燃料電池のセル構造及び燃料電池スタック
【課題】積層体による燃料電池部材間の締結にボルトやシール部品等を必要とせず、これらの面全体に安定した締結圧力を加えて接触抵抗を低減させることができ、小型化を図ることが可能となる燃料電池のセル構造及び燃料電池スタックを提供する。
【解決手段】両面に反応層18、19を形成した電解質膜17と、発電時にガス拡散20、41および集電するための部材とを少なくとも含む燃料電池部材が、電力を取り出すための電極基板39に積層された構成を有する燃料電池のセル構造であって、
前記電極基板が、前記燃料電池部材に面圧を印加する構造部として、前記電極基板内に形成された、燃料ガスを流入させることによって前記面圧を印加するための流路31または閉鎖空間を備えている構成とする。
【解決手段】両面に反応層18、19を形成した電解質膜17と、発電時にガス拡散20、41および集電するための部材とを少なくとも含む燃料電池部材が、電力を取り出すための電極基板39に積層された構成を有する燃料電池のセル構造であって、
前記電極基板が、前記燃料電池部材に面圧を印加する構造部として、前記電極基板内に形成された、燃料ガスを流入させることによって前記面圧を印加するための流路31または閉鎖空間を備えている構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池のセル構造及び該セル構造を積層して構成された燃料電池スタックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、使用されている電池として、乾電池と言われている一次電池や、車のバッテリーなどに使われる鉛蓄電池、モバイル機器などで使われるリチウム電池などの二次電池がある。
一次電池は、内部に反応物質を保持しており、反応物質の化学反応により電流を生じるが、反応物質がすべて消費されてしまうと使用できなくなる。
また、近年における電子機器の高性能・多機能化に伴う電力消費量の拡大により十分なエネルギー量を供給出来なくなってきている。
二次電池は、内部に反応物を設け、電流を発生させることで反応物が減少するが、充電することによって逆反応が起こり、生成物質がもとの反応物質に戻ることで繰り返し使用することが出来る。
しかしながら、一回の充電で使用できるエネルギーは一次電池のものよりも少なく、また、充電するために外部電力を必要とし、充電するのに数十分から数時間の充電時間を必要としている。
【0003】
これに対し、近年、地球環境に対して低公害で電力を発生させる燃料電池が注目されている。
燃料電池は従来、宇宙衛星で実用化され、それから、省エネルギー性・環境に対し低公害であることから、発電装置や自動車用の駆動電力源として開発が進められてきた。
また、燃料電池は単位面積当りで、従来の電池に比べ数倍から十倍近い電気出力が得られることから、さらなる小型・軽量に可能性があるため電気機器の分野でも開発が行われている。
さらに、燃料のみを交換すれば連続して使用が可能であるため、二次電池の様に充電に時間を要することがないというメリットも有している。
【0004】
燃料電池には、様々な方式のものがある。
中でも、常温から100℃の範囲で作動し、起動時間が短く、単位面積当りの電力が他の燃料電池よりも優れている点から、小型電気機器、とりわけ持ち運びして使用する機器に対しては、固体高分子型燃料電池が適している。
また、大きな出力を得るための燃料電池には、水素を燃料に使用するのが効果的である。
常圧下において気体である水素を貯蔵する方法として、つぎのような方法がある。
第一の方法は、水素を圧縮して高圧ガスとして保存する方法である。
第二の方法は、水素を低温にして、液体として貯蔵する方法である。
第三の方法は、水素吸蔵合金を使用して水素を貯蔵する方法である。
第四の方法は、メタノールやガソリンなどを燃料タンクに積み、改質して水素に変換し使用するという方法である。
また、最近、第五の方法としてカーボンナノチューブ、グラファイトナノファイバー、カーボンナノホーンなどの炭素系材料が注目されている。
これらの炭素系材料では、重量当たり約10wt%の水素を吸蔵できる可能性があるためである。
【0005】
一方、固体高分子型燃料電池の発電は以下の様にして行われる。
高分子電解質膜には、パーフルオロスルホン酸系の陽イオン交換樹脂がよく用いられる。
例えば、このような膜としては、デュポン社のナフィオンなどがよく知られている。
固体高分子電解質膜を、白金などの触媒を担持した一対の多孔質電極、すなわち、燃料極と酸化剤極とで狭持した膜電極複合体が発電セルとなる。
この発電セルに対して、酸化剤極には酸化剤を、燃料極には燃料を供給することにより、高分子電解質膜中をプロトンが移動し、発電が行われる。この発電反応は60℃〜100℃程度の温度範囲で行われると最も効率がよい。
しかし、このような燃料電池は、水素と白金触媒との反応を良くするため機密性を要する構造体にしなければならない。
このため、設計上の制約が増え、構造体を小さくすることが困難となり、組立工程が複雑なものになってしまう。
また、停止時は常温であるが、発電時には100℃近くまで上昇するので、燃料電池に使用される部品が熱伸縮を起す。
これにより、締結部材同士が熱ひずみにより緩んだり外れたりすることで、機密性を保てなくなったり、積層部材を押さえていた面圧が低下することによって、燃料電池の発電性能を低下させる等の問題を生じることとなる。
【0006】
電解質膜や触媒、それを支持する部材などを積層してなる燃料電池において、このような面圧の低下を防ぐ構造体として、従来において、図11に示すような構造体が知られている。
図11に示される燃料電池においては、電解質膜の両面に反応触媒を形成した発電反応部111と、この発電反応部111を挟持する支持部材112とによりセル113が構成されている。
そして、このセル113を積層してスタック114とし、その上下端に加圧支持するエンドプレート116を配置して、ボルト117と圧縮バネ118を用いて締め付け加圧した構造とされている。
しかし、図11における燃料電池構造では、エンドプレートを押さえ付けているボルト間部分では、締結力が弱くなる。
このようなことから、図12に示す従来例では、スタック114とエンドプレート116との間に面圧発生機能部119を入れることで、ボルト間部分の面圧低下を防ぐようにされている。
このような面圧発生機能部119には、例えば、加圧された流体で膨張するものや、バネ材を使用しているもの、中心分が凸になっている部材をスタックに向けて挟むものなどがある。
【0007】
また、以上のような面圧の低下を防ぐ構造として、特許文献1では、図13に示すように、面圧発生板131を介してスタック134を締結する圧力を発生させる方法が提案されている。
この方法では、単位燃料電池132をセパレータ130で挟み積層してなる燃料電池において、そのセパレータ130に空間133と面圧発生板131が設けられている。
そして、流体入穴134から流入してきた流体が空間133で膨らみ、面圧発生板131を介してスタック4を締結する圧力を発生させている。
