混合する被処理流体(例えば、液体及び/又は気体、液体及び液体、気体及び気体)を収容する収容槽(図示せず)と、同収容槽内に配置して被処理流体を撹拌・混合して混合液となす上記流体撹拌部Aと、同流体撹拌部Aを回転駆動させる駆動源としての電動モータ(図示せず)を具備している。そして、収容槽には二箇所の流入部と一箇所流出部を設けて、各流出・流入部に連結パイプ1の一端を連通連結している(図1及び図2参照)。
【0039】
流体撹拌部Aは、図10〜図13に示すように、一対(本実施形態では上下一対)の撹拌体10,11を対向状態に配置して、ビス17を介して同軸的に連結して構成している。そして、前記電動モーターの駆動軸5に上方の撹拌体10を着脱自在に取り付けて、駆動軸5と両撹拌体10,11とを一体的に同一軸線廻りに回転させるようにしている。また、下方の撹拌体11の回転中心である中心部には流入部12を形成し、両撹拌体10,11間には流入部12から放射線方向に複数(本実施形態では8本)の撹拌流路13を円周方向に均等に配置して形成し、両撹拌体10,11の外周縁部間には各撹拌流路13の先端部に連通する流出部14を形成している。18はビス孔である。図10中、aは回転方向である。
【0040】
このようにして、電動モーターにより駆動軸5を介して流体撹拌部Aを回転させることで、下方の撹拌体11の中心部に形成した流入部12を通して流入した流体を、両撹拌体10,11間に形成した8本の撹拌流路13を通して放射線方向に流動させて、両撹拌体10,11の外周縁部間に形成した各流出部14から流出させるようにしている。
【0041】
さらに具体的に説明すると、図16及び図17に示すように、下方の撹拌体11は円板状に形成すると共に、少なくとも上面を扁平な当接面11aとなしている。そして、中心部には円形に開口する流入部12を形成している。図6及び図7に示すように、上方の撹拌体10は下方の撹拌体11よりもやや大径円板状の本片10aと同本片10aの周縁部から延設した周壁形成片10bとから下方の撹拌体11を収容可能な凹部15を有する蓋状に形成している。そして、図2及び図4に示すように、本片10aの少なくとも下面を扁平な当接面10cとなしている。また、凹部15内に下方の撹拌体11を収容すると共に、本片10aの当接面10cに下方の撹拌体11の当接面11aを密接状態に面接触させている。そして、下方の撹拌体11の外周縁部11bと上記周壁形成片10bの内周面10dとの間にリング状の間隙16を形成し、同間隙16に前記流出部14を連通させている。図2,図3及び図6中、10eは駆動軸5に取り付けるための取付ボス部、10fは取付ボルト、10gはボルト孔である。
【0042】
撹拌流路13は、図12に示すように、流入部12側から流出部14側に向けて流路断面積を漸次縮小させて形成している。W1は撹拌流路13の基端幅、W2は撹拌流路13の先端幅であり、基端幅W1>先端幅W2となしている。図14及び図15に示すように、撹拌流路13内には四角形板状に形成した上方側蛇行流路形成片10hを仕切り状に配設すると共に、同上方側蛇行流路形成片10hの先端部を上方の撹拌体10から下方の撹拌体11に向けて突出させている。また、図16及び図17に示すように、撹拌流路13内には四角形板状に形成した下方側蛇行流路形成片11cを仕切り状に配設すると共に、同下方側蛇行流路形成片11cの先端部を下方の撹拌体11から上方の撹拌体10に向けて突出させている。そして、図2及び図4に示すように、これら蛇行流路形成片10h,11cは撹拌流路13の伸延方向に間隔を開けて交互に配置している。
【0043】
このようにして、流入部12から流入した流体は、各蛇行流路形成片10h,11cを越流しながら折り返し状に流動して、流出部側に蛇行状態に流動するようにしている。そして、流体は蛇行流動中に撹拌されるようにしている。
【0044】
撹拌流路13は、図15及び図17に示すように、上方の撹拌体10の流入部12側から流出部側14に向けて放射状に伸延する上側流路形成凹部13aと、下方の撹拌体11の流入部12側から流出部14側に向けて放射状に伸延する下側流路形成凹部13bとを対向状態に配置して形成している。
【0045】
また、図10に示すように、上方側蛇行流路形成片10hは上側流路形成凹部13a内から突出させて、同上側流路形成凹部13a内をその伸延方向に多数個に区画すると共に、先端の越流縁部10iを下側流路形成凹部13b内まで伸延させて配置している。下方側蛇行流路形成片11cは下側流路形成凹部13b内から突出させて、同下側流路形成凹部13b内をその伸延方向に多数個に区画すると共に、先端の越流縁部11dを上側流路形成凹部13a内まで伸延させて配置している。そして、各蛇行流路形成片10h,11cは互い違い(交互)に略等間隔で配置している。
【0046】
このように、各蛇行流路形成片10h,11cは互い違い(交互)に配置すると共に、各蛇行流路形成片10h,11cの越流縁部10i,11dを相互に対向する流路形成凹部13b,13a内まで伸延させることで、撹拌体10,11の回転軸線方向に往復して放射線方向に伸延する蛇行流路を形成することができると共に、この蛇行流路の振幅を大きく形成することができる。その結果、流体にせん断力が作用する蛇行流路の流路長を可及的に長く形成することができて、撹拌効率を向上させることができる。
【0047】
本実施形態に係る流体撹拌部Aは上記のように構成しているものであり、流体中にて一対の撹拌体10,11を一体的に回転させると、同流体は流入部12から流入されて撹拌流路13を経て流出部14から流出される。そして、かかる流入部12→撹拌流路13→流出部14→流入部12という流体の循環流路Rが形成される。
【0048】
この際、撹拌流路13は流入部12側から流出部14側に向けて流路断面積を漸次縮小させて形成することで、撹拌流路13を通過する流体の線速度を漸次増大させることができる。しかも、撹拌体10,11にはその中心部から周縁部に向けて遠心力が大きく作用する。そのため流体は流入部12側から流出部14側に撹拌流路13中を円滑に流れて、堅実に循環流路Rが形成される。そして、流入部12から流入した流体は各蛇行流路形成片10h,11cを越流しながら折り返し状に流動して流出部14側に蛇行状態に流動する。この蛇行状態に流動する流体にはせん断力が作用するが、このせん断力は速度勾配に比例するため、流体に作用するせん断力を流動方向において漸次増大させることができる。そのため、流体に作用するせん断力により流体への撹拌作用(分散作用)が増大される。その結果、流体を循環流路R中にて循環させることで撹拌効率を促進させることができる。
【0049】
しかも、上方側蛇行流路形成片10hは先端の越流縁部10iを下側流路形成凹部13b内に配置すると共に、下方側蛇行流路形成片11cは先端の越流縁部11dを上側流路形成凹部13a内に配置しているため、撹拌流路13を蛇行流路となすことができると共に、撹拌流路13の振幅を大きく形成することができる。その結果、流体にせん断力が作用する蛇行流路の流路長を可及的に長く形成することができて、撹拌効率を向上させることができる。
【0050】
さらには、上方の撹拌体10の外周縁部と上記周壁形成片10bの内周面10dとの間に形成したリング状の間隙16に流出部を連通させているため、流出部14から流出される流体を間隙16を通して所要の方向(本実施形態では下方)に案内することができる。この際、間隙16はリング状に形成されて流出部14と連通されているため、同流出部14から放出される流体は遠心力を受けながら間隙16に沿って円周方向に流動されて、スパイラル状の軌跡を描きながら前記した循環流路Rを形成する。そのため、循環流路Rがスムーズにかつ堅実に形成されて、この点からも撹拌効率を向上させることができる。
【0051】
また、他実施形態として、撹拌流路13の断面積に大→小→大→小の交互の変化をもたせることで、撹拌流路13内を流動する流体に脈流を形成して撹拌効率を増大させることもできる。例えば、各蛇行流路形成片10h,11cの越流縁部10i,11dを凹状ないしは凸状に形成することで、流路断面積が交互に大→小→大→小と変化するように形成することができる。
【0052】
[静止型流体混合器の説明]
改質処理部K1ないしは二次混合処理部K3としての静止型流体混合器Mについて、図18〜図24を参照しながら説明する。ここで、図18は静止型流体混合器Mの側面断面説明図、図19は同静止型流体混合器Mのエレメントの分解斜視説明図、図20は同静止型流体混合器Mのエレメントの側面断面説明図、図21は第1分流流路形成体28の背面図、図22は第2分流流路形成体29の正面図、図23は第1集合流路形成体30の背面図、及び、図24は第2集合流路形成体31の正面図である。
【0053】
