説明

燃料電池の製造方法

【課題】生産性が向上すると共に、完成品の品質が向上する燃料電池の製造方法を提供する。
【解決手段】燃料電池100の製造方法は、樹脂フィルム22が巻回された供給装置51から樹脂フィルム22を巻き出す巻出工程と、巻き出された樹脂フィルム22の表面22aと第2金型56及び第3金型57との間で第1キャビティ60及び第2キャビティ61を形成して、第1キャビティ60及び第2キャビティ61内に樹脂材料Xを射出してシール部材23を成形する射出成形工程と、シール部材23が成形された樹脂フィルム22を、セパレータ20を構成する金属プレートPに固定する固定工程と、樹脂フィルム22のうち、シール部材23が成形され、かつ金属プレートPに固定された部分を切断する切断工程と、樹脂フィルム22のうち、切断後の余剰部分Zを巻取装置52に巻き取る巻取工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、固体高分子膜型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell:PEFC)は、高分子イオン交換膜から成る電解質膜の両側に、アノード電極及びカソード電極を設けた電解質膜・電極構造体を、一対のセパレータによって挟持した発電セルを備えている。そして、固体高分子膜型燃料電池は、複数の発電セルが積層され、例えば、車載用の燃料電池スタックとして使用されている。
【0003】
この種の燃料電池スタックでは、セパレータのアノード電極に対向する面には、燃料ガス(例えば、水素)を通流させるための流路が形成される一方、セパレータのカソード電極に対向する面には、酸化剤ガス(例えば、空気等の酸素を含有するガス)を通流させるための流路が形成されている。また、隣り合う発電セルのセパレータ間には、冷却媒体を通流させるための流路が形成されている。
【0004】
ところで、燃料電池スタックの発電時には、前記した各流路を通じて燃料電池スタック内部へ燃料ガス、酸化剤ガス及び冷却媒体が通流される。そこで、燃料ガス、酸化剤ガス及び冷却媒体が燃料電池スタック外部へ漏出したり、混合したりするのを防止するため、セパレータの両面外縁部及び流路の周囲にシール部材を設けることが行われている。
そして、従来、セパレータにシール部材を形成する方法が多数開発され実用化に至っている。
【0005】
例えば、特許文献1には、セパレータを構成する金属プレートにシール部材を射出成形する方法が開示されている。すなわち、特許文献1では、金属プレートが一方の金型に配置された状態で、他方の金型を一方の金型に接近させて型締めを行い、他方の金型と金属プレートとの間でキャビティを形成する。続いて、例えば、溶融状態のシリコーンゴム等の樹脂材料をキャビティ内に射出して、金属プレートの表面にシール部材を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−223858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、前記特許文献1の技術では、金属プレートに樹脂材料を射出する度に、金属プレートを金型内に一枚ずつ配置する必要があるため、生産性が低かった。
【0008】
また、前記特許文献1の技術では、寸法誤差等に起因して、金型同士の合わせ面(型割面)に不可避的に隙間が生じてしまい、射出成形時に当該隙間に樹脂材料が流入すると、隙間で硬化した樹脂材料がバリとなるため、完成品の品質が低下する虞があった。
【0009】
本発明は、このような観点から創案されたものであり、生産性が向上すると共に、完成品の品質が向上する燃料電池の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため本発明は、アノード電極とカソード電極との間に電解質膜を介設した電解質・電極構造体を一対のセパレータで挟持して構成される燃料電池の製造方法であって、樹脂フィルムが巻回された供給装置から前記樹脂フィルムを巻き出す巻出工程と、巻き出された前記樹脂フィルムの表面と金型との間でキャビティを形成して、前記キャビティ内に樹脂材料を射出してシール部材を成形する射出成形工程と、前記シール部材が成形された前記樹脂フィルムを、前記セパレータを構成する金属プレートに固定する固定工程と、前記樹脂フィルムのうち、前記シール部材が成形され、かつ前記金属プレートに固定された部分を切断する切断工程と、前記樹脂フィルムのうち、切断後の余剰部分を巻取装置に巻き取る巻取工程と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、供給装置から巻取装置へ樹脂フィルムを送出する過程で、樹脂フィルムの表面へのシール部材の成形、樹脂フィルムの金属プレートへの固定、シール部材が成形されかつ金属プレートに固定された樹脂フィルムの切断を行うことにより、シール部材を有するセパレータを連続的に製造できるため、セパレータの生産性が向上する。