一方、特許文献2では、電子基板材料で発電体を支持する構造を形成し、電子基板に直接実装できる燃料電池が提案されている。
【特許文献1】特開平6−68898号公報(第5頁、図7)
【特許文献2】特開2003−272662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来における図11における構造体では、加圧支持するためエンドプレートに厚みを必要とする。
また、ボルト間部分の締結力が弱くなるため、その部分に積層した部材の接触抵抗が増大する一方、シール部材(ガスケット、Oリングなど)の押し付け圧力が低下し、気密性保持が難しくなる。
また、図12における従来例では、ボルト間の締結力低下を防ぐため、エンドプレートとスタックの間に面圧を発生させる機構を組み込むことが必要となる。
そのため、エンドプレートの厚み及び面圧発生機構分の厚みと、部品数が必要となることから、燃料電池の小型化を図ることが困難となる。
【0009】
また、特許文献1においては、セパレータ内に面圧発生用の加圧板および空間を必要とし、その空間に流体を導くための配管および昇圧器機を使用しなければならないことから、燃料電池の小型化を図ることが一層困難となる。
また、特許文献2においては、電子基板に燃料電池を直接実装できることが開示されているものの、燃料電池部材間に締結力を発生させ、接触抵抗を低減させるための考慮がなされていない。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑み、両面に反応層が形成された電解質膜を含む積層体によって構成された燃料電池のセル構造において、
該積層体による燃料電池部材間の締結にボルトやシール部品等を必要とせず、これらの面全体に安定した締結圧力を加えて接触抵抗を低減させることができ、小型化を図ることが可能となる燃料電池のセル構造及び燃料電池スタックの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下のように構成した燃料電池のセル構造及び燃料電池スタックを提供するものである。
本発明の燃料電池のセル構造は、両面に反応層を形成した電解質膜と、発電時にガス拡散および集電するための部材と、を少なくとも含む燃料電池部材が、
電力を取り出すための電極基板に積層された構成を有する燃料電池のセル構造であって、
前記電極基板が、前記燃料電池部材に面圧を印加する構造部を備えていることを特徴とする。
また、本発明の燃料電池のセル構造は、前記面圧を印加する構造部が、前記電極基板内に形成された、燃料ガスを流入させることによって前記面圧を印加するための流路であることを特徴とする。
また、本発明の燃料電池のセル構造は、前記面圧を印加する構造部が、前記電極基板内に形成された、燃料ガスを流入させることによって前記面圧を印加するための閉鎖空間であることを特徴とする。
また、本発明の燃料電池のセル構造は、前記流路または閉鎖空間から前記反応層に前記燃料ガスを導く流通口に、前記燃料ガスの流量を調節する手段が設けられていることを特徴とする。
また、本発明の燃料電池のセル構造は、前記電極基板が、配線パターン及び/または流路が形成された可撓性の板状部材によって構成されていることを特徴とする。
また、本発明の燃料電池のセル構造は、前記電極基板が、配線パターン及び/または流路が形成されたアルミ基板によって構成されていることを特徴とする。
また、本発明の燃料電池のセル構造は、前記電極基板が、前記板状部材を複数接合して形成されていることを特徴とする。
また、本発明の燃料電池スタックは、上記したいずれかに記載の燃料電池のセル構造を積層して構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、両面に反応層が形成された電解質膜を含む積層体によって構成された燃料電池のセル構造において、
該積層体による燃料電池部材間の締結にボルトやシール部品等を必要とせず、これらの面全体に安定した締結圧力を加えて接触抵抗を低減させ、小型化を図ることが可能となる燃料電池のセル構造及び燃料電池スタックを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を実施するための最良の形態を、以下の実施例により説明する。
【実施例】
【0014】
以下に、本発明の実施例について説明する。
[実施例1]
実施例1においては、本発明を適用した燃料電池のセル構造を備えた燃料電池の構成例について説明する。
図1に、本実施例の燃料電池の構成を説明するための断面図を示す。
また、図2は一部部品を変更した場合の概要断面図であり、図3は本実施例の燃料電池セル及びそれを覆う筐体の概要斜視図である。
図1及び図2において、16は筐体、17は電解質膜、18及び19は反応層、20はガス拡散層、21はスペーサ、22は固定材、23及び24は基板である。
また、25は流通口、27は流通口、28は流通口、29は流路、30は流路、31は流路、32は流通口、33は金属層、34は流通口、35は開口部である。
36は燃料電池セル、37は支持材、38は燃料電池、39は電極、40は両面に反応層が形成された電解質膜からなるMEA、41はガス拡散層である。
【0015】
本実施例の燃料電池セル36(以下、セル36と記す)において、電力を取り出すための電極39(以下電極39と記す)は、つぎのような構造を備えている。
すなわち、燃料ガスが流れる流路29、30、流通口27、28、面圧発生のための流路31が形成されている基板24に、流通口32、34が形成されている基板23と貼り合わさって構成されている。
基板23、24の材料としては、例えば、両面に導電層を形成したフレキシブル基板、セラミック基板、アルミ基板、シリコン基板等に流路もしくは配線パターンを形成したものが挙げられる。
本実施例では、フレキシブルで安価なフレキシブル基板が好ましいものとして用いられている。
また、これらを貼り合わせる方法としては、ろう接、超音波接合、接着等が挙げられるが、安価で後に解体が容易な、ろう接のはんだ接合が好ましい。
これにより、シール部材、気密を保持するための部品精度が必要なくなる。
また、基板の両面の電通は、図示しないスルーホールとビアで取られている。
【0016】
ガス拡散層20、41は、流入してきたガスの拡散と、集電材としての機能を有するので、材料としてはカーボン材が挙げられる。
両面に反応層18,19が形成された電解質膜17(以下、MEA40と記す)には、電極39より流入してきた燃料ガスを外気にリークするのを防ぐため、電解質膜17の外周辺に金属膜33が形成されている。
この金属膜33は、めっき、スパッタなどにより金属層が形成されたものか、薄い金属箔をかしめた構造が挙げられる。
スペーサ21は、電極39とMEA40との高さを調整するための部材である。
【0017】
このように構成された電極39上に、ガス拡散層20、MEA40、スペーサ21、ガス拡散層41を積層した積層体によってセル36が構成される。
電極39、スペーサ21、MEA40は、それぞれ上記で挙げた接合もしくは接着により貼り合わせることができる。