すなわち、静止型流体混合器Mは、図18に示すように、両端が開口している円筒形状のケーシング体20内に単数ないしは複数(本実施形態では5組)の混合ユニット21を着脱自在に収容し、ケーシング体20の前・後端面に前・後部規制体22,23を着脱自在に取り付けている。そして、前・後部規制体22,23の中央部はケーシング体20の軸線上に配置して、前部規制体22の中央部に流入部としての流入口24を開口する一方、後部規制体23の中央部に流出部としての流出口25を開口している。20a,20bはケーシング体20の両端開口部に形成したフランジ、22aは前部規制体22の周縁部に形成した前部規制体フランジ、23aは後部規制体23の周縁部に形成した後部規制体フランジ、26,27はフランジ同士を連結する連結ボルトである。
【0054】
このようにして、流入口24から流入された単数種類ないしは複数種類の流体(例えば、液体及び/又は気体、液体及び液体、気体及び気体)が5個の混合ユニット21中を順次流動して混合処理され、流出口25から流出されるようにしている。
【0055】
混合ユニット21は、図18〜図24に示すように、分流流路r1を形成する一対の第1・第2分流流路形成体28,29と、集合流路r2を形成する一対の第1・第2集合流路形成体30,31とを、一体的連結用ボルト32,32により同軸的にかつ一体的に連結している。
【0056】
第1分流流路形成体28は、図19〜図21に示すように、円板状に形成した第1分流流路形成本片33の周縁部に短幅円筒状の周壁片34を下流側(流出口側)に突出状に形成して、キャップ状に形成している。そして、第1分流流路形成本片33の内面と周壁片34の内周面とで円板状の収容空間35を形成すると共に、同収容空間35内に上記第2分流流路形成体29と第1・第2集合流路形成体30,31を収容して、周壁片34の端面と第2集合流路形成体31の背面は面一状態となしている。第1分流流路形成本片33の中央部には軸線方向に開口する流入孔36を形成している。第1分流流路形成本片33の内面側には流入孔36から円周側に向けて放射状に伸延する複数(本実施形態では8条)の第1分流流路形成凹部33aを円周方向に等間隔に形成している。第1分流流路形成本片33の内面は第1分流流路形成凹部33aを除いて扁平な当接面33bとなしている。ケーシング体20内に混合ユニット21を収容した状態では、ケーシング体20の内周面に周壁片34の外周面を隙間のない密着状態に面接させている。第1分流流路形成本片33の外面は扁平な当接面33eとなして、前記した前部規制体22の内面に密着状に面接させている。37はボルト挿通孔である。
【0057】
第2分流流路形成体29は、図19,図20及び図22に示すように、第2分流流路形成本片38を第1分流流路形成本片33よりもやや小径の円板状に形成している。そして、第2分流流路形成本片38の周端面38bと上記周壁片34の内周面34aとの間に、ケーシング体20の軸線方向視で、略均等幅でリング状の連通流路r3を形成している。また、連通流路r3は上流側から下流側に拡径状に形成して、分流流路r1の終端部と集合流路r2の始端部とを連通している。第2分流流路形成本片38の第1分流流路形成本片33と対向する面側には、中央部から縁周側に向けて放射状に伸延する複数(本実施形態では8条)の第2分流流路形成凹部38aを円周方向に等間隔に形成している。第2分流流路形成本片38の内面は第2分流流路形成凹部38aを除いて扁平な当接面38cとなしている。39はボルト孔である。
【0058】
このようにして、ボルト挿通孔37とボルト孔39を符合させて一体的連結用ボルト32を挿通することで、第1分流流路形成本片33と第2分流流路形成本片38とを対向状態にて連結すると、第1分流流路形成本片33の当接面33bと第2分流流路形成本片38の当接面38cとが面接触すると共に、第1分流流路形成本片33の8本の第1分流流路形成凹部33aと第2分流流路形成本片38の8本の第2分流流路形成凹部38aとが整合して8本の分流流路r1が形成される(図18参照)。
【0059】
分流流路r1を形成する一方の第1分流流路形成凹部33aは、図21に示すように、流入孔36側の基端部から周縁部側の先端部に向けて流路断面積を漸次縮小させて形成している。W3は第1分流流路形成凹部33aの基端幅、W4は第1分流流路形成凹部33aの先端幅であり、基端幅W3>先端幅W4となしている。分流流路r1を形成する他方の第2分流流路形成凹部38aも同様に形成している。図19〜図21に示すように、第1分流流路形成凹部33a内には四角形板状に形成した第1蛇行流路形成片33cを仕切り状に配設すると共に、同第1蛇行流路形成片33cの先端部を第1分流流路形成本片33側から第2分流流路形成本片38側に向けて突出させている。また、図19,図20及び図22に示すように、第2分流流路形成凹部38a内には四角形板状に形成した第2蛇行流路形成片38dを仕切り状に配設すると共に、同第2蛇行流路形成片38dの先端部を第2分流流路形成本片38側から第1分流流路形成本片33側に向けて突出させている。そして、図18に示すように、これら蛇行流路形成片33c,38dは第1・第2分流流路形成凹部33a,38aの伸延方向に間隔を開けて交互に配置している。
【0060】
このようにして、流入孔36から流入した流体は、各蛇行流路形成片33c,38cを越流しながら折り返し状に流動して、周縁部側に蛇行状態に流動するようにしている。そして、流体は蛇行流動中に混合処理されるようにしている。
【0061】
また、図20に示すように、第1蛇行流路形成片33cは第1分流流路形成凹部33a内から突出させて、同第1蛇行流路形成片33c内をその伸延方向に多数個に区画すると共に、先端の越流縁部33dを第2分流流路形成凹部38a内まで伸延させて配置している。第2蛇行流路形成片38dは第2分流流路形成本片38内から突出させて、同第2分流流路形成本片38内をその伸延方向に多数個に区画すると共に、先端の越流縁部38eを第1分流流路形成凹部33a内まで伸延させて配置している。そして、各蛇行流路形成片33c,38dは互い違い(交互)に略等間隔で配置している。
【0062】
このように、各蛇行流路形成片33c,38dは互い違い(交互)に配置すると共に、各蛇行流路形成片33c,38dの越流縁部33d,38eを相互に対向する分流流路形成凹部33a,38a内まで伸延させることで、混合ユニット21の軸線方向に往復して放射線方向に伸延する蛇行流路(図18参照)を形成することができると共に、この蛇行流路の振幅を大きく形成することができる。その結果、流体にせん断力が作用する蛇行流路の流路長を可及的に長く形成することができて、混合する流体の超微細化(1μm未満のナノレベル)かつ均一化を効率良く行うことができる。
【0063】
また、第1集合流路形成体30は、図18〜図20及び図23に示すように、薄肉円板状の第1集合流路形成本片30aを前記第2分流流路形成本片38の外径と略同一径に形成している。第2分流流路形成本片38の背面は扁平な当接面38fとなす一方、同当接面38fと対向する第1集合流路形成本片30aの面も扁平な当接面30bとなして、両当接面38f,30bを面接触させている。第1集合流路形成本片30aの背面は扁平な対向面30cとなすと共に、同対向面30cにリング状の越流突条片30dを第1集合流路形成本片30aの中心点と同心的に下流側へ突出させて一体成形している。40はボルト孔である。
【0064】
第2集合流路形成体31は、図18〜図20及び図24に示すように、薄肉円板状の第2集合流路形成本片31aを前記周壁片34の内径と略同一径に形成している。ここで、第2集合流路形成本片31aの周端面は周壁片34の内周面に密着して周壁片34の開口端面を密閉することで集合流路r2から流体が漏れないようにしている。第1集合流路形成本片30aの対向面30cと対向する第2集合流路形成本片31aの面も扁平な対向面31cとなすと共に、同対向面31cにリング状の越流突条片31dを第2集合流路形成本片31aの中心点と同心的に上流側へ突出させて一体成形している。越流突条片31dは越流突条片30dよりも大径に形成して、同越流突条片30dの外周側にあって半径方向に間隔を開けて対向状態に配置している。31eは越流突条片31dの先端縁部から第1集合流路形成本片30aの対向面30c側に突出させて形成した対向間隔保持片である。第2集合流路形成本片31aの背面は扁平な当接面31fとなして、第1分流流路形成本片33の当接面33eないしは後部規制体23の内面に密着状に面接させている。41は第2集合流路形成本片31aの中央部に形成した流出孔、42は内周面に雌ネジを形成した筒状の螺着兼間隔保持用ボス部である。
【0065】