【0012】
また、本発明によれば、樹脂フィルムの表面と金型との間でキャビティを形成して、キャビティ内に樹脂材料を射出することにより、型締め時に樹脂フィルムが金型から押圧力を受けると、金型形状に追従して変形するため、金型同士の密着性に比較して、樹脂フィルムと金型との密着性が高まる。その結果、樹脂フィルムと金型との合わせ面に隙間が発生し難くなり、ひいてはバリが発生し難くなるため、完成品の品質が向上する。
【0013】
また、前記金属プレートを挟んで両側に一対の前記供給装置及び一対の前記巻取装置を夫々配置して、前記シール部材が成形された前記樹脂フィルムを、前記金属プレートの表裏両面に固定するように構成するのが好ましい。
【0014】
かかる構成によれば、一対の供給装置から一対の巻取装置へ樹脂フィルムを送出する過程で、シール部材が成形された樹脂フィルムを、金属プレートの表裏両面に同時に固定できるため、セパレータの生産性がより一層向上する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、生産性が向上すると共に、完成品の品質が向上する燃料電池の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る燃料電池の分解斜視図である。
【図2】燃料電池の部分拡大横断面図である。
【図3】射出成形工程及び固定工程を示す説明図である。
【図4】セパレータの製造工程を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
本発明の実施形態に係る燃料電池100の製造方法の説明に先立って、図1−図2を適宜参照して、燃料電池100の構造について説明する。
図1に示すように、燃料電池100は、電解質膜・電極構造体(MEA)10と、電解質膜・電極構造体10を両側から挟持する一対のセパレータ20,20と、を有する。
【0019】
<電解質膜・電極構造体>
電解質膜・電極構造体10は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された板状の固体高分子電解質膜(電解質膜)11と、固体高分子電解質膜11の両側(両面)に設けられたカソード電極12及びアノード電極13と、を有する。
【0020】
カソード電極12及びアノード電極13は、固体高分子電解質膜11よりも一回り小さな幅寸法及び長さ寸法を有する矩形状の電極部材である。カソード電極12及びアノード電極13は、固体高分子電解質膜11の中央部に配設されており、外周部が固体高分子電解質膜11の外周部よりも内方に位置している。カソード電極12及びアノード電極13は、カーボンペーパ等からなるガス拡散層と、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子がガス拡散層の表面に一様に塗布されて形成された電極触媒層と、から構成される。電極触媒層は、固体高分子電解質膜11の両面に形成される。
【0021】
<セパレータ>
セパレータ20は、セパレータ本体21と、樹脂フィルム22と、シール部材23と、を有する。
【0022】
<セパレータ本体>
セパレータ本体21は、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、その金属表面に防食用の表面処理を施した金属板等により構成されている。セパレータ本体21は、図1及び図2に示すように、矩形状を呈する一枚の金属板を波形状にプレス加工することにより、横断面視凹凸形状に形成されている。
【0023】
<樹脂フィルム>
