説明

燃料電池および発電方法

【課題】 電極反応を促進することで安定かつ十分な起電力を発揮することが可能であり、安全で簡易に反応物質を貯蔵、供給することができる燃料電池および発電方法を提供する。
【解決手段】 発電部と、発電寄与物質貯蔵部と、発電寄与物質輸送手段と、を具備し、前記発電部が、第1の電極が配置された酸性媒体と、第2の電極が配置された塩基性媒体と、を備え、少なくともいずれかに反応物質が含有されてなり、該反応物質貯蔵部から前記反応物質を前記発電部へ供給する反応物質輸送手段を前記発電寄与物質輸送手段に備えている燃料電池、および、該酸性媒体と、該塩基性媒体とを互いに隣接もしくは近設させた状態で、反応物質により、前記酸性媒体中での酸化反応および/または前記塩基性媒体中での還元反応を生じさせて発電を行い、前記反応物質が反応物質貯蔵部から連続的に供給され、かつ、発電反応によって生じた生成物を生成物回収部に回収する発電方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に家庭用等として好ましく用いることができる燃料電池、および発電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池は、物質が持つ化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する装置である。また、その化学エネルギーを使い切るまで電力を提供する一次電池、使い切った後に充電操作によって化学エネルギーを再び蓄えて再使用が可能な二次電池、さらに、外部から化学エネルギーを有する物質を継続的に供給することで電気エネルギーを得る燃料電池に分類できる。現在、多種類の電池が開発されているが、各電池はそれぞれ、環境安全性、経済性、供給できる電気エネルギー量、携帯性や貯蔵性、使用環境対応性、リサイクル性等の各項目について長所と短所が異なるので、使用目的に合わせて電池が選択され、実用に供されている。いずれの電池においても共通の重要な技術要素は、どのような化学物質の反応を利用するのか、その反応をどのようにして促進するのか、また、その化学物質をどのような形態で貯蔵・供給・回収するのかという点にある。
【0003】
電池では、還元反応(相手に電子を与えるか、もしくは酸素を引き抜く)を引き起こす還元剤と、酸化反応(相手から電子を引き抜くか、もしくは酸素を与える)を引き起こす酸化剤と、の2種の化学物質を使用する。その化学反応を、相対する2つの電極で別々に引き起こすことによって、発生した電子のエネルギーを外部に取り出す(電子の発生に伴って両極で生成したイオンは電池内部で中和される)。それらの反応効率は、使用する化学物質の種類と反応様式、電極材質や活性度、また、電解質を含めた反応場の環境に依存する。さらに、どのような物質を選択して電池を構成するかは、前述した使用時のみならず、製造時・廃棄時も含めた電池システム全体の良否に関わるポイントである。
【0004】
近年、燃料電池の研究、開発が盛んに行われている。というのも、燃料電池は、絶えず外部から燃料を供給しつづければ充電することなく連続的に発電することができる上、発電効率が高く、環境への負荷が低いことから、多方面への利用が期待されているからである。
その用途の一つとして家庭用燃料電池が上げられ、1kW級の発電容量で電力を供給し、さらに排熱を利用することで省エネルギー化を図る家庭用コージェネレーションシステムとしての開発が進められている。その燃料としては、主に水素が使用されているが、水素は可燃性の物質であり、取り扱いには細心の注意を払わなければならない。また、水素は常温常圧で気体であることから、貯蔵方法にも注意が必要である。
【0005】
一方で、灯油やLPGのような炭化水素を改質して水素を取り出し、上記のような燃料電池に使用することも検討されている。上記の炭化水素は一般に広く普及しており、その貯蔵方法や供給方法も確立されている。例えば、LPGやナフサ、灯油に代表される炭化水素を改質する改質器を内蔵した内部改質式燃料電池が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、炭化水素を燃料に用いる場合、水素を取り出す燃料改質の操作および装置が必要となる。さらに、その操作で環境に負荷がかかる二酸化炭素を排出することになる。
【特許文献1】特開平5−190194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上から、本発明は、従来技術の問題点を解決することを目的とする。
すなわち、本発明は、電極反応を促進することで安定かつ十分な起電力を発揮することが可能であり、安全で簡易に反応物質を貯蔵、供給することができる燃料電池および発電方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は下記の本発明により達成される。
すなわち、本発明は、発電部と、発電寄与物質貯蔵部と、発電寄与物質輸送手段と、を具備する燃料電池であって、前記発電部が、少なくとも、第1の電極が配置された酸性媒体と、第2の電極が配置された塩基性媒体と、を備え、前記酸性媒体および前記塩基性媒体が互いに隣接もしくは近設されてなり、前記酸性媒体および前記塩基性媒体の少なくともいずれかに反応物質が含有されてなり、さらに、前記発電寄与物質貯蔵部が反応物質貯蔵部を備え、該反応物質貯蔵部から前記反応物質を前記発電部へ供給する反応物質輸送手段を前記発電寄与物質輸送手段に備えていることを特徴とする燃料電池である。
【0008】
本発明の燃料電池においては、下記第1〜第19の態様を少なくとも1つ適用することが好ましい。
(1)前記発電部、発電寄与物質貯蔵部および発電寄与物質輸送手段に加え、さらに、発電反応によって生じた生成物を回収する生成物回収部と、前記生成物を前記生成物回収部へ輸送する生成物輸送手段を具備する態様である。
(2)前記発電寄与物質貯蔵部が、さらに、前記酸性媒体を貯蔵する酸性媒体貯蔵部および/または前記塩基性媒体を貯蔵する塩基性媒体貯蔵部を具備し、かつ、前記発電寄与物質輸送手段が、さらに、前記酸性媒体貯蔵部から前記酸性媒体を前記発電部へ供給する酸性媒体輸送手段および/または前記塩基性媒体貯蔵部から前記塩基性媒体を前記発電部へ供給する塩基性媒体輸送手段を具備する態様である。
(3)前記反応物質貯蔵部が、前記酸性媒体貯蔵部および前記塩基性媒体貯蔵部の少なくとも一方に組み込まれ、前記反応物質は前記酸性媒体貯蔵部に貯蔵された前記酸性媒体および/または前記塩基性媒体貯蔵部に貯蔵された前記塩基性媒体中に含有され、該酸性媒体および/または塩基性媒体と共に、前記発電部へ供給される態様である。
(4)前記発電寄与物質輸送手段および前記生成物輸送手段が同一の動力源にて作動する態様である。
(5)前記酸性媒体が酸性水溶液からなり、かつ、前記塩基性媒体が塩基性水溶液からなる態様である。
(6)前記発電部において、前記反応物質が前記酸性媒体および前記塩基性媒体のそれぞれに含有されてなる態様である。
(7)前記酸性媒体に含有される前記反応物質としての第1の物質と、前記塩基性媒体に含有される前記反応物質としての第2の物質とが、同一の物質である態様である。
(8)前記反応物質が、過酸化水素である態様である。