そして、ボルト孔40と螺着兼間隔保持用ボス部42を符合させて、第1集合流路形成体30と第2集合流路形成体31を対向させると共に、第1集合流路形成本片30aの対向面30cに第2集合流路形成体31の対向間隔保持片31eと螺着兼間隔保持用ボス部42の各先端面を当接させることで、図18に示すように、集合流路r2が形成されている。しかも、集合流路r2は、リング状の連通流路r3の終端部にその始端部が連通する一方、流出孔41にその終端部が連通している。ここで、集合流路r2は、周縁側であるリング状の連通流路r3から流出した流体を、中心部側である流出孔41に向かって集合状態に流動させると共に、その途中で混合ユニット21の軸線方向に対向させて配置した越流突条片30d,31dを越流させて蛇行状に流動させるようにしている。
【0066】
従って、8本の分流流路r1をそれぞれ蛇行しながら流通することで混合処理された流体は、各分流流路r1の終端部からリング状の連通流路r3の始端部、そして、連通流路r3の終端部から集合流路r2の始端部に均等に圧送され、同均等状態を保ちながら全周に亘って集合流路r2の始端部から中心側の終端部に向けて蛇行しながら流動される。その結果、集合流路r2における圧力損失を低減させながら混合均一性を向上させることができる。
【0067】
また、静止型流体混合器Mは、図18に示すように、流入口24には最上流側に配置した混合ユニット21の流入孔36が連通し、上流側の混合ユニット21の流出孔41とそれに隣接する下流側の混合ユニット21の流入孔36が連通し、最下流側に配置した混合ユニット21の流出孔41に流出口25が連通する。そして、各混合ユニット21内では分流流路r1と連通流路r3と集合流路r2が連通して、これらの流路r1,r3,r2を流体が通過する間に超微細にかつ均一に混合処理される。
【0068】
本実施形態では、一次混合処理部K2において、中心部から略同一平面上を放射線方向に直線状に伸延する複数の撹拌流路13を設けて、遠心力により各撹拌流路13中を蛇行させながら流動させることで流体にせん断力を加えて、流体を微細化かつ均一化することができる。しかも、各撹拌流路13中の蛇行流動は循環的に繰り返すことができるため、流体を微細化かつ均一化する撹拌効率を良好に確保することができる。
【0069】
また、改質処理部K1と二次混合処理部K3において、静止型流体混合器Mは、流入孔24と連通する中心部から略同一平面上を放射線方向に直線状に伸延させて複数の分流流路r1を形成すると共に、同分流流路r1は流体を蛇行させながら流動させて、同流体にせん断力を加えるように形成し、上記分流流路r1の終端部はリング状の連通流路r3を介して板状空間となした集合流路r2の周縁部である始端部に連通させて、上記集合流路r2の始端部の周囲から流体を流入させると共に、同集合流路r2内を流出孔25と連通する中心部である終端部に向けて平面状に緩やかに蛇行させて流動させることで、径方向のみならず周方向にも面的に均一化させることができるようにしている。
【0070】
すなわち、分流流路r1と連通流路r3とを形成する一対の第1・第2分流流路形成体28,29と、集合流路r2を形成する一対の第1・第2集合流路形成体30,31とを、同軸的にかつ一体的に連結して、連通流路r3の終端部と集合流路r2の始端部とを連通させ、第1分流流路形成体28の中心部に流入孔24を形成する一方、第2集合流路形成体31の中心部に流出孔25を形成している。
【0071】
そして、一対の第1・第2集合流路形成体30,31は、板状に形成した第1・第2集合流路形成本片30a,31aの対向面30c,31cにそれぞれリング状の越流突条片30d,31dを突出状に形成すると共に径方向に間隔を開けて対向状態に配置して、一対の第1・第2集合流路形成体30,31間に平面状に緩やかに蛇行する集合流路r2を形成している。
【0072】
従って、中心部から略同一平面上を放射線方向に直線状に伸延する複数の分流流路r1を設けて、各分流流路r1中を蛇行させながら流動させることで流体にせん断力を加えて、流体を超微細化かつ均一化することができる。そして、分流流路r1の終端部をリング状の連通流路r3を介して略円板状空間となした集合流路r2の周縁部である始端部に連通させ、分流流路r1から流出した流体をリング状の連通流路r3を介して集合流路r2の始端部の周囲から略均等に流入させると共に、集合流路r2内を中心部である終端部に向けて平面状に緩やかに蛇行させて流動させることで、径方向のみならず周方向にも面的に均一化させることができる。そのため、流体を超微細化かつ均一化する改質処理部K1での改質処理効率ないしは二次混合処理部K3での混合処理効率を良好に確保することができる。
【符号の説明】
【0073】
D 脱硫装置
K1 改質処理部
K2 一次混合処理部
K3 二次混合処理部
K4 分離処理部
K5 給水部
K6 給油部
1 連結パイプ
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料油の硫黄含有量を低減させる燃料油の直接脱硫法とその直接脱硫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料油の脱硫方法としては、水素化脱硫、酸化脱硫(過酸化水素脱硫、バイオ脱硫)などが知られている。また、原油精製装置プロセス流及び/又は原油に含まれる硫黄の濃度低減方法としては、特許文献1に開示されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表平10−503792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記した脱硫方法では多大なコストや時間を要するという課題がある。そこで、コストや時間を削減して脱硫効率を向上させることができる脱硫法の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)請求項1記載の本発明に係る燃料油の脱硫法は、硫黄を含む連続相としての燃料油と分散相としての水を微細にかつ均一に混合して、燃料油中の硫黄原子と水分子中の水素原子を結合させて微細な水滴の表面に硫黄原子を集めた混合液となす混合処理工程と、微細な水滴を合一させると共に硫黄を含んだ水相と燃料油相に分離する分離処理工程と、を有して燃料油の硫黄含有量を低減させることを特徴とする。
(2)請求項2記載の本発明に係る燃料油の脱硫法は、請求項1記載の燃料油の脱硫法であって、分散相としての水のクラスターを細分化して改質する改質処理工程を、混合処理工程の前に有することを特徴とする。
(3)請求項3記載の本発明に係る燃料油の脱硫装置は、硫黄を含む連続相としての燃料油と分散相としての水を混合処理部で微細にかつ均一に混合して、燃料油中の硫黄原子と水分子中の水素原子を結合させて微細な水滴の表面に硫黄原子を集めた混合液となし、分離処理部で微細な水滴を合一させると共に硫黄を含んだ水相と燃料油相に分離して、燃料油の硫黄含有量を低減させることを特徴とする。
(4)請求項4記載の本発明に係る燃料油の脱硫装置は、請求項3記載の燃料油の脱硫装置であって、分散相としての水のクラスターを細分化して改質する改質処理部を、混合処理部の上流側に接続していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、水滴/燃料油エマルション(W/Oエマルション)を生成して燃料油相を回収することで、同燃料油相中の硫黄含有量を低減させる(脱硫する)ことができる。すなわち、燃料油、例えば、重油(炭化水素,CHで表す)中のイオウ原子(S)は酸素原子(O)と同じように、水分子(H2O)中の水素原子(H)と結合する(水素結合)。そして、水素結合によりS−CHを取り込んだ水は、W/Oエマルション中の水滴表面上にS−CHを連続相の油側にして並ぶ。つまり硫黄(S)は水滴の表面上に集まる。このような水滴を合一させることで油相(連続相)の下部に硫黄(S)を含んだ水相(硫黄(S)を含んだ油と水のミセルが上部に存在する水)がたまるので、硫黄(S)を含んだ下部水相を上部の油相から分離すれば、重油中の硫黄(S)濃度を低減することができる(脱硫)。ここで、本発明では、混合処理部により平均径1μm以下の液滴からなる水/燃料油エマルション(W/Oエマルション)を生成することができる。そして、混合処理部で混合処理された燃料油は均質化され、流動性が向上する。また、改質処理部で水を改質処理することで、水のクラスターの細分化→水の表面張力の低下→水の燃料油への浸透性向上→水滴−燃料油(連続相)の接触効率の増大化が図られる。その結果、水素結合の促進を図ることができる。本発明は、燃料油としての重油(A,C)、軽油、石油、灯油に限らず、原油又は原油及び/又は他の炭化水素の混合体を含むプロセス流の硫黄含有量の低減(脱硫)にも使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る脱硫装置の説明図。