これにより、シールに必要な部品を必要とせず、これらの部品精度を考慮する必要を省くことが出来る。
接着剤22は、積層した部材を更に固定するために用いられるが、これに替えて、図2に示すように、支持材37を積層したセル36と筐体16との間に入れて構成してもよい。
支持材37の材質としては、例えば、バネ材、金属材料、ケミカル材料などが挙げられるが、弾性変位に対応できるバネ材が好ましい。
【0018】
以上のように構成したセル36を、図3に示すように、流通口25、開口35が形成された、中空状の筐体16に入れることで、燃料電池38となる。
筐体16に入れた後、筐体16からセル36がはみ出ないように、筐体16の側面穴に、例えば、テープ、着脱可能な蓋、金属板かしめ、接着剤、溶接などで塞ぐことができる。
その際、後に燃料電池セル36を取り出すことが出来る、テープ、着脱可能な蓋などが好ましい。
【0019】
以上の本実施例の燃料電池セルの機能を、図1に基づいて説明する。
図1に示される流通口25、27より流入した燃料ガスは、流路29を介して流路31に至る。
流通口25より流入する燃料ガスは図示しない燃料タンクより導かれている。
その燃料タンクの貯蔵方法として水素吸蔵合金を使用したものが挙げられ、常温で解放圧力が0.2MPaの特徴を有する、例えば、材質としてLaNi5が好ましい。
流路31に至った燃料ガスの圧力により、上下面が膨らみ、積層したガス拡散層20、MEA40を筐体16内壁に押し付けて締結力を発生させることが出来る。
これにより、面全体で均一な圧力を加えることができ、接触抵抗を低減させることが可能となる。
さらに燃料ガスは、流通口32を通ってガス拡散層20を介して反応層19に至り、開口部35より流入してきた酸素と反応して発電が始まり、流通口34、流路30、流通口25から、外部へ流出する。
このとき、流路31の圧力を高めるためコンダクタンスは、流路29>流通口34>流通口32の関係とすることが好ましい。
これにより、面全体に燃料ガスが行き亘りつつ、面圧を印加することができる。また、本実施例の構成によれば、セル36を筐体16から取り出す際には、燃料ガスの流入を遮断するだけで膨らみがなくなるので、容易に取り出すことが可能である。
【0020】
[実施例2]
実施例2においては、面圧発生部分の構造が実施例1と異なる燃料電池のセル構造の構成例について説明する。
図4に、本実施例の燃料電池の構成を説明するための断面図を示す。図4には図1の実施例1と同じ構成には同一の符号が付されているので、共通する部分の説明は省略する。
図4において、90、91は基板、92は電極、93は流路、94は流通口、95は流路、96は流通口、97は閉鎖空間、98は流通口、99は流通口、100は流通口、101は燃料電池セル、102は燃料電池である。
【0021】
本実施例の燃料電池の構造は、基本的に先の実施例1とほぼ同様であるが、燃料電池電極内の面圧発生部分の構造において、実施例1とは異なる。
本発明の燃料電池セル101(以下、セル101と記す)において、電力を取り出すための電極92(以下電極92記す)は、つぎのような構造を備えている。すなわち、燃料ガスが流れる流路93、95、98、流通口99、100、面圧発生のための閉鎖空間97が形成されている基板91に、流通口94、96が形成されている基板90と貼り合わされて構成されている。
そのため、流通口25、100から流入した燃料ガスは、流路95を介して閉鎖空間97に至り面圧を発生させ、発電のための燃料ガスは、流通口94から流入して反応層19に至るので、実施例1よりも面圧を大きく発生させることができる。
閉鎖空間97の圧力をより高くするためコンダクタンスは、流路93>流路95>流通口94の関係とすることが好ましい。
【0022】
[実施例3]
実施例3においては、本発明の燃料電池のセル構造を積層してスタックとした燃料電池について説明する。
図5に、本実施例における燃料電池のセル構造をスタックに用いた際の燃料電池単セルの断面図を示す。
また、図6は上記燃料電池単セルを分解した斜視図であり、図7は燃料電池のセル構造を数段積層する際の部品を分解した断面図である。
また、図8は燃料電池のセル構造を積層してスタックとしたものを覆う筐体の概要斜視図であり、図9は上記筐体内にスタックを収納した際の概要斜視図である。
これらの図には実施例1または実施例2と同じ構成には同一の符号が付されているので、共通する部分の説明は省略する。
図5から図9において、50はガス拡散層、51はパイプ、52はパイプ、53はパイプ、54は流通口、55は流通口、57はガス拡散層である。
また、70は筐体、71は蓋、72は流路口、73は流路口、74は流路口、75は流路口、76は燃料電池スタック、77は燃料電池である。
【0023】
本発明の燃料電池セルを用いてスタックとする燃料電池のセル構造は、基本的に実施例1または実施例2とほぼ同様である。
但し、スタック間のセルが積層構造になることで、実施例1および実施例2に記載の上面開口部35からのような空気取り込みが出来なくなるので、空気取り込み及びガス拡散のため、ガス拡散層50を、MEA40上に積層する。
ガス拡散層50は、空気の取り込み量を多くする役割があるので、材料としては、発泡金属が挙げられる。
さらに、燃料電池セルを積層した場合に、セル間の燃料ガス伝達のため、燃料電池電極を構成する基板58には、流通口54、55が形成されている。
また、セル間の燃料ガス伝達のため、パイプ51、52、53が連接されている。
パイプ51、52、53は、図にはパイプ形状になっているが、例えば、厚みの有る基板に流通口を明けたものや、フレキシブル基板内に流路形成した部品を用いてもよい。
以上のような構成の部品を、図7に示すような組み合わせで積層し構成したものが、燃料電池スタック76となる。
【0024】
上記のように構成された燃料電池スタック76を、図8に示すように、流通口72、73、74、75が形成された、中空状の筐体70に入れることにより燃料電池77となる。
筐体70に形成されている流通口は、使用条件によっては、塞がる場合があってもよい。
筐体70に燃料電池スタック76を入れた後、燃料電池スタック76がはみ出ないように、筐体70の側面開口部に、例えば、テープ、着脱可能な蓋、金属板かしめ、接着剤、溶接などで塞ぐことができる。
その際、後に燃料電池スタック76を取り出すことが出来る、テープ、着脱可能な蓋などが好ましい。
図8には、着脱可能な蓋71の概略したものを示している。
【0025】
以上ように構成された本実施例の燃料電池の機能については、実施例1および実施例2とほぼ同様であるが、燃料ガスが、流通口54、パイプ51、52、53を介して、各セルに流入する。
流入した燃料ガスが、各セルの流路31(実施例2のセル構造を用いた場合、閉鎖空間)を膨らませることで、燃料電池部材を筐体70の内壁に押し付け、締め付け圧力を発生させることができる。
これにより、面全体で均一な圧力を加えられるのと、接触抵抗を低減させることが出来る。
また、本実施例の構成によれば、燃料電池スタック76を筐体70から取り出す場合は、燃料ガスの流入を遮断するだけで膨らみがなくなるので、容易に取り出すことが可能である。