(9)前記過酸化水素が、前記発電部において、塩基性媒体中に含有されてなる燃料電池であって、前記発電反応によって生じる生成物中の酸素を分離する手段を備えている態様である。
(10)前記発電部において、前記酸性水溶液と前記塩基性水溶液とがその内部で層流を形成する流路構造が設けられている態様である。
(11)前記酸性水溶液が、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、塩化水素酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、過塩素酸、過ヨウ素酸、オルトリン酸、ポリリン酸、硝酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロ珪酸、ヘキサフルオロリン酸、ヘキサフルオロ砒酸、ヘキサクロロ白金酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、蓚酸、サリチル酸、酒石酸、マレイン酸、マロン酸、フタル酸、フマル酸、およびピクリン酸からなる群より選択される酸を1以上含む態様である。
(12)前記塩基性水溶液が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、および水酸化テトラブチルアンモニウムを含む群から選択される塩基を1以上含む、または、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、アルミン酸ナトリウム、およびアルミン酸カリウムを含む群から選択されるアルカリ金属塩を1以上含む態様である。
(13)前記酸性媒体が酸性のイオン伝導性ゲルから構成され、かつ、前記塩基性媒体が塩基性のイオン伝導性ゲルから構成される態様である。
(14)前記酸性のイオン伝導性ゲルが、酸性水溶液を水ガラス、無水二酸化ケイ素、架橋ポリアクリル酸、寒天、またはその塩類によりゲル化してなる態様である。
(15)前記塩基性のイオン伝導性ゲルが、塩基性水溶液をカルボキシメチルセルロース、架橋ポリアクリル酸、またはその塩類によりゲル化してなる態様である。
(16)前記第1の電極が、白金、白金黒、酸化白金被覆白金、銀、金、表面を不動態化したチタン、表面を不動態化したステンレス、表面を不動態化したニッケル、表面を不動態化したアルミニウム、炭素構造体、アモルファスカーボン、およびグラッシーカーボンからなる群より選択される1以上の材料から構成される態様である。
(17)前記第2の電極が、白金、白金黒、酸化白金被覆白金、銀、金、表面を不動態化したチタン、表面を不動態化したステンレス、表面を不動態化したニッケル、表面を不動態化したアルミニウム、炭素構造体、アモルファスカーボン、およびグラッシーカーボンからなる群より選択される1以上の材料から構成される態様である。
(18)前記第1の電極および第2の電極が、板状、薄膜状、網目状、または繊維状である態様である。
(19)前記第1の電極および第2の電極が、無電解メッキ法、蒸着法、またはスパッタ法により、前記酸性媒体および前記塩基性媒体にそれぞれ配置されてなる態様である。
【0009】
また、本発明は、第1の電極が配置された酸性媒体と、第2の電極が配置された塩基性媒体とを互いに隣接もしくは近設させた状態で、前記酸性媒体および前記塩基性媒体の少なくともいずれかに含有されてなる反応物質により、前記酸性媒体中での酸化反応および/または前記塩基性媒体中での還元反応を生じさせて、発電を行う発電方法であって、前記反応物質が反応物質貯蔵部から連続的に前記酸性媒体および前記塩基性媒体の少なくともいずれかに供給され、かつ、発電反応によって生じた生成物を生成物回収部に回収することを特徴とする発電方法である。
【0010】
本発明の発電方法においては、下記第1の態様を適用することが好ましい。
(1)前記反応物質として過酸化水素を塩基性媒体中に含有し、前記生成物を回収する際に生成物中の酸素を分離する態様である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電極反応を促進することで、安定して十分な起電力を発揮させることが可能であり、かつ、安全で簡易に反応物質を貯蔵、供給することができる燃料電池および発電方法を提供することができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の燃料電池および発電方法について詳細に説明する。
【0013】
<燃料電池>
本発明の燃料電池は、大きく分けて(1)発電部と(2)発電寄与物質貯蔵部と(3)発電寄与物質輸送手段との3部から構成され、さらに、(4)生成物回収部および(5)生成物輸送手段を設けることができる。
なお、本発明において「発電寄与物質」とは、後述の反応物質と、酸性媒体と、塩基性媒体と、をさす。
【0014】
(1)発電部
発電部は、第1の電極が配置された酸性媒体と、第2の電極が配置された塩基性媒体とを備えてなる。そして、酸性媒体および塩基性媒体は互いに隣接もしくは近設してなり、酸性媒体および塩基性媒体の少なくともいずれかに反応物質が含有されてなる。
本発明の電池は、上述の各部材を備える構成を有するバイポーラー型の電池である。そして、後述する反応物質貯蔵部および反応物質輸送手段と組み合わせることで、燃料電池とすることが可能となる。なお、本発明において、バイポーラー型の電池とは、酸性媒体と塩基性媒体とが隣接もしくは近設し、これらの中に電気エネルギーを取り出すための物質(反応物質)と電極が含まれる構成を有するものである。
尚、前記反応物質を媒体(酸性媒体および/または塩基性媒体)中に含有させる方法として、発電反応開始以前から媒体中に混合もしくは分散するか、電極の近傍に設置された流路を通して、あるいは、毛細管への染込みを利用して、あるいは直接的に媒体へ添加される方式としてもよい。
【0015】
酸性媒体または塩基性媒体に含有される反応物質は、下記のような作用により正極側および/または負極側での電極反応を生じさせ、効率のよい電気エネルギーの発生を可能とする。すなわち、かかる反応物質が、酸性媒体または塩基性媒体に存在しないと、電池としての十分な起電力が得られないことになる。
【0016】
例えば、上記反応物質が、酸性媒体および塩基性媒体のそれぞれに含有されてなる場合、酸性媒体中の反応物質である第1の物質は、その酸性媒体中に含まれる水素イオンを伴って第1の電極から電子を奪う反応を生じさせる。一方、塩基性媒体中の反応物質である第2の物質は、その塩基性媒体中に含まれる水酸化物イオンを伴って第2の電極へと電子を供与する反応を生じさせる。
【0017】
特に、本発明における燃料電池は、まず、(1)上記の酸性媒体中またはこれに接触する電極近傍で第1の物質および水素イオンが共存し、共に反応系物質として第1の電極から電子を奪う(酸化する)反応を引き起こす。また、(2)上記塩基性媒体中あるいはこれに接触する電極近傍で第2の物質および水酸化物イオンが共存し、共に反応系物質として電極に電子を与える(還元する)反応を引き起こす。このような(1)および(2)の反応が同時に進行して、外部回路を駆動する電気エネルギーを発生する。
【0018】