【図2】他実施形態に係る脱硫装置の説明図
【図3】試料1の粒径分布測定結果図。
【図4】試料2の粒径分布測定結果図。
【図5】試料3の粒径分布測定結果図。
【図6】試料4の粒径分布測定結果図。
【図7】試料5の粒径分布測定結果図。
【図8】試料6の粒径分布測定結果図。
【図9】試料7の粒径分布測定結果図。
【図10】回転式撹拌混合器の流体撹拌部の正面断面説明図。
【図11】同流体撹拌部の平面説明図。
【図12】同流体撹拌部の底面説明図。
【図13】同流体撹拌部の分解斜視説明図。
【図14】上方の撹拌体の正面断面説明図。
【図15】上方の撹拌体の底面説明図。
【図16】下方の撹拌体の正面断面説明図。
【図17】下方の撹拌体の平面説明図。
【図18】静止型流体混合器の側面断面説明図。
【図19】同静止型流体混合器のエレメントの分解斜視説明図。
【図20】同静止型流体混合器のエレメントの側面断面説明図。
【図21】第1分流流路形成体の背面図。
【図22】第2分流流路形成体の正面図。
【図23】第1集合流路形成体の背面図。
【図24】第2集合流路形成体の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る脱硫装置Dの説明図である。また、図2は、他実施形態に係る脱硫装置D1の説明図である。以下に、脱硫装置D,D1について順次説明する。
【0009】
[脱硫装置Dの説明]
脱硫装置Dは、図1に示すように、第1処理工程部S1〜第6処理工程部S6を直列的に接続して、燃料油の硫黄含有量を低減(脱硫)するようにしている。
【0010】
第1処理工程部S1は、改質処理部K1と一次混合処理部K2と二次混合処理部K3と分離処理部K4とを直列的に接続して形成している。改質処理部K1ないしは二次混合処理部K3としては後述する静止型流体混合器Mを採用している。一次混合処理部K2としては後述する回転式撹拌混合器を採用している。分離処理部K4としては既存の遠心分離器を採用している。
【0011】
改質処理部K1の流入部には連通部としての連通パイプ1を介して給水部K5を連通連結して、同給水部K5から改質処理部K1に所定量の水を給水ポンプ等により供給するようにしている。改質処理部K1の流出部には連通パイプ1を介して一次混合処理部K2の流入部を連通連結している。V1は改質処理部K1の下流側に配置した第1三方弁、V2は改質処理部K1の上流側に配置した第2三方弁、2は両第1・第2三方弁V1,V2間に介設した戻り管、V3は一次混合処理部K2の上流側に配置した第3三方弁である。
【0012】
このようにして、改質処理工程として、必要に応じて、両第1・第2三方弁V1,V2を切換操作することで、戻り管2を通して水を循環的に改質処理部K1に送り込んで改質処理(分散相としての水のクラスターを細分化して処理する)を所定回数(例えば10回)ないしは所定時間(例えば15分間)だけ繰り返すことで、改質度合いを高めることができるようにしている。ここで、改質度合いとは、水分子間の水素結合によって多くの水分子が互いに結合して形成しているクラスター(会合体で(H2O)nの状態)を小さくする。つまり任意の水分子の周辺にある隣接水分子の数をできるだけ小さくするように改質処理する度合いをいう。本実施形態では、改質処理部K1として後述する静止型流体混合器により改質処理することで、任意の水分子の周辺にある隣接水分子の数が小さくかつ微細化された水分子の粒子が均一化された改質水となすことができる(以下に「改質処理された水」を「改質水」ともいう)。Pは圧送ポンプである。
【0013】
一次混合処理部K2のもう一つの流入部には別途に連通パイプ1を介して給油部K6を連通連結して、同給油部K6から一次混合処理部K2に所定量の燃料油(例えばA重油)を給油ポンプ等により供給するようにしている。一次混合処理部K2の流出部には連通パイプ1を介して二次混合処理部K3の流入部を連通連結している。
【0014】
このようにして、混合処理工程の第一段階である一次混合処理工程として、一次混合処理部K2で硫黄を含む連続相としての燃料油と分散相としての改質水を微細にかつ均一に混合処理して混合液としてのエマルション燃料を生成することができる。しかも、燃料油中の硫黄原子と水分子中の水素原子を結合させて微細な水滴の表面に硫黄原子を集めたエマルション燃料となすことができる。
【0015】
二次混合処理部K3の流出部には連通パイプ1を介して分離処理部K4の流入部を連通連結している。V4は二次混合処理部K3の下流側に配置した第4三方弁、V5は二次混合処理部K3の上流側に配置した第5三方弁、3は両第4・第5三方弁V4,V5間に介設した戻り管であり、必要に応じて、両第4・第5三方弁V4,V5を切換操作することで、戻り管3を通してエマルション燃料を循環的に二次混合処理部K3に送り込んで混合処理を所定回数(例えば10回)ないしは所定時間(例えば15分間)だけ繰り返すことができるようにしている。
【0016】
このようにして、混合処理工程の第二段階である二次混合処理工程として、二次混合処理部K3で一次混合処理部K2で生成されたエマルション燃料をさらに超微細にかつ均一に混合処理することができる。しかも、二次混合処理部K3での混合処理は、所定回数ないしは所定回数だけ循環的に繰り返すことで、微細化と均一化の精度を高めることができる。その結果、燃料油中の硫黄原子と水分子中の水素原子を結合させて超微細な水滴(水滴のメディアン径を1μm未満のナノレベルないしはサブミクロンレベル)の表面に硫黄原子を集めたエマルション燃料となすことができる。すなわち、硫黄原子(S)は超微細化した水滴の表面上に集まる。分離処理工程として、例えば、A重油では、このような水滴を分離処理部K4で合一させることで、上澄み相としての軽液であるA重油相(連続相)の下部に、硫黄原子(S)を含んだ沈殿相としての重液である水相(硫黄原子(S)を含んだ燃料油と水のミセルが上部に存在する水)がたまるので、分離処理部K4により硫黄原子(S)を含んだ下部水相と上部のA重油相を分離処理すれば、A重油相中の硫黄原子(S)の含有量が低減される。従って、硫黄原子(S)の含有量が低減されたA重油相を回収すれば、結果的にA重油中の硫黄原子(S)濃度を低減することができる(脱硫)。
【0017】
第2処理工程部S2は、第1処理工程部S1と同様に、改質処理部K1と一次混合処理部K2と二次混合処理部K3と分離処理部K4とを直列的に接続して形成している。そして、第1処理工程部S1の分離処理部K4で分離処理された燃料油相(硫黄原子(S)濃度が低減されている)と改質水(改質処理部K1で改質処理された水)を一次混合処理部K2と二次混合処理部K3で順次混合処理した後に、分離処理部K4で燃料油相(上澄み相としての軽液)と水相(沈殿相としての重液)に分離処理する。その結果、第2処理工程部S2では第1処理工程部S1よりも脱硫率が高くなる。
【0018】
第3処理工程部S3は、第2処理工程部S2と同様に、改質処理部K1と一次混合処理部K2と二次混合処理部K3と分離処理部K4とを直列的に接続して形成している。そして、第2処理工程部S2の分離処理部K4で分離処理された燃料油相(硫黄原子(S)濃度がさらに低減されている)と改質水を一次混合処理部K2と二次混合処理部K3で順次混合処理した後に、分離処理部K4で燃料油相(上澄み相としての軽液)と水相(沈殿相としての重液)に分離処理する。その結果、第3処理工程部S3では第2処理工程部S2よりも脱硫率が高くなる。K7は処理油貯留部であり、同処理油貯留部K7に第3処理工程部S3の分離処理部K4で分離された燃料油相を最終的に処理した燃料油として貯留する。なお、第3処理工程部S3の分離処理部K4と処理油貯留部K7との間には、適宜第3処理工程部S3と同様に形成した処理工程部を所望の数だけ介在させて、段階的に燃料油相の硫黄原子(S)濃度を低減させることで硫黄原子(S)濃度を0%に接近させることができる。すなわち、脱硫率を向上させることができる。
【0019】
より具体的には、例えば、燃料油としてのA重油と改質水を、体積比で85:15の割合で第1処理工程部S1に供給して混合処理する。この際、二次混合処理部K3で15分間循環させて混合処理する。次に、第1処理工程部S1の分離処理部K4で分離処理された燃料油相と改質水を、体積比で85:15の割合で第2処理工程部S2に供給して混合処理する。この際、二次混合処理部K3で15分間循環させて混合処理する。続いて、第2処理工程部S1の分離処理部K4で分離処理された燃料油相と改質水を、体積比で85:15の割合で第3処理工程部S3に供給して混合処理する。この際、二次混合処理部K3で15分間循環させて混合処理する。その後、第3処理工程部S3の分離処理部K4で分離処理された燃料油相を最終的に処理された燃料油として処理油貯留部K7に貯留する。
【0020】