【0026】
[実施例4]
実施例4においては、本発明の燃料電池のセル構造をスタックに用いる際の変形例について説明する。
図10に、本実施例における燃料電池のセル構造をスタックに用いる際の変形例を説明すめための断面図を示す。
図10には実施例1または実施例2と同じ構成には同一の符号が付されているので、共通する部分の説明は省略する。
図10において、80はバルブ、81はスプリング、82は流通口、83は基板、84は基板、85は燃料電池セル、86は電極である。
【0027】
本実施例の燃料電池のセル構造は、基本的に実施例1または実施例2とほぼ同様である。
但し、本実施例の構造は、さらに燃料電池を小型にした場合の熱対策と、燃料電池内に流れる燃料ガス流量を調節する機能などを付加した構成が実施例1または実施例2と異なっている。
燃料電池電極86を構成する基板83、84は、放熱特性の高いアルミ材を使用し、アルミ表面に配線パターンがスパッタなどで形成されており、他の表面部分は、絶縁および耐環境性向上のためアルマイト処理を施している。
【0028】
基板83には、流路31から反応層19に燃料ガスを導く流通口82が形成されているが、その入り口には、燃料ガス圧力を調節するためのバルブ80と、バルブ80の開口抑えるスプリング81が具備されている。
バルブ80の材料としては、例えば、圧電素子などが挙げられる。基板83に実装されたバルブ80の圧電素子は、圧力変化を感知したものを電気信号に変えて、図示しない制御回路に伝達する。
そして、所定の圧力に保つために圧電素子を伸縮させる信号を送ることによって、各セルでの燃料ガスの圧力を調整することが出来る。
【0029】
以上で説明した本発明の各実施例における燃料電池のセル構造を用いれば、燃料電池部材を積層する場合において、面全体に安定した締め付け圧力を加えられることで接触抵抗のバラツキ、熱伸縮による締結部材の緩みや接触抵抗の増大を防ぐことが出来る。
また、以上のセル構造によれば、電極に具備した加圧面が膨らむことにより締結圧力を発生させるので、高さ寸法が燃料電池セルもしくはスタックよりも大きい筐体に入れて、燃料ガスを流入させるだけで燃料電池を締結させることが出来る。
これにより、スタックを加圧支持するためのエンドプレートの厚みや、締結に必要なボルトが不要となるので、燃料電池の小型化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例1におけるセル構造を備えた燃料電池の構成例を説明するための断面図。
【図2】本発明の実施例1において図1の燃料電池の一部部品を変更した構成例を説明するための断面図。
【図3】本発明の実施例1における燃料電池のセル構造及びそれを覆う筐体の概要斜視図。
【図4】本発明の実施例2におけるセル構造を備えた燃料電池の構成例を説明するための断面図。
【図5】本発明の実施例3における燃料電池のセル構造をスタックに用いた際の燃料電池単セルの断面図。
【図6】本発明の実施例3における図5の燃料電池単セルを分解した斜視図。
【図7】本発明の実施例3における燃料電池のセル構造を数段積層する際の部品を分解した断面図。
【図8】本発明の実施例3における燃料電池のセル構造を積層してスタックとしたものを覆う筐体の概要斜視図。
【図9】本発明の実施例3における筐体内にスタックを収納した際の概要斜視図。
【図10】本発明の実施例4における燃料電池のセル構造をスタックに用いる際の変形例を説明すめための断面図。
【図11】従来のセルを積層してスタックとした燃料電池において、エンドプレートをボルトと圧縮バネを用いて締め付け加圧している燃料電池を説明するための概要図。
【図12】従来のセルを積層してスタックとした燃料電池において、エンドプレートとスタックの間に面圧発生機能部を入れて、締め付け加圧している燃料電池を説明するための概要図。
【図13】従来のセルを積層してスタックとした燃料電池において、セパレータ内に面圧発生板と空間を具備し、その空間に加圧された流体を入れることで、締め付け加圧している燃料電池を説明するための概要図。
【符号の説明】
【0031】
16:筐体
17:電解質膜
18:反応層
19:反応層
20:ガス拡散層
21:スペーサ
22:固定材
23:基板
24:基板
25:流通口
27:流通口
28:流通口
29:流路
30:流路
31:流路
32:流入口
33:金属層
34:流通口
35:開口部
36:燃料電池セル
37:支持材
38:燃料電池
39:電極
40:MEA
41:ガス拡散層
50:ガス拡散層
51:パイプ
52:パイプ
53:パイプ
54:流通口
55:流通口
57:ガス拡散層
70:筐体
71:蓋
72:流路口
73:流路口
74:流路口
75:流路口
76:燃料電池スタック
77:燃料電池
80:バルブ
81:スプリング
82:流通口
83:基板
84:基板
85:燃料電池セル
86:電極
90:基板
91:基板
92:電極
93:流路
94:流通口
95:流路
96:流通口
97:閉鎖空間
98:流通路
99:流通口
100:流通口
101:燃料電池セル
102:燃料電池
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池のセル構造及び該セル構造を積層して構成された燃料電池スタックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、使用されている電池として、乾電池と言われている一次電池や、車のバッテリーなどに使われる鉛蓄電池、モバイル機器などで使われるリチウム電池などの二次電池がある。
一次電池は、内部に反応物質を保持しており、反応物質の化学反応により電流を生じるが、反応物質がすべて消費されてしまうと使用できなくなる。
また、近年における電子機器の高性能・多機能化に伴う電力消費量の拡大により十分なエネルギー量を供給出来なくなってきている。
二次電池は、内部に反応物を設け、電流を発生させることで反応物が減少するが、充電することによって逆反応が起こり、生成物質がもとの反応物質に戻ることで繰り返し使用することが出来る。
しかしながら、一回の充電で使用できるエネルギーは一次電池のものよりも少なく、また、充電するために外部電力を必要とし、充電するのに数十分から数時間の充電時間を必要としている。
【0003】
これに対し、近年、地球環境に対して低公害で電力を発生させる燃料電池が注目されている。
燃料電池は従来、宇宙衛星で実用化され、それから、省エネルギー性・環境に対し低公害であることから、発電装置や自動車用の駆動電力源として開発が進められてきた。
また、燃料電池は単位面積当りで、従来の電池に比べ数倍から十倍近い電気出力が得られることから、さらなる小型・軽量に可能性があるため電気機器の分野でも開発が行われている。
さらに、燃料のみを交換すれば連続して使用が可能であるため、二次電池の様に充電に時間を要することがないというメリットも有している。
【0004】
燃料電池には、様々な方式のものがある。