なお、本発明の電池は、バイポーラー型反応場において、酸性媒体中の水素イオンは、第1の物質による第1の電極から電子を奪う反応に加わり、また、その濃度増加は反応を促進する(化学平衡を生成系方向にずらす)作用を有する。一方、塩基性媒体を構成する水酸化物イオンは、第2の物質による第2の電極へと電子を供与する反応に加わり、また、その濃度増加は反応を促進する作用を有する。このため、水素イオン濃度あるいは水酸化物イオン濃度を高くする、即ち、酸性媒体中ではpHを低くし、塩基性媒体ではpHを高くすることで反応を増強させることが可能となり、出力を高めることが可能な構成を有している点でも有効である。
以下、発電部を構成する各部材について、詳細に説明する。
【0019】
(酸性媒体および塩基性媒体)
本発明において、酸性媒体は、pH7未満(好ましくは、pHが3以下)である媒体を指し、水素イオンが存在する酸性反応場を形成し得ることが好ましい。また、塩基性媒体はpH7を超える(好ましくは、pHが11以上)媒体を指し、水酸化物イオンが存在する塩基性反応場を形成し得ることが好ましい。
これらの酸性媒体および塩基性媒体としては、それぞれが独立に、液体状態、ゲル状態、固体状態のいずれの態様であってもよいが、両媒体が同じ態様であることが好ましい。また、酸性媒体および塩基性媒体としては、有機化合物、無機化合物の種類に関らず用いることができる。
【0020】
酸性媒体と塩基性媒体との好ましい組み合わせは、例えば、硫酸や塩酸、リン酸等の酸性水溶液と、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、アンモニウム化合物等の塩基性水溶液と、の水溶液の組み合わせ;それらの水溶液をゲル化剤によってゲル化したイオン伝導性ゲルの組み合わせ;などが挙げられる。
【0021】
より具体的には、酸性水溶液としては、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、塩化水素酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、過塩素酸、過ヨウ素酸、オルトリン酸、ポリリン酸、硝酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロ珪酸、ヘキサフルオロリン酸、ヘキサフルオロ砒酸、ヘキサクロロ白金酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、蓚酸、サリチル酸、酒石酸、マレイン酸、マロン酸、フタル酸、フマル酸、およびピクリン酸からなる群より選択される酸を1以上含む水溶液を用いることが好ましく、中でも、強酸である、硫酸、塩化水素酸、硝酸、リン酸を含むことがより好ましい。
【0022】
また、塩基性水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、および、水酸化テトラブチルアンモニウムを含む群から選択される塩基を1以上含む、または、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、アルミン酸ナトリウム、およびアルミン酸カリウムを含む群から選択されるアルカリ金属塩を1以上含む水溶液を用いることが好ましく、中でも、強塩基である、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを含むことがより好ましい。
【0023】
さらに、酸性媒体としての酸性のイオン伝導性ゲルは、上記のような酸性水溶液を、水ガラス、無水二酸化ケイ素、架橋ポリアクリル酸、寒天、またはその塩類などのゲル化剤を用いて、ゲル化したものが好ましい。
一方、塩基性媒体としての塩基性のイオン伝導性ゲルは、上記のような塩基性水溶液を、例えば、カルボキシメチルセルロース、架橋ポリアクリル酸、またはその塩類をゲル化剤として用いて、ゲル化したものが好ましい。
なお、上記の酸や塩基は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、ゲル化剤の使用方法も同様である。
【0024】
発電部において、酸性媒体および塩基性媒体は、互いに隣接もしくは近設することを必須とするが、これは、酸性媒体中で水素イオンを放出することにより生成した対陰イオンと、塩基性媒体中で水酸化物イオンを放出したことにより生成した対陽イオンと、により塩を形成させて電荷のバランスをとることを可能とするためである。そのため、例えば、上述のように、両媒体が、酸性水溶液と塩基性水溶液とからなる場合、生成した陽イオンおよび/または陰イオンを透過可能な特性を有している膜、あるいは、生成した陽イオンおよび/または陰イオンが移動可能な塩橋を用いれば、酸性媒体と塩基性媒体との間が分離される態様であってもかまわない。また、それぞれの全体が隣接している必要はなく、その一部が隣接していればよい。
【0025】
また、本発明の燃料電池が、後述する発電寄与物質貯蔵部において酸性媒体貯蔵部および/または塩基性媒体貯蔵部を具備する形態である場合、酸性媒体および/または塩基性媒体は、後述する酸性媒体輸送手段および/または塩基性媒体輸送手段によって連続的に発電部に供給され、常にフレッシュな反応場が構築され、常時安定した発電が可能となる。
【0026】
(反応物質)
反応物質は、酸性媒体中に含有させる場合は、当該酸性媒体中で、水素イオンを伴って第1の電極から電子を奪う酸化反応を生成させる物質(酸化剤)であれば、如何なるものをも用いることができる。一方、塩基性媒体中に含有させる場合は、当該塩基性媒体中で、水酸化物イオンを伴って第2の電極へと電子を供与する還元反応を生成させる物質(還元剤)であれば、如何なるものをも用いることができる。
ここでは、好ましい態様として、酸性媒体に含有される反応物質としての第1の物質、および、塩基性媒体に含有される反応物質としての第2の物質を例に、以下詳細に説明する。
【0027】
第1の物質としては、水素イオン濃度が高い場合に反応が促進される物質であることが好ましい。具体的には、過酸化水素や酸素のほか、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸等の次亜ハロゲン酸等を用いることができる。また、これらの物質を含有する液体、あるいは、化学変化によってこれらの物質を放出する液体、の状態で第1の物質を供給するようにしてもよい。
【0028】
また、第2の物質としては、水酸化物イオン濃度が高い場合に反応が促進される物質であることが好ましい。具体的には、過酸化水素、水素、ヒドラジン等を用いることができる。また、これらの物質を含有する液体、あるいは、化学変化によってこれらの物質を放出する液体、の状態で第2の物質を供給するようにしてもよい。
【0029】
第1の物質または第2の物質としては、鉄、マンガン、クロム、バナジウムといった酸化・還元反応によって価数を変化できる金属イオンや、それらの金属錯体を用いることができ、やはりこれらを含有する液体等を用いてこれらの物質を供給することもできる。
【0030】
尚、酸性媒体および塩基性媒体のそれぞれに反応物質を含有させる場合には、第1の物質および第2の物質が、同一成分からなることが好ましい。このような物質は、酸性媒体中で、水素イオンを伴って第1の電極から電子を奪う酸化反応を生成させ、塩基性媒体中では、水酸化物イオンを伴って第2の電極へと電子を供与する還元反応を起こさせる性質を有する。この場合には、電池の構成が容易になり、従来の電池で大きな課題であった正極側と負極側の化学物質の分離膜の選択の自由度が拡がるとともに、酸性媒体と塩基性媒体が混合されない状態に保てる場合には必ずしも分離膜を必要としない。