また、図1に示すように、第1処理工程部S1〜第3処理工程部S3における各分離処理部K4で分離された沈殿相としての重液は、第4処理工程部S4〜第6処理工程部S6で再処理するようにしている。
【0021】
すなわち、第4処理工程部S4〜第6処理工程部S6の各工程部は、第1処理工程部S1〜第3処理工程部S3の各工程部と同様に、改質処理部K1と一次混合処理部K2と二次混合処理部K3と分離処理部K4とを直列的に接続して形成している。そして、第3処理工程部S3の分離処理部K4で分離処理された沈殿相としての重液と改質水を第4処理工程部S4で混合処理する。次に、第4処理工程部S4の分離処理部K4で分離処理された軽液と改質水を第5処理工程部S5で混合処理する。続いて、第5処理工程部S5の分離処理部K4で分離処理された軽液と改質水を第6処理工程部S6で混合処理し、第6処理工程部S6の分離処理部K4で分離処理された軽液を、脱硫率の高い燃料油として回収して前記処理油貯留部K7に貯留する。K8は廃棄処理部であり、同廃棄処理部K8には回収できなかった重液等を廃油として廃棄処理する。
【0022】
より具体的には、例えば、第3処理工程部S3で分離処理された沈殿相としての重液と改質処理された水を、体積比で85:15の割合で第4処理工程部S4に供給して混合処理する。この際、二次混合処理部K3で15分間循環させて混合処理する。次に、第4処理工程部S4の分離処理部K4で分離処理された燃料油相と改質水を、体積比で85:15の割合で第5処理工程部S5に供給して混合処理する。この際、二次混合処理部K3で15分間循環させて混合処理する。続いて、第5処理工程部S5の分離処理部K4で分離処理された燃料油相と改質水を、体積比で85:15の割合で第6処理工程部S6に供給して混合処理する。この際、二次混合処理部K3で15分間循環させて混合処理する。その後、第6処理工程部S6の分離処理部K4で分離処理された燃料油相を最終的に処理された燃料油として処理油貯留部K7に貯留する。
【0023】
ここで、第1処理工程部S1〜第6処理工程部S6において、脱硫率を大きくするためには水の混合割合を大きく設定するのが望ましいが、W/Oエマルション状態を確保するためには、その最大混合割合は、燃料油ないしは軽液ないしは重液:水=約27:約73(質量比)と考えられる。従って、燃料油等との混合率を勘案して、この最大混合割合以下の混合割合で水を混合することができる。
【0024】
[脱硫装置D1の説明]
脱硫装置D1は、図2に示すように、前記脱硫装置Dと基本的構造を同じくしている。すなわち、第1処理工程部S1〜第6処理工程部S6を直列的に接続して、燃料油の硫黄含有量を低減(脱硫)するようにしている。しかしながら、第1処理工程部S1と第2処理工程部S2と第4処理工程部S4と第5処理工程部S5には分離処理部K4を設けておらず、第1処理工程部S1→第2処理工程部S2→第3処理工程部S3に至る段階と、第4処理工程部S4→第5処理工程部S5→第6処理工程部S6に至る段階では分離処理することなく、混合液であるエマルション燃料に改質水を加水する点で異なる。かかる脱硫装置D1は、上澄み相としての軽液と沈殿相としての重液に分離しにくい燃料油等、例えば、C重油の脱硫に好適な装置である。
【0025】
より具体的には、例えば、燃料油としてのC重油と改質水を、体積比で85:15の割合で第1処理工程部S1に供給して混合処理する。この際、二次混合処理部K3で15分間循環させて混合処理する。次に、第1処理工程部S1で混合処理されて生成されたエマルション燃料と改質水を、体積比で85:15の割合で第2処理工程部S2に供給して混合処理する。この際、二次混合処理部K3で15分間循環させて混合処理する。続いて、第2処理工程部S1で混合処理されて生成されたエマルション燃料と改質水を、体積比で85:15の割合で第3処理工程部S3に供給して混合処理する。この際、二次混合処理部K3で15分間循環させて混合処理する。その後、第3処理工程部S3の分離処理部K4で分離処理された燃料油相を最終的に処理された燃料油として処理油貯留部K7に貯留する。
【0026】
そして、第3処理工程部S3で分離処理された沈殿相としての重液と改質水を、体積比で90:10の割合で第4処理工程部S4に供給して混合処理する。この際、二次混合処理部K3で15分間循環させて混合処理する。次に、第4処理工程部S4で混合処理されて生成されたエマルション燃料と改質水を、体積比で90:10の割合で第5処理工程部S5に供給して混合処理する。この際、二次混合処理部K3で15分間循環させて混合処理する。続いて、第5処理工程部S5で混合処理されて生成されたエマルション燃料と改質水を、体積比で90:10の割合で第6処理工程部S6に供給して混合処理する。この際、二次混合処理部K3で15分間循環させて混合処理する。その後、第6処理工程部S6の分離処理部K4で分離処理された燃料油相を最終的に処理された燃料油として処理油貯留部K7に貯留する。そして、回収できなかった重液等は廃油として廃棄処理部K8に廃棄処理する。
【0027】
また、本実施形態では二次混合処理部K3内に混合液であるエマルション燃料を繰り返し循環させることで混合処理度合い(微細化と均一化の度合い)を高めているが、一次混合処理部K2と二次混合処理部K3内に混合液であるエマルション燃料を順次繰り返し循環させることで混合処理度合いを高めることもできる。
【0028】
[第1実験結果]
第1実験として、燃料油としてのA重油を脱硫装置Dの第1処理工程部S1で処理した。改質処理部K1としての静止型流体混合器は、後述する混合ユニット21の外径が10cmで、混合ユニット21の数が10個のタイプを2個直列的に接続して形成し、これら2個の静止型流体混合器内に精製水(精製された不純物のない水)を1回通して改質処理することで改質水とした。一次混合処理部K2としての回転式撹拌混合器は、後述する上方の撹拌体10の外径が10cmのタイプを使用した。二次混合処理部K3としての静止型流体混合器は、後述する混合ユニット21の外径が3cmのタイプを使用した。混合処理としては、A重油:改質水=90:10(体積比)の混合流体を一次混合処理部K2と二次混合処理部K3内に順次繰り返し循環させて混合処理した。そして、混合処理する時間は、表1に示すように5分ずつ異ならせて試料1〜試料4を生成した。また、試料1〜試料4の硫黄分をそれぞれJIS K2541の試験方法で試験した。
【0029】
【表1】
【0030】
その結果、試料1〜試料4では上澄み相と沈殿相からなる分離相が形成されて、表1に示すように、各試料の上澄み相の硫黄分が元の硫黄分(石油製品試験成績表に提示された値:0.71)と比較して21%以上減少していた。これより本発明に係る脱硫装置Dに脱硫効果があることが分かった。
【0031】
また、表2及び図3〜図6は、試料1〜試料4の各上澄み相の粒度分布をレーザー回折・散乱法で試験した結果である。ここで、測定条件は、粒子屈折率;1.330−0.01i、分散媒名;トルエン、分散媒屈折率;1.490であった。かかる試験結果から100%近い粒子が1μm以下に超微細化されていることが分かった。
【0032】
【表2】
【0033】
[第2実験結果]
第2実験として、燃料油としてのC重油を脱硫装置Dの第1処理工程部S1で処理した。改質処理部K1としての静止型流体混合器は、後述する混合ユニット21の外径が10cmで、混合ユニット21の数が10個のタイプを2個直列的に接続して形成し、これら2個の静止型流体混合器内に精製水(精製された不純物のない水)を1回通して改質処理することで改質水とした。一次混合処理部K2としての回転式撹拌混合器は、後述する上方の撹拌体10の外径が10cmのタイプを使用した。二次混合処理部K3としての静止型流体混合器は、後述する混合ユニット21の外径が3cmのタイプを使用した。混合処理としては、一次混合処理部K2と二次混合処理部K3内にC重油と改質水の混合流体を順次繰り返し循環させて混合処理して試料5〜試料7を生成した。ここで、混合割合は、試料5と試料6がそれぞれC重油:改質水=85:15、試料7がC重油:改質水=70:30とした。そして、混合処理時間は、試料5と試料7がそれぞれ15分、試料6が20分とした。また、試料5〜試料7の硫黄分をそれぞれJIS K2541−6の試験方法で試験した。
【0034】
【表3】
【0035】
その結果、試料5〜試料7では、表3に示すように、各試料の硫黄分が元の硫黄分(石油製品試験成績表に提示された値:2.51)と比較して39%以上減少していた。これより本発明に係る脱硫装置Dに脱硫効果があることが分かった。そして、試料7が最も脱硫効果が高いことが分かった。
【0036】
また、表4及び図7〜図9は、試料5〜試料7の粒度分布をレーザー回折・散乱法で試験した結果である。ここで、測定条件は、粒子屈折率;1.330−0.01i、分散媒名;トルエン、分散媒屈折率;1.490であった。かかる試験結果から100%近い粒子が2μm以下に超微細化されていることが分かった。