中でも、常温から100℃の範囲で作動し、起動時間が短く、単位面積当りの電力が他の燃料電池よりも優れている点から、小型電気機器、とりわけ持ち運びして使用する機器に対しては、固体高分子型燃料電池が適している。
また、大きな出力を得るための燃料電池には、水素を燃料に使用するのが効果的である。
常圧下において気体である水素を貯蔵する方法として、つぎのような方法がある。
第一の方法は、水素を圧縮して高圧ガスとして保存する方法である。
第二の方法は、水素を低温にして、液体として貯蔵する方法である。
第三の方法は、水素吸蔵合金を使用して水素を貯蔵する方法である。
第四の方法は、メタノールやガソリンなどを燃料タンクに積み、改質して水素に変換し使用するという方法である。
また、最近、第五の方法としてカーボンナノチューブ、グラファイトナノファイバー、カーボンナノホーンなどの炭素系材料が注目されている。
これらの炭素系材料では、重量当たり約10wt%の水素を吸蔵できる可能性があるためである。
【0005】
一方、固体高分子型燃料電池の発電は以下の様にして行われる。
高分子電解質膜には、パーフルオロスルホン酸系の陽イオン交換樹脂がよく用いられる。
例えば、このような膜としては、デュポン社のナフィオンなどがよく知られている。
固体高分子電解質膜を、白金などの触媒を担持した一対の多孔質電極、すなわち、燃料極と酸化剤極とで狭持した膜電極複合体が発電セルとなる。
この発電セルに対して、酸化剤極には酸化剤を、燃料極には燃料を供給することにより、高分子電解質膜中をプロトンが移動し、発電が行われる。この発電反応は60℃〜100℃程度の温度範囲で行われると最も効率がよい。
しかし、このような燃料電池は、水素と白金触媒との反応を良くするため機密性を要する構造体にしなければならない。
このため、設計上の制約が増え、構造体を小さくすることが困難となり、組立工程が複雑なものになってしまう。
また、停止時は常温であるが、発電時には100℃近くまで上昇するので、燃料電池に使用される部品が熱伸縮を起す。
これにより、締結部材同士が熱ひずみにより緩んだり外れたりすることで、機密性を保てなくなったり、積層部材を押さえていた面圧が低下することによって、燃料電池の発電性能を低下させる等の問題を生じることとなる。
【0006】
電解質膜や触媒、それを支持する部材などを積層してなる燃料電池において、このような面圧の低下を防ぐ構造体として、従来において、図11に示すような構造体が知られている。
図11に示される燃料電池においては、電解質膜の両面に反応触媒を形成した発電反応部111と、この発電反応部111を挟持する支持部材112とによりセル113が構成されている。
そして、このセル113を積層してスタック114とし、その上下端に加圧支持するエンドプレート116を配置して、ボルト117と圧縮バネ118を用いて締め付け加圧した構造とされている。
しかし、図11における燃料電池構造では、エンドプレートを押さえ付けているボルト間部分では、締結力が弱くなる。
このようなことから、図12に示す従来例では、スタック114とエンドプレート116との間に面圧発生機能部119を入れることで、ボルト間部分の面圧低下を防ぐようにされている。
このような面圧発生機能部119には、例えば、加圧された流体で膨張するものや、バネ材を使用しているもの、中心分が凸になっている部材をスタックに向けて挟むものなどがある。
【0007】
また、以上のような面圧の低下を防ぐ構造として、特許文献1では、図13に示すように、面圧発生板131を介してスタック134を締結する圧力を発生させる方法が提案されている。
この方法では、単位燃料電池132をセパレータ130で挟み積層してなる燃料電池において、そのセパレータ130に空間133と面圧発生板131が設けられている。
そして、流体入穴134から流入してきた流体が空間133で膨らみ、面圧発生板131を介してスタック4を締結する圧力を発生させている。
一方、特許文献2では、電子基板材料で発電体を支持する構造を形成し、電子基板に直接実装できる燃料電池が提案されている。
【特許文献1】特開平6−68898号公報(第5頁、図7)
【特許文献2】特開2003−272662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来における図11における構造体では、加圧支持するためエンドプレートに厚みを必要とする。
また、ボルト間部分の締結力が弱くなるため、その部分に積層した部材の接触抵抗が増大する一方、シール部材(ガスケット、Oリングなど)の押し付け圧力が低下し、気密性保持が難しくなる。
また、図12における従来例では、ボルト間の締結力低下を防ぐため、エンドプレートとスタックの間に面圧を発生させる機構を組み込むことが必要となる。
そのため、エンドプレートの厚み及び面圧発生機構分の厚みと、部品数が必要となることから、燃料電池の小型化を図ることが困難となる。
【0009】
また、特許文献1においては、セパレータ内に面圧発生用の加圧板および空間を必要とし、その空間に流体を導くための配管および昇圧器機を使用しなければならないことから、燃料電池の小型化を図ることが一層困難となる。
また、特許文献2においては、電子基板に燃料電池を直接実装できることが開示されているものの、燃料電池部材間に締結力を発生させ、接触抵抗を低減させるための考慮がなされていない。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑み、両面に反応層が形成された電解質膜を含む積層体によって構成された燃料電池のセル構造において、
該積層体による燃料電池部材間の締結にボルトやシール部品等を必要とせず、これらの面全体に安定した締結圧力を加えて接触抵抗を低減させることができ、小型化を図ることが可能となる燃料電池のセル構造及び燃料電池スタックの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下のように構成した燃料電池のセル構造及び燃料電池スタックを提供するものである。
本発明の燃料電池のセル構造は、両面に反応層を形成した電解質膜と、発電時にガス拡散および集電するための部材と、を少なくとも含む燃料電池部材が、
電力を取り出すための電極基板に積層された構成を有する燃料電池のセル構造であって、
前記電極基板が、前記燃料電池部材に面圧を印加する構造部を備えていることを特徴とする。
また、本発明の燃料電池のセル構造は、前記面圧を印加する構造部が、前記電極基板内に形成された、燃料ガスを流入させることによって前記面圧を印加するための流路であることを特徴とする。
また、本発明の燃料電池のセル構造は、前記面圧を印加する構造部が、前記電極基板内に形成された、燃料ガスを流入させることによって前記面圧を印加するための閉鎖空間であることを特徴とする。
また、本発明の燃料電池のセル構造は、前記流路または閉鎖空間から前記反応層に前記燃料ガスを導く流通口に、前記燃料ガスの流量を調節する手段が設けられていることを特徴とする。
また、本発明の燃料電池のセル構造は、前記電極基板が、配線パターン及び/または流路が形成された可撓性の板状部材によって構成されていることを特徴とする。