【0031】
上記のように、酸化剤および還元剤のどちらにも使用できる物質としては、特に過酸化水素が好ましい。この理由については後で詳細に説明する。なお、過酸化水素を含有する液体、あるいは、化学変化によって過酸化水素を放出する液体を用いて、過酸化水素を供給することが、取り扱いがより簡易になる点で好ましい。過酸化水素の供給手段である「液体」は、溶液(溶媒として、水、有機溶媒等を含む)、分散液、ゲルの形態のいずれであってもよい。また、これらの使用形態は、上述した酸性媒体および塩基性媒体の形態との好ましい組み合わせにより選択されることが望ましい。
また、過酸化水素濃度は、後述する反応式から明らかなように、反応が過不足なく進むことから、酸性媒体中の水素イオン濃度および塩基性媒体中の水酸化物イオン濃度と1(過酸化水素):2(水素イオン、水酸化物イオン)とすることが好ましく、酸性媒体中の水素イオン濃度と塩基性媒体中の水酸化物イオンの濃度を同じとすることがより好ましい。
また、前述のように、過酸化水素は、反応開始以前から媒体(酸性媒体および/または塩基性媒体)中に混合もしくは分散されるか、電極の近傍に設置された流路を通して、あるいは、毛細管への染込みを利用して、あるいは直接的に媒体へ添加される方式としてもよい。
【0032】
このような構成によれば、電極での反応に水素イオンH+と水酸化物イオンOH-が関与する場合、酸性媒体中で第1の物質が水素イオンH+を伴って第1の電極から電子を奪う酸化反応を生じさせ、塩基性媒体中で第2の物質が水酸化物イオンOH-を伴って電極へと電子を供与する還元反応を生じさせる。このとき、酸性媒体中での酸化反応による起電力は、塩基性媒体中で酸化反応させるよりも、原理的に大きくなる。これは、水素イオンH+が反応系の物質であるため、水素イオン濃度の高い酸性媒体中では化学平衡が生成系に傾き、結果として酸化電位を高くするためである。また、塩基性媒体中での還元反応による起電力は、酸性媒体中で還元反応させるよりも、原理的に大きくなる。これは、水酸化物イオンOH-が反応系の物質であるため、水酸化物イオン濃度の高い塩基性媒体中では化学平衡が生成系に傾き、結果として酸化電位を低くするためである。
このため、本発明のバイポーラー型電池の構成では、電極における酸化・還元反応により生ずる起電力が、電池から得られる電圧の主体的な源であり、電池内部の中和反応の発生箇所が変動する性質を有する領域での起電力が主体的となるバイポーラー型の電池と比べて、安定に電力を発生させることができる。
【0033】
(第1の電極および第2の電極)
本発明において、第1の電極は正極であり、第2の電極は負極として機能する。これら第1の電極および第2の電極の材質としては、従来の電池における電極と同様のものを用いることができる。より具体的には、第1の電極(正極)として、白金、白金黒、酸化白金被覆白金、銀、金等が挙げられる。また、表面を不動態化したチタン、ステンレス、ニッケル、アルミニウム等が挙げられる。さらに、グラファイトやカーボンナノチューブ等の炭素構造体、アモルファスカーボン、グラッシーカーボン等が挙げられる。ただし、耐久性の点から、白金、白金黒、酸化白金被覆白金がより好ましい。
【0034】
第2の電極(負極)としては、白金、白金黒、酸化白金被覆白金、銀、金等が挙げられる。また、表面を不動態化したチタン、ステンレス、ニッケル、アルミニウム等が挙げられる。さらに、グラファイトやカーボンナノチューブ等の炭素構造体、アモルファスカーボン、グラッシーカーボン等が挙げられる。ただし、耐久性の点から、白金、白金黒、酸化白金被覆白金がより好ましい。
【0035】
本発明において、第1の電極および第2の電極のいずれもが、板状、薄膜状、網目状、または繊維状であることが好ましい。特に、本発明の実施形態の場合は、電池内で発生した気体の排出流路となるべく、網目状であることが好ましい。ここで、「網目状」とは、少なくとも、排出しようとする気体が通り抜けられる貫通路が存在する多孔質状態であることを指す。
【0036】
網目状の電極として、具体的には、金属製のメッシュやパンチングメタル板、発泡金属シートに、上記の電極用材料を、無電解メッキ法、蒸着法、またはスパッタ法によって付着させてもよいし、また、セルロースや合成高分子製の紙類に、同様の方法あるいはその組合せを用いて上記の電極用材質を付着させてもよい。
また、第1の電極および第2の電極が、イオン交換樹脂やイオン伝導性ゲルのような形状保持性の高い両媒体に配置される場合、かかるイオン交換樹脂やイオン伝導性ゲルの表面に、所望の電極用材料を、無電解メッキ法、蒸着法、またはスパッタ法を用いて配置することも好ましい態様である。
【0037】
(2)発電寄与物質貯蔵部、および、(4)生成物回収部
発電寄与物質貯蔵部には、少なくとも1つの反応物質貯蔵部が具備され、さらに酸性媒体貯蔵部および/または塩基性媒体貯蔵部を設けることができる。上記反応物質貯蔵部は、後述する反応物質輸送手段によって発電部に供給する反応物質を貯蔵する部材であり、同様に、上記酸性媒体貯蔵部および塩基性媒体貯蔵部は、それぞれ後述する酸性媒体輸送手段および塩基性輸送手段によって発電部に供給する酸性媒体および塩基性媒体を貯蔵する部材である。酸性媒体および塩基性媒体も反応物質とともに連続的に供給することにより、常にフレッシュな反応場が構築され、常時安定した発電が可能となる。
尚、酸性媒体に供給される反応物質を、始めから酸性媒体貯蔵部に貯蔵されている酸性媒体中に含有させることにより、反応物質貯蔵部を酸性媒体貯蔵部に組み込み、発電寄与物質貯蔵部の構成を簡素化することができる。また、塩基性媒体に供給される反応物質に関しても同様である。
【0038】
生成物回収部は、後述する生成物輸送手段によって回収した、発電反応によって発生した生成物を蓄積する部材である。回収された生成物は、反応物質、酸性媒体および塩基性媒体に再生することにより再度発電寄与物質貯蔵部に供給して再利用することができ、また、そのまま廃棄することもできる。
【0039】
上記反応物質貯蔵部に反応物質として過酸化水素を使用する場合を例に取ると、生成物回収部には水、酸素、および発電反応によって生じる塩が蓄積されることになる。尚、後述するように、生成物中の酸素を分離する手段を備えている場合には、該酸素は生成物から分離されて電池外に放出等され、生成物回収部には水および塩が蓄積される。
【0040】
反応物質貯蔵部および生成物回収部の材料としては、反応物質・生成物に対して化学的・機械的耐性があればどのようなものでもかまわないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステル、ポリエチレン、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエーテルのようなポリマー樹脂が、電池全体の軽量化という点で好ましく、さらに、機械的、化学的耐性がより高いポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)といったエンジニアプラスチックが好ましい。
【0041】