【0037】
【表4】
【0038】
[回転式撹拌混合器の説明]
図10は一次混合処理部K2としての回転式撹拌混合器の主要部である流体撹拌部Aの正面断面説明図、図11は同流体撹拌部Aの平面説明図、図12は同流体撹拌部Aの底面説明図、図13は同流体撹拌部Aの分解斜視説明図、図14は上方の撹拌体10の正面断面説明図、図15は上方の撹拌体10の底面説明図、図16は下方の撹拌体11の正面断面説明図、及び、図17は下方の撹拌体11の平面説明図である。ここで、回転式撹拌混合器は、基本的に、撹拌・混合する被処理流体(例えば、液体及び/又は気体、液体及び液体、気体及び気体)を収容する収容槽(図示せず)と、同収容槽内に配置して被処理流体を撹拌・混合して混合液となす上記流体撹拌部Aと、同流体撹拌部Aを回転駆動させる駆動源としての電動モータ(図示せず)を具備している。そして、収容槽には二箇所の流入部と一箇所流出部を設けて、各流出・流入部に連結パイプ1の一端を連通連結している(図1及び図2参照)。
【0039】
流体撹拌部Aは、図10〜図13に示すように、一対(本実施形態では上下一対)の撹拌体10,11を対向状態に配置して、ビス17を介して同軸的に連結して構成している。そして、前記電動モーターの駆動軸5に上方の撹拌体10を着脱自在に取り付けて、駆動軸5と両撹拌体10,11とを一体的に同一軸線廻りに回転させるようにしている。また、下方の撹拌体11の回転中心である中心部には流入部12を形成し、両撹拌体10,11間には流入部12から放射線方向に複数(本実施形態では8本)の撹拌流路13を円周方向に均等に配置して形成し、両撹拌体10,11の外周縁部間には各撹拌流路13の先端部に連通する流出部14を形成している。18はビス孔である。図10中、aは回転方向である。
【0040】
このようにして、電動モーターにより駆動軸5を介して流体撹拌部Aを回転させることで、下方の撹拌体11の中心部に形成した流入部12を通して流入した流体を、両撹拌体10,11間に形成した8本の撹拌流路13を通して放射線方向に流動させて、両撹拌体10,11の外周縁部間に形成した各流出部14から流出させるようにしている。
【0041】
さらに具体的に説明すると、図16及び図17に示すように、下方の撹拌体11は円板状に形成すると共に、少なくとも上面を扁平な当接面11aとなしている。そして、中心部には円形に開口する流入部12を形成している。図6及び図7に示すように、上方の撹拌体10は下方の撹拌体11よりもやや大径円板状の本片10aと同本片10aの周縁部から延設した周壁形成片10bとから下方の撹拌体11を収容可能な凹部15を有する蓋状に形成している。そして、図2及び図4に示すように、本片10aの少なくとも下面を扁平な当接面10cとなしている。また、凹部15内に下方の撹拌体11を収容すると共に、本片10aの当接面10cに下方の撹拌体11の当接面11aを密接状態に面接触させている。そして、下方の撹拌体11の外周縁部11bと上記周壁形成片10bの内周面10dとの間にリング状の間隙16を形成し、同間隙16に前記流出部14を連通させている。図2,図3及び図6中、10eは駆動軸5に取り付けるための取付ボス部、10fは取付ボルト、10gはボルト孔である。
【0042】
撹拌流路13は、図12に示すように、流入部12側から流出部14側に向けて流路断面積を漸次縮小させて形成している。W1は撹拌流路13の基端幅、W2は撹拌流路13の先端幅であり、基端幅W1>先端幅W2となしている。図14及び図15に示すように、撹拌流路13内には四角形板状に形成した上方側蛇行流路形成片10hを仕切り状に配設すると共に、同上方側蛇行流路形成片10hの先端部を上方の撹拌体10から下方の撹拌体11に向けて突出させている。また、図16及び図17に示すように、撹拌流路13内には四角形板状に形成した下方側蛇行流路形成片11cを仕切り状に配設すると共に、同下方側蛇行流路形成片11cの先端部を下方の撹拌体11から上方の撹拌体10に向けて突出させている。そして、図2及び図4に示すように、これら蛇行流路形成片10h,11cは撹拌流路13の伸延方向に間隔を開けて交互に配置している。
【0043】
このようにして、流入部12から流入した流体は、各蛇行流路形成片10h,11cを越流しながら折り返し状に流動して、流出部側に蛇行状態に流動するようにしている。そして、流体は蛇行流動中に撹拌されるようにしている。
【0044】
撹拌流路13は、図15及び図17に示すように、上方の撹拌体10の流入部12側から流出部側14に向けて放射状に伸延する上側流路形成凹部13aと、下方の撹拌体11の流入部12側から流出部14側に向けて放射状に伸延する下側流路形成凹部13bとを対向状態に配置して形成している。
【0045】
また、図10に示すように、上方側蛇行流路形成片10hは上側流路形成凹部13a内から突出させて、同上側流路形成凹部13a内をその伸延方向に多数個に区画すると共に、先端の越流縁部10iを下側流路形成凹部13b内まで伸延させて配置している。下方側蛇行流路形成片11cは下側流路形成凹部13b内から突出させて、同下側流路形成凹部13b内をその伸延方向に多数個に区画すると共に、先端の越流縁部11dを上側流路形成凹部13a内まで伸延させて配置している。そして、各蛇行流路形成片10h,11cは互い違い(交互)に略等間隔で配置している。
【0046】
このように、各蛇行流路形成片10h,11cは互い違い(交互)に配置すると共に、各蛇行流路形成片10h,11cの越流縁部10i,11dを相互に対向する流路形成凹部13b,13a内まで伸延させることで、撹拌体10,11の回転軸線方向に往復して放射線方向に伸延する蛇行流路を形成することができると共に、この蛇行流路の振幅を大きく形成することができる。その結果、流体にせん断力が作用する蛇行流路の流路長を可及的に長く形成することができて、撹拌効率を向上させることができる。
【0047】
本実施形態に係る流体撹拌部Aは上記のように構成しているものであり、流体中にて一対の撹拌体10,11を一体的に回転させると、同流体は流入部12から流入されて撹拌流路13を経て流出部14から流出される。そして、かかる流入部12→撹拌流路13→流出部14→流入部12という流体の循環流路Rが形成される。
【0048】
この際、撹拌流路13は流入部12側から流出部14側に向けて流路断面積を漸次縮小させて形成することで、撹拌流路13を通過する流体の線速度を漸次増大させることができる。しかも、撹拌体10,11にはその中心部から周縁部に向けて遠心力が大きく作用する。そのため流体は流入部12側から流出部14側に撹拌流路13中を円滑に流れて、堅実に循環流路Rが形成される。そして、流入部12から流入した流体は各蛇行流路形成片10h,11cを越流しながら折り返し状に流動して流出部14側に蛇行状態に流動する。この蛇行状態に流動する流体にはせん断力が作用するが、このせん断力は速度勾配に比例するため、流体に作用するせん断力を流動方向において漸次増大させることができる。そのため、流体に作用するせん断力により流体への撹拌作用(分散作用)が増大される。その結果、流体を循環流路R中にて循環させることで撹拌効率を促進させることができる。
【0049】
しかも、上方側蛇行流路形成片10hは先端の越流縁部10iを下側流路形成凹部13b内に配置すると共に、下方側蛇行流路形成片11cは先端の越流縁部11dを上側流路形成凹部13a内に配置しているため、撹拌流路13を蛇行流路となすことができると共に、撹拌流路13の振幅を大きく形成することができる。その結果、流体にせん断力が作用する蛇行流路の流路長を可及的に長く形成することができて、撹拌効率を向上させることができる。
【0050】
さらには、上方の撹拌体10の外周縁部と上記周壁形成片10bの内周面10dとの間に形成したリング状の間隙16に流出部を連通させているため、流出部14から流出される流体を間隙16を通して所要の方向(本実施形態では下方)に案内することができる。この際、間隙16はリング状に形成されて流出部14と連通されているため、同流出部14から放出される流体は遠心力を受けながら間隙16に沿って円周方向に流動されて、スパイラル状の軌跡を描きながら前記した循環流路Rを形成する。そのため、循環流路Rがスムーズにかつ堅実に形成されて、この点からも撹拌効率を向上させることができる。
【0051】
また、他実施形態として、撹拌流路13の断面積に大→小→大→小の交互の変化をもたせることで、撹拌流路13内を流動する流体に脈流を形成して撹拌効率を増大させることもできる。例えば、各蛇行流路形成片10h,11cの越流縁部10i,11dを凹状ないしは凸状に形成することで、流路断面積が交互に大→小→大→小と変化するように形成することができる。