また、本発明の燃料電池のセル構造は、前記電極基板が、配線パターン及び/または流路が形成されたアルミ基板によって構成されていることを特徴とする。
また、本発明の燃料電池のセル構造は、前記電極基板が、前記板状部材を複数接合して形成されていることを特徴とする。
また、本発明の燃料電池スタックは、上記したいずれかに記載の燃料電池のセル構造を積層して構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、両面に反応層が形成された電解質膜を含む積層体によって構成された燃料電池のセル構造において、
該積層体による燃料電池部材間の締結にボルトやシール部品等を必要とせず、これらの面全体に安定した締結圧力を加えて接触抵抗を低減させ、小型化を図ることが可能となる燃料電池のセル構造及び燃料電池スタックを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を実施するための最良の形態を、以下の実施例により説明する。
【実施例】
【0014】
以下に、本発明の実施例について説明する。
[実施例1]
実施例1においては、本発明を適用した燃料電池のセル構造を備えた燃料電池の構成例について説明する。
図1に、本実施例の燃料電池の構成を説明するための断面図を示す。
また、図2は一部部品を変更した場合の概要断面図であり、図3は本実施例の燃料電池セル及びそれを覆う筐体の概要斜視図である。
図1及び図2において、16は筐体、17は電解質膜、18及び19は反応層、20はガス拡散層、21はスペーサ、22は固定材、23及び24は基板である。
また、25は流通口、27は流通口、28は流通口、29は流路、30は流路、31は流路、32は流通口、33は金属層、34は流通口、35は開口部である。
36は燃料電池セル、37は支持材、38は燃料電池、39は電極、40は両面に反応層が形成された電解質膜からなるMEA、41はガス拡散層である。
【0015】
本実施例の燃料電池セル36(以下、セル36と記す)において、電力を取り出すための電極39(以下電極39と記す)は、つぎのような構造を備えている。
すなわち、燃料ガスが流れる流路29、30、流通口27、28、面圧発生のための流路31が形成されている基板24に、流通口32、34が形成されている基板23と貼り合わさって構成されている。
基板23、24の材料としては、例えば、両面に導電層を形成したフレキシブル基板、セラミック基板、アルミ基板、シリコン基板等に流路もしくは配線パターンを形成したものが挙げられる。
本実施例では、フレキシブルで安価なフレキシブル基板が好ましいものとして用いられている。
また、これらを貼り合わせる方法としては、ろう接、超音波接合、接着等が挙げられるが、安価で後に解体が容易な、ろう接のはんだ接合が好ましい。
これにより、シール部材、気密を保持するための部品精度が必要なくなる。
また、基板の両面の電通は、図示しないスルーホールとビアで取られている。
【0016】
ガス拡散層20、41は、流入してきたガスの拡散と、集電材としての機能を有するので、材料としてはカーボン材が挙げられる。
両面に反応層18,19が形成された電解質膜17(以下、MEA40と記す)には、電極39より流入してきた燃料ガスを外気にリークするのを防ぐため、電解質膜17の外周辺に金属膜33が形成されている。
この金属膜33は、めっき、スパッタなどにより金属層が形成されたものか、薄い金属箔をかしめた構造が挙げられる。
スペーサ21は、電極39とMEA40との高さを調整するための部材である。
【0017】
このように構成された電極39上に、ガス拡散層20、MEA40、スペーサ21、ガス拡散層41を積層した積層体によってセル36が構成される。
電極39、スペーサ21、MEA40は、それぞれ上記で挙げた接合もしくは接着により貼り合わせることができる。
これにより、シールに必要な部品を必要とせず、これらの部品精度を考慮する必要を省くことが出来る。
接着剤22は、積層した部材を更に固定するために用いられるが、これに替えて、図2に示すように、支持材37を積層したセル36と筐体16との間に入れて構成してもよい。
支持材37の材質としては、例えば、バネ材、金属材料、ケミカル材料などが挙げられるが、弾性変位に対応できるバネ材が好ましい。
【0018】
以上のように構成したセル36を、図3に示すように、流通口25、開口35が形成された、中空状の筐体16に入れることで、燃料電池38となる。
筐体16に入れた後、筐体16からセル36がはみ出ないように、筐体16の側面穴に、例えば、テープ、着脱可能な蓋、金属板かしめ、接着剤、溶接などで塞ぐことができる。
その際、後に燃料電池セル36を取り出すことが出来る、テープ、着脱可能な蓋などが好ましい。
【0019】
以上の本実施例の燃料電池セルの機能を、図1に基づいて説明する。
図1に示される流通口25、27より流入した燃料ガスは、流路29を介して流路31に至る。
流通口25より流入する燃料ガスは図示しない燃料タンクより導かれている。
その燃料タンクの貯蔵方法として水素吸蔵合金を使用したものが挙げられ、常温で解放圧力が0.2MPaの特徴を有する、例えば、材質としてLaNi5が好ましい。
流路31に至った燃料ガスの圧力により、上下面が膨らみ、積層したガス拡散層20、MEA40を筐体16内壁に押し付けて締結力を発生させることが出来る。
これにより、面全体で均一な圧力を加えることができ、接触抵抗を低減させることが可能となる。
さらに燃料ガスは、流通口32を通ってガス拡散層20を介して反応層19に至り、開口部35より流入してきた酸素と反応して発電が始まり、流通口34、流路30、流通口25から、外部へ流出する。
このとき、流路31の圧力を高めるためコンダクタンスは、流路29>流通口34>流通口32の関係とすることが好ましい。
これにより、面全体に燃料ガスが行き亘りつつ、面圧を印加することができる。また、本実施例の構成によれば、セル36を筐体16から取り出す際には、燃料ガスの流入を遮断するだけで膨らみがなくなるので、容易に取り出すことが可能である。
【0020】
[実施例2]
実施例2においては、面圧発生部分の構造が実施例1と異なる燃料電池のセル構造の構成例について説明する。
図4に、本実施例の燃料電池の構成を説明するための断面図を示す。図4には図1の実施例1と同じ構成には同一の符号が付されているので、共通する部分の説明は省略する。
図4において、90、91は基板、92は電極、93は流路、94は流通口、95は流路、96は流通口、97は閉鎖空間、98は流通口、99は流通口、100は流通口、101は燃料電池セル、102は燃料電池である。
【0021】
本実施例の燃料電池の構造は、基本的に先の実施例1とほぼ同様であるが、燃料電池電極内の面圧発生部分の構造において、実施例1とは異なる。
本発明の燃料電池セル101(以下、セル101と記す)において、電力を取り出すための電極92(以下電極92記す)は、つぎのような構造を備えている。すなわち、燃料ガスが流れる流路93、95、98、流通口99、100、面圧発生のための閉鎖空間97が形成されている基板91に、流通口94、96が形成されている基板90と貼り合わされて構成されている。