また、酸性媒体および塩基性媒体(以下、単に「媒体」ということがある。)の貯蔵部の材料としては、酸・塩基に対して化学的・機械的耐性があればどのようなものでもかまわないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステル、ポリエチレン、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエーテルのようなポリマー樹脂が、電池全体の軽量化という点で好ましく、さらに、機械的、化学的耐性がより高いポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)といったエンジニアプラスチックが好ましい。
【0042】
(3)発電寄与物質輸送手段、および、(5)生成物輸送手段
発電寄与物質輸送手段には、少なくとも1つの反応物質輸送手段が具備され、さらに前述の発電寄与物質貯蔵部において、酸性媒体貯蔵部および/または塩基性媒体貯蔵部が設けられている場合には、それぞれ酸性媒体輸送手段、塩基性媒体輸送手段が具備される。上記反応物質輸送手段は、反応物質貯蔵部から発電部に反応物質を供給する部材であり、同様に、上記酸性媒体輸送手段および塩基性媒体輸送手段は、それぞれ酸性媒体貯蔵部および塩基性貯蔵部から発電部に酸性媒体および塩基性媒体を供給する部材である。
また、本発明の燃料電池に前述の生成物回収部が具備されている場合には、さらに生成物輸送手段が設けられる。生成物輸送手段は、発電反応によって生じた生成物を、前記生成物回収部に輸送する部材である。
【0043】
発電寄与物質輸送手段および生成物輸送手段としては、既存の方法を用いることができる。例えば、真空ポンプを用いた吸引や、加圧ガスを用いた送り出しといった、圧力差を利用した輸送などがあげられる。尚、発電寄与物質の供給および生成物の排出を、例えば真空ポンプ1台を用いて、圧力差により一連の供給・排出を行うなど、発電寄与物質輸送手段と生成物輸送手段を同一の動力源にて作動させることにより、発電寄与物質輸送手段および生成物輸送手段の機構を簡素化することができる。
また、前述のように生成物中に気体である酸素が含まれる場合には、例えば真空ポンプ等による酸素分離手段を設けることができる。
【0044】
以下、本発明の燃料電池の好ましい実施形態について、図面を参照して説明するが、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。なお、説明の便宜上、反応物質に過酸化水素を用いた例により、本発明の燃料電池を説明する。
【0045】
図2に示す燃料電池は、発電部100、発電寄与物質貯蔵部200、生成物回収部300、発電寄与物質輸送手段400、生成物輸送手段500から構成されている。発電寄与物質貯蔵部200は、反応物質(過酸化水素)を貯蔵するための反応物質貯蔵部210と、酸性媒体および塩基性媒体を貯蔵するための媒体貯蔵部220を備える。さらに、媒体貯蔵部220は、酸性媒体貯蔵部221と、塩基性媒体貯蔵部222を備える。また、発電寄与物質輸送手段400は、反応物質貯蔵部210から発電部100へ反応物質を輸送する反応物質輸送手段410と、酸性媒体貯蔵部221から発電部100へ酸性媒体を輸送する酸性媒体輸送手段420と、塩基性媒体貯蔵部222から発電部100へ塩基性媒体を輸送する塩基性媒体輸送手段430を備える。
この燃料電池の発電部100は、既述のように、酸性媒体として硫酸水溶液などの液体を、塩基性媒体として水酸化ナトリウム水溶液などの液体を用いた、酸−塩基バイポーラー反応場を有する。後述するように、発電に伴って、過酸化水素、硫酸水溶液および水酸化ナトリウムから、酸素および水と硫酸ナトリウムとが反応生成物として生成する。発電寄与物質貯蔵部200から連続的に過酸化水素、硫酸水溶液、水酸化ナトリウム水溶液を発電寄与物質輸送手段400によって発電部100に供給することで発電し、発電反応によって生じた酸素および硫酸ナトリウム水溶液は、生成物輸送手段500によって輸送され、生成物回収部300に回収される。
【0046】
発電部の具体的な構成に関して、図3を用いて説明する。
図3(a)は、発電部の概略上面透視図である。ここに示されるように、当該発電部は、スライドガラス11とカバーガラス10との間にスペーサ(図3(b)における部材12)を介し、毛管流路1(深さ50μm、幅1000μm)が形成されている。この毛管流路1は、液体の酸性媒体と、液体の塩基性媒体と、を供給するための入口2および入口3と、排出するための出口4および出口5とを有する。例えば、入口2から酸性水溶液aを、入口3から塩基性水溶液bを、毛管流路1に流した時、両液体の粘度やその流速が適当である場合には毛管流路1の合流部分において層流(レイノルズ流)が形成される。
【0047】
この層流について、図3(b)を参照して説明する。図3(b)は、図3(a)の発電部をA−A’で切断した際に、両媒体の流れの方向からみた断面図である。これに示すように、酸性水溶液aおよび塩基性水溶液bは、毛管流路1の合流部分であっても、それぞれ、層流aおよび層流bを形成し、各々が互いに接しながらも、交じり合うことなく、毛管流路1内を流れることになる。そして、層流aおよび層流bを形成したまま、合流部分を通過して、分岐部分で再び分離し、出口4から酸性水溶液aが、出口5から塩基性水溶液bが排出され、それぞれが独立して回収される。
このような層流を形成している毛管流路1の合流部分の底部には、2つの電極6および8が設けられており、それぞれの接続端子7および9を通じて、外部へと電力を取り出すことができる。
【0048】
このように、層流を形成し、2つの液体が接触しているにも関らず、混合しない状態を形成するためには、毛細管流路における粘性流体の特性を応用することで実現できる。これは、液体の粘性、流速、また、流路形状(管径あるいは流路幅や深さ)に依存した定数のレイノルズ数(Re)が約2000以下の場合に起きる現象(レイノルズ流現象)である。この現象を用いると、毛細管中で、適当な粘度と移動速度とを有する2液は、層流となって、非常に混合し難くなる特性が付与される。そのため、両層流に、第1の物質と第2の物質とをそれぞれ共存させた状態で、それぞれの層流中に電極を置くと、酸性媒体中における酸化反応と、塩基性媒体中における還元反応が生じ、起電力が発現して、電池となる。
【0049】
この発電部を1つの単位セルとすると、複数の単位セルを並列もしくは直列に配列することで、それぞれ電流量および電圧の増加が達成される。このような毛細管流路の複雑な構造は、ガラス、石英、シリコン、高分子フィルム、プラスチック樹脂、セラミック、グラファイト、金属等の基板(チップ)に対して、超音波研削や半導体フォトリソグラィー、また、サンドブラストや射出形成、シリコン樹脂モールディング等の既存加工技術を適用することで容易に作製できる。したがって、単位セルの集積化および複数のチップを重ねる積層化を行うことで、所望の性能(電流および電圧)を有する発電部が構築可能になる。
【0050】
発電寄与物質貯蔵部は、例えば、反応物質(過酸化水素)、酸性媒体(硫酸水溶液)、塩基性媒体(水酸化ナトリウム水溶液)が貯蔵されており、例えば、真空ポンプによって吸引することによりこれらの反応物質等が発電部に供給される。なお、反応物質は、予め酸性媒体および/または塩基性媒体中に含有された状態で貯蔵されていても、それぞれ独立に貯蔵されていてもよい。