【0052】
[静止型流体混合器の説明]
改質処理部K1ないしは二次混合処理部K3としての静止型流体混合器Mについて、図18〜図24を参照しながら説明する。ここで、図18は静止型流体混合器Mの側面断面説明図、図19は同静止型流体混合器Mのエレメントの分解斜視説明図、図20は同静止型流体混合器Mのエレメントの側面断面説明図、図21は第1分流流路形成体28の背面図、図22は第2分流流路形成体29の正面図、図23は第1集合流路形成体30の背面図、及び、図24は第2集合流路形成体31の正面図である。
【0053】
すなわち、静止型流体混合器Mは、図18に示すように、両端が開口している円筒形状のケーシング体20内に単数ないしは複数(本実施形態では5組)の混合ユニット21を着脱自在に収容し、ケーシング体20の前・後端面に前・後部規制体22,23を着脱自在に取り付けている。そして、前・後部規制体22,23の中央部はケーシング体20の軸線上に配置して、前部規制体22の中央部に流入部としての流入口24を開口する一方、後部規制体23の中央部に流出部としての流出口25を開口している。20a,20bはケーシング体20の両端開口部に形成したフランジ、22aは前部規制体22の周縁部に形成した前部規制体フランジ、23aは後部規制体23の周縁部に形成した後部規制体フランジ、26,27はフランジ同士を連結する連結ボルトである。
【0054】
このようにして、流入口24から流入された単数種類ないしは複数種類の流体(例えば、液体及び/又は気体、液体及び液体、気体及び気体)が5個の混合ユニット21中を順次流動して混合処理され、流出口25から流出されるようにしている。
【0055】
混合ユニット21は、図18〜図24に示すように、分流流路r1を形成する一対の第1・第2分流流路形成体28,29と、集合流路r2を形成する一対の第1・第2集合流路形成体30,31とを、一体的連結用ボルト32,32により同軸的にかつ一体的に連結している。
【0056】
第1分流流路形成体28は、図19〜図21に示すように、円板状に形成した第1分流流路形成本片33の周縁部に短幅円筒状の周壁片34を下流側(流出口側)に突出状に形成して、キャップ状に形成している。そして、第1分流流路形成本片33の内面と周壁片34の内周面とで円板状の収容空間35を形成すると共に、同収容空間35内に上記第2分流流路形成体29と第1・第2集合流路形成体30,31を収容して、周壁片34の端面と第2集合流路形成体31の背面は面一状態となしている。第1分流流路形成本片33の中央部には軸線方向に開口する流入孔36を形成している。第1分流流路形成本片33の内面側には流入孔36から円周側に向けて放射状に伸延する複数(本実施形態では8条)の第1分流流路形成凹部33aを円周方向に等間隔に形成している。第1分流流路形成本片33の内面は第1分流流路形成凹部33aを除いて扁平な当接面33bとなしている。ケーシング体20内に混合ユニット21を収容した状態では、ケーシング体20の内周面に周壁片34の外周面を隙間のない密着状態に面接させている。第1分流流路形成本片33の外面は扁平な当接面33eとなして、前記した前部規制体22の内面に密着状に面接させている。37はボルト挿通孔である。
【0057】
第2分流流路形成体29は、図19,図20及び図22に示すように、第2分流流路形成本片38を第1分流流路形成本片33よりもやや小径の円板状に形成している。そして、第2分流流路形成本片38の周端面38bと上記周壁片34の内周面34aとの間に、ケーシング体20の軸線方向視で、略均等幅でリング状の連通流路r3を形成している。また、連通流路r3は上流側から下流側に拡径状に形成して、分流流路r1の終端部と集合流路r2の始端部とを連通している。第2分流流路形成本片38の第1分流流路形成本片33と対向する面側には、中央部から縁周側に向けて放射状に伸延する複数(本実施形態では8条)の第2分流流路形成凹部38aを円周方向に等間隔に形成している。第2分流流路形成本片38の内面は第2分流流路形成凹部38aを除いて扁平な当接面38cとなしている。39はボルト孔である。
【0058】
このようにして、ボルト挿通孔37とボルト孔39を符合させて一体的連結用ボルト32を挿通することで、第1分流流路形成本片33と第2分流流路形成本片38とを対向状態にて連結すると、第1分流流路形成本片33の当接面33bと第2分流流路形成本片38の当接面38cとが面接触すると共に、第1分流流路形成本片33の8本の第1分流流路形成凹部33aと第2分流流路形成本片38の8本の第2分流流路形成凹部38aとが整合して8本の分流流路r1が形成される(図18参照)。
【0059】
分流流路r1を形成する一方の第1分流流路形成凹部33aは、図21に示すように、流入孔36側の基端部から周縁部側の先端部に向けて流路断面積を漸次縮小させて形成している。W3は第1分流流路形成凹部33aの基端幅、W4は第1分流流路形成凹部33aの先端幅であり、基端幅W3>先端幅W4となしている。分流流路r1を形成する他方の第2分流流路形成凹部38aも同様に形成している。図19〜図21に示すように、第1分流流路形成凹部33a内には四角形板状に形成した第1蛇行流路形成片33cを仕切り状に配設すると共に、同第1蛇行流路形成片33cの先端部を第1分流流路形成本片33側から第2分流流路形成本片38側に向けて突出させている。また、図19,図20及び図22に示すように、第2分流流路形成凹部38a内には四角形板状に形成した第2蛇行流路形成片38dを仕切り状に配設すると共に、同第2蛇行流路形成片38dの先端部を第2分流流路形成本片38側から第1分流流路形成本片33側に向けて突出させている。そして、図18に示すように、これら蛇行流路形成片33c,38dは第1・第2分流流路形成凹部33a,38aの伸延方向に間隔を開けて交互に配置している。
【0060】
このようにして、流入孔36から流入した流体は、各蛇行流路形成片33c,38cを越流しながら折り返し状に流動して、周縁部側に蛇行状態に流動するようにしている。そして、流体は蛇行流動中に混合処理されるようにしている。
【0061】
また、図20に示すように、第1蛇行流路形成片33cは第1分流流路形成凹部33a内から突出させて、同第1蛇行流路形成片33c内をその伸延方向に多数個に区画すると共に、先端の越流縁部33dを第2分流流路形成凹部38a内まで伸延させて配置している。第2蛇行流路形成片38dは第2分流流路形成本片38内から突出させて、同第2分流流路形成本片38内をその伸延方向に多数個に区画すると共に、先端の越流縁部38eを第1分流流路形成凹部33a内まで伸延させて配置している。そして、各蛇行流路形成片33c,38dは互い違い(交互)に略等間隔で配置している。
【0062】
このように、各蛇行流路形成片33c,38dは互い違い(交互)に配置すると共に、各蛇行流路形成片33c,38dの越流縁部33d,38eを相互に対向する分流流路形成凹部33a,38a内まで伸延させることで、混合ユニット21の軸線方向に往復して放射線方向に伸延する蛇行流路(図18参照)を形成することができると共に、この蛇行流路の振幅を大きく形成することができる。その結果、流体にせん断力が作用する蛇行流路の流路長を可及的に長く形成することができて、混合する流体の超微細化(1μm未満のナノレベル)かつ均一化を効率良く行うことができる。
【0063】
また、第1集合流路形成体30は、図18〜図20及び図23に示すように、薄肉円板状の第1集合流路形成本片30aを前記第2分流流路形成本片38の外径と略同一径に形成している。第2分流流路形成本片38の背面は扁平な当接面38fとなす一方、同当接面38fと対向する第1集合流路形成本片30aの面も扁平な当接面30bとなして、両当接面38f,30bを面接触させている。第1集合流路形成本片30aの背面は扁平な対向面30cとなすと共に、同対向面30cにリング状の越流突条片30dを第1集合流路形成本片30aの中心点と同心的に下流側へ突出させて一体成形している。40はボルト孔である。
【0064】
第2集合流路形成体31は、図18〜図20及び図24に示すように、薄肉円板状の第2集合流路形成本片31aを前記周壁片34の内径と略同一径に形成している。ここで、第2集合流路形成本片31aの周端面は周壁片34の内周面に密着して周壁片34の開口端面を密閉することで集合流路r2から流体が漏れないようにしている。第1集合流路形成本片30aの対向面30cと対向する第2集合流路形成本片31aの面も扁平な対向面31cとなすと共に、同対向面31cにリング状の越流突条片31dを第2集合流路形成本片31aの中心点と同心的に上流側へ突出させて一体成形している。越流突条片31dは越流突条片30dよりも大径に形成して、同越流突条片30dの外周側にあって半径方向に間隔を開けて対向状態に配置している。31eは越流突条片31dの先端縁部から第1集合流路形成本片30aの対向面30c側に突出させて形成した対向間隔保持片である。第2集合流路形成本片31aの背面は扁平な当接面31fとなして、第1分流流路形成本片33の当接面33eないしは後部規制体23の内面に密着状に面接させている。41は第2集合流路形成本片31aの中央部に形成した流出孔、42は内周面に雌ネジを形成した筒状の螺着兼間隔保持用ボス部である。