樹脂フィルム22は、図2に示すように、セパレータ本体21の両面21a,21bに固定(固着)され、セパレータ20の絶縁性能を高める樹脂製部材である。樹脂フィルム22は、図1に示すように、セパレータ本体21の外縁部、後記する酸化剤ガス供給口30a等の供給口、酸化剤ガス排出口30b等の排出口及び酸化剤ガス流路40等の流路の周囲に設けられている。樹脂フィルム22は、後記するようにセパレータ20の製造時に供給装置51及び巻取装置52に巻回され、その表面22aには樹脂材料Xが射出される(図3及び図4参照)。樹脂フィルム22は、弾性を有し、かつ金型温度で金型53に融着(溶着)しないものを使用することが好ましい。すなわち、樹脂フィルム22は、融点が金型温度よりも高いものを使用することが好ましい。本実施形態の樹脂フィルム22は、熱可塑性樹脂であるポリエチレンテレフタレートで構成されるが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、ポリアミド、ポリカボネート、ポリブチレンテレフタレート等のエンジニアリングプラスチック、ポリアミドイミド、ポリフィニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー等のスーパーエンジニアリングプラスチック、ポリエチレン、ポリプロピレン等で構成されてもよい。
【0024】
<シール部材>
シール部材23は、図2に示すように、樹脂フィルム22の表面22aに固定(固着)される樹脂製部材である。シール部材23は、図1に示すように、セパレータ本体21の外縁部、後記する供給口、排出口及び流路の周囲に設けられている。本実施形態のシール部材23は、熱硬化性樹脂であるシリコーンゴムで構成されるが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、エチレン−プロピレンゴム、天然ゴム、フッ素ゴム、フロロシリコーンゴム、ブチルゴム、スチレンゴム、クロロプレーン、アクリルゴム等で構成されてもよい。
【0025】
<酸化剤ガス供給口、冷却媒体供給口、燃料ガス供給口>
固体高分子電解質膜11及びセパレータ本体21の上縁部(一端部)には、矢印A方向(積層方向)に貫通して形成された矩形状の酸化剤ガス供給口30a、冷却媒体供給口31a及び燃料ガス供給口32aが矢印B方向に沿って配列して設けられている。酸化剤ガス供給口30aは、酸化剤ガス(例えば、酸素を含有するエア)が供給される部分であり、冷却媒体供給口31aは、冷却媒体が供給される部分であり、ガス供給口たる燃料ガス供給口32aは、燃料ガス(例えば、水素を含有するガス)が供給される部分である。冷却媒体としては、例えば、純水、エチレングリコール、オイル等が使用される。
【0026】
<酸化剤ガス排出口、冷却媒体排出口、燃料ガス排出口>
固体高分子電解質膜11及びセパレータ本体21の下縁部(他端部)には、矢印A方向に貫通して形成された矩形状の酸化剤ガス排出口30b、冷却媒体排出口31b及び燃料ガス排出口32bが矢印B方向に沿って配列して設けられている。酸化剤ガス排出口30bは、酸化剤ガスが排出される部分であり、冷却媒体排出口31bは、冷却媒体が排出される部分であり、燃料ガス排出口32bは、燃料ガスが排出される部分である。
【0027】
<酸化剤ガス流路>
図1及び図2に示すように、一方のセパレータ20のうち、電解質膜・電極構造体10に対向する面20aには、酸化剤ガス供給口30aと酸化剤ガス排出口30bを連通して酸化剤ガスを流すための酸化剤ガス流路40が設けられている。
【0028】
<燃料ガス流路>
図1及び図2に示すように、他方のセパレータ20のうち、電解質膜・電極構造体10に対向する面20aには、燃料ガス供給口32aと燃料ガス排出口32bを連通して燃料ガスを流すための燃料ガス流路42が設けられている。
【0029】
<冷却媒体流路>
図1及び図2に示すように、他方のセパレータ20の面20bには、冷却媒体供給口31aと冷却媒体排出口31bとを連通して冷却媒体を流すための冷却媒体流路41が設けられている。
【0030】
本発明の実施形態に係る燃料電池100は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、図3及び図4を適宜参照して、燃料電池100の製造時に使用する製造装置50について説明する。なお、図3は、射出成形工程及び固定工程を示す説明図であり、図4は、セパレータの製造工程を示す概略斜視図である。
【0031】
<製造装置>
製造装置50は、図3に示すように、一対の供給装置51,51と、一対の巻取装置52,52と、金型53と、プレス装置54と、を主に備える。
【0032】
<供給装置>