生成物回収部には、発電反応によって生じた生成物(硫酸ナトリウム水溶液と酸素)が、例えば、真空ポンプによって吸引することにより発電部より排出され、回収される。
尚、前述のように、上記反応物質等の発電部への供給と、生成物の発電部からの排出を1台の真空ポンプにて行ったり、その他、圧力差により一連の供給・排出を行うなど、同一の動力源にて作動させることにより、発電寄与物質輸送手段と生成物輸送手段との機構を簡素化することができる。
また、生成物中の酸素を分離する手段として、上記真空ポンプにおいて酸素を分離し、電池外に放出等することもできる。
【0051】
発電寄与物質の供給および生成物の回収手段の具体的な構成について図4を用いて説明する。過酸化水素と硫酸水溶液の混合溶液、過酸化水素と水酸化ナトリウム水溶液の混合溶液、の2種類の混合溶液を、生成物回収部側に設置した真空ポンプを用いてそれぞれを吸引し、発電部に供給する。発電によって生成した酸素と硫酸ナトリウム水溶液は上記と同一の真空ポンプによって吸引することで発電部から排出され、気体である酸素はそのままポンプによって大気中に排出され、液体である硫酸ナトリウム水溶液は、真空ポンプ手前に設けられた生成物回収部に回収される。
【0052】
以上のように発電部に連続的に発電寄与物質を供給し、発電によって生じた生成物を排出することで、簡易な構成で常にフレッシュな反応場で発電反応を起こすことを可能とする。
なお、反応物質を2種使用する場合は、それぞれについて反応物質貯蔵部および供給手段を設ければよい。
【0053】
<発電方法>
本発明の発電方法は、第1の電極が配置された酸性媒体と、第2の電極が配置された塩基性媒体とを互いに隣接もしくは近設させた状態で、酸性媒体および塩基性媒体の少なくともいずれかに含有されてなる反応物質により、酸性媒体中での酸化反応および/または塩基性媒体中での還元反応を生じさせて、発電を行う発電方法である。そして、前記反応物質を反応物質貯蔵部から連続的に前記酸性媒体および前記塩基性媒体の少なくともいずれかに供給され、発電反応によって生じた生成物を生成物回収部に回収するものである。
また、前記反応物質として過酸化水素を塩基性媒体中に含有させる場合には、生成物回収の際に生成物中の酸素を分離することができる。
本発明の発電方法は、例えば、本発明の燃料電池を使用することで実施することができる。
【0054】
本発明の発電方法によれば、電極における酸化・還元反応により生ずる起電力が、電池から得られる電圧の主体的な源となり、その結果、安定に電力を発生させることができる。また、簡易な構成で常にフレッシュな反応場で発電反応を起こすことを可能とする。
【0055】
本発明の燃料電池を用いた場合、本発明の発電方法における発電機構は、以下に説明する通りになると考えられる。
すなわち、酸性媒体に含有される第1の物質が水素イオンを伴って第1の電極から電子を奪う反応を生じさせ、かつ、塩基性媒体に含有される第2の物質が水酸化イオンを伴って第2の電極へと電子を供与する反応を生じさせて発電が起こると考えられる。
この反応により、第1の物質および第2の物質が内部エネルギーの低い複数の物質に化学変化することによって、その分のエネルギーを外部に電気エネルギーとして放出して電力を得ることができる。
【0056】
特に、酸性媒体が酸性水溶液、塩基性媒体が塩基性水溶液からなり、第1の物質および第2の物質が、いずれも過酸化水素である場合、過酸化水素は、分解反応によって水と酸素を生成する。この化学反応を、本発明の電池のように、別々の電極で酸化反応と還元反応に分離して行うと、起電力を生じる。即ち、過酸化水素は、酸性反応場では酸化作用を有し、一方で、塩基性反応場では還元作用を有するため、起電力が発生する。このような、酸−塩基バイポーラー反応場を利用することで、本発明の発電方法が実現される。
【0057】
より具体的に、本発明の発電方法について、図1を参照して説明する。図1に示されるように、正極(第1の電極)が配置されている酸性反応場(酸性媒体)では、過酸化水素が酸化剤として働き、下記(式1)に示されるように、過酸化水素の酸素原子が電極から電子を受け取り、水を生成する。また、負極(第2の電極)が配置されている塩基性反応場(塩基性媒体)では、過酸化水素が還元剤として働き、下記(式2)に示されるように、過酸化水素の酸素原子が電極に電子を供与して、酸素と水を生成する。これら反応により、起電力が発生し、発電が行われる。
【0058】
22(aq)+2H++2e- → 2H2O ・・・(式1)
22(aq)+2OH- → O2+2H2O+2e- ・・・(式2)
上記式中、「(aq)」とは水和状態を示す(下記(式3)も同様)。
【0059】
なお、反応場内においては、酸性媒体中に存在する水素イオンの対アニオン(図1中では、硫酸イオンSO42-に相当する)と、塩基性媒体中に存在する水酸化物イオンの対カチオン(図1中では、ナトリウムイオンNa+)と、が両媒体の界面で塩を形成することで、電荷のバランスを取ることができる。このとき、形成される塩は、水溶液中では通常イオン化する方が安定であるため、塩の形成による起電力への効果は、電極における酸化あるいは還元反応における起電力と比べるとはるかに小さい。この結果、電極反応が主体的となる本発明のバイポーラー型電池は、酸性・塩基性媒体界面における中和反応を主体としたバイポーラー型電池と比べ、安定した発電を行える性質を有することとなる。
【0060】
上記(式1)と(式2)の半反応式をまとめたイオン反応式(電荷のバランスが、酸性・塩基性媒体界面での水のイオン分解によって取られる場合)を下記(式3)に示す。
【0061】
22(aq) → H2O+1/2O2 ・・・(式3)
【0062】
熱力学計算によると、この反応のエンタルピー変化(ΔH)、エントロピー変化(ΔS)、ギブスの自由エネルギー変化(ΔG、温度T:単位はケルビン(K))は、それぞれ、ΔH=−94.7kJ/mol、ΔS=28J/Kmol、ΔG=ΔH−TΔS=−103.1kJ/molとなる。
【0063】
また、理論起電力(nは反応に関る電子数、Fはファラデー定数)と理論最大効率(η)は、それぞれ、E=−ΔG/nF=1.07V、η=ΔG/ΔH×100=109%と計算される。この反応の理論的特徴は、過酸化水素分解反応でエントロピーが増加してΔSの符号が正になることである。そのため、ΔGの絶対値がΔHより大きくなり、理論最大効率が100%を超える。これとは異なり、水素−酸素系やダイレクトメタノール系等、他の燃料電池反応では、ΔSの符号は負である。
【0064】
これらのことから、本発明の発電方法において、第1の物質および第2の物質に過酸化水素を用いた場合の理論的特徴を以下に挙げる。
従来より知られている他の燃料電池では、原理的に、エントロピー変化量TΔSを発電に利用できず熱として放出する。一方、本機構では、外界から熱を吸収して得たエントロピーの増加分を発電に利用することができる。そして、反応温度Tが高い場合の方が、ΔGの絶対値が大きくなり起電力が高くなる。
【0065】