そのため、流通口25、100から流入した燃料ガスは、流路95を介して閉鎖空間97に至り面圧を発生させ、発電のための燃料ガスは、流通口94から流入して反応層19に至るので、実施例1よりも面圧を大きく発生させることができる。
閉鎖空間97の圧力をより高くするためコンダクタンスは、流路93>流路95>流通口94の関係とすることが好ましい。
【0022】
[実施例3]
実施例3においては、本発明の燃料電池のセル構造を積層してスタックとした燃料電池について説明する。
図5に、本実施例における燃料電池のセル構造をスタックに用いた際の燃料電池単セルの断面図を示す。
また、図6は上記燃料電池単セルを分解した斜視図であり、図7は燃料電池のセル構造を数段積層する際の部品を分解した断面図である。
また、図8は燃料電池のセル構造を積層してスタックとしたものを覆う筐体の概要斜視図であり、図9は上記筐体内にスタックを収納した際の概要斜視図である。
これらの図には実施例1または実施例2と同じ構成には同一の符号が付されているので、共通する部分の説明は省略する。
図5から図9において、50はガス拡散層、51はパイプ、52はパイプ、53はパイプ、54は流通口、55は流通口、57はガス拡散層である。
また、70は筐体、71は蓋、72は流路口、73は流路口、74は流路口、75は流路口、76は燃料電池スタック、77は燃料電池である。
【0023】
本発明の燃料電池セルを用いてスタックとする燃料電池のセル構造は、基本的に実施例1または実施例2とほぼ同様である。
但し、スタック間のセルが積層構造になることで、実施例1および実施例2に記載の上面開口部35からのような空気取り込みが出来なくなるので、空気取り込み及びガス拡散のため、ガス拡散層50を、MEA40上に積層する。
ガス拡散層50は、空気の取り込み量を多くする役割があるので、材料としては、発泡金属が挙げられる。
さらに、燃料電池セルを積層した場合に、セル間の燃料ガス伝達のため、燃料電池電極を構成する基板58には、流通口54、55が形成されている。
また、セル間の燃料ガス伝達のため、パイプ51、52、53が連接されている。
パイプ51、52、53は、図にはパイプ形状になっているが、例えば、厚みの有る基板に流通口を明けたものや、フレキシブル基板内に流路形成した部品を用いてもよい。
以上のような構成の部品を、図7に示すような組み合わせで積層し構成したものが、燃料電池スタック76となる。
【0024】
上記のように構成された燃料電池スタック76を、図8に示すように、流通口72、73、74、75が形成された、中空状の筐体70に入れることにより燃料電池77となる。
筐体70に形成されている流通口は、使用条件によっては、塞がる場合があってもよい。
筐体70に燃料電池スタック76を入れた後、燃料電池スタック76がはみ出ないように、筐体70の側面開口部に、例えば、テープ、着脱可能な蓋、金属板かしめ、接着剤、溶接などで塞ぐことができる。
その際、後に燃料電池スタック76を取り出すことが出来る、テープ、着脱可能な蓋などが好ましい。
図8には、着脱可能な蓋71の概略したものを示している。
【0025】
以上ように構成された本実施例の燃料電池の機能については、実施例1および実施例2とほぼ同様であるが、燃料ガスが、流通口54、パイプ51、52、53を介して、各セルに流入する。
流入した燃料ガスが、各セルの流路31(実施例2のセル構造を用いた場合、閉鎖空間)を膨らませることで、燃料電池部材を筐体70の内壁に押し付け、締め付け圧力を発生させることができる。
これにより、面全体で均一な圧力を加えられるのと、接触抵抗を低減させることが出来る。
また、本実施例の構成によれば、燃料電池スタック76を筐体70から取り出す場合は、燃料ガスの流入を遮断するだけで膨らみがなくなるので、容易に取り出すことが可能である。
【0026】
[実施例4]
実施例4においては、本発明の燃料電池のセル構造をスタックに用いる際の変形例について説明する。
図10に、本実施例における燃料電池のセル構造をスタックに用いる際の変形例を説明すめための断面図を示す。
図10には実施例1または実施例2と同じ構成には同一の符号が付されているので、共通する部分の説明は省略する。
図10において、80はバルブ、81はスプリング、82は流通口、83は基板、84は基板、85は燃料電池セル、86は電極である。
【0027】
本実施例の燃料電池のセル構造は、基本的に実施例1または実施例2とほぼ同様である。
但し、本実施例の構造は、さらに燃料電池を小型にした場合の熱対策と、燃料電池内に流れる燃料ガス流量を調節する機能などを付加した構成が実施例1または実施例2と異なっている。
燃料電池電極86を構成する基板83、84は、放熱特性の高いアルミ材を使用し、アルミ表面に配線パターンがスパッタなどで形成されており、他の表面部分は、絶縁および耐環境性向上のためアルマイト処理を施している。
【0028】
基板83には、流路31から反応層19に燃料ガスを導く流通口82が形成されているが、その入り口には、燃料ガス圧力を調節するためのバルブ80と、バルブ80の開口抑えるスプリング81が具備されている。
バルブ80の材料としては、例えば、圧電素子などが挙げられる。基板83に実装されたバルブ80の圧電素子は、圧力変化を感知したものを電気信号に変えて、図示しない制御回路に伝達する。
そして、所定の圧力に保つために圧電素子を伸縮させる信号を送ることによって、各セルでの燃料ガスの圧力を調整することが出来る。
【0029】
以上で説明した本発明の各実施例における燃料電池のセル構造を用いれば、燃料電池部材を積層する場合において、面全体に安定した締め付け圧力を加えられることで接触抵抗のバラツキ、熱伸縮による締結部材の緩みや接触抵抗の増大を防ぐことが出来る。
また、以上のセル構造によれば、電極に具備した加圧面が膨らむことにより締結圧力を発生させるので、高さ寸法が燃料電池セルもしくはスタックよりも大きい筐体に入れて、燃料ガスを流入させるだけで燃料電池を締結させることが出来る。
これにより、スタックを加圧支持するためのエンドプレートの厚みや、締結に必要なボルトが不要となるので、燃料電池の小型化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例1におけるセル構造を備えた燃料電池の構成例を説明するための断面図。
【図2】本発明の実施例1において図1の燃料電池の一部部品を変更した構成例を説明するための断面図。
【図3】本発明の実施例1における燃料電池のセル構造及びそれを覆う筐体の概要斜視図。
【図4】本発明の実施例2におけるセル構造を備えた燃料電池の構成例を説明するための断面図。
【図5】本発明の実施例3における燃料電池のセル構造をスタックに用いた際の燃料電池単セルの断面図。
【図6】本発明の実施例3における図5の燃料電池単セルを分解した斜視図。
【図7】本発明の実施例3における燃料電池のセル構造を数段積層する際の部品を分解した断面図。