供給装置51は、樹脂フィルム22が巻回され、巻取装置52へ樹脂フィルム22を供給する円柱状のロール装置である。供給装置51は、図示しない駆動手段(例えばモータ)により所定回転数で回転され、樹脂フィルム22を所定速度で巻取装置52に向けて送出するように構成されている。供給装置51,51は、上下に所定間隔離間して設けられており、水平軸周りに互いに逆向きに回転している。
【0033】
<巻取装置>
巻取装置52は、供給装置51に対し水平方向に所定間隔離間して配置され、供給装置51から供給される樹脂フィルム22を巻き取る円柱状のロール装置である。巻取装置52は、図示しない駆動手段(例えばモータ)により所定回転数で回転され、樹脂フィルム22を所定速度で巻き取るように構成されている。巻取装置52,52は、上下に所定間隔離間して設けられており、水平軸周りに互いに逆向きに回転している。
【0034】
<金型>
金型53は、供給装置51及び巻取装置52の間であって、供給装置51寄りに配置される金属製部材である。金型53は、供給装置51,51から送出される樹脂フィルム22,22の間に配置される第1金型55と、樹脂フィルム22を挟んで第1金型55の上側に配置される第2金型56と、樹脂フィルム22を挟んで第1金型55の下側に配置される第3金型57と、を有する。
【0035】
第2金型56及び第3金型57は、図示しない射出成形機の駆動装置により、上下方向(軸方向)に沿って第1金型55に接近・離間するように移動させられる。第2金型56の底面には、シール部材23の形状に対応して凹設された第1キャビティ面56aが形成されている。第1キャビティ面56a及び樹脂フィルム22の間には、第1金型55及び第2金型56の型締め時に、第1キャビティ60が形成される。また、第2金型56には、図示しない射出成形機から第1キャビティ60へ樹脂材料(溶融樹脂)Xを供給する通路として第1ゲート56bが形成されている。第1ゲート56bの出口は、第1キャビティ面56aに開口しており、入口は第2金型56の頂面に開口している。
【0036】
第3金型57の頂面には、シール部材23の形状に対応して凹設された第2キャビティ面57aが形成されている。第2キャビティ面57a及び樹脂フィルム22の間には、第1金型55及び第3金型57の型締め時に、第2キャビティ61が形成される。また、第3金型57には、図示しない射出成形機から第2キャビティ61へ樹脂材料Xを供給する通路として第2ゲート57bが形成されている。第2ゲート57bの出口は、第2キャビティ面57aに開口しており、入口は第3金型57の底面に開口している。
【0037】
<プレス装置>
プレス装置54は、従来公知のプレス装置の中から適宜選択して用いられ、セパレータ本体21を構成する金属プレートPの表裏両面P1,P2に樹脂フィルム22,22を圧着する装置である。プレス装置54は、供給装置51及び巻取装置52の間であって、巻取装置52寄りに配置されている。プレス装置54は、樹脂フィルム22,22を挟んで上下に所定間隔離間して設けられた第1プレス部54a及び第2プレス部54bを有する。第1プレス部54a及び第2プレス部54bは、図示しない駆動装置により、上下方向に沿って樹脂フィルム22に接近・離間するように移動させられる。
【0038】
次に、図3及び図4を参照して、燃料電池100の製造方法について説明する。
本実施形態の燃料電池100の製造方法は、巻出工程と、射出成形工程と、第1切断工程と、固定工程と、第2切断工程と、巻取工程と、を備える。
なお、図4では、説明の便宜上、下側の供給装置、巻取装置、樹脂フィルム等を省略して描いている。
【0039】
<巻出工程>
はじめに、図3及び図4に示すように、図示しない駆動手段又は手動により、供給装置51から樹脂フィルム22を巻き出し、樹脂フィルム22を巻取装置52の外周面に所定回数巻き付けておく。
【0040】
<射出成形工程>
続いて、図3に示すように、第1金型55に対し第2金型56及び第3金型57を接近させ、第1金型55及び第2金型56を型締めして上側の樹脂フィルム22を挟み、かつ第1金型55及び第3金型57を型締めして下側の樹脂フィルム22を挟む。
このとき、上側の樹脂フィルム22の表面22aと第2金型56の第1キャビティ面56aとの間に第1キャビティ60が形成される。また、下側の樹脂フィルム22の表面22aと第3金型57の第2キャビティ面57aとの間に第2キャビティ61が形成される。
【0041】
そして、第1ゲート56bを通じて第1キャビティ60内に樹脂材料Xを射出し、かつ第2ゲート57bを通じて第2キャビティ61内に樹脂材料Xを射出してシール部材23を成形する。