実用電池では、イオン反応式の理論起電力だけで出力電圧が決まるのではなく、過電圧等によって電圧が低下し同時に熱を発生する。例えば、単位電池をスタックして集積化する場合、あるいは、電池を製品内部に組み込む場合に、この熱が大きな問題になる。しかし、上述のように、本発明の発電方法によれば、理論的にはその熱を発電に再利用することができ、全体的な熱発生が少なくなる可能性がある。また、発電に利用できるエネルギー総量に相当するΔGは水素・酸素燃料電池に比較して半分程度であるが、n=1(水素−酸素系の燃料電池の場合はn=2)であるために理論起電力は同程度となる。
【0066】
また、上記のことから、本発明の燃料電池および本発明の発電方法において、第1の物質および第2の物質に過酸化水素を用いた場合には、既述のような効果の他に、下記のような効果が得られる。
【0067】
(1)過酸化水素は、化学エネルギーを電気エネルギーに変換する反応に伴って二酸化炭素を放出せず、その代わりに酸素を放出する。また、電池内の構造要素に、発火物・可燃物や有害な重金属類等を使用しないため、容易な外装で電池を構成できる。それ故、製造・使用・廃棄の製品サイクル全体に渡って環境安全性に優れる。
(2)過酸化水素は、常温常圧で液体であるため、貯蔵のために重い金属ボンベ等を必要としないし、水と自由に混合できるためゲル化が容易であり、貯蔵性・携帯性が優れている。
(3)酸化剤として酸素を使用する必要が無いため、空気量の限られた閉鎖環境下、また空気中に塵やゴミ等が多く含まれる過酷環境下でも、その使用に支障がない。
(4)過酸化水素は、その工業的製造方法として有機法(アントラキノンを中間体(何度も再利用するので消費しない)として、触媒による水素の接触還元と空気酸化とによって合成する方法)等がすでに確立されており、現状でも安定的に安価で供給されている。これに加え、周辺部品が少なくシンプルな構造で電池を構成し得るため、電池システム全体の重量および体積を小さくでき、かつ低コスト化や高耐久性を図れる。
【0068】
以上、本発明の燃料電池および発電方法について説明したが、本発明の構成は、既述のような構成に限定されるものではない。
例えば、上記構成の電池と、従来の水素燃料やメタノール燃料による電池を組み合せて複合発電機として使用することも可能である。
【実施例】
【0069】
以下に本発明の効果を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0070】
[実施例1]
図3に示す発電部を備える、図2に示す燃料電池について、下記条件にて発電実験を行い、電流−電圧特性を求め、電池の評価を行った。
なお、発電部および発電寄与物質輸送手段、生成物輸送手段の詳細は、下記の通りである。
【0071】
まず、0.5mol/l過酸化水素溶液50mlと、0.5mol/l硫酸水溶液50mlとを混合し試料液A100ml(過酸化水素0.25mol/l、硫酸0.25mol/l)を調製した。
また、0.5mol/l過酸化水素溶液50mlと、1mol/l水酸化ナトリウム水溶液50mlとを混合し試料液B100ml(過酸化水素0.25mol/l、水酸化ナトリウム0.5mol/l)を調製した。
【0072】
そして、図3に示す入口2から試料液Aを、入口3から試料液Bを注入した。試料液A,Bの流速は、いずれも、流路中央部分で24μl/sec(レイノルズ数Re:約670)とし、実験温度は室温(約20℃)であった。注入方法は、図3に示す出口4および出口5の外側に設けた真空ポンプにより吸引する方法を用いた。
【0073】
試料液Aと接触する流路底面の第1の電極(白金薄膜、面積:0.03cm2)8表面ではガス発生が見られなかったのに対して、試料液Bと接触する流路底面の第2の電極(白金薄膜、面積:0.03cm2)6表面で酸素ガスの発生が観測された。これは、第1の電極8は、既述の(式1)の反応によって水が生成して正極の働きをし、第2の電極6は、既述の(式2)の反応によって酸素と水が生成して負極の働きをしたためである。
【0074】
当該電池の発電部で得られた電流−電圧特性を図5に示す。本実施例の場合、開放電圧639mV、また、最大出力2.2mW/cm2が得られた。
試料液AおよびBを連続的に供給した状態で、外部に1kΩの負荷をかけて放電実験を行った結果を図6に示す。本実施例の場合、60分間の放電の間、約2mW/cm2で一定の出力が得られた。
また、60分放電後の電流−電圧特性を測定したものを図5に合わせて示す。その結果、開放電圧630mV、また、最大出力2.2mW/cm2であり、放電実験前とほぼ同じ特性が得られた。
【0075】
反応によって生じた硫酸ナトリウム水溶液は、図3に示す出口4および出口5から排出され、真空ポンプ手前に設けたトラップ(生成物回収部)で回収し、反応によって生じた酸素は真空ポンプによってそのまま大気へ排出した。
【0076】
以上、本実施例によれば、図5に示すように電圧および電流が得られており、発電部として、安定して十分な電気エネルギーを供給できることが判明した。また、一定の速度で発電寄与物質を供給し、生成物を排出させることによって図6に示すように一定の出力が得られることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の電池における発電機構を示す図である。
【図2】本発明の燃料電池の構成を示す説明図である。
【図3】(a)は、本発明の電池における発電部の1実施形態の概略上面透視図であり、(b)は、(a)に示す発電部をA−A’で切断した際に、両媒体の流れの方向からみた断面図である。
【図4】発電寄与物質供給・生成物回収の全体構成を概略的に示した説明図である。
【図5】実施例における電流−電圧特性を示す図である。
【図6】実施例における放電特性を示す図である。
【符号の説明】
【0078】
1 毛管流路
2、3 入口
4、5 出口
6 電極(第2の電極)
7 接続端子
8 電極(第1の電極)
9 接続端子
10 カバーガラス
11 スライドガラス
12 スペーサ
100 発電部
200 発電寄与物質貯蔵部
210 反応物質貯蔵部
220 媒体貯蔵部
221 酸性媒体貯蔵部
222 塩基性媒体貯蔵部
300 生成物回収部
400 発電寄与物質輸送手段
410 反応物質輸送手段
420 酸性媒体輸送手段
430 塩基性媒体輸送手段
500 生成物輸送手段
a 酸性水溶液