【図8】本発明の実施例3における燃料電池のセル構造を積層してスタックとしたものを覆う筐体の概要斜視図。
【図9】本発明の実施例3における筐体内にスタックを収納した際の概要斜視図。
【図10】本発明の実施例4における燃料電池のセル構造をスタックに用いる際の変形例を説明すめための断面図。
【図11】従来のセルを積層してスタックとした燃料電池において、エンドプレートをボルトと圧縮バネを用いて締め付け加圧している燃料電池を説明するための概要図。
【図12】従来のセルを積層してスタックとした燃料電池において、エンドプレートとスタックの間に面圧発生機能部を入れて、締め付け加圧している燃料電池を説明するための概要図。
【図13】従来のセルを積層してスタックとした燃料電池において、セパレータ内に面圧発生板と空間を具備し、その空間に加圧された流体を入れることで、締め付け加圧している燃料電池を説明するための概要図。
【符号の説明】
【0031】
16:筐体
17:電解質膜
18:反応層
19:反応層
20:ガス拡散層
21:スペーサ
22:固定材
23:基板
24:基板
25:流通口
27:流通口
28:流通口
29:流路
30:流路
31:流路
32:流入口
33:金属層
34:流通口
35:開口部
36:燃料電池セル
37:支持材
38:燃料電池
39:電極
40:MEA
41:ガス拡散層
50:ガス拡散層
51:パイプ
52:パイプ
53:パイプ
54:流通口
55:流通口
57:ガス拡散層
70:筐体
71:蓋
72:流路口
73:流路口
74:流路口
75:流路口
76:燃料電池スタック
77:燃料電池
80:バルブ
81:スプリング
82:流通口
83:基板
84:基板
85:燃料電池セル
86:電極
90:基板
91:基板
92:電極
93:流路
94:流通口
95:流路
96:流通口
97:閉鎖空間
98:流通路
99:流通口
100:流通口
101:燃料電池セル
102:燃料電池
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面に反応層を形成した電解質膜と、発電時にガス拡散および集電するための部材と、を少なくとも含む燃料電池部材が、
電力を取り出すための電極基板に積層された構成を有する燃料電池のセル構造であって、
前記電極基板は、前記燃料電池部材に面圧を印加する構造部を備えていることを特徴とする燃料電池のセル構造。
【請求項2】
前記面圧を印加する構造部が、前記電極基板内に形成された、燃料ガスを流入させることによって前記面圧を印加するための流路であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池のセル構造。
【請求項3】
前記面圧を印加する構造部が、前記電極基板内に形成された、燃料ガスを流入させることによって前記面圧を印加するための閉鎖空間であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池のセル構造。
【請求項4】
前記流路または閉鎖空間から前記反応層に前記燃料ガスを導く流通口に、前記燃料ガスの流量を調節する手段が設けられていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の燃料電池のセル構造。
【請求項5】
前記電極基板は、配線パターン及び/または流路が形成された可撓性の板状部材によって構成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の燃料電池のセル構造。
【請求項6】
前記電極基板は、配線パターン及び/または流路が形成されたアルミ基板によって構成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の燃料電池のセル構造。
【請求項7】
前記電極基板は、前記板状部材を複数接合して形成されていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の燃料電池のセル構造。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の燃料電池のセル構造を積層して構成されていることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項1】
両面に反応層を形成した電解質膜と、発電時にガス拡散および集電するための部材と、を少なくとも含む燃料電池部材が、
電力を取り出すための電極基板に積層された構成を有する燃料電池のセル構造であって、
前記電極基板は、前記燃料電池部材に面圧を印加する構造部を備えていることを特徴とする燃料電池のセル構造。
【請求項2】
前記面圧を印加する構造部が、前記電極基板内に形成された、燃料ガスを流入させることによって前記面圧を印加するための流路であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池のセル構造。
【請求項3】
前記面圧を印加する構造部が、前記電極基板内に形成された、燃料ガスを流入させることによって前記面圧を印加するための閉鎖空間であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池のセル構造。
【請求項4】
前記流路または閉鎖空間から前記反応層に前記燃料ガスを導く流通口に、前記燃料ガスの流量を調節する手段が設けられていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の燃料電池のセル構造。
【請求項5】
前記電極基板は、配線パターン及び/または流路が形成された可撓性の板状部材によって構成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の燃料電池のセル構造。
【請求項6】
前記電極基板は、配線パターン及び/または流路が形成されたアルミ基板によって構成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の燃料電池のセル構造。
【請求項7】
前記電極基板は、前記板状部材を複数接合して形成されていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の燃料電池のセル構造。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の燃料電池のセル構造を積層して構成されていることを特徴とする燃料電池スタック。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−59817(P2008−59817A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−232865(P2006−232865)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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