すなわち、本実施形態では、シール部材23として熱硬化性樹脂であるシリコーンゴムを使用しているため、金型53の熱が樹脂材料Xに伝熱され、樹脂材料Xが硬化される。これにより、樹脂フィルム22の表面22aにシール部材23が成形される。
一方、本実施形態では、樹脂フィルム22として熱可塑性樹脂であるポリエチレンテレフタレートを使用しており、樹脂フィルム22の融点は金型温度よりも高いため、樹脂フィルム22が金型53に融着するのを抑制できる。
【0042】
樹脂材料Xの硬化後(シール部材23の成形後)、第1金型55に対し第2金型56及び第3金型57を離間させ、第1金型55及び第2金型56を型開きし、かつ第1金型55及び第3金型57を型開きする。
その後、図示しない駆動手段により、供給装置51,51及び巻取装置52,52を回転させ、樹脂フィルム22,22を巻取装置52,52側へ所定距離だけ移動させる。
【0043】
<第1切断工程>
続いて、図4に示すように、樹脂フィルム22のうち、酸化剤ガス供給口30a等の供給口、酸化剤ガス排出口30b等の排出口、及び酸化剤ガス流路40等の流路に対応する部分を、図示しない切断手段により切断(トリミング)して切り離す。
その後、図示しない駆動手段により、供給装置51,51及び巻取装置52,52を回転させ、樹脂フィルム22,22を巻取装置52,52側へ所定距離だけ移動させる。
【0044】
<固定工程>
続いて、図3に示すように、プレス装置54により、セパレータ本体21を構成する金属プレートPの表裏両面P1,P2に対し、シール部材23が成形された樹脂フィルム22,22を固定する。
具体的には、樹脂フィルム22,22間に金属プレートPを配置し、かつ樹脂フィルム22,22に対し第1プレス部54a及び第2プレス部54bを接近させる。
このとき、図4に示すように、樹脂フィルム22の切断部分Yと金属プレートPの酸化剤ガス供給口30a等が上下で対応する位置に金属プレートPを配置する。
また、金属プレートPの配置前に、樹脂フィルム22の融点以上の温度に金属プレートPを予め加熱する。これにより、プレス時に金属プレートPの熱が樹脂フィルム22に伝熱され、樹脂フィルム22が溶融する。その結果、樹脂フィルム22が金属プレートPに融着するため、金属プレートPに樹脂フィルム22を好適に保持できる。
【0045】
そして、第1プレス部54a及び第2プレス部54bにより、金属プレートPに対し樹脂フィルム22,22を上下両側から押圧(プレス)する。これにより、樹脂フィルム22,22は、金属プレートPの表裏両面P1,P2に対し圧着(熱溶着)される。樹脂フィルム22,22の圧着後、樹脂フィルム22,22に対し第1プレス部54a及び第2プレス部54bを離間させる。
その後、図示しない駆動手段により、供給装置51,51及び巻取装置52,52を回転させ、金属プレートPに圧着された樹脂フィルム22,22を、金属プレートPごと巻取装置52,52側へ所定距離だけ移動させる。
【0046】
<第2切断工程>
続いて、図4に示すように、樹脂フィルム22のうち、シール部材23が成形され、かつ金属プレートPに固定された部分を、図示しない切断手段により切断して切り離す。以上の工程を経て、セパレータ20が完成する。
【0047】
<巻取工程>
続いて、供給装置51,51及び巻取装置52,52を回転させ、樹脂フィルム22,22を巻取装置52,52側へ送出し、樹脂フィルム22,22のうち、切断後の余剰部分Zを巻取装置52,52に巻き取る(図3、図4参照)。
【0048】
以上説明した本実施形態によれば、供給装置51から巻取装置52へ樹脂フィルム22を送出する過程で、射出成形工程→第1切断工程→固定工程→第2切断工程の順に製造作業を行うことにより、シール部材23を有するセパレータ20を連続的に製造できるため、セパレータ20の生産性が向上する。
特に、樹脂フィルム22,22を挟んで両側に一対の供給装置51,51及び一対の巻取装置52,52を夫々配置して、シール部材23,23が成形された樹脂フィルム22,22を、金属プレートPの表裏両面P1,P2に同時に固定できるため、セパレータ20の生産性がより一層向上する。
【0049】