b 塩基性水溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電部と、発電寄与物質貯蔵部と、発電寄与物質輸送手段と、を具備する燃料電池であって、前記発電部が、少なくとも、第1の電極が配置された酸性媒体と、第2の電極が配置された塩基性媒体と、を備え、前記酸性媒体および前記塩基性媒体が互いに隣接もしくは近設されてなり、前記酸性媒体および前記塩基性媒体の少なくともいずれかに反応物質が含有されてなり、さらに、前記発電寄与物質貯蔵部が反応物質貯蔵部を備え、該反応物質貯蔵部から前記反応物質を前記発電部へ供給する反応物質輸送手段を前記発電寄与物質輸送手段に備えていることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記発電部、発電寄与物質貯蔵部および発電寄与物質輸送手段に加え、さらに、発電反応によって生じた生成物を回収する生成物回収部と、前記生成物を前記生成物回収部へ輸送する生成物輸送手段を具備することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記発電寄与物質貯蔵部が、さらに、前記酸性媒体を貯蔵する酸性媒体貯蔵部および/または前記塩基性媒体を貯蔵する塩基性媒体貯蔵部を具備し、かつ、前記発電寄与物質輸送手段が、さらに、前記酸性媒体貯蔵部から前記酸性媒体を前記発電部へ供給する酸性媒体輸送手段および/または前記塩基性媒体貯蔵部から前記塩基性媒体を前記発電部へ供給する塩基性媒体輸送手段を具備することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記反応物質貯蔵部が、前記酸性媒体貯蔵部および前記塩基性媒体貯蔵部の少なくとも一方に組み込まれ、前記反応物質は前記酸性媒体貯蔵部に貯蔵された前記酸性媒体および/または前記塩基性媒体貯蔵部に貯蔵された前記塩基性媒体中に含有され、該酸性媒体および/または塩基性媒体と共に、前記発電部へ供給されることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項5】
前記発電寄与物質輸送手段および前記生成物輸送手段が同一の動力源にて作動することを特徴とする請求項2に記載の燃料電池。
【請求項6】
前記酸性媒体が酸性水溶液からなり、かつ、前記塩基性媒体が塩基性水溶液からなることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項7】
前記発電部において、前記反応物質が前記酸性媒体および前記塩基性媒体のそれぞれに含有されてなることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項8】
前記酸性媒体に含有される前記反応物質としての第1の物質と、前記塩基性媒体に含有される前記反応物質としての第2の物質と、が同一の物質であることを特徴とする請求項7に記載の燃料電池。
【請求項9】
前記反応物質が、過酸化水素であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項10】
前記過酸化水素が、前記発電部において、塩基性媒体中に含有されてなる燃料電池であって、前記発電反応によって生じる生成物中の酸素を分離する手段を備えていることを特徴とする請求項9に記載の燃料電池。
【請求項11】
前記発電部において、前記酸性水溶液と前記塩基性水溶液とがその内部で層流を形成する流路構造が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の燃料電池。
【請求項12】
前記酸性水溶液が、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、塩化水素酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、過塩素酸、過ヨウ素酸、オルトリン酸、ポリリン酸、硝酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロ珪酸、ヘキサフルオロリン酸、ヘキサフルオロ砒酸、ヘキサクロロ白金酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、蓚酸、サリチル酸、酒石酸、マレイン酸、マロン酸、フタル酸、フマル酸、およびピクリン酸からなる群より選択される酸を1以上含むことを特徴とする請求項6に記載の燃料電池。
【請求項13】
前記塩基性水溶液が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、および水酸化テトラブチルアンモニウムを含む群から選択される塩基を1以上含む、または、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、アルミン酸ナトリウム、およびアルミン酸カリウムを含む群から選択されるアルカリ金属塩を1以上含むことを特徴とする請求項6に記載の燃料電池。
【請求項14】
前記酸性媒体が酸性のイオン伝導性ゲルから構成され、かつ、前記塩基性媒体が塩基性のイオン伝導性ゲルから構成されることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項15】
前記酸性のイオン伝導性ゲルが、酸性水溶液を水ガラス、無水二酸化ケイ素、架橋ポリアクリル酸、寒天、またはその塩類によりゲル化してなることを特徴とする請求項14に記載の燃料電池。
【請求項16】
前記塩基性のイオン伝導性ゲルが、塩基性水溶液をカルボキシメチルセルロース、架橋ポリアクリル酸、またはその塩類によりゲル化してなることを特徴とする請求項14に記載の燃料電池。
【請求項17】
前記第1の電極が、白金、白金黒、酸化白金被覆白金、銀、金、表面を不動態化したチタン、表面を不動態化したステンレス、表面を不動態化したニッケル、表面を不動態化したアルミニウム、炭素構造体、アモルファスカーボン、およびグラッシーカーボンからなる群より選択される1以上の材料から構成されることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項18】
前記第2の電極が、白金、白金黒、酸化白金被覆白金、銀、金、表面を不動態化したチタン、表面を不動態化したステンレス、表面を不動態化したニッケル、表面を不動態化したアルミニウム、炭素構造体、アモルファスカーボン、およびグラッシーカーボンからなる群より選択される1以上の材料から構成されることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項19】
前記第1の電極および第2の電極が、板状、薄膜状、網目状、または繊維状であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項20】
前記第1の電極および第2の電極が、無電解メッキ法、蒸着法、またはスパッタ法により、前記酸性媒体および前記塩基性媒体にそれぞれ配置されてなることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項21】
第1の電極が配置された酸性媒体と、第2の電極が配置された塩基性媒体とを互いに隣接もしくは近設させた状態で、前記酸性媒体および前記塩基性媒体の少なくともいずれかに含有されてなる反応物質により、前記酸性媒体中での酸化反応および/または前記塩基性媒体中での還元反応を生じさせて、発電を行う発電方法であって、前記反応物質が反応物質貯蔵部から連続的に前記酸性媒体および前記塩基性媒体の少なくともいずれかに供給され、かつ、発電反応によって生じた生成物を生成物回収部に回収することを特徴とする発電方法。
【請求項22】
前記反応物質として過酸化水素を塩基性媒体中に含有し、前記生成物を回収する際に生成物中の酸素を分離することを特徴とする請求項21に記載の発電方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−4892(P2006−4892A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−183046(P2004−183046)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】