【0065】
そして、ボルト孔40と螺着兼間隔保持用ボス部42を符合させて、第1集合流路形成体30と第2集合流路形成体31を対向させると共に、第1集合流路形成本片30aの対向面30cに第2集合流路形成体31の対向間隔保持片31eと螺着兼間隔保持用ボス部42の各先端面を当接させることで、図18に示すように、集合流路r2が形成されている。しかも、集合流路r2は、リング状の連通流路r3の終端部にその始端部が連通する一方、流出孔41にその終端部が連通している。ここで、集合流路r2は、周縁側であるリング状の連通流路r3から流出した流体を、中心部側である流出孔41に向かって集合状態に流動させると共に、その途中で混合ユニット21の軸線方向に対向させて配置した越流突条片30d,31dを越流させて蛇行状に流動させるようにしている。
【0066】
従って、8本の分流流路r1をそれぞれ蛇行しながら流通することで混合処理された流体は、各分流流路r1の終端部からリング状の連通流路r3の始端部、そして、連通流路r3の終端部から集合流路r2の始端部に均等に圧送され、同均等状態を保ちながら全周に亘って集合流路r2の始端部から中心側の終端部に向けて蛇行しながら流動される。その結果、集合流路r2における圧力損失を低減させながら混合均一性を向上させることができる。
【0067】
また、静止型流体混合器Mは、図18に示すように、流入口24には最上流側に配置した混合ユニット21の流入孔36が連通し、上流側の混合ユニット21の流出孔41とそれに隣接する下流側の混合ユニット21の流入孔36が連通し、最下流側に配置した混合ユニット21の流出孔41に流出口25が連通する。そして、各混合ユニット21内では分流流路r1と連通流路r3と集合流路r2が連通して、これらの流路r1,r3,r2を流体が通過する間に超微細にかつ均一に混合処理される。
【0068】
本実施形態では、一次混合処理部K2において、中心部から略同一平面上を放射線方向に直線状に伸延する複数の撹拌流路13を設けて、遠心力により各撹拌流路13中を蛇行させながら流動させることで流体にせん断力を加えて、流体を微細化かつ均一化することができる。しかも、各撹拌流路13中の蛇行流動は循環的に繰り返すことができるため、流体を微細化かつ均一化する撹拌効率を良好に確保することができる。
【0069】
また、改質処理部K1と二次混合処理部K3において、静止型流体混合器Mは、流入孔24と連通する中心部から略同一平面上を放射線方向に直線状に伸延させて複数の分流流路r1を形成すると共に、同分流流路r1は流体を蛇行させながら流動させて、同流体にせん断力を加えるように形成し、上記分流流路r1の終端部はリング状の連通流路r3を介して板状空間となした集合流路r2の周縁部である始端部に連通させて、上記集合流路r2の始端部の周囲から流体を流入させると共に、同集合流路r2内を流出孔25と連通する中心部である終端部に向けて平面状に緩やかに蛇行させて流動させることで、径方向のみならず周方向にも面的に均一化させることができるようにしている。
【0070】
すなわち、分流流路r1と連通流路r3とを形成する一対の第1・第2分流流路形成体28,29と、集合流路r2を形成する一対の第1・第2集合流路形成体30,31とを、同軸的にかつ一体的に連結して、連通流路r3の終端部と集合流路r2の始端部とを連通させ、第1分流流路形成体28の中心部に流入孔24を形成する一方、第2集合流路形成体31の中心部に流出孔25を形成している。
【0071】
そして、一対の第1・第2集合流路形成体30,31は、板状に形成した第1・第2集合流路形成本片30a,31aの対向面30c,31cにそれぞれリング状の越流突条片30d,31dを突出状に形成すると共に径方向に間隔を開けて対向状態に配置して、一対の第1・第2集合流路形成体30,31間に平面状に緩やかに蛇行する集合流路r2を形成している。
【0072】
従って、中心部から略同一平面上を放射線方向に直線状に伸延する複数の分流流路r1を設けて、各分流流路r1中を蛇行させながら流動させることで流体にせん断力を加えて、流体を超微細化かつ均一化することができる。そして、分流流路r1の終端部をリング状の連通流路r3を介して略円板状空間となした集合流路r2の周縁部である始端部に連通させ、分流流路r1から流出した流体をリング状の連通流路r3を介して集合流路r2の始端部の周囲から略均等に流入させると共に、集合流路r2内を中心部である終端部に向けて平面状に緩やかに蛇行させて流動させることで、径方向のみならず周方向にも面的に均一化させることができる。そのため、流体を超微細化かつ均一化する改質処理部K1での改質処理効率ないしは二次混合処理部K3での混合処理効率を良好に確保することができる。
【符号の説明】
【0073】
D 脱硫装置
K1 改質処理部
K2 一次混合処理部
K3 二次混合処理部
K4 分離処理部
K5 給水部
K6 給油部
1 連結パイプ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄を含む連続相としての燃料油と分散相としての水を微細にかつ均一に混合して、燃料油中の硫黄原子と水分子中の水素原子を結合させて微細な水滴の表面に硫黄原子を集めた混合液となす混合処理工程と、
微細な水滴を合一させると共に硫黄を含んだ水相と燃料油相に分離する分離処理工程と、
を有して燃料油の硫黄含有量を低減させることを特徴とする燃料油の脱硫法。
【請求項2】
分散相としての水のクラスターを細分化して改質する改質処理工程を、混合処理工程の前に有することを特徴とする請求項1記載の燃料油の脱硫法。
【請求項3】
硫黄を含む連続相としての燃料油と分散相としての水を混合処理部で微細にかつ均一に混合して、燃料油中の硫黄原子と水分子中の水素原子を結合させて微細な水滴の表面に硫黄原子を集めた混合液となし、
分離処理部で微細な水滴を合一させると共に硫黄を含んだ水相と燃料油相に分離して、燃料油の硫黄含有量を低減させることを特徴とする燃料油の脱硫装置。
【請求項4】
分散相としての水のクラスターを細分化して改質する改質処理部を、混合処理部の上流側に接続していることを特徴とする請求項3記載の燃料油の脱硫装置。
【請求項1】
硫黄を含む連続相としての燃料油と分散相としての水を微細にかつ均一に混合して、燃料油中の硫黄原子と水分子中の水素原子を結合させて微細な水滴の表面に硫黄原子を集めた混合液となす混合処理工程と、
微細な水滴を合一させると共に硫黄を含んだ水相と燃料油相に分離する分離処理工程と、
を有して燃料油の硫黄含有量を低減させることを特徴とする燃料油の脱硫法。
【請求項2】
分散相としての水のクラスターを細分化して改質する改質処理工程を、混合処理工程の前に有することを特徴とする請求項1記載の燃料油の脱硫法。
【請求項3】
硫黄を含む連続相としての燃料油と分散相としての水を混合処理部で微細にかつ均一に混合して、燃料油中の硫黄原子と水分子中の水素原子を結合させて微細な水滴の表面に硫黄原子を集めた混合液となし、
分離処理部で微細な水滴を合一させると共に硫黄を含んだ水相と燃料油相に分離して、燃料油の硫黄含有量を低減させることを特徴とする燃料油の脱硫装置。
【請求項4】
分散相としての水のクラスターを細分化して改質する改質処理部を、混合処理部の上流側に接続していることを特徴とする請求項3記載の燃料油の脱硫装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2011−12108(P2011−12108A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155334(P2009−155334)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(504244173)株式会社MGグローアップ (15)
【出願人】(392024518)丸福水産株式会社 (16)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(504244173)株式会社MGグローアップ (15)
【出願人】(392024518)丸福水産株式会社 (16)
【Fターム(参考)】
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