また、第2金型56及び第3金型57と樹脂フィルム22の表面22aとの間で、第1キャビティ60及び第2キャビティ61を形成して、第1キャビティ60及び第2キャビティ61内に樹脂材料Xを射出することにより、型締め時に樹脂フィルム22が金型53から押圧力を受けると、金型形状に追従して変形するため、金型同士の密着性に比較して、第2金型56及び第3金型57と樹脂フィルム22との密着性が高まる。その結果、第2金型56及び第3金型57と樹脂フィルム22との合わせ面に隙間が発生し難くなり、ひいてはバリが発生し難くなるため、完成品の品質が向上する。
【0050】
また、型締め時に、金型53と樹脂フィルム22とが接触するため、金型同士が接触する構造に比較して、金型53の磨耗を軽減することが可能となり、金型53の耐用性(耐用年数)が向上する。
【0051】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0052】
本実施形態では、製造装置50は、一対の供給装置51,51及び巻取装置52,52を備え、一対の樹脂フィルム22,22に樹脂材料Xを同時に射出し、かつ金属プレートPの表裏両面P1,P2に樹脂フィルム22,22を同時に固定したが、本発明はこれに限定されるものではなく、単一の樹脂フィルム22に樹脂材料Xを射出し、かつ金属プレートPの片面ずつ交互に樹脂フィルム22を固定してもよい。例えば、製造装置50は、単一の供給装置51及び巻取装置52を備え、単一の樹脂フィルム22に樹脂材料Xを射出し、かつ金属プレートPの表面P1(裏面P2)に樹脂フィルム22を固定した後、単一の樹脂フィルム22に樹脂材料Xを射出し、かつ金属プレートPの裏面P2(表面P1)に樹脂フィルム22を固定してもよい。
【0053】
また、本実施形態では、熱溶着により樹脂フィルム22を金属プレートPに固定したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、ホットメルト接着剤等の接着剤を樹脂フィルム22に塗布し、接着剤により樹脂フィルム22を金属プレートPに固定してもよい。この場合、金型温度よりも軟化点が高い接着剤を使用することにより、接着剤が金型53に接着するのを抑制できる。また、金属プレートPの配置前に、接着剤の軟化点以上の温度に金属プレートPを予め加熱することにより、接着剤を軟化させ、金属プレートPに樹脂フィルム22を好適に保持できる。
【0054】
また、本実施形態では、樹脂フィルム22の供給方向を水平方向に一致させ、セパレータ20を製造したが、本発明はこれに限定されるものではなく、樹脂フィルム22の供給方向を鉛直方向に一致させ、セパレータ20を製造してもよい。
【符号の説明】
【0055】
100 燃料電池
10 電解質膜・電極構造体
11 固体高分子電解質膜(電解質膜)
12 カソード電極
13 アノード電極
20 セパレータ
21 セパレータ本体
22 樹脂フィルム
22a 表面
23 シール部材
50 製造装置
51 供給装置
52 巻取装置
53 金型
55 第1金型
56 第2金型
56a 第1キャビティ面
56b 第1ゲート
57 第3金型
57a 第2キャビティ面
57b 第2ゲート
60 第1キャビティ
61 第2キャビティ
54 プレス装置
P 金属プレート
P1 表面
P2 裏面
X 樹脂材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード電極とカソード電極との間に電解質膜を介設した電解質・電極構造体を一対のセパレータで挟持して構成される燃料電池の製造方法であって、
樹脂フィルムが巻回された供給装置から前記樹脂フィルムを巻き出す巻出工程と、
巻き出された前記樹脂フィルムの表面と金型との間でキャビティを形成して、前記キャビティ内に樹脂材料を射出してシール部材を成形する射出成形工程と、
前記シール部材が成形された前記樹脂フィルムを、前記セパレータを構成する金属プレートに固定する固定工程と、
前記樹脂フィルムのうち、前記シール部材が成形され、かつ前記金属プレートに固定された部分を切断する切断工程と、
前記樹脂フィルムのうち、切断後の余剰部分を巻取装置に巻き取る巻取工程と、
を備えることを特徴とする燃料電池の製造方法。
【請求項2】
前記金属プレートを挟んで両側に一対の前記供給装置及び一対の前記巻取装置を夫々配置して、前記シール部材が成形された前記樹脂フィルムを、前記金属プレートの表裏両面に固定